(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板と、前記基板に実装される光半導体素子と、前記基板の厚み方向一方側に形成され、前記厚み方向に投影したときに、前記光半導体素子を囲むように配置されるリフレクタと、前記リフレクタ内に充填され、前記光半導体素子を封止する封止層とを備える光半導体パッケージと、
前記光半導体パッケージの前記厚み方向一方面に感圧接着する請求項1〜4のいずれか一項に記載の蛍光接着シートと
を備えることを特徴とする、光半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1において、本発明の一実施形態としての蛍光接着シート1は、蛍光体層3と、蛍光体層3の上面(厚み方向一方面)に積層される接着剤層4とを備えている。
【0022】
蛍光体層3は、例えば、後述するLED2(
図2参照)から発光される青色光の一部を黄色光する波長変換層(蛍光体層)である。また、蛍光体層3は、上記した波長変換に加え、青色光の一部を赤色光に変換してもよい。蛍光体層3は、プレート状あるいはシート状に形成されている。蛍光体層3は、例えば、蛍光体のセラミックから、蛍光体セラミックプレートとして形成され、あるいは、蛍光体および樹脂を含有する蛍光体樹脂組成物から、蛍光体樹脂シートとして形成されている。
【0023】
蛍光体は、励起光として、波長350〜480nmの光の一部または全部を吸収して励起され、励起光よりも長波長、例えば、500〜650nmの蛍光を発光する。具体的には、蛍光体としては、例えば、黄色蛍光体が挙げられる。そのような蛍光体としては、例えば、複合金属酸化物や金属硫化物などに、例えば、セリウム(Ce)やユウロピウム(Eu)などの金属原子がドープされた蛍光体が挙げられる。
【0024】
具体的には、蛍光体としては、例えば、Y
3Al
5O
12:Ce(YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット):Ce)、(Y,Gd)
3(Al,Ga)
5O
12:Ce、Tb
3Al
3O
12:Ce、Lu
3Al
3O
12:Ce、Ca
3Sc
2Si
3O
12:Ce、Lu
2CaMg
2(Si,Ge)
3O
12:Ceなどのガーネット型結晶構造を有するガーネット型蛍光体、例えば、(Sr,Ba)
2SiO
4:Eu、Ca
3SiO
4Cl
2:Eu、Sr
3SiO
5:Eu、Li
2SrSiO
4:Eu、Ca
3Si
2O
7:Euなどのシリケート蛍光体、例えば、CaAl
12O
19:Mn、SrAl
2O
4:Euなどのアルミネート蛍光体、例えば、ZnS:Cu,Al、CaS:Eu、CaGa
2S
4:Eu、SrGa
2S
4:Euなどの硫化物蛍光体、例えば、CaSi
2O
2N
2:Eu、SrSi
2O
2N
2:Eu、BaSi
2O
2N
2:Eu、Ca−α−SiAlONなどの酸窒化物蛍光体、例えば、CaAlSiN
3:Eu、CaSi
5N
8:Euなどの窒化物蛍光体、例えば、K
2SiF
6:Mn、K
2TiF
6:Mnなどのフッ化物系蛍光体などが挙げられる。好ましくは、ガーネット型蛍光体、さらに好ましくは、Y
3Al
5O
12:Ce(YAG)が挙げられる。
【0025】
蛍光体は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0026】
蛍光体層3を蛍光体セラミックプレートとして形成するには、上記した蛍光体をセラミック材料とし、かかるセラミック材料を焼結することにより、蛍光体層3(蛍光体セラミック)を得る。もしくは、上記した蛍光体の原材料を焼結し、それによる化学反応により蛍光体層3(蛍光体セラミック)を得ることもできる。
【0027】
なお、蛍光体セラミックを得る際には、焼結前に、例えば、バインダー樹脂、分散剤、可塑剤、焼結助剤などの添加剤を適宜の割合で添加することもできる。
【0028】
一方、蛍光体層3を蛍光体樹脂組成物から形成するには、例えば、まず、上記した蛍光体と、樹脂とを配合することにより、蛍光体樹脂組成物を調製する。
【0029】
樹脂は、蛍光体を分散させるマトリックスであって、例えば、シリコーン樹脂組成物、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などの透明樹脂などが挙げられる。好ましくは、耐久性の観点から、シリコーン樹脂組成物が挙げられる。
