(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述したような部材の取付構造では、ワイヤ部材と一対のフックの係合部とをより強固に係合させることが望まれている。
【0006】
そこで、本発明は、ワイヤ部材(棒状部)と各係合部とを強固に係合させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した課題を解決する本発明は、第1部材と第2部材とを取り付けるための部材の取付構造であって、前記第1部材には、当該第1部材から第1方向に突出する第1板状部と、前記第1部材から第1方向に突出し、前記第1方向に直交する第2方向で前記第1板状部に対向する第2板状部と、前記第1板状部の先端部のうち前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向の一方側の部位から前記第2板状部に向けて突出する第1係合部と、前記第2板状部の先端部のうち前記第3方向の他方側の部位から前記第1板状部に向けて突出する第2係合部と、が設けられ、前記第2部材には、前記第1板状部および前記第2板状部の間に挟まれるとともに、前記第1係合部および前記第2係合部が係合する第1棒状部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、各板状部を係合部よりも幅広に形成することで、各板状部の剛性を高くすることができるので、各係合部と第1棒状部とをより強固に係合させることができる。
【0009】
また、前記した構成において、前記第2部材には、前記第1棒状部から前記第1方向に延びる第2棒状部が設けられ、前記第1係合部および前記第2係合部のうち前記第2棒状部に近い係合部における前記第3方向における外側の面が、前記第2方向の内側に向かう程、前記第3方向の内側に位置するように傾斜しているのが望ましい。
【0010】
ここで、第1棒状部から第1方向に延びる第2棒状部を設けた場合には、各板状部の剛性を高くした関係上、第1棒状部に係合した各係合部を第1方向や第3方向に引っ張って外そうとしても外しにくくなる懸念がある。これに対し、各係合部のうち第2棒状部に近い係合部における第3方向における外側の面が、第2方向の内側に向かう程、第3方向の内側に位置するように傾斜することで、第3方向において係合部を第2棒状部から外し易くすることができる。
【0011】
また、前記した構成において、前記第1板状部および前記第2板状部には、突条部が設けられているのが望ましい。
【0012】
ここで、各板状部の剛性はより高い方が望ましい。これに対し、各板状部に突条部を設けることで、各板状部の剛性をより高くすることができる。
【0013】
また、前記した構成において、前記突条部は、各板状部の前記第2方向の外側の面と前記第1部材とを繋ぐリブであるのが望ましい。
【0014】
ここで、例えば前述した突条部を第1部材に繋げない場合には、各板状部の剛性が低くなる懸念がある。これに対し、突条部を、板状部と第1部材とを繋ぐリブとすることで、各板状部の剛性をより高くすることができる。
【0015】
また、前記した構成において、前記リブの前記板状部とは反対側には、前記第1部材から前記第1方向に突出する壁が設けられ、前記リブと前記壁が繋がっているのが望ましい。
【0016】
ここで、例えば前述したリブの板状部とは反対側を何らかの壁に繋げない場合には、板状部の剛性が低くなる懸念がある。これに対し、リブの板状部とは反対側を壁に繋げることで、各板状部の剛性をより高くすることができる。
【0017】
また、前記した構成において、前記第1部材は、各板状部の間に孔が形成されているのが望ましい。
【0018】
ここで、第1部材は軽量化することが望まれている。これに対し、第1部材の各板状部の間に孔を形成することで、第1部材の軽量化を図ることができる。
【0019】
また、前記した構成において、前記第1部材が複数の固定点で固定される第3部材をさらに備える場合には、前記各板状部は、隣接する2つの固定点の間に設けられるのが望ましい。
【0020】
ここで、前述したように各板状部の剛性はより高い方が望ましい。これに対し、隣接する2つの固定点の間の剛性の高い部位に各板状部を設けることで、各板状部の剛性をより高くすることができる。
【0021】
また、前記した構成において、前記第2部材は、乗物用シートのシートバックフレームであり、前記第1部材および前記第3部材は、前記シートバックフレームの後側に設けられるバックボードを構成する部材であり、それぞれ枠状に形成され、互いの間でポケット部材を挟み込むように構成される場合には、前記2つの固定点の少なくとも一方は、前記ポケット部材の肉厚部の近傍に配置されているのが望ましい。
