【実施例】
【0018】
以下、
図1〜9に示す実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0019】
図1に示す組立後の状態の斜視図から知られるように、実施例のエンジンマウント10は、左右一対の挟圧部材1と、この挟圧部材1が組み付けられている外枠ブラケット2と、この外枠ブラケット2に下方から組み付けられて外枠ブラケット2とともに外筒部を形成する基台ブラケット3と、基台ブラケット3に下方から組み付けられているベース板4と、外筒部中に嵌め込まれているゴム弾性体5とからなる。内筒6は、ゴム弾性体5の成形時のインサート成形により加硫接着されている。なお、図面には、エンジンの重量による荷重が加わる前の状態を示す。
【0020】
図2は、実施例のエンジンマウント10の要部を示す水平方向断面図である。
図2は、
図3の背面図(厳密には、軸方向からわずかに上方から見た斜視図)中に示すように、ゴム弾性体5の左右の脚部51における、外枠ブラケット2の内面へと接するように突き出す箇所にて切断した断面図である。この図に示されているように、ゴム弾性体5における左右の脚部51の外側部分52が、それぞれ左右の挟圧部材1により軸方向に押圧され、この結果、脚部51の内側部分53が軸方向に膨出している。
図1,
図3及び
図5から知られるように、内筒6と同じ高さ位置に設けられた左右の横ストッパ凸部54も、脚部51の外側部分52を押圧する挟圧部材1により軸方向から押圧されている。このようにして、ゴム弾性体5における左右方向外側部分52,54が、いずれも挟圧部材1によって押圧されることにより、効果的な予圧縮による初期バネ定数の向上が実現されている。
【0021】
なお、図示の実施例では、ゴム弾性体5の軸方向の厚みが全体にわたって均等であり、かつ、挟圧部材1における挟圧板部11間の間隔が均等である。ところが、車両への装着時に、脚部51は上下方向の圧縮により軸方向へも膨出する。そのため、車両への装着時には、脚部51の外側部分52が、横ストッパ凸部54よりも、軸方向への、より大きい応力が作用することとなる。したがって、脚部51の外側部分52での予圧縮の程度、及びその効果が、横ストッパ凸部54におけるよりも大きい場合が多いと推測される。しかし、横ストッパ凸部54は、予圧縮の程度が比較的小さいとしても、より内筒6に近い。そのため、横ストッパ凸部54の挟圧による初期バネ向上の効果は、脚部51の外側部分52に比べてそれほど小さくない場合が多いと推測される。
【0022】
以下、実施例のエンジンマウント10の具体的な構成について、順に説明する。
図4には、外枠ブラケット2と、これに組み付けられた一対の挟圧部材1とを示す。この図に示されるように、外枠ブラケット2は、全体が、下方に開いたコの字状であり、水平の天井部25と、その両端から垂直下方へと延びる左右の垂直壁26と、この下端から左右方向外側へと向かって水平に突き出す締結端部23とからなる。図示の具体例で、締結端部23と垂直壁26との間の角部には、補強リブ24が板金加工により設けられている。
【0023】
各垂直壁26の上半部には、両縁に、削り取り部21が設けられている。すなわち、この箇所で、垂直壁26の幅(エンジンマウントの軸方向の寸法)が小さくなっている。そして、この箇所に、左右方向内側へと開いたコの字状の挟圧部材1が、左右方向外側から嵌め込まれている。すなわち、挟圧部材1は、垂直壁26に重ねあわされるベース部13と、この両端から左右方向に延びる挟圧板部11とからなり、これらの間の屈曲部が削り取り部21に係合している。挟圧板部11は、図示の具体例で、上下方向に長い長方形状である。一方、このベース部13の下端には、係合段部12が形成され、垂直壁26の係合段部22を覆うように嵌め付けられている。この様子は、エンジンマウント10を軸方向にて等分するように切断した断面図である
図5にも示されている。
【0024】
削り取り部21の箇所以外、すなわち、挟圧部材1が組み付けられる箇所以外において、外枠ブラケット2をなす細い板材の幅(軸方向寸法)は均一であり、基台ブラケット3をなす細い板材の幅(軸方向寸法)とも同一である。一方、ゴム弾性体5は、軸方向寸法が全領域にわたって均一であり、外枠ブラケット2及び基台ブラケット3の軸方向寸法と、同一である。これらの結果として、各挟圧部材1における挟圧板部11間の間隔は、ゴム弾性体5の軸方向寸法よりも、削り取り部21による削り取りの寸法だけ小さい。そのため、ゴム弾性体5を、
図4に示す状態の、挟圧部材1付の外枠ブラケット2中に差し込んだ際には、ゴム弾性体5が、挟圧部材1の挟圧板部11間の箇所で、
図2に示すように軸方向に圧縮される。
【0025】
但し、
図6の平面図に示すように、削り取り部21による削り取りの寸法、すなわち、挟圧板部11がゴム弾性体5に食い込む寸法は、挟圧部材1をなす板材の厚みの約半分である。なお、図示の具体例において、挟圧部材1、基台ブラケット3及びベース板4のいずれも、同一の厚みの金属板を打ち抜いて作製されたものであり、外枠ブラケット2のみ、これらの約1.3倍の厚みの金属板から作製されたものである。一方、図示の具体例で、
