特許第5959904号(P5959904)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959904
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】拡張式アンカー
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/41 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
   E04B1/41 503G
【請求項の数】4
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-88213(P2012-88213)
(22)【出願日】2012年4月9日
(65)【公開番号】特開2012-225150(P2012-225150A)
(43)【公開日】2012年11月15日
【審査請求日】2015年3月7日
(31)【優先権主張番号】10 2011 007 570.4
(32)【優先日】2011年4月18日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100123342
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 承平
(72)【発明者】
【氏名】マルク シェッファー
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルグ オーベルンドルファー
【審査官】 湊 和也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05413441(US,A)
【文献】 米国特許第05228250(US,A)
【文献】 特開平01−135905(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0274534(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/41
F16B 13/00 − 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向の軸(10)をもつアンカーボルト(2)の第1の端部区間(6)に拡張要素(3)を有するアンカーボルト(2)と、
荷重を保持するための、少なくとも1つのアンカーボルト(2)の締付け手段(20)と、
アンカーボルト(2)を囲む拡張スリーブ(4)と、
当該拡張スリーブ(4)を展開するための少なくとも1つの偏心形状体(11、12)と
からなる拡張式アンカー(1)の留め付け方法であって、
ドリル孔へ当該拡張式アンカー(1)を挿入するステップ
当該拡張スリーブ(4)が、当該ドリル孔の壁に対して放射状に拡張されるように、当該拡張式アンカー(1)の当該拡張スリーブ(4)を展開するステップ
からなり、
当該拡張要素(3)を伴う当該アンカーボルト(2)は回転動作され、当該拡張スリーブ(4)が、当該回転動作により、少なくとも一つの当該偏心形状体(11、12)により展開され、
当該拡張スリーブ(4)が少なくとも一つの当該偏心形状体(11、12)により展開された後、またはその間、当該アンカーボルト(2)の当該回転動作により、当該アンカーボルト(2)は、当該ドリル孔の口の方へ、当該軸方向に平行移動し、そして結果として、当該拡張スリーブ(4)は、当該拡張要素(3)の円錐形状のため展開される、
ことを特徴とする拡張式アンカーの留め付け方法。
【請求項2】
前記回転動作の軸(9)は、前記アンカーボルト(2)の長手方向の軸(10)の回転動作に対応する、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項3】
回転力が、前記アンカーボルト(2)を前記拡張要素(3)とともに回転させるために、ドリル孔の外の前記アンカーボルト(2)の回転工具ソケット(14)に作用する、ことを特徴とする請求項またはに記載の方法。
【請求項4】