【0022】
ここで、第1部材および第3部材の間でポケット部材を挟み込むように構成される場合には、第1部材と第3部材との固定点の配置によっては、ポケット部材の肉厚部を強く押さえこむことができず、ポケット部材と第3部材とを略面一にできなくなる懸念がある。これに対し、各板状部を間に挟んで隣接する2つの固定点の少なくとも一方を、ポケット部材の肉厚部の近傍に配置することで、固定点でポケット部材の肉厚部を強く押さえこむことができるので、ポケット部材と第3部材とを略面一にすることができる。
【0023】
また、前記した構成において、前記第1部材の外周縁から外側に突出する突出片に、前記各板状部の少なくとも一部を配置し、前記突出片よりも内側の位置に、前記複数の固定点を配置するのが望ましい。
【0024】
ここで、例えば各板状部を枠状の第1部材の内周縁側に配置する場合には、バックボードの左右の端部と板状部との距離が大きくなるため、バックボードの左右の端部を引っ張った際に、板状部に大きなモーメントがかかり、バックボードがシートバックフレームから外れやすくなる懸念がある。これに対し、各板状部を第1部材の外周縁よりも外側に突出する突出片に配置することで、バックボードの左右の端部と板状部との距離が小さくなり、バックボードの左右の端部を引っ張った場合において板状部にかかるモーメントを小さくすることができるので、バックボードをシートバックフレームから外れにくくすることができる。
【0025】
また、例えば突出片の外縁と同じ位置まで第1部材の外周縁を延ばし、当該外周縁付近に固定点を配置する場合には、第1部材が大型化する懸念がある。これに対し、板状部を配置する箇所のみに突出片を設け、その他の外周縁を突出片よりも内側にすることで、第1部材の小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、各板状部を係合部よりも幅広に形成することで、各板状部の剛性が高くなるので、各係合部と第1棒状部とをより強固に係合させることができる。
【0027】
また、本発明によれば、第2棒状部に近い係合部における第3方向における外側の面が、第2方向の内側に向かう程、第3方向の内側に位置するように傾斜しているので、第3方向において係合部を第2棒状部から外し易くすることができる。
【0028】
また、本発明によれば、前記第1板状部および前記第2板状部に突条部を設けることで、各板状部の剛性をより高くすることができる。
【0029】
また、本発明によれば、突条部を、各板状部の第2方向の外側の面と第1部材とを繋ぐリブとすることで、各板状部の剛性をより高くすることができる。
【0030】
また、本発明によれば、リブの板状部とは反対側に設けた壁とリブとを繋げることで、各板状部の剛性をより高くすることができる。
【0031】
また、本発明によれば、第1部材の各板状部の間に孔を形成することで、第1部材の軽量化を図ることができる。
【0032】
また、本発明によれば、隣接する2つの固定点の間の剛性の高い部位に各板状部を設けることで、各板状部の剛性をより高くすることができる。
【0033】
また、本発明によれば、2つの固定点の少なくとも一方をポケット部材の肉厚部の近傍に配置することで、固定点でポケット部材の肉厚部を強く押さえこむことができるので、ポケット部材と第3部材とを略面一にすることができる。
【0034】
また、本発明によれば、第1部材の外周縁から外側に突出する突出片に、各板状部の少なくとも一部を配置することで、バックボードをシートバックフレームから外れにくくすることができる。また、突出片以外の部位の外周縁を当該突出片よりも内側にすることで、第1部材の小型化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
次に、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明においては、まず、車両用シート(乗物用シート)の全体構成を簡単に説明した後、本発明の特徴部分を詳細に説明することとする。
【0037】
図1に示すように、車両用シートSは、自動車の運転席に使用されるシートであり、シートクッションS1と、シートバックS2と、ヘッドレストS3とを主に備えている。
【0038】
シートクッションS1およびシートバックS2には、
