(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接近画像の各画素の輝度値から前記離隔画像の対応する各画素の輝度値を減算した接近離隔差分画像と、前記離隔画像の各画素の輝度値から前記接近画像の対応する各画素の輝度値を減算した離隔接近差分画像と、を取得する差分取得手段と、
画像から輝度値が前記周辺部分とは異なる部分である閉領域を抽出する閉領域抽出手段と、
をさらに備え、
前記閉領域抽出手段は、前記焦点移動部が前記焦点位置を前記光軸に沿って前記基準位置から予め設定された測定距離だけ移動した測定位置に移動させて前記撮像部が前記測定位置で撮像した前記試料の画像としての測定画像内の閉領域と、前記接近離隔差分画像内の輝度値が正の値となる閉領域と、前記離隔接近差分画像内の輝度値が正の値となる閉領域と、を抽出し、
前記凹検出手段は、前記測定画像内の閉領域のうち、前記接近離隔差分画像内の輝度値が正の値となる閉領域の位置に配置されたものを、前記凹部として検出し、
前記凸検出手段は、前記測定画像内の閉領域のうち、前記離隔接近差分画像内の輝度値が正の値となる閉領域の位置に配置されたものを、前記凸部として検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の試料解析装置。
前記閉領域抽出手段は、前記測定画像から輝度値が他の部分とは異なる部分を囲む境界として、内側境界と、前記内側境界を囲む外側境界と、を抽出した場合に、各境界の領域内の平均輝度値が最も低い領域の境界を前記測定画像内の閉領域の境界とする
ことを特徴とする請求項2に記載の試料解析装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2に記載の技術は、フィルムに傷または塵のいずれかがあることを検出することはできるが、傷(フィルムの凹部)であるか塵(フィルムの凸部)であるかを判別できない。
【0007】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたものであり、試料の凹部及び凸部を検出し、凹部であるか凸部であるかを判別することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る試料解析装置は、
可視光を出射する出射部と、
前記出射部によって出射された可視光の光軸上に配置され、可視光が透過する試料を支持する支持部と、
光学系を有し、前記支持部に支持された試料の画像を撮像する撮像部と、
前記光学系の焦点位置を、可視光の光軸に沿って、試料の前記撮像部側の表面である撮像表面の基準位置よりも前記出射部に近い接近位置と、前記基準位置よりも前記出射部から離れた離隔位置と、の間で移動させる焦点移動部と、
前記焦点移動部が前記焦点位置を前記接近位置に移動させて前記撮像部が前記接近位置で撮像した前記試料の画像である接近画像の輝度値が予め設定された周辺部分の輝度値よりも大きく、且つ、前記焦点移動部が前記焦点位置を前記離隔位置に移動させて前記撮像部が前記離隔位置で撮像した前記試料の画像である離隔画像の輝度値が前記周辺部分の輝度値よりも小さい部分を、前記撮像表面から凹んだ凹部として検出する凹検出手段と、
前記離隔画像の輝度値が前記周辺部分の輝度値よりも大きく、且つ、前記接近画像の輝度値が前記周辺部分の輝度値よりも小さい部分を、前記撮像表面から突出した凸部として検出する凸検出手段と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
なお、上述の試料解析装置において、
前記接近画像の各画素の輝度値から前記離隔画像の対応する各画素の輝度値を減算した接近離隔差分画像と、前記離隔画像の各画素の輝度値から前記接近画像の対応する各画素の輝度値を減算した離隔接近差分画像と、を取得する差分取得手段と、
画像から輝度値が前記周辺部分とは異なる部分である閉領域を抽出する閉領域抽出手段と、
をさらに備え、
前記閉領域抽出手段は、前記焦点移動部が前記焦点位置を前記光軸に沿って前記基準位置から予め設定された測定距離だけ移動した測定位置に移動させて前記撮像部が前記測定位置で撮像した前記試料の画像としての測定画像内の閉領域と、前記接近離隔差分画像内の輝度値が正の値となる閉領域と、前記離隔接近差分画像内の輝度値が正の値となる閉領域と、を抽出し、
前記凹検出手段は、前記測定画像内の閉領域のうち、前記接近離隔差分画像内の輝度値が正の値となる閉領域の位置に配置されたものを、前記凹部として検出し、
前記凸検出手段は、前記測定画像内の閉領域のうち、前記離隔接近差分画像内の輝度値が正の値となる閉領域の位置に配置されたものを、前記凸部として検出する
ようにしてもよい。
【0010】
なお、上述の試料解析装置において、
前記閉領域抽出手段は、前記測定画像から輝度値が他の部分とは異なる部分を囲む境界として、内側境界と、前記内側境界を囲む外側境界と、を抽出した場合に、各境界の領域内の平均輝度値が最も低い領域の境界を前記測定画像内の閉領域の境界とする
ようにしてもよい。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る試料解析方法は、
可視光が光軸上に配置された試料を透過する場合に、光学系を有する撮像部によって試料の画像を撮像する撮像工程と、
前記光学系の焦点位置を、可視光の光軸に沿って、試料の前記撮像部側の表面である撮像表面の基準位置よりも光源に近い接近位置と、前記基準位置よりも光源から離れた離隔位置と、の間で焦点移動部を介して移動させる焦点移動工程と、
前記焦点移動部が前記焦点位置を前記接近位置に移動させて前記撮像部が前記接近位置で撮像した前記試料の画像である接近画像の輝度値が予め設定された周辺部分の輝度値よりも大きく、且つ、前記焦点移動部が前記焦点位置を前記離隔位置に移動させて前記撮像部が前記離隔位置で撮像した前記試料の画像である離隔画像の輝度値が前記周辺部分の輝度値よりも小さい部分を、前記撮像表面から凹んだ凹部として検出する凹検出工程と、
前記離隔画像の輝度値が前記周辺部分の輝度値よりも大きく、且つ、前記接近画像の輝度値が前記周辺部分の輝度値よりも小さい部分を、前記撮像表面から突出した凸部として検出する凸検出工程と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の第3の観点に係る試料解析プログラムは、
