特許第5960011号(P5960011)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5960011文字入力受付方法、文字入力受付システム、および文字入力受付プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5960011
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】文字入力受付方法、文字入力受付システム、および文字入力受付プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/023 20060101AFI20160719BHJP
   H03M 11/04 20060101ALI20160719BHJP
   G06F 3/0488 20130101ALI20160719BHJP
【FI】
   G06F3/023 310L
   G06F3/0488
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-212702(P2012-212702)
(22)【出願日】2012年9月26日
(65)【公開番号】特開2014-68236(P2014-68236A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2015年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233491
【氏名又は名称】株式会社日立システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100080001
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 大和
(74)【代理人】
【識別番号】100113642
【弁理士】
【氏名又は名称】菅田 篤志
(74)【代理人】
【識別番号】100117008
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 章子
(74)【代理人】
【識別番号】100147430
【弁理士】
【氏名又は名称】坂次 哲也
(72)【発明者】
【氏名】石井 卓夫
【審査官】 岩橋 龍太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−277282(JP,A)
【文献】 特開2002−215288(JP,A)
【文献】 特開2002−342011(JP,A)
【文献】 特表2009−534731(JP,A)
【文献】 特開2004−139321(JP,A)
【文献】 特開2003−256118(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0245252(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0160419(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01− 3/0489
G06F 3/14− 3/153
H03M 11/04−11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチパネルを介して情報の入出力が可能な情報処理端末における文字入力受付方法であって、
前記情報処理端末により、
前記タッチパネルにより表示される画面の端部に前記画面の辺に沿ってスライドバーを表示する工程と、
前記スライドバー上におけるユーザによりタッチされた位置を検知して、当該位置の近傍に入力候補文字を表示する工程と、
前記スライドバーがユーザによりスライドされたことを検知して、スライドされた位置に応じて前記入力候補文字の表示位置と内容を切り替えて表示する工程と、
前記入力候補文字が表示された領域がユーザにより一定時間以上タッチされたことを検知して、タッチされた前記入力候補文字が入力されたものとする工程と、
を有することを特徴とする文字入力受付方法。
【請求項2】
請求項1に記載の文字入力受付方法において、
前記情報処理端末が、前記スライドバー上におけるユーザによりタッチされた位置もしくはスライドされた位置に応じて前記入力候補文字を表示する際に、表示する前記入力候補文字に対して複数の候補文字がある場合には当該候補文字も合わせて表示することを特徴とする文字入力受付方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の文字入力受付方法において、
前記情報処理端末が、前記スライドバー上におけるユーザによりタッチされた位置に応じて前記入力候補文字を表示する際に、ユーザによるタッチが初回である場合には、当該時点での文字種における選択可能な文字配列の先頭の文字を前記入力候補文字とすることを特徴とする文字入力受付方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の文字入力受付方法において、
