特許第5959919号(P5959919)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959919
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】振動コンベア
(51)【国際特許分類】
   B65G 27/32 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
   B65G27/32
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-99787(P2012-99787)
(22)【出願日】2012年4月25日
(65)【公開番号】特開2013-227112(P2013-227112A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2015年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】503282194
【氏名又は名称】東京施設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】木山 勝之
(72)【発明者】
【氏名】落合 昭平
【審査官】 八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06308822(US,B1)
【文献】 国際公開第2004/067413(WO,A1)
【文献】 特開2011−084396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 27/00−27/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防振用部材を介して床面に設置されるベッドと、前記ベッドに加振用の板ばねを介して振動可能に連結したトラフと、前記ベッドに設置され前記トラフ上にあるワークを一定方向へ搬送する加振力を発生させる振動モータとを備えている振動コンベアであって、
前記ベッドに取り付けられて当該ベッドの振動状態を検出する振動検出手段と、該振動検出手段の出力信号に基づいて前記ベッドの振動を抑制するように前記振動モータの駆動を制御する制御手段とを有している、ことを特徴とする振動コンベア。
【請求項2】
前記振動検出手段は前記ベッドの振幅を検出するセンサを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の振動コンベア。
【請求項3】
前記制御手段は、前記振動モータの駆動を制御するインバータ回路と、該インバータ回路の周波数を前記出力信号に基づいて調整するコントローラとを含む、ことを特徴とする請求項1または2に記載の振動コンベア。
【請求項4】
前記コントローラは、前記振動検出手段からの前記出力信号による前記ベッドの振動を示す値が最小となるように、前記インバータ回路を介して前記振動モータを駆動するフィードバック制御を実行する、ことを特徴とする請求項3に記載の振動コンベア。
【請求項5】
前記出力信号について当該振動コンベアの振れが大きく危険となる所定の限界値が予め設定され、
前記コントローラは、前記出力信号が前記限界値を超えたことを確認したときに、危険防止の措置を実行する、ことを特徴とする請求項4に記載の振動コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラフを振動させ、このトラフ上の被搬送物(以下、ワークと称す)を一定方向へ搬送する振動コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
振動コンベアは、ワークを展開しながら、或いは、塊状となっているワークを解しながら一定の方向へ搬送することができるので、従来から色々な施設で広く使用されている。
振動コンベアは、例えば特許文献1に示すように、防振部材を介して床面に設置したベース部分(以下、ベッドと称す)、このベッドに加振用の板ばねを介して連結されるトラフ、更に加振機として機能するベースに配置した振動モータなどを備えて構成されている。そして、このような振動コンベアでは、振動モータを回転駆動したときにトラフに所定向きの振動を発生させてトラフ上のワークを搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−189380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
