【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、長手方向の軸を有するアンカーボルトの第1の端部区間に拡張要素を有するアンカーボルトを備え、好ましくはアンカーボルトに荷重を保持するための少なくとも1つの締付け手段をも備え、さらにアンカーボルトを囲む拡張スリーブをも含む、拡張式アンカーであって、拡張スリーブの展開が、アンカーボルトの、特に回転軸として長手方向の軸周りの回転動作により達成されるように、拡張式アンカーが少なくとも1つの偏心形状体を備える、ことにより達成される。
【0009】
この少なくとも1つの偏心形状体を用いることで、拡張スリーブを、拡張要素を有するアンカーボルトの軸方向の動きなしに展開できる。拡張スリーブの展開、すなわち、アンカーボルトの長手方向の軸から間隔を増す方向への拡張スリーブの半径方向の動作は拡張スリーブとドリル孔を囲む部材、例えばコンクリート、との間の半径方向のプレテンショニング力になる。この拡張式アンカーは、拡張スリーブとドリル孔を囲んでいる部材との間のこのプレテンショニングによって、ドリル孔に固定され得る。しかしながら、アンカーボルトの軸方向の動きは、スリーブずれ、すなわち、ドリル孔の口の方へ向かう拡張スリーブの軸方向の動作の原因となる場合があるが、この拡張スリーブを展開するためにアンカーボルトの軸方向の動きは必要ないので、いかなるスリーブずれも排除される。アンカーボルトの回転動作のみにより、ドリル孔を囲む部材へ拡張スリーブを展開することが可能である。
【0010】
特に、この拡張式アンカーはいくつかの偏心形状体を備える。拡張スリーブのより均等な展開が、接線方向にそして円周方向に、いくつかのこの偏心形状体により実行され得る。
【0011】
別の実施例においては、少なくとも一つの偏心形状体がアンカーボルトおよび/または拡張スリーブに形成される。アンカーボルトの1つの偏心形状体が、拡張スリーブ上の1つの偏心形状体に重なると好都合である。
【0012】
補完的な実施例においては、少なくとも1つの偏心形状体は、拡張要素に、またはアンカーボルトの拡張要素の外側に形成される。
【0013】
アンカーボルトには、他の第2の端部区間に、例えば多角形体の回転工具ソケット、そして好ましくは同様に当該回転工具ソケットにより吸収され得る回転力を制限するための、所定の破断部が設けられているのが好ましい。この回転工具ソケットは、拡張式アンカーを回転させ、少なくとも一つの偏心形状体によって拡張スリーブを展開するために、そして拡張スリーブとドリル孔を囲むコンクリートとの間を締め付けるために、用いられ得る。この所定の破断部は、アンカーボルトを回転させる定められた回転力を超えるいかなる場合をも防止する。この多角形体のソケットに、例えばレンチをあてがうことができる。
【0014】
代わりとして、アンカーボルトのねじ山およびそのねじ山に配置されるナットを備えた、少なくとも1つの締付け手段であって、限界トルクを超えるまで回転不可能にねじ山のナットを保持し、そして限界トルクを超えるとナットはねじ山に対して回転できるようにナットを解放し、特に、この解放は不可逆性であるような手段を備えたものを備えることもできる。この手段は、所定の破断部、例えば、ナットとアンカーボルトとの間に延びるピンのような形で実施できる。この手段は、アンカーボルトとナットとの間の摩擦面により形成されることもできる。本実施例では、ナットは限界トルクに達するまで回転不可能にアンカーロッドに接続しており、これは、設定工程が終えられる時の時点に対応する。限界トルクに達すると、ナットはねじ山に沿ってねじ締めされ得る。この実施例では、荷重の留め付けとアンカーの設置が全く同一のナットで果たされ得るので、別々の回転工具ソケットは省くことができる。
【0015】
1つの変形例においては、少なくとも1つの偏心形状体が、アンカーボルトと拡張スリーブの半径方向の外側との間に形成される、および/または、少なくとも1つの偏心形状体が、アンカーボルトにあるいは拡張スリーブに一体で形成される。アンカーボルトあるいは拡張スリーブの、少なくとも1つの偏心形状体の一体成形の場合、この偏心形状体は、例えば成形工程の際に、同時に製造するのは特に容易であり、それ以外にも、少なくとも一つの偏心形状体とアンカーボルトまたは拡張スリーブとの間に、特別に堅固な接合が存在する。
【0016】
