特許第5960018号(P5960018)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5960018-フロート式スチームトラップ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5960018
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】フロート式スチームトラップ
(51)【国際特許分類】
   F16T 1/22 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
   F16T1/22 E
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-220532(P2012-220532)
(22)【出願日】2012年10月2日
(65)【公開番号】特開2014-74416(P2014-74416A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2015年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】木村 哲身
【審査官】 加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−303631(JP,A)
【文献】 特開2008−151222(JP,A)
【文献】 特開2005−061522(JP,A)
【文献】 特開2014−047907(JP,A)
【文献】 特開2007−138984(JP,A)
【文献】 米国特許第06931882(US,B1)
【文献】 米国特許第02964243(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16T 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁ケーシングで入口と弁室と出口を形成し、弁室の下部に弁座部材を取り付け、弁座部材に弁室を出口側に連通する排出通路を形成し、弁室内に弁座部材に離着座して排出通路を開閉するフロートを配置し、排出通路内に進退可能な操作部材を配置し、操作部材の進退により弁座部材の排出通路内面に付着した異物を掃除するものであって、操作部材に温度応動部材を連結し、温度応動部材の変形により操作部材を低温時に前進させ高温時に後退させるものにおいて、弁座部材と同一軸上にケースを設け、ケース内に温度応動部材を収容し、操作部材の前方側を弁座部材の軸心方向に摺動案内する案内孔をケースの一端側に設け、ケースの軸心方向に進退操作可能な調節部材をケースの他端側にねじ結合し、操作部材の後方側を弁座部材の軸心方向に摺動案内する案内孔を調節部材に設け、温度応動部材の一端側を調節部材に取付け他端側を操作部材に取付け、操作部材と同一軸上に外部から進退操作可能な手動操作部材を設け、手動操作部材を後退させることにより手動操作部材が操作部材から離間し手動操作部材を前進させることにより手動操作部材が操作部材に当接して操作部材を前進させることを特徴とするフロート式スチームトラップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気配管系に発生するドレンをフロートの浮上降下によって自動的に排出するフロート式スチームトラップに関し、特にフロートが離着座する弁座部材の排出通路内面に付着した流体中の異物を掃除できるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のフロート式スチームトラップは、例えば特許文献1に開示されている。これは、弁ケーシングで入口と弁室と出口を形成し、弁室の下部に弁座部材を取り付け、弁座部材に弁室を出口側に連通する排出通路を形成し、弁室内に弁座部材に離着座して排出通路を開閉するフロートを配置し、排出通路内に進退可能な操作部材を配置し、操作部材の進退により弁座部材の排出通路内面に付着した異物を掃除するものにおいて、操作部材に温度応動部材を連結し、温度応動部材の変形により操作部材を低温時に前進させ高温時に後退させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−138984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のフロート式スチームトラップは、操作部材が前進して弁座部材の排出通路内面に付着した異物を掃除するときの掃除温度が温度応動部材の成形により決まってしまうために、掃除温度を調節できないという問題点があった。
【0005】
したがって本発明が解決しようとする課題は、操作部材が前進して弁座部材の排出通路内面に付着した異物を掃除するときの掃除温度を調節できるフロート式スチームトラップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明のフロート式スチームトラップは、弁ケーシングで入口と弁室と出口を形成し、弁室の下部に弁座部材を取り付け、弁座部材に弁室を出口側に連通する排出通路を形成し、弁室内に弁座部材に離着座して排出通路を開閉するフロートを配置し、排出通路内に進退可能な操作部材を配置し、操作部材の進退により弁座部材の排出通路内面に付着した異物を掃除するものであって、操作部材に温度応動部材を連結し、温度応動部材の変形により操作部材を低温時に前進させ高温時に後退させるものにおいて、弁座部材と同一軸上にケースを設け、ケース内に温度応動部材を収容し、操作部材の前方側を弁座部材の軸心方向に摺動案内する案内孔をケースの一端側に設け、ケースの軸心方向に進退操作可能な調節部材をケースの他端側にねじ結合し、操作部材の後方側を弁座部材の軸心方向に摺動案内する案内孔を調節部材に設け、温度応動部材の一端側を調節部材に取付け他端側を操作部材に取付け、操作部材と同一軸上に外部から進退操作可能な手動操作部材を設け、手動操作部材を後退させることにより手動操作部材が操作部材から離間し手動操作部材を前進させることにより手動操作部材が操作部材に当接して操作部材を前進させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、調節部材を外部から操作してケースの軸心方向にねじ進退させることにより、調節部材に一端側が取付けられた温度応動部材がケースの軸心方向に変位し、温度応動部材の他端側に取付けられた操作部材がケースの軸心方向に変位し、操作部材が前進して弁座部材の排出通路内面に付着した異物を掃除するときの掃除温度が変化する。