特許第5959930号(P5959930)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959930
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】保持装置及び保持方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
   H01L21/68 N
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-114464(P2012-114464)
(22)【出願日】2012年5月18日
(65)【公開番号】特開2013-243204(P2013-243204A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2015年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101188
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 義雄
(72)【発明者】
【氏名】坂本 和紀
【審査官】 西出 隆二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−036599(JP,A)
【文献】 特開2007−276065(JP,A)
【文献】 特開2003−039200(JP,A)
【文献】 実開昭63−148657(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状部材の被保持面に当接して当該被保持面を吸引することで前記板状部材を保持する保持装置であって、
前記板状部材を保持する保持面を有するテーブルと、
前記被保持面の表面形状に追従して弾性変形した状態で当該被保持面を吸引可能な当接面を有する弾性部材からなる当接手段と、
前記当接面に吸引力を付与する吸引力付与手段と
前記当接面に連続する側面に配置された通気防止手段とを含み、
前記当接手段は、前記当接面が前記保持面から突出した位置で前記被保持面に当接可能に設けられ、前記吸引力付与手段によって吸引力が付与されたときに、前記当接面で前記被保持面を吸引するとともに、前記当接面が前記保持面と略同一面内に位置して前記板状部材を前記保持面に引き付けて保持可能に設けられ
前記通気防止手段は、前記被保持面に密着して当接面に付与した吸引力が漏れることを防止することを特徴とする保持装置。
【請求項2】
前記板状部材の吸引時に、前記通気防止手段の上端が前記保持面と同一高さとなるように摺動可能に設けられていることを特徴とする請求項1記載の保持装置。
【請求項3】
板状部材の被保持面に当接して当該被保持面を吸引することで前記板状部材を保持面に保持する保持方法であって、
前記被保持面の表面形状に追従して弾性変形した状態で当該被保持面を吸引可能な当接面を有する弾性部材からなる当接手段と、前記当接面に連続する側面に配置された通気防止手段とを用い、
前記当接面を前記保持面から突出させた状態とする工程と、
前記被保持面を前記当接面に当接させる工程と、
前記被保持面に密着して前記当接面に付与した吸引力が前記側面から漏れることを防止しつつ前記当接面に吸引力を付与することで前記被保持面を吸引する工程と、
前記当接手段を弾性変形させて前記当接面を前記保持面と略同一面内に位置させて前記板状部材を前記保持面に引き付けて保持する工程とを含むことを特徴とする保持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は保持装置及び保持方法に係り、更に詳しくは、板状部材を吸引して保持する際に、当該板状部材の被保持面に凹凸、段差、傾き等があっても確実に吸引力を付与して保持することのできる保持装置及び保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ(以下、単に、「ウエハ」と称する場合がある)や、基板等の板状部材は、テーブル等の保持装置に保持された状態で表面に種々の処理が施される。このような処理に際して用いられる保持装置は、テーブルの保持面に多孔質の部材を介して板状部材を吸引できるようにした吸引構造が採用されている。