前記情報処理端末が、前記スライドバー上におけるユーザによりタッチされた位置に応じて前記入力候補文字を表示する際に、ユーザによるタッチが初回である場合には、前記スライドバーのスライド可能範囲に割り当てた当該時点での文字種における選択可能な文字配列において、ユーザによりタッチされた位置に対応する文字を前記入力候補文字とすることを特徴とする文字入力受付方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の文字入力受付方法において、
前記情報処理端末が、前記スライドバーがユーザによりスライドされた位置に応じて前記入力候補文字の内容を切り替えて表示する際に、前記スライドバーが正方向にスライドされた場合には、当該時点の文字種における選択可能な文字配列の後方の文字を順次前記入力候補文字とし、前記スライドバーが負方向にスライドされた場合には、当該時点の文字種における選択可能な文字配列の前方の文字を順次前記入力候補文字とすることを特徴とする文字入力受付方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の文字入力受付方法において、
前記情報処理端末が、さらに、前記スライドバー上においてユーザにより前記スライドバーのスライド方向に対して所定の範囲内の角度を有し、かつ所定の値以上の速度で移動するようタッチされたフリップ操作を検知して、当該時点の文字種を変更する工程を有することを特徴とする文字入力受付方法。
【請求項7】
請求項6に記載の文字入力受付方法において、
前記情報処理端末が、前記フリップ操作を検知する度に、前記フリップ操作の方向に応じて当該時点の文字種を順方向もしくは逆方向に循環的に順次切り替えることを特徴とする文字入力受付方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の文字入力受付方法において、
前記情報処理端末が、前記スライドバー上におけるユーザによりタッチされた位置もしくはスライドされた位置の近傍に前記入力候補文字を表示する際に、過去に入力された文字もしくは単語の頻度の高いものに基づいて前記入力候補文字を予測して決定する予測モードを有することを特徴とする文字入力受付方法。
【請求項9】
請求項8に記載の文字入力受付方法において、
前記情報処理端末が、前記予測モードにより決定した前記入力候補文字を表示している状態で、さらにユーザにより前記スライドバーがスライドされたことを検知した場合、前記予測モードを解除することを特徴とする文字入力受付方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載の文字入力受付方法において、
前記情報処理端末が、前記予測モードにより前記入力候補文字を予測して決定する際に、さらに、当該時点で前記情報処理端末において取得可能なコンテキスト情報を参照して前記入力候補文字を決定することを特徴とする文字入力受付方法。
【請求項11】
請求項10に記載の文字入力受付方法において、
前記情報処理端末が、前記予測モードにより前記入力候補文字を予測して決定する際に参照する前記コンテキスト情報には、当該時点の時間および/または日付の情報を含むことを特徴とする文字入力受付方法。
【請求項12】
タッチパネルを介して情報の入出力が可能な情報処理端末からなる文字入力受付システムであって、
前記タッチパネル上においてユーザによりタッチされた位置を検出する位置検出部と、
前記位置が、前記タッチパネルにより表示される画面の端部に前記画面の辺に沿って表示されたスライドバー上にあるか否か、もしくは前記スライドバーの近傍に表示された入力候補文字の上にあるか否かを判定する位置情報解析部と、
前記タッチパネル上におけるユーザによるタッチの移動方向を判定する移動方向解析部と、
前記タッチパネル上におけるユーザによる操作が、前記スライドバーをスライドさせるものである場合に、前記スライドバー上における前記位置に応じた、当該時点の文字種における前記入力候補文字を前記位置の近傍に表示する文字情報表示部と、
前記入力候補文字が表示された領域がユーザにより一定時間以上タッチされた場合に前記入力候補文字が入力されたものとする文字選択部と、
を有することを特徴とする文字入力受付システム。
【請求項13】
請求項12に記載の文字入力受付システムにおいて、
さらに、前記タッチパネル上におけるユーザによるタッチの移動速度を判定する移動速度解析部と、
前記タッチパネル上におけるユーザによる操作が、前記スライドバー上において前記スライドバーのスライド方向に対して所定の範囲内の角度を有し、かつ所定の値以上の速度で移動するフリップ操作であった場合に、前記スライドバーの外観を切り替えるバー切替部と、