【0030】
シリコーン樹脂組成物は、主として、シロキサン結合(−Si−O−Si−)からなる主鎖と、主鎖の硅素原子(Si)に結合する、アルキル基(例えば、メチル基など)、アリール基(例えば、フェニル基など)またはアルコキシル基(例えば、メトキシ基)などの有機基からなる側鎖とを分子内に有している。
【0031】
具体的には、シリコーン樹脂組成物としては、例えば、脱水縮合硬化型シリコーンレジン、付加反応硬化型シリコーンレジン、過酸化物硬化型シリコーンレジン、湿気硬化型シリコーンレジンなどの硬化型シリコーンレジンなどが挙げられる。
【0032】
シリコーン樹脂組成物の25℃における動粘度は、例えば、10〜30mm
2/sである。
【0033】
樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0034】
各成分の配合割合は、蛍光体の配合割合が、蛍光体樹脂組成物に対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上であり、また、例えば、50質量%以下、好ましくは、30質量%以下でもある。また、樹脂100質量部に対する蛍光体の配合割合が、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上であり、また、例えば、100質量部以下、好ましくは、40質量部以下でもある。
【0035】
また、樹脂の配合割合は、蛍光体樹脂組成物に対して、例えば、50質量%以上、好ましくは、70質量%以上であり、例えば、99質量%以下、好ましくは、95質量%以下でもある。
【0036】
蛍光体樹脂組成物は、蛍光体および樹脂を上記した配合割合で配合し、攪拌混合することにより調製される。調製された蛍光体樹脂組成物は、シート状に成形されており、具体的には、蛍光体樹脂シートとして形成される。
【0037】
蛍光体樹脂シートは、樹脂が硬化型シリコーンレジンを含有する場合には、BステージまたはCステージとして形成される。さらに、蛍光体樹脂シートは、Bステージで形成される場合には、後の加熱によって、Cステージとすることもできる。
【0038】
蛍光体層3は、LED2および蛍光体層3による発熱の熱伝導の観点から、好ましくは、蛍光体セラミックプレートから形成される。
【0039】
蛍光体層3は、蛍光体セラミックプレートとして形成される場合には、厚みが、例えば、50μm以上、好ましくは、100μm以上であり、また、例えば、1000μm以下、好ましくは、500μm以下である。また、蛍光体樹脂シートから形成される場合には、厚みが、成膜性および装置の外観の観点から、例えば、25μm以上、好ましくは、50μm以上であり、また、例えば、1000μm以下、好ましくは、200μm以下でもある。
【0040】
接着剤層4は、蛍光体層3の上面(厚み方向一方面)全面に形成されている。接着剤層4は、シリコーン感圧接着剤組成物からシート状に形成されている。
【0041】
シリコーン感圧接着剤組成物は、例えば、第1ポリシロキサン、第2ポリシロキサンおよび触媒などを含有する原料から調製される。
【0042】
第1ポリシロキサンは、シリコーン感圧接着剤組成物の主原料であって、例えば、シラノール基含有ポリシロキサンなどの反応性ポリシロキサンが挙げられる。
【0043】
シラノール基含有ポリシロキサンとしては、例えば、シラノール基両末端ポリシロキサンが挙げられる。
【0044】
シラノール基両末端ポリシロキサンは、分子の両末端にシラノール基(SiOH基)を含有するオルガノシロキサンであって、具体的には、下記一般式(1)で示される。
一般式(1):
【0046】
(一般式(1)中、R
1は、飽和炭化水素基および芳香族炭化水素基から選択される1価の炭化水素基を示す。また、nは、1以上の整数を示す。)
上記一般式(1)中、R
1で示される1価の炭化水素基において、飽和炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基など)、例えば、炭素数3〜6のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基など)などが挙げられる。
【0047】
また、上記一般式(1)中、R
1で示される1価の炭化水素基において、芳香族炭化水素基としては、例えば、炭素数6〜10のアリール基(フェニル基、ナフチル基)などが挙げられる。
【0048】
上記一般式(1)において、R
