【実施例】
【0096】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下において「%」は、特に指定しない限り、質量基準とする。
【0097】
[実施例1]
[多孔質金属酸化物半導体の作製]
ガラスからなる透明基板1上にフッ素をドープしたSnO
2からなる透明導電膜2を真空蒸着により形成した透明導電膜2上に、以下の方法で多孔質金属酸化物半導体層3を形成した。
【0098】
透明基板1上に透明導電膜2が形成された電極基体8としてFTOガラス(日本板硝子株式会社製)を用い、その表面に市販の酸化チタンペースト(触媒化成株式会社製、商品名TSP−18NR、粒子サイズ20nm)をスクリーン印刷法で6μm程度の膜厚、5mm×10mm程度の面積で、透明導電膜2側に印刷し、さらにその上に同面積で、市販の酸化チタンペースト(触媒化成株式会社製、商品名TSP−400C、粒子サイズ400nm)をスクリーン印刷法で、4μm程度の膜厚に塗布し、500℃で30分間、大気中で焼成した。その結果、膜厚が10μm程度の酸化チタン膜(多孔質金属化半導体膜3)が得られた。
【0099】
[増感色素の吸着]
増感色素4として、一般にN719色素と呼ばれるビス(4−カルボキシ−4’−テトラブチルアンモニウムカルボキシ−2、2’−ビピリジン)ジイソチオシアネートルテニウム錯体(Solaronix社製)を使用した。上記多孔質酸化チタン半導体電極を色素濃度0.4mmol/Lの無水エタノール溶液中に浸漬し、遮光下で1晩静置した。その後無水エタノールにて余分な色素を洗浄してから風乾することで太陽電池の半導体電極を作製した。
【0100】
[電解液の調整]
次に、電解質層5を構成する電解液を調製した。溶媒として1−メチル−3−エチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(EMIm−FSI、第一工業製薬(株)製の製品名エレクセルIL−110)を用い、それに0.8mol/Lの5,5’‐ジチオビス(1−n−ブチル1H−テトラゾール)(BTZT)
2、0.1mol/Lの1−n-ブチル-5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:リチウム塩、(Li−BTZT)、1.5mol/Lの1−n−ブチル-5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:1−メチル−3−エチルイミダゾリウム塩(EMIm−BTZT)、0.5mol/LのN−メチルベンズイミダゾール(NMBI)を溶かすことにより作製した。なお、上記の化合物は市販の材料、もしくは市販の材料から公知の方法や上記合成例に従い合成したものを用いた。
【0101】
[対向電極(対極)の作製]
対向電極9として、p−トルエンスルホン酸がドープされたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(以下PEDOT−PTS)対極を使用した。電極基体7としてFTO被膜付きガラス(旭硝子製、〜10Ω/□)を用い、有機溶媒中で超音波洗浄した電極基体に、3,4−エチレンジオキシチオフェン、トリス−p−トルエンスルホン酸鉄(III)、ジメチルスルホキシドを1:8:1の重量比でn−ブタノールに溶解させた反応溶液をスピンコート法にて塗布した。スピンコートの回転条件は2000rpmで30秒の条件で行い、溶液における3,4−エチレンジオキシチオフェンの濃度は0.48Mであった。つづいて、溶液を塗布した電極基板を110℃に保持した恒温槽に入れ、5分間加熱させることで重合後、メタノールで洗浄することで対向電極を作製した。作製したPEDOT薄膜の膜厚はそれぞれ約0.3μmであった。
【0102】
[太陽電池セルの組み立て]
上記のように作製した対向電極9に電気ドリルで1mmφの電解液注入孔を適当な位置に設けたのち、上記のように作製した透明導電膜2を具備した透明基板1上の酸化チタン膜3からなる電極基体8(作用極)と、対向電極の間に熱可塑性シート(ハイミラン1652:三井・デュポンポリケミカル製、膜厚25μm)を挟み、熱圧着する事により両電極を接着した。次に、前記のように作製した電解液を両電極間に注入した後、電解液注入孔上に1mm厚のガラス板を置き、その上にUVシール剤(スリーボンド社製の開発品 31X−727)を塗布し、UV光を100mW/cm
2の強度で30秒照射することで封止を実施し、太陽電池素子を作製した。
【0103】
[実施例2]
電解質層5として、1−n−ブチル-5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:1−メチル−3−エチルイミダゾリウム塩(EMIm−BTZT)の代わりに1−n-ブチル-5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:1−メチル−1−プロピルピロリジニウム塩(MPPy−BTZT)を使用した以外は実施例1と同様に太陽電池素子を作製した。
【0104】
[実施例3]
電解質層5として、1−メチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:1−メチル−3−エチルイミダゾリウム塩(EMIm−MTZT)の代わりに1−メチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウム塩(DMPIm−BTZT)を使用した以外は実施例1と同様に太陽電池素子を作製した。