前記フリップ操作が行われた場合に、当該時点の文字種を切り替える文字種制御部と、
を有することを特徴とする文字入力受付システム。
【請求項14】
タッチパネルを介して情報の入出力が可能な情報処理端末を文字入力受付システムとして動作させる文字入力受付プログラムであって、
前記情報処理端末に、
前記タッチパネルにより表示される画面の端部に前記画面の辺に沿ってスライドバーを表示する処理と、
前記スライドバー上におけるユーザによりタッチされた位置を検知し、当該位置の近傍に入力候補文字を表示する処理と、
前記スライドバーがユーザによりスライドされたことを検知し、スライドされた位置に応じて前記入力候補文字の表示位置と内容を切り替えて表示する処理と、
前記入力候補文字が表示された領域がユーザにより一定時間以上タッチされたことを検知し、タッチされた前記入力候補文字が入力されたものとする処理と、
を実行させることを特徴とする文字入力受付プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置における文字入力の技術に関し、特に、タッチパネルを有する携帯端末における文字入力受付方法、文字入力受付システム、および文字入力受付プログラムに適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
いわゆるスマートフォンやタブレット型端末などの携帯型の情報処理端末では、一般的に、文字や記号等(以下では単に「文字」と記載する場合がある)の入力のためのデバイスとしてキーボードの代わりにタッチパネルを使用することができる。このとき通常、タッチパネルが表示する画面上にキーボード相当の図形等を表示し、ユーザは、入力したい文字に対応する図形やキーを指や専用のペン等(以下ではこれらを「指」と総称する場合がある)によりタッチしたり、スライドさせるなどのジェスチャーを組み合わせたりして文字を入力する。
【0003】
このような文字入力方式における効率化等の技術としては、例えば、特開2010−108118号公報(特許文献1)には、液晶モニタの表示領域にメール本文を示す文字列などを表示できる文字表示領域と、ひらがな仮想キーボードなどを表示できる仮想キーボード表示領域とが含まれ、液晶モニタの上面にはタッチパネルが設けられ、タッチパネルは文字表示領域などに対するタッチ操作を検出し、文字表示領域内で指をスライドすることで仮想キーボード内の選択位置を移動することができ、選択位置が示す文字キーに対応する文字を文字表示領域に表示する携帯端末に係る技術が記載されている。
【0004】
また、特開2012−79282号公報(特許文献2)には、仮想キーボードが表示された状態でタッチスクリーン方式で文字が入力される日本語タッチスクリーンキーパッドアレイにおいて、初期状態で「あ」、「い」、「う」、「え」、「お」を表示する5個の即時入力キーと、初期状態で「か」、「さ」、「た」、「な」、「は」、「ま」、「や」、「ら」、「わ」を表示する9個の選択入力キーと、最終的に選択された文字を入力するための選択キーとを含み、選択入力キーが操作されると、選択された選択入力キーの文字に該当する文字群が即時入力キー上に表示され、その状態で即時入力キーが操作されると、即時入力キーに表示されている文字が入力されるようにする技術が記載されている。
【0005】
また、特開2011−34289号公報(特許文献3)には、五十音表に記載されるそれぞれの文字情報とそれぞれの文字情報を指定する位置情報とが対応付けられた対応表を記憶する記憶部と、文字情報を表示部に表示する表示制御部と、タッチパネルへの接触を含むタッチ操作に応答し、タッチ位置及び当該接触が解除されたタッチ解除位置を検出する検出部と、タッチ位置からタッチ解除位置までのスライド方向及びスライド量を逐次的に測定する測定部と、タッチ位置を対応表にある所定の文字情報を指定する位置情報に対応させ、測定されたスライド方向及びスライド量に基づいてタッチ解除位置に対応する文字情報を判定する判定部とを備える入力受付装置に係る技術が記載されている。
【0006】
また、特開2012−141923号公報(特許文献4)には、テンキーからなる第1操作部と、スライドバーを含むタッチパネルからなる第2操作部と、前記テンキーに対応する文字群を記憶する文字群情報と、前記テンキーが押下された場合、前記文字群情報から前記テンキーのキー情報に対応する文字群をスライドバーの関連情報として抽出し、前記スライドバーの関連情報と前記スライドバーとを同時に表示部に出力する前記文字入力制御部と、前記スライドバーとスライドバー関連情報を表示する表示部を有する文字入力装置に係る技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−108118号公報
【特許文献2】特開2012−79282号公報
【特許文献3】特開2011−34289号公報