1は、同一または互いに異なっていてもよく、好ましくは、同一である。
【0049】
1価の炭化水素基としては、好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基、および、炭素数6〜10のアリール基が挙げられ、さらに好ましくは、メチル基、フェニル基が挙げられる。
【0050】
上記一般式(1)おいて、nは、好ましくは、10,000以下の整数、さらに好ましくは、1,000以下の整数である。
【0051】
なお、上記一般式(1)におけるnは、平均値として算出される。
【0052】
シラノール基両末端ポリシロキサンとしては、具体的には、シラノール基両末端ポリジメチルシロキサン、シラノール基両末端ポリメチルフェニルシロキサン、シラノール基両末端ポリジフェニルシロキサンなどが挙げられる。
【0053】
このような第1ポリシロキサンは、単独使用または異なる複数種類を併用することができる。
【0054】
第1ポリシロキサンのなかでは、好ましくは、シラノール基両末端ポリジメチルシロキサンが挙げられる。
【0055】
第1ポリシロキサンは、市販品を用いることができ、また、公知の方法に従って合成したものを用いることもできる。
【0056】
第1ポリシロキサンの数平均分子量は、例えば、100以上、好ましくは、200以上であり、また、例えば、1,000,000以下、好ましくは、100,000以下でもある。数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、標準ポリスチレンで換算されて算出される。
【0057】
第1ポリシロキサンの配合割合は、シリコーン感圧接着剤組成物において、例えば、60質量%以上、好ましくは、80質量%以上であり、また、例えば、99.5質量%以下、好ましくは、98質量%以下でもある。
【0058】
第2ポリシロキサンは、シリコーン感圧接着剤組成物の副原料であって、例えば、接着剤層4の硬さの向上、接着力の向上、耐熱性の向上といった特性を得るために、必要により添加される。第2ポリシロキサンとしては、例えば、鎖状ポリシロキサン、環状ポリシロキサンなどが挙げられる。好ましくは、環状ポリシロキサンが挙げられる。
【0059】
環状ポリシロキサンは、下記式(2)で示される。
一般式(2):
【0061】
(一般式(2)中、R
1は、一般式(1)におけるR
1と同義である。mは、2以上の整数を示す。)
mは、好ましくは、3以上の整数を示し、また、例えば、10以下の整数、好ましくは、6以下の整数でもある。
【0062】
環状ポリシロキサンとしては、具体的には、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(一般式(2)中、R
1がメチル、mが3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(一般式(2)中、R
1がメチル、mが4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(一般式(2)中、R
1がメチル、mが5)などが挙げられる。
【0063】
このような第2ポリシロキサンは、単独使用または異なる複数種類を併用することもできる。
【0064】
第2ポリシロキサンのなかでは、好ましくは、オクタメチルシクロテトラシロキサンが挙げられる。
【0065】
第2ポリシロキサンの配合割合は、第1ポリシロキサン100質量部に対して、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下である。
【0066】
触媒としては、例えば、過酸化物が挙げられ、そのような過酸化物としては、例えば、ジベンゾイルパーオキシド、ベンゾイルm−メチルベンゾイルパーオキシド、m−トルイルパーオキシドなどのベンゾイル系過酸化物などの有機過酸化物が挙げられる。
【0067】
触媒は、単独使用または併用することができる。
【0068】
触媒として、好ましくは、ジベンゾイルパーオキシド、ベンゾイルm−メチルベンゾイルパーオキシドおよびm−トルイルパーオキシドの併用(混合物)が挙げられる。
【0069】
触媒の配合割合は、接着剤層4の硬さを制御する観点から、第1ポリシロキサン100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、また、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下でもある。