振動コンベアは、上記のように振動モータを駆動して、加振用の板ばねを介してトラフを振動させワークを搬送するもので、長時間に亘って運転される場合が多く、使用されている間に異常な振動が周辺に伝播したり、その振動に基づいて騒音が発生することなどもある。
そのため、振動コンベアは、上記のように防振部材を介して設置され、更に駆動モータが取付けられたベッドの振動を抑制しつつ、トラフには必要な振動が付与されるように調整して設置がされる。即ち、振動コンベアの初期設置の際には、振動コンベアを駆動したときに、設置面に無用な振動が発生しておらず、ベッドの振幅がゼロに近く、トラフだけが振動するように調整される。具体的には、振動コンベアの設置者が、例えば振幅測定器を用いてベッドの振幅を測定し、振動モータを駆動する。このとき振動モータに接続されているインバータ回路の値を人為的に操作して、周波数値を調整するというような作業が実施される。このように、従来にあっては振動コンベアの振動制御は、設置時に調整がなされ、その後は定期のメンテナンス時や個別の故障発生時など、適宜の対処がなされていた。
【0005】
そして、従来の振動コンベアには、次のような不都合が発生する場合があった。
1) 長時間稼働すると、板ばねが消耗することでばね定数が変化する。その結果、設置時に設定した最適な振動数が変化する。そのため、その都度保守をして、振動数が最適となるように再調整する作業が必要であった。
2) 運転中に振動コンベアにワークが付着してトラフの重量が変化するということが頻繁に発生する。このようにトラフの重量が変化したときも設置時に設定した最適な振動数が変化して、振動の異常、騒音の発生を誘発する。これに対処するには、常にトラフを清掃する、或いは、トラフの重量変化に応じて振動数を再調整する作業が必要となる。
3) 更に、振動コンベアは過酷な環境下で連続運転される場合も多い。そのため、加振用の板ばねを取付けているボルトが破損するなどの事態が発生することも頻繁にある。このようにボルトが破損した場合、急激に板ばねのばね定数が変化する。これにより、ベッドの大幅な振動を引き起こされる場合がある。そして、最悪の場合には、その大きな振動によって全ての板ばねが破損する事態に至る可能もある。
【0006】
上記のように、振動コンベアは仮に設置時に最適な状態に調整しても、その後の運転(使用)により状態が変化し易く、上記のようにその要因は多岐である。振動コンベアの円滑な運転を維持するため、上記の変化に適宜に対処するのは煩雑であり、その対処には時間とコストを要してしまう。
【0007】
よって、本発明の目的は、運転によって、振動の状態が変わることがあっても、これに対処してベッドの振動を極力抑制しながらトラフの必要な振動は維持をして、ワークを安定して搬送でき、合わせて異常な振動の発生も抑制できる振動コンベアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は、防振用部材を介して床面に設置されるベッドと、前記ベッドに加振用の板ばねを介して振動可能に連結したトラフと、前記ベッドに設置され前記トラフ上にあるワークを一定方向へ搬送する加振力を発生させる振動モータとを備えている振動コンベアであって、
前記ベッドに取り付けられて当該ベッドの振動状態を検出する振動検出手段と、該振動検出手段の出力信号に基づいて前記ベッドの振動を抑制するように前記振動モータの駆動を制御する制御手段とを有している、ことを特徴とする振動コンベアにより達成される(請求項1)。
【0009】
そして、前記振動検出手段は前記ベッドの振幅を検出するセンサを含むことができる(請求項2)。
また、前記制御手段は、前記振動モータの駆動を制御するインバータ回路と、該インバータ回路の周波数を前記出力信号に基づいて調整するコントローラとにより構成することができる(請求項3)。
【0010】
そして、前記コントローラは、前記振動検出手段からの前記出力信号による前記ベッドの振動を示す値が最小となるように、前記インバータ回路を介して前記振動モータを駆動するフィードバック制御を実行するのが望ましい(請求項4)。
【0011】
更に、前記出力信号について当該振動コンベアの振れが大きく危険となる所定の限界値が予め設定され、前記コントローラは、前記出力信号が前記限界値を超えたことを確認したときに、危険防止の措置を実行するようにするのが、より望ましい(請求項5)。
【発明の効果】
