特許第5959959号(P5959959)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959959
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】中空構造板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/02 20060101AFI20160719BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20160719BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   B29C65/02
   B32B27/00 C
   B32B3/30
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-145973(P2012-145973)
(22)【出願日】2012年6月28日
(65)【公開番号】特開2014-8652(P2014-8652A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年4月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000120010
【氏名又は名称】宇部エクシモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 雅彦
【審査官】 長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−067444(JP,A)
【文献】 特開2009−061973(JP,A)
【文献】 特開2006−001035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/02
B32B 3/26− 3/30
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空状の凸部が間隔をあけて複数形成された熱可塑性樹脂シートからなる中空凸部成形シートの少なくとも一方の面に、熱可塑性樹脂シートからなる表面材が熱融着され、更に、該表面材の非熱融着面に、熱接着性を有する表皮材が熱接着された中空構造板を製造する方法であって、
前記中空凸部成形シートの熱融着面および/または前記表面材の熱融着面を、前記中空凸部成形シートおよび/または前記表面材の融点温度以上に加熱するとともに、
前記表面材の非熱融着面および前記表皮材を、前記表皮材および/または前記表面材の接着温度以上、前記表面材の融点未満に温度制御した状態で、
前記表面材の非熱融着面に前記表皮材を熱接着させるとともに、前記中空凸部成形シートの少なくとも一方の面に、前記表面材を熱融着する熱接融着工程を、
少なくとも行い、
前記表面材が、前記中空凸部成形シートと熱融着できる熱可塑性樹脂からなり、かつ、
該熱可塑性樹脂の示差熱熱重量同時測定(TG−DTA分析)で得られる熱分析の結果において、前記熱可塑性樹脂の溶融に伴う吸熱が認められる融点温度(Tm)と、該融点温度(Tm)とは異なる温度(Tq)で吸熱現象が生じ、前記Tmと前記Tqの温度差が30℃〜100℃である中空構造板の製造方法。
【請求項2】
前記中空凸部成形シートは、中空状の凸部が間隔をあけて複数形成された2枚の熱可塑性樹脂シートが、互いの中空凸部同士を突き合わせて熱融着されてなる請求項1記載の中空構造板の製造方法。
【請求項3】
前記熱接融着工程を行う前に、熱可塑性樹脂シートの一方の面に、中空状の凸部を複数形成して中空凸部成形シートを作製する中空凸部成形シート作製工程を、更に行う請求項1記載の中空構造板の製造方法。
【請求項4】
前記熱接融着工程を行う前に、熱可塑性樹脂シートの一方の面に、中空状の凸部を複数形成して2枚の成形シートを作製し、それぞれの成形シートを、その中空凸部同士を突き合わせて熱融着して中空凸部成形シートを作製する中空凸部成形シート作製工程を、更に行う請求項2記載の中空構造板の製造方法。
【請求項5】
前記表皮材は、第1の熱可塑性樹脂を芯成分とし、該芯成分よりも低い融点をもつ第2の熱可塑性樹脂を鞘成分とする鞘芯構造からなる繊維を、一部含んでなる織布または不織布である請求項1から4のいずれか一項に記載の中空構造板の製造方法。
【請求項6】
前記表面材が、エチレン量2〜10%のエチレン・プロピレン・ブロック共重合体からなる熱可塑性樹脂を含んでなる請求項1から5のいずれか一項に記載の中空構造板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂製の中空構造板の製造方法に関する。より詳しくは、中空状の凸部が間隔をあけて複数形成された熱可塑性樹脂シートからなる中空凸部成形シートの少なくとも一方の面に、熱可塑性樹脂シートからなる表面材が熱融着され、更に、該表面材の非熱融着面に、熱接着性を有する表皮材が熱接着された中空構造板の製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製の中空構造板は、軽量で、かつ耐薬品性、耐水性、断熱性、遮音性及び復元性に優れ、取り扱いも容易であることから、箱材や梱包材などの物流用途、壁や天井用のパネル材などの建築用途、更には、自動車用途などの幅広い分野に使用されている。例えば、特許文献1には、所定の間隔を隔てて平行に配置された合成樹脂素材製の2枚のシートの間に、所定のピッチで凹凸波形が繰り返された合成樹脂素材製の波形部材が挟持された状態の中空構造板が開示されている。
【0003】