【0105】
[実施例4]
電解質層5として、5,5’−ジチオビス(1−n−ブチル−1H−テトラゾール)(BTZT)
2の濃度を0.8mol/Lから1.6mol/Lに変更した以外は実施例1と同様に太陽電池素子を作製した。
【0106】
[実施例5]
電解質層5として、3−メトキシプロピオニトリルを溶媒として用い、それに0.4Mの5,5’−ジチオビス(1−n−ブチル−1H−テトラゾール)(BTZT)
2、0.05mol/Lの1−n−ブチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:リチウム塩(Li−BTZT)、0.75mol/Lの1−n−ブチル-5−メルカプト−1,2,3,4−テトラメチルアンモニウム塩(TMA−BTZT)、0.2mol/Lのt−ブチルピリジン(tBP)を溶解させたものを使用した以外は実施例1と同様に太陽電池素子を作製した。
【0107】
[実施例6]
電解質層5として、1−n−ブチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラメチルアンモニウム塩(TMA−BTZT)のかわりに1−n−ブチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:1−メチル−3−エチルイミダゾリウム塩(EMIm−BTZT)を使用した以外は実施例5と同様に太陽電池素子を作製した。
【0108】
[実施例7]
電解質層5として、1−n−ブチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:テトラメチルアンモニウム塩(TMA−BTZT)の濃度を0.75mol/Lから0.35mol/Lに変更した以外は実施例5と同様に太陽電池素子を作製した。
【0109】
[実施例8]
電解質層5として、1−n−ブチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラメチルアンモニウム塩(TMA−BTZT)の濃度を0.75mol/Lから0.95mol/Lに、5,5’−ジチオビス(1−n−ブチル−1H−テトラゾール)(BTZT)
2の濃度を0.4Mから1.0Mに変更した以外は実施例5と同様に太陽電池素子を作製した。
【0110】
[実施例9]
増感色素4として、N719色素に代えて次式(8)で表されるヘプタメチンシアニン色素を用い、電解質層5として、3−メトキシプロピオニトリルを溶媒として用い、それに0.1Mの5,5’‐ジチオビス(1−n−ブチル−1H−テトラゾール)(BTZT)
2、0.05mol/Lの1−n−ブチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:リチウム塩(Li−BTZT)、0.05mol/Lの1−n−ブチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:1−メチル−3−エチルイミダゾリウム塩(EMIm−BTZT)を溶解させたものを使用した以外は実施例1と同様に太陽電池素子を作製した。
【化8】
【0111】
[比較例1]
電解質層5として、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(EMIm−FSI)を溶媒として用い、それに0.2mol/Lのヨウ素、2.0mol/Lの1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウムアイオダイド(DMPIm−I)、0.5mol/LのN−メチルベンズイミダゾール(NMBI)を溶解させたものを使用した以外は実施例1と同様に太陽電池素子を作製した。
【0112】
[比較例2]
電解質層5として、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(EMIm−FSI)を溶媒として用い、それに0.8mol/Lの5,5’‐ジチオビス(1−メチル−1H−テトラゾール)(MTZT)
2、0.1mol/Lの1−メチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:リチウム塩、(Li−MTZT)1.5mol/Lの1−メチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:1−メチル−3−エチルイミダゾリウム塩(EMIm−MTZT)、0.5mol/LのN−メチルベンズイミダゾール(NMBI)を溶かしたものを使用した以外は実施例1と同様に太陽電池素子を作製した。
【0113】
[比較例3]
対向電極9として、スパッタ法によりITO導電性ガラス上にスパッタ法によりPtを蒸着したPt対極(ジオマテック製)を使用した以外は比較例1と同様に太陽電池素子を作製した。
【0114】
[比較例4]
電解質層5として、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(EMIm−FSI)を溶媒として用い、それに0.5mol/Lの1−メチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:テトラメチルアンモニウム塩、0.5mol/Lの2,2’−ジチオビス(5−メチル−1,3,4−チアジアゾール)、0.5mol/LのN−メチルベンズイミダゾール(NMBI)を溶解させたものを使用した以外は実施例1と同様に太陽電池素子を作製した。
