(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
二次電池の電流値または電圧値の少なくとも一方である測定値の変化率の大きさが所定の変化率以下となっている第1時刻、および、前記測定値の変化率の大きさが所定の変化率以下となっており、かつ前記第1時刻との間における前記測定値の変化量の大きさが所定の変化量以上となっている第2時刻を検出する時刻検出部と、
前記第1時刻における前記二次電池の電流値および電圧値と前記第2時刻における前記二次電池の電流値および電圧値とに基づいて、当該二次電池の内部抵抗値を算出する抵抗値算出部と、
前記二次電池の内部抵抗値に基づいて、当該二次電池の劣化状況を判定する電池劣化状況判定部と、
を具備し、
前記時刻検出部は、前記測定値の変化率の大きさが所定の変化率以下となっている時刻を前記第2時刻の候補として検出し、当該第2時刻の候補よりも過去の時刻であって、前記測定値の変化率の大きさが所定の変化率以下となっており、かつ、前記第2時刻の候補との間における前記測定値の変化量の大きさが所定の変化量以上となっている時刻を前記第1時刻として検出することで、前記第1時刻および前記第2時刻を検出し、
前記時刻検出部は、前記二次電池の電流値の変化率の大きさが所定の変化率以下となっており、かつ、前記二次電池の電圧値の変化率の大きさが所定の変化率以下となっている時刻を前記第1時刻として検出し、前記二次電池の電流値の変化率の大きさが所定の変化率以下となっており、かつ、前記二次電池の電圧値の変化率の大きさが所定の変化率以下となっており、さらに、前記第1時刻との間における前記二次電池の電流値の変化量の大きさが所定の変化量以上となっている時刻を前記第2時刻として検出し、前記第1時刻と前記第2時刻との組み合わせを所定時間以上検出しない場合は、前記二次電池の電流値の変化率の大きさが所定の変化率以下となっている時刻を前記第1時刻として検出し、前記二次電池の電流値の変化率の大きさが所定の変化率以下となっており、かつ、前記第1時刻との間における前記二次電池の電流値の変化量の大きさが所定の変化量以上となっている時刻を前記第2時刻として検出する
ことを特徴とする電池劣化判定装置。
二次電池の電流値または電圧値の少なくとも一方である測定値の変化率の大きさが所定の変化率以下となっている第1時刻、および、前記測定値の変化率の大きさが所定の変化率以下となっており、かつ前記第1時刻との間における前記測定値の変化量の大きさが所定の変化量以上となっている第2時刻を検出する時刻検出部と、
前記第1時刻における前記二次電池の電流値および電圧値と前記第2時刻における前記二次電池の電流値および電圧値とに基づいて、当該二次電池の内部抵抗値を算出する抵抗値算出部と、
を具備し、
前記時刻検出部は、前記測定値の変化率の大きさが所定の変化率以下となっている時刻を前記第2時刻の候補として検出し、当該第2時刻の候補よりも過去の時刻であって、前記測定値の変化率の大きさが所定の変化率以下となっており、かつ、前記第2時刻の候補との間における前記測定値の変化量の大きさが所定の変化量以上となっている時刻を前記第1時刻として検出することで、前記第1時刻および前記第2時刻を検出し、
前記時刻検出部は、前記二次電池の電流値の変化率の大きさが所定の変化率以下となっており、かつ、前記二次電池の電圧値の変化率の大きさが所定の変化率以下となっている時刻を前記第1時刻として検出し、前記二次電池の電流値の変化率の大きさが所定の変化率以下となっており、かつ、前記二次電池の電圧値の変化率の大きさが所定の変化率以下となっており、さらに、前記第1時刻との間における前記二次電池の電流値の変化量の大きさが所定の変化量以上となっている時刻を前記第2時刻として検出し、前記第1時刻と前記第2時刻との組み合わせを所定時間以上検出しない場合は、前記二次電池の電流値の変化率の大きさが所定の変化率以下となっている時刻を前記第1時刻として検出し、前記二次電池の電流値の変化率の大きさが所定の変化率以下となっており、かつ、前記第1時刻との間における前記二次電池の電流値の変化量の大きさが所定の変化量以上となっている時刻を前記第2時刻として検出する