前記アンカーボルト(2)は、少なくとも1つの前記締付け手段(20)によりナット(23)が、アンカーボルト(2)のねじ山(21)にねじ締めされることにより、前記軸方向に平行移動する、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡張式アンカーと、その留め付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アンカーボルト、拡張要素、アンカーボルトを囲む拡張スリーブ、そして締付手段を有する拡張式アンカーは、構造物に工作物を留め付けるために用いられる。このために、孔が、構造物に、例えばコンクリートの壁またはコンクリートの床などに、穿孔され、続いて拡張式アンカーが、ドリル孔に押込まれる。締付手段が、アンカーボルトの円錐形の拡張要素を、軸方向に動かす。結果として、拡張要素は、拡張スリーブを放射状外側に押圧し、そして拡張式アンカーは、拡張スリーブまたは拡張要素と構造物との、例えばドリル孔を囲むコンクリートとの間の、半径方向の力により固定される。このようにして、工作物すなわち目的物は、拡張式アンカーに留め付けられ得る。
【0003】
従って、ドリル孔の壁と拡張スリーブとの間の摩擦力が、拡張スリーブと構造物に穿孔される孔の壁との間に、拡張式アンカーを固定する。円錐形の拡張要素は、アンカーボルトまたは拡張要素の長手方向軸について、通常は回転対称である。
【0004】
例えば、アンカーボルトのねじ山、座金およびナットが、締付手段として使われる。ナットがアンカーボルトのねじ山にねじ締めされると、座金はドリル孔の口でコンクリートに対して押圧される。そのために、アンカーボルトと、従って同様に円錐形の拡張要素の、軸方向の動きを引き起こす。この為、アンカーボルトのねじ山へナットをねじ締めするために、すなわちそれをねじ込むために、回転力がナットに作用しなければならない。拡張式アンカーが隙間のある領域において使われる時、すなわち、小さなひびがプレストレストコンクリート床の底に現れた、あるいはプレストレストコンクリート中に亀裂の入った、コンクリートの場合、ドリル孔の直径は、拡張要素が拡張スリーブを展開するにつれ、より大きくなる。これは、ドリル孔を囲むコンクリートへの拡張スリーブの半径方向への締め付けの際、拡張スリーブを有するアンカーボルトに追加的な軸方向の動きをもたらす、いわゆる事後拡張(post-expansion)を起こす結果となる。拡張要素、すなわち、ここでは特に円錐形状の拡張要素は、必要な展開力、すなわち拡張スリーブとドリル孔を囲むコンクリートとの間の半径方向のプレテンショニングは、ドリル孔直径のより小さな許容誤差範囲内においてと同様に、ドリル孔直径のより大きな許容誤差範囲内で達成され得るように構成されなければならない。許容誤差範囲内のドリル孔の様々な直径により、アンカーボルトと拡張スリーブとの間の、軸方向の移動経路(距離)は異なることとなる。より大きな許容誤差範囲にあるドリル孔直径の場合、拡張スリーブはドリル孔に対してさらに動くことができることとなる(スリーブずれ)。このスリーブずれの場合、スリーブのずれが異なっていると、それぞれのアンカーボルトがドリル孔から別々の長さに突き出し、そして、ドリル孔の口に向かう拡張スリーブの軸方向の動きは、同様にドリル孔内での拡張式アンカーの異なる固定深さをもたらすこととなり、有害である。結果として、その拡張式アンカーの破断負荷が大きくばらつくこととなる。
【0005】
特許文献1には、円筒形軸部の一端領域に設定方向に拡張部を備え、負荷を支えるために、この拡張部から離れた側の端部に締付手段を備えたアンカーボルトを有する、拡張式アンカーが記載されている。