【0115】
[比較例5]
電解質層5として、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(EMIm−FSI)を溶媒として用い、それに2mol/Lの5−メチル−2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール:1−メチル−3−エチルイミダゾリウム塩、0.2Mの2,2’−ジチオビス(5−メチル−1,3,4−チアジアゾール)、0.5mol/LのN−メチルベンズイミダゾール(NMBI)を溶解させたものを使用した以外は実施例1と同様に太陽電池素子を作製した。
【0116】
[比較例6]
電解質層5として、3−メトキシプロピオニトリルを溶媒として用い、それに0.15mol/Lのヨウ素、0.8mol/Lの1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウムアイオダイド(DMPIm−I)、0.2mol/Lのt−ブチルピリジン(tBP)を溶解させたものを使用した以外は実施例5と同様に太陽電池素子を作製した。
【0117】
[比較例7]
電解質層5として、3−メトキシプロピオニトリルを溶媒として用い、それに0.4Mの5,5’−ジチオビス(1−メチル−1H−テトラゾール)(MTZT)
2、0.05mol/Lの1−メチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:リチウム塩(Li−MTZT)、0.35mol/Lの1−メチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラメチルアンモニウム塩(TMA−BTZT)、0.2mol/Lのt−ブチルピリジン(tBP)を溶解させたものを使用した以外は実施例5と同様に太陽電池素子を作製した。
【0118】
[比較例8]
電解質層5として、3−メトキシプロピオニトリルを溶媒として用い、それに0.1Mの5,5’−ジチオビス(1−メチル−1H−テトラゾール)(MTZT)
2、0.05mol/Lの1−メチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:リチウム塩(Li−MTZT)、0.05mol/Lの1−メチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:1−メチル−3−エチルイミダゾリウム塩(EMIm−MTZT)を溶解させたものを使用した以外は実施例9と同様に太陽電池素子を作製した。
【0119】
[比較例9]
電解質層5として、3−メトキシプロピオニトリルを溶媒として用い、それに0.1Mの5,5’−ジチオビス(1−sec−ブチル−1H−テトラゾール)(sBTZT)
2、0.05mol/Lの1−sec−ブチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:リチウム塩(Li−sBTZT)、0.05mol/Lの1−sec−ブチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:1−メチル−3−エチルイミダゾリウム塩(EMIm−sBTZT)を溶解させたものを使用した以外は実施例9と同様に太陽電池素子を作製した。
【0120】
上記実施例・比較例で使用した酸化還元対を以下の方法で合成した。但し、合成法はこれらに限定されない。
【0121】
[製造例1](実施例1〜9・比較例3の酸化還元対前駆体(1−n−ブチル-5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール)の合成)
n−ブチルイソチオシアナート3.84g(33.3mmol)とアジ化ナトリウム3.25g(50.0mmol)を純水25ml中で5時間反応させた。反応後、ジエチルエーテルを用いて抽出を行い、不純物を除去した。水層を濃硫酸で酸性にした後(pH=1)、再度ジエチルエーテルを用いて抽出を三回行った。エーテル層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を除去し、収率75%(3.97g,25.1mmol)で目的物質の1−n−ブチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾールを得た。生成物の同定には高速液体クロマトグラフィー(条件:溶媒として、ヘキサン:2−プロパノール=95:5を流速1ml/minで流し、237nmの波長照射下で検出)を用いた。また、融点(m.p.)測定、IR分析、
1H−NMR及び
13C−NMR分析も行った。測定条件及び結果を次に示す。
【0122】
HPLC 4.0 min; m.p. = 37.5 ℃; IR (KBr) 2600 (-SH);
1H NMR (CDCl
3) δ 0.97 (t, J = 7.18 Hz, 3H), 1.40 (sex, J = 7.18 Hz, 2H), 1.90 (quin, J = 7.18 Hz, 2H), 4.28 (t, J = 7.18 Hz, 2H), 14.0 (br s, 1H);
13C NMR (CDCl
3) δ 13.51, 19.66, 30.00, 47.28, 163.77.