【0070】
そして、シリコーン感圧接着剤組成物は、上記した原料を、必要により、溶媒に配合してワニスを調製し、続いて、必要により、それらを反応させて、調製される。溶媒としては、トルエンなどの芳香族炭化水素などが挙げられる。
【0071】
なお、上記した溶媒は、接着剤層4の皮膜を形成後、必要により留去される。
【0072】
上記したシリコーン感圧接着剤組成物は、市販品を用いることができ、例えば、ダウコーニング社製の280A、282、7355、7358、7502、7657、Q2−7406、Q2−7566、Q2−7735、例えば、モメンティブ社製のPSA 590、PSA 600、PSA 595、PSA 610、PSA 518、PSA 6574、PSA 529、PSA 750−D1、PSA 825−D1、PSA 800−Cなどが用いられる。
【0073】
このようにして形成される接着剤層4の厚みは、感圧接着性の観点から、例えば、5μm以上であり、また、例えば、200μm以下、好ましくは、LED2および蛍光体層3による発熱の熱伝導の観点から、100μm以下、より好ましくは、50μm以下でもある。
【0074】
次に、この蛍光接着シート1の製造方法について説明する。
【0075】
この方法では、まず、蛍光体層3を用意する。
【0076】
次いで、接着剤層4を蛍光体層3の上面に積層する。
【0077】
具体的には、シリコーン感圧接着剤組成物がワニスとして調製される場合には、ワニスを蛍光体層3の上面全面に、例えば、バーコータなど、公知の塗布方法によって塗布する。これによって、シリコーン感圧接着剤組成物の皮膜を形成する。続いて、必要により、溶媒を留去する。
【0078】
あるいは、ワニスを離型シートなどの表面に塗布して、皮膜を形成し、かかる皮膜を、必要により溶媒を留去した後、離型シートから蛍光体層3に転写することもできる。離型シートは、蛍光接着シート6の使用時に、接着剤層4から引き剥がされる。
【0079】
これにより、接着剤層4を蛍光体層3の表面に形成する。
【0080】
これにより、接着剤層4が蛍光体層3に積層された蛍光接着シート6を得る。
【0081】
このようにして得られる蛍光接着シート6において、下記剥離強度の百分率は、30%以上であり、好ましくは、35%以上、より好ましくは、40%以上であり、また、例えば、200%以下、好ましくは、150%以下でもある。
【0082】
剥離強度の百分率=[(75℃雰囲気における剥離強度PS
75℃)/(25℃雰囲気における剥離強度PS
25℃)]×100
75℃雰囲気における剥離強度PS
75℃:支持体に積層された接着剤層4を蛍光体層3に感圧接着し、その後、温度75℃において、支持体および接着剤層4を、剥離角度180度、速度300mm/分で蛍光体層3から剥離したときの剥離強度。つまり、75℃雰囲気における接着剤層4の蛍光体層3に対する剥離強度。
【0083】
25℃雰囲気における剥離強度PS
25℃:支持体に積層された接着剤層4を蛍光体層3に感圧接着し、その後、温度25℃において、支持体および接着剤層4を、剥離角度180度、速度300mm/分で蛍光体層3から剥離したときの剥離強度。つまり、25℃雰囲気における接着剤層4の蛍光体層3に対する剥離強度。
【0084】
剥離強度の百分率が、30%に満たなければ、接着剤層4が蛍光体層3から界面剥離するという不具合がある。
【0085】
一方、接着剤層4の接着力が、上記上限以下であれば、感圧接着対象であるLED2(
図2〜
図4参照)あるいはLEDパッケージ10(
図5参照)に損傷がある場合には、蛍光接着シート6をそれらから一旦引き剥がして、それらを修理するリペアを容易に実施することができる。
【0086】
次に、
図1の蛍光接着シート6を用いて、本発明の光半導体装置としてのLED装置7を得る方法について、
図2を参照して説明する。
【0087】
この方法では、
図2(a)の上側図に示すように、蛍光接着シート6を用意する。
【0088】
蛍光接着シート6は、平面視におけるLED2の外形形状と同一形状となるように、ダイシングなどによって外形加工される。
【0089】
これとともに、
図2(a)の下側図に示すように、光半導体素子としてのLED2を予め基板5に実装して準備する。
【0090】
LED2は、断面略矩形状の略平板形状をなし、公知の半導体材料から形成されている。また、LED2には、図示しないが、次に説明する基板5の基板側端子と電気的に接続するためのLED側端子が設けられている。