コンピュータを、
可視光が光軸上に配置された試料を透過する場合に、光学系を有する撮像部によって試料の画像を撮像する撮像手段、
前記光学系の焦点位置を、可視光の光軸に沿って、試料の前記撮像部側の表面である撮像表面の基準位置よりも光源に近い接近位置と、前記基準位置よりも光源から離れた離隔位置と、の間で移動させる焦点移動手段、
前記焦点移動手段が前記焦点位置を前記接近位置に移動させて前記撮像部が前記接近位置で撮像した前記試料の画像である接近画像の輝度値が予め設定された周辺部分の輝度値よりも大きく、且つ、前記焦点移動手段が前記焦点位置を前記離隔位置に移動させて前記撮像部が前記離隔位置で撮像した前記試料の画像である離隔画像の輝度値が前記周辺部分の輝度値よりも小さい部分を、前記撮像表面から凹んだ凹部として検出する凹検出手段、
前記離隔画像の輝度値が前記周辺部分の輝度値よりも大きく、且つ、前記接近画像の輝度値が前記周辺部分の輝度値よりも小さい部分を、前記撮像表面から突出した凸部として検出する凸検出手段、
として機能させることを特徴とする。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の第4の観点に係る粒子飛跡解析装置は、
可視光を出射する出射部と、
前記出射部によって出射された可視光の光軸上に配置され、可視光が透過する飛跡検出用固体を支持する支持部と、
光学系を有し、前記支持部に支持された試料としての飛跡検出用固体の画像を撮像する撮像部と、
前記光学系の焦点位置を、可視光の光軸に沿って、飛跡検出用固体の前記撮像部側の表面である撮像表面の基準位置よりも前記出射部に近い接近位置と、前記基準位置よりも前記出射部から離れた離隔位置と、の間で移動させる焦点移動部と、
前記焦点移動部が前記焦点位置を前記離隔位置に移動させて前記撮像部が前記離隔位置で撮像した前記飛跡検出用固体の画像である離隔画像の輝度値が予め設定された周辺部分の輝度値よりも大きく、且つ、前記焦点移動部が前記焦点位置を前記接近位置に移動させて前記撮像部が前記接近位置で撮像した前記飛跡検出用固体の画像である接近画像の輝度値が前記周辺部分の輝度値よりも小さい部分を、前記撮像表面に付着して前記撮像表面から突出した異物として前記飛跡検出用固体の画像から除去する異物除去手段と、
前記接近画像の輝度値が前記周辺部分の輝度値よりも大きく、且つ、前記離隔画像の輝度値が前記周辺部分の輝度値よりも小さい部分を、前記撮像表面から凹んで形成された粒子の飛跡として前記飛跡検出用固体の画像から抽出する飛跡抽出手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、試料の凹部及び凸部を検出し、凹部であるか凸部であるかを判別することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図1〜
図15を参照しつつ、本発明の実施形態に係る試料解析装置(粒子飛跡解析装置)100を説明する。
【0017】
試料解析装置100は、
図1に示すように、顕微鏡部110と制御コンピュータ150とから構成されている。
【0018】
顕微鏡部110は、
図2に示すように、試料1を移動させる移動部2と、試料1の像を拡大する顕微鏡3と、顕微鏡3により拡大された試料の像を撮像するイメージセンサ4と、を備える。移動部2と顕微鏡3とは、L字型の架台7によって、それぞれ支持されている。
【0019】
試料1は、飛跡検出用固体によって構成されている。飛跡検出用固体とは、有機系プラスチックからなるプレートであって、この飛跡検出用固体を放射線が通過すると、高分子結合が損傷を受ける。そしてこの損傷部分を所定の溶液でエッチングすると、微小なエッチピットと呼ばれる凹部が生じる。これが放射線の飛跡である。このエッチピットは、放射線の入射量や入射方向によって形状(真円、楕円)、直径、深さが異なるため、試料1に生じたエッチピットの数や形状を顕微鏡で検査、集計することにより、入射量や、入射方向等の放射線に関する情報を取得することができる。
【0020】
試料1は、必ずしもクリーンな環境で取り扱われているわけではないため、その表面には異物としての塵埃が付着してしまう場合がある。このような試料1の像を撮像した場合は、撮像された画像についてエッチピット(傷、フィルムの凹部)であるか塵埃(塵、埃、フィルムの凸部)であるかを判別する必要がある。
【0021】
移動部2は、架台7の水平部(XY平面上)に設置されており、試料1を、左右及び前後方向(X軸方向及びY軸方向)に水平移動させるX−Yステージ21を備える。X−Yステージ21は、後述する
図5に示すX軸モータ131とY軸モータ132により駆動される。X軸モータ131及びY軸モータ132は、制御コンピュータ150によって制御され、所定の位置に試料1を移動させる。
【0022】
X−Yステージ21の上には、試料台(支持部)22が配置されている。試料台22上には、試料1が支持され、X−Yステージ21の動きに合わせて試料1も移動する。試料台22の下には、コンデンサレンズ23が配置されている。また、X−Yステージ21の近傍にはエンコーダ24が配置されている。エンコーダ24はXエンコーダ24XとYエンコーダ24Yとを備えており、X−Yステージ21のX軸方向及びY軸方向の移動量に対応するパルスを制御コンピュータ150に供給する。
また、イメージセンサ4によって取得したエリア画像のX軸方向やY軸方向の位置補正(ずれ補正)は、Xエンコーダ24XやYエンコーダ24Yの出力に基づいて行われる。
【0023】
顕微鏡3は、光学顕微鏡から構成されており、対物レンズ(光学系)31と、試料1を照射する照明部32と、制御用撮像ユニット33と、鏡筒34と、目視観察用の接眼レンズ35と、Z軸制御部(焦点移動部)36と、から構成される。
【0024】
対物レンズ31は、例えば、10倍及び20倍のレンズから構成され、レボルバ37によって、切り替え可能に構成されている。
【0025】
照明部32は、落射照明部32aと、透過照明部32bと、から構成される。
落射照明部32aは、内蔵する光源からの光を、顕微鏡3の光軸に沿うよう屈曲させて試料1に照射し、試料1からの反射光が対物レンズ31を通過する。