【0012】
本発明の振動コンベアは、ベッドの振動状態を検出する振動検出手段、この振動検出手段の出力信号に基づきベッドの振動を抑制するように振動モータの駆動を制御する制御手段を有しているので、運転(使用)に伴って振動コンベアの状態が変化しても、制御手段がこれに対応してベッドの振動を抑制するよう振動モータを制御する。よって、本発明の振動コンベアは、従来の振動コンベアのように人手を要さず、言わば自動調整を行い、常に安定した状態で振動コンベアを駆動できる。これと共に、トラフやベッドの振幅が異常に大きくなるような事態の発生も抑制できるので、本発明の振動コンベアは安定かつ安全な振動コンベアとして提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る振動コンベアの外観を示した斜視図である。
図2図1で示す振動コンベアの側面図である。
図3図1で示す振動コンベアのブロック構成図である
図4】ベッドおよびトラフに発生する振幅の変化による影響を説明するために示した図である。
図5】ベッドの振動抑制のための制御例を説明するための図で、周波数が異なる3点を設定して制御に用いる場合について説明する図である。
図6】コントローラが実行するフローチャート(その1)である。
図7】コントローラが実行するフローチャート(その2)である。
図8】コントローラが実行するフローチャート(その3)である。
図9】コントローラが実行するフローチャート(その4)である。
図10】コントローラが実行するフローチャート(その5)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る振動コンベア10の外観を示した斜視図、そして図2図1で示す振動コンベア10の側面図である。
振動コンベア10はベッド11を備えている。ベッド11は複数のフレーム部材により組み立てられており、下部側は弾性変形可能なコイルばね(防振用部材)12を介して設備の床面に配備してある。そして、ベッドの上部側には後述するトラフと平行に延在する一対の支持板13を備えている。
【0015】
振動コンベア10の上方位置には、ワークWを搬送する長尺で溝形状のトラフ20が配設されている。このトラフ20は上記支持板13の長手方向(ワーク搬送方向WDと平行)に延在しており、複数の加振用の板ばね(以下、加振ばね、と称する)21を介して、前記支持板13に支持されている。
各部をより詳しく説明すると、ベッド11は、前後に間隔も持って対向配置した1組の板状の支持板13を備えており、また各加振ばね21はリーフスプリングからなっている。加振ばね21はトラフ20の両側にて、図で示すように支持板13の長手方向に所定の間隔を存して配置され、その上下端がブラケット22、24のそれぞれを介してトラフ20及び支持板13に取り付けられている。なお、ここでは、1箇所に2枚ずつの加振ばね21を取付けた場合を例示し、この振動コンベア10では4箇所、計8枚の加振ばね21でトラフ20がベッド11と連結されている。
【0016】
そして、図から明らかなように各加振ばね21は所定の角度をもって傾斜し、支持板13の長手方向に隣接する加振ばね21は平行四辺形の互いに対向する二辺を形成している。なお、ここでは支持板13の長手方向で両端の2カ所に2枚1組とした加振ばね21を配置してある例を示すが、必要により適宜に、特にトラフ20の長さに応じて加振ばね21の配置箇所を増加すればよい。
【0017】
そして、ここで例示する構造では、支持板13の一端側(図1で左端側)を傾斜させて取付け板31が取り付けてある。この取付け板31には、ワークを一定方向へ搬送する力を発生させる振動モータ30が支持板13の前後一対で取り付けられている。これら振動モータ30はその回転軸が加振ばね21と平行となるように傾斜して取り付けられ、回転軸の両端に取付けられた偏心ウエイト(図示しない)の回転により、加振ばね21に対して直交する方向に加振力を発生する。より具体的には、振動モータ30はその加振力の作用線がトラフ20の重心を通過すべく配置されている。
【0018】
各振動モータ30が回転駆動されると、これら振動モータ30が発生する加振力は加振ばね21を介してトラフ20に伝達され、この結果、トラフ20が振動して、トラフ20上のワークWを一方向(搬送方向WD)に向けて搬送できる。
【0019】
以上で説明した基本構成は、従来の振動コンベアと大よそで同様であるが、本発明に係る振動コンベア10にあっては、下記にて説明する新規な構成を更に備えている。