【0123】
[製造例2](実施例1〜9・比較例3の酸化還元対前駆体(1−n−ブチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:カリウム塩)の合成)
上記製造例1で得られた1−n−ブチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール0.208g(1.31mmol)と炭酸カリウム0.0898g(0.650mmol)をメタノール15ml中、超音波照射下で1時間反応させた。とけ残った固体をろ過し、溶媒除去後、ジクロロメタンで洗浄し、乾燥させ、収率98%(0.2531g,1.29mmol)で目的物質の1−n−ブチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:カリウム塩を得た。生成物の融点測定及び
1H−NMR及び
13C−NMR分析を行った結果を次に示す。
【0124】
m.p. = 195.0 ℃;
1H NMR (CD
3OD) δ 0.93 (t, J = 7.18 Hz, 3H), 1.34 (sex, J = 7.18 Hz, 2H), 1.82 (quin, J = 7.18 Hz, 2H), 4.24 (t, J = 7.18 Hz, 2H);
13C NMR (CD
3OD) δ 12.68, 19.42, 30.63, 45.81, 165.63.
【0125】
[製造例3](実施例1〜9・比較例3の酸化体(5,5’‐ジチオビス(1−n−ブチル1H−テトラゾール))の合成)
上記製造例2で得られた1−n−ブチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:カリウム塩2.95g(15.0mmol)とヨウ素1.91g(7.50mmol)を、メタノール30ml中、室温で1時間反応させた。溶媒除去後、水10mlを加え、ジクロロメタンで分液(20ml×3回)を行い、ジクロロメタン層を回収し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジエチルエーテル:ヘキサン=5:1)にて濾過を行い、ヨウ素と原料のカリウム塩を取り除き、収率35%(1.65g,5.25mmol)で目的物質の5,5’‐ジチオビス(1−n−ブチル1H−テトラゾール)を得た。生成物の同定には高速液体クロマトグラフィー(条件:溶媒として、ヘキサン:2−プロパノール=95:5を流速1ml/minで流し、237nmの波長照射下で検出)を用いた。また、融点測定、
1H−NMR及び
13C−NMR分析も行った。測定条件及び結果を次に示す。
【0126】
HPLC 18.9 min;
1H NMR (CDCl
3) δ 0.84 (t, J = 7.46 Hz, 6H) 1.23 (sex, J = 7.46 Hz, 4H) 1.78 (quin, J = 7.46 Hz, 4H), 4.35 (t, J = 7.46 Hz, 4H);
13C NMR (CDCl
3) δ 13.39, 19.59, 31.47, 48.36, 151.75.
【0127】
[製造例4](実施例1〜9・比較例3の還元体(1−n−ブチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:リチウム塩)の合成)
上記製造例1で得られた1−n−ブチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール0.404g(2.55mmol)と炭酸リチウム0.0922g(1.28mmol)をメタノール15ml中、超音波照射下で1時間反応させた。とけ残った固体をろ過し、溶媒除去後、ジクロロメタンで洗浄し、乾燥させ、収率34%(0.145g,0.867mmol)で目的物質の1−n−ブチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:リチウム塩を得た。生成物の融点測定、
1H−NMR及び
13C−NMR分析を行った結果を次に示す。
【0128】
m.p. = 93.0 ℃;
1H NMR (DMSO) δ 0.83 (t, J = 7.18 Hz, 3H), 1.19 (sex, J = 7.18 Hz, 2H), 1.63 (quin, J = 7.18 Hz, 2H), 4.02 (t, J = 7.18 Hz, 2H);
13C NMR (DMSO) δ 14.06, 19.75, 31.03, 45.05, 167.69.
【0129】
[製造例5](実施例1,4,6,9・比較例3の還元体(1−n−ブチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:1−メチル−3−エチルイミダゾリウム塩)の合成)
上記製造例1で得られた1−n−ブチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール0.174g(1.10mmol)をメタノール3mlに溶かしたものを水溶媒中の1−エチル−3−メチルイミダゾリウム炭酸塩(0.330g,1.00mmol,52.2%inH
2Ow/w)に滴下していき、1分間反応させた。溶媒を除去し、収率98%(0.263g,0.980mmol)で目的物質の1−n−ブチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:1−メチル−3−エチルイミダゾリウム塩を得た。生成物の
1H−NMR及び
13C−NMR分析を行った結果を次に示す。
【0130】
1H NMR (CDCl
3) δ 0.94 (t, J = 7.18 Hz 3H), 1.37 (sex, J = 7.18 Hz, 2H), 1.52 (t, J = 7.37 Hz, 3H), 1.85 (quin, J = 7.18 Hz, 2H), 4.05 (s, 3H), 4.26 (t, J = 7.18 Hz, 2H), 4.36 (q, J = 7.37 Hz, 2H), 7.56 (d, J = 1.80 Hz, 2H), 9.90 (s, 1H);
13C NMR (CDCl
3) δ , 13.28, 15.11, 19.33, 30.46, 35.96, 44.61, 45.46, 121.65, 123.33, 136.15, 166.04.