都合のよいことに、拡張スリーブは、拡張要素の円錐形状のため、アンカーボルトの軸方向の動作により展開され得る。アンカーボルトの回転動作による、少なくとも一つの偏心形状体による当初の展開としての拡張スリーブの締め付けの後、スリーブずれを防ぐために、ドリル孔を囲む部材への拡張スリーブの追加の展開は、アンカーボルトの軸方向の動作によって実行でき得る。例えば、拡張式アンカーが隙間のある領域、すなわち、ひび割れたコンクリートに使われる際にも、当初の展開の後に対応する事後拡張の必要性があり得る。結果的に、当初の展開が行われた後、拡張スリーブの追加の展開が、例えば、アンカーボルトに作用している引張力による恒久的な拡張として実行され得る。荷重が拡張式アンカーに永久に留め付けられ得るためには、拡張スリーブの恒久的な拡張が必要である。この恒久的な拡張は、すでに述べたように、コンクリート上に設置された座金またはナットによるアンカーボルトに恒久的に作用する引張力により達成され得る。
【0017】
別の実施例では、少なくとも1つの締付け手段は、アンカーボルトのねじ山、座金およびナットからなる。
【0018】
本発明によれば、アンカーボルトに釘頭を設けることもまたあり得、その場合ナットはなくともよい。アンカーロッドを回して設置するために、締付け手段は、例えば、多角形状の釘頭として構成され得る。
【0019】
特に、少なくとも1つの締付け手段はアンカーボルトの第2の端部区間に設定される。
【0020】
別の実施例では、アンカーボルトおよび/または拡張要素および/または少なくとも一つの締付け手段は、少なくとも部分的に、特に全体として、金属、例えば鋼またはアルミニウムで作成され、および/または、この特許出願において説明される方法が、この拡張式アンカーにより実行され得る。
【0021】
拡張式アンカー、特にこの特許出願において説明される拡張式アンカー、を留め付けるための本発明の方法は、ドリル孔への拡張式アンカーの挿入、拡張スリーブがドリル孔の壁に対して放射状に拡張されるよう、拡張式アンカーの拡張スリーブの拡張のステップを備え、ここで拡張要素と共にアンカーボルトは回転させられ、その回転動作のため、拡張スリーブは少なくとも一つの偏心形状体により展開される。この回転動作は最大で360度の回転動作であるのが好ましい。複数の偏心形状体の場合、回転角は360度を、使用する偏心形状体の数で割った数であるのが好ましい。
【0022】
補完的な変形例においては、回転軸はアンカーボルトの長手方向の軸の回転動作に対応する。
【0023】
別の変形例においては、アンカーボルトを拡張要素とともに回転させるために、ドリル孔の外にあるアンカーボルトの回転工具ソケットに回転力が作用する。
【0024】
別の実施例では、少なくとも1つの偏心形状による拡張スリーブの展開の後、またはその間、アンカーボルトは、アンカーボルトの回転動作のため、軸方向にドリル孔の口の方へ平行移動し、その結果拡張スリーブは拡張要素の円錐形状のため展開される。
【0025】
追加の実施例においては、アンカーボルトは、少なくとも1つの締付け手段、例えば、ナットがアンカーボルトのねじ山にねじ締めされることなどにより、軸方向に平行移動させられる。軸方向の平行移動は、アンカーボルトのねじ山にナットをねじ締めすることにより達成され得、このようなねじ締め工程は、アンカーボルトに恒久的な引張力をもたらし、この引張力は、拡張要素の円錐形状のため、拡張スリーブの恒久的拡張となる。従って、アンカーボルトの回転動作による当初の展開が行われたあと、恒久的拡張はアンカーボルトの軸方向の平行移動により実行され得る。しかしながら、軸方向の平行移動によるこのような恒久的拡張による拡張スリーブの逆方向への動きは排除される。座金がドリル孔の口付近でコンクリートと形成する接触面のために、アンカーボルトの動きが排除されるからである。
【0026】
補完的な実施例では、アンカーボルトは支持リングを備え、そして拡張要素はその支持リングで支えられている。それゆえ、拡張スリーブは、それがドリル孔に挿入される際はその支持リングで支えられる。アンカーボルトが、締付け手段、例えばナットによりネジを緩められる際は、拡張スリーブが拡張され得るように、拡張スリーブの軸方向の留め付けが必要である。これは、摩擦接続による手段、例えば、その拡張スリーブが追加的に突出部を備えることにより実現される。
【0027】
補完的な変形例においては、拡張スリーブは上方、座金のナットまで移動し、すなわち、それは締付け手段に載置される。そして、アンカーボルトが緩められたときに、拡張スリーブの軸方向の固定は、ドリル孔の壁と拡張スリーブとの間の摩擦によっては達成されず、拡張スリーブは、むしろ少なくとも1つの締付け手段、例えば座金に載置される。
【0028】
以下、本発明の実施例が図面を参照してより詳細に説明される。