透過照明部32bは、架台7の水平部の内部、かつ、試料台22の下方側に設けられ、内蔵する光源の光や、光ファイバ8から導入された外部光源からの光を、試料1の下方から照射する。
なお、本実施形態では、透過照明部32bから照射された光は、コンデンサレンズ23によって集光されて平行光(集平行光)として試料1に照射(出射)されるため、試料1からの平行光の透過光が対物レンズ31を通過する。
透過照明部32bおよびコンデンサレンズ23により出射部41が構成されている(
図2及び後述する
図9参照)。
【0026】
鏡筒34は、目視観察用の接眼レンズ35と、イメージセンサ4とを支持する。
鏡筒34の側部は、Z軸制御部36を介して、L字型の架台7の直立部分に取り付けられている。
【0027】
Z軸制御部36は、顕微鏡3の位置を上下方向(Z軸方向、光軸)に調整する(移動する)。Z軸制御部36は、架台7に固定されたスライド板36aと鏡筒34に固定されたスライド板36bと、Z軸モータ361とを備える。
【0028】
図4に示すように、スライド板36a、36bの一方には、Z軸モータ361と、Z軸モータ361の回転軸362に固定されたピニオンギア363と、回転軸362と共軸に構成された操作つまみ364とを備える。また、スライド板36aと36bとの他方には、ラック365が形成されており、ラック365にピニオンギア363が係合して、ラックアンドピニオン機構を構成している。Z軸モータ361の回転駆動及び操作つまみ364の回転駆動により、ピニオンギア363が回転し、ラック365を駆動する。このため、架台7に固定されているスライド板36aに対してスライド板36bが上下方向にスライドして、鏡筒34が上下(Z軸方向)に移動する。
【0029】
目視観察用の接眼レンズ35は、対物レンズ31からの光軸をプリズムで傾けて、目視観察が容易になるようにしている。
【0030】
イメージセンサ4はケースに収納されており、このケースは、鏡筒34の先端に着脱可能に装着される。装着部は、例えば、Cマウントや、Fマウントを採用する。
イメージセンサ4は、CCD素子をXY平面上に並べて構成されている。
【0031】
イメージセンサ4は、
図3に示すように、移動部2によってX軸方向及びY軸方向に移動する試料1を、撮像範囲であるエリアE毎に順次撮像し(タイリングし)、連結コードを介して、各々のエリアEの画像データを制御コンピュータ150に伝達する。即ち、イメージセンサ4は、試料1に対して相対運動を行って、顕微鏡3により拡大された試料1の像を走査(スキャン)し、対応する画像データを制御コンピュータ150に供給する。
【0032】
制御コンピュータ150は、コンピュータ装置から構成されている。
制御コンピュータ150は、
図1に示すように、演算処理部51、表示部52、画像記録装置53、を備える。
演算処理部51は、例えば、試料1の撮像領域の設定、移動部2のX軸方向及びY軸方向への移動と位置制御、オートフォーカスのためのZ軸方向の調整、イメージセンサ4への撮像実行指示、イメージセンサ4からのエリア画像データの取り込み、エリア画像データから撮像領域の全体画像を作成する処理などを行う。
【0033】
図5に演算処理部51を中心とした回路ブロック図を示す。
図5に示すように、演算処理部51には、移動部2、Z軸制御部36、撮像部123、画像RAM124、画像記録装置53、データ通信部125などが接続されている。
【0034】
移動部2は、X軸駆動部121、Y軸駆動部122、X軸エンコーダ24X,Y軸エンコーダ24Y、を備える。
X軸駆動部121は、演算処理部51の制御に従ってX軸モータ131を駆動して、X−Yステージ21をX軸方向に移動する。
Y軸駆動部122は、演算処理部51の制御下に、Y軸モータ132を駆動して、X−Yステージ21をX軸方向に直交するY軸方向に移動する。
【0035】
X軸エンコーダ24Xは、リニアエンコーダ等から構成され、X−Yステージ21がX軸方向に動くと、その向きと移動距離に応じたパルス列を出力する。演算処理部51は、パルス数及び位相等を判別することにより、X−Yステージ21のX軸方向の移動方向と移動距離とを判別する。
【0036】
Y軸エンコーダ24Yは、リニアエンコーダ等から構成され、X−Yステージ21がY軸方向に動くと、その向きと移動距離に応じたパルス列を出力する。演算処理部51は、パルス数及び位相等を判別することにより、X−Yステージ21のY軸方向の移動方向と移動距離とを判別する。
【0037】
Z軸制御部36は、前述のZ軸モータ361と、Z軸駆動部366及びZ軸エンコーダ367とから構成される。Z軸駆動部366は、演算処理部51の制御下に、Z軸モータ361を駆動して、顕微鏡3をZ軸方向(上下方向)に移動する。Z軸エンコーダ367は、リニアエンコーダ等から構成され、顕微鏡3がZ軸方向に動くと、その向きと移動距離に応じたパルス列を出力する。演算処理部51は、パルス数及び位相等を判別することにより、顕微鏡3の移動方向と移動距離とを判別する。
【0038】
Z軸制御部36は、例えばイメージセンサ4によって取得された画像のコントラストを検出することによるオートフォーカス処理によって撮像部123の対物レンズ31の焦点位置を試料1上面である撮像表面(試料表面、撮像対象面)に移動させることができる。なお、本願では、この位置を基準位置と呼ぶこととする。また、Z軸制御部36は、演算処理部51の出力信号に基づいて、基準位置よりも予め設定された離隔距離だけ上方に離れた
図6(A)に示す離隔位置と、基準位置から予め設定された測定距離だけ移動した
図6(B)に示す測定位置と、基準位置よりも予め設定された接近距離だけ下方に接近する
図6(C)に示す接近位置と、の間で移動させることができる。なお、本実施形態では、測定位置として、接近位置よりも試料1の撮像表面から凹んだ部分にピントが合った位置(鮮鋭度の高い焦点位置、ジャストフォーカスの位置)が設定される。また、本実施形態では、離隔位置や接近位置については、試料1の厚さや、想定される粒子の飛跡の深さ、異物の大きさに基づいて設定される。
【0039】
撮像部123は、対物レンズ31、イメージセンサ4等を備え、演算処理部51の出力信号に基づいて、対物レンズ31の焦点位置が異なる位置に移動した状態で撮像された複数の試料1の画像を撮像して演算処理部51に供給する。具体的には、撮像部123は、焦点位置が離隔位置に移動した状態で撮像された
