特許第5960003号(P5960003)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5960003
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】固定炭素製造装置
(51)【国際特許分類】
   C10B 47/20 20060101AFI20160719BHJP
   C10B 1/04 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   C10B47/20
   C10B1/04
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-202312(P2012-202312)
(22)【出願日】2012年9月14日
(65)【公開番号】特開2014-55272(P2014-55272A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2015年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000164438
【氏名又は名称】九州電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095603
【弁理士】
【氏名又は名称】榎本 一郎
(72)【発明者】
【氏名】原田 達朗
(72)【発明者】
【氏名】松田 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】持田 勲
(72)【発明者】
【氏名】林 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】松下 洋介
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛
【審査官】 ▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−061205(JP,A)
【文献】 実公平7−030662(JP,Y2)
【文献】 特開昭51−119701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B,F27B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定炭素を捕集するクエンチチャンバーと、前記クエンチチャンバーに立設固定された乾留炉と、前記乾留炉内の水平方向断面上を隔壁によって矩形又は多角形に鉛直方向に上部から下部まで区切られた乾留ユニットと、前記乾留ユニット内に水平方向断面上を仕切りによって矩形又は多角形に鉛直方向に上部から下部まで区切られたミニ乾留炉と、前記乾留ユニットの前記隔壁と前記ミニ乾留炉の仕切りに配設された加熱の為のパイプ状の加熱手段と、原料炭を前記乾留ユニットの上部から投入しそれぞれの前記ミニ乾留炉内で前記パイプ状の加熱手段によって乾留されクエンチチャンバーに製造された固定炭素を捕集する捕集路と、を備えることを特徴とする固定炭素製造装置。
【請求項2】
前記乾留炉の加熱温度が350℃〜500℃であることを特徴とする請求項1に記載の固定炭素製造装置。
【請求項3】
前記ミニ乾留炉内に邪魔板や金属メッシュ、穴の開いた金属板を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の固定炭素製造装置。
【請求項4】
前記邪魔板が安息角以上の角度をつけた穴空き構造であることを特徴とする請求項3に記載の固定炭素製造装置。
【請求項5】
前記クエンチチャンバーの底部の固定炭素取出し口にロータリーバルブと、高温の水蒸気または炭酸ガス、窒素ガス等のキャリアーガス送気手段と、を備えたことを特徴とする請求項1乃至4の内いずれか1項に記載の固定炭素製造装置。
【請求項6】
前記ロータリーバルブの回転する羽根部分に孔を備えたことを特徴とする請求項5に記載の固定炭素製造装置。
【請求項7】
前記原料炭が低石炭化度炭を含水率20質量%以下まで乾燥した乾燥炭であることを特徴とする請求項1乃至6の内いずれか1項に記載の固定炭素製造装置。
【請求項8】
前記原料炭の粒子径が0.1μm〜5mmに調整されていることを特徴とする請求項1乃至7の内いずれか1項に記載の固定炭素製造装置。
【請求項9】
前記原料炭を乾留することで得られる炭化水素ガス及び固定炭素の少なくとも一部を燃焼させる燃焼手段を備え、前記加熱手段が、燃焼手段の排ガスや廃熱を利用することを特徴とする請求項1乃至8の内いずれか1項に記載の固定炭素製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥させた低石炭化度炭を乾留炉内で移動させながら乾留し、乾留炉下部の冷却受け入れスペースであるクエンチチャンバーで高炭素化率の固定炭素を高効率で得ることができる固定炭素製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
含水量が約20質量%を超える亜瀝青炭や褐炭など石炭化度の低い石炭は、高水分含量であるが故にカロリーが低く、燃焼発熱量が少ない上に、乾燥すると自然発火性が高まり、吸湿性も高く、輸送コストが割高になる等の理由により産炭地での利用に限られている。
【0003】
しかし、低石炭化度炭には、高品位とされる瀝青炭等にはない利点がある。例えば、オーストラリアやインドネシアの褐炭は低硫黄でかつ低灰分であり、これを燃料として使用すれば、亜硫酸ガスなどによる大気汚染を抑制することができる上に、捨灰の有害性を低減できる。
【0004】