そのアンカーボルトは、少なくともその軸部部分に沿って、拡張スリーブによって、囲まれ、拡張スリーブは軸部に対して移動可能で、それは設定側の端部の方へ開いた少なくとも一つの長手方向のスリットを備え、そしてその外側の輪郭上に放射状に延びる突出部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第4116149号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、特に低い許容誤差範囲にあるドリル孔直径の場合、または中空の空間の場合に、拡張スリーブの軸方向の動きを避け得ることのできる、拡張式アンカーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、長手方向の軸を有するアンカーボルトの第1の端部区間に拡張要素を有するアンカーボルトを備え、好ましくはアンカーボルトに荷重を保持するための少なくとも1つの締付け手段をも備え、さらにアンカーボルトを囲む拡張スリーブをも含む、拡張式アンカーであって、拡張スリーブの展開が、アンカーボルトの、特に回転軸として長手方向の軸周りの回転動作により達成されるように、拡張式アンカーが少なくとも1つの偏心形状体を備える、ことにより達成される。
【0009】
この少なくとも1つの偏心形状体を用いることで、拡張スリーブを、拡張要素を有するアンカーボルトの軸方向の動きなしに展開できる。拡張スリーブの展開、すなわち、アンカーボルトの長手方向の軸から間隔を増す方向への拡張スリーブの半径方向の動作は拡張スリーブとドリル孔を囲む部材、例えばコンクリート、との間の半径方向のプレテンショニング力になる。この拡張式アンカーは、拡張スリーブとドリル孔を囲んでいる部材との間のこのプレテンショニングによって、ドリル孔に固定され得る。しかしながら、アンカーボルトの軸方向の動きは、スリーブずれ、すなわち、ドリル孔の口の方へ向かう拡張スリーブの軸方向の動作の原因となる場合があるが、この拡張スリーブを展開するためにアンカーボルトの軸方向の動きは必要ないので、いかなるスリーブずれも排除される。アンカーボルトの回転動作のみにより、ドリル孔を囲む部材へ拡張スリーブを展開することが可能である。
【0010】
特に、この拡張式アンカーはいくつかの偏心形状体を備える。拡張スリーブのより均等な展開が、接線方向にそして円周方向に、いくつかのこの偏心形状体により実行され得る。
【0011】
別の実施例においては、少なくとも一つの偏心形状体がアンカーボルトおよび/または拡張スリーブに形成される。アンカーボルトの1つの偏心形状体が、拡張スリーブ上の1つの偏心形状体に重なると好都合である。
【0012】
補完的な実施例においては、少なくとも1つの偏心形状体は、拡張要素に、またはアンカーボルトの拡張要素の外側に形成される。
【0013】
アンカーボルトには、他の第2の端部区間に、例えば多角形体の回転工具ソケット、そして好ましくは同様に当該回転工具ソケットにより吸収され得る回転力を制限するための、所定の破断部が設けられているのが好ましい。この回転工具ソケットは、拡張式アンカーを回転させ、少なくとも一つの偏心形状体によって拡張スリーブを展開するために、そして拡張スリーブとドリル孔を囲むコンクリートとの間を締め付けるために、用いられ得る。この所定の破断部は、アンカーボルトを回転させる定められた回転力を超えるいかなる場合をも防止する。この多角形体のソケットに、例えばレンチをあてがうことができる。
【0014】
代わりとして、アンカーボルトのねじ山およびそのねじ山に配置されるナットを備えた、少なくとも1つの締付け手段であって、限界トルクを超えるまで回転不可能にねじ山のナットを保持し、そして限界トルクを超えるとナットはねじ山に対して回転できるようにナットを解放し、特に、この解放は不可逆性であるような手段を備えたものを備えることもできる。この手段は、所定の破断部、例えば、ナットとアンカーボルトとの間に延びるピンのような形で実施できる。この手段は、アンカーボルトとナットとの間の摩擦面により形成されることもできる。本実施例では、ナットは限界トルクに達するまで回転不可能にアンカーロッドに接続しており、これは、設定工程が終えられる時の時点に対応する。限界トルクに達すると、ナットはねじ山に沿ってねじ締めされ得る。この実施例では、荷重の留め付けとアンカーの設置が全く同一のナットで果たされ得るので、別々の回転工具ソケットは省くことができる。
【0015】