また、例えば、特許文献2には、2枚の熱可塑性樹脂シートに突設された複数の中空凸部が突き合わされた状態で熱融着された構成の所謂ツインコーン(登録商標)タイプの中空構造板が開示されている。このツインコーン(登録商標)タイプの中空構造板は、曲げ性能及び圧縮性能に優れると共に、厚さ方向の構造が上下対称のため反りが極めて少ないことから、自動車内装材、物流資材、建材など、様々な分野で使用されている。
【0004】
このような中空構造板は、一般に、複数の凸部が形成された熱可塑性樹脂シートに、1又は2以上の熱可塑性樹脂シートを積層し、融着することにより製造されている。そして、近年では、中空構造板の製造方法に関する技術の開発も進みつつある。例えば、特許文献3には、第1シートに突起部を形成した後、第1シートの突起部の開口側の面に、融点以上に加熱された第2シートを供給し、第2シートの第1シートに対向する面と反対側の面を、加圧手段に所定時間接触させることにより、シートの融着性を向上させる技術が開示されている。
【0005】
上記のように、幅広い分野で適用可能な中空構造板は、それぞれの用途に合わせて、表面を様々は表皮材で被覆して用いられることが多い。例えば、特許文献4では、ツインコーン(登録商標)タイプの中空構造板に、ポリプロピレン系繊維からなる織布を積層させることにより、高い強度を有するとともに、軽量で機械的特性、リサイクル性、成形性、接着性等の諸性能に優れ、コストアップを抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−170515号公報
【特許文献2】特開2008−260309号公報
【特許文献3】特開2008−213262号公報
【特許文献4】特開2006−001035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の中空構造板1’の製造方法では、図19に示すように、中空凸部成形シート2’に表面材3’を熱融着する際、加熱手段が設けられた抑えローラー102a’によって、表面材3’を融点以上に加熱し溶融した状態で、中空凸部成形シート2’に熱融着していた。
そして、その後に、加熱手段が設けられた別の抑えローラー102b’によって、表皮材4’および/または表面材3’を接着温度以上に加熱あるいは予熱して、表皮材4’を表面材3’の外側へ熱接着させていた。
【0008】
しかし、この従来の方法では、下記の理由から、中空構造板1’の表面材3’に表皮材4’を均一に熱賦形させることが難しく、歩留まりの低下や生産性の低さが問題となっていた。
(1)中空構造板の表面の平滑性が低い。
(2)中空構造板の温度制御が難しい。
(3)中空構造板の表面の温度に斑がある。
【0009】
そこで、本発明では、中空構造板に表皮材を均一に積層することが可能な中空構造板の製造技術を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者は、前記課題を解決するために、まずは、前記の3つの理由の原因を解明した。
(1)従来の中空構造板の製造方法では、溶融状態または半溶融状態の熱可塑性樹脂シート状物を、複数の凸部が形成された熱可塑性樹脂シートに接触・圧着させるため、どうしても熱可塑性樹脂シート状物が、中空凸部成形シートの凹凸構造に追従し、中空構造板の表面が凸凹してしまうことから、中空構造板の表面の平滑性が低くなっていた。
(2)中空構造板を加熱あるいは予熱する際、加熱もしくは予熱温度が高すぎると中空構造板の表面材が著しく軟化し、その表面の平滑性がさらに低下し、逆に加熱もしくは予熱温度が低すぎると、表皮材の熱接着が不能になる。
(3)中空構造板は、通常の板に比べて複雑な構造であるため、加熱された際、中空構造板の場所によって温度がバラついてしまう。また、予熱・温調する場合も、中空構造板の冷却挙動にバラツキがあるため、均質な予熱管理が難しい。
【0011】
そこで、本願発明者は、表面材の両面における温度制御および積層する表皮材の温度制御にも着目し、また、中空構造板の製造工程の中で、表皮材の熱接着を行う箇所を工夫することにより、中空構造板に表皮材を均一に積層することに成功し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
即ち、本発明では、まず、中空状の凸部が間隔をあけて複数形成された熱可塑性樹脂シートからなる中空凸部成形シートの少なくとも一方の面に、熱可塑性樹脂シートからなる表面材が熱融着され、更に、該表面材の非熱融着面に、熱接着性を有する表皮材が熱接着された中空構造板を製造する方法であって、
前記中空凸部成形シートの熱融着面および/または前記表面材の熱融着面を、前記中空凸部成形シートおよび/または前記表面材の融点温度以上に加熱するとともに、
前記表面材の非熱融着面および前記表皮材を、前記表皮材および/または前記表面材の接着温度以上、前記表面材の融点未満に温度制御した状態で、
前記表面材の非熱融着面に前記表皮材を熱接着させるとともに、前記中空凸部成形シートの少なくとも一方の面に、前記表面材を熱融着する熱接融着工程を、
少なくとも行い、
前記表面材が、前記中空凸部成形シートと熱融着できる熱可塑性樹脂からなり、かつ、
該熱可塑性樹脂の示差熱熱重量同時測定(TG−DTA分析)で得られる熱分析の結果において、前記熱可塑性樹脂の溶融に伴う吸熱が認められる融点温度(Tm)と、該融点温度(Tm)とは異なる温度(Tq)で吸熱現象が生じ、前記Tmと前記Tqの温度差が30℃〜100℃である中空構造板の製造方法を提供する。
本発明に係る中空構造板の製造方法では、表面材の表皮材と熱接着される側の面(非熱融着面)の温度を、接着温度に基づいて制御し、また、表面材の中空凸部成形シートと熱融着される側の面(熱融着面)の温度を、中空凸部成形シートおよび/または表面材の融点温度に基づいて制御し、さらに、これらの温度制御を同一工程内において行うことを特徴とする。これにより、表面材と表皮材との熱接着を、表面材と中空凸部成形シートとの熱融着の直前または同時に行うことができ、その結果、中空構造板に表皮材を均一に積層することができる。