特許文献1には、表面に凹凸を有する板状部材(基板)を保持することのできる多孔質のホルダーを含む吸引構造を備えた保持装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−36599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された保持装置にあっては、ロックユニットで板状部材がその面方向に移動することを抑制できるものの、ホルダーが弾性変形するので、板状部材がその面方向に交差する方向に移動することを抑制することができない、という不都合がある。
従って、例えば板状部材を薄く研削するような場合、研削後の板状部材に厚みの斑ができてしまう、という不都合を招来する。
【0005】
[発明の目的]
本発明の目的は、弾性部材で板状部材を保持しながらも、当該板状部材をその面方向に交差する方向への移動を抑制して保持することのできる保持装置及び保持方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、板状部材の被保持面に当接して当該被保持面を吸引することで前記板状部材を保持する保持装置であって、前記板状部材を保持する保持面を有するテーブルと、前記被保持面の表面形状に追従して弾性変形した状態で当該被保持面を吸引可能な当接面を有する弾性部材からなる当接手段と、前記当接面に吸引力を付与する吸引力付与手段と、前記当接面に連続する側面に配置された通気防止手段とを含み、前記当接手段は、前記当接面が前記保持面から突出した位置で前記板状部材の被保持面に当接可能に設けられ、前記吸引力付与手段によって吸引力が付与されたときに、前記当接面で前記被保持面を吸引するとともに、前記当接面が前記保持面と略同一面内に位置して前記板状部材を前記保持面に引き付けて保持可能に設けられ、前記通気防止手段は、前記被保持面に密着して当接面に付与した吸引力が漏れることを防止する、という構成を採っている。
【0008】
また、本発明は、前記当接手段を加熱する加熱手段を更に含む構成とすることができる。
【0009】
更に、前記板状部材を前記当接面に押し付ける押付手段を備えた構成とすることができる。
【0010】
また、本発明は、板状部材の被保持面に当接して当該被保持面を吸引することで前記板状部材を保持面に保持する保持方法であって、前記被保持面の表面形状に追従して弾性変形した状態で当該被保持面を吸引可能な当接面を有する弾性部材からなる当接手段と、前記当接面に連続する側面に配置された通気防止手段とを用い、前記当接面を前記保持面から突出させた状態とする工程と、前記被保持面を前記当接面に当接させる工程と、前記被保持面に密着して前記当接面に付与した吸引力が前記側面から漏れることを防止しつつ前記当接面に吸引力を付与することで前記被保持面を吸引する工程と、前記当接手段を弾性変形させて前記当接面を前記保持面と略同一面内に位置させて前記板状部材を前記保持面に引き付けて保持する工程とを含む、という手法を採っている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、弾性変形可能な当接面で板状部材の被保持面を吸引しつつ、当該被保持面をテーブルの保持面で保持可能に設けられているので、弾性部材で板状部材を保持しながらも、当該板状部材がその面方向に交差する方向に移動することを抑制して保持することができる。
また、前記当接面に連続する側面に通気防止手段を設けたことで、閉塞した空間内に当接面を位置させることができ、当接面と被保持面との間から吸引力が漏れるおそれを回避することができる。
更に、加熱手段を設けて当接手段を加熱する構成とすれば、当接手段並びに通気防止手段を変形し易くすることができ、被保持面の形状に難なく追従させることができる。
また、押付手段を備えた構成により、当接面での被保持面の吸引と、当接面がテーブルの保持面と略同一面内に位置する作用とを補助することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る保持装置の平面図。
図2】前記保持装置の全体構成を示す図1のA矢視断面図。
図3】保持装置の要部断面図。
図4】被保持面に凹凸、傾斜がある場合の保持装置の要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
