特許第5959946号(P5959946)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959946
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】下水管用止水プラグ
(51)【国際特許分類】
   E03F 7/00 20060101AFI20160719BHJP
   E03F 5/02 20060101ALI20160719BHJP
   E02D 29/12 20060101ALI20160719BHJP
   F16L 55/115 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   E03F7/00
   E03F5/02
   E02D29/12 Z
   F16L55/115
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-133475(P2012-133475)
(22)【出願日】2012年6月13日
(65)【公開番号】特開2013-256806(P2013-256806A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2015年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】599024001
【氏名又は名称】株式会社サンリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100080045
【弁理士】
【氏名又は名称】石黒 健二
(72)【発明者】
【氏名】大津賀 則男
【審査官】 須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−139026(JP,A)
【文献】 特開2005−180569(JP,A)
【文献】 実開昭59−183989(JP,U)
【文献】 実開平05−047083(JP,U)
【文献】 実開昭56−100590(JP,U)
【文献】 実開昭63−075694(JP,U)
【文献】 実開平05−061287(JP,U)
【文献】 特開2008−208901(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第02080914(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 3/04
E03F 5/02
E03F 5/10
E03F 7/00
E03F 7/02
E02D 29/12
F16L 55/115
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水管の内周を閉じる蓋と、
この蓋の周縁と前記下水管の内周面との間の隙間を封止する封止手段とを備え、
この封止手段は、
前記下水管の内周面に密着するゴム製筒状部と、
このゴム製筒状部の内周側に配され、径方向に貫通する螺子穴を周方向に複数有し、前記螺子穴に螺合する螺子を保持する螺子保持部と、
前記ゴム製筒状部と前記螺子保持部との間に配され、前記螺子保持部から外周側へ突出した前記螺子の先端により押圧されて外周側に変形又は変位することで、前記ゴム製筒状部を外周側に押圧して前記下水管の内周面に密着させる押圧部とを有し
この押圧部は、金属製の環状体であり、合口が拡径可能に形成されており、
この合口は、前記押圧部の周方向に突出する凸部と、周方向に窪む凹部とからなり、この凹部に前記凸部が嵌合することを特徴とする下水管用止水プラグ。
【請求項2】
請求項1に記載した下水管用止水プラグにおいて、
前記押圧部を軸方向に複数有することを特徴とする下水管用止水プラグ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載した下水管用止水プラグにおいて、
前記螺子保持部または前記押圧部が、周方向に分割可能であることを特徴とする下水管用止水プラグ。
【請求項4】
請求項1〜3に記載した何れか一つの下水管用止水プラグにおいて、
前記蓋は、下水を通過させる貫通穴を有することを特徴とする下水管用止水プラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、下水管の内周を閉じるための下水管用止水プラグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、下水管の内周を一時的に閉じるための下水管用止水プラグが知られている。