本発明に係る製造方法で用いることが可能な中空凸部成形シートは、表面に凹凸が形成された熱可塑性樹脂からなるシートであれば特に限定されないが、例えば、中空状の凸部が間隔をあけて複数形成された2枚の熱可塑性樹脂シートが、互いの中空凸部同士を突き合わせて熱融着されてなるシートを用いることができる。
本発明に係る製造方法では、前記熱接融着工程を行う前に、熱可塑性樹脂シートの一方の面に、中空状の凸部を複数形成して中空凸部成形シートを作製する中空凸部成形シート作製工程を、更に行うことも可能である。
また、本発明に係る製造方法では、前記熱接融着工程を行う前に、熱可塑性樹脂シートの一方の面に、中空状の凸部を複数形成して2枚の成形シートを作製し、それぞれの成形シートを、その中空凸部同士を突き合わせて熱融着して中空凸部成形シートを作製する中空凸部成形シート作製工程を、更に行うことも可能である。
本発明に係る製造方法で用いることが可能な表皮材としては、例えば、第1の熱可塑性樹脂を芯成分とし、該芯成分よりも低い融点をもつ第2の熱可塑性樹脂を鞘成分とする鞘芯構造からなる繊維を、一部含んでなる織布または不織布を挙げることができる。
また、前記表面材を形成する具体的な熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン量2〜10%のエチレン・プロピレン・ブロック共重合体からなる熱可塑性樹脂を挙げることができる。

【0013】
ここで、本発明で用いる技術用語の定義付けを行う。
本発明において、「接着」とは、その方法に関わらず、少なくともシート同士が接した状態で固着することをいう。従って、本発明においては「融着」は、「接着」の一態様として用いる。
本発明において、「接着温度」とは、接着が可能な温度をいい、一般的には熱分析によって吸熱が開始する温度以上のことであり、例えばポリオレフィン系樹脂であれば結晶構造が解かれる温度である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る中空構造板の製造方法は、中空構造板に表皮材を均一に積層することができるため、歩留まりの低下を防止し、外観の優れた中空構造板を製造することができ、また、表面材と表皮材との熱接着を、表面材と中空凸部成形シートとの熱融着と同一工程で行うことができるため、生産効率を飛躍的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】図中(a)は、本発明に係る製造方法で製造可能な中空構造板1の第1実施形態の構造を模式的に示す断面図であり、図中(b)はその分解斜視図である。
図2】本発明に係る製造方法で製造可能な中空構造板1の第2実施形態の構造を模式的に示す断面図である。
図3】本発明に係る製造方法で製造可能な中空構造板1の第3実施形態の構造を模式的に示す断面図である。
図4】本発明に係る製造方法で用いることが可能な中空凸部成形シート2の一態様を模式的に示す斜視図である。
図5】本発明に係る製造方法で用いることが可能な中空凸部成形シート2の図4とは異なる一態様を模式的に示す断面図である。
図6】本発明に係る製造方法で用いることが可能な中空凸部成形シート2の図4および図5とは異なる一態様を模式的に示す断面図である。
図7】本発明に係る製造方法で用いることが可能な中空凸部成形シート2の図4から図6とは異なる一態様を模式的に示す断面図である。
図8】本発明に係る製造方法に用いることができる表皮材を形成する熱可塑性樹脂からなる繊維を模式的に示す断面図である。
図9】本発明に係る製造方法の第1実施形態を示す概念図である。
図10】本発明に係る製造方法の第2実施形態を示す概念図である。
図11】本発明に係る製造方法の第3実施形態を示す概念図である。
図12】本発明に係る製造方法の第4実施形態を示す概念図である。
図13】本発明に係る製造方法の第5実施形態を示す概念図である。
図14】本発明に係る製造方法の第6実施形態を示す概念図である。
図15】本発明に係る製造方法の第7実施形態を示す概念図である。
図16】本発明に係る製造方法の第8実施形態を示す概念図である。
図17】本発明に係る製造方法の第9実施形態を示す概念図である。
図18】中空構造板の製造方法の別の例を示す概念図である。
図19】従来の中空構造板の製造方法の例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための好適な形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0017】
<中空構造板1について>
まず、本発明に係る製造方法で製造する中空構造板1について詳細に説明する。
[中空構造板1の全体構成]
図1(a)は、本発明に係る製造方法で製造可能な中空構造板1の第1実施形態の構造を模式的に示す断面図であり、図1(b)はその分解斜視図である。図1(a)及び(b)に示すように、第1実施形態に係る中空構造板1は、中空状の凸部2aが間隔をあけて複数形成された熱可塑性樹脂シートからなる中空凸部成形シート2の両面に、熱可塑性樹脂シートからなる表面材31、32を熱融着し、さらにこれら表面材31、32の外側に、表皮材41、42を熱接着した構造である。
【0018】
第1実施形態(シングルコーン(登録商標)への両面表皮材貼り合せ)に係る中空構造板1は、2枚の表面材31、32で中空凸部成形シート2を挟持し、さらにこれらの表面材31、32の外側に、表皮材41、42を熱接着した構造であるが、この構造に特に限定されず、中空凸部成形シート2の少なくとも一面に表面材3(31、32)が熱融着され、さらにその表面材3(31、32)の外側に表皮材4(41、42)が熱接着された構造の中空構造板1であれば、本発明に係る製造方法で製造することが可能である。例えば、図2に示す第2実施形態(コアコーン(登録商標)(シングル)への片面表面材・表皮材貼り合せ)に係る中空構造板1のように、中空凸部成形シート2の片面に表面材3が熱融着され、さらにその表面材3の外側に表皮材4が熱接着された構造の中空構造板1であっても、本発明に係る製造方法で製造することが可能である。