【特許文献4】特開2012−141923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術では、タッチパネルを利用した文字入力における効率化を図ることができるが、特にスマートフォンなどの小型の携帯型端末では、タッチパネルの表示領域が狭いことから、仮想キーボードやジェスチャーを行うための領域にかなりの部分を占有され、OS(Operating System)やアプリケーション等における入力結果を表示する領域が小さくなってしまうという課題を有する。
【0009】
例えば、特許文献1や2に記載されたような技術では、ユーザが選択・指定可能な各文字等に対してそれぞれ指で直接選択可能な程度の一定面積の領域を割り当てて配列した仮想キーボードが表示されるため、これによりタッチパネルの表示領域のかなりの部分が占有されてしまう。また、特許文献3に記載されたような技術では、仮想キーボードは表示されないものの、スライドやジェスチャーの操作を行うための入力領域の確保が必要となり、これにより表示領域のかなりの部分が占有されてしまう。また、特許文献4に記載されたような技術では、タッチパネルの他にテンキーなどのデバイスを要するとともに、画面上に入力モードや文字種毎に文字を指定するためのスライドバーを表示することから、これにより表示領域のかなりの部分が占有されてしまう。
【0010】
そこで本発明の目的は、ユーザによるタッチパネルを利用した文字入力の際に、文字の選択や指定のために占有する領域を小さくし、入力結果の表示や他のアプリケーション等のために大きな表示領域を確保することを可能とする文字入力受付方法、文字入力受付システム、および文字入力受付プログラムを提供することにある。
【0011】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0013】
本発明の代表的な実施の形態による文字入力受付方法は、タッチパネルを介して情報の入出力が可能な情報処理端末における文字入力受付方法であって、前記情報処理端末により、前記タッチパネルにより表示される画面の端部に前記画面の辺に沿ってスライドバーを表示する工程と、前記スライドバー上におけるユーザによりタッチされた位置を検知して、当該位置の近傍に入力候補文字を表示する工程と、前記スライドバーがユーザによりスライドされたことを検知して、スライドされた位置に応じて前記入力候補文字の表示位置と内容を切り替えて表示する工程と、前記入力候補文字が表示された領域がユーザにより一定時間以上タッチされたことを検知して、タッチされた前記入力候補文字が入力されたものとする工程とを有することを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の代表的な実施の形態による文字入力受付システムは、タッチパネルを介して情報の入出力が可能な情報処理端末からなる文字入力受付システムであって、前記タッチパネル上においてユーザによりタッチされた位置を検出する位置検出部と、前記位置が、前記タッチパネルにより表示される画面の端部に前記画面の辺に沿って表示されたスライドバー上にあるか否か、もしくは前記スライドバーの近傍に表示された入力候補文字の上にあるか否かを判定する位置情報解析部と、前記タッチパネル上におけるユーザによるタッチの移動方向を判定する移動方向解析部とを有する。
【0015】
さらに、前記タッチパネル上におけるユーザによる操作が、前記スライドバーをスライドさせるものである場合に、前記スライドバー上における前記位置に応じた、当該時点の文字種における前記入力候補文字を前記位置の近傍に表示する文字情報表示部と、前記入力候補文字が表示された領域がユーザにより一定時間以上タッチされた場合に前記入力候補文字が入力されたものとする文字選択部とを有することを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明は、コンピュータを上記のような文字入力受付システムとして動作させるプログラムにも適用することができる。
【発明の効果】
【0017】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0018】
すなわち、本発明の代表的な実施の形態によれば、タッチパネルにおける文字入力の際に、文字の選択や指定のために占有する領域を小さくし、入力結果の表示や他のアプリケーション等のために大きな表示領域を確保することが可能となる。また、本発明の代表的な実施の形態によれば、単純な操作で効率的な文字入力が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(a)〜(e)は、本発明の実施の形態1である文字入力受付方法の例について概要を示した図である。
図2】(a)、(b)は、本発明の実施の形態1における入力対象の文字種や入力モードを切り替える手法の例について概要を示した図である。
図3】本発明の実施の形態1における文字入力受付システムの構成例について概要を示した機能ブロック図である。
