【実施例】
【0014】
[実施例1の構成]
実施例1の下水管用止水プラグを
図1〜
図4に基づいて説明する。
下水管用止水プラグ1(以下、プラグ1と呼ぶ。)は、下水管2の内周3を閉じる蓋4、蓋4の周縁4aと下水管2の内周面5との間を封止する封止手段6とを備え、例えば、人孔7の耐震化工事を行う時に、人孔7に接続する下水管2の内周3を閉じて人孔7内への下水の流入を一時的に止めるために使用される。
ここで、蓋4は、例えば、金属製であり下水管2の内径よりやや小さい円盤体である。
また、封止手段6は、以下に説明するゴム製筒状部8、螺子保持部9、および押圧部10を備える。
【0015】
ゴム製筒状部8は、下水管2の内周面5に密着するものであり、内径が蓋4の径にほぼ等しい。ゴム製筒状部8は、周知の締結バンド11によって、ゴム製筒状部8の軸方向一端部と螺子保持部9とが締結され、螺子保持部9の外周面9aとゴム製筒状部8の内周面8aが密着している。また、ゴム製筒状部8は、軸方向の長さが螺子保持部9の軸方向の長さにほぼ等しくなっている。
【0016】
螺子保持部9は、ゴム製筒状部8の内周側に配され、径方向に貫通する螺子穴12を、例えば、周方向に45°間隔で8個有する環状体であって、螺子穴12のそれぞれに螺合する螺子13を保持している。また、螺子保持部9は、蓋4と一体に成形された一つの有底円筒体14であり、有底円筒体14の筒が螺子保持部9であり、有底円筒体14の底部が蓋4である。
【0017】
押圧部10は、ゴム製筒状部8の内周側、かつ、螺子保持部9の外周側に、すなわち、ゴム製筒状部8と螺子保持部9とにより径方向に挟まれている。また、押圧部10は、ゴム製筒状部8の軸方向の他端部に配され、螺子保持部9から外周側へ突出した螺子13の先端13aにより外周側に押圧されて変形する。そして、押圧部10は、外周側に変形することにより、ゴム製筒状部8を外周側に押圧し、下水管2の内周面5に密着させる。
ここで、押圧部10は、先端13aがゴム製筒状部8を押圧する力を周方向に分散させるものであり、ゴム製筒状部8への先端13aの食い込みを防ぐものである。
【0018】
押圧部10は、例えば、金属製の環状体であり、
図3(b)、(d)に示すように合口15が拡径可能に形成されている。合口15は、押圧部10の周方向に突出する凸部16と、周方向に窪む凹部17とからなり、凹部17に凸部16が嵌合している。そして、押圧部10は、外周側に変形することにより、凸部16が凹部17に嵌合したまま凸部16と凹部17が周方向に相対的に離間する。すなわち、凸部16の先端と凹部17の底との間の周方向の距離は、押圧部10の外周側への変形に伴って大きくなる。
【0019】
[実施例1の作用]
実施例1の作用を説明する。
プラグ1は、
図2に示すように、軸方向に関して蓋4のある側が下水管2の奥側に位置するように下水管2内に挿入され、手前側に螺子保持部9が配置される。これにより、作業者は、人孔7内から螺子13の締緩をすることができる。
そして、螺子13を締め付けることで、螺子13の先端13aにより押圧部10を、外周側に押圧して拡径させる。これにより、ゴム製筒状部8は、押圧部10により外周側に押圧されて下水管2の内周面5の全周において密着する。
【0020】
ここで、
図4に示すように下水管2の内周面5に欠け18が存在する場合、螺子保持部9を、欠け18の位置に螺子穴12が位置するように配する。そして、螺子13の先端13aを螺子保持部9の外周側に突出させることで、押圧部10を介してゴム製筒状部8を外周側に局部的に膨出させる。これにより、ゴム製筒状部8が欠け18にめり込む。
【0021】
[実施例1の効果]
実施例1のプラグ1によれば、封止手段6は、ゴム製筒状部8、螺子保持部9、および押圧部10を有する。
ゴム製筒状部8は、下水管2の内周面5に密着するものである。
また、螺子保持部9は、ゴム製筒状部8の内周側に配され、径方向に貫通する螺子穴12を複数有し、螺子穴12のそれぞれに螺合する螺子13を保持している。