【0019】
また、図3に示す第3実施形態(シングルコーン(登録商標)への片面表皮材貼り合せ)に係る中空構造板1のように、中空凸部成形シート2の両面に表面材31、32が熱融着され、さらにその表面材31または32のいずれか一方の外側に表皮材4が熱接着された構造の中空構造板1であっても、本発明に係る製造方法で製造することが可能である。
【0020】
なお、中空凸部成形シート2および表面材3(31、32)は、同じ材料で形成することもできるが、熱融着可能な範囲で相互に異なる材料で形成することもできる。中空凸部成形シート2および表面材3(31、32)の具体的な材質については、後述する。
【0021】
[中空凸部成形シート2]
図4は、本発明に係る製造方法で用いることが可能な中空凸部成形シート2の一態様を模式的に示す斜視図である。図4に示すように、中空凸部成形シート2には、中空状の凸部2aが間隔をあけて複数形成されている。中空凸部成形シート2の凸部2aの大きさ、形状、高さなどの形態は、図4に示すような円錐台形に限らず、凸状であれば、自由に設計することができる。例えば、角錐台形、円柱形、多角柱形、多角星柱形、多角星錐台形など、様々な形態に設計することができる。また、凸部の途中に段差を設けたり、凸部の途中にウェーブを設けたりすることも自由である。
更に、中空凸部成形シート2には、単一の形態の凸部2aを複数設けることに限らず、2種以上の形態の凸部2aを自由に組み合わせて形成することも可能である。
【0022】
図5は、本発明に係る製造方法で用いることが可能な中空凸部成形シート2の図4とは異なる一態様を模式的に示す断面図(コアコーン(登録商標)(ダブル))である。図5に示す中空凸部成形シート2は、中空状の凸部21a、22aが間隔をあけて複数形成された熱可塑性樹脂からなる2枚の中空凸部成形シート21、22を、互いの中空凸部21a、22a同士を突き合わせて熱融着した構造である。このように、本発明に係る製造方法では、複数の中空凸部成形シート21、22を用いて構成した中空凸部成形シート2なども用いることができる。
【0023】
複数の中空凸部成形シート21、22を用いて構成した中空凸部成形シート2の他の例としては、図6に示すような態様(コアコーン(登録商標)の積層体:例えば、特開2009−107144)が挙げられる。図6は、本発明に係る製造方法で用いることが可能な中空凸部成形シート2の図4および図5とは異なる一態様を模式的に示す断面図である。図6に示す中空凸部成形シート2は、中空状の凸部21a、22aが間隔をあけて複数形成された熱可塑性樹脂からなる2枚の中空凸部成形シート21、22を、熱可塑性樹脂からなる中間シート23を挟んだ状態で、互いの中空凸部21a、22a同士を突き合わせて熱融着した構造である。
【0024】
また、図7は、本発明に係る製造方法で用いることが可能な中空凸部成形シート2の図4から図6とは異なる一態様(コアコーン(登録商標)(ダブル)・亜種:例えば、特開2009−107144)を模式的に示す断面図である。図7に示す中空凸部成形シート2は、中空状の凸部21a、22aが間隔をあけて複数形成された熱可塑性樹脂からなる2枚の中空凸部成形シート21、22を、互いの中空凸部21a、22a同士を、互い違いに向き合わせて熱融着した構造である。即ち、一方の中空凸部成形シート21の中空凸部21aが、他方の中空凸部成形シート22の開口部22bに入り込み、一方の中空凸部成形シート21の開口部21bに、他方の中空凸部成形シート22の中空凸部22aが入り込んだ状態で、中空凸部成形シート21、22を熱融着した構造である。
【0025】
このように、本発明に係る製造方法に用いることができる中空凸部成形シート2は、その目的の強度や曲げ性能などに応じて、自由に設計することが可能である。
【0026】
中空構造板1を構成する中空凸部成形シート2の材質は、熱可塑性樹脂であれば特に限定されるものではなく、通常、中空構造板に用いることができる熱可塑性樹脂を、1種または2種以上自由に組み合わせて用いることができる。例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)およびポリカーボネート(PC)などを使用することができる。これらの熱可塑性樹脂の中でも、コスト、成形性及び物性の面から、特に、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン及びブロック状ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂が好ましい。
【0027】
また、中空凸部成形シート2を形成する熱可塑性樹脂には、タルク、マイカ及び炭酸カルシウムなどのフィラーや、ガラス繊維、アラミド繊維及び炭素繊維などのチョップドストランドが添加されていてもよい。これにより、中空構造板1の剛性を向上させることができる。
【0028】
更に、中空凸部成形シート2を形成する熱可塑性樹脂には、難燃性、導電性及び耐候性などを向上させるための改質剤が添加されていてもよい。
【0029】
[表面材3]
表面材3(31、32)は、前述した中空凸部成形シート2に熱融着され、この中空凸部成形シート2と共に中空構造板1を構成する。表面材3(31、32)の形態は、少なくとも非熱融着面が平滑であれば、自由に設計することができる。
【0030】
中空構造板1に用いる表面材3(31、32)の材質は、前述の中空凸部成形シート2と同一であるため、ここでは説明を割愛する。
【0031】
