特許第5960032号(P5960032)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5960032
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】管外面及び内面検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/24 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
   G01N29/24
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-250525(P2012-250525)
(22)【出願日】2012年11月14日
(65)【公開番号】特開2014-98631(P2014-98631A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2015年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】浦田 幹康
【審査官】 森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−163125(JP,A)
【文献】 実開昭56−142361(JP,U)
【文献】 特開昭62−083608(JP,A)
【文献】 特開平06−123733(JP,A)
【文献】 実開平04−055563(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00−29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路の内部に挿通して、管外面及び内面の欠陥を走査する管外面及び内面検査装置であって、
前記欠陥を定量的に計測する超音波式センサと、
前記超音波式センサが前記管路の内面に当接した際に前記超音波式センサを前記管路の内面に向けて付勢する弾性部材と、
前記弾性部材を介して前記超音波式センサが前記管路の軸線方向に延在するように支持する支持軸と、を備え、
前記超音波式センサは、少なくとも一対の送信探触子及び受信探触子が前記管路の少なくとも周方向及び軸方向の何れかに配列して構成され、
前記超音波式センサの前記支持軸からの距離を調整するためのセンサ配置調整機構が、更に設けられ、
前記センサ配置調整機構は、前記弾性部材としての板ばねを介して前記少なくとも一対の送信探触子及び受信探触子それぞれ支持し、
前記板ばねは、軸方向又は周方向に配列された前記送信探触子及び前記受信探触子の各々から、対をなす前記受信探触子又は前記送信用探触子とは反対方向に向かって延び、
前記超音波式センサが前記管路の内面に当接した際に、前記超音波式センサが前記弾性部材を介して前記欠陥側に変位することを特徴とする管外面及び内面検査装置。
【請求項2】
前記超音波式センサは、一対の送信探触子及び受信探触子を用いてTOFD(Time Of Flight Diffraction)法で前記欠陥の深さを定量的に計測することを特徴とする請求項1に記載の管外面及び内面検査装置。
【請求項3】
前記支持軸を軸周りに回転させる回転機構が更に設けられることを特徴とする請求項に記載の管外面及び内面検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過熱低減器に備わるスプレー管等の非破壊検査を行うための管外面及び内面検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラにおける過熱蒸気の温度は、ボイラ蒸発量の変化によって変わるので、所要の一定温度を保つために調節が必要となる。この過熱蒸気温度の調節を行うために従来から使用されているものとして、蒸気管の途中に過熱低減のための過熱低減器を設けて、この過熱低減器内の過熱蒸気中に、ボイラ給水等をスプレー水として噴霧して蒸気温度を下げるものがある。
【0003】
過熱低減器は、大口径の蒸気配管内にスプレーノズルを備えたスプレー管が蒸気流れに対して垂直に設置された構造となっている。このような構造の過熱低減器において、スプレー管には、スプレー水の接触等によりき裂が発生する。しかし、スプレー管は、配管内に挿入されているため、スプレー管のき裂等を探傷するには、通常、スプレー管が設置された部位近傍の点検口よりファイバースコープを挿入して、目視点検による定性的な評価のみが行われていた。また、ファイバースコープによる目視点検範囲も限られているため、信頼性のある検査が困難であった。管路内部から管路内表面を広範かつ精度高く検査が可能な検査装置として、特許文献1には、タイヤ型探触子を用いて管全周を検査する管内検査装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−181140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された管内検査装置では、タイヤ型探触子により定性的な斜角探傷が行われるので、管内面に発生したき裂等の欠陥を探傷できるのみであり、当該欠陥の定量的な評価が困難であった。また、図4は、過熱低減器に備わるスプレー管に熱疲労き裂が発生し易い箇所をハッチングで示した図であるが、図4に示すように、過熱低減器10に備わるスプレー管12は、過熱蒸気流に直接当たる外面側からも熱疲労き裂14が発生することが多い。このため、検査装置は、管内面のみでなく、管外面も探傷して、定量的に表面欠陥を評価できることが好ましい。さらに、スプレー管12は、図4に示すように、その一部が外部衝撃等に耐えるための耐圧部材となる外筒管16と重複している二重管構造となっているので、特に、外筒管16と重複する箇所となるスプレー管12の外周面12aに発生した熱疲労き裂の検査が困難であった。
【0006】