なお、本実施形態において基準となる図を挙げることなく、例えば、上、下、左、右、または、前、後といった方向を示した場合は、全て図2を正規の方向(付した番号が適切な向きとなる方向)から観た場合を基準とし、上、下、左、右方向が紙面に平行な方向であり、前が紙面に直交する手前方向、後が紙面に直交する奥方向とする。
【0014】
本実施形態における板状部材としてのウエハWFは、例えば、図2に示されるように、外周に円環状の補強部11と、その内側に薄肉部12とを備え、当該補強部11における下面側が被保持面11Aとされる。
【0015】
前記保持装置10は、図1及び図2に示されるように、ウエハWFを保持する保持面(上面)15を有するテーブル16と、保持面15内に設けられるとともに、被保持面11Aの表面形状に追従して弾性変形した状態で被保持面11Aを吸引可能な当接面(上面)18を有する弾性部材からなる当接手段20と、当接面18に吸引力を付与する減圧ポンプや真空エジェクタ等の吸引力付与手段24と、当接面18に連続する側面に配置され、被保持面11Aに密着して当接面18に付与した吸引力が漏れることを防止する通気防止手段22と、当接手段20を加熱する加熱手段25と、ウエハWFを当接面18に押し付ける押付手段27とを備えて構成されている。
【0016】
前記テーブル16は、本実施形態では、変形不能に設けられるとともに、平面視方形の外形に設けられ、内部にチャンバ36を備えている。保持面15には、円環状の凹溝32が設けられており、図2に示すように、当該凹溝32内に当接手段20が収容されている。凹溝32の底部には、チャンバ36に連通する貫通孔34が形成されている。また、チャンバ36には、テーブル16の底面に開通する底部貫通孔37が形成され、当該底部貫通孔37には吸引力付与手段24が接続されている。また、テーブル16の中央部には、テーブル16の1つの側面に開口した通気口30が設けられている。
【0017】
前記当接手段20は、孔が相互に繋がったスポンジ、樹脂等の多孔質の弾性部材により構成されており、凹溝32内に収まる円環状に構成されている。当接面18は、その幅が被保持面11Aの幅よりも小さく設定され、被保持面11Aからはみ出すことのない平面形状若しくは大きさに設けられている。また、当接手段20は、負荷を与えない状態において、当接面18が保持面15から上方に突出した位置となるように設けられ、吸引力付与手段24によって吸引力が付与されたときに、当接面18で被保持面11Aを吸引するとともに、弾性変形(縮形)して当接面18がテーブル16の保持面15と略同一面内に位置してウエハWFを保持面15に引き付けて保持可能に設けられている。
【0018】
前記通気防止手段22は、ゴムや樹脂等のリング状の弾性体により構成され、当接面18に連続する内周側の側面に設けられた内周リング部材22Aと、外周側の側面に設けられた外周リング部材22Bとを備えている。内、外周リング部材22A、22Bは、その上端が当接面18と同一高さとされ、負荷を与えない状態において、凹溝32内に収まる高さに設定され、凹溝32に摺動可能に設けられている。なお、通気防止手段22と当接手段20とは、加熱されたときに弾性変形が促進される材料を用いることが好ましい。
【0019】
前記加熱手段25は、内周リング部材22Aの内周に沿って配置された内側コイルヒータ25Aと、外周リング部材22Bの外周に沿って配置された外側コイルヒータ25Bとからなり、図示しない温度調節器を介して加熱可能に設けられている。
【0020】
前記押付手段27は、図示しない減圧ポンプや真空エジェクタ等の減圧手段が接続された下面側が吸引面とされた吸引プレート40と、吸引プレート40をその出力軸42で支持し、当該吸引プレート40を上下方向に移動可能にする駆動機器としての第1直動モータ41と、第1直動モータ41をそのスライダ44で支持し、当該第1直動モータ41を左右方向に移動可能にする駆動機器としての第2直動モータ45とにより構成されている。
【0021】
次に、本実施形態におけるウエハ保持方法について、図3及び図4をも参照しながら説明する。
【0022】
押付手段27が図示しない減圧手段を駆動し、ウェハWFを吸引プレート40で吸引保持した後、第2直動モータ45を駆動し、図2に示されるように、テーブル16の上方にウエハWFを搬送する。
【0023】
このとき、加熱手段25が内、外側コイルヒータ25A、25Bに通電し、伝導熱により通気防止手段22及び当接手段20が弾性変形し易い状態に保たれる。
【0024】