本発明では、表面材3(31、32)として、中空凸部形成シート2と熱融着できる熱可塑性樹脂からなり、かつ、表面材3(31、32)を形成する熱可塑性樹脂の示差熱熱重量同時測定(TG−DTA分析)で得られる熱分析の結果において、熱可塑性樹脂の溶融に伴う吸熱が認められる融点温度(Tm)と、それより低温で異なる温度(Tq)で吸熱現象が生じ、このTmと前記Tqの温度差が30℃から100℃の熱可塑性樹脂からなる表面材3(31、32)を用いることが好ましい。この特徴を有する熱可塑性樹脂は、Tq温度以上Tm温度未満において、非溶融状態であるにも関わらず、接着性を発揮する。そのため、この特徴を有する熱可塑性樹脂を用いて表面材3(31、32)を形成すれば、製造工程において、表面材3(31、32)を、接着温度以上融点未満に温度制御することが容易になり、歩留まりの低下の防止、生産効率の向上を実現することができる。
【0032】
このような特徴を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン量2〜10%のエチレン・プロピレン・ブロック共重合体からなる熱可塑性樹脂を挙げることができる。
【0033】
その他の例として、本発明では、第1の熱可塑性樹脂と、該熱可塑性樹脂よりも低い融点をもつ第2の熱可塑性樹脂を混合した樹脂混合物を用いて表面材3(31、32)を形成することも可能である。
また、本発明では、中空構造板1に用いる表面材3(31、32)の材質として用いる熱可塑性樹脂として、分子量分布の広い熱可塑性樹脂を用いることも可能である。より具体的には、重量平均分子量(Mw)と、数平均分子量(Mn)との比が、Mw/Mn≧4.0以上である熱可塑性樹脂を用いて表面材3(31、32)を形成することができる。
【0034】
例えば、表面材3(31、32)を同一の融点をもつ熱可塑性樹脂や同一の分子量の熱可塑性樹脂のみで形成した場合、熱可塑性樹脂の融点を境に、固化および溶融が一気に起こるため、接着可能な状態は、非常に狭い温度範囲に限定されてしまう。一方、異なる融点を持つ熱可塑性樹脂を混合した樹脂混合物や分子量分布の広い熱可塑性樹脂を用いて表面材を形成することにより、一定の温度範囲内において、樹脂混合物の一部のみが溶融し接着可能な状態を維持することができる。その結果、製造工程における温度制御が容易になり、歩留まりの低下の防止、生産効率の向上を実現することができる。
【0035】
なお、本発明に係る製造技術においては、後述する表皮材4(41、42)の材質によって、接着温度を制御することも可能であるため、同一の融点をもつ熱可塑性樹脂や同一の分子量の熱可塑性樹脂のみで表面材3(31、32)を形成することも、勿論、可能である。
【0036】
[表皮材4]
表皮材4(41、42)は、前述した表面材3(31、32)の中空凸部成形シート2に熱融着される面の反対面に熱接着され、中空凸部成形シート2、表面材3(31、32)と共に中空構造板1を構成する。表皮材4(41、42)を備えることで、本発明に係る製造方法で製造される中空構造板1に、意匠性、吸音特性、断熱性などの用途に応じた特性を付与することができる。
【0037】
中空構造板1に用いる表皮材4の材質は、特に限定されず、通常、中空構造板の表皮材として用いることができる材料を、目的の用途などに応じて、自由に選択して用いることができる。例えば、熱可塑性樹脂シート、樹脂製の織布または不織布などを挙げることができる。また、複数の同種または異種のシートを積層した積層シートを、表皮材4として用いることも可能である。
【0038】
図8は、本発明に係る製造方法に用いることができる表皮材を形成する熱可塑性樹脂からなる繊維を模式的に示す断面図である。本発明では、第1の熱可塑性樹脂を芯4a成分とし、該芯成分よりも低い融点をもつ第2の熱可塑性樹脂を鞘4b成分とする鞘芯構造からなる繊維(図8参照)を、一部含んでなる織布または不織布を表皮材4として用いることが好ましい。
【0039】
図8に示す鞘芯構造からなる繊維は、鞘4bを構成する第2の熱可塑性樹脂の融点温度以上、芯4aを構成する第1の熱可塑性樹脂の融点温度未満で加熱(温度制御)することにより、芯4aは固化状態、鞘4bは溶融状態に維持することができる。そのため、この繊維を含む織布または不織布は、第2の熱可塑性樹脂の融点温度以上、芯4aを構成する第1の熱可塑性樹脂の融点温度未満に加熱(温度制御)することで、接着可能な状態を容易に維持することができる。その結果、製造工程における温度制御が容易になり、歩留まりの低下の防止、生産効率の向上を実現することができる。
【0040】
なお、第1実施形態の中空構造板1のように(図1参照)、中空凸部成形シート2の両面に、表面材31、32を熱融着させる場合、各表面材31、32に接着させる表皮材41、42は、同一の材質で形成することもできるし、異なる材質で形成することも可能である。
【0041】
<製造方法について>
次に、本発明に係る製造方法について説明する。
本発明に係る中空構造板の製造方法は、熱接融着工程Iを少なくとも行う方法である。また、必要に応じて、中空凸部成形シート作製工程IIなどを更に行うことも可能である。以下、各工程について、詳細に説明する。
【0042】
[熱接融着工程I]
熱接融着工程Iは、表面材3の一方の面に表皮材4を熱接着する工程(熱接着工程Ia)と、表面材3の他方の面を中空凸部成形シート2の少なくとも一方の面に熱融着する工程(熱融着工程Ib)とを行う工程である。熱接融着工程Iにおいて、熱接着工程Iaと熱融着工程Ibとは、同時に行うことも可能であるし、熱接着工程Iaを行った後に、熱融着工程Ibを行うことも可能である。以下、実施形態を例示しながら詳細に説明する。
【0043】
図9は、本発明に係る製造方法の第1実施形態(コアコーン(登録商標)(シングル)への片面表面材・表皮材貼合せ)を示す概念図である。第1実施形態に係る製造方法は、熱接融着工程Iにおいて、熱接着工程Iaと熱融着工程Ibとを同時に行う例である。
【0044】