そこで、これまでにも、これら低石炭化度炭を脱水改質や熱改質で炭化することによって、その欠点を補うための技術が提案されてきた。例えば、特許文献1や特許文献2には、油分と低石炭化度炭を混合して原料スラリーを得、当該スラリーを加熱して油中脱水し、更に加熱することによって、原料炭中のカルボキシル基や水酸基等を脱炭酸反応や脱水反応により分解若しくは脱離し、原料炭を改質する技術、または低石炭化度炭の細孔内に重質油分等を侵入せしめることにより自然発火を防止する技術が開示されている。
また、特許文献3には、褐炭を不活性ガス雰囲気下もしくは水蒸気雰囲気下で熱分解して改質炭とタールに分離し、前記タールを水蒸気雰囲気下、かつ鉄系触媒存在下で接触分解して炭化水素油を得る改質炭と炭化水素油の製造法が開示されている。
文献4には、固定炭素を回収する際に複数のラインを構成して回収することによりお互いの粉体の流れが相互に補助的な役割を果たすことで詰まりを無くす固定炭素回収装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−233384号公報
【特許文献2】特許第2776278号公報
【特許文献3】特開2010−144094号公報
【特許文献4】特開2010−209212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術においては以下の課題を有していた。
(1)特許文献1,2は油分を使用するために、油と石炭を同一容器で分離するための種々の設備を要し、装置が大型化するとともに省エネルギー性に欠ける。
(2)石炭の改質に際して油分という副資材が必要となるので、大きなコストが必要で、かつ、環境負荷率が高い。
(3)油分を介した方法なので、褐炭に与えるエネルギーに関して熱交換損失が生じ、エネルギーロスが大きい。
(4)さらに乾燥後の石炭に副資材として利用する油分が混入し、油分のロスが多く、省資源性に欠ける。
(5)特許文献3は、褐炭を500〜800℃で熱分解し改質炭とタールを得、次いでタールを400〜600℃で接触分解することにより、改質炭と化合物を得るが、一般に低石炭化度炭は500℃を超えて加熱すると亀裂が増え微粉が発生し未燃炭が増加する。また、熱分解ガスは、酸素濃度が高いと易燃焼成分の着火や、微粉炭の爆発の危険があるので、酸素濃度の制御やスチームの添加等装置の運転制御が困難で安全性や運転性に欠ける。
【0007】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、
(1)乾留炉として、移動層間接加熱乾留炉を採用することで、製品ガス温度が低く抑えられ、ガス配管などの材質の制約条件が少なくメンテナンス性に優れる。
(2)350℃〜500℃と熱分解温度が低い為、固定炭素製造装置の前後も含め設備を構成する材料の制約が少ない。また、熱投入量が少なくて済む為、省エネルギー性に優れる。
(3)熱分解の温度が低く、タール成分を保持したまま乾留することが出来るのでタール成分による障害(固着やコーキングなど)問題を解決することができるので操業安定性、安全性に優れる。
(4)パイプ状の加熱手段をもち、水蒸気等の高温熱媒体による間接加熱なので装置容量がコンパクトにできる。また、乾留ガスや固定炭素を燃焼させる燃焼手段を備える場合、燃焼手段の廃熱、排ガス、蒸気を利用することができるので省エネルギー性に優れる。
(5)酸素燃焼を採用した場合、炭酸ガスを分離・回収する場合、窒素ガスが著しく少ないので炭酸ガス濃度が高く、炭酸ガスの分離エネルギーを小さくすることができる。
(6)ボイラー等の排熱を有効利用することが出来るので、熱分解、省資源性に優れ、油分等の副資材を加えない為、重量が軽く、運搬に掛る費用が安く、生産地以外で利用が困難な含水量が高い亜瀝青炭や褐炭などを高品位のチャー等の固定炭素に改質し、産炭地以外で利用できる。また、含水率が約60%の褐炭等を搬送するのに比べ、含水率を下げた固定炭素を搬送するので搬送効率に優れる。
という固定炭素製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記従来の課題を解決するため、本発明の固定炭素製造装置は、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載の固定炭素製造装置は、固定炭素を捕集するクエンチチャンバーと、前記クエンチチャンバーに立設固定された乾留炉と、前記乾留炉内の水平方向断面上を隔壁によって矩形又は多角形に鉛直方向に上部から下部まで区切られた乾留ユニットと、前記乾留ユニット内に水平方向断面上を仕切りによって矩形又は多角形に鉛直方向に上部から下部まで区切られたミニ乾留炉と、前記乾留ユニットの前記隔壁と前記ミニ乾留炉の仕切りに配設された加熱の為のパイプ状の加熱手段と、原料炭を前記乾留ユニットの上部から投入しそれぞれの前記ミニ乾留炉内で前記パイプ状の加熱手段によって乾留されクエンチチャンバーに製造された固定炭素を捕集する捕集路と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)ミニ乾留炉がパイプ状の加熱手段をそれぞれ備えているので、高温熱媒体による間接加熱が可能で、乾留炉内で熱勾配を生じることなく略均一に加熱することが容易で、固定炭素の収率に優れる。また、このミニ乾留炉を多列に備える乾留ユニットを多列に備えているので、大量生産性に優れる。
また、従来、大量生産の為に、炉内の内容積を単純に大きくした場合、炉内の温度を均一にすることは困難で、部分的に乾留が進み易い場所が出来るなど、高品質な固定炭素の収率が低いが、乾留炉内を細分化し各細分化した流路に加熱手段を備えているので乾留効率を大幅に向上出来る。