【0131】
[製造例6](実施例5,7,8の還元体(1−n−ブチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:テトラメチルアンモニウム塩)の合成)
上記製造例1で得られた1−n−ブチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール1モル等量をメタノール3mlに溶かしたものをテトラメチルアンモニウム1モル等量の50%メタノール溶液)に滴下していき、1時間反応させた。溶媒を除去し、収率95%で目的物質の1−n−ブチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:テトラメチルアンモニウム塩を得た。生成物の
1H−NMR及び
13C−NMR分析を行った結果を次に示す。
【0132】
1H NMR (CDCl
3) δ 0.94 (t, 3H), 1.36 (sex, 2H), 1.85 (quin, 2H), 3.4 (s, 12H), 4.24 (t, 2H),
13C NMR (CDCl
3) δ, 13.66, 19.84, 30.97, 55.73,166.6
【0133】
[製造例7](実施例2の還元体(1−メチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:MPPy塩)の合成)
上記製造例1で得られた1−n−ブチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール1モル等量をメタノールに溶解させたものと1−メチル−1−プロピルピロリジニウムヒドロキシド(MPPy−OH)1モル当量をメタノールに溶解させたものを混合し、3時間攪拌後、溶媒をロータリーエバポレーターにより留去することにより、常温で液体の1−メチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:MPPy塩を合成した。反応収率は95%であった。生成物の
1H−NMR分析を行った結果を次に示す。
【0134】
1H NMR (CDCl
3) δ 0.94 (t, 3H), 1.10 (t, 3H), 1.36 (sex, 2H), 1.85 (m, 4H), 2.28 (m, 4H), 3.26 (quin, 2H), 3.61 (m, 2H) 3.80 (m, 4H), 4.26 (t, 2H),
【0135】
[製造例8](実施例3の還元体(1−メチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:DMPIm塩)の合成)
上記製造例1で得られた1−n−ブチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール1モル等量をメタノールに溶解させたものと1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムヒドロキシド(DMPIm−OH)1モル当量をメタノールに溶解させたものを混合し、3時間攪拌後、溶媒をロータリーエバポレーターにより留去することにより、常温で液体の1−メチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:DMPIm塩を合成した。反応収率は98%であった。生成物の
1H−NMR分析を行った結果を次に示す。
【0136】
1H NMR (CDCl
3) δ 0.94 (t, 3H), 1.02 (t, 3H) 1.37 (sex, 2H), 1.85 (quin, 2H), 1.91(sex, 2H)., 2.82 (s, 3H), 4.00 (s, 3H), 4.18 (t, 2H), 4.25 (t, 2H), 7.51 (d, 1H), 7.62 (d, 1H),
【0137】
[比較製造例1](比較例9の酸化還元対前駆体(1−sec−ブチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール)の合成)
sec−ブチルイソチオシアナート3.84g(33.4mmol)とアジ化ナトリウム3.25g(50.0mmol)を純水25ml中で5時間反応させた。反応後、ジエチルエーテルを用いて抽出を行い、不純物を除去した。水層を濃硫酸で酸性にした後(pH=1)、再度ジエチルエーテルを用いて抽出を三回行った。エーテル層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を除去し、収率59%(3.10g,19.6mmol)で目的物質の1−sec−ブチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾールを得た。生成物の同定には高速液体クロマトグラフィー(条件:溶媒として、ヘキサン:2−プロパノール=95:5を流速1ml/minで流し、237nmの波長照射下で検出)を用いた。また、目的物質のIR測定、
1H−NMR及び
13C−NMR分析を行った。結果を次に示す。
【0138】
HPLC 4.0 min; m.p. = 67.0 ℃; IR (KBr) 2758 (-SH);
1H NMR (CDCl
3) δ 0.90 (t, J = 7.56 Hz, 3H), 1.52 (d, J = 6.78 Hz, 3H), 1.84-2.08 (m, 2H), 4.80 (sex, J = 6.78 Hz, 1H), 14.17 (br s, 1H);
13C NMR (CDCl
3) δ 10.47, 19.23, 28.57, 56.11, 163.40.
