特許第5960016号(P5960016)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5960016
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】コンクリート基礎施工セット
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/01 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
   E02D27/01 102
   E02D27/01 C
   E02D27/01 101C
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-219597(P2012-219597)
(22)【出願日】2012年10月1日
(65)【公開番号】特開2014-70465(P2014-70465A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年8月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】500180606
【氏名又は名称】日本住宅株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(72)【発明者】
【氏名】滝村 照男
【審査官】 富山 博喜
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−291544(JP,A)
【文献】 特開平09−217486(JP,A)
【文献】 実開平03−125843(JP,U)
【文献】 特開2001−131989(JP,A)
【文献】 特開平08−004290(JP,A)
【文献】 特開平02−038626(JP,A)
【文献】 特開平08−105064(JP,A)
【文献】 特開平08−269981(JP,A)
【文献】 特開2000−220292(JP,A)
【文献】 特開平03−199527(JP,A)
【文献】 実開平03−128738(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレキャストコンクリート基礎ブロックと、施工現場でコンクリートを打設する際に前記プレキャストコンクリート基礎ブロックを外側から挟むように設置される一対の型枠と、を備えるコンクリート基礎施工セットであって、
前記プレキャストコンクリート基礎ブロックは、
水平方向に延びる底板状のベース部と、前記ベース部の中央部から垂直方向に立ち上がる縦板状の立ち上がり部と、を備え、
前記型枠は、
前記ベース部の側面に沿うように形成される第1平面部と、前記ベース部の上面に沿うように前記第1平面部から屈曲して形成される第2平面部と、前記立ち上がり部の側面に沿うように前記第2平面部から屈曲して形成される第3平面部と、を備え、
前記施工現場では、2つの前記プレキャストコンクリート基礎ブロックの間にコンクリートを打設するときに、前記プレキャストコンクリート基礎ブロックを外側から挟むように前記一対の型枠が設置され、前記一対の型枠によって前記2つのプレキャストコンクリート基礎ブロックの間にコンクリート打設用の空間が形成され、
前記第2平面部の面積あたりの前記型枠の重量は、0.042kg/cm2以上であり、かつ、前記型枠の重量は、43kg以下であることを特徴とするコンクリート基礎施工セット。
【請求項2】
前記第2平面部の面積あたりの前記型枠の重量は、0.042kg/cm2であり、かつ、前記型枠の重量は、38kgである、請求項1に記載のコンクリート基礎施工セット。
【請求項3】
前記第2平面部の面積あたりの前記型枠の重量は、0.047kg/cm2であり、かつ、前記型枠の重量は、43kgである、請求項1に記載のコンクリート基礎施工セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャストコンクリート基礎ブロックと、施工現場でコンクリートを打設する際にプレキャストコンクリート基礎ブロックを外側から挟むように設置される一対の型枠とで構成されるコンクリート基礎施工セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の基礎の施工方法の一つとして、施工現場でコンクリートを打設して基礎を構築する方法が知られている。ところが、このような施工方法では、施工現場で大量のコンクリートが必要になり、工期も長くなるという問題があった。そのため、大規模な被災地で多数の建物を建て直す場合など、大量のコンクリートを確保しなければならず、かつ、人道上の観点からも短工期が要請されるような状況に、従来の施工方法では対応するのが困難であった。
【0003】
そこで、近年では、予め工場などでプレキャストコンクリート基礎ブロックを生産し、それを施工現場へ運搬して、基礎を構築する方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。この方法では、所定の間隔を置いて配置されたプレキャストコンクリート基礎ブロックを鉄筋で組み上げ、その両側に一対の型枠を装着した後、その一対の型枠の間に形成される空間にコンクリートを打設し、プレキャストコンクリート基礎ブロックと現場で打設したコンクリートを一体化させて基礎を構築する。この方法によれば、プレキャストコンクリート基礎ブロックを用いる分だけ、施工現場で必要とされるコンクリートの量が少なくて済み、工期も短縮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−64047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、プレキャストコンクリート基礎ブロックを用いる上記従来の施工方法においても、施工性を簡便にする余地は残されており、誰でも簡単に施工できるように施工性を更に向上させることが望まれている。