図6(D)に示す離隔画像(Far画像)201と、焦点位置が測定位置に移動した状態で撮像された
図6(E)に示す測定画像(Msr:Measure画像)202と、焦点位置が接近位置に移動した状態で撮像された
図6(F)に示す接近画像(Near画像)203と、を撮像して演算処理部51に供給する。
【0040】
画像RAM124は、演算処理部51のワークエリアとして機能する。
【0041】
画像記録装置53は、大容量記憶装置等から構成され、撮像した画像を記録する。
データ通信部125は、外部装置との間で様々な通信を行う。
【0042】
演算処理部51は、差分取得部511と、目標物抽出部512と、異物除去部513と、飛跡抽出部514とを備える。
【0043】
差分取得部511は、接近画像203の各画素の輝度値から離隔画像201の各画素の輝度値を減算した値を対応する輝度値とする接近離隔差分画像(Near-Far画像、凹検出用の差分画像、
図6(G)参照)204を取得する。また、差分取得部511は、離隔画像201の各画素の輝度値から接近画像203の対応する各画素の輝度値を減算した値を対応する輝度値とする離隔接近差分画像(Far-Near画像、凸検出用の差分画像、
図6(H)参照)205を取得する。本実施形態の差分取得部511は、各差分画像204、205を取得する前に、接近画像203及び離隔画像201にスムージング処理を実行して画像内の輪郭線を滑らかにしている。
なお、
図6(G)及び
図6(H)に示す各差分画像204、205は、理解を容易にするため、輝度値が正の値(正情報)を有する部分のみを黒色とは異なる色で表示している。
【0044】
目標物抽出部(閉領域抽出部)512は、各画像から輝度値が他の部分とは異なる部分(他の部分よりも白い部分または黒い部分)である目標物(Obj :Object、閉領域)を抽出する。目標物抽出部512は、
図6(B)に示す測定画像202内の目標物と、
図6(G)に示す接近離隔差分画像204内の正情報の目標物と、
図6(H)に示す離隔接近差分画像205内の正情報の目標物と、を抽出する。
【0045】
測定画像202内の目標物を抽出する場合、まず、目標物抽出部512は、測定画像202にスムージング処理を実行し、測定画像202から輝度値が他の部分とは異なる部分を囲む境界(エッジ)を明確にする。次に、目標物抽出部512は、測定画像202内の境界を抽出する境界抽出処理(エッジ抽出処理)を実行し、ピクセル単位でつながっている境界を1つずつラベリングする。ところで、同じ目標物を異なる測定位置撮影した画像において、光の屈折の関係で、ある焦点位置ではひとつの境界しか生じないのに、それと異なる焦点位置では多重の境界(多重円)が生じる場合がある。あるいは同じ目標物に対して、全ての焦点位置で多重の境界が生じる場合がある。目標物抽出部512は、内側の境界(内側境界)を囲む外側の境界(外側境界)が存在する場合、すなわち、多重の境界(多重円)を有する目標物が抽出された場合に、不要な境界を除去する境界除去処理を実行する。具体的には、各境界のうち、境界の内部の平均輝度値(輝度値の平均値)を計測し、楕円内の平均輝度値が最も低い楕円を測定画像202内の目標物として抽出し、残りの内側の境界を除去する。
【0046】
例えば、
図7に示す測定画像202内の目標物202aは、
図7の破線に示すように、外側の境界202bと、中間の境界202cと、内側の境界202dとを有する。そこで、目標物抽出部512は、まず、境界202b内の領域と、境界202c内の領域と、境界202d内の領域の平均輝度値を算出する。このとき、平均輝度値は境界より内側の領域の全てが対象となる。具体的には、境界202c内の領域の平均輝度値を求める場合には、境界202d内の領域の輝度値も合わせて領域202c内の領域の平均輝度値が算出される。目標物202aの場合、中間の境界202c内の領域の平均輝度値が最も低くなるため、目標物202aの境界は中間の境界202cとなり、残りの境界202b、202dは除去される。
なお、仮に、中間の境界202cのエッジ強度と、内側の境界202dのエッジ強度とが同じ値であった場合でも、外側にある中間の境界202cのエッジ強度が目標物202aの境界となり、内側の境界202dは除去される。
【0047】
また、各差分画像204、205内の正情報の目標物を抽出する場合、まず、目標物抽出部512は、測定画像202内の各ピクセルの光量が予め設定された閾値を超えるか否かで各ピクセルの輝度値を白色の値と黒色の値とに2値化する2値化抽出処理を実行し、ピクセル単位でつながっている白色のピクセルの集合を1つずつラベリングする。なお、本実施形態では、異物を除去しつつ粒子の飛跡を抽出する目的であるため、次に、目標物排出部512は、特開2005−293299号公報に記載されている楕円フィッティングという手法を用いて、ラベリングされたピクセルの集合のうち、飛跡や異物とは考えられないものを目標物から排除する。
【0048】
具体的には、目標物抽出部512は、境界を示す各ピクセル座標を基に近似楕円を作成し、次に境界を示すピクセル座標付近に存在する近似楕円の外周(境界)までの最短距離を測定する。そして、例えば、この距離が予め設定された閾値内にある場合は有効なピクセルと判定し、次に、有効と判定されたピクセルの数が所定の閾値以上に達した場合には、飛跡や異物との合致度が高いと判定し、目標物として抽出する。また、有効と判定されたピクセルの数が所定の閾値に達せず、合致度が低いと判定した場合は目標物から排除する。
【0049】
例えば、
図8(A)及び
図8(B)に示す各差分画像204a、205aに2値化処理を実行した場合、
図8(A)及び
図8(B)の実線に示す部分は、合致度が閾値を超えて目標物として抽出され、
図8(A)及び
図8(B)の点線に示す部分は、合致度が閾値以下となり除外される。
また、本実施形態では、抽出された各差分画像204、205内の正情報の目標物の重心座標を取得して、各差分画像204、205内の正情報の目標物の抽出処理を終了する。
【0050】
異物除去部513は、撮像表面に付着した異物を測定画像202から除去する。異物除去部513は、凸検出部513aを有する。
【0051】
ここで、撮像表面に
図9(A)及び
図9(E)に示す異物1aが付着している場合、