図4】本発明の実施の形態1における文字入力受付方法の処理の流れの例について概要を示したフローチャートである。
図5】(a)〜(e)は、本発明の実施の形態2である文字入力受付方法の例について概要を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0021】
<実施の形態1>
本発明の実施の形態1である文字入力受付方法は、例えばスマートフォンやタブレット型端末などのタッチパネルを有する携帯型の情報処理端末における、タッチパネルを利用したユーザからの文字入力の受付方法であり、タッチパネルにより表示される画面の表示領域の端部に表示されたスライドバーをユーザが指等でスライドさせることにより、その位置に応じた文字を入力するものである。仮想キーボードでは、選択可能な文字等のそれぞれに指等で直接指定することが可能な程度の面積を有する領域が割り当てられるため表示領域における占有面積が大きくなるのに対し、本実施の形態では、スライドバーの位置情報に対して選択可能な文字を割り当てるため、表示領域における占有面積を大幅に小さくすることができる。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態1である文字入力受付方法の例について概要を示した図である。図1(a)〜(e)の各図において、スマートフォンなどの携帯型端末1はタッチパネル20を有しており、これによって画面表示を行うとともにユーザからの指等でのタッチやジェスチャーによる入力を受け付ける。図1の例では、画面上部に入力された文字(例えば、図1(a)の例では「雨がふ」)を表示する領域を有する一方、画面下部に、表示領域の下辺に沿って横方向にスライド可能なスライドバー21を表示している。スライドバー21の表示位置はこれに限られず、例えば、右利き(もしくは左利き)のユーザの場合には右辺(もしくは左辺)に沿って縦方向にスライド可能なように表示してもよいし、上辺に沿って横方向にスライド可能なように表示してもよい。アプリケーション等の要件によっては画面の端部以外に表示することも可能である。
【0023】
図1(a)では、ユーザがスライドバー21をスライドさせようと指でタッチしたことを検知すると、文字種の初期値(図1の例ではひらがな)における文字の初期値(図1の例では五十音配列の最初の「あ」)を候補として、指でタッチした位置の近傍に選択可能なように(図1の例では吹き出し22により)表示する。図1(a)の例では、スライドバー21上でユーザがタッチした(スライドを開始した)位置に関わらず、表示する文字の初期値を五十音配列の最初である「あ」とする場合の例を示しているが(相対位置モード)、これに限らず、スライドバー21のスライド可能範囲に対して予め割り当てられた五十音配列の文字のうち、ユーザがタッチした位置に対応する文字を初期値として表示するようにしてもよい(絶対位置モード)。
【0024】
図1(a)の状態で、ユーザが例えば次に「れ」を入力したいとした場合、現在表示されている「あ」に対して「れ」は五十音配列で後方にあるため、ユーザは、指を右方向(スライドバー21における正方向)にスライドさせる。このとき、スライドバー21の位置(指の位置)もしくはスライド量を検出し、その位置に応じて吹き出し22の表示位置もスライドさせるとともに、吹き出し22に表示される文字も順次切り替える。例えば、スライドバー21上で、最初に指をタッチした位置と、最大限右方向にスライドさせた位置との間の領域に対して、ここに含まれるべき文字を均等間隔で割り当て、指の位置に対応した文字を吹き出し22に表示する。
【0025】
ユーザは、図1(b)に示すように、希望する「れ」が吹き出し22に表示される位置まで指をスライドバー21上で右方向にスライドさせると、次に、「れ」を選択するために指を吹き出し22の上にスライドさせる。携帯型端末1は、図1(c)に示すように、吹き出し22がタッチされたことを検知すると、対応する文字(「れ」)が入力されたものとして取り扱う。さらに次の文字を入力する場合は、ユーザは、図1(d)に示すようにスライドバー21上に指を戻す。
【0026】
次にユーザが例えば「ば」を入力したいとした場合、現在表示されている「れ」に対して「ば(は)」は五十音配列で前方にあるため、ユーザは、指を左方向(スライドバー21における負方向)にスライドさせる。「は」が吹き出し22に表示される位置までユーザが指をスライドさせると、携帯型端末1は、図1(e)に示すように、吹き出し22によって「は」を表示するとともに「ぱ」および「ば」についても表示する。このように、濁点、半濁点候補がある場合には複数の吹き出し22によりこれらを選択可能な候補として表示する。「や」と「ゃ」、「つ」と「っ」などの拗音や促音、「A」と「a」などの大文字、小文字等についても同様である。ユーザは、表示された候補から、図1(c)の例と同様に、希望する文字が表示されている吹き出し22をタッチすることで選択することができる。