ことを特徴とする抵抗値算出装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態における電源システムの機能構成を示す概略ブロック図である。同図において、電源システム1は、二次電池システム100と、電池劣化判定装置200と、表示装置300とを具備する。二次電池システム100は、電池セル110と、BMU(Battery Management Unit)120とを具備する。電池セル110は、二次電池111と、CMU(Cell Management Unit)112とを具備する。電池劣化判定装置200は、記憶部210と、測定値取得部220と、時刻検出部230と、抵抗値算出部240と、電池劣化状況判定部250とを具備する。
【0016】
二次電池システム100は、経路W11を介して電力負荷900に接続され、当該電力負荷900へ電力を供給する。ここで、様々な用途の二次電池システム100に本発明を適用可能である。例えば、二次電池システム100は、風力または太陽光などの自然エネルギーを利用した発電設備と組み合わせて用いられる系統連系円滑化蓄電システムや、家庭用の電力貯蔵システムなど、定置用のシステム内に備えられていてもよい。あるいは、二次電池システム100は、自動車や電車などの移動体に備えられていてもよい。
【0017】
電池セル110は、二次電池システム100において電池を交換する際の単位(すなわち、電池セル110毎に交換可能)であり、二次電池システム100は、1つ以上の電池セル110を具備する。
ここで、二次電池システム100における電池セル110の構成は任意のものでよい。例えば、複数の電池セル110が直列に接続されていてもよいし、並列に接続されていてもよいし、あるいは、並列に接続された複数の電池セル110が直列に接続されていてもよい。
【0018】
二次電池111は、充放電可能な電池である。二次電池111は、充放電を繰り返して劣化すると内部抵抗が大きくなる電池であればよく、例えば、リチウムイオン電池であってもよいし、鉛電池であってもよい。
CMU112は、セル単位で二次電池111の充放電制御や監視を行う。特に、CMU112は、二次電池111の電流値と電圧値と温度とを検出し、BMU120を介して電池劣化判定装置200へ通知する。具体的には、電池セル110は、二次電池111に設けられた電流センサ、電圧センサおよび温度センサから、それぞれ電流値、電圧値および温度をセンサの測定値として所定のサンプリング周期毎に取得し、BMU120へ出力する。
【0019】
BMU120は、二次電池システム100の上位の制御装置と通信して、二次電池システム100全体の制御や監視を行う。また、BMU120は、CMU112が検出した電池セル110毎の二次電池111の電流値と電圧値と温度とを電池劣化判定装置200へ送信する。
【0020】
電池劣化判定装置200は、二次電池111の内部抵抗を算出して、当該二次電池111が劣化しているか否かを判定する。電池劣化判定装置200はコンピュータにて構成されていてもよいし、あるいは、専用のハードウェアにて実現されていてもよい。
記憶部210は、測定値取得部220の制御に従って各種データを記憶する。
測定値取得部220は、記憶部210に対して各種データの書込や読出を行う。特に、測定値取得部220は、BMU120の送信する、電池セル110毎の二次電池111の電流値と電圧値と温度とを記憶部210に記憶させ、また、時刻検出部230や抵抗値算出部240の処理に応じて記憶部210からデータを読み出して出力する。
【0021】
時刻検出部230は、CMU112の検出した二次電池111の電流値に基づいて、電池セル110毎に第1時刻と第2時刻とを検出する。ここでいう第1時刻とは、二次電池111の電流値または電圧値の少なくとも一方である測定値の変化率の大きさが所定の変化率以下となっている時刻である。なお、以下では、測定値として電流値を用いる場合を例に説明する。また、ここでいう第2時刻とは、測定値の変化率の大きさが所定の変化率以下となっており、かつ第1時刻との間における測定値の変化量の大きさが所定の変化量以上となっている時刻である。