図2に示すようなシートフレームFが内蔵されている。シートフレームFは、シートクッションS1のフレームを構成するシートクッションフレームF1と、シートバックS2のフレームを構成するシートバックフレームF2とから主に構成されている。シートクッションS1は、シートクッションフレームF1に、ウレタンフォームなどのクッション部材からなるシートクッションパッドと、合成皮革や布地などからなる表皮部材を被せることで構成され、シートバックS2は、シートバックフレームF2に、クッション部材からなるシートバックパッドP(
図3参照)と、合成皮革や布地などからなる表皮部材E(
図5参照)を被せることで構成されている。
【0039】
シートバックフレームF2は、その下部がシートクッションフレームF1の後部にリクライニング機構RLを介して回動自在に連結されている。これにより、シートバックS2は、シートクッションS1に対し前後に傾動可能となっている。
なお、本明細書において、前後、左右および上下は、リクライニング機構RLによってシートバックS2が倒されていない状態の車両用シートSに着座した乗員を基準とする。
【0040】
シートバックフレームF2は、上部フレーム10と、左右のサイドフレーム20と、下部フレーム30とを主に有して構成され、上部フレーム10、左右のサイドフレーム20および下部フレーム30が溶接などによって一体に結合された枠状に形成されている。そして、この枠状のシートバックフレームF2の内側には、乗員からの荷重を受ける受圧部材40およびワイヤ41が配置されている。
【0041】
上部フレーム10は、略U形状に屈曲するパイプ材で構成されており、左右方向に延びる横パイプ部11の前側には、ヘッドレストS3を取り付けるための左右一対のサポートブラケット12が溶接によって固定されている。また、上部フレーム10の上下方向に延びる左右の縦パイプ部13は、それぞれ、その下部に結合される左右のメインサイドフレーム21と一体となって左右のサイドフレーム20を構成している。
【0042】
なお、左右の縦パイプ部13の上部には、後述するバックボード50(
図4参照)の上部を係合させるための剛性ワイヤ42が、適宜屈曲しながら左右に延びるように設けられている。
【0043】
サイドフレーム20は、前述した左右の縦パイプ部13と、左右のメインサイドフレーム21と、ロアサイドフレーム22とを有して構成されている。
【0044】
左右のメインサイドフレーム21は、サイドフレーム20の中間部を構成する部材であり、金属板をプレス加工するなどして断面視略U形状に形成され、左右方向に対向して配置されている。メインサイドフレーム21は、その上部において縦パイプ部13を抱持した状態で縦パイプ部13と結合されており、その下部が上部よりも前方に向けて張り出す張出部21aを有する形状に形成されている。
【0045】
左右のロアサイドフレーム22は、サイドフレーム20の下部を構成する部材であり、金属板をプレス加工するなどして断面視略U形状に形成され、左右方向に対向して配置されている。ロアサイドフレーム22は、その上部においてメインサイドフレーム21の下部に抱持された状態でメインサイドフレーム21の下部に溶接により結合されている。
【0046】
詳しくは、ロアサイドフレーム22は、前後方向の幅がメインサイドフレーム21の下部と同幅に形成されている。言い換えると、ロアサイドフレーム22は、前後方向の幅がメインサイドフレーム21の幅狭な上部よりも幅広に形成されている。
【0047】
下部フレーム30は、左右のロアサイドフレーム22を連結する連結パイプ31と、連結ビーム32とを有して構成されている。具体的に、連結パイプ31は、断面視略U形状のロアサイドフレーム22の底部に相当する側壁22aを連結し、連結ビーム32は、ロアサイドフレーム22の側壁22aの後端および下端から左右方向内側に延びるフランジ部22bを連結している。
【0048】
図3(a)に示すように、シートバックパッドPは、乗員の背中を支持する部材であり、前述したシートバックフレームF2に前側から被せられることで、シートバックフレームF2に支持されている。具体的に、シートバックパッドPは、乗員の背中を支持する前壁部P1と、前壁部P1の上端部から後方に突出する上壁部P2と、前壁部P1の左右の端部から後方に突出する左右の側壁部P3とを有している。
【0049】
側壁部P3の後部には、段差部P6と、側部構成部P31と、突出部P32が設けられている。段差部P6は、左右の側壁部P3の後部の上側に設けられており、
図3(b),(c)に示すように、左右方向内側の内側部P61が左右方向外側の外側部P62よりも高さが低くなるように形成されている。内側部P61は、後述する棒状部材60(