また、押圧部10は、ゴム製筒状部8と螺子保持部9とにより径方向に挟まれている。そして、押圧部10は、螺子保持部9から外周側へ突出した螺子13の先端13aにより押圧されて外周側に変形することで、ゴム製筒状部8を外周側に押圧して下水管2の内周面5に密着させる。
【0022】
これにより、欠け18の位置と螺子穴12の位置とを合わせるように螺子保持部9を配し、螺子13の先端13aを螺子保持部9の外周側に突出させることで、押圧部10を介してゴム製筒状部8を外周側に局部的に膨出させ、ゴム製筒状部8を欠け18にめり込ませることができる。
このため、下水管2に欠け18がある場合であっても、蓋4の周縁4aと下水管2の内周面5との間に生じる隙間を確実に封止することができる。
また、押圧部10は、金属製の環状体であり、合口15が拡径可能に形成されている。そして、合口15は、押圧部10の周方向に突出する凸部16と、周方向に窪む凹部17とからなり、凹部17に凸部16が嵌合している。
これにより、螺子13を外周側に突出させる際に押圧部10が螺子13の回転によって捻じれ合口15が軸方向にずれてしまうことを抑制することができる。
【0023】
また、プラグ1は、螺子13を締め付けて下水管2の内周3を閉じるものであるから、例えば、トルクレンチを用いることにより、螺子13の締結力を一定にすることができる。このため、作業者の熟練度に依存せず、施工ムラをなくすことができる。
【0024】
[実施例2]
実施例2のプラグ1によれば、
図5に示すように、封止手段6は、押圧部10を、2
個軸方向にお互いが隣接するように有している。
なお、以下の実施例においては、実施例1における同一物を同一符号で表している。
【0025】
これにより、それぞれの螺子保持部9における螺子13を締め付けることで、押圧部10が単数の場合に比べ、ゴム製筒状部8の下水管2の内周面5への密着する部位を軸方向に増加させることができる。このため、プラグ1の水漏れの虞を低減することができる。
【0026】
[実施例3]
実施例3のプラグ1によれば、
図6に示すように、蓋4は、中央部に貫通穴21を有している。そして、貫通穴21にバイパス管20が挿通され、バイパス管20内を下水が流れる(ここで、説明の便宜のため、人孔7に下水を流入させる下水管2を上流側下水管2a、人孔7から下水を流出させる下水管2を下流側下水管2bと呼ぶ。)。
【0027】
これにより、プラグ1によって堰き止められた上流側下水管2a内の下水をバイパス管20を介して流すことができる。すなわち、上流側、下流側下水管2a、2bがそれぞれプラグ1により閉じられていても、バイパス管20を介して上流側、下流側下水管2a、2bの内周が連通する。この結果、上流側下水管2aから下流側下水管2bへの下水の流れを確保しつつ、人孔7内への下水の流入を防ぎ、例えば、人孔7の耐震化工事を行うことができる。
【0028】
[変形例]
実施例2によれば、封止手段6は、押圧部10を2個有するものであったが、押圧部10を単数として構成してもよい。
【0029】
また、実施例1〜3によれば、螺子保持部9に螺合する螺子13の本数は8本であったが、この本数に限定するものではなく、堰き止める下水量により、螺子13の本数を増減させてもよい。
また、実施例1〜3によれば、螺子保持部9に設けられた複数の螺子穴12は、同一の大きさで、周方向に等間隔に配されているが、複数の螺子穴12を、同一の大きさとせず、周方向に等間隔に配さなくてもよい。すなわち、螺子保持部9に対して、必要に応じて、タップ等を用いて自在に螺子穴12を設けてもよい。
【0030】
さらに、実施例1〜3によれば、すべての螺子穴12に螺子13を螺合させるものであったが、すべての螺子穴12に螺子13を螺合させなくてもよい。すなわち、螺子保持部9に予め多数の螺子穴12を設けておき、欠け18の位置等に対応する一部の螺子穴12に螺子13を螺合させてもよい。