【0027】
図2は、入力対象の文字種や入力モードを切り替える手法の例について概要を示した図である。図2(a)の例では、図1と同様に、初期値であるひらがなが文字種として設定されている。ここで、文字種を切り替えるため、本実施の形態では、例えば、円柱状のスライドバー21を軸に沿って回転させるかのようにユーザが指をスライドバー21のスライド方向と直交する方向(図2の例では上もしくは下方向)に弾くように動かす(以下ではこの動作を「フリップ」と記載する場合がある)。携帯型端末1は、この動作を検知すると、図2(b)に示すように表示する文字種をひらがなからアルファベットに切り替える。なお、直交する方向といっても一定の幅を有し、スライドバー21に対して所定の範囲内の角度(例えば60度〜120度)であれば直交方向と取り扱ってもよいことは当然である。
【0028】
また、フリップを繰り返してスライドバー21を複数回回転させることにより、例えば、ひらがな→アルファベット→数字→特殊文字→カタカナ→ひらがな→…というようにサイクリックに文字種を順次切り替えるようにしてもよい。逆方向にフリップすることで逆順で文字種が切り替わるようにしてもよい。また、文字種や入力モードが切り替わったことをユーザに通知するために、例えば、図2(b)に示すようにスライドバー21の色等の外観を変えてもよい。現在の文字種や入力モードの通知手法はこれに限らず、例えばスライドバー21の横に小さな表示領域を設けてそこに選択されている文字種や入力モードを表示するようにしてもよい。
【0029】
[システム構成]
図3は、本実施の形態における文字入力受付システムの構成例について概要を示した機能ブロック図である。文字入力受付システムは、上述した携帯型端末1により構成され、図3に示す機能ブロック図は、携帯型端末1の機能のうち、本実施の形態の文字入力受付方法に係る部分を抜き出したものである。文字入力受付システムは、例えば、図示しないOS等の上で動作するソフトウェアプログラム等により実装される文字入力制御部10と、タッチパネル20および画面表示部30を有する。画面表示部30は、ソフトウェアプログラムもしくは集積回路等によるハードウェアとして実装され、例えば、タッチパネル20を制御して表示領域に画面データを表示させる。
【0030】
文字入力制御部10は、さらに例えば、指位置検出部11、指位置情報解析部12、指静止時間検出部13、指移動方向解析部14、指移動速度解析部15、バー切替/情報制御部16、文字種制御部17、文字情報表示部18、および文字選択部19などの各部を有する。
【0031】
指位置検出部11は、タッチパネル20上でユーザによるタッチやジェスチャーの操作が行われた場合に、指がタッチされた位置(座標)を検出する。指位置情報解析部12は、タッチされた指の位置が、スライドバー21上にあるのか、吹き出し22上にあるのか、他の領域にあるのかを判定する。スライドバー21上にある場合は、その相対的位置やスライド量(例えば、スライドバー21の全体の長さのうち何%のところにあるか)を求めるようにしてもよい。指の位置がスライドバー21上にある場合は、吹き出し22に表示する候補文字の切替処理を行い、吹き出し22上にある場合は、文字選択処理を行うことになる。指静止時間検出部13は、指がスライドバー21もしくは吹き出し22の上にタッチされている継続時間を取得する。
【0032】
指移動方向解析部14は、タッチパネル20上での指の移動方向を解析し、(図1図2の例では)横方向に移動している場合(スライドバー21をスライドさせている場合)には吹き出し22に表示する候補文字の切替処理を行い、縦方向に移動している場合は、後述する指移動速度解析部15に情報を渡して、図2の例に示したフリップ操作であるか否かを判定することになる。指移動速度解析部15は、指が縦方向に移動している場合は、速度が一定以上であるか否かを判定し、一定以上の場合はフリップ操作が行われたものと判定する。
【0033】
バー切替/情報制御部16は、指移動速度解析部15によりフリップ操作が行われたと判定された場合に、スライドバー21の色等の切り替えを行うとともに、切り替えたことを後述する文字種制御部17に通知する。文字種制御部17は、バー切替/情報制御部16によりスライドバー21の色等が切り替えられるのに合わせて、吹き出し22に表示されている文字の文字種を切り替える。
【0034】
文字情報表示部18は、指位置情報解析部12および文字種制御部17からの情報に基づいて吹き出し22の表示位置を制御するとともに、文字種に応じて吹き出し22に表示する文字の制御(文字の決定と、半濁点、濁点や大文字、小文字等の候補の決定)を行う。文字選択部19は、指位置情報解析部12および指静止時間検出部13からの情報に基づいて、吹き出し22に表示された文字がユーザのタッチ操作により選択されたことを検知し、選択された文字が入力されたものとして画面表示部30を介して入力結果をタッチパネル20上に表示する。
【0035】