【0006】
例えば、従来、水平方向に延びる底板状のベース部と、ベース部の中央部から垂直方向に立ち上がる縦板状の立ち上がり部を備えるプレキャストコンクリート基礎ブロックが提案されている。ところが、このプレキャストコンクリート基礎ブロックの形状に沿うように屈曲させた型枠を用いると、施工現場でコンクリートを打設する際に、コンクリートから受ける圧力(上向きの圧力)によって、型枠が浮き上がってしまうおそれがある。そこで、単に型枠の重量を増加させることも考えられるが、型枠の重量を単に増加させてしまうと、今度は、施工現場の作業者が型枠を持ち運ぶことが困難になってしまうという問題が生じることになる。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、コンクリート打設時の型枠の浮き上がり防止と、型枠の持ち運び容易性(ポータビリティー)の確保を、同時に実現することのできるコンクリート基礎施工セットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のコンクリート基礎施工セットは、プレキャストコンクリート基礎ブロックと、施工現場でコンクリートを打設する際に前記プレキャストコンクリート基礎ブロックを外側から挟むように設置される一対の型枠と、を備えるコンクリート基礎施工セットであって、前記プレキャストコンクリート基礎ブロックは、水平方向に延びる底板状のベース部と、前記ベース部の中央部から垂直方向に立ち上がる縦板状の立ち上がり部と、を備え、前記型枠は、前記ベース部の側面に沿うように形成される第1平面部と、前記ベース部の上面に沿うように前記第1平面部から屈曲して形成される第2平面部と、前記立ち上がり部の側面に沿うように前記第2平面部から屈曲して形成される第3平面部と、を備え、前記施工現場では、2つの前記プレキャストコンクリート基礎ブロックの間にコンクリートを打設するときに、前記プレキャストコンクリート基礎ブロックを外側から挟むように前記一対の型枠が設置され、前記一対の型枠によって前記2つのプレキャストコンクリート基礎ブロックの間にコンクリート打設用の空間が形成され、前記第2平面部の面積あたりの前記型枠の重量は、0.042kg/cm2以上であり、かつ、前記型枠の重量は、43kg以下である。
【0009】
施工現場では、まず、複数のプレキャストコンクリート基礎ブロックが所定の間隔をあけて設置され、それらのプレキャストコンクリート基礎ブロックの間にコンクリートを打設するときには、プレキャストコンクリート基礎ブロックを外側から挟むように一対の型枠が設置される。そうすると、一対の型枠によって2つのプレキャストコンクリート基礎ブロックの間にコンクリート打設用の空間が形成され、その空間にコンクリートが打設される。この場合、第2平面部の面積あたりの型枠の重量は、0.042kg/cm2以上であるため、打設されるコンクリートから受ける圧力(上向きの圧力)によって型枠が浮き上がるのを、型枠の自重により防止することができる。その一方、型枠ひとつの重量は、43kg以下であるため、施工現場の作業者が型枠を容易に持ち運ぶことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コンクリート打設時の型枠の浮き上がり防止と、型枠の持ち運び容易性(ポータビリティー)の確保を、同時に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態におけるコンクリート基礎施工セットの構成の説明図
図2】本発明の実施の形態におけるプレキャストコンクリート基礎ブロックの構成の説明図
図3】本発明の実施の形態における型枠の構成の説明図
図4】本発明の実施の形態における基礎の施工方法の説明図
図5】本発明の実施の形態における基礎の施工方法の説明図
図6】本発明の実施の形態における基礎の施工方法の説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態のコンクリート基礎施工セットについて、図面を用いて説明する。本実施の形態では、建物の布基礎の施工等に用いられるコンクリート基礎施工セットの場合を例示する。
【0013】
本発明の実施の形態のコンクリート基礎施工セットの構成を、図1図3を参照して説明する。図1は、コンクリート基礎施工セットの構成を示す説明図である。図2は、プレキャストコンクリート基礎ブロックの構成を示す説明図であり、図3は、型枠の構成を示す説明図である。
【0014】
図1に示すように、コンクリート基礎施工セット1は、プレキャストコンクリート基礎ブロック2と、一対の型枠3を備えている。一対の型枠3は、施工現場でコンクリートを打設する際に、プレキャストコンクリート基礎ブロック2を外側から挟むように設置される(図5参照)。なお、図1では、説明の便宜上、I字型のプレキャストコンクリート基礎ブロック2が1つだけ図示されているが、プレキャストコンクリート基礎ブロック2の形状(L字型、T字型、十字型など)や個数は、施工する基礎の形状や大きさに応じて適宜変更してよいことは言うまでもない。
【0015】