図6参照)が設けられる範囲に対応するように設けられている。
【0050】
この段差部P6は、
図4に示すように、シートバックフレームF2の後側に配置されるバックボード50の左右両端縁の上部に倣って合致するような形状に形成されている。詳しくは、シートバックパッドPの段差部P6は、バックボード50との間に表皮部材Eを挟んだ状態で、バックボード50の左右両端縁の上部に合致する形状となっている。
【0051】
これにより、例えば段差部P6を設けない構造に比べ、
図5(a)に示すように、シートバックパッドP(詳しくは表皮部材E)の後面とバックボード50の後面とを略面一にすることができるので、外観を向上させることが可能となっている。
【0052】
図3(a)に戻って、側部構成部P31は、後述する表皮部材Eおよびバックボード50によって他の部位よりも大きく圧縮される部位であり、段差部P6の下側に配置されている。側部構成部P31は、
図3(b),(c)に示すように、段差部P6の内側部P61よりも高くなるように形成され、内側部P61の後面と側部構成部P31の後面とがなだらかな傾斜面P63で繋がっている。
【0053】
これにより、バックボード50の下部を前方に押し込んで側部構成部P31を圧縮する際に、内側部P61と側部構成部P31の境界付近に空間ができるのを抑えることができるので、側部構成部P31に対して均等に力を加えて良好に圧縮することが可能となっている。
【0054】
図3(a)に示すように、突出部P32は、側部構成部P31の下側に配置され、側壁部P3から左右方向内側に突出するように形成されている。また、右側の側壁部P3には、左右に貫通する孔P33が形成されている。
【0055】
このように構成されるシートバックパッドPの外側には、
図5(a),(b)に示すように、表皮部材Eが被せられるようになっている。また、表皮部材Eは、シートバックパッドPの前側から後側に回り込んだ後、その端部に設けられたフックFKによってシートバックフレームF2に固定されるようになっている。
【0056】
そして、このように表皮部材Eを取り付ける際には、
図5(b)に仮想線で示すように、側部構成部P31が他の部位よりもサイドフレーム20に対する後方への突出量が大きく形成されていることから、側部構成部P31は、表皮部材Eによって大きく圧縮される。これにより、側部構成部P31が表皮部材Eで圧縮されて硬くなるので、シートバックパッドPが左右にぐらつくのを抑えることが可能となっている。
【0057】
また、本実施形態では、表皮部材Eの取付後に、シートバックフレームF2に対して後側からバックボード50を取り付ける際に、当該バックボード50の左右の端部によって側部構成部P31がさらに圧縮されるようになっている。このように表皮部材Eとバックボード50の両方で側部構成部P31を圧縮することで、側部構成部P31の圧縮量を大きくすることができるので、側部構成部P31をより硬くすることが可能となっている。
【0058】
なお、表皮部材Eとバックボード50による側部構成部P31の圧縮量は、40mm以上であるのが望ましい。このように側部構成部P31の圧縮量を40mm以上とすることで、側部構成部P31を確実に硬くすることができ、シートバックパッドPのぐらつきを良好に抑えることができる。
【0059】
また、前述したように、側部構成部P31を、表皮部材Eで圧縮した後で、バックボード50でさらに圧縮する構造とすることで、バックボード50の取付時に、側部構成部P31を潰す量を少なくすることができるので、バックボード50の取付作業を容易にすることが可能となっている。
【0060】
また、側部構成部P31は、メインサイドフレーム21の上部よりも幅広に形成されたロアサイドフレーム22によって左右方向内側から支持されている。これにより、幅広のロアサイドフレーム22によって側部構成部P31を安定して支持することができるので、シートバックパッドPのぐらつきをより抑制することが可能となっている。
【0061】
バックボード50は、その左右の端部とサイドフレーム20との間に隙間が空くように配置されている。そして、側部構成部P31は、バックボード50の左右の端部とサイドフレーム20との隙間を塞ぐように配置されている。
【0062】
これにより、圧縮により硬くなった側部構成部P31で隙間を塞ぐことで、当該隙間に物が侵入してくるのを抑えることができるので、バックボード50の左右の端部とサイドフレーム20との間に物が入り込んでバックボード50が外れてしまうのを抑えることが可能となっている。
【0063】