(2)ミニ乾留炉を多列に形成する乾留ユニットやそれを多列に形成して乾留炉が構成されているので、剛性が高く、乾留炉内で揮発成分の発生や、乾留炉内での原料炭の膨張によって炉内に圧力がかかる時でも変形することがなく、操業安定性に優れる。
(3)低石炭化度炭は乾留炉内に入ると水分により膨張するので、未反応のままスルーすることを防止することができ、品質の安定性に優れる。
(4)クエンチチャンバーに払い出し中の固定炭素が貯まるのでそこでトラップして反応が進むことができ、品質の安定性に優れる。
(5)加熱手段をパイプ状に形成しているので、蒸気等の高温熱媒体によって安定的に加熱を行うことが出来る為、操業の安定性に優れる。
(6)固定炭素を捕集するクエンチチャンバーを乾留炉の下部に有しているので、乾留炉で改質された固定炭素を冷却することが出来る。
(7)固定炭素製造装置で発生する炭化水素ガスを用いて発電を行う複合システムの場合、炭化水素ガスの燃焼熱を発電用の蒸気の加熱とともに低石炭化度炭の乾燥、熱分解、ガス化、固定炭素製造に利用する。
(8)加熱手段はボイラーの排熱を有効利用することが出来るので、省資源性に優れる。また、油分等の副資材を加えない為、重量が軽く、運搬に掛る費用が安く、生産地以外で利用が困難な含水量が高い亜瀝青炭や褐炭などを産炭地以外で利用できる。
(9)パイプ状の加熱手段を有しているので、乾留炉の熱交換媒体として、燃焼炉の排ガスを供給する直接加熱とは異なり、間接加熱を用いることで発生する揮発分の単位体積当たりの熱量を最大限活用することができ、省エネルギー性に優れる。
【0009】
ここで、乾留炉の例としては、例えば縦方向略4500mm×横方向略4500mmで高さが略5000mmのサイズのもの等が好適に用いられる。この中にひとつの乾留ユニットが縦方向略1500mm×横方向略1500mmで高さが略5000mmになる様に隔壁を設け、乾留炉内に乾留ユニットが3列×3列出来るようにし、更に、この乾留ユニット内に断面積が縦方向略500mm×横方向略500mmで高さが略5000mmになる様に仕切り板を設け、乾留ユニット内にミニ乾留炉が3列×3列出来るようにしたもの等が好適に用いられる。乾留炉の断面形状は、矩形に限らず、三角形や、五角形、六角形等の多角形も適宜使用可能である。また、ミニ乾留炉を1つの乾留炉としてテストを行うことが可能で、小型設備から大型設備まで設計の自在性と拡張性に優れる。
【0010】
隔壁、仕切り板としては、各乾留ユニット、各ミニ乾留炉を上部から下部まで仕切るようにして配設され、区切られた内部の温度を制御する為の加熱手段を備えた構造のものを好適に用いる。また、加熱手段は上部から順に複数段階に分けるように仕切り板に配設することもできる。複数段階に加熱手段を分けた場合、各段階の温度を調整して乾留工程で乾留速度を急激にしたり、緩やかにする、などの加温パターンを制御し、高品位炭を高効率で得るため条件設定が容易になり、生産性に優れる。
【0011】
固定炭素を捕集するクエンチチャンバーとしては、常温以下の温度で冷却することが好ましい。これにより、固定炭素の酸化を防止することが出来る。また、クエンチチャンバーの構造としては、固定炭素を密閉状態で受け入れる構造が好ましい。この中に不活性ガスを充填することで、乾留炭の酸化を防止すると共に、容器内に設置された水冷伝熱管により間接的に乾留炭を常温まで冷却することで固定炭素を得る。密閉状態で受け入れる構造としては、乾留炉からの受け入れ側、固定炭素の取出し口側共にロータリーバルブのように乾留炉、冷却槽、共にシールするような構造の弁を設けることが好ましい。この様に、間接加熱で冷却槽を密閉状態にすることができ、不活性ガス雰囲気にすることができるので、発火等の事故を防止することができ好ましい。
固定炭素を捕集するクエンチチャンバーの底部としては、底部の角度が安息角以上であるものが好適に用いられる。安息角以下になるにつれてクエンチチャンバー内に固定炭素のブリッジが発生し易く、下部の固定炭素取り出し口においてスムーズに固定炭素が取り出せなくなる傾向にあり好ましくない。
【0012】
パイプ状の加熱手段としては、フィン付きの蒸気配管が好適に用いることができる。これにより熱交換効率が良く、炉内を効率よく加熱することができる。また、パイプ状の加熱手段の配設方法としては、隔壁や仕切り板に固定、溶接するだけでなく、パイプ状の加熱手段を隔壁や仕切りに直接加工しても良い。こうすることで壁面を通して均一に炉内に温度を伝熱出来るだけでなく、隔壁や、仕切り板の補強になり、全体として剛性を高めることができる。
【0013】
また、パイプ状の加熱手段としては、水蒸気等の熱媒体を用いて間接加熱を行うが、隔壁や仕切りに対して平行になるように取り付けることも出来るし、仕切り板や隔壁を貫くように直交して取り付けることが出来る、直交して取り付けた場合はそれ自体が邪魔板の役目を果たし、乾燥炭を自然に流下するとともに乾留する際に適度にトラップすることができ、乾留の際の品質向上に繋がるため好ましい。
【0014】
原料炭としては、褐炭を乾燥したものが好適に用いられる。褐炭の他には亜炭、亜瀝青炭も同様にして用いることが出来る。また、褐炭には、ビクトリア炭、ノースダコタ炭、ベルガ炭等が存在するが同様にして用いることが出来る。これらの石炭は、低灰分、低硫黄という好ましい性質があるが、多孔質なので高含水率になる傾向があり、水分が多く含まれているので、カロリーが低くなり、低品位炭として取り扱われている。これら多孔質で高い含水量を有するものを同様にして用いることが出来る。(以後これらの石炭を総称して低石炭化度炭という。また、乾燥する高含水率の低石炭化度炭としては、含水量が約20%を越えるものであれば、その名称、産地は特に問わない。)
【0015】