【0022】
図2は、時刻検出部230が検出する第1時刻および第2時刻の例を示す説明図である。同図において、線L11は二次電池111の電流値を示し、線L12は当該電流値の変化率(以下、電流値の変化率を「電流変化率」と称する)を示す。具体的には、線L11の各点は、CMU112がサンプリング周期dts毎に検出した二次電池111の電流値を示しており、各点を結んで線L11を得られる。また、線L12の各点は、サンプリング周期毎の二次電池111の電流値から前回のサンプリング時における電流値を減算した差分を示しており、各点を結んで線L12を得られる。
【0023】
ここで、時刻T12から前の時間、および、時刻T14から後の時間において電流値がほぼ一定の静定状態にあり、時刻T12から時刻T14までの時間において電流値が変化している過渡状態にあることを、線L12が示している。
二次電池111において電流値が変化するタイミングと電圧値が変化するタイミングとは必ずしも一致しておらず、特に過渡状態において両者のタイミングのずれが大きくなりがちである。このタイミングのずれにより、電流値と電圧値との比が測定タイミングによって異なる。
【0024】
電流値と電圧値との比の違いにより、これら電流値および電圧値に基づいて算出する抵抗値にばらつきが生じ、当該抵抗値に基づく二次電池111の劣化状況判定の精度が低下してしまう。かかる判定精度の低下を避けるため、静定状態において測定した電流値および電圧値に基づいて二次電池111の劣化状況を判定することが好ましい。
また、二次電池111の劣化状況を精度よく判定するために、電流値に有意な差がある2つの時刻において電流値および電圧値を測定することが好ましい。
【0025】
そこで、時刻検出部230は、電流値が静定状態にある時刻T12から前の時刻と、当該時刻から電流値が有意な変化を示した後、再び静定状態となっている時刻T14から後の時刻を検出する。なお、以下では電流値変化前の静定状態におけるサンプリング時刻を「前時刻」と称し、電流値変化後の静定状態におけるサンプリング時刻を「後時刻」と称する。
【0026】
具体的には、時刻検出部230は、記憶部210が二次電池111の電流値および電圧値を記憶しているサンプリング時刻の中から、以下の手順にて、前時刻として時刻T12を検出し、後時刻として時刻T15を検出する。
なお、前時刻と後時刻との組み合わせは、本発明における第1時刻と第2時刻との組み合わせの一例に該当する。
図2の例では、時刻T12が第1時刻の一例に該当し、時刻T15が第2時刻の一例に該当する。
【0027】
なお、以下では、サンプリング時刻tにおける二次電池111の電流値をI(t)と表記し、サンプリング時刻tにおける二次電池111の電流値の変化率をdI(t)と表記する。線L12に示すように、ここでは、dI(t)=I(t)−I(t−dts)として算出する。なお、
図2に示すように時間dtsはサンプリング周期を示す。
【0028】
1.サンプリング時刻のうちの、ある時刻を後時刻の候補として設定し、当該時刻における電流変化率を算出する。以下では、設定した候補をT15’と表記する。時刻T15’における電流変化率はdI(T15’)と表記される。
2.|dI(T15’)|≦dI_const ・・・(1)
を満たすか否かを判定する。ここで、dI_constは、電流値が静定状態にあるか否かの判定閾値として予め設定されている正定数である。また、||は絶対値を示す。
【0029】
3.式(1)を満たす場合、時刻T15’から時間dt1前の電流変化率dI(T15’−dt1)を算出する。ここで、時間dt1は、電流立ち上がりの想定時間である。電力負荷900における付加変動が定型的であり電流立ち上がり時間が一定の場合は、時間dt1を定数として予め設定しておくことができる。あるいは、時刻検出部230が時刻T15’の1サンプリング前から20サンプリング前までの範囲で時間dt1を設定するなど、複数の時間dt1について以下の処理を行うようにしてもよい。