更に図3を参照して説明する。図3は、図1、2で説明した構造を簡素化して示すと共に、更に特徴な構成も示した振動コンベアのブロック構成図である。
本発明の振動コンベア10は、ベッド11の振動状態を検出する振動検出手段40が取り付けられている。この振動検出手段は、ベッド11の振動状態を確実に検出できるセンサであれば、公知のものを適宜に選択して使用してよい。
ここで、ベッド11の振動状態を検出するためベッドの振幅に着目して、振幅の大小からベッド11の振動状態を判断するようにしてもよい。以下では、ベッドの振幅に基づきベッドの振動状態を判断する場合を例に説明する。この場合、ベッドの振幅を検出するセンサとして公知の変位センサ、加速度センサなどを適宜に選択して採用できる。例えば、レーザー式や渦電流式の変位センサや圧電素子を用いて加速度に応じた電気信号を出力する加速度センサなどを採用できる。但し、本振動コンベア用とする振幅を検出するセンサは、設置の簡易性、耐久性などを考慮して決定するのが好ましく、この点から、変位センサを採用するのがよい。
【0020】
上記振動検出手段40が検出するベッド11の振幅変化(振動状態)は、出力信号DPとして制御手段50に供給されている。具体的には、変位センサなどの振動検出手段40からのアナログ出力信号は、制御装置(制御手段)50へ供給されている。制御装置50は、例えばアナログ出力信号をデジタル化するアナログユニット45を備え、プログラマブル ロジック コントローラ(PLC、以下単にコントローラ51と称す)及びインバータ回路(INV)52を含んで構成されている。
【0021】
制御装置50は、上記出力信号DPに基づいて、ヘッド11の振動状態を確認し、その振動を抑制する。即ち、可能な限りベッド11の振幅が小さくなるように制御する。
上記インバータ回路52は、周波数を変更して振動モータ30の駆動を制御する電気回路であり、コントローラ51はこのインバータ回路52の周波数を調整することにより、ベッド11の振幅がゼロに近づくように制御する。そして、コントローラ51が出力信号DPの変化をその制御に反映しながら、ベッド11の振幅が最小となるように継続的に制御するフィードバック制御を実行するのが好ましい。
コントローラ51による制御の概略は次のような手法による。コントローラ51は、所定時間間隔をおいて、インバータ回路の周波数を異ならせて振動モータを駆動し、出力信号DPの値(ベッド11の振動を示す値)が減少する場合は同じ傾向(例えば、周波数を増加(+)させる傾向)を維持する。これとは逆に、前記出力信号DPの値が増加した場合は反対傾向(例えば、周波数を増加(+)から減少(−)させる)に反転させる。コントローラ51は、このような制御により、ベッド11の振動(振幅)がゼロに近い状態に維持されるようにする。
【0022】
なお、上記コントローラ51は、CPU(Central Processing Unit)やメモリを備えたいわゆるマイクロコンピュータであり、メモリに予め格納した所定のプログラムに基づいて、上記のようにベッド11の振動が最小となるように振動モータを制御する。
また、図3で示すように、制御装置50のコントローラ51には表示器を接続して、ベッドの振動制御の状態を視覚的に示すグラフや表を表示するようにしてもよい。
【0023】
ところで、本願発明に係る振動コンベアは、いわゆる動吸振器(ダイナミックダンパー:dynamic dampers)の構造を内包している。動吸振器は、振動する機械系に、質量、ばね、ダンパー系を付加することにより、固有振動数周辺での共振現象を抑制するようにした構造である。本発明の振動コンベアは、この動吸振器構造を利用して、コントローラがベッドを制震しつつ、トラフだけが振動するように、インバータ回路を介して振動モータを駆動制御する。
動吸振器として振動コンベアを見た場合、下記の式(1)が適用されることになる
ω(固有振動数)=√(k(板ばねの定数)/M(トラフの質量))・・・・(1)
【0024】
上記式(1)で、固有振動数ωはベッド11の振動(振幅)がゼロに近い状態にあり、トラフ20のみが振動する最適な振動数である。振動コンベアの設置時には、初期状態の板ばね及びトラフ重量に対して、最適な振動(すなわち、ベッドが振動せず、トラフだけが振動する状態)が生じるように振動モータの回転数(最適振動数)が設定されることになる。