1つの変形例においては、少なくとも1つの偏心形状体が、アンカーボルトと拡張スリーブの半径方向の外側との間に形成される、および/または、少なくとも1つの偏心形状体が、アンカーボルトにあるいは拡張スリーブに一体で形成される。アンカーボルトあるいは拡張スリーブの、少なくとも1つの偏心形状体の一体成形の場合、この偏心形状体は、例えば成形工程の際に、同時に製造するのは特に容易であり、それ以外にも、少なくとも一つの偏心形状体とアンカーボルトまたは拡張スリーブとの間に、特別に堅固な接合が存在する。
【0016】
都合のよいことに、拡張スリーブは、拡張要素の円錐形状のため、アンカーボルトの軸方向の動作により展開され得る。アンカーボルトの回転動作による、少なくとも一つの偏心形状体による当初の展開としての拡張スリーブの締め付けの後、スリーブずれを防ぐために、ドリル孔を囲む部材への拡張スリーブの追加の展開は、アンカーボルトの軸方向の動作によって実行でき得る。例えば、拡張式アンカーが隙間のある領域、すなわち、ひび割れたコンクリートに使われる際にも、当初の展開の後に対応する事後拡張の必要性があり得る。結果的に、当初の展開が行われた後、拡張スリーブの追加の展開が、例えば、アンカーボルトに作用している引張力による恒久的な拡張として実行され得る。荷重が拡張式アンカーに永久に留め付けられ得るためには、拡張スリーブの恒久的な拡張が必要である。この恒久的な拡張は、すでに述べたように、コンクリート上に設置された座金またはナットによるアンカーボルトに恒久的に作用する引張力により達成され得る。
【0017】
別の実施例では、少なくとも1つの締付け手段は、アンカーボルトのねじ山、座金およびナットからなる。
【0018】
本発明によれば、アンカーボルトに釘頭を設けることもまたあり得、その場合ナットはなくともよい。アンカーロッドを回して設置するために、締付け手段は、例えば、多角形状の釘頭として構成され得る。
【0019】
特に、少なくとも1つの締付け手段はアンカーボルトの第2の端部区間に設定される。
【0020】
別の実施例では、アンカーボルトおよび/または拡張要素および/または少なくとも一つの締付け手段は、少なくとも部分的に、特に全体として、金属、例えば鋼またはアルミニウムで作成され、および/または、この特許出願において説明される方法が、この拡張式アンカーにより実行され得る。
【0021】
拡張式アンカー、特にこの特許出願において説明される拡張式アンカー、を留め付けるための本発明の方法は、ドリル孔への拡張式アンカーの挿入、拡張スリーブがドリル孔の壁に対して放射状に拡張されるよう、拡張式アンカーの拡張スリーブの拡張のステップを備え、ここで拡張要素と共にアンカーボルトは回転させられ、その回転動作のため、拡張スリーブは少なくとも一つの偏心形状体により展開される。この回転動作は最大で360度の回転動作であるのが好ましい。複数の偏心形状体の場合、回転角は360度を、使用する偏心形状体の数で割った数であるのが好ましい。
【0022】
補完的な変形例においては、回転軸はアンカーボルトの長手方向の軸の回転動作に対応する。
【0023】
別の変形例においては、アンカーボルトを拡張要素とともに回転させるために、ドリル孔の外にあるアンカーボルトの回転工具ソケットに回転力が作用する。
【0024】
別の実施例では、少なくとも1つの偏心形状による拡張スリーブの展開の後、またはその間、アンカーボルトは、アンカーボルトの回転動作のため、軸方向にドリル孔の口の方へ平行移動し、その結果拡張スリーブは拡張要素の円錐形状のため展開される。
【0025】
追加の実施例においては、アンカーボルトは、少なくとも1つの締付け手段、例えば、ナットがアンカーボルトのねじ山にねじ締めされることなどにより、軸方向に平行移動させられる。軸方向の平行移動は、アンカーボルトのねじ山にナットをねじ締めすることにより達成され得、このようなねじ締め工程は、アンカーボルトに恒久的な引張力をもたらし、この引張力は、拡張要素の円錐形状のため、拡張スリーブの恒久的拡張となる。従って、アンカーボルトの回転動作による当初の展開が行われたあと、恒久的拡張はアンカーボルトの軸方向の平行移動により実行され得る。しかしながら、軸方向の平行移動によるこのような恒久的拡張による拡張スリーブの逆方向への動きは排除される。座金がドリル孔の口付近でコンクリートと形成する接触面のために、アンカーボルトの動きが排除されるからである。
【0026】