これにより、操作部材が前進して弁座部材の排出通路内面に付着した異物を掃除するときの掃除温度を調節できるという優れた効果を生じる。また、手動操作部材を外部から操作して前進させることにより、手動操作部材が操作部材に当接して操作部材を前進させることにより、手動により弁座部材の排出通路内面に付着した異物を掃除できるという優れた効果を生じる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態に係わるフロート式スチームトラップの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図1を参照して説明する。本体1に蓋2をボルト3で締結して弁ケーシング形成し、内部に弁室4を形成する。本体1は入口5と出口通路6と出口7を有し、入口5は弁室4の上部に連通する。入口5と出口7は同一軸上に形成する。弁室4の下部の蓋2に排出通路8を開けた弁座部材9をねじ結合する。排出通路8は弁室4側端の小径の先端部8aと、先端部8aの下流の下流に向かって径の拡がったテーパー部8bと、テーパー部8bの下流の大径の後端部8cから成る。蓋2は出口通路10を有し、弁室4の下部は排出通路8から出口通路10,6を介して出口7に連通する。弁室4内に弁座部材9の弁室側端面9aに離着座して排出通路8を開閉する中空球形のフロート11を自由状態で配置する。フロート11が排出通路8を閉じた位置で当接するフロート座12をフロート11の下方に、図面の手前側と向う側に2つ設ける。
【0010】
蓋2に弁座部材9と同一軸上にケース13をねじ結合する。ケース13内に温度応動部材としてのバイメタル14を収容し、ケース13を貫通して操作部材15を配置する。バイメタルは熱膨張係数の異なる2種類の金属または合金を強固に一体に接着して板状に仕上げたもので、温度変化に応じて湾曲するものであり、本実施の形態のバイメタル14は、短冊状のバイメタル平板を螺旋状に巻いて作ったつる巻き形をもう一度螺旋状に巻いて2重つる巻き形に形成する。最初のつる巻き形のときに内側が高膨張材料に外側が低膨張材料に成るようにする。このつる巻き形の場合、低温になると半径が小さくなり長さが長くなり、高温になるとこれとは逆に作用する。そして、これを用いて作った2重つる巻き形の場合、低温になると半径が小さくなり長さが長くなり、高温になるとこれとは逆に作用する。操作部材15の前方側を弁座部材9の軸心方向に摺動案内する案内孔13aをケース13の一端側に設ける。ケース13の軸心方向に進退操作可能な調節部材16をケース13の他端側にねじ結合する。操作部材15の後方側を弁座部材9の軸心方向に摺動案内する案内孔16aを調節部材16に設ける。バイメタル14の一端側を調節部材16に溶接により取付け他端側を操作部材15に溶接により取付ける。操作部材15はバイメタル14の変形により先端部15aが低温時に前進により弁室4内に突出し、高温時に後退により排出通路8の先端部8aよりも後方に位置する。操作部材15の先端部15aの外径は排出通路8の先端部8aの内径よりも僅かに小径に形成し、前進により先端部15aで排出通路8の先端部8a内面を掃除する。蓋2に弁座部材9と同一軸上に保護キャップ17をねじ結合する。保護キャップ17に外部から進退操作可能に手動操作部材18をねじ結合する。手動操作部材18は操作部材15と同一軸上で後端部が外部に位置する。保護キャップ17と手動操作部材18の間にパッキング19を配置し、保護キャップ17にパッキング押え20をねじ結合して保護キャップ17と手動操作部材18の間の気密を保つ。手動操作部材18の後端にドライバー等の工具の先端が嵌り回転操作せしめられる切割21を設ける。手動操作部材18の切割21にドライバー等の工具の先端を差し込んで手動操作部材18をねじ込んで前進させることにより手動操作部材18が操作部材15に当接して操作部材15を前進させることにより、操作部材15の先端部15aが弁室4内に突出し、手動操作部材18をねじ戻して後退させることにより、手動操作部材18が操作部材15から離間して操作部材15に関与しなくなる。保護キャップ17を取外し、調節部材16を外部から操作してケース13の軸心方向にねじ込んで前進させれば、操作部材15が前進して先端部15aで弁座部材9の排出通路8の先端部8a内面に付着した異物を掃除するときの掃除温度を高めることができ、逆に調節部材16を後退させれば掃除温度を低めることができる。
【0011】
入口5から流入したドレンは弁室4内に溜り、液面に応じてフロート11が浮上降下して弁座部材9に離着座して排出通路8を開閉する。排出通路8が開けられると弁室4内のドレンが排出通路8、出口通路6,10を通して出口7に排出され、排出通路8が閉じられると弁室4内の気体の漏出が防止される。正常にドレンが排出されていれば、バイメタル14が高温に保たれて操作部材15を後退させている。
【0012】
弁座部材9の排出通路8の先端部8a内面に異物が付着して正常にドレンを排出できなくなると、バイメタル14が低温になり操作部材15を前進させる。これにより、操作部材15の先端部15aで弁座部材9の排出通路8の先端部8a内面を掃除する。手動により弁座部材9の排出通路8の先端部8a内面を掃除するときは手動操作部材18をねじ込んで操作部材15を前進させ、手動掃除が完了すれば手動操作部材18をねじ戻して後退させる。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明は、蒸気配管系に発生するドレンを自動的に排出するフロート式スチームトラップに利用することができる。
【符号の説明】
【0014】
1 本体
2 蓋
4 弁室
5 入口
7 出口
8 排出通路
8a 排出通路の先端部
9 弁座部材
11 フロート
13 ケース
13a 案内孔
14 バイメタル
15 操作部材
15a 操作部材の先端部
16 調節部材
16a 案内孔
17 保護キャップ
18 手動操作部材
図1