【0030】
4.|dI(T15’−dt1)|≧dI_raise ・・・(2)
を満たすか否かを判定する。ここで、dI_raiseは、電流が過渡状態にあるか否かの判定閾値として予め設定されている正定数である。
5.式(2)を満たす場合、時刻T15’−dt1から1サンプリング前の時刻T15’−dt1−dtsから前へ時間dt0の間の全てのサンプリング時刻において電流値が静定状態にあるか否かを判定する。具体的には、
T15’−dt1−dt0≦t≦T15’−dt1−dts ・・・(3)
を満たす全てのサンプリング時刻tが、
|dI(t)|≦dI_const ・・・(4)
を満たすか否かを判定する。ここで、時間dt1は、電流立ち上がり前の静定時間として予め設定されている正定数である。
【0031】
6.式(4)を満たす場合、時刻T15’−dt1−dtsから時刻T15’までの間の電流立ち上がり量が有意な変化量か否かを判定する。具体的には、
I(T15’)−I(T15’−dt1−dts)≧dI_diff ・・・(5)
を満たすか否かを判定する。ここで、dI_diffは、二次電池111の電流値を精度よく判定するための有意な電流値変化量の閾値としてとして予め設定されている正定数である。
7.式(5)を満たす場合、時刻T15’−dt1−dtsを前時刻として検出し、時刻T15’を後時刻として検出する。例えば、
図2に示す例において、時刻検出部230は、前時刻として時刻T12を検出し、後時刻として時刻T15を検出する。
【0032】
なお、上記の手順のうちステップ4は、電流立ち上がり直前のサンプリング時刻を前時刻として検出するためのステップであり、必須のステップではない。
また、電流立ち上がり前、立ち上がり後の何れについても、静定状態か否かを判定するためのサンプリング数は1以上であればよい。従って、ステップ5において、1つのサンプリング時刻についてのみ電流変化率がdI_const以下か否かを判定するようにしてもよい。また、ステップ2において、複数のサンプリング時刻について電流変化率がdI_const以下か否かを判定するようにしてもよい。
【0033】
図1に戻って、抵抗値算出部240は、第1時刻における二次電池111の電流値および電圧値と第2時刻における二次電池111の電流値および電圧値とに基づいて、二次電池111の内部抵抗値を算出する。例えば、
図2に示す例において、抵抗値算出部240は、前時刻である時刻T12における電流値および電圧値と、後時刻である時刻T15における電流値および電圧値との差に基づいて二次電池111の内部抵抗値を算出し、二次電池111の温度に基づいて内部抵抗値の温度補正を行う。
なお、二次電池システム100が空調設備の動作している屋内に設置されている場合など、二次電池111の温度変化の影響を無視できる場合、抵抗値算出部240が温度補正を行わないようにしてもよい。
【0034】
電池劣化状況判定部250は、抵抗値算出部240が取得した温度補正後の二次電池111の内部抵抗値に基づいて、二次電池111の劣化状況を判定する。例えば、電池劣化状況判定部250は、温度補正後の二次電池111の内部抵抗値と所定の閾値とを比較し、内部抵抗値が閾値以上の場合に電池セル110の交換が必要(二次電池111の劣化の程度が大きい)と判定する。一方、内部抵抗値が閾値未満の場合、電池劣化状況判定部250は、電池セル110の交換は不要(二次電池111の劣化の程度が小さい)と判定する。
【0035】
表示装置300は、例えば液晶パネルまたは有機EL(Organic Electroluminescence)パネル等の表示画面を有し、電池劣化状況判定部250の判定結果を表示する。
ただし、表示装置300は、電池劣化状況判定部250の判定結果を通知可能なものであればよい。例えば、表示装置300が、発光ダイオード等のランプを有し、当該ランプを点灯させることで、二次電池111の交換が必要なことを表示するようにしてもよい。あるいは、表示装置300が視覚的な表示に加えて、あるいは視覚的な表示に代えて、音声メッセージまたはブザー音等の音を出力することで、二次電池111の交換が必要なことを表示するようにしてもよい。