[処理の流れ]
図4は、本実施の形態の文字入力受付方法の処理の流れの例について概要を示したフローチャートである。携帯型端末1は、初期処理としてまず、タッチパネル20上の所定の位置にスライドバー21を表示し、ユーザからの文字入力の受付処理を開始すると、指位置検出部11や指位置情報解析部12などにより、スライドバー21上に指がタッチされたことを検知し、スライドバー21上での位置を取得する(S01)。ここでは例えば、スライドバー21の全体の長さに対する相対的位置やスライド量として求めることができる。
【0036】
次に、文字情報表示部18により、現在の文字種(最初は初期値)を確認した上で(S02)、スライドバー21上の指がタッチされた位置に吹き出し22により該当文字種で文字の初期値を表示する(S03)。上述したように、文字の初期値は、現在の文字種における選択可能な文字の配列の先頭の文字(例えば、ひらがなの場合は「あ」など)としてもよいし(相対位置モード)、スライドバー21のスライド可能範囲に対して予め割り当てられた文字の配列において、指がタッチされた位置に対応する文字としてもよい(絶対位置モード)。
【0037】
その後、指移動方向解析部14により、指が横方向に移動しているか否かを判定し(S04)、横方向に動いている場合(スライドバー21がスライドしている場合)は、指位置情報解析部12などの情報に基づいて移動量を取得し、これに応じて文字情報表示部18により吹き出し22の表示位置を移動させるとともに吹き出し22に表示する文字を切り替える(S05)。切り替えた後はステップS04に戻って上記の処理を繰り返す。
【0038】
ステップS04で指が横方向に移動していない場合は、指位置情報解析部12などの情報に基づいて指の位置が吹き出し22の上に移動しているか否かを判定する(S06)。吹き出し22の上に置かれている場合は、次に、指静止時間検出部13などの情報に基づいて文字選択部19により指が当該吹き出し22上で一定時間(例えば0.5秒など)以上置かれているか否かを判定する(S07)。指が置かれて一定時間以上経過していない場合は、ステップS04に戻って上記の処理を繰り返す。一方、一定時間以上指が置かれている場合は、当該吹き出し22に表示されている文字が選択されたものとして、タッチパネル20に入力結果として表示し(S08)、一文字の入力受付処理を終了する。さらに文字入力を受け付ける場合はステップS01から処理を再度繰り返せばよい。
【0039】
ステップS06で、指が吹き出し22の上にない場合、すなわち、指がスライドバー21上で静止しているか、スライドバー21や吹き出し22の表示領域とは異なる領域に移動したか、タッチパネル20から離れた場合は、次に、指移動速度解析部15などの情報に基づいてフリップ操作が行われたか否かを判定する(S09)。フリップ操作が行われた場合は、バー切替/情報制御部16および文字種制御部17により、文字種の切り替え順に従って現在の文字種の設定および吹き出し22に表示された文字を切り替え(S10)、入力受付処理をいったん終了する。切り替え後の文字種でさらに文字入力を受け付ける場合はステップS01から処理を再度繰り返せばよい。
【0040】
ステップS09でフリップ操作ではないと判定された場合は、次に、指位置検出部11などからの情報に基づいて指がタッチパネル20から一定時間(例えば3秒など)以上離れているか否かを判定する(S11)。指が一定時間以上離れていない場合は、吹き出し22に文字を表示した状態でステップS04に戻り、ユーザによる次の操作を待つ。一定時間以上離れている場合は、吹き出し22の表示を消去して(S12)、文字入力の受付処理を終了する。
【0041】
以上に説明したように、本実施の形態の文字入力受付方法によれば、仮想キーボードを画面上に表示する場合に比して、スライドバー21を表示し、その移動可能範囲に選択可能な文字を割り当てることで、文字候補の表示および操作のための領域について、表示領域全体における占有面積を大幅に小さくすることができる。また、例えばフリップ動作によりスライドバー21で選択可能な文字種を切り替えることで、1つのスライドバー21で複数の文字種に対応することが可能となり、占有面積の拡大を防止することが可能となる。また、スライドバー21と吹き出し22による文字選択と、フリップ動作による文字種切り替えを組み合わせることで、指一本での単純な操作で効率的に文字入力を行うことが可能となる。
【0042】
<実施の形態2>
実施の形態1における文字入力受付方法では、スライドバー21上での指の位置に応じて、文字種毎に予め定められた配列(例えば五十音順)に基づいて吹き出し22に表示する入力候補の文字を決定していたが、本発明の実施の形態2である文字入力受付方法では、実施の形態1に示したような入力候補文字の決定方法に加えて、過去の入力頻度等に基づいて動的に入力候補文字の決定を制御する予測モードを備えることで、入力のより一層の効率化を図るものである。