図9(A)及び
図9(E)の実線に示すように、異物1aに照射される平行光が屈折等して、焦点が撮像表面の上方に形成される。すなわち、異物1aが凸レンズのように機能する。
このため、対物レンズ31の焦点位置が離隔位置に移動した場合、
図9(A)の破線に示すように、対物レンズ31の焦点位置と異物1aに対応する部分の透過光の焦点位置とが近く光量が多くなるため、撮像される
図9(B)に示す離隔画像201aは、異物1aに対応する部分201bの輝度値が周辺部分の輝度値よりも大きくなる(白色に近くなる)。
また、対物レンズ31の焦点位置が接近位置に移動した場合、
図9(E)の破線に示すように、対物レンズ31の焦点位置と異物1aに対応する部分の透過光の焦点位置とが遠く光量が少なくなるため、撮像される
図9(F)に示す接近画像203aは、異物1aに対応する部分203bの輝度値が周辺部分の輝度値よりも小さくなる(黒色に近くなる)。
【0052】
この結果、離隔画像201aの輝度値が周辺部分の輝度値よりも大きく、且つ、接近画像203aの輝度値が周辺部分の輝度値よりも小さい部分201b、203bを、撮像表面に付着した異物1aとみなして除去することができる。よって、異物除去部513は、後述する凸検出部513aによって撮像表面から突出した凸部を検出し、検出された凸部を異物1aとして除去する。
【0053】
凸検出部513aは、離隔画像201の輝度値が周辺部分の輝度値よりも大きく、且つ、接近画像203の輝度値が周辺部分の輝度値よりも小さい部分201b、203bを、撮像表面から突出した凸部として検出する。
例えば、
図6(H)及び
図8(B)に示す離隔接近差分画像205、205aであれば、離隔接近差分画像205、205a内で正情報が得られた目標物(除去Obj)は、全て凸部として検出される。
【0054】
飛跡抽出部514は、撮像表面から凹んで形成された粒子の飛跡を抽出する。飛跡抽出部514は、凹検出部514aと、非抽出対象除去部514bとを有する。
【0055】
ここで、撮像表面に
図9(C)及び
図9(G)に示す粒子の飛跡1bが形成されている場合、
図9(C)及び
図9(G)の実線に示すように、粒子の飛跡1bに照射される平行光が屈折・散乱等して、焦点が撮像表面の下方に形成される。すなわち、粒子の飛跡1bが凹レンズのように機能する。
このため、対物レンズ31の焦点位置が離隔位置に移動した場合、
図9(C)の破線に示すように、対物レンズ31の焦点位置と粒子の飛跡1bに対応する部分の透過光の焦点位置とが遠く光量が少ないため、撮像される
図9(D)に示す離隔画像201cは、粒子の飛跡1bに対応する部分201dの輝度値が周辺部分の輝度値よりも小さくなる。また、対物レンズ31の焦点位置が接近位置に移動した場合、
図9(G)の破線に示すように、対物レンズ31の焦点位置と粒子の飛跡1bに対応する部分の透過光の焦点位置とが近く光量が多いため、撮像される
図9(H)に示す接近画像203cは、粒子の飛跡1bに対応する部分203dの輝度値が周辺部分の輝度値よりも大きくなる。よって、撮像表面に粒子の飛跡1bが形成されている場合は、撮像表面に異物1aが付着している場合とは対応する部分の明暗が逆転した画像が得られる(白黒反転した画像が得られる)。
【0056】
この結果、接近画像203cの輝度値が周辺部分の輝度値よりも大きく、且つ、離隔画像201cの輝度値が周辺部分の輝度値よりも小さい部分203d、201dを、撮像表面から凹んだ粒子の飛跡1bとみなして抽出することができる。よって、飛跡抽出部514は、後述する凹検出部514aによって撮像表面から凹んだ凹部を検出し、検出された凹部を粒子の飛跡1bとして抽出する。また、本実施形態では、粒子の飛跡1bを抽出する目的であるため、飛跡抽出部514は、後述する非抽出対象除去部514bによって粒子の飛跡1bとは異なる測定画像202内の目標物を境界の長さ(エッジ長)や面積等に基づいて判別して抽出対象から除去する。
【0057】
凹検出部514aは、接近画像203cの輝度値が周辺部分の輝度値よりも大きく、且つ、離隔画像201cの輝度値が周辺部分の輝度値よりも小さい部分203d、201dを、撮像表面から凹んだ凹部として検出する。
例えば、
図6(G)及び
図8(A)に示す接近離隔差分画像204、204aであれば、接近離隔差分画像204、204a内で正情報が得られた目標物(抽出Obj)は、全て凹部として検出される。
【0058】
非抽出対象除去部514bは、測定画像202内の目標物のうち、粒子の飛跡1bとは異なるものを非抽出対象として除去する。非抽出対象除去部514bは、測定画像202内の目標物のうち、境界の長さが予め設定された境界用閾値LLよりも短いものを除去する。また、非抽出対象除去部514bは、測定画像202内の目標物のうち、面積が予め設定された面積用最小値SLよりも小さいものと、予め設定された面積用最大値SHよりも大きいものとを除去する。なお、本実施形態では、境界から抽出した所定数のピクセルを用いて目標物の輪郭に近似する楕円を求める楕円フィッティング処理で求めた楕円の面積を求めることにより、測定画像202内の目標物の面積を求める。
さらに、非抽出対象除去部514bは、測定画像202内の目標物のうち、求めた楕円の短径を長径で除算した値が予め設定された楕円用閾値Dより小さいものを除外する。
【0059】
なお、本実施形態の飛跡抽出部514は、抽出する粒子の飛跡の抽出漏れを防止(数え漏れを防止)するため、測定画像202において所定のサイズよりも大きい飛跡は、各差分画像204、205と照合することなく無条件で抽出する。具体的には、飛跡抽出部514は、面積が面積用最小値SL以上面積用最大値SH以下となる測定画像202内の目標物のうち、予め設定された面積用閾値SEよりも大きいものを、接近離隔差分画像204の正情報の目標物と照合することなく粒子の飛跡として抽出する(無条件で抽出する)。
【0060】
また、本実施形態の飛跡抽出部514は、測定画像202内の目標物の重心座標を求め、求められた重心座標と接近離隔差分画像204の正情報の目標物の重心座標との間の距離を求め、この値を飛跡用の距離として記憶する。次に、今度は、測定画像202内の求められた重心座標と離隔接近差分画像205の正情報の目標物の重心座標との間の距離を求め、この値を異物用の距離として記憶する。そして、飛跡抽出部514は、求めた飛跡用の距離に予め設定された重心用閾値GDよりも短いものがあり、且つ、求めた異物用の距離が全て重心用閾値GD以上であれば、測定画像202内の目標物を粒子の飛跡として抽出する。なお、重心用閾値GDは求められた全ての飛跡用の距離のいずれよりも大きいが、求められた全ての異物用の距離のいずれよりも小さい値が設定される。