特に、本実施形態においては、バックボード50の左右の端部とサイドフレーム20との間(隙間)のうち、下側の一部に側部構成部P31を配置し、側部構成部P31よりも上側の部分には、
図5(a)および
図6に示すように、シートバックパッドPを内側から支えるための棒状部材60を配置している。これにより、隙間の一部のみに大きく圧縮する部分である側部構成部P31を配置すればよいので、例えば側部構成部を隙間の略全体に配置する構造に比べ、表皮部材Eやバックボード50の取付時に側部構成部P31からの反力を小さくすることができ、バックボード50の取付作業を容易にすることが可能となっている。
【0064】
具体的に、棒状部材60は、サイドフレーム20に沿って長尺状に形成される本体部61と、本体部61の下端部から前斜め上方に向けて延びる第1延出部62と、第1延出部62の前端から略前方に向けて延びる第2延出部63とを有している。そして、本体部61の上端部は、メインサイドフレーム21の上端部に溶接により接合されたスイッチ用ブラケットSBに溶接により接合されている。
【0065】
詳しくは、スイッチ用ブラケットSBは、上下2箇所の溶接点W1,W2でメインサイドフレーム21の上端部に溶接され、本体部61の上端部は、2箇所の溶接点W1,W2の間の溶接点W3でスイッチ用ブラケットSBに溶接されている。これにより、スイッチ用ブラケットSBの取付剛性を向上させることが可能となっている。ここで、スイッチ用ブラケットSBは、車両用シートSのリクライニングとスライド用のスイッチを取り付けるためのブラケットである。
【0066】
第2延出部63の端部は、メインサイドフレーム21の下側に溶接により接合されている。詳しくは、第2延出部63の溶接点W4(固定箇所)は、メインサイドフレーム21のロアサイドフレーム22に対する3つの溶接点W5(固定箇所)よりも上方に設けられている。
【0067】
これにより、メインサイドフレーム21とロアサイドフレーム22とを溶接により接合する際に、棒状部材60が邪魔になるのを防止することが可能となっている。また、第1延出部62は、溶接点W4よりも後斜め下方に延出しているので、本体部61の上下長さを大きくすることができ、その分、本体部61の下側に配置される側部構成部P31の大きさを小さくして、表皮部材E等の取付時の反発力を軽減することが可能となっている。
【0068】
図7に示すように、バックボード50は、第3部材の一例としての樹脂製のアウターボード51と、合成皮革や布地などからなるポケット部材52と、第1部材の一例としての樹脂製のインナーボード53とを有している。
【0069】
アウターボード51は、略矩形の枠状に形成されており、その前面には、前方に向けて突出する複数の溶着用ボス51aが開口部51bの周りを囲うように設けられている。そして、アウターボード51とインナーボード53との間でポケット部材52を挟み込みつつ、各溶着用ボス51aをインナーボード53に設けられる複数の溶着用孔53aに挿入した後溶融させることで、アウターボード51とインナーボード53との間でポケット部材52が保持されるようになっている。
【0070】
また、アウターボード51の前面下部には、前方に向けて突出した後左右方向内側に向けて突出する鉤状の左右一対の爪部51dが左右に離れて設けられている。各爪部51dは、インナーボード53の下部に設けられる左右一対の係合孔53dに係合する爪であり、これにより、アウターボード51とインナーボード53を仮組することが可能となっている。
【0071】
また、アウターボード51の前面上部には、前方に突出した後上方に曲がる左右一対の鉤状部51cが形成されている。各鉤状部51cは、アウターボード51とインナーボード53の溶着が完了した後の状態で、インナーボード53の上方に配置されるようになっており、バックボード50をシートバックフレームF2に取り付ける際に、
図2に示す剛性ワイヤ42に下側から係合するようになっている。
【0072】
これにより、アウターボード51のおおよその上下位置を決めることができるとともに、アウターボード51の上部が後方に倒れてくるのを抑えることが可能となっている。
【0073】
ポケット部材52は、合成皮革や布地などからなる表皮材を複数枚重ね合せることで、物を収容するためのポケット部分52aを形成する部材であり、ポケット部分52aの入口部分52bは、ポケット部分52aの使い勝手を良くするために、重なり合った表皮材の間に板状の部材が設けられている。そのため、この入口部分52bは、ポケット部材52のうち最も肉厚となる肉厚部となっている。