【0091】
基板5は、平面視においてLED2よりやや大きい平板状に形成されている。基板5は、例えば、シリコン基板、セラミック基板、ポリイミド樹脂基板、金属基板に絶縁層が積層された積層基板などの絶縁基板からなる。
【0092】
また、基板5の上面には、LED2のLED側端子(図示せず)と電気的に接続するための基板側端子(図示せず)と、それに連続する配線とを備える導体パターン(図示せず)が形成されている。導体パターンは、例えば、金、銅、銀、ニッケルなどの導体から形成されている。
【0093】
LED2は、基板5に、例えば、フリップチップ実装またはワイヤーボンディング接続によって、接続される。なお、LED2が基板5にワイヤーボンディング接続される場合には、LED2に感圧接着する蛍光接着シート6は、ワイヤーを避ける(迂回する)形状に形成される。
【0094】
次いで、この方法では、蛍光接着シート6をLED2に貼着する。具体的には、蛍光体層3を接着剤層4を介してLED2の上面に感圧接着する。つまり、接着剤層4の下面をLED2の上面に接触させる。
【0095】
蛍光接着シート6とLED2との貼り合わせは、常温(具体的には、20〜25℃)で実施する。あるいは、必要により、蛍光接着シート6を、例えば、30〜50℃に加熱して実施することもできる。
【0096】
これにより、基板5と、基板5に実装されるLED2と、LED2の上面に感圧接着する蛍光接着シート6とを備えるLED装置7を得る。
【0097】
その後、必要により、
図2(b)の仮想線で示すように、第1封止層8をLED装置7に設けることもできる。第1封止層8は、基板5の上において、LED2および蛍光接着シート6を被覆するように、透明樹脂から形成される。封止層8は、LED装置7に設けられた後、必要により、例えば、研磨やダイシングなどによってサイズが調整される。
【0098】
そして、この蛍光接着シート6では、接着剤層4が、シリコーン感圧接着剤組成物から形成され、かつ、上記した蛍光接着シート6の剥離強度の百分率が30%以上であるので、耐熱性および耐久性に優れる。
【0099】
詳しくは、蛍光接着シート6の高温(例えば、75℃を含む高温)の接着力が、蛍光接着シート6の常温(25℃)の接着力に比べて著しく低下することを防止することができるので、優れた耐熱性を確保することができる。
【0100】
また、接着剤層4がシリコーン感圧接着剤組成物から形成されるので、接着剤層4の劣化を有効に抑制して、LED装置7における輝度の低下を抑制することができる。
【0101】
その結果、LED装置7は、上記した蛍光接着シート6を備えるので、長期にわたって優れた発光信頼性を確保することができる。
【0102】
図3以降の各図面において、上記した各部に対応する部材については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0103】
図2(b)の実施形態におけるLED装置7では、蛍光接着シート6を、LED2の上面のみに感圧接着させているが、例えば、
図3(b)に示すように、LED2の上面および側面に感圧接着させることもできる。
【0104】
図3(b)に示すLED装置7を得るには、
図1が参照されるように、まず、接着剤層4を蛍光体層3の上面全面に積層し、その後、必要により、それらをLED2より大きいサイズで外形加工して、LED2より大きいサイズの蛍光接着シート6を得る。
【0105】
次いで、蛍光接着シート6を、基板5に予め実装されたLED2の上面および側面に貼着する。
【0106】
このLED装置7では、
図2(b)に示すように、LED2の上面および側面には、接着剤層4が連続して積層されている。
【0107】
また、接着剤層4の表面(上面および側面)には、蛍光体層3が積層されている。
【0108】
蛍光体層3および接着剤層4を、下方に開放する断面略コ字形状に形成されている。
【0109】
これによって、蛍光体層3は、接着剤層4を介して、LED2の上面および側面の両面に対して感圧接着する。
【0110】
図3の実施形態によっても、
図2と同様の作用効果を奏する。
【0111】
また、
図2の実施形態では、
図2(a)に示すように、蛍光接着シート6を用意し、別途、LED2を予め基板5に実装して準備しておき、その後、
図2(b)に示すように、蛍光接着シート6を基板5の上において、LED2に感圧接着することによって、LED装置7を作製している。
【0112】