【0061】
例えば、測定画像である
図8(C)の1202aが目標物である場合について説明する。まず、飛跡抽出部514は、1202aの重心座標COD1202aを求める。次に接近離隔差分画像である
図8(A)の正情報の目標物の重心座標として、例えば1202bの重心座標COD1202bを求め、COD1202bとCOD1202aとの間の距離を求め、これを飛跡用距離GD1とする。次に飛跡抽出部514は、離隔接近差分画像である
図8(B)の正情報の目標物の重心座標として、例えば1202cの重心座標COD1202cを求め、COD1202bとCOD1202cとの間の距離を求め、これを異物用距離GD2とする。
【0062】
この場合、目標物1202aの重心座標COD1202aと目標物1202bの重心座標1202bとは、測定誤差が無ければ合致しているため、このときの飛跡用距離GD1は非常に小さく、重心用閾値GD以下となる。したがって接近離隔差分画像の中に重心用閾値GD以下のものが存在していると判定される。
【0063】
これに対して、
図8(B)では目標物1202aに相当する目標物は対象外として除外されており、最も近い目標物は、1202cとなる。このときの異物用距離GD2は飛跡用距離GD1よりも大きく、重心用閾値GDよりも大きな値となるので、離隔接近差分画像の中には重心座標GD以下のものは存在しないと判定される。
【0064】
飛跡抽出部514は、目標物1202aについては、求めた飛跡用の距離に予め設定された重心用閾値GDよりも短いものがあり、且つ、求めた異物用の距離が全て重心用閾値GD以上であると判定し、目標物1202aを粒子の飛跡として抽出する。
【0065】
例えば、
図8(C)に示す測定画像202eでは、
図8(C)の実線に示す部分は、粒子の飛跡として抽出され、
図8(C)の点線に示す部分は、異物等として除外される。なお、測定画像202eの中央部の点線で示す除外部分202fは、
図8(A)及び
図8(B)に示すように、凹部としても凸部としても検出されており、飛跡用の距離と異物用の距離とが共に重心用閾値GDより小さいため除外されている。
【0066】
次に、
図10〜
図13を参照して、本実施の形態の試料解析装置100の動作を説明する。
図10に示すように、試料解析処理は、試料1が試料台22上面に支持され、試料1の測定領域が設定されることにより開始する。まず、演算処理部51は、移動部2を介して試料1における最初に測定を始めるエリアにX−Yステージ21を移動する(ステップS101)。次に、演算処理部51は、オートフォーカス処理によって撮像表面を検出し、Z軸制御部36を介して対物レンズ31の焦点位置を基準位置に移動させる(ステップS102)。次に、演算処理部51は、Z軸制御部36を介して対物レンズ31の焦点位置を離隔位置に移動させ、撮像部123によって離隔画像201を撮像する(ステップS103)。次に、演算処理部51は、Z軸制御部36を介して対物レンズ31の焦点位置を測定位置に移動させ、撮像部123によって測定画像202を撮像する(ステップS104)。次に、演算処理部51は、Z軸制御部36を介して対物レンズ31の焦点位置を接近位置に移動させ、撮像部123によって接近画像203を撮像する(ステップS105)。
【0067】
次に、演算処理部51は、後述する
図11に示す測定画像の目標物抽出処理と(ステップS106)、後述する
図12に示す各差分画像の目標物抽出処理と(ステップS107)、後述する
図13に示す飛跡抽出処理とを実行する(ステップS108)。次に、演算処理部51は、全てのエリアを撮像したか否かを判別し(ステップS109)、撮像していない場合には(ステップS109;No)、移動部2を介して次のエリアにX−Yステージ21を移動し(ステップS110)、ステップS102〜S108の処理を繰り返す。そして、演算処理部51は、全てのエリアを撮像している場合には(ステップS109;Yes)、試料解析処理を終了する。
【0068】
また、
図11に示す測定画像の目標物抽出処理において、まず、目標物抽出部512は、撮像された測定画像202に、スムージング処理(ステップS201)と、境界抽出処理とを実行し(ステップS202)、ピクセル単位でつながっている境界を1つずつラベリングする(ステップS203)。次に、目標物抽出部512は、ラベリングされた複数の境界が多重(多重円)となっているか否かを判別し(ステップS204)、多重となっている場合には、境界の領域内の平均輝度値が最も低い境界以外の境界を除去する(ステップS205)。そして、目標物抽出部512は、多重となる境界がない場合や、多重となる境界が全て除去された場合(ステップS204;No)、測定画像の目標物抽出処理を終了する。
【0069】
また、
図12に示す各差分画像の目標物抽出処理において、まず、差分取得部511は、離隔画像201及び接近画像203にそれぞれスムージング処理を実行した後に(ステップS301)、接近離隔差分画像204と離隔接近差分画像205とを取得する(ステップS302)。次に、目標物抽出部512は、各差分画像204、205の正情報の目標物を抽出してラベリングする(ステップS303)。次に、目標物抽出部512は、ラベリングされた目標物のうち、飛跡や異物との合致度が閾値以下の目標物を除去する(ステップS304)。そして、目標物抽出部512は、ラベリングされた残りの目標物の重心座標を取得し(ステップS305)、各差分画像の目標物抽出処理を終了する。
【0070】
また、
図13に示す飛跡抽出処理において、まず、飛跡抽出部514は、ラベリングされた境界を有する測定画像202内の目標物を1つ選択する(ステップS401)。次に、非抽出対象除去部514bは、境界の長さが境界用閾値LLよりも短いか否かを判別し(ステップS402)、短い場合には(ステップS402;Yes)、選択した目標物を異物として除去する(ステップS410)。また、非抽出対象除去部514bは、境界の長さが境界用閾値LL以上の場合には(ステップS402;No)、楕円フィッティング処理によって目的物に応じた楕円を求める(ステップS403)。次に、非抽出対象除去部514bは、楕円の面積が面積用最小値SLより小さいか否かを判別し(ステップS404)、小さい場合には(ステップS404;Yes)、選択した目標物を異物として除去する(ステップS410)。