例えば、中空構造のOリングを蓋に外嵌し、Oリングの中空内に流体を注入し、径方向に膨張させることにより、下水管の内周面にOリング外周部を全周にわたって密着させる下水管用止水プラグ(特許文献1参照)が知られている。また、流体の封入された中空構造のOリングを蓋に外嵌し、Oリングを軸方向に押圧することにより、Oリング外周部を拡径させ、下水管の内周面にOリング外周部を全周にわたって密着させる下水管用止水プラグ(特許文献2参照)も知られている。
【0003】
特許文献1、2の下水管用止水プラグは、Oリング外周部が径方向に等しく拡張することによりOリング外周部を下水管の内周面に密着させ、蓋と下水管内周面との間に生じる隙間を封止している。
しかし、下水管の内周面には地震や腐食により欠けが生じていることがある。この場合、従来の下水管用止水プラグでは、欠けが存在する下水管の内周面に対して、蓋との間に生じる隙間を封止することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭62−117392号公報
【特許文献2】特開2005−180569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の目的は、欠けが存在する下水管の内周面に対しても、蓋との間に生じる隙間を確実に封止することのできる下水管用止水プラグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(請求項1の手段)
請求項1の手段によれば、下水管用止水プラグは、下水管の内周を閉じる蓋と、蓋の周縁と下水管の内周面との間の隙間を封止する封止手段とを備えている。そして、封止手段は、下水管の内周面に密着するゴム製筒状部と、ゴム製筒状部の内周側に配され、径方向に貫通する螺子穴を周方向に複数有し、螺子穴に螺合する螺子を保持する螺子保持部と、ゴム製筒状部と螺子保持部との間に配され、螺子保持部から外周側へ突出した螺子の先端により押圧されて外周側に変形又は変位することで、ゴム製筒状部を外周側に押圧して下水管の内周面に密着させる押圧部とを備え、押圧部は、金属製の環状体であり、合口が拡径可能に形成されており、合口は、押圧部の周方向に突出する凸部と、周方向に窪む凹部とからなり、凹部に凸部が嵌合することを特徴とする。
【0007】
これにより、螺子の先端を螺子保持部の外周側に突出させることで、押圧部を介してゴム製筒状部を外周側に局部的に膨出させ、ゴム製筒状部を欠けにめり込ませることができる。
このため、下水管に欠けが存在する場合であっても、蓋の周縁と下水管の内周面との間に生じる隙間を確実に封止することができる。
また、押圧部は、金属製の環状体であり、合口が拡径可能に形成されている。そして、合口は、押圧部の周方向に突出する凸部と、周方向に窪む凹部とからなり、凹部に凸部が嵌合している。
これにより、螺子を外周側に突出させる際に押圧部が螺子の回転によって捻じれ合口が軸方向にずれてしまうことを抑制することができる。
【0008】
(請求項2の手段)
請求項2の手段によれば、下水管用止水プラグは、押圧部を軸方向に複数有している。
これにより、押圧部が単数の場合に比べ、ゴム製筒状部の下水管の内周面への密着する部位を軸方向に増加させることができるので、欠けが軸方向に広範囲で生じている場合であっても、ゴム製筒状部を軸方向の広範囲において欠けにめり込ませることができる。
【0009】
(請求項3の手段)
請求項3の手段によれば、下水管用止水プラグは、螺子保持部または押圧部が、周方向に分割可能である。
これにより、人孔の入口が小さな場合であっても、人孔の入口を破壊せずに人孔内へ螺子保持部、押圧部を分割して搬入することができ、人孔外へ螺子保持部、押圧部を分割して搬出することができる。
【0010】
(請求項4の手段)
請求項4の手段によれば、下水管用止水プラグの蓋は、下水を通過させる貫通穴を有している。
これにより、下水管用止水プラグによって堰き止められた下水を貫通穴から、例えば、貫通穴に挿通されたバイパス管を介することにより、排水することができる。このため、下水管の内部に下水が充満し、下水が逆流することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(a)下水管用止水プラグの正面図、(b)下水管用止水プラグの縦断面図である(実施例1)。
図2】下水管に設置した下水管用止水プラグの縦断面図である(実施例1)。
図3】(a)下水管用止水プラグの押圧部変形前の正面図、(b)下水管用止水プラグの押圧部変形前の合口拡大図、(c)下水管用止水プラグの押圧部変形後の正面図、(d)下水管用止水プラグの押圧部変形後の合口拡大図であるである(実施例1)。