本発明は、従来の管内検査装置が有する上記課題に鑑みてなされたものであり、管路に内挿しながら、管外面及び内面に発生した表面欠陥を定量的に検査することの可能な、新規かつ改良された管外面及び内面検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、管路の内部に挿通して、管外面及び内面の欠陥を走査する管外面及び内面検査装置であって、前記欠陥を定量的に計測する超音波式センサと、前記超音波式センサが前記管路の内面に当接した際に前記超音波式センサを前記管路の内面に向けて付勢する弾性部材と、前記弾性部材を介して前記超音波式センサが前記管路の軸線方向に延在するように支持する支持軸と、を備え、前記超音波式センサが前記管路の内面に当接した際に、前記超音波式センサが前記弾性部材を介して前記欠陥側に変位することを特徴とする管外面及び内面検査装置に関係する。
【0008】
本発明の一態様によれば、超音波式センサを備えた検査装置を管路に内挿して検査する際に、超音波式センサが管路の内面に当接した場合に、弾性部材を介して欠陥側に変位する。このため、超音波式センサを用いて、管外面及び内面に発生した表面欠陥を定量的に検査することができる。
【0009】
このとき、本発明の一態様では、前記超音波式センサは、一対の送信探触子及び受信探触子を用いてTOFD(Time Of Flight Diffraction)法で前記欠陥の深さを定量的に計測することとしてもよい。
【0010】
このようにすれば、TOFD法を用いることによって、管路の内側からでも、管路の外面側に発生したき裂等の表面欠陥の深さを定量的に評価することができる。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記超音波式センサは、少なくとも一対の送信探触子及び受信探触子が前記管路の少なくとも周方向及び軸方向の何れかに配列して構成されることとしてもよい。
【0012】
このようにすれば、管路の外面側に発生したき裂等の表面欠陥が周方向に発生した場合でも、軸方向に発生した場合でも、管路の内側からその深さを定量的に評価することができる。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記超音波式センサの前記支持軸からの距離を調整するためのセンサ配置調整機構が、更に設けられることとしてもよい。
【0014】
このようにすれば、管路の内径に応じて超音波センサと管路内面との距離を調整することができる。
【0015】
また、本発明の一態様では、前記支持軸を軸周りに回転させる回転機構が更に設けられることとしてもよい。
【0016】
このようにすれば、管路の周方向に亘り、管外面及び内面に発生した表面欠陥を定量的に検査することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明によれば、管路に内挿しながら、超音波式センサを用いて、管外面及び内面に発生した表面欠陥を定量的に検査することが容易にできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の管外面及び内面検査装置の第1の実施形態の概略構成図である。
図2】(a)、(b)は、同実施形態の管外面及び内面検査装置を用いて、管路の外面側に発生したき裂の深さを定量的に評価する動作説明図である。
図3】(a)、(b)は、同実施形態の管外面及び内面検査装置に備わるセンサ配置調整機構によるセンサ配置を調整する動作説明図である。
図4】過熱低減器に備わるスプレー管の外面及び内面で表面欠陥が発生し易い部分の要部説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0020】
まず、本発明の管外面及び内面検査装置の第1の実施形態の構成について、図面を使用しながら説明する。図1は、本発明の管外面及び内面検査装置の第1の実施形態の概略構成図である。
【0021】
本実施形態の管外面及び内面検査装置100は、過熱低減器に設置されたスプレー水管等の管路12の内部に挿通して、管外面及び内面のき裂等の表面欠陥を超音波式センサで管路12の軸方向及び周方向を走査して、当該表面欠陥を定量的に評価する。管外面及び内面検査装置100は、管路12の外側面となる管外面12aと管路12の内側面となる管内面12bの欠陥を定量的に計測する超音波式センサ102と、超音波式センサ102が管路12の軸線方向に延在するように支持する支持軸104と、を備える。
【0022】
本実施形態では、管内面12bの凹凸等の表面形状を考慮して走査可能とするために、超音波センサ102は、板ばね等の弾性部材106を介して、支持軸104に支持されている。すなわち、弾性部材106は、超音波式センサ102が管内面12bに当接した際に、超音波式センサ102を管内面12bに向けて付勢して、超音波式センサ102が弾性部材106を介して欠陥側に変位する。また、弾性部材106の近傍には、検査をする際に、検査部位に水を噴射するためのノズルが108設けられている。
【0023】
支持軸104の基端側には、支持軸104を軸周りに回転させる回転機構110が設けられ、管路12の周方向に亘り、管外面12aと管内面12bに発生した表面欠陥を定量的に検査できる構成となっている。また、支持軸104には、超音波式センサ102の支持軸104からの距離を調整するためのセンサ配置調整機構112が設けられている。
【0024】
本実施形態では、超音波式センサ102は、一対の送信探触子102aと受信探触子102bからなるセンサが軸方向に配列され、き裂検出精度が高いTOFD(Time Of Flight Diffraction)法を用いて欠陥の深さを定量的に計測することを特徴とする。すなわち、TOFD法を用いることにより、管路12の内面側からでも、管路12の外面側に発生したき裂等の表面欠陥の深さを定量的に評価可能とすることを特徴とする。
【0025】
次に、本実施形態の管外面及び内面検査装置100による管外面及び内面に発生したき裂等の欠陥の測定・評価動作について、図面を使用しながら説明する。図2は、本実施形態の管外面及び内面検査装置を用いて、管路の外面側に発生したき裂の深さを定量的に評価する動作説明図であり、(a)は管路の周方向に形成されたき裂の深さ、(b)は管路の軸方向に形成されたき裂の深さをそれぞれ測定している動作を示す。