乾留温度としては、300℃〜900℃、好ましくは300℃〜800℃が好適に用いられる。これにより炉材の材料が高温に耐える特殊材料の使用を減らすことができる。乾燥炭を乾留炉の炉頂から挿入され乾燥炭の粒子群が膨張した後収縮し重力によって順次落下する間に、粒子と向流あるいは並流する高温の水蒸気や窒素ガスあるいは炭酸ガスと連続的に接触し乾留が行われ固定炭素を得ることができる。また、炉内に投入されるガスは広い範囲の流速が利用出来る。一般に層内温度の均一化が困難であるが、本発明は、乾留炉内に、乾留ユニット、ミニ乾留炉を持ち、それぞれの壁面にパイプ状の加熱手段を備えているので各層内の温度均一化が可能で固定炭素の収率を高くすることが出来る。
【0016】
固定炭素製造装置で製造した炭化水素ガス又は固定炭素を燃料とした燃焼手段を持つ場合、燃焼手段としては、流動層燃焼炉や炭化水素ガス・固定炭素燃焼ボイラーが好適に用いられる。
流動層燃焼炉としては、流動媒体として石灰石、ドロマイト等が用いられる。助燃剤としては、酸素と酸素濃度を調節(希釈)する炭酸ガスの混合ガスが好ましい。燃料は乾燥部で乾燥された低石炭化度炭の乾燥炭や改質器で改質された低石炭化度炭の改質後石炭やチャーが用いられる。
また、流動層燃焼炉の燃焼温度は800〜900℃に調節される。これにより炉材の材料が高温に耐える特殊材料の使用を減らすことができ、さらに流動層内での灰熔解などの障害を防ぐことができる。
触媒改質装置は、低石炭化度炭から得られた揮発成分や炉ガス(燃焼排ガス)のCO2やCO,H2Oと触媒を接触させ改質を行うもので、FT合成ガスやメタノール合成ガス,アンモニア合成ガス,水素ガス,合成天然ガス等を得ることができる。
更に、生成タール成分を改質して低分子の炭化水素、一酸化炭素、水素を連続して得ることができる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の固定炭素製造装置であって、前記乾留の加熱温度が350℃〜500℃である構成を有している。
この構成により、請求項1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)350℃〜500℃の低温で乾留を行うので、炭化水素ガス(揮発分)が抜け、高品位の石炭への転換が進むことができ、燃料比2以上の高品位炭を得ることが出来る。
(2)低温で乾留を行うことが出来るので、装置自体のコスト及び、投入熱量において省コスト性に優れる。
(3)また、熱分解温度が低い為、固定炭素製造装置前後も含め設備を構成する材料の制約が少なく安全性や装置の設計自由度に優れる。
(4)さらに、熱分解温度が低く、タール等の重質油成分を保持したまま乾留することが出来るので重質油成分による障害(固着やコーキング、リアクターの閉塞など)問題を解決することができるので操業安定性、安全性に優れる。
【0018】
ここで、乾留の加熱温度としては、350℃〜500℃が好適に用いられる。好ましくは350℃〜450℃が好適に用いられる。加熱温度が350℃を下回ると燃料が低くなり好ましくなく、450℃を超えると、投入熱量に対する効果が小さくなる傾向にあり好ましくない。また、加熱温度が高くなるにつれ乾留により抜ける炭化水素ガス(揮発分)が多くなるが、それに伴い、重質油分が多くなる、これにより、リアクターの閉塞等の問題が多くなる傾向にあり同様に好ましくない。よって350℃〜450℃の範囲で温度管理を行うことで、固定炭素内に重質油を保持したまま乾留を行うことが出来るのでリアクターの閉塞等の問題が起こらず、安定操業に大きく寄与することができる。また、一般に低石炭化度炭は500℃を超えて加熱すると亀裂が増え微粉が発生し未燃炭が増加し、熱分解ガスは、酸素濃度が高いと易燃焼成分の着火や、微粉炭の爆発の危険があるので、酸素濃度の制御やスチームの添加等装置の運転制御が困難で安全性や運転性に欠ける。
【0019】
また、炭化水素ガス(揮発分)が抜けることで高品位の石炭へ転化が進むが、100℃〜300℃の範囲でも炭化水素ガス成分が抜けることが分かっており、略400℃において高品質なニューランズの燃料比2を越えることから現在市場に流通する高品位炭レベルの固定炭素を製造することが出来ることが分かる。
更に、従来一般的な高温での乾留に比べ、350℃〜500℃という遥かに低温なので、省エネルギー性、省力性に優れる。
【0020】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の固定炭素製造装置であって、前記ミニ乾留炉内に邪魔板や金属メッシュ、穴の開けた金属板を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1又は2で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)邪魔板や金属メッシュ、多数の穴をあけた金属板等(以後邪魔板等という)をミニ乾留炉内に配設しているので、邪魔板等をミニ乾留炉ごとの原料炭の流速を調整する為に適宜配置することができ、製品ムラや固定炭素の収率を安定させることが可能で製品収率に優れる。
(2)乾留炉内に邪魔板等を配置しているので炉内にいて補強部材の役目を果たすので強度に優れる。
(3)また、これらの邪魔板等が温められることで、乾留炉内の温度均一化に貢献できるので製品収率に優れる。
(4)邪魔板があるので、上部から投入された原料炭が乾留炉をスルーしてしまう心配が無く品質の安定性に優れる。
【0021】