図4】(a)欠けの存在する下水管に設置した下水管用止水プラグの縦断面図、(b)欠けにゴム製筒状部をめり込ませた下水管用止水プラグの縦断面図である(実施例1)。
図5】下水管に設置した下水管用止水プラグの縦断面図である(実施例2)。
図6】下水管に設置した下水管用止水プラグの縦断面図である(実施例3)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施形態1の下水管用止水プラグは、下水管の内周を閉じる蓋と、蓋の周縁と下水管の内周面との間の隙間を封止する封止手段とを備える。そして、封止手段は、下水管の内周面に密着するゴム製筒状部と、ゴム製筒状部の内周側に配され、径方向に貫通する螺子穴を周方向に複数有し、螺子穴に螺合する螺子を保持する螺子保持部と、ゴム製筒状部と螺子保持部との間に配され、螺子保持部から外周側へ突出した螺子の先端により押圧されて外周側に変形又は変位することで、ゴム製筒状部を外周側に押圧して下水管の内周面に密着させる押圧部とを有する。
【0013】
実施形態2の下水管用止水プラグは、押圧部を軸方向に複数配置している。
実施形態3の下水管用止水プラグの蓋は、下水を通過させるバイパス管の挿通する貫通穴を有している。
【実施例】
【0014】
[実施例1の構成]
実施例1の下水管用止水プラグを図1図4に基づいて説明する。
下水管用止水プラグ1(以下、プラグ1と呼ぶ。)は、下水管2の内周3を閉じる蓋4、蓋4の周縁4aと下水管2の内周面5との間を封止する封止手段6とを備え、例えば、人孔7の耐震化工事を行う時に、人孔7に接続する下水管2の内周3を閉じて人孔7内への下水の流入を一時的に止めるために使用される。
ここで、蓋4は、例えば、金属製であり下水管2の内径よりやや小さい円盤体である。
また、封止手段6は、以下に説明するゴム製筒状部8、螺子保持部9、および押圧部10を備える。
【0015】
ゴム製筒状部8は、下水管2の内周面5に密着するものであり、内径が蓋4の径にほぼ等しい。ゴム製筒状部8は、周知の締結バンド11によって、ゴム製筒状部8の軸方向一端部と螺子保持部9とが締結され、螺子保持部9の外周面9aとゴム製筒状部8の内周面8aが密着している。また、ゴム製筒状部8は、軸方向の長さが螺子保持部9の軸方向の長さにほぼ等しくなっている。
【0016】
螺子保持部9は、ゴム製筒状部8の内周側に配され、径方向に貫通する螺子穴12を、例えば、周方向に45°間隔で8個有する環状体であって、螺子穴12のそれぞれに螺合する螺子13を保持している。また、螺子保持部9は、蓋4と一体に成形された一つの有底円筒体14であり、有底円筒体14の筒が螺子保持部9であり、有底円筒体14の底部が蓋4である。
【0017】
押圧部10は、ゴム製筒状部8の内周側、かつ、螺子保持部9の外周側に、すなわち、ゴム製筒状部8と螺子保持部9とにより径方向に挟まれている。また、押圧部10は、ゴム製筒状部8の軸方向の他端部に配され、螺子保持部9から外周側へ突出した螺子13の先端13aにより外周側に押圧されて変形する。そして、押圧部10は、外周側に変形することにより、ゴム製筒状部8を外周側に押圧し、下水管2の内周面5に密着させる。
ここで、押圧部10は、先端13aがゴム製筒状部8を押圧する力を周方向に分散させるものであり、ゴム製筒状部8への先端13aの食い込みを防ぐものである。
【0018】
押圧部10は、例えば、金属製の環状体であり、図3(b)、(d)に示すように合口15が拡径可能に形成されている。合口15は、押圧部10の周方向に突出する凸部16と、周方向に窪む凹部17とからなり、凹部17に凸部16が嵌合している。そして、押圧部10は、外周側に変形することにより、凸部16が凹部17に嵌合したまま凸部16と凹部17が周方向に相対的に離間する。すなわち、凸部16の先端と凹部17の底との間の周方向の距離は、押圧部10の外周側への変形に伴って大きくなる。
【0019】
[実施例1の作用]
実施例1の作用を説明する。
プラグ1は、図2に示すように、軸方向に関して蓋4のある側が下水管2の奥側に位置するように下水管2内に挿入され、手前側に螺子保持部9が配置される。これにより、作業者は、人孔7内から螺子13の締緩をすることができる。
そして、螺子13を締め付けることで、螺子13の先端13aにより押圧部10を、外周側に押圧して拡径させる。これにより、ゴム製筒状部8は、押圧部10により外周側に押圧されて下水管2の内周面5の全周において密着する。
【0020】
ここで、図4に示すように下水管2の内周面5に欠け18が存在する場合、螺子保持部9を、欠け18の位置に螺子穴12が位置するように配する。そして、螺子13の先端13aを螺子保持部9の外周側に突出させることで、押圧部10を介してゴム製筒状部8を外周側に局部的に膨出させる。これにより、ゴム製筒状部8が欠け18にめり込む。