熱接着工程Iaでは、調温機能を備えた抑えローラー102によって、表面材3の中空凸部成形シート2に熱融着される面の反対面および表皮材4を、表皮材4および/または表面材3の接着温度以上、表面材3の融点未満に温度制御した状態で、表面材3の中空凸部成形シート2に熱融着される面の反対面に表皮材4を熱接着する。
【0045】
熱融着工程Ibでは、加熱部101によって、中空凸部成形シート2の熱融着面および/または表面材3の熱融着面を、中空凸部成形シート2および/または表面材3の融点温度以上に加熱するとともに、調温機能を備えた前記抑えローラー102によって、表面材3の非熱融着面を、表面材3の融点未満に温度制御した状態のままで、表面材3の熱融着面を、中空凸部成形シート2の一方の面に熱融着する。
【0046】
本発明に係る製造方法では、熱融着工程Ibにおいて、少なくとも表面材3の非熱融着面は、融点以下に保ったまま、表面材3を中空凸部成形シート2に接触・圧着するため、平滑な表面の中空構造板1を得ることができる。
【0047】
また、熱接着工程Iaにおいても、熱融着工程Ibと同一の抑えローラー102によって、表面材3の中空凸部成形シート2に熱融着される面の反対面および表皮材4を、表皮材4および/または表面材3の接着温度以上、表面材3の融点未満に温度制御した状態で、表面材3の中空凸部成形シート2に熱融着される面の反対面に表皮材4を熱接着するため、表面材3の融着のために改めて加熱を行う従来の方法に比べ、温度制御を容易に行うことができる。
【0048】
更に、一つの抑えローラー102によって、中空凸部成形シート2への表面材3の熱融着と、表面材3への表皮材4の熱接着を行うため、装置の小型化、製造工程の簡便化を実現でき、製造に係る時間やコストの削減にもつながる。
【0049】
熱接融着工程Iにおける加熱方法は特に限定されず、中空凸部成形シート2の熱融着面および/または表面材3の熱融着面を、融点温度以上に加熱することができれば、自由な方法で加熱を行うことが可能である。例えば、熱風または温風発生手段、あるいは熱線ヒーターなどからなる加熱部101を用いて加熱する方法が挙げられる。
【0050】
また、加熱温度も特に限定されず、中空凸部成形シート2および/または表面材3を形成する樹脂の融点温度以上に加熱できれば、中空凸部成形シート2および/または表面材3を形成する樹脂の種類に応じて、自由に設定することができる。一例を挙げると、ポリプロピレンを用いて形成された中空凸部成形シート2および/または表面材3を加熱する場合には、130℃以上200℃以下の範囲で加熱することが好ましい。
【0051】
また、熱接融着工程Iにおける調温方法も特に限定されず、表面材3の中空凸部成形シート2に熱融着される面の反対面および表皮材4を、表皮材4および/または表面材3の接着温度以上、表面材3の融点未満に温度制御することができれば、自由な方法で調温を行うことが可能である。例えば、第1実施形態では、調温機能を備えた抑えローラー102によって、表面材3の中空凸部成形シート2に熱融着される面の反対面および表皮材4を接着温度以上、表面材3の融点未満に温度制御しているが、これに限定されず、例えば、後述する第2実施形態(図10)のように、熱接着工程Iaと熱融着工程Ibとを同時に行わない場合には、表面材3と表皮材4との間に、温度制御部を設けることも可能である。
【0052】
また、具体的な調温温度も特に限定されず、表面材3の中空凸部成形シート2に熱融着される面の反対面および表皮材4を、表皮材4および/または表面材3の接着温度以上、表面材3の融点未満であれば、表面材3および/または表皮材4を形成する材質に応じて、自由に設定することができる。
【0053】
なお、本発明に係る製造方法では、熱接融着工程Iを行う際に、中空凸部成形シート2の熱融着面および/または表面材3の熱融着面が融点温度以上、表面材3の中空凸部成形シート2に熱融着される面の反対面および表皮材4が接着温度以上かつ表面材3の融点未満に制御することができれば、熱接融着工程Iの前の供給段階における中空凸部成形シート2および表面材3は、溶融状態であっても非溶融状態であってもよいが、予め固化された中空凸部成形シート2および表面材3を供給することが好ましい。固化されていない、即ち、溶融状態の中空凸部成形シート2および表面材3は、その形態が安定していないため、供給段階において、中空凸部成形シート2や表面材3が変形する恐れがある。一方、予め固化され、形態が安定した状態の中空凸部成形シート2および表面材3を用いることで、供給段階における中空凸部成形シート2や表面材3の変形を防止することができる。
【0054】
熱接融着工程Iにおける加熱では、少なくとも中空凸部成形シート2の熱融着面または表面材3の熱融着面を、融点温度以上に加熱すれば、本発明の効果を得ることができるが、本発明では特に、少なくとも中空凸部成形シート2の熱融着面を融点温度以上に加熱することが好ましい。この理由を以下説明する。
【0055】
中空凸部成形シート2と表面材3が実際に熱融着する部分は、例えば、図2の実施形態においては、符号fで示す部分である。一方、図2中符号nで示す部分は、表面材3の熱融着面の一部ではあるが、実際には熱融着されない部分である。そのため、中空凸部成形シート2の方を融点温度以上に加熱して再溶融する方が、実際に熱融着される部分のみをピンポイントで溶融させることができる。その結果、表面材3は固化した状態のまま、中空凸部成形シート2に積層されるため、表面材3が中空凸部成形シート2の凹凸構造に追従することを回避することができ、平滑な表面の中空構造板を安定的に生産することができる。
【0056】
また、表面材3の熱融着面を再溶融させる場合、実際には熱融着されない部分nも溶融状態になるため、中空凸部成形シート2と接触・圧着される場合に、極稀ではあるが、この部分nの樹脂が、中空凸部成形シート2の凹部に入り込む場合がある。これに対し、中空凸部成形シート2の方を再溶融させれば、表面材3の熱融着面の中空凸部成形シート2の凹部への入り込みを確実に防止することができる。