ここで、邪魔板等としては、乾留炉において固定炭素の落下方向に対して角度をつけて配置することもできる。また、金属メッシュや、多数の穴をあけた金属板はミニ乾留炉内に全面に設置しても良いし、部分的に設置しても良い。この場合も同様に角度をつけて配置することもできる。また、これらの邪魔板の応用として、邪魔板の替わりに炉内にパイプ状の加熱手段を設けても良い。そうすることで、より層内の温度の均一化が容易で、固定炭素の製品収率に優れる。多数穴をあけた金属板を備える場合、乾留される乾燥炭は金属板で滞留し、流で流される乾留ガスによってそこで撹拌されながら落下するので炉内での反応時間を長くすることが可能で固定炭素の製品収率に優れる。
【0022】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の固定炭素製造装置であって、前記邪魔板が安息角以上の角度をつけた穴空き構造である構成を有している。
この構成により、請求項3で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)邪魔板が安息角以上の角度をつけているので、邪魔板に固定炭素が留まることが無く、安定して固定炭素を製造することができる。
【0023】
ここで、邪魔板としては、山形形状のそれぞれが安息角以上の角度で取り付けられているものであっても構わない。邪魔板の太さ、配置数は適宜選択できる。
【0024】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の内いずれか1項に記載の固定炭素製造装置であって、前記クエンチチャンバーの底部の固定炭素取出し口にロータリーバルブと、高温の水蒸気または炭酸ガス、窒素ガス等のキャリアーガス送気手段と、を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1乃至4の内いずれか1項で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)クエンチチャンバー下部の固定炭素取出し口にロータリーバルブを備える構成を有しているので、取出し口からのガスの漏れを気にせずに乾留炉内にガスを送り込む場所を適宜選択できるので装置の多様性に優れる。
【0025】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の固定炭素製造装置であって、前記ロータリーバルブの羽根に孔を備えた構成を有している。
この構成により、請求項5で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)クエンチチャンバー下部の固定炭素取出し口のロータリーバルブの羽根に孔を備える構成を有しているので、取出し口からガスを導入することが可能で、またクエンチチャンバーの底部でガスによって固定炭素が撹拌されるので下部での詰まり防止になり操業安定性に優れる。
(2)ロータリーバルブの羽根に孔を備えた構成を有しているので、乾留ガスを固定炭素取出し口側から導入した場合、下部で固定炭素が流動し反応を促進できるので固定炭素の収率に優れる。
【0026】
ここで、ロータリーバルブの羽根の孔は、固定炭素が通りぬけない程度の大きさを適宜選択することができる。また、孔はガスを通すためのものであれば良く、孔の数に限定されるものではなく、羽根に多孔質材料を用いたものでも良い。
【0027】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6の内いずれか1項に記載の固定炭素製造装置であって、前記原料炭が低石炭化度炭を含水率20質量%以下まで乾燥した乾燥炭である構成を有している。
この構成により、請求項1乃至6の内いずれか1項で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)低石炭化度炭を含水率20質量%以下まで乾燥した乾燥炭を乾留するので、投入熱量を少なくすることが出来るのでエネルギー効率に優れる。
(2)乾燥することで比重が軽くなり、水分を蒸発する熱量も含め、乾留炉をコンパクトに設計できるため、省資源性に優れる。また、乾留炉の乾留ガス回収設備などをコンパクトにすることができるので省資源性に優れる。
(3)含水率を20wt%以下にするので、乾留炉での水分による膨張の影響が少なく装置の変形や破損を防ぐことができる。
【0028】
ここで、乾燥させる低石炭化度炭の乾燥条件としては、この含水率が約20%を越える低石炭化度炭を低温(30℃〜80℃)で低湿度(RH70〜0%)の窒素ガス等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。また、乾留に用いられる低石炭化度炭の水分は20質量%以下とすることができる。使用する石炭が全て低石炭化度炭である必要はなく、含水量が約20質量%未満の高石炭化度炭を添加しても良い。実験では16質量%まで下げることができた。これにより、低石炭化度炭の含水量を1/3以下にすることで、輸送効率を大幅に改善できる。更に、乾留を行い固定炭素とすることにより自然発火を防ぎ安全性を向上できる。(以後、20質量%以下の乾留に用いられる低石炭化度炭を乾燥炭という。)
【0029】
不活性ガスとしては、窒素ガスが好適に用いられる。窒素ガスは、素分離器で分離された窒素ガスをもちいてもよい。窒素ガスは復水器の熱水で加熱された空気予熱器で加熱されるようにしてもよい。この場合、酸素濃度が低いので、自然酸化し昇温し易く発火し易い低石炭化度炭の発火を防ぎ、より高い温度で乾燥することができる。また、酸素分離器で分離された窒素ガスは相対湿度が低いので、乾燥効率を大きくすることができる。更に、廃熱を利用し、別途熱エネルギーを要しないので、環境に優しく省エネルギー性に優れる。また、乾燥によって排出される高湿度排ガスから清浄水を回収でき水の有効利用が図れる。
【0030】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7の内いずれか1項に記載の固定炭素製造装置であって、前段に前記原料炭を粉砕する粉砕工程を備えており、原料炭の粒子径が0.1μm〜5mmに調整されている構成を有している。