図1及び
図5などに示されるように、基台ブラケット3は、外枠ブラケット2の左右の垂直壁26の下半部に、狭い間隔を挟んで重ね合わされる左右の垂直壁33と、この上端同士の間に掛け渡された外筒部の凹陥状床部31とからなる。この凹陥状床部31は、中央の底部35と、この両端から左右に延びる傾斜板部34と、左右端の水平板部36とからなる。
【0026】
次に、
図7及び
図8の斜視図を用いて、ゴム弾性体5の具体的な構成について説明する。図示の具体例において、ゴム弾性体5は、内筒6の径のほぼ2倍の、内筒6を取り囲む部分としての内筒保持部55と、この内筒保持部55から斜め下方へと延びる左右の脚部51と、これら脚部51の下端部同士をつなぐ底部59と、内筒保持部55から左右方向へと突き出す左右の横ストッパ凸部54とからなる。
図5に示されるように、脚部51は、外側へと向かって広がっており、概略、内筒保持部55から基台ブラケット3の傾斜板部34へと延びる内側部分53と、これより左右方向外側にある外側部分52とからなる。この外側部分52は、下端面が基台ブラケット3の水平板部36に突き当てられるとともに、左右方向外側を向く端面が、外枠ブラケット2の垂直壁26に突き当てられる。図示の具体例において、脚部51の左右方向外側の端部は、水平板部36の外側端から外側へと突き出すとともに、先端面の上端の箇所で外枠ブラケット2の係合段部22に係合して固定されている。したがって、脚部51の左右方向外側部分52は、基台ブラケット3と、外枠ブラケット2との間で振動を吸収する作用も行う。
【0027】
横ストッパ凸部54は、左右方向への大変形時に、外枠ブラケット2の左右の垂直壁26に突き当てられてストッパー作用を行うものであり、図示の例では、軸方向に長い直方体状であって、左右方向の突起寸法が上下方向寸法より小さい。横ストッパ凸部54の直方形の先端面には、正方形状に、わずかに突き出す突き当て用突起56が形成されている。突き当て用突起56は、外枠ブラケット2の垂直壁26に突き当たる際に、段階的な突き当てを実現して、衝撃を緩和する役割を果たす。なお、図示のように、ゴム弾性体5の稜線には、いすれも、面取り部62が設けられており、したがって、突き当て用突起56及び脚部51の上方側の稜線部にも面取り部62が設けられている。これら面取り部62は、挟圧部材1の挟圧板部11の間への挿入を容易にする役割を果たす。
【0028】
また、内筒保持部64の上部は、上端ストッパ凸部57をなしており、外枠ブラケット2の天井部25に平行の突き当て面を形成している。上端ストッパ凸部57は、組み立てた際には、外枠ブラケット2の天井部25に接しているが、エンジンの荷重がかかる装着後の初期状態では、天井部25から離れている。一方、内筒保持部55と、左右の脚部51と、底部59との間には、逆V字状のすぐり部61が形成されている。そして、底部59には、上方に向けて延びる底側ストッパ凸部59が形成されており、この先端面が、内筒保持部55の下端面に突き当てられてストッパー作用を行う。このように、上下方向では、上端ストッパ凸部57と、底側ストッパ凸部59とがストッパー作用を行う。
【0029】
一方、
図8に示すように、ゴム弾性体5の下面には、一対のリブ用凹部63が形成されている。
図9に示すように、基台ブラケット3の上面には、一対の抜け止め用リブ32が形成されており、エンジンマウント10の組立時に、基台ブラケット3の抜け止め用リブ32が、ゴム弾性体5のリブ用凹部63に嵌め込まれる。図示の具体例で、抜け止め用リブ32は、底部35と傾斜板部34との間の角部の内側に配置され、基台ブラケット3の板材の中央線に沿って延びる円筒面状である。
【0030】
図9には、ベース板4に基台ブラケット3が組み付けられた状態を示す。
図9から知られるように、ベース板4は、基台ブラケット3における左右の垂直壁33の下端間に掛け渡される水平の本体部45と、この本体部45から左右に突き出す締結端部43と、本体部45の後方の縁から上方へと延びる補強用垂直壁41とからなる。この補強用垂直壁41は、軸方向から見た形状が基台ブラケット3に囲まれた領域と同一であり、基台ブラケット3に下方から差し込まれて、基台ブラケット3を補強する役割を果たす。本体部45の幅(軸方向寸法)は、基台ブラケット3の幅(軸方向寸法)よりも小さく、本体部45の前方の縁は、基台ブラケット3の前方の縁に合わせられている。そのため、補強用垂直壁41は、基台ブラケット3の後方の縁から離間した位置にて基台ブラケット3の内面に突き当てられて補強作用を行う。なお、図示のように、基台ブラケット3の本体部45と、補強用垂直壁41との間の屈曲部の内側には、複数の補強リブ42が設けられている。一方、
図9に示すように、ベース板4の締結端部43の前後の縁から、かしめ用ツメ44が延びている。そして、
図1,
図3及び
図5から知られるように、ベース板4の締結端部43と、外枠ブラケット2の締結端部23とが、かしめ用ツメ44により互いに組み付けられる。すなわち、ネジ挿通孔27,46同士を位置合わせさせつつ重ねあわせた後、この状態で、かしめ用ツメ44を倒し込んで、かしめ締結を行う。