【0026】
管外面12aの周方向に発生したき裂14aの深さを測定する場合には、図2(a)に示すように、超音波センサ102を管内面12bに当接させて、送信探触子102aから受信探触子102bに超音波を発信させて走査する。き裂14aが存在する場合には、回折波が発生するので、この回折波を検出し画像化することで客観的、定量的に管外面12aの周方向に発生したき裂14aの長さ、深さを評価することができる。
【0027】
一方、管外面12aの軸方向に発生したき裂14bの深さを測定する場合には、図2(b)に示すように、超音波センサ102を管内面12bに当接させて、送信探触子102aから受信探触子102bに超音波を発信させて走査する。き裂14bが存在する場合には、回折波が発生するので、この回折波を検出し画像化することで客観的、定量的に管外面12aの軸方向に発生したき裂の長さ、深さを評価することができる。
【0028】
本実施形態では、超音波センサ102は、弾性部材106を介して支持部104に支持されているので、超音波式センサ102が管内面12bに当接した際に、弾性部材106が超音波式センサ102を管内面12bに向けて付勢する。そして、超音波式センサ102が弾性部材106を介して欠陥側に変位する。このため、図2(b)に示すように、管路12の周方向に沿って、管路12の軸方向に形成されたき裂14bを評価する際には、管路12の内面形状に沿って、センサ102が管内面12bに当接するように、弾性部材106が弾性変形する。このように、本実施形態では、管路12の表面形状に応じて、超音波式センサ102を用いて、管外面12aと管内面12bに発生した表面欠陥14a、14bを定量的に検査することができる。
【0029】
また、本実施形態では、超音波式センサ102(102a、102b)は、軸方向に延在するように設けられているが、少なくとも一対の送信探触子102aと受信探触子102bが管路の少なくとも周方向及び軸方向の何れかに配列する構成であればよい。図1では、軸方向に送信探触子102aと受信探触子102bが配列されている超音波センサ102が示されているが、超音波センサ102は、この配列に限定されない。すなわち、管外面及び内面の欠陥を定量的に検査可能とするためには、送信探触子102aと受信探触子102bの配列を軸方向と周方向に変更可能な構成としてもよく、また、軸方向と周方向の双方に配列させた構成としてもよい。
【0030】
次に、本実施形態の管外面及び内面検査装置に備わるセンサ配置調整機構について、図面を使用しながら説明する。図3は、本実施形態の管外面及び内面検査装置に備わるセンサ配置調整機構によるセンサ配置を調整する動作説明図であり、(a)は、超音波センサ102を支持軸104から離隔した状態、(b)は、超音波センサ102を支持軸104に近づけた状態を示す。
【0031】
本実施形態では、管路の内径に応じて超音波センサと管内面12bとの距離を調整するために、超音波式センサ102の支持軸104からの距離を調整するためのセンサ配置調整機構112が設けられている。センサ配置調整機構112は、弾性部材106を介して超音波センサ102を支持している管路の径方向に長さ調整が可能な調整軸部112aと、支持軸104に設けられた固定部112bを備える。
【0032】
すなわち、管路12の内径が大きい場合は、図3(a)に示すように、超音波式センサ102を検査対象に近づけるために、管内面12bに接近させるために、調整軸部112aが固定部112bから延出する。一方、管路12の内径が小さい場合は、図3(b)に示すように、超音波式センサ102が検査対象に当接できるように、調整軸部112aが縮小する。このように、本実施形態の管外面及び内面検査装置は、検査対象となる管路の径に合わせて検査することが可能となる。
【0033】
なお、本実施形態の管外面及び内面検査装置では、TOFD法を適用して、管外面及び内面のき裂を検査可能とするものについて、説明しているが、管内面のき裂に関しては、現像液を内面に噴射させるスプレーを設けて探傷するものとしてもよい。
【0034】
以上説明したように、本実施形態では、少なくとも一対の送信探触子と受信探触子からなる超音波センサでTOFD法を適用した検査装置としているので、装置を管路に内挿しながら、管外面と管内面に発生した表面欠陥を検出して、測定することができる。特に、超音波センサが弾性部材を介して支持されているので、検査装置を管路に内挿して検査する際に、超音波式センサが管内面に当接した場合に、弾性部材を介して欠陥側に変位する。このため、超音波式センサを用いて、管路の表面形状に応じて、管外面及び内面に発生した表面欠陥を定量的に検査・評価することができる。
【0035】
特に、本実施形態では、管路に内挿しながら、TOFD法を用いて管外面と管内面の表面欠陥を定量的に評価できる。このため、過熱低減器に備わるスプレー水管等のように、従来、検査が困難であった二重管構造となっている外筒管と内側管路との重複部となる内側管路の外周面に発生した表面欠陥に対しても、管路に内挿しながら定量的に評価できる。
【0036】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
【0037】
例えば、明細書または図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書または図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、管外面及び内面検査装置の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0038】
10 過熱低減器
12 スプレー管(管路)
12a 管外面
12b 管内面
14 き裂(欠陥)
16 外筒管
100 管外面及び内面検査装置
102 超音波センサ
102a 送信探触子
102b 受信探触子
104 支持軸
106 弾性部材
108 ノズル
110 回転機構
図1
図2
図3
図4