補完的な実施例では、アンカーボルトは支持リングを備え、そして拡張要素はその支持リングで支えられている。それゆえ、拡張スリーブは、それがドリル孔に挿入される際はその支持リングで支えられる。アンカーボルトが、締付け手段、例えばナットによりネジを緩められる際は、拡張スリーブが拡張され得るように、拡張スリーブの軸方向の留め付けが必要である。これは、摩擦接続による手段、例えば、その拡張スリーブが追加的に突出部を備えることにより実現される。
【0027】
補完的な変形例においては、拡張スリーブは上方、座金のナットまで移動し、すなわち、それは締付け手段に載置される。そして、アンカーボルトが緩められたときに、拡張スリーブの軸方向の固定は、ドリル孔の壁と拡張スリーブとの間の摩擦によっては達成されず、拡張スリーブは、むしろ少なくとも1つの締付け手段、例えば座金に載置される。
【0028】
以下、本発明の実施例が図面を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】拡張式アンカーの長手方向の図である。
図2】拡張スリーブを有しない拡張式アンカーの部分的斜視図である。
図3】回転される前の図1の線A−Aに沿った横断面図である。
図4】回転された後の図1の線A−Aに沿った横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1に示される拡張式アンカー1は、工作物を構造物に留め付けるためのものである。穴、すなわちドリル孔が構造物(図示せず)に設けられ、そして、工作物を留め付けるために、拡張式アンカー1がこのドリル孔に挿入されるか、または打ち込まれる。この構造物は、例えば建築物のコンクリートの壁またはコンクリートの床である。
【0031】
拡張式アンカー1は、アンカーボルト2を含む。アンカーボルト2は、第1の端部区間6を有する第1の端部5、および第2の端部区間8を有する第2の端部7を備えている。拡張式アンカー1が構造物のドリル孔に導入される際は、第1の端部5がドリル孔に挿入され、そしてアンカーボルト2の第2の端部7すなわち第2の端部区間8の残り部分は、ドリル孔の外に留まる。第1の端部区間6において、円錐形の拡張要素3はアンカーボルト2と一体に構成される。拡張スリーブ4は、拡張要素3とアンカーボルト2と一体に構成されるサポートリング15との間に、アンカーボルト2の周囲に同軸に配置される。拡張スリーブ4は、サポートリング15に載置されているので、拡張式アンカー1がドリル孔に押し込まれる際に、孔の壁と拡張スリーブ4との間で生ずる摩擦力により、拡張スリーブ4がアンカーボルト2上で第2端部7の方へ動くことはない(図1)。
【0032】
この拡張スリーブ4は、アンカーボルト2の長手方向の軸10の方向に、3つの長手方向のスリット16を備えている。その軸方向の長手方向のスリット16により、拡張スリーブ4は3つの展開部分17を備える。特に展開部分17に、第1の突出部18および第2の突出部19が拡張スリーブ4に形成される。第1の突出部18は、第2の突出部19よりアンカーボルト2の第1の端部5により近く形成される。さらに、第1および第2の突出部18、19は、互いと異なる形状を備えていることが好ましい。
【0033】
3つの締付け手段20は、アンカーボルト2の第2の端部区間8に設けられる。締付け手段20は、アンカーボルト2に形成されたねじ山21、座金22およびナット23の形をとる。このナット23は、アンカーボルト2外側のねじ山21と係合する内側のねじ山(図示せず)を備える。さらに、第2の端部区間8には、アンカーボルト2と一体に構成される、多角形体24として構成される回転工具ソケット14と所定の破断部25がある。
【0034】
工作物を拡張式アンカー1に留め付けるためには、拡張式アンカー1を構造物に穿設された孔すなわち穴に挿入するか打ち込まなければならない。拡張式アンカー1がこのドリル孔に押し込まれたとき、第1の端部5はドリル孔内部に位置し、そして第2端部7はドリル孔の外に位置する。
【0035】