この構成により、請求項1乃至7の内いずれか1項で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)0.1μm〜5mmの粒径に粉砕することにより、乾燥時間を短縮化できるのでエネルギー効率に優れる。
(2)また、粒子径が安定することで最終製品の固定炭素の品質も同様に安定させることができ、製品収率に優れる。
【0031】
ここで、低石炭化度炭としては、乾燥される前に前処理として粗粉砕して粒径が0.1μm〜5mmに調整される。0.1μm〜5mmの粒径に粉砕することにより、乾燥を簡略化し、乾燥時間を短縮化できる。粒径が0.1μmより小さくなると微粉化が進み固定炭素の収率が下がる傾向にあり好ましくない。また、粒径が5mmより大きくなるに従って、乾燥時間の短縮の効果が低下する為、好ましくない。
【0032】
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至8の内いずれか1項に記載の固定炭素製造装置であって、前記原料炭を乾留することで得られる炭化水素ガス及び固定炭素の少なくとも一部を燃焼させる燃焼手段を備え、前記加熱手段が、燃焼手段の排ガスや廃熱を利用する構成を有している。
この構成により、請求項1乃至8の内いずれか1項で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)燃焼手段で得られる排ガスや廃熱を用いるのでエネルギー効率に優れる。
(2)燃焼手段の排ガスを乾留炉にガス化ガスとして用いることで、エネルギー効率に優れる。また、酸素量の少ない排ガスを用いる為、乾留が安全に行うことが可能で安全性に優れる。
【0033】
ここで、燃焼手段としては、乾留炉で得られる炭化水素ガス・固定炭素を燃料として用いる燃焼ボイラーが好適に用いられる。また、燃焼炉の燃焼温度は800〜900℃に調節される。これにより炉材の材料として使用する高温に耐える特殊材料の使用量を減らすことができる。燃焼炉を持つ場合、この排ガスを乾留炉のガス化ガスとして用いることもできる。燃焼炉が発電装置のタービンを回すためのボイラーである場合この蒸気を乾留炉の加熱手段に供給することもできる為、熱効率に優れたシステムを構築できる。
【発明の効果】
【0034】
以上のように、本発明の固定炭素製造装置及びそれを備えた燃焼システムによれば、以下の有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、
(1)高温熱媒体による間接加熱が可能で、乾留炉内を均一の温度にすることが容易で、固定炭素の収率に優れる。また、このミニ乾留炉を多列に備える乾留ユニット、乾留ユニットを多列に備える乾留炉を備えているので、大量生産性に優れた固定炭素製造装置を提供することができる。
(2)乾留炉の熱交換媒体として、燃焼炉の排ガスを供給する直接加熱とは異なり、間接加熱を用いることで発生する揮発分の単位体積当たりの熱量を最大限活用することができる省エネルギー性に優れた固定炭素製造装置を提供することができる。
【0035】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)炭化水素ガス(揮発分)が抜け、高品位の石炭への転換が進むことができ、燃料比2以上の高品位炭を得ることが出来る、装置自体のコスト及び、投入熱量において省コスト性に優れた固定炭素製造装置を提供することができる。
(2)重質油を保持したまま乾留が出来るのでリアクターの閉塞等の問題が起こらないので操業安定性に優れた固定炭素製造装置を提供することができる。
【0036】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)邪魔板等をミニ乾留炉ごとの流れやすさを調整する為に適宜配置することができ、製品ムラや固定炭素の収率を安定させることが可能で製品収率に優れた固定炭素製造装置を提供することができる。
(2)炉内にいて補強部材の役目を果たすので強度に優れた固定炭素製造装置を提供することができる。
【0037】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)邪魔板に固定炭素が留まることが無く、固定炭素の製造安定性に優れた固定炭素製造装置を提供することができる。
【0038】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1乃至4の内いずれか1項に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)取出し口からのガスの漏れを気にせずに乾留炉内にガスを送り込む場所を適宜選択できるので装置の多様性に優れた固定炭素製造装置を提供することができる。
【0039】
請求項6に記載の発明によれば、請求項5に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)取出し口からガスを導入することが可能で、またクエンチチャンバーの底部でガスによって固定炭素が撹拌されるので下部での詰まり防止になり操業安定性に優れた固定炭素製造装置を提供することができる。
(2)下部で固定炭素が流動し反応を促進できるので固定炭素の収率に優れた固定炭素製造装置を提供することができる。
【0040】
請求項7に記載の発明によれば、請求項1乃至6の内いずれか1項に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)投入熱量を少なくすることが出来るエネルギー効率に優れた固定炭素製造装置を提供することができる。