【0043】
図5は、本発明の実施の形態2である文字入力受付方法の例について概要を示した図である。図5(a)において、ユーザが最初にスライドバー21に指でタッチしたことを検知すると、吹き出し22に表示する文字の初期値として、実施の形態1の例と異なり、過去に入力された文字の頻度が最も高い文字(図2の例では「き(ぎ)」)を予測候補として表示する。
【0044】
ここで、実施の形態1の場合と同様の手順で図5(b)、(c)に示すように、ユーザが「き」を選択して入力し、さらに、ユーザが指を左方向にスライドさせた場合は、例えば、先頭が「き」の単語のうちユーザによる過去の入力頻度が高かったものが「きおん」であったとすると、指の移動量に関わらず、図5(d−1)に示すように、次に「お」を予測候補として表示する。一方、ユーザが指を右方向にスライドさせた場合は、例えば、先頭が「き」の単語のうちユーザによる過去の入力頻度が高かったものが「きょう」であったとすると、指の移動量に関わらず、図5(d−2)に示すように、次に「よ(ょ)」を予測候補として表示する。
【0045】
なお、例えば図5(d−2)に示す状態で、ユーザが「きょう」ではなく「きんよう」と入力したかった場合、さらに右側に指をスライドさせる(すなわち、表示された予測候補を採用しない)ことで、過去の入力頻度に基づく予測モードを解除し、現在表示されている「よ(ょ)」を基準として、図5(e)に示すように、通常通り指の移動量に基づいて候補となる文字(図5(e)の例では「ん」)を表示する。なお、このような予測を実現するために、携帯型端末1では、選択可能な文字や入力された単語毎に過去に入力された回数を積算して図示しないメモリテーブルやファイル等に保持しておくものとする。
【0046】
また、候補の予測精度を向上させるため、例えば、上記のような入力頻度による予測に加え、処理時の時間や季節(日付)等のコンテキスト情報を予測時の考慮に入れることができる。例えば、「こんにちは」と「こんばんは」という単語の入力頻度が高い状態で、予測候補に基づいて「こ」→「ん」の順で文字を選択した場合、次にユーザが左方向に指をスライドさせると、時間が日中の場合は次に「に」を予測候補として表示するが、夜間なら「ば」を予測候補として表示するよう制御することができる。
【0047】
時間や日付の他にも、例えば、GPS(Global Positioning System)による位置情報や温度など、携帯型端末1において取得可能なコンテキスト情報であれば予測時に利用することができる。なお、このような予測を実現するために、携帯型端末1では、例えば、単語毎の入力頻度の情報に加えてこれらが入力されたときのコンテキスト情報を保持したり、予測候補の単語等を選択するための判定条件を設定しておいたりすることができる。
【0048】
以上に説明したように、本実施の形態の文字入力受付方法によれば、ユーザがスライドバー21を指でタッチし、これをスライドさせた場合に、指のタッチ位置やスライド時の移動量に関わらず、文字や単語についての過去の入力頻度に基づいて入力候補の文字を予測して表示することで、入力効率を大幅に向上させることが可能となる。また、入力候補の文字を決定する際に、過去の入力頻度に加えて、時間や日付など、携帯型端末1で取得することが可能なコンテキスト情報を用いることで、予測精度をさらに向上させることができる。
【0049】
なお、上記の実施の形態1、2において示した文字入力受付方法における各種機能は、それぞれ有効/無効や、有効の際の内容などの情報を予めファイル等に設定しておいて、内容の変更等を後から行うことが可能となるようにしてもよい。
【0050】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、上記の実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0051】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば、集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、またはDVD等の記録媒体に置くことができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、タッチパネルを有する携帯端末における文字入力受付方法、文字入力受付システム、および文字入力受付プログラムに利用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1…携帯型端末、
10…文字入力制御部、11…指位置検出部、12…指位置情報解析部、13…指静止時間検出部、14…指移動方向解析部、15…指移動速度解析部、16…バー切替/情報制御部、17…文字種制御部、18…文字情報表示部、19…文字選択部、
20…タッチパネル、21…スライドバー、22…吹き出し、
30…画面表示部。
図1
図2
図3
図4
図5