【0074】
インナーボード53は、略矩形の枠状に形成されており、アウターボード51の複数の溶着用ボス51aに対応した複数の溶着用孔53aは、開口部53bの周りを囲うように設けられている。詳しくは、複数の溶着用孔53aは、枠状に形成される本体部53cの外周縁に沿った位置(後述する突出片53eよりも内側の位置)に配置されている。
【0075】
また、インナーボード53の下部には、前述した一対の係合孔53dが形成され、これら一対の係合孔53dの下側には、
図8および
図9に示すように、シートバックフレームF2の連結ビーム32に係合することで、当該連結ビーム32に保持される仮止め部71と、連結ビーム32に固定される固定部72とが、左右に1つずつ設けられている。そして、左側の仮止め部71は左側の固定部72と左右に隣接して配置され、右側の仮止め部71は右側の固定部72と左右に隣接して配置されている。
【0076】
このように仮止め部71と固定部72を隣接させることで、製造誤差の影響を受けにくいので、仮止め部71を連結ビーム32の係合箇所(後述する仮止め用孔32a)に係合させた後は、仮に製造誤差により固定部72と連結ビーム32の固定箇所(後述する固定用孔32b)とがずれていたとしてもそのずれ量が極めて小さい。そのため、固定部72を固定箇所に位置させる作業を容易にすることが可能となっている。
【0077】
また、仮止め部71と固定部72を左右に隣接させることで、例えば仮止め部と固定部を上下に隣接させた構造に比べ、バックボード50や連結ビーム32の上下寸法を短くすることができ、軽量化を図ることが可能となっている。
【0078】
前述した左右の仮止め部71および固定部72のレイアウトを別の表現で表すと、左右に隣接した仮止め部71および固定部72の組が、左右に離れて1組ずつ設けられることとなっている。そして、各組において、固定部72は、隣接する仮止め部71よりも左右方向外側に配置されている。
【0079】
これにより、例えば固定部を仮止め部よりも左右方向内側に配置する構造に比べ、バックボード50の左右の端部と固定部72との距離を短くすることができるので、連結ビーム32に固定したバックボード50の左右の端部を引っ張った場合において、固定部72にかかるモーメントを小さくすることができ、バックボード50と連結ビーム32との取付剛性を高くすることが可能となっている。
【0080】
具体的に、仮止め部71は、バックボード50から前方に突出する基部71aと、当該基部71aから前方に突出して連結ビーム32の仮止め用孔32aに係合する係合部71bとを有している。基部71aは、隣接する固定部72とは反対側、すなわち左右方向内側に向けて開口する有底筒状に形成されている。
【0081】
このように基部71aを有底筒状(中空状)に形成することで、例えば基部を中実状に形成する構造に比べ、バックボード50の軽量化を図ることが可能となっている。また、有底筒状の基部71aの開口を固定部72とは反対側に向けたので、有底筒状の基部71aの底に相当する壁71cが固定部72に隣接するので、固定部72の剛性を高めることが可能となっている。
【0082】
係合部71bは、前方に突出した後下方に突出する鉤状に形成されており、その先端の左右方向の幅が、仮止め用孔32aの左右方向の幅よりも小さくなるように形成されている。
【0083】
固定部72は、バックボード50から前方に突出するように形成されており、後方に開口する有底筒状に形成されている。固定部72は、前方に向かうにつれて徐々に先細になるように形成されており、これにより、固定部72自体の剛性を高くすることが可能となっている。
【0084】
また、有底筒状の固定部72の底に相当する壁72aには、固定部72を連結ビーム32に固定するためのネジSCが挿通される貫通孔72bが形成されている。右側の固定部72に形成される貫通孔72bは、上下方向に延びる長孔として形成され、左側の固定部72に形成される貫通孔72bは、左右方向に延びる長孔として形成されている。これにより、樹脂製のバックボード50が上下左右に熱膨張することを各貫通孔72bによって吸収することが可能となっている。
【0085】
図9(a)に示すように、連結ビーム32には、左右一対の仮止め部71の係合部71bの先端が係合する左右一対の仮止め用孔32aと、左右一対の仮止め用孔32aの左右方向外側に配置される左右一対の固定用孔32bとが形成されている。仮止め用孔32aの下側には、当該仮止め用孔32aに向けて仮止め部71の係合部71bの先端を下から上に案内する第1傾斜面32cが設けられている。
【0086】