(2)乾燥することで比重が軽くなり、水分を蒸発する熱量も含め、乾留炉をコンパクトに設計できる省資源性に優れた固定炭素製造装置を提供することができる。また、乾留炉の乾留ガス回収設備などをコンパクトにすることができる省資源性に優れた固定炭素製造装置を提供することができる。
【0041】
請求項8に記載の発明によれば、請求項1乃至7の内いずれか1項に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)乾燥時間を短縮化できるエネルギー効率に優れた固定炭素製造装置を提供することができる。
(2)粒子径が安定することで製品の固定炭素の品質も同様に安定させることができる製品収率に優れた固定炭素製造装置を提供することができる。
【0042】
請求項9に記載の発明によれば、請求項1乃至8の内いずれか1項に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)エネルギー効率に優れ、乾留を安全に行うことができる安全性に優れた固定炭素製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】実施の形態における固定炭素製造装置の模式図
図2】模擬移動層間接加熱乾留炉の概要図
図3】乾留温度に応じた乾留炭分析結果を示すグラフ
図4】乾留温度に応じた乾留炭熱重量分析結果を示すグラフ
図5】乾留内褐炭の温度変化を示すグラフ
図6】褐炭乾留処理温度による固定炭素各種燃焼関連成分変化を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を用いながら説明する。
(実施の形態)
図1は実施の形態における固定炭素製造装置の模式図である。
図中、1は固定炭素製造装置、2は固定炭素(製品乾留チャー)を冷却し受け入れるクエンチチャンバー、3はクエンチチャンバーの上部に立設された後述する隔壁部に区切られた乾留ユニットと、乾留ユニット内に後述する仕切り板によって区切られたミニ乾留炉を持ち乾留炉内面、隔壁、及び仕切り板に500℃〜600℃に加熱された蒸気配管や高温廃ガス配管を備え、投入された乾燥褐炭を350℃〜500℃で乾留する乾留炉、3aは乾留炉3を矩形状の乾留ユニットに分割するため鉛直方向に乾留炉の上部から下部まで配設された隔壁、3bは隔壁で区切られた各乾留ユニットを矩形状のミニ乾留炉に分割するため鉛直方向に乾留炉の上部から下部まで配設された仕切り板、4は上部または下部に設けられた乾留によって製造された乾留ガスを回収するための乾留ガス配管、5は低石炭化度炭の含水率20質量%以下まで乾燥させた乾燥褐炭を乾留炉に投入する乾燥褐炭投入装置、6は固定炭素(製品乾留チャー)の経路である。
【0045】
以上のように実施の形態における固定炭素製造装置は構成されているので、以下のような作用が得られる。
(1)ミニ乾留炉がパイプ状の加熱手段をそれぞれ備えているので、高温熱媒体による間接加熱が可能で、乾留炉内を均一の温度にすることが容易で、加熱斑を防ぐことができる。また、このミニ乾留炉を多列に備える乾留ユニット、乾留ユニットを多列に備える乾留炉を備えているので、剛性に優れ耐久性に優れる。
(2)ミニ乾留炉を多列に形成する乾留ユニットやそれを多列に形成する乾留炉を有しているので、剛性が高く、乾留炉内で揮発成分の発生や、乾留炉内での原料炭の膨張によって炉内に圧がかかる時でも変形することがなく、操業安定性に優れる。
(3)パイプ状の加熱手段を形成しているので、蒸気等の高温熱媒体によって安定的に加熱を行うことが出来る為、操業の安定性に優れる。
(4)固定炭素を捕集するクエンチチャンバーを乾留炉の下部に有しているので、乾留炉で改質された固定炭素を冷却し製品乾留チャーを安定的に捕集することが出来る。
(5)350℃〜500℃で乾留を行うので、炭化水素ガス(揮発分)が抜け、高品位の石炭への転換が進むことができ、燃料比2以上の高品位炭を得ることが出来る。
(6)350℃〜500℃の低温で、乾留を行うことが出来るので、装置自体のコスト及び、投入熱量において省コスト性に優れる。
(7)重質油を保持したまま乾留が出来るのでリアクターの閉塞等の問題が起こらない。
【0046】
(実験例1)・・・乾留試験
実験例1では移動層間接加熱乾留炉の乾留温度について検討した。
図2は、本実施例の試験データを取る為に用いた模擬移動層間接加熱乾留炉の概要図である。
図2中、20は模擬移動層間接加熱乾留炉、21は褐炭試料(Loy Yang褐炭(生炭)を室温、大気中で予備加熱乾燥して水分含有率を20質量%前後に低下させ、ついで粉砕・分級によって粒子径を0.3から0.5mmに揃え、110℃の不活性ガス雰囲気で乾燥し、水分を除去したもの)を充填させSUSメッシュで長さ方向と垂直(水平面方向)仕切ったコンテナ炉、21aはコンテナ炉21を不活性ガス雰囲気にするためにN2ガス200ml/minで流す不活性ガス投入口、21bは不活性ガス投入口21aから入れられた不活性ガス出口、22は温度分布を形成する為に多段で配置した電気炉、23はコンテナ炉21を電気炉22の間を炭素が炉内を流下するデータを疑似的に作成させるため一定速度で移動させるモーター、24はコンテナ炉の移動方向である。
不活性ガスは図2中の不活性ガス投入口21aから不活性ガス出口21b(図3中上側から下側)に流れる。