【0036】
次に、
図3を参照して電池劣化判定装置200の動作について説明する。
図3は、電池劣化判定装置200が電池セル110の交換の要否を判定する処理手順を示すフローチャートである。電池劣化判定装置200は、例えば一日毎または一月毎など定期的に、あるいは、電池劣化判定装置200のユーザ(例えば電源システム1の管理者)の要求に応じて、電池セル110の各々について
図3の処理を行う。なお、電池劣化判定装置200が、二次電池111の電流値や電圧値や温度のサンプリング周期毎に、いわばリアルタイムで
図3の処理を行うようにしてもよい。
【0037】
図3の処理において、まず、時刻検出部230が後時刻の候補を初期設定する(ステップS101)。例えば、時刻検出部230は、記憶部210が二次電池111の電流値等を記憶しているサンプリング時刻の何れかを後時刻の候補として設定する。なお、電池劣化判定装置200が、二次電池111の電流値や電圧値や温度のサンプリング周期毎に
図3の処理を行う場合、時刻検出部230は、最新のサンプリング時刻を後時刻の候補として設定する。
【0038】
次に、時刻検出部230は、立ち上がり前の静定状態の判定対象となるサンプリング時刻におけるデータを記憶部210が記憶しているか否かを判定する(ステップS102)。例えば、
図2に示す例において、時刻検出部230は、時刻T11〜時刻T12の各サンプリング時刻におけるデータを記憶部210が記憶しているか否かを判定する。
【0039】
該当するデータを記憶部210が記憶していると判定した場合(ステップS102:YES)、時刻検出部230は、後時刻の候補における電流変化率を算出する(ステップS111)。
図2を参照して上述した処理(以下、「上記処理」と称する)のステップ1は、
図3のステップS101およびS111の一例に該当する。
【0040】
次に、時刻検出部230は、ステップS111で算出した電流変化率に基づいて、後時刻の候補において二次電池111の電流値が静定状態にあるか否かを判定する(ステップS112)。上記処理のステップ2は、
図3のステップS112の一例に該当する。
静定状態にあると判定した場合(ステップS112:YES)、時刻検出部230は、電流値立ち上がり開始の想定時刻における電流変化率を算出する(ステップS121)。上記処理のステップ3は、
図3のステップS121の一例に該当する。
【0041】
次に、時刻検出部230は、ステップS121で算出した電流変化率に基づいて、電流値立ち上がり開始の想定時刻において実際に電流が立ち上がっているか否かを判定する(ステップS122)。上記処理のステップ4は、
図3のステップS122の一例に該当する。
電流が立ち上がっていると判定した場合(ステップS122:YES)、時刻検出部230は、立ち上がり前の静定状態の判定対象となるサンプリング時刻の各々について、電流変化率を算出する(ステップS131)。
【0042】
そして、時刻検出部230は、ステップS131にて算出した電流変化率に基づいて、立ち上がり前の静定状態の判定対象となるサンプリング時刻の全てにおいて、二次電池111の電流値が静定状態にあるか否かを判定する(ステップS132)。上記処理のステップ5は、
図3のステップS131〜S132の一例に該当する。
静定状態にあると判定した場合(ステップS132:YES)、時刻検出部230は、電流の立ち上がりによる電流変化量として、前時刻の候補における電流値から、後時刻の候補における電流値を減算した変化量を算出する(ステップS141)。
【0043】
次に、時刻検出部230は、ステップS141で算出した変化量が、二次電池111の電流値を精度よく判定するための有意な電流値変化量か否かを判定する(ステップS142)。上記処理のステップ6は、
図3のステップS142の一例に該当する。
有意な電流値変化量であると判定した場合(ステップS142:YES)、時刻検出部230は、前時刻の候補を前時刻として設定し、後時刻の候補を後時刻として設定して、当該前時刻および後時刻を抵抗値算出部240へ出力する(ステップS151)。上記処理のステップ7は、