【0057】
その他、中空凸部成形シート2の熱融着面を加熱する際の余熱にて、表面材3の熱融着面を融点温度以上に加熱することも可能である。
【0058】
図10は、本発明に係る製造方法の第2実施形態(コアコーン(登録商標)(ツイン)への片面表面材・表皮材貼り合わせ)を示す概念図である。第2実施形態に係る製造方法は、中空凸部成形シート2として、中空状の凸部21a、22aが間隔をあけて複数形成された熱可塑性樹脂からなる中空凸部成形シート21、22が、互いの中空凸部21a、22a同士を突き合わせて熱融着されたシートを用いた例である。
【0059】
また、第2実施形態に係る製造方法は、熱接融着工程Iにおいて、熱接着工程Iaを行った後に、熱融着工程Ibを行う例である。第2実施形態に係る製造方法の熱融着工程Iaでは、加熱手段を備えた温度制御部108を用いて、表面材3の中空凸部成形シート2に熱融着される面の反対面および/または表皮材4を、接着温度以上に制御した状態で、抑えローラー102によって表面材3と表皮材4とを接触・圧着して熱接着する。
そして、熱接着工程Iaを行った後に、熱融着工程Ibにおいて、加熱部101によって、中空凸部成形シート2の熱融着面および/または表面材3の熱融着面を、中空凸部成形シート2および/または表面材3の融点温度以上に加熱するとともに、冷却機能を備えた前記抑えローラー102によって、表面材3の非熱融着面を、表面材3の融点未満に温度制御した状態のままで、表面材3の熱融着面を、中空凸部成形シート2の一方の面に熱融着する。
【0060】
第2実施形態に係る製造方法のように、熱接着工程Iaを行った後に、熱融着工程Ibを行う場合、抑えローラー102内に、例えば冷却媒体流路などを形成して冷却可能に構成することも可能であるが、抑えローラー102の材質上、抑えローラー102に接触するだけで表面材3の中空凸部成形シート2に熱融着される面の反対面を融点温度以下に冷却可能であれば、特に積極的に冷却手段を設けなくてもよい。
【0061】
図11は、本発明に係る製造方法の第3実施形態(ツインコーン(登録商標)への両面表皮材貼り合せ)を示す概念図である。第3実施形態に係る製造方法は、中空凸部成形シート2の両側に、表面材31、32を熱融着し、その表面材31、32の両外側に、表皮材41、42を熱接着する例である。その他は、第1実施形態に係る製造方法と同一である。なお、第3実施形態では、中空凸部成形シート2の両側に、表面材31、32を同時に熱融着しているが、これに限定されず、図示しないが、中空凸部成形シート2の片側ずつ、表面材31および32を時間差で熱融着することも可能である。
【0062】
なお、各実施形態を説明する図では、先端にTダイ103が設けられた押出機104から、熱可塑性樹脂を押し出してシート状にして表面材3を形成した後に、熱接融着工程Iを行っているが、これに限定されず、予めシート状に形成された表面材3を用いることも可能である。
【0063】
[中空凸部成形シート作製工程II]
中空凸部成形シート作製工程IIは、熱可塑性樹脂シートの一方の面に、中空状の凸部2aを複数形成して中空凸部成形シート2を作製する工程である。本発明に係る製造方法では、必須の工程ではなく、予め、中空状の凸部が成形されたシート2を用いることもできるが、本発明に係る製造方法内において、中空凸部成形シート作製工程IIを行って、中空凸部成形シート2を作製することも可能である。
【0064】
図12は、本発明に係る製造方法の第4実施形態(コアコーン(登録商標)(シングル)への片面表面材・表皮材貼り合せ)を示す概念図である。第4実施形態に係る製造方法は、中空凸部成形シート作製工程IIを行って中空凸部成形シート2を作製した後に、熱接融着工程Iを行うことにより、作製した中空凸部成形シート2に表面材3を熱融着させるとともに、更に該表面材3に表皮材4を熱接着させる方法である。
【0065】
中空凸部成形シート作製工程IIでは、熱可塑性樹脂シートの一方の面に、中空状の凸部2aを複数形成することができれば、その具体的な方法は特に限定されず、通常、中空凸部成形シートを作製する際に用いられる方法を自由に選択して用いることができる。例えば、第4実施形態では、表面に凸状のピンが複数突設された2対の成形ローラー105を用いて中空凸部成形シート2を作製している。
【0066】
図13は、本発明に係る製造方法の第5実施形態(シングルコーン(登録商標)への片面表皮材貼り合せ)を示す概念図である。第5実施形態に係る製造方法は、中空凸部成形シート作製工程IIにおいて、中空凸部成形シート2の作製と同時に、中空凸部成形シート2の一方の面に表面材32を熱融着させ、その後、熱接融着工程Iを行うことにより、作製した中空凸部成形シート2の他方の面に、表面材31を熱融着させるとともに、更に該表面材31に表皮材4を熱接着させる方法である。
【0067】
第5実施形態に係る製造方法では、中空凸部成形シート作製工程IIを、表面に凸状のピンが複数突設された成形ローラー105と、表面が平坦な平ローラー106とが、その回転軸が相互に平行になるように配置された真空形成装置によって行う。これらの成形ローラー105と平ローラー106は、それぞれ減圧チャンバー107a、107b内に設置されており、例えば、中空凸部成形シート2や表面材32を形成する樹脂の融点温度よりも低い温度で加熱させる構成とすることができる。また、減圧チャンバー107a、107bには、中空凸部成形シート2および表面材32を吸引保持するための吸引孔108a、108bを設けることが好ましい。
【0068】