模擬移動層間接加熱乾留炉20は、乾留における褐炭転換特性をおよびガス化特性を模擬する装置である。SUS製の円筒型反応器のコンテナ炉21を多段直列に15段固定し、これを縦型の電気炉22を多段に並べた下部から上部に向けて移動方向24の方向にモーター23によって上昇させることで、コンテナ炉21に充填した褐炭が、移動層の上部から下部へ流下する時の試験データを得た。コンテナ炉21は図2中の上側から順番に1番、2番、・・・15番とした。電気炉22は9段あり、図2中の下側から順番に1段目から4段目が165℃、5段目が300℃、6段目が400℃、7段目が500℃、8段目が600℃、9段目が700℃、の温度にそれぞれなるように設定した。尚、コンテナ炉21は電気炉22内を6.9mm/minの速度で上昇させた。また、この時のコンテナ炉21の温度上昇速度は略10℃/minであった。15個のコンテナ炉21のうち、炉の最上部を通過したコンテナ炉21は、コンテナ炉21の内1番から6番までである。
【0047】
図3及び(表1)は乾留温度に応じた乾留炭分析結果を示すグラフである。詳しくは、図2の模擬移動層間接加熱乾留炉20を用いて実験終了後に残存した固体の質量に基づいて求めた各コンテナの固体収率を示したものが図3である。
このときコンテナ炉21の1番から6番までが炉を通過済みで、7番から11番までが熱分解帯の200℃から595℃、12番から15番までが165℃によって加熱される部分で略140℃程度である。
コンテナ炉21の1番における炭化物収率は56質量%で、コンテナ炉21の2番から6番にかけてより下段にいくほど炭化物収率が増加し、コンテナ炉21の6番では58.7質量%に達した。これは上段のコンテナから生成する重質油を含む揮発成分が下段の褐炭炭化、炭化物と接触し、重質油の収着、重質油・褐炭共炭化により炭化物の収率が増加した結果によるものである。また、コンテナ炉21の12番以降では、主として重質油の収着に由来すると考えられる自重の10〜20%の重量増加が認められる。また、反応器下流(コンテナ炉21の12番〜15番において生成ガス及び凝縮成分を回収し、これらの生成物回収率は99%以上であった。回収した凝縮成分を分析した結果、炉内に低温部が存在することで高沸点重質油の凝縮、さらにここに存在する褐炭粒子による重質油補足により、軽質油成分の選択的製造が可能で、図3及び(表1)に示すように200℃〜595℃温度域において移動層間接加熱乾留炉で乾留が急速に進み、固定炭素内に重質油成分を留めることが可能であることがわかる。
【0048】
【表1】
【0049】
(実験例2)・・・熱重量分析による評価試験
実験例2では、熱重量分析を用いて乾留温度について検討した。
図4及び(表2)、(表3)は乾留温度に応じた乾留炭熱重量分析結果を示すグラフである。詳しくは、褐炭の熱分解による乾留温度を確認する為、Loy Yang褐炭(生炭)を室温、大気中で予備加熱乾燥して水分含有率を20質量%前後に低下させ、ついで粉砕・分級によって粒子径を0.3から0.5mmに揃え、110℃の不活性ガス雰囲気で乾燥し、水分を除去したものを熱重量分析装置(SII nanotechnology社製:EXSTAR TG/DTA6000)を用いて測定した結果である。
図4及び(表2)、(表3)に示すように350℃前後から褐炭重量が減少し始めており、この温度から乾留が顕著になることが確認できる。また、固定層乾留炉において同様の試料を窒素気流中で、昇温速度10℃/min、ピーク温度における保持時間を0秒とし、500℃、550℃、600℃、650℃で乾留した。この時の、固定炭素収率と温度の関係を図4中にプロットした。これを確認すると、熱重量分析の結果が乾留炉での温度定義と良好な相関関係にあることが分かる。(表2)に図4の乾留炭重量分析の結果を、(表3)に図4中の固定炭素収率と温度の関係を示したプロットを示す。
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
(実験例3)・・・高品位転化温度実証試験
実験例3では、低石炭化度炭の高品位転化に必要な温度について検討した。
図5及び(表4)は、乾留内褐炭の温度変化を示すグラフである。詳しくは、Loy Yang褐炭(生炭)を、横置きの管状炉にN2ガスを流通させた状態で炉内温度を各測定温度まで上昇させ、その時の温度変化時間と各温度を測定した。
図5に示すように、100℃付近で水分が蒸発した後も、緩やかに温度は上昇し、設定温度が300℃であっても潜熱成分があり、高品位炭への転換が起こっていることがわかる。
【0053】
【表4】
【0054】
(実験例4)・・・乾留温度効果試験
実験例4では、乾留温度と得られる固定炭素の性能について検討した。
図6及び(表5)は、褐炭乾留処理温度による固定炭素各種燃焼関連成分変化を示すグラフである。詳しくは、Loy Yang褐炭(生炭)を室温、大気中で予備加熱乾燥して水分含有率を略20質量%に低下させたものを、横置きの管状炉にN2ガスを流通させた状態で炉内温度を400℃、600℃、700℃、800℃まで上昇させ、その時の固有水分、揮発分、灰分、固定炭素収率(%)、燃料比を測定した。
図6及び(表5)に示すように、400℃で処理したものは、燃料2.5であり、ニューランズ炭のような瀝青炭並みの燃料比を実現していることがわかる。
【0055】
【表5】
【0056】
削除
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、乾燥させた低石炭化度炭を乾留炉で移動させながら熱分解・ガス化を行い、固定炭素、炭化水素ガスなどを回収することのできる固定炭素製造装置を提供する。
【符号の説明】
【0058】
1 固定炭素製造装置
2 クエンチチャンバー
3 乾留炉
3a 隔壁
3b 仕切り板
4 乾留ガス配管
5 乾燥褐炭
6 固定炭素
20 模擬移動層間接加熱乾留炉
21 コンテナ炉
21a 不活性ガス投入口
21b 不活性ガス出口
22 電気炉
23 モーター
24 移動方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6