図2に示すように、プレキャストコンクリート基礎ブロック2は、水平方向に延びる底板状のベース部4と、ベース部4の中央部から垂直方向に立ち上がる縦板状の立ち上がり部5と、を備えている。プレキャストコンクリート基礎ブロック2の両側の端面には、凹凸形状のシアコッター6が設けられている。このシアコッター6(凹凸形状)を設けることにより、プレキャストコンクリート基礎ブロック2と、現場打ちのコンクリートとの一体化強度が向上する。また、プレキャストコンクリート基礎ブロック2の内部には、複数本(例えば6本)の鉄筋7が埋設されており、それらの鉄筋7は、シアコッター6が設けられている部分から外部に突出している(図1など参照)。
【0016】
図3に示すように、型枠3は、プレキャストコンクリート基礎ブロック2のベース部4の側面(図2における左右の側面)に沿うように形成される第1平面部8と、ベース部4の上面(図2における上面)に沿うように第1平面部8から屈曲して形成される第2平面部9と、プレキャストコンクリート基礎ブロック2の立ち上がり部5の側面(図2における左右の側面)に沿うように第2平面部9から屈曲して形成される第3平面部10を備えている。一対の型枠3は、施工現場でコンクリートを打設する際に、プレキャストコンクリート基礎ブロック2を外側から挟むように設置された状態で、固定部材11によって固定(型締め)される(図3参照)。固定部材11としては、例えば、固定用ボルトなどが利用できる。図1に示すように、型枠3の第3平面部10には、固定部材11を挿通するための穴が設けられている。また、型枠3の第2平面部9には、コンクリートを打設するときに空気を逃がすための空気穴が設けられている。
【0017】
型枠3は、金属製(例えば、鋼製)であり、一対の型枠3の各々(ひとつの型枠3)の重量は、好ましくは、43kg以下、より好ましくは、38kg以下である。また、第2平面部9の面積あたりの型枠3の重量は、好ましくは、0.042kg/cm2以上、より好ましくは、0.047kg/cm2以上である。この場合、型枠3の第2平面部9の面積(打設されるコンクリートから上向きの圧力を受ける部分の面積)は、900cm2である。一つの例として、型枠3の重量は、43kgであり、第2平面部9の面積あたりの型枠3の重量は、0.047kg/cm2である。また、他の例として、型枠3の重量は、38kgであり、第2平面部9の面積あたりの型枠3の重量は、0.042kg/cm2である。
【0018】
以上のように構成されたコンクリート基礎施工セット1について、図4図6を参照してその動作を説明する。
【0019】
図4に示すように、施工現場では、まず、複数のプレキャストコンクリート基礎ブロック2が所定の間隔をあけて設置され、プレキャストコンクリート基礎ブロック2からそれぞれ突出している鉄筋7が互いに結束される。なお、図4の例では、説明の便宜上、2つのプレキャストコンクリート基礎ブロック2が図示されているが、プレキャストコンクリート基礎ブロック2の個数がこれに限定されないことは勿論である。
【0020】
つぎに、図5に示すように、プレキャストコンクリート基礎ブロック2を外側から挟むように一対の型枠3を設置する。この一対の型枠3によって2つのプレキャストコンクリート基礎ブロック2の間にコンクリート打設用の空間(図3において斜線で図示)が形成される。そして、一つの型枠3を固定部材11で固定(型締め)した後、2つのプレキャストコンクリート基礎ブロック2の間かつ一対の型枠3の間に形成された空間(コンクリート打設用の空間)に、コンクリートを打設する。
【0021】
打設したコンクリートが十分に硬化した後、固定部材11を取り外し、一対の型枠3を取り外すと、図6に示すように、プレキャストコンクリート基礎ブロック2と現場打ちのコンクリート(図6において斜線で図示)が一体化した基礎が構築される。
【0022】
このような本発明の実施の形態のコンクリート基礎施工セット1によれば、コンクリート打設時の型枠3の浮き上がり防止と、型枠3の持ち運び容易性(ポータビリティー)の確保を、同時に実現することができる。
【0023】
すなわち、本実施の形態では、施工現場で、まず、複数のプレキャストコンクリート基礎ブロック2が所定の間隔をあけて設置され、それらのプレキャストコンクリート基礎ブロック2の間にコンクリートを打設するときには、プレキャストコンクリート基礎ブロック2を外側から挟むように一対の型枠3が設置される。そうすると、一対の型枠3によって2つのプレキャストコンクリート基礎ブロック2の間にコンクリート打設用の空間が形成され、その空間にコンクリートが打設される。この場合、第2平面部9の面積あたりの型枠3の重量は、43kg/cm2以上であるため、打設されるコンクリートから受ける圧力(上向きの圧力)によって型枠3が浮き上がるのを、型枠3の自重により防止することができる。その一方、型枠3ひとつの重量は、0.042kg以下であるため、施工現場の作業者が型枠3を容易に持ち運ぶことができる。
【0024】
以上、本発明の実施の形態を例示により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
以上のように、本発明にかかるコンクリート基礎施工セットは、コンクリート打設時の型枠の浮き上がり防止と、型枠の持ち運び容易性(ポータビリティー)の確保を、同時に実現できるという効果を有し、例えば、大規模な被災地で多数の建物を建て直すときの建物の布基礎の施工等に用いられ、有用である。
【符号の説明】
【0026】
1 コンクリート基礎施工セット
2 プレキャストコンクリート基礎ブロック
3 型枠
4 ベース部
5 立ち上がり部
6 シアコッター
7 鉄筋
8 第1平面部
9 第2平面部
10 第3平面部
11 固定部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6