【0071】
また、非抽出対象除去部514bは、楕円の面積が面積用最小値SL以上の場合には(ステップS404;No)、楕円の面積が面積用最大値SHより大きいか否かを判別する(ステップS405)。非抽出対象除去部514bは、楕円の面積が面積用最大値SHより大きい場合には(ステップS405;Yes)、選択した目標物を異物として除去し(ステップS410)、楕円の面積が面積用最大値SH以下の場合には(ステップS405;No)、楕円の短径を長径で除算した値が楕円用閾値Dより小さいか否かを判別する(ステップS406)。
【0072】
非抽出対象除去部514bは、除算した値が楕円用閾値Dより小さい場合には(ステップS406;Yes)、選択した目標物を異物として除去する(ステップS410)。また、除算した値が楕円用閾値D以下の場合には(ステップS406;No)、飛跡抽出部514は、楕円の面積が面積用閾値SEより大きいか否かを判別する(ステップS407)。
楕円の面積が面積用閾値SEより大きい場合(ステップS407;Yes)、飛跡抽出部514は、選択された目標物を粒子の飛跡として抽出する(ステップS411)。また、楕円の面積が面積用閾値SE以下の場合(ステップS407;No)、飛跡抽出部514は、測定画像202内の目標物の重心座標とラベリングされた接近離隔差分画像204の正情報の目標物の重心座標との飛跡用の距離を求め、異物除去部513は、測定画像202内の目標物の重心座標とラベリングされた離隔接近差分画像205の正情報の目標物の重心座標との異物用の距離を求める(ステップS408)。
【0073】
次に、飛跡抽出部514は、距離用閾値GDよりも短い飛跡用の距離が有り、異物用の距離には無いか否かを判別する(ステップS409)。距離用閾値GDよりも短い飛跡用の距離が無い場合や、距離用閾値GDよりも短い異物用の距離が有る場合には(ステップS409;No)、異物除去部513は、選択した目標物を異物として除去する(ステップS410)。また、距離用閾値GDよりも短い飛跡用の距離が有り、異物用の距離には無い場合には(ステップS409;Yes)、飛跡抽出部514は、選択された目標物を粒子の飛跡として抽出する(ステップS411)。次に、飛跡抽出部514は、測定画像202内の全ての目標物を選択済であるか否かを判別し(ステップS412)、選択済でない場合には(ステップS412;No)、ステップS401に戻り次の目的物を選択し、選択済である場合には(ステップS412;Yes)、飛跡抽出処理を終了する。
【0074】
以上説明したように、本実施形態の試料解析装置100によれば、対物レンズ31の焦点位置をZ軸方向に移動させることにより、撮像表面から突出した凸部(凸レンズの機能を有する部分)と、撮像表面から凹んだ凹部(凹レンズの機能を有する部分)とをそれぞれ検出できる。この結果、本実施形態の試料解析装置100は、飛跡検出用固体の解析の際に、撮像表面に付着した異物1aを自動検出して除去することができ、撮像表面から凹んだ粒子の飛跡1bのみを抽出することができる。
【0075】
また、本実施形態の試料解析装置100では、コンデンサレンズ23から平行光(集平行光)のみが試料1に出射して試料の解析を行っており、特許文献1、2のように集拡散光を試料1に出射する構成が不要となっている。この結果、本実施形態の試料解析装置100は、集拡散光をフィルムに入射させるための構成(拡散板や第2光源部)を省略することができ、凸部や凹部を検出するための製造コストを低減できる。
また、本実施形態の試料解析装置100では、離隔位置及び接近位置を調整して、凸部や凹部と、他の部分と、のコントラスト(例えば、輝度値の差分値)が大きくなるように設定でき、凸部(例えば、異物1a)や凹部(例えば、粒子の飛跡1b)を精度良く検出できる。
【0076】
特に、本実施形態の試料解析装置100では、離隔画像201と接近画像203とから取得した各差分画像204、205の正情報の目的物を抽出しており、凸部や凹部(正情報の目標物)と、他の部分(目標物以外の黒色の部分)と、のコントラストがさらに大きくなっている。この結果、本実施形態の試料解析装置100は、凸部(例えば、異物1a)や凹部(例えば、粒子の飛跡1b)をさらに精度良く検出できる。
さらに、本実施形態の試料解析装置100では、所謂ジャストフォーカスの測定画像202の目標物を抽出して、各差分画像204、205の正情報の目的物の位置に配置されたものを凸部や凹部として検出しており、凸部や凹部をさらに精度良く検出できる。
【0077】
また、本実施形態の試料解析装置100では、測定画像202内の目標物の境界が多重(多重円)になっている場合に、境界の領域内の平均輝度値が最も低い境界以外の境界を除去する。この結果、本実施形態の試料解析装置100は、測定画像202内の同じ凸部や凹部を複数の凸部や凹部として重複して検出する誤検出を防止することができる。
【0078】
さらに、本実施形態の試料解析装置100では、円形の凹部として形成された粒子の飛跡1bを抽出するため、各差分画像204、205の正情報の目標物のうち飛跡や異物との合致度の低いものを除去したり、各閾値LL、SL、SH、Dを用いて粒子の飛跡1bとは異なるものを非抽出対象として除去したりする。この結果、本実施形態の試料解析装置100は、測定画像202内の異物1a等を精度良く除去し、粒子の飛跡1bのみを精度良く抽出することができる。
【0079】
なお、試料解析装置100の制御コンピュータ150は、
図15に示すように、制御部151、主記憶部152、外部記憶部153、操作部154、表示部52、入出力部156および送受信部157を備える。主記憶部152、外部記憶部153、操作部154、表示部52、入出力部156および送受信部157はいずれも内部バス160を介して制御部151に接続されている。
【0080】