これにより、第1傾斜面32cによって仮止め部71の係合部71b先端を上下方向において仮止め用孔32aに案内することができるので、バックボード50の取付作業を容易にすることが可能となっている。
【0087】
また、第1傾斜面32cの左右には、仮止め部71の係合部71bの先端を左右方向内側に向けて案内する一対の第2傾斜面32dが設けられている。これにより、仮止め部71の係合部71bを第1傾斜面32cに向けて案内することができるので、バックボードの取付作業を容易にすることが可能となっている。
【0088】
また、第1傾斜面32cおよび当該第1傾斜面32cの左右両側の第2傾斜面32dは、凹部として一体に形成され、当該凹部のうち仮止め用孔32aの下縁を形成する上縁部32eに仮止め部71の係合部71bの先端が係合するように構成されている。このように第1傾斜面32cおよび第2傾斜面32dを凹部として一体に形成することで、凹形状により剛性が高くなった凹部の上縁部32eに仮止め部71の係合部71bの先端が係合するので、バックボード50を良好に仮止めすることができる。
【0089】
また、仮止め用孔32aは、後側から見て乗員を支えるワイヤ41とは重ならない位置に設けられている。これにより、仮止め部71の係合部71bの先端を仮止め用孔32aに係合させる際に、係合部71bの先端がワイヤ41に干渉するのを抑えることが可能となっている。
【0090】
図7に戻って、インナーボード53の本体部53cの左右の側部における略中央部には、当該本体部53cの外周縁から外側に突出する突出片53eが形成されている。そして、左右の突出片53e付近には、
図10および
図11に示すように、第2部材の一例としてのメインサイドフレーム21に設けた側面視U形状の係合金具90(
図11(a)参照)に係合する板状フック80がそれぞれ1つずつ設けられている。
【0091】
ここで、係合金具90は、円柱状の棒状の部材の両端部を側面視U形状に折り曲げた後、各端部を左右方向内側に折り曲げた形状となっている。詳しくは、係合金具90は、上下方向に延びる第1棒状部91と、第1棒状部91の上下の端部から前方に向けて延びる第2棒状部92と、各第2棒状部92から左右方向内側に延びる第3棒状部93(
図11(b)参照)とを有している。
【0092】
板状フック80は、バックボード50から前方に向けて突出する第1板状部81と、バックボード50から前方に向けて突出し、かつ、左右方向で第1板状部81に対向する第2板状部82と有して構成されている。なお、本実施形態では、前後方向が第1方向に相当し、左右方向が第2方向に相当し、上下方向が第3方向に相当する。
【0093】
第1板状部81の内面(第2板状部82側の面)の先端部のうち上側の部位には、当該部位から第2板状部82に向けて突出する第1係合部81aが形成されている。また、第2板状部82の内面(第1板状部81側の面)の先端部のうち下側の部位には、当該部位から第1板状部81に向けて突出する第2係合部82aが形成されている。
【0094】
そして、板状フック80を係合金具90に係合させた状態においては、係合金具90の第1棒状部91が第1板状部81と第2板状部82の間に挟まれるとともに、第1棒状部91に対して第1係合部81aおよび第2係合部82aが前側から係合するようになっている。つまり、各板状部81,82を各係合部81a,82aよりも上下方向において幅広に形成することで、各板状部81,82の剛性を高くすることができるので、各係合部81a,82aと第1棒状部91とをより強固に係合させることが可能となっている。
【0095】
また、第1板状部81(板状フック80の一部)は、インナーボード53の本体部53cの外周縁から外側に突出する突出片53e上に配置されている。これにより、例えば板状フック80の全部を本体部53cに配置した構造に比べ、バックボード50の左右の端部と板状フック80との距離を短くすることができるので、バックボード50の左右の端部を引っ張った場合において板状フック80にかかるモーメントを小さくすることができ、板状フック80を係合金具90から外れにくくすることが可能となっている。
【0096】
また、突出片53eは、板状フック80を配置する箇所にのみ形成され、その他の外周縁(本体部53cの外周縁)は突出片53eよりも内側になるように形成されているので、例えば突出片53eの外周縁と同じ位置まで本体部53cの外周縁を延ばす構造に比べ、インナーボード53の軽量化を図ることが可能となっている。
【0097】
また、