しかし、例えば、まず、
図4(a)に示すように、蛍光接着シート6とLED2とを感圧接着して、それらからなる光半導体素子−蛍光体層感圧接着体としてのLED−蛍光体層感圧接着体1を基板5とは別に作製し、その後、
図4(b)に示すように、LED−蛍光体層感圧接着体1のLED2を基板5に実装することもできる。
【0113】
この方法では、まず、蛍光接着シート6とLED2とを用意し、それらを貼り合わせる。具体的には、蛍光体層3を接着剤層4を介してLED2の上面に感圧接着させる。
【0114】
これによって、LED2と、LED2の上面(厚み方向一方面)に感圧接着する蛍光接着シート6とを備えるLED−蛍光体層感圧接着体1を作製する。
【0115】
次いで、
図4(b)に示すように、LED−蛍光体層感圧接着体1のLED2を基板5に実装する。
【0117】
図4の実施形態によっても、
図2の実施形態と同様の作用効果を奏する。また、LED−蛍光体層感圧接着体1は、蛍光接着シート6を備えるので、耐熱性および耐久性に優れる。
【0118】
また、
図2および
図3の実施形態では、蛍光接着シート6をLED2に貼着しているが、例えば、
図5に示すように、LEDパッケージ10に貼着することもできる。
【0119】
図5(a)において、LEDパッケージ10は、基板5と、基板5に実装されるLED2と、基板5の上に形成され、厚み方向に投影したときに、LED2を囲むように配置されるリフレクタ11と、リフレクタ11内に充填され、LED2を封止する封止層としての第2封止層12とを備える。
【0120】
LED2は、予め基板9に実装されている。
【0121】
リフレクタ11は、平面視において、中央が開口される、略矩形枠形状または略リング形状(円環形状あるいは楕円環形状)に形成されている。また、リフレクタ11は、断面視において、上方に向かって次第に幅狭となる略台形状に形成されている。リフレクタ11は、LED2を囲むように、LED2と間隔を隔てて配置されている。つまり、LED2は、リフレクタ11内に配置されている。
【0122】
リフレクタ11は、例えば、光反射成分(例えば、酸化チタンなど)を含有するセラミック材料の焼結体や、光反射成分を含有する反射樹脂組成物などから形成されており、LED2から発光される光を反射する。
【0123】
第2封止層12は、リフレクタ11内に充填されており、具体的には、リフレクタ11の内側面と、LED2から露出する基板9の上面と、LED2の上面および外側面とを被覆するように、形成されている。
【0124】
また、第2封止層12の上面は、リフレクタ11の上面と、面方向(厚み方向に直交する方向)に沿う同一平面を形成するように、形成されている。なお、図示しないが、第2封止層12の上面に、周端部から中央部に向かって次第に下方に凹む凹部(図示せず)が形成されていてもよい。
【0125】
蛍光接着シート6をLEDパッケージ10に貼着するには、
図5(a)に示すように、蛍光接着シート6およびLEDパッケージ10をそれぞれ用意する。
【0126】
次いで、
図5(b)に示すように、蛍光接着シート6をLEDパッケージ10の上面に、例えば、常温(具体的には、20〜25℃)で貼り付ける。
【0127】
これによって、上面(厚み方向一方面)に蛍光体層3が接着剤層4を介して感圧接着されたLEDパッケージ10を備えるLED装置7を製造することができる。
【0128】
図5の実施形態によっても、
図2の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0129】
また、
図2〜
図5の実施形態では、本発明の光半導体素子として、LED2を挙げて説明しているが、例えば、LD(レーザーダイオード)2を採用することもできる。
【0130】
その場合には、LED装置7は、レーザーダイオード照射装置7とされ、また、LED−蛍光体層感圧接着体1は、LD−蛍光体層感圧接着体1とされ、LEDパッケージ10は、LDパッケージ10とされる。
【実施例】
【0131】
以下に、作製例、準備例、比較準備例、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、何らそれらに限定されない。
【0132】
(蛍光体セラミックプレートの作製)
作製例1
酸化イットリウム粒子(純度99.99%、lot:N−YT4CP、日本イットリウム社製)11.34g、酸化アルミニウム粒子(純度99.99%、品番「AKP−30」、住友化学社製)8.577g、および、酸化セリウム粒子0.087gからなる蛍光体の原料粉末を調製した。