しかし、前述したように、振動コンベアは長期の運転によって、板ばねが疲労、摩耗等する。また、短期の運転ではトラフにワークの一部が付着したり、更には重量が大きなワークを搬送した後に、軽いワークを搬送するといような場合もある。このような場合、上記ばね定数kやトラフ質量Mが変化する。この変化は、ベッドおよびトラフの振幅の変化となって現れることになるので、先に指摘した問題が生じている。
【0025】
図4は、振幅の変化による影響を説明するために示した図であり、図4(a)は振動モータの回転数(N)700で、ベッド振幅0(ゼロ)かつトラフ振幅16であり、初期設置直後の最適な状態を示したグラフである。これに対して、図4(b)は例えばトラフの重量が増加した場合であり、回転数(N)700をそのまま維持して駆動させたときである。振動モータの回転数(N)は同じ700であるが、ベッド振幅は図4(b)で示すスケール10を大きく上側へ超えて29、かつトラフ振幅もスケール30を下側へ大きく超えて振幅77となった。このような事態では、トラフおよびベッドの振れが急激に大きく、危険な状態となる。また、板ばねはその動きに耐えられず破損する可能性もある。
本発明の振動コンベアでは、コントローラ51がベッド11の振動を抑制するように制御するので上記で指摘した稼働後の振動コンベアの変化に自動的に対応できる。
【0026】
下記では、実際に振動コンベア10におけるベッド11の振動抑制のために採用できる制御の具体例を詳細に説明する。
例えば、振動コンベアの設置時にインバータ回路の最適な周波数は、振動コンベアの構成条件などから大よそ予想できるので、その振動モータの予想最適振動数も特定できる。よって、その予想最適振動数および、その前後近傍に振動モータの振動数を定めて、ベッドの振動抑制に活用する。例えば、図5で示すように、予想最適振動数に対応する点から僅かに上下(前後)する点を順次に定めて運転をして、それぞれでのベッド振幅を前記振動検出手段の出力信号から読み取る。その中で、ベッド振幅が少ない周波数を選んで振動モータを駆動するという制御を実行する。
ところで、上記予想最適振動数は計算上(理論上)から算出して得られるものであり、実際に振動コンベアを設置して運転をしたときの最適振動数(実際の最適振動数)から僅かではあるが、ずれる(異なる)というのが通常である。本振動コンベアにおける制御では、最初に基準とするために設定する周波数S0は、上記予想最適振動数に対応する予想最適周波数よりも下側で、この予想最適周波数値に近い値とするのが好ましい。
【0027】
コントローラ51による制御では、図5で例えば仮に右側に選択された3点S0、S1、S2は徐々に左側に移動して、最終的に振幅の最も少ない点S0が中心となり、変化してもその前後S1、S2による振幅に制御される。同様に、仮に左側に選択された3点S0、S1、S2は徐々に右側に移動して、最終的に振幅の最も少ない点S0が中心となり、変化してもその前後S1、S2による振幅に制御される。
【0028】
振動コンベア10のコントローラ51により実行される制御の一例をより詳細に説明する。図6(その1)〜図10(その5)は、図5で示している制御手法を用いて、コントローラ51が実行する一連の制御例を示したフローチャートである。コントローラ51は、振幅を検出するセンサ(振動検出手段40)が検出するベッドの振幅がゼロに近づくように、インバータ回路52を介して振動モータ30を制御する。
コントローラ51は、例えば振動コンベア10が設置され、運転が開始されたときに、このフローチャートを起動させる。コントローラ51は、振動コンベア10の運転に際し、予め定めた運転開始時の運転周波数S0、運転周波数変更値H0、振幅値測定時間T0、そして振幅異常検出値VAのそれぞれについて初期設定をし(ステップS1)、続いて、これらをデータとして設定して(ステップS2〜S5)、振動コンベア10の運転をする(ステップS6)。
なお、上記の運転周波数S0は、前述したように、振動コンベアの設置時などで確認できる振動モータの予想最適振動数を生じさせる予想最適振周波数に基づきその近傍でこれよりも小さい値とされる。また、上記の運転周波数変更値H0は最初の運転周波数S0から、次ぎの運転周波数S1、及び、その次ぎの運転周波数S2を定めるため予め設定されるもので、この運転周波数変更値H0は、例えば0.1〜0.3Hzの振動変化が振動コンベア機能に影響を及ぼさないように定めるのが好ましい。
更に、振幅値測定時間T0は振動モータの回転を安定させるために定めた時間であり、例えば5秒前後でよい。そして、振幅異常検出値VAは、周辺の安全確保、振動コンベアの破損防止の観点から例えば振幅0.5〜1.0mmとするのが好ましい。