図14は、本発明に係る製造方法の第6実施形態(シングルコーン(登録商標)への両面表皮材貼り合せ)を示す概念図である。第6実施形態に係る製造方法は、中空凸部成形シート作製工程IIと同時に、熱接融着工程Iを行うことで、中空凸部成形シート2の一方の面に表面材32を熱融着させるとともに、更に該表面材32に表皮材42を熱接着させ、その後、さらに熱接融着工程Iを行うことにより、作製した中空凸部成形シート2の他方の面に、表面材31を熱融着させるとともに、更に該表面材31に表皮材42を熱接着させる方法である。
【0069】
図15は、本発明に係る製造方法の第7実施形態(ツインコーン(登録商標)への両面表皮材貼り合せ)を示す概念図である。第7実施形態に係る製造方法は、中空凸部成形シート作製工程IIにおいて、熱可塑性樹脂シートの一方の面に、中空状の凸部21a、22aを複数形成して2枚の成形シート21、22を作製し、それぞれの成形シート21、22を、その中空凸部2a同士を突き合わせて熱融着して中空凸部成形シート2(所謂、コアコーン(登録商標)(ダブル))を作製している。具体的には、表面に凸状のピンが複数突設された2対の成形ローラー105を、互いのピンを突き合わせるように配置することで、ツインコーン(登録商標)を作製している。
【0070】
そして、中空凸部成形シート作製工程IIでコアコーン(登録商標)(ツイン)を作製した後、熱接融着工程Iを行うことにより、作製されたコアコーン(登録商標)(ツイン)の両面に、表面材31、32を熱融着させるとともに、更に該表面材31、32に表皮材41、42を熱接着させている。
【0071】
図16は、本発明に係る製造方法の第8実施形態(ツインコーン(登録商標)への片面表皮材貼り合せ)を示す概念図である。第8実施形態に係る製造方法は、中空凸部成形シート作製工程IIにおいて、コアコーン(登録商標)(ツイン)を作製した後、コアコーン(登録商標)(ツイン)の一方の面には、熱融着工程Ibのみを行って表面材32を熱融着し、他方の面には、熱接融着工程Iを行って表面材31を熱融着させるとともに、更に該表面材31に表皮材4を熱接着する方法である。また、第8実施形態に係る製造方法では、中空凸部成形シート作製工程IIにおいて、真空形成装置によって、コアコーン(登録商標)(ツイン)を作製している。真空形成装置は、前述した第5実施形態(図13)と同一であるため、ここでは説明を割愛する。
【0072】
図17は、本発明に係る製造方法の第9実施形態を示す概念図である。第9実施形態に係る製造方法は、中空凸部成形シート作製工程IIにおいて、コアコーン(登録商標)(ツイン)を作製した後に熱接融着工程Iを行って、熱接融着工程Iでコアコーン(登録商標)(ツイン)の両面に、表面材31、32を熱融着させるとともに、更に該表面材31、32に表皮材41、42を熱接着する方法である。
【0073】
なお、各実施形態を説明する図では、先端にTダイ103が設けられた押出機104から、熱可塑性樹脂を押し出して中空凸部成形シート作製工程IIを行っているが、これに限定されず、予めシート状に形成された熱可塑性樹脂シートを用いて中空凸部成形シート2を作製することも可能である。
【0074】
図18は、中空構造板の製造方法の別の例を示す概念図である。図18に示す製造方法例では、先端にTダイ103が設けられた押出機104から熱可塑性樹脂を押し出して、溶融状態もしくは半溶融状態の表面材3を、表皮材4の一方の面に供給し、表面材3と表皮材4とを融着する(融着工程Ia)。接着後、すぐに、表面材3および表皮材4を、冷却手段を有する抑えローラーによって表面材3の融点温度未満に冷却し固化させる(固化工程Ic)。その後、固化した表面材3の熱着面および/または中空凸部成形シート2の熱融着面を加熱部101によって融点温度以上に加熱するとともに、表皮材4および表面材3の中空凸部成形シート2に熱融着される面の反対面は抑えローラーによって表面材3の融点温度未満に冷却した状態を維持したままで、表皮材4が接着された表面材3を、中空凸部成形シート2の一方の面に熱融着させる(熱融着工程Ib)。
【0075】
図18に示す製造方法では、抑えローラー102内に、例えば冷却媒体流路などを形成して冷却可能に構成することも可能であるが、抑えローラー102の材質上、抑えローラー102に接触するだけで表面材3の非熱融着面を融点温度以下に冷却可能であれば、特に積極的に冷却手段を設けなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明によれば、中空凸部成形シートに表面材を接触・圧着させる際、表面材の非熱融着面は固化状態が保たれたままであるため、中空凸部成形シートの凹凸に追従しないので、平滑な表面の中空構造板を安定的に生産することが可能である。そのため、本発明に係る製造方法を用いて製造した中空構造板は、表面が平滑で優れた外観を有するので、例えば、箱材や梱包材などの物流用途、壁や天井用のパネル材などの建築用途、自動車の内装など、広い分野において好適に用いることが可能である。
【0077】
また、本発明に係る製造方法は、中空凸部成形シートへの表面材の熱融着および表面材への表皮材への熱接着を、同一の温度制御手段により行うことができる。そのため、製造工程における温度制御を容易に行うことができ、更に、装置の小型化、製造工程の簡便化を実現でき、製造に係る時間やコストの削減を達成することが可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 中空構造板
2、21、22 中空凸部成形シート
3、31、32 表面材
2a、21a、22a 中空凸部
23 中間シート
4、41、42 表皮材
101 加熱部
102 抑えローラー
103 Tダイ
104 押出機
105 成形ローラー
106 平ローラー
107a、107b 減圧チャンバー
108 温度制御部
I 熱接融着工程
Ia 熱接着工程
Ib 熱融着工程
Ic 固化工程
II 中空凸部成形シート作製工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19