【0133】
調製した蛍光体の原料粉末20gと、水溶性バインダー樹脂(「WB4101」、Polymer Inovations,Inc社製)とを、固形分の体積比率が60:40となるように混合し、さらに蒸留水を加えてアルミナ製容器に入れ、直径3mmのイットリウム安定化ジルコニアボールを加えて24時間、ボールミルにより湿式混合することで、蛍光体の原料粒子のスラリー溶液を調製した。
【0134】
次いで、調製したスラリー溶液を、ドクターブレード法によりPETフィルム上にテープキャスティングし、70℃で乾燥して、セラミックグリーンシートを形成した後、セラミックグリーンシートをPETフィルムから剥離して、厚み90μmのセラミックグリーンシートを得た。
【0135】
その後、得られたグリーンシートを20mm×20mmのサイズに切り出し、これを2枚作製し、それらを重ね合わせ、2軸ホットプレスを用いて熱ラミネートすることにより、セラミックグリーンシート積層体を作製した。
【0136】
その後、作製したセラミックグリーンシート積層体を、電気マッフル炉にて、大気中、1℃/分の昇温速度で1200℃まで加熱し、バインダー樹脂などの有機成分を分解除去する脱バインダー処理を実施した。その後、高温真空炉に積層体を移し、約10
−3Torr(133×10
−3N/m
2)の減圧下で、5℃/分の昇温速度で1750℃まで加熱し、その温度で5時間焼成することで、厚み150μmの蛍光体セラミックプレート(蛍光体シート)を作製した。
【0137】
(蛍光体樹脂シートの作製)
作製例2
YAG蛍光体粉末(品番BYW01A、平均粒子径9μm、Phosphor Tech社製)を2液混合タイプの熱硬化性シリコーンエラストマー(信越シリコーン社製、品番KER2500)に、YAG蛍光体粉末の濃度が25質量%となるように、分散させた溶液を、アプリケーターを用いてガラス板上に塗工して、厚み150μmの蛍光体皮膜を形成し、蛍光体皮膜を100℃で1時間、続いて、150℃で1時間加熱することにより、厚み150μmのCステージの蛍光体樹脂シート(蛍光体シート)を作製した。
【0138】
(シリコーン感圧接着剤組成物の準備)
準備例1
シリコーン感圧接着剤組成物(商品名、PSA 600、モメンティブ社製)を準備した。
【0139】
なお、シリコーン感圧接着剤組成物の原料は、以下の通りであった。
・シラノール基両末端ポリジメチルシロキサン
・オクタメチルシクロテトラシロキサン(式(2)中、R
1:すべてメチル、m:3) 1〜5質量%(固形分総量に対して)
・ベンゾイル系過酸化物の混合物(ジベンゾイルパーオキシド、ベンゾイルm−メチルベンゾイルパーオキシドおよびm−トルイルパーオキシドの混合物) 少量
・トルエン 固形分に対して45質量%
(シリコーン感圧接着剤組成物の準備)
比較準備例1
シリコーン感圧接着剤組成物(商品名、SD 4580 PSA、東レ・ダウコーニング社製)を準備した。
【0140】
なお、シリコーン感圧接着剤組成物の原料は、以下の通りであった。
・シラノール基両末端ポリジメチルシロキサン
・ベンゾイル系過酸化物の混合物(ジベンゾイルパーオキシド、ベンゾイルm−メチルベンゾイルパーオキシドおよびm−トルイルパーオキシドの混合物) 少量
・トルエン 固形分に対して70質量%
(アクリル感圧接着剤組成物の準備)
比較準備例2
特開平6−172729号公報の実施例2の処方を参考にして、アクリル感圧接着剤を準備した。
【0141】
(蛍光接着シートおよびLED装置の製造)
実施例1
作製例1の蛍光体セラミックプレートの上面全面に準備例1のシリコーン感圧接着剤組成物を塗布して、皮膜を形成した。続いて、溶媒を留去した。
【0142】
これにより、厚み40μmのシリコーン感圧接着剤層(接着剤層)を形成した(
図1参照)。
【0143】
その後、蛍光体セラミックプレートおよびシリコーン感圧接着剤層をまとめてダイシングすることで、サイズ1mm×1mmの蛍光接着シートを作製した(
図2(a)の上側図参照)。
【0144】
その後、蛍光接着シートを、予め基板に実装され、蛍光接着シートと同一サイズのLED(Cree製)(
図2(a)参照)に25℃で貼り合わせた(
図2(b)参照)。つまり、蛍光体セラミックプレートを、シリコーン感圧接着剤層を介してLEDに感圧接着した。
【0145】
これにより、LED装置を製造した。
【0146】