【0139】
[比較製造例2](比較例9の酸化還元対前駆体(1−sec−ブチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:カリウム塩)の合成)
比較製造例1で得られた1−sec−ブチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール0.272g(1.72mmol)と炭酸カリウム0.113g(0.816mmol)をメタノール(15ml)中、超音波照射下で1時間反応させた。とけ残った固体をろ過し、溶媒除去後、ジクロロメタンで洗浄し、乾燥させ、収率96%(0.323g,1.64mmol)で目的物質の1−sec−ブチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:カリウム塩を得た。生成物の融点測定、
1H−NMR及び
13C−NMR分析を行った結果を次に示す。
【0140】
m.p. = 162.0 ℃;
1H NMR (DMSO) δ 0.70 (t, J = 7.47 Hz , 3H), 1.25 (d, J = 7.05 Hz, 3H), 1.63-1.83 (m, 2H), 4.69 (sex, J = 7.05 Hz, 1H);
13C NMR (DMSO) δ 11.01, 20.24, 29.06, 52.69, 167.36.
【0141】
[比較製造例3](比較例9の酸化体(5,5’‐ジチオビス(1−sec−ブチル1H−テトラゾール)の合成)
比較製造例2で得られた1−sec−ブチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:カリウム塩2.81g(14.4mmol)とヨウ素1.82g(7.18mmol)を、メタノール30ml中、室温で1時間反応させた。溶媒除去後、水10mlを加え、ジクロロメタンで分液(20ml×3回)を行い、ジクロロメタン層を回収し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジエチルエーテル:ヘキサン=5:1)にて濾過を行い、ヨウ素を取り除き、再結晶(ヘキサン:2−プロパノール=95:5)にて原料のカリウム塩を取り除き、収率29%(1.31g,4.14mmol)で目的物質の5,5’‐ジチオビス(1−sec−ブチル1H−テトラゾールを得た。生成物の同定には高速液体クロマトグラフィー(条件:溶媒として、ヘキサン:2−プロパノール=95:5を流速1ml/minで流し、237nmの波長照射下で検出)を用いた。また、目的物質の融点測定、
1H−NMR及び
13C−NMR分析を行った。結果を次に示す。
【0142】
HPLC 14.80 min; m.p. = 67.0 ℃;
1H NMR (CDCl
3) δ 0.79 (t, J = 7.46 Hz, 6H) 1.59 (d, J = 6.68 Hz, 6H) 1.86-2.05 (m, 4H), 4.70 (sex, J = 6.68 Hz, 2H);
13C NMR (CDCl
3) δ 10.51, 20.59, 29.80, 58.30, 150.60.
【0143】
[比較製造例4](比較例9の還元体(1−sec−ブチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:リチウム塩)の合成)
比較製造例1で得られた1−sec−ブチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール0.267g(1.69mmol)と炭酸リチウム0.0626g(0.847mmol)をメタノール15ml中、超音波照射下で1時間反応させた。とけ残った固体をろ過し、溶媒除去後、ジクロロメタンで洗浄し、乾燥させ、収率14%(0.0380g,0.231mmol)で目的物質の1−sec−ブチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:リチウム塩を得た。目的物質の融点測定、
1H−NMR及び
13C−NMR分析を行った結果を次に示す。
【0144】
m.p. = 270.0 ℃以上;
1H NMR (DMSO) δ 0.71 (t, J = 7.47 Hz, 3H), 1.26 (d, J = 6.58 Hz, 3H), 1.64-1.84 (m, 2H), 4.70 (sex, J = 6.58 Hz, 1H);
13C NMR (DMSO) δ 11.06, 20.25, 29.08, 52.68, 167.36.