制御部151はCPU(Central Processing Unit)等から構成され、外部記憶部153に記憶されている制御プログラム158に従って、試料解析装置100の差分取得部511、目標物抽出部512、異物除去部513及び飛跡抽出部514の各処理を実行する。演算処理部51は、制御部151によって構成される。
【0081】
主記憶部152はRAM(Random-Access Memory)等から構成され、外部記憶部153に記憶されている制御プログラム158をロードし、制御部151の作業領域として用いられる。画像RAM124は、主記憶部152によって構成される。
【0082】
外部記憶部153は、フラッシュメモリ、ハードディスク、DVD−RAM(Digital Versatile Disc Random-Access Memory)、DVD−RW(Digital Versatile Disc ReWritable)等の不揮発性メモリから構成され、試料解析装置100の処理を制御部151に行わせるためのプログラムをあらかじめ記憶し、また、制御部151の指示に従って、このプログラムが記憶するデータを制御部151に供給し、制御部151から供給されたデータを記憶する。画像記憶装置53は、外部記憶部153によって構成される。
【0083】
操作部154はキーボードおよびマウスなどのポインティングデバイス等と、キーボードおよびポインティングデバイス等を内部バス160に接続するインタフェース装置から構成されている。
【0084】
表示部52は、CRT(Cathode Ray Tube)またはLCD(Liquid Crystal Display)などから構成され、各画像201〜205や試料解析装置100の操作画面等を表示する。
【0085】
入出力部156は、シリアルインタフェースまたはパラレルインタフェースから構成されている。入出力部156は、顕微鏡部110と接続されている。
【0086】
送受信部157は、ネットワークに接続する網終端装置または無線通信装置、およびそれらと接続するシリアルインタフェースまたはLAN(Local Area Network)インタフェースから構成されている。
【0087】
よって、
図5に示す試料解析装置100の差分取得部511、目標物抽出部512、異物除去部513及び飛跡抽出部514の処理は、制御プログラム158が、制御部151、主記憶部152、外部記憶部153、操作部154、表示部52、入出力部156及び送受信部157等を資源として用いて処理することによって実行する。
【0088】
なお、本実施形態では、試料1が飛跡検出用固体によって構成されており、粒子の飛跡1bを抽出する構成としたが、例えば、試料1を特許文献1、2に記載されたフィルムとして、フィルムの傷(凹部)や塵(凸部)を検出等する構成としてもよい。
【0089】
なお、本実施形態では、撮像部123としてイメージセンサ4を使用したが、例えば、ラインセンサを使用してもよい。
【0090】
なお、本実施形態では、イメージセンサ4としてCCDセンサを使用する例を示したが、例えば、CMOSセンサでもよい。
【0091】
なお、本実施形態では、離隔位置、測定位置、接近位置はそれぞれ1つずつ設定したが、例えば、それぞれ2つ以上設定することも可能である。この場合、撮像された複数の測定画像のうち最もピントが合っているものを選択したり、複数の離隔画像やのうち目標物の輝度値が最大のものを選択したり、複数の接近画像のうち正情報の目標物の輝度値が最大のものを選択したりすることができる。
【0092】
なお、本実施形態では、測定画像202内の境界を抽出する境界抽出処理(エッジ抽出処理)を実行し、ピクセル単位でつながっている境界を1つずつラベリングしたが、例えば、
図14に示すように、2値化抽出処理で測定画像202をモノクロ画像202gにしてから目標物の境界をラベリングしてもよい。
【0093】
なお、本実施形態では、飛跡抽出処理において、接近離隔差分画像204の正情報の目標物として抽出されていても測定画像202内の目標物として抽出されていない場合には、粒子の飛跡1bとして抽出されない構成としたが、これに限定されない。例えば、接近離隔差分画像204の正情報の目標物として抽出されている場合には、測定画像202内の対応する部分を再画像処理(近傍再画像処理)して、粒子の飛跡1bとして抽出するか否かを判別する構成としてもよい。
【0094】
なお、本実施形態では、飛跡抽出処理において、選択された測定画像202内の目標物と、ラベリングされた全ての各差分画像204、205の正情報の目標物との距離を求めた後に、距離用閾値GDより小さい飛跡用の距離が有り且つ距離用閾値GDより小さい異物用の距離が無いか否かを判別したが、これに限定されない。例えば、飛跡用の距離については、ラベルの番号順に求めながら距離用閾値GDより小さいか否かを判別してもよい。この場合、距離用閾値GDより小さい飛跡用の距離が有ると判別されたラベルの番号によっては実施形態よりも演算負荷を低減できる。
【0095】
その他、上記のハードウェア構成やフローチャートや閾値やパラメタ等は一例であり、任意に変更および修正が可能である。
【0096】
なお、本実施形態では平行光を照明に使う場合について述べたが、必ずしも平行光でなくともよく、接近離隔差分画像と、離隔接近差分画像とを用いて目標抽出が行なうことができる可視光の全てが対象となる。
【0097】
なお、試料解析装置100の各機能を、OS(オペレーティングシステム)とアプリケーションプログラムの分担、またはOSとアプリケーションプログラム(試料解析プログラム)との協働により実現する場合などには、アプリケーションプログラム部分のみを外部記憶部153や、記録媒体、記憶装置等に格納してもよい。
【0098】
また、搬送波にアプリケーションプログラム(試料解析プログラム)を重畳し、通信ネットワークを介して配信することも可能である。たとえば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS:Bulletin Board System)にアプリケーションプログラムを掲示し、ネットワークを介してアプリケーションプログラムを配信してもよい。そして、このアプリケーションプログラムをコンピュータにインストールして起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、前記の処理を実行できるように構成してもよい。