実施例2
作製例1の蛍光体セラミックプレートに代えて、作製例2の蛍光体樹脂シートを用いた以外は、実施例1と同様に処理して、蛍光接着シートを得(
図1参照)、続いて、LED装置を製造した(
図2(b)参照)。
【0147】
実施例3
シリコーン感圧接着剤層の厚みを60μmに変更した以外は、実施例1と同様に処理して、蛍光接着シートを得(
図1参照)、続いて、LED装置を製造した(
図2(b)参照)。
【0148】
実施例4
シリコーン感圧接着剤層の厚みを120μmに変更した以外は、実施例1と同様に処理して、蛍光接着シートを得(
図1参照)、続いて、LED装置を製造した(
図2(b)参照)。
【0149】
比較例1
準備例1のシリコーン感圧接着剤組成物に代えて、比較準備例1のシリコーン感圧接着剤組成物を用いた以外は、実施例1と同様に処理して、蛍光接着シートを得(
図1参照)、続いて、LED装置を製造した(
図2(b)参照)。
【0150】
比較例2
準備例1のシリコーン感圧接着剤組成物に代えて、比較準備例2のアクリル感圧接着剤組成物を用いた以外は、実施例1と同様に処理して、蛍光接着シートを得(
図1参照)、続いて、LED装置を製造した(
図2(b)参照)。
【0151】
比較例3
準備例1のシリコーン感圧接着剤組成物に代えて、比較準備例2のアクリル感圧接着剤組成物を用いた以外は、実施例2と同様に処理して、蛍光接着シートを得(
図1参照)、続いて、LED装置を製造した(
図2(b)参照)。
【0152】
各実施例および各比較例における蛍光体層および接着剤層に用いられた材料などを表1に示す。
【0153】
【表1】
【0154】
(評価)
実施例および比較例のそれぞれの感圧接着剤層について、蛍光体シートに対する剥離強度を以下の方法によって評価した。
【0155】
また、実施例および比較例のそれぞれのLED装置を点灯した際の蛍光接着シートの表面温度、および、経時での発光信頼性も評価した。それらの結果を表2に示す。
1.剥離強度
25℃と75℃とのそれぞれの雰囲気における感圧接着剤層の蛍光体セラミックプレートに対する剥離強度を、19mm幅での引き剥がし接着力測定[N/19mm]によって算出した。
【0156】
詳しくは、支持体としての厚み25μmのポリイミドフィルムの表面に感圧接着剤組成物を幅が19mmになり、かつ、厚みが40μmとなるように塗工した。これによって、支持体に積層された感圧接着剤層を形成した。次いで、サイズ20mm×20mmの蛍光体セラミックプレートに、感圧接着剤層付きポリイミドフィルムを、ポリイミドフィルムの上から2kgのローラーで1往復することにより圧着した。圧着後、約30分放置した。その後、所定温度に設定された恒温槽内に備えられた引張試験装置内(装置名:島津製作所社製、恒温槽内引張試験機 AUTOGRAPH AG−10kNX)にセットして下記温度雰囲気で5分間保持し、その後、ポリイミドフィルムを、感圧接着剤層とともに、蛍光体セラミックプレートから下記条件にて引き剥がし(剥離し)、その際の引き剥がし接着力を剥離強度として測定した。
【0157】
恒温槽内の温度:25℃または75℃
剥離(引き剥がし)条件:剥離角度180度
引張速度300mm/分
測定後、75℃雰囲気における剥離強度PS
75℃[N/19mm]の、25℃雰囲気における剥離強度PS
25℃[N/19mm]に対する百分率([PS
75℃/PS
25℃]×100)を算出した。
2.LED装置を点灯した際の蛍光体層の表面温度
実施例および比較例のそれぞれのLED装置を、十分なサイズのヒートシンクと熱伝導グリースにて接続させ、また、電源と電気的に接続した。次いで、電源から350mAの電流を印加してLED装置を発光させ、1分間発光させた後の蛍光体層の表面温度をサーモグラフィーで測定した。
【0158】
なお、比較例1については、接着剤層が蛍光体セラミックプレートから剥離した。そのため、蛍光体層の表面温度を測定できなかった。
3.経時での発光信頼性
上記2.で作製したLED装置を、350mAで初期発光させた際の発光輝度(初期輝度)と、30日間連続して発光させたときの輝度(30日後輝度)とをそれぞれ測定した。
【0159】
そして、30日後輝度の、初期輝度に対する百分率([30日後輝度/初期輝度]×100)を算出した。
【0160】
なお、比較例1については、接着剤層が蛍光体セラミックプレートから剥離したため、30日後輝度を測定できず、上記した百分率を算出できなかった。
【0161】
【表2】