図3のステップS151の一例に該当する。
【0044】
次に、抵抗値算出部240は、時刻検出部230が設定した前時刻および後時刻に基づいて、二次電池111の内部抵抗値を算出する(ステップS152)。そして、抵抗値算出部240は、二次電池111の温度に基づいて内部抵抗値を補正し、補正後の内部抵抗値を電池劣化状況判定部250へ出力する(ステップS153)。
そして、電池劣化状況判定部250は、補正後の内部抵抗値に基づいて、二次電池111の劣化状況を判定し、判定結果を表示装置300へ出力する(ステップS154)。
その後、
図3の処理を終了する。
【0045】
一方、ステップS102において、該当するデータを記憶部210が記憶していないと判定した場合(ステップS102:NO)、時刻検出部230は、後時刻の候補を変更する(ステップS161)。例えば、時刻検出部230は、記憶部210がデータを記憶しているサンプリング時刻のうち、後時刻の候補として未だ設定していないサンプリング時刻を、後時刻の候補として設定する。
ステップS161の後、ステップS102へ戻る。
【0046】
なお、後時刻の候補として未だ設定していないサンプリング時刻が無い場合や、電池劣化判定装置200が、二次電池111の電流値や電圧値や温度のサンプリング周期毎に
図3の処理を行う場合、電池劣化判定装置200は
図3の処理を終了する。この場合、電池劣化判定装置200は、二次電池111の劣化状況の判定に失敗し、例えば記憶部210が新たなデータを記憶するのを待って
図3の処理を再度行う。
【0047】
また、ステップS112において、二次電池111の電流値が静定状態にないと判定した場合(ステップS112:NO)も、ステップS161へ進む。
また、ステップS122において、電流値立ち上がり開始の想定時刻において電流が立ち上がっていないと判定した場合(ステップS122:NO)も、ステップS161へ進む。
また、ステップS132において、二次電池111の電流値が静定状態にないと判定した場合(ステップS132:NO)も、ステップS161へ進む。
また、ステップS142において、ステップS141で算出した変化量が有意な電流値変化量でないと判定した場合(ステップS142:NO)も、ステップS161へ進む。
【0048】
以上のように、時刻検出部230が、二次電池111の電流値が静定状態にある第1時刻、および、二次電池111の電流値が静定状態にあり、かつ第1時刻との間における電流値の変化量の大きさが所定の変化量以上となっている第2時刻を検出する。
これにより、抵抗値算出部240は、電流値が静定状態にあり、かつ、電流値に有意な差がある2つの時刻における電流値と電圧値とに基づいて、二次電池111の内部抵抗値をより高精度に算出でき、電池劣化状況判定部250は、当該内部抵抗値を用いて、二次電池111の劣化状態をより高精度に判定することができる。
【0049】
なお、以上では、時刻検出部230が、電流立ち上がり後の静定状態を検出してから電流立ち上がり前の静定状態を検出する場合について説明したが、逆に、電流立ち上がり前の静定状態を検出してから電流立ち上がり後の静定状態を検出するようにしてもよい。
また、以上では、時刻検出部230が、電流立ち上がり前後の静定状態におけるサンプリング時刻を検出する場合について説明したが、時刻検出部230が、電流立ち下がり前後の静定状態におけるサンプリング時刻を検出するようにしてもよい。
また、二次電池111の劣化時に二次電池システム100全体を交換する場合、電池劣化判定装置200が二次電池システム100全体について二次電池111の内部抵抗値を求めて劣化状況を判定するようにしてもよい。
【0050】
また、電池劣化判定装置200が、二次電池111の内部抵抗値を複数回算出して平均を求め、得られた内部抵抗値の平均値に基づいて、二次電池111の劣化状況を判定するようにしてもよい。