図11(c)に示すように、各係合部81a,82aの上下方向外側の面81b,82bは、左右方向の内側に向かう程、上下方向の内側に位置するように傾斜している。これにより、板状フック80を上下方向に移動させると、傾斜した面81b,82bが第2棒状部92と当接することにより各板状部81,82が押し広げられるので、上下方向において各係合部81a,82aを第2棒状部92から外し易くすることが可能となっている。
【0098】
具体的には、例えば、板状フック80を下方に移動させた場合には、第2係合部82aの傾斜した面82bが下側の第2棒状部92に当接して第2板状部82が右側に押し広げられる。その後は、第1係合部81aの上下に直交した面81dが第2棒状部92に当接して板状フック80の移動が止められるが、板状フック80の移動方向を左斜め下方に変えることで、第2板状部82をさらに右側に押し広げて、各係合部81a,82aを第2棒状部92から外すことができる。
【0099】
図10に示すように、第1板状部81および第2板状部82の左右方向外側の面には、それぞれ突条部の一例としての2つのリブ81c,82cが設けられている。これにより、各板状部81,82の剛性をより高くすることが可能となっている。
【0100】
特に、本実施形態では、第1板状部81および第2板状部82は、バックボード50の本体部53cと突出片53eとに跨るように形成された凹部53fの底面上に設けられている。これにより、リブ81cの左側(第1板状部81とは反対側)には、凹部53fの底面から前方に突出する左壁53gが形成され、リブ82cの右側(第2板状部82とは反対側)には、凹部53fの底面から前方に突出する右壁53hが形成されるようになっている。
【0101】
そして、第1板状部81のリブ81cは、第1板状部81の左右方向外側の面と、凹部53fの底面と、左壁53gとを繋ぐように形成されている。また、第2板状部82のリブ82cは、第2板状部82の左右方向外側の面と、凹部53fの底面と、右壁53hとを繋ぐように構成されている。
【0102】
これにより、例えばリブを凹部の底面や左右の壁に繋げない場合に比べ、各板状部81,82の剛性をより高くすることが可能となっている。
【0103】
また、バックボード50のうち各板状部81,82の間には、上下方向に長い略矩形の孔53jが形成されている。孔53jは、左右の幅が各板状部81,82間の間隔と略同じ大きさで形成されるとともに、上下の長さが各板状部81,82の上下方向の長さよりも若干大きく形成されている。これにより、バックボード50の軽量化を図ることが可能となっている。
【0104】
また、各板状部81,82は、隣接する2つの固定点(溶着用ボス51aおよび溶着用孔53a)の間に設けられている。このように隣接する2つの固定点の間の剛性の高い部位に各板状部81,82を設けることで、各板状部81,82の剛性をより高くすることが可能となっている。
【0105】
また、前述した各板状部81,82を挟んで隣接する2つの固定点の少なくとも一方は、
図7に示すポケット部材52の肉厚のポケット部分52aの近傍に配置されている。これにより、このように各板状部81,82を挟んで隣接する2つの固定点の少なくとも一方を、ポケット部材52のポケット部分52aの近傍に配置することで、固定点でポケット部材52の肉厚のポケット部分52aを強く押さえこむことができるので、ポケット部材52とアウターボード51とを略面一にすることができる。
【0106】
以上に本発明の実施形態について説明したが、本発明は、以下の他の形態に示すように、適宜変形して実施することが可能である。
【0107】
前記実施形態では、各係合部81a,82aのいずれにも傾斜する面81b,82bを設けたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1棒状部の一端部のみに第2棒状部が設けられ、他端が壁等に固定される場合(すなわち、一端部に設けた第2棒状部側からしか係合フックが抜けない場合)には、第1係合部および第2係合部のうち第2棒状部に近い係合部の第3方向における外側の面のみを、第2方向の内側に向かう程、第3方向の内側に位置するように傾斜させればよい。
【0108】
前記実施形態では、突条部としてリブ81c,82cを例示したが、本発明はこれに限定されず、突条部は、例えば板状部に外側に向かって凹むように形成されるビードであってもよい。
【0109】
前記実施形態では、乗物用シートとして、自動車で使用される車両用シートSを例示したが、本発明はこれに限定されず、その他の乗物用シート、例えば、船舶や航空機などで使用されるシートに適用することもできる。