3つの偏心形状体11が、アンカーボルト2の拡張要素3の裏側に、アンカーボルト2の第2の端部区間8の方向に、アンカーボルト2に形成される(図2)。拡張スリーブ4の半径方向の内側には、同様に3つの偏心形状体12が形成されている(図3および図4)。図3および図4の断面図の現れ方のため、形成された偏心形状12を有する展開部分17だけが、図3および図4に見えている。拡張式アンカー1がドリル孔に押し込まれたあと、回転力を多角形体24に作用させるためにレンチが用いられ、そのため、アンカーボルト2は拡張要素3と一緒に、アンカーボルト2の長手方向の軸10に対応する回転軸9周りに回転動作をする。合計3つの偏心形状部11、12により、アンカーボルト2がドリル孔に挿入された後、それが回される前に、拡張要素3を有するアンカーボルト2を、図3に示される回転角位置から図4に示される回転角位置に120度回転させる。アンカーボルト2と拡張スリーブ4の2つの偏心形状体11、12の位置関係のため、アンカーボルト2と拡張要素3の120度の回転動作によって、拡張スリーブ4は展開、すなわち放射状に外側の方へ移動する。それにより、拡張スリーブ4とドリル孔の部材、すなわちコンクリートとの間で、半径方向の締め付けが生まれる。拡張スリーブ4とドリル孔の壁との間の摩擦力のために、また同様に突出部18、19に対する噛み合いによる接続のために、拡張スリーブ4は、回転軸9周りで回転しない。従って、多角形体24へレンチにより印加される回転力のため、そしてその結果生じる、アンカーボルト2の偏心形状体11を含む、アンカーボルト2の120度の回転角による回転動作のため、ドリル孔の壁への拡張スリーブ4の当初の展開が実行され得る。この当初の展開のため、摩擦力による、同様に好ましくは噛み合いによる接続が、拡張スリーブ4とドリル孔を囲むコンクリートとの間に形成される。このようにして、拡張スリーブ4の軸方向の動き、すなわちスリーブずれの可能性が排除される。
【0036】
当初の展開の後、ナット23がねじ山21にねじ締めされる締付け手段20により、アンカーボルト2と、したがって拡張要素3も、軸方向に、長手方向の軸10に対し外側に、ねじ止めされる。その結果として、拡張スリーブ4とドリル孔の壁との間の摩擦力は、拡張スリーブ4の当初の展開による軸方向の固定により、同様に、噛み合いによる接続ができる突出部18、19により、拡張要素3とともに拡張スリーブ4を展開部分17の外側方向へ、恒久的な拡張として、放射状に追加的に展開させる。拡張スリーブ4および/または拡張要素3とドリル孔の壁との間の摩擦力およびプレテンショニングが恒久的に確立され、構造物(図示せず)のドリル孔(図示せず)内での拡張式アンカー1の軸方向の留め付けが恒久的になされる。
【0037】
従って、拡張式アンカー1が、ドリル孔に挿入された後に、第1の作業ステップとして、拡張スリーブ4とドリル孔を囲むコンクリートとの間で初めの展開が、スリーブずれ、すなわち、永久的な拡張の実行中におこる拡張スリーブ4の軸方向の動作を防止するために、実行される。恒久的拡張の際には、座金22が、コンクリートの上のドリル孔の口の近くに乗っているので、アンカーボルト2の引張力のため、アンカーボルト2は、ドリル孔の口の方へ軸方向に動こうとする。しかしながら、当初の展開がすでに行われたために、拡張スリーブ4は軸方向には動かない。
【0038】
全体として、本発明の拡張式アンカー1は大きな利点をもつ。アンカーボルト2の回転動作による最初に実行される当初の展開は、アンカーボルト2の軸方向の動作による、続く恒久的拡張の際の拡張スリーブ4の軸方向の動きを排除する。結果として、拡張式アンカー1が異なる挿入深さを持つことに至る有害な拡張スリーブ4のスリーブずれを、効果的に除外することが可能である。続く恒久的な拡張により、プレストレストコンクリート内の破砕されたコンクリートの場合と同様に、許容誤差の最大範囲にあるドリル孔直径の場合であっても、拡張スリーブ4の恒久的な拡張がドリル孔を囲むコンクリートに実行できる。
【符号の説明】
【0039】
1 拡張式アンカー
2 アンカーボルト
3 拡張要素
4 拡張スリーブ
6 第1の端部
8 第2の端部
9 回転軸
10 長手方向軸
11、12 偏心形状体
14 回転工具ソケット
20 締付け手段
21 ねじ山
22 座金
23 ナット
24 多角形体
25 所定の破断部
図1
図2
図3
図4