次いで、押付手段27が第1直動モータ41を駆動し、ウエハWFの被保持面11Aが当接面18に接する位置までウエハWFを下降させた後、図示しない減圧手段を停止し、ウエハWFの被保持面11Aを当接面18に当接させて載置する。そして、吸引力付与手段24が図示しない減圧ポンプや真空エジェクタ等を駆動し、ウエハWFを吸着保持する。このとき、当接面18は、被保持面11Aと内周リング部材22Aと外周リング部材22Bとで囲まれた領域内に位置して閉塞された状態となり、吸引力を漏らすことなく被保持面11Aに密着されることとなり、ウエハWFを吸引保持することとなる。その後、図3に示すように、当接手段20は、吸引力付与手段24の吸引力によって、当接面18がテーブル16の保持面15と略同一面内に位置してウエハWFを保持面15に引き付けて保持することとなる。これにより、当接面18でウエハWFを保持しながらも、当該ウエハWFの被保持面11Aを変形不能な保持面15に引き付け、ウエハWFがその面方向に交差する方向に移動することを抑制して保持することができる。そして、押付手段27が第1直動モータ41及び第2直動モータ45を駆動し、吸引プレート40を初期位置に移動させる。
【0025】
ここで、図4に示されるように、被保持面11Aに凹凸11Bや、外周側の部分的な欠け等による傾斜面11Cがある場合には、当接手段20に吸引力が作用したときに、当接面18が凹凸11Bや傾斜面11Cの形状に追従して変形し密着する。同時に、内、外周リング部材22A、22Bの上端も凹凸11Bや傾斜面11Cに追従して変形し密着する。凹凸11Bは、特に限定されるものではないが、例えば、傷や割れ等1〜1000μm位のものが例示できる。
【0026】
従って、このような実施形態によれば、ウエハWFがその面方向に交差する方向に移動することを抑制して保持することができ、例えば、当該ウエハWFを薄く研削するような場合であっても、研削後のウエハWFに厚みの斑ができてしまうといった不都合を解消することができる。
【0027】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施形態に対し、形状、位置若しくは配置等に関し、必要に応じて当業者が様々な変更を加えることができるものである。
【0028】
例えば、前記実施形態では、当接手段20に吸引力を付与してウエハWFの被保持面11Aを保持面15に引き付ける構成としたが、当接手段20に吸引力を付与する前後の段階で、押圧手段27がウエハWFを下方に押し下げる構成としてもよい。
【0029】
また、当接手段20は、被保持面11Aに対応する位置に散点的に配置してもよい。また、当接手段20は、保持面15上の1点を中心とする複数の同心円上に設けることもできる。また、当接手段20は、下方部分を上方部分とは別の弾性部材で構成したり、当該下方部分を構成する弾性部材をばね等の弾性部材で構成したりしてもよい。更に、当接手段20は、多孔質でなく単数の孔からなる単孔質でもよい。
【0030】
更に、通気防止手段22は、孔が相互に繋がっていない独立気泡型の多孔質の部材により構成してもよい。
【0031】
また、ウエハWFは、シリコン半導体ウエハや化合物半導体ウエハ等の半導体ウエハが例示できる。保持対象としては、ウエハWF以外に光ディスクの基板、ガラス板、鋼板、樹脂板、基板等や、その他の部材のみならず、任意の形態の部材や物品等も対象とすることができ、テーブルを保持する構成としても適用可能である。
更に、板状部材は、前記実施形態のように外周に円環状の補強部11が形成されたもの以外に、補強部11が形成されていないフラットなもの、つまり、底面が平坦な面で形成されたものであってもよい。
【0032】
また、前記実施形態における駆動機器は、回動モータ、直動モータ、リニアモータ、単軸ロボット、多関節ロボット等の電動機器、エアシリンダ、油圧シリンダ、ロッドレスシリンダ及びロータリシリンダ等のアクチュエタ等を採用することができる上、それらを直接的又は間接的に組み合せたものを採用することもできる(実施形態で例示したものと重複するものもある)。
【0033】
加熱手段25は、コイルヒータ以外に、温風や温水、放電加熱機、赤外線加熱機等によって構成されてもよい。
【符号の説明】
【0034】
10 保持装置
11A 被保持面
15 保持面
16 テーブル
18 当接面
20 当接手段
22 通気防止手段
24 吸引力付与手段
25 加熱手段
27 押付手段
WF 半導体ウエハ(板状部材)
図1
図2
図3
図4