【0021】
[実施例1の効果]
実施例1のプラグ1によれば、封止手段6は、ゴム製筒状部8、螺子保持部9、および押圧部10を有する。
ゴム製筒状部8は、下水管2の内周面5に密着するものである。
また、螺子保持部9は、ゴム製筒状部8の内周側に配され、径方向に貫通する螺子穴12を複数有し、螺子穴12のそれぞれに螺合する螺子13を保持している。
また、押圧部10は、ゴム製筒状部8と螺子保持部9とにより径方向に挟まれている。そして、押圧部10は、螺子保持部9から外周側へ突出した螺子13の先端13aにより押圧されて外周側に変形することで、ゴム製筒状部8を外周側に押圧して下水管2の内周面5に密着させる。
【0022】
これにより、欠け18の位置と螺子穴12の位置とを合わせるように螺子保持部9を配し、螺子13の先端13aを螺子保持部9の外周側に突出させることで、押圧部10を介してゴム製筒状部8を外周側に局部的に膨出させ、ゴム製筒状部8を欠け18にめり込ませることができる。
このため、下水管2に欠け18がある場合であっても、蓋4の周縁4aと下水管2の内周面5との間に生じる隙間を確実に封止することができる。
また、押圧部10は、金属製の環状体であり、合口15が拡径可能に形成されている。そして、合口15は、押圧部10の周方向に突出する凸部16と、周方向に窪む凹部17とからなり、凹部17に凸部16が嵌合している。
これにより、螺子13を外周側に突出させる際に押圧部10が螺子13の回転によって捻じれ合口15が軸方向にずれてしまうことを抑制することができる。
【0023】
また、プラグ1は、螺子13を締め付けて下水管2の内周3を閉じるものであるから、例えば、トルクレンチを用いることにより、螺子13の締結力を一定にすることができる。このため、作業者の熟練度に依存せず、施工ムラをなくすことができる。
【0024】
[実施例2]
実施例2のプラグ1によれば、図5に示すように、封止手段6は、押圧部10を、2個軸方向にお互いが隣接するように有している。
なお、以下の実施例においては、実施例1における同一物を同一符号で表している。
【0025】
これにより、それぞれの螺子保持部9における螺子13を締め付けることで、押圧部10が単数の場合に比べ、ゴム製筒状部8の下水管2の内周面5への密着する部位を軸方向に増加させることができる。このため、プラグ1の水漏れの虞を低減することができる。
【0026】
[実施例3]
実施例3のプラグ1によれば、図6に示すように、蓋4は、中央部に貫通穴21を有している。そして、貫通穴21にバイパス管20が挿通され、バイパス管20内を下水が流れる(ここで、説明の便宜のため、人孔7に下水を流入させる下水管2を上流側下水管2a、人孔7から下水を流出させる下水管2を下流側下水管2bと呼ぶ。)。
【0027】
これにより、プラグ1によって堰き止められた上流側下水管2a内の下水をバイパス管20を介して流すことができる。すなわち、上流側、下流側下水管2a、2bがそれぞれプラグ1により閉じられていても、バイパス管20を介して上流側、下流側下水管2a、2bの内周が連通する。この結果、上流側下水管2aから下流側下水管2bへの下水の流れを確保しつつ、人孔7内への下水の流入を防ぎ、例えば、人孔7の耐震化工事を行うことができる。
【0028】
[変形例]
実施例2によれば、封止手段6は、押圧部10を2個有するものであったが、押圧部10を単数として構成してもよい。
【0029】
また、実施例1〜3によれば、螺子保持部9に螺合する螺子13の本数は8本であったが、この本数に限定するものではなく、堰き止める下水量により、螺子13の本数を増減させてもよい。
また、実施例1〜3によれば、螺子保持部9に設けられた複数の螺子穴12は、同一の大きさで、周方向に等間隔に配されているが、複数の螺子穴12を、同一の大きさとせず、周方向に等間隔に配さなくてもよい。すなわち、螺子保持部9に対して、必要に応じて、タップ等を用いて自在に螺子穴12を設けてもよい。
【0030】
さらに、実施例1〜3によれば、すべての螺子穴12に螺子13を螺合させるものであったが、すべての螺子穴12に螺子13を螺合させなくてもよい。すなわち、螺子保持部9に予め多数の螺子穴12を設けておき、欠け18の位置等に対応する一部の螺子穴12に螺子13を螺合させてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 プラグ(下水管用止水プラグ)
2 下水管
3 内周
4 蓋
4a 周縁
5 内周面
6 封止手段
8 ゴム製筒状部
9 螺子保持部
10 押圧部
12 螺子穴
13 螺子
13a 先端
図1
図2
図3
図4
図5
図6