この場合、時刻検出部230は、第1時刻と第2時刻との組み合わせを複数検出する。そして、抵抗値算出部240は、時刻検出部230が検出した第1時刻と第2時刻との組み合わせ毎に二次電池111の内部抵抗値を算出して、得られた内部抵抗値の平均値を求める。そして、電池劣化状況判定部250は、抵抗値算出部240が求めた内部抵抗値の平均値に基づいて、二次電池111の劣化状況を判定する。
これにより、電池劣化判定装置200は、センサの一時的な測定誤差や外部ノイズの影響を低減させて内部抵抗値をより高精度に求め、二次電池111の劣化状況をより高精度に判定することができる。
【0051】
また、以上では、時刻検出部230が、二次電池111の電流値の静定状態におけるサンプリング時刻を検出する場合について説明したが、時刻検出部230が、二次電池111の電流値の静定状態に加えて、あるいは代えて、二次電池111の電圧値の静定状態におけるサンプリング時刻を検出するようにしてもよい。
【0052】
ここで、
図4は、二次電池111の電流値の変化および電圧値の変化の例を示す説明図である。同図において、線L21は二次電池111の電流値の変化を示し、線L22は二次電池111の電圧値の変化を示している。
図4に示す例において、時刻T21からT22までの時間では、二次電池111の電流値は静定状態にある。一方、二次電池111の電圧値は、時刻T21以後も変化し続けており、静定状態となっていない。このように、電流値が変化するタイミングと電圧値が変化するタイミングが一致しない場合がある。
【0053】
この場合、電流値が静定状態にあっても、サンプリング時刻によって電圧値が異なり、電池劣化判定装置200(抵抗値算出部240)が算出する抵抗値にばらつきが生じ、当該抵抗値に基づく二次電池111の劣化状況判定の精度が低下してしまう。かかる判定精度の低下を避けるため、時刻検出部230が、二次電池111の電流値の静定状態に加えて、あるいは代えて、二次電池111の電圧値の静定状態におけるサンプリング時刻を検出するようにしてもよい。
【0054】
例えば、時刻検出部230は、二次電池111の電流値の変化率の大きさが所定の変化率以下となっており、かつ二次電池111の電圧値の変化率の大きさが所定の変化率以下となっている時刻を1時刻として検出する。また、時刻検出部230は、二次電池111の電流値の変化率の大きさが所定の変化率以下となっており、かつ二次電池111の電圧値の変化率の大きさが所定の変化率以下となっており、さらに、第1時刻との間における二次電池111の電流値の変化量の大きさが所定の変化量以上となっている時刻を第2時刻として検出する。
【0055】
これにより、抵抗値算出部240は、電流値に加えて電圧値が静定状態にあり、かつ、電流値に有意な差がある2つの時刻における電流値と電圧値とに基づいて、二次電池111の内部抵抗値をより高精度に算出でき、電池劣化状況判定部250は、当該内部抵抗値を用いて、二次電池111の劣化状態をより高精度に判定することができる。
【0056】
なお、時刻検出部230が、電圧値の静定状態を検出するか否かを自ら切り替えるようにしてもよい。例えば、時刻検出部230が、二次電池111の電流値と電圧値とが共に静定状態にあるか否かを判定している場合に、所定時間以上、第1時刻および第2時刻の検出に失敗すると、電流値が静定状態にあるか否かの判定に切り替えるようにしてもよい。すなわち、時刻検出部230が、電圧値が静定状態にあるか否かの判定を行わないようにしてもよい。
これにより、時刻検出部230が、第1時刻および第2時刻を検出できるようになることが期待される。
なお、電池劣化判定装置200の各部のうち、記憶部210と、測定値取得部220と、時刻検出部230と、抵抗値算出部240とで、抵抗値算出装置を構成してもよい。
【0057】
なお、上述したように、電池劣化判定装置200としてコンピュータを用いることができる。従って、電池劣化判定装置200の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0058】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。