【0145】
[比較製造例5](比較例9の還元体(1−sec−ブチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:1−メチル−3−エチルイミダゾリウム塩)の合成)
比較製造例1で得られた1−sec−ブチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール0.171g(1.09mmol)をメタノール3mlに溶かしたものを水溶媒中の1−エチル−3−メチルイミダゾリウム炭酸塩(0.330g,1.00mmol,52.2wt%水溶液)を滴下していき、1分間反応させた。溶媒を除去し、収率96%(0.258g,0.960mmol)で目的物質の1−sec−ブチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:1−メチル−3−エチルイミダゾリウム塩を得た。目的物質の融点測定、
1H−NMR及び
13C−NMR分析を行った結果を次に示す。
【0146】
1H NMR (CDCl
3) δ 0.84 (t, J = 7.18 Hz, 3H), 1.42 (d, J = 7.05 Hz, 3H), 1.53 (t, J = 6.70 Hz, 3H), 1.80-1.99 (m, 2H), 4.06 (s, 3H), 4.37 (q, J = 6.70 Hz, 2H), 4.88 (sex, J = 7.05 Hz, 1H), 7.60 (d, J = 1.80 Hz, 2H), 10.00 (s, 1H);
13C NMR (CDCl
3) δ 10.48, 15.40, 19.65, 28.92, 36.29, 44.96, 53.60, 121.77, 123.50, 136.83, 165.88.
【0147】
また、比較例1、2、4、5、6、7,8で用いた酸化還元対は、それぞれ非特許文献6、特許文献1,2の記載に基づき合成したもの、もしくは市販の材料を使用した。
【0148】
[太陽電池の光電変換効率・耐久性評価]
上記により作製した太陽電池の評価を以下の手法で実施した。性能評価には、AMフィルターを具備したキセノンランプのソーラーシュミレーターXES−502S(関西科学機械株式会社より購入)にて、AM1.5Gのスペクトル調整後、100mW/cm
2の照射条件下で、ポテンシオスタットによる負荷特性(I−V特性)を評価した。
【0149】
太陽電池の評価値は、開放電圧Voc(V)、短絡電流密度Jsc(mA/cm
2)、形状因子FF(−)、変換効率η(%)が挙げられるが、最終的な太陽電池の性能の良否は、変換効率の大小で評価した。また、暗所、室温条件下での素子性能保持率を合わせて評価した。
【0150】
なお、光照射強度はスペクトルアナライザー(英弘精機製、LS−100)を用いてλ:400〜800nmの領域の照射光積分値を基準太陽光の値と比較して算出した。
【0151】
[イオン液体電解液系での評価]
イオン液体を電解質層5の溶媒に用いた各実施例及び比較例の光電変換素子の擬似太陽光照射条件でのI−V特性評価結果および安定性評価結果を表1に示す。
【0152】
【表1】
【0153】
表1に示された結果からわかる通り、本発明に係る実施例1〜4の光電変換素子は、同じイオン液体を溶媒とし、従来のヨウ素系酸化還元対を使用した比較例1の素子と同等以上の光電変換性能を擬似太陽光照射条件で示している。また、特許文献2で示された1−メチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:1−メチル−3−エチルイミダゾリウム塩、および5,5’−ジチオビス(1−メチル−1H−テトラゾール)を酸化還元対に用いた比較例2と比べても、本発明の実施例1の方が高い素子性能を示している。このことより、テトラゾール環のメチル基をn-ブチル-基に変更することによる、分子サイズの増加によるキャリア移動度の低下の悪影響よりも、立体障害効果による作用極から電解液への逆電子移動抑制効果による電荷分離効率の向上の寄与の方が大きいと考えられる。
【0154】
また、実施例1と実施例4とを比較すると、一般式(1)で表される化合物(酸化体)1モルに対して一般式(2)で表される化合物(還元体)を過剰に用いた方がより良好な素子性能を示すことがわかる。この理由は定かではないが、還元体を過剰に用いた場合、酸化体(T
2)と還元体(T
−)とが電荷移動錯体(T
2・T
− → T
3−と表記される)の形成が促進されることにより、電荷移動性能が向上したものと考えられる。また、酸化体と還元体の間で起こる電荷の交換反応が還元体過剰の方が起こりやすいことも理由として挙げられる。
【0155】