【0029】
コントローラ51は、振動コンベアの運転後、振幅測定時間T0が経過したときに(ステップS8)、運転周波数S0において振動検出手段40からの出力信号によりベッドの振幅V0を測定(検出)し、これを確認し第1の振幅データDV0とする(ステップS9)。
【0030】
ここで、コントローラ51は、上記のように取得した第1の振幅データDV0を得た後の制御は、予め記憶されている方向(+あるいは−)を選択するステップとなる。ただし、方向記憶がない場合は+方向を選択する(ステップS10〜S12)。
この点を、再度図5を用いて説明すると、例えば運転周波数S0が図5で左側の領域(−の領域)に在るとした場合には、次の運転周波数S1は振幅が小さくなる右向き(+方向)に設定することになる。この場合はステップS10となる。これとは逆に、例えば運転周波数S0が図5で右側の領域(+の領域)に在るとした場合には次の運転周波数S1は振幅が小さくなる左向き(−方向)に設定することになる。この場合はステップS12となる。
なお、上記運転周波数S0が仮に図5でちょうど底(最低の振幅値)となった場合は、右向き(+方向)の場合と同様に処理するように設定してある(ステップS11)。そして、ここで示すフローチャートは、振動コンベアが運転停止されなければ、図10(その5)で示すステップS54から図6(その1)のステップS7に戻って、繰り替えされる。コントローラ51は、運転の開始時にて最初に設定する運転周波数S0については(+−なし)として、ステップS11を介して処理する。
【0031】
上記図6(その1)で、右(+(プラス))方向へ向けた振動抑制の制御とされた場合(ステップS10)は、図7(その2)に進む。そして、上記図6(その1)で、左(−(マイナス))方向へ向けた振動抑制の制御とされた場合(ステップS12)は、図8(その3)に進む。
【0032】
図7で示すフローチャートは、先の周波数S0による振幅より、次の周波数S1の振幅が小さくなる、つまり図5で左側領域にあった周波数Sが底に近づくように制御されるときの様子を示している。
図7では、コントローラ51は、次の点のベッド振幅を測定する。コントローラ51は上記運転周波数S0に上記運転周波数変更値H0を加算して、次ぎの運転周波数S1を設定して(ステップS13)、その後は前記と同様に処理して、運転周波数S1において振動検出手段40からの出力信号によりベッドの振幅V1を測定し、これを確認して第2の振幅データDV1とする(ステップS14〜S16)。
【0033】
ここで、コントローラ51は、上記のように測定した振幅値が振幅異常検出値VA以下で異常がないことを確認する(ステップS17、18)。ここで、仮に、測定したベッド振幅が振幅異常検出値VAより大きな場合は(ステップS18)、危険防止のため振動コンベアが停止される(ステップS58)。
【0034】
コントローラ51は、第1の振幅データDV0の場合と同様、上記のように取得した第2の振幅データDV1が、マイナス(−)の領域側にありプラス(+)方向への制御を維持すべきかを確認する(ステップS19)、ここで仮に方向記憶が(+−なし)であった場合は制御する方向を反転すべく図8(その3)に進む(ステップS20)。
コントローラ51は、測定された2つの振幅のどちら最小であるかの確認をし(ステップS21)、最小のベッド振幅となるインバータの運転周波数(DS0、DS1のいずれか)が新たにS0として設定される(ステップS22〜S26)。なお、このときに、新たなベッド振幅が大きくなった場合は制御する方向をクリアする(ステップS26)。
【0035】
図8(その3)で示すフローチャートは、先の図6のステップS12、或いは先の図7のステップS20に続く制御である。この図8で示すのは、図5で左側であった周波数Sを前述したような制御により振幅値を順次に小さくし、その後に底(最少値)を超えてプラス(+)の領域側に入り、振幅が増加したとき、これを反転させてマイナス(−)方向とする制御である。図7で示したフローチャートとは、制御する方向が(+−)が逆であるが、振幅を小さくするための制御としては、同じ意図の処理を実行している。
【0036】
図8について説明すると、コントローラ51は運転周波数S0から運転周波数変更値H0を減算して、次ぎの運転周波数S2を設定して(ステップS27)、その後は図7の場合と同様に処理する。コントローラ51は運転周波数S2において振動検出手段40からの出力信号によりベッドの振幅V2を測定し、これを確認した第3の振幅データDV2とする(ステップS28〜S30)。この処理は、周波数S0の場合より周波数S1の場合の方が、振幅が増したので、周波数S0から周波数S1へ実行していた(+方向)への制御を、反転させて、周波数S0から周波数S2へ(−方向)への制御に切り替えたものである。