対向電極としてPt電極を使用した比較例3は対向電極にPEDOT電極を使用した実施例1よりも素子性能が劣っており、特にFFの値が低下している。これは本発明で使用しているスルフィド系酸化還元対に対する触媒活性がPtよりもPEDOTの方が高いためである。これはインピーダンス測定による界面反応抵抗解析からも確認される。よって、本発明の酸化還元対とPEDOT等の導電性高分子触媒を併用することで、高い光電変換効率を示す光電変換素子を作製できると言える。
【0156】
また、非特許文献6で示された1−メチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:テトラメチルアンモニウム塩を還元体に用いた比較例4は、還元体のイオン液体への溶解度が本発明の化合物より低いため、0.5M程度しか溶解することができず、その結果、実施例1と比較して光電変換性能が劣っている。
【0157】
また、特許文献1で示されたチアジアゾール骨格を有するスルフィドレドックスを酸化還元対に用いた比較例5は、酸化体であるジスルフィド化合物の溶媒への溶解性が低いため、実施例1と比較して光電変換性能が劣っており、また高濃度条件で電解液が不安定であるため、30日後の素子性能保持率が50%程度と低下した。一方、本発明の実施例1〜3は30日後も素子性能の劣化はほとんど見られない。よって、本発明の酸化還元対、導電性高分子触媒、イオン液体を組み合わせることで、実用的な光電変換素子を作製することができる。
【0158】
[有機溶媒電解液系での評価]
有機溶媒である3−メトキシプロピオニトリルを電解質層5の溶媒に用いた各実施例、比較例の光電変換素子の擬似太陽光照射条件でのI−V特性評価結果を表2に示す。
【0159】
【表2】
【0160】
本発明の酸化還元対を使用した実施例5に示されている本発明の光電変換素子は、同じ3−メトキシプロピオニトリルを溶媒とし、従来のヨウ素系酸化還元対を使用した比較例6の素子に近い光電変換性能を示している他、非特許文献6で示された1−メチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:テトラメチルアンモニウム塩を還元体に用いた比較例7と比較して明らかに優れた性能を示している。各特性値を比較すると、開放電圧値(Voc)と短絡電流値(Jsc)が向上していることが分かる。この現象は、上記のイオン液体電解液系での結果と同様に、スルフィド化合物のアルキル鎖長を延長することにより、立体障害効果による作用極から電解液への逆電子移動抑制効果が大きく寄与していると考えられる。
【0161】
実施例5と実施例6とを比較すると、還元体の対カチオンがEMIm塩である実施例6よりも対カチオンがTMA塩である実施例5の方が優れた光電変換性能を示している。これは、カチオンの分子サイズが小さいTMA塩の方が電解液の粘度が低くなり、キャリア移動度が向上したためと考えられる。
【0162】
また、イオン液体電解液系での結果と同様に、実施例5、実施例7,8の結果から、還元体濃度が酸化体濃度よりも高い方が良好な素子性能を示したことが分かる。
【0163】
[ヘプタメチンシアニン色素を用いた場合の評価]
増感色素として近赤外光を吸収するヘプタメチンシアニン色素を用いた各実施例、比較例の光電変換素子の擬似太陽光照射条件でのI−V特性評価結果および安定性評価結果を表3に示す。
【0164】
【表3】
【0165】
実施例9に示されている本発明の酸化還元対を使用した光電変換素子は、同じ3−メトキシプロピオニトリルを溶媒とし、非特許文献6に示された1−メチル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール:テトラメチルアンモニウム塩の対カチオンを実施例9と同じ1−メチル−3−エチルイミダゾリウム塩に変更した比較例8と比べて、優れた光電変換性能を示している。N719色素を使用した表2での結果と同様に、各特性値を比較すると、開放電圧値(Voc)と短絡電流値(Jsc)が向上していることが分かる。よって、ヘプタメチンシアニン色素を使った光電変換素子についても、本発明の酸化還元対は優れた性能を示すことがわかる。
【0166】
比較例9は、酸化還元対として、テトラゾール基の置換基をsec-ブチル-基としたものを用いたものであるが、実施例9と比較して、短絡電流値が劣る結果となった。この結果は、分岐アルキル基を有する酸化還元対の場合、分子サイズの増加による電解液粘度上昇にともなるキャリア移動度の低下の悪影響が本発明の直鎖アルキル基を有する酸化還元対よりも大きいことが理由として考えられる。
【0167】
以上のように、本発明の光電変換素子は素子性能、透明性の観点で、従来のヨウ素系酸化還元対よりも優れており、本発明で示した酸化還元対、イオン液体と有機導電性高分子対極を使用することにより、性能、耐久性、コスト、デザイン性に優れた実用性の高い太陽電池素子を提供することができる。