【0037】
その後、コントローラ51は同様に危険防止の措置を実行して(ステップS31,32)する。次に第3の振幅データDV2を得たとき、方向記憶が(+−なし)であった場合(ステップS33)、測定された3つの振幅のいずれが最小であるかの確認をし(ステップS35)、最小のベッド振幅となるインバータの運転周波数(DS0、DS1、DS2のいずれか)が新たにDS0として設定される(ステップS39〜S44)。このとき周波数DS1が新たに周波数DS0となった場合は(+)方向に記憶を設定する。これが周波数DS2であった場合は(−)方向に記憶を設定し、また周波数DS0であったら(+−)方向クリアとする。
そして、取得した第3の振幅データDV2が、マイナス(−)の領域側にありプラス(+)方向への制御が必要であることが確認された場合(ステップS34)、図9(その4)における制御が実行される。この図9による制御は、プラス(+)の領域側にある周波数S0,S2をマイナス(−)方向へ向ける制御となる(ステップS45〜50)。なお、このときに、新たなベッド振幅が大きくなった場合は制御する方向をクリア(ステップS50)する。
【0038】
そして、図10(その5)で示すように、コントローラ51は前述したような制御で測定されたいずれの振幅が最小であるかの確認をし、最小のベッド振幅となるインバータの運転周波数(DS0、DS1、DS2のいずれか)を新たにS0として設定して、これに応じた各データが変更される(ステップS51〜S53)。
そして、新たに設定された運転周波数S0により、前述した制御が繰り返されるので(ステップS54)、図6図10で示すフローチャートに基づくと、ベッド振幅を測定(検出)し、この振幅が最小となるようにすることでベッドの振動を抑制するフィードバック制御が実行される。
【0039】
上述した制御は、通常、別途にて運転停止の信号が発されて運転停止される(ステップS55〜S59)以外は、運転が維持される。よって、振動コンベアが一旦、稼働された後は、コントローラ51がベッドの振幅を監視して、その振幅が最小となるように振動モータの駆動が制御され続ける。よって、従来のように稼働後に色々な要因でベッドやトラフの振動条件が変化しても、ヘッド振動を抑制しながらトラフを振動させることができる。このような制御を行っていれば、ヘッドやトラフが異常に振動することがないので安定してワークを搬送でき、更には原則として異常な振幅の発生により破損が生じる心配もない。
【0040】
更には、この振動コンベアでは、測定されたベッドの振幅が、例外的な要因で異常検出値VAを超えたような場合には、コントローラ51が振動コンベアを速やかに停止するように危険防止の措置が設定してあるので(ステップS18、S32)、より安全な振動コンベアとすることができる。
【0041】
以上で説明したように、本発明に係る振動コンベアは、運転により振動状態が変わるような種々の要因があっても、これに自動的に対処して、ベッドの振動を極力抑制しながらトラフの振動を維持してワークを安定的に搬送できる。また、これと合わせて振動コンベアの異常発生も抑制できる。
このような本発明の振動コンベアによれば、従来の振動コンベアで問題が大きかった下記の点が大幅に改善される。すなわち、振動コンベアの状態変化にオンタイムで対処するので、定期的な保守作業の頻度を抑制できる。トラフに付着物が付着したとき、除去したときトラフ重量の変化に自動的に対処できる。仮に板ばねの破損、脱落が発生しても、運転可能な状態であれば制御手段により維持され、運転が不可能な場合は停止されるので、必要なときに対処すればよい。
【0042】
その他、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0043】
10 振動コンベア
11 ベッド
12 コイルばね(防振用部材)
13 支持板
20 トラフ
21 加振ばね(板ばね)
30 振動モータ(加振原)
40 振動検出手段
45 アナログユニット
50 制御装置(制御手段)
51 コントローラ
52 インバータ回路
W ワーク
WD 搬送方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10