(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5960035
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】位置情報システム
(51)【国際特許分類】
H04W 12/12 20090101AFI20160719BHJP
H04W 64/00 20090101ALI20160719BHJP
【FI】
H04W12/12
H04W64/00
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-260031(P2012-260031)
(22)【出願日】2012年11月28日
(65)【公開番号】特開2014-107744(P2014-107744A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100102576
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敏章
(72)【発明者】
【氏名】谷川原 誠
(72)【発明者】
【氏名】川口 貴正
(72)【発明者】
【氏名】小檜山 智久
【審査官】
倉本 敦史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−018105(JP,A)
【文献】
特開2010−081354(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/059882(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/021431(WO,A1)
【文献】
国際公開第2009/110471(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00−9/00
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−2
CT WG1
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置情報を発信する発信機と、
前記発信機を有効化するか否かを認証する認証装置と、
前記発信機に位置情報を設定する設定端末と、
を備え、
前記発信機と前記認証装置は、暗号鍵のペアをあらかじめ共有しており、
前記認証装置は、
前記発信機が設置されている場所の位置情報をあらかじめ保持しており、
前記発信機の位置情報と併せて、前記発信機を有効化するよう要求する有効化リクエストを受け取ると、
あらかじめ保持している前記発信機の位置情報と、前記有効化リクエストと併せて受け取った前記発信機の位置情報とが一致するか否かを判定し、一致する場合は前記発信機を有効化する旨の応答を返信するとともに前記位置情報を前記暗号鍵によって暗号化した暗号化位置情報を返信し、
前記設定端末は、
前記認証装置から、前記発信機を有効化する旨の前記応答と併せて前記暗号化位置情報を受け取った場合は、前記暗号化位置情報を前記発信機に対して送信し、
前記発信機は、
前記暗号化位置情報を前記暗号鍵によって復号し、
前記発信機を有効化する旨の前記応答を前記認証装置が返信し、かつ復号の結果得られた位置情報と前記設定端末によって設定された自己の位置情報が一致する場合はその位置情報を発信し、
前記発信機を有効化しない旨の前記応答を前記認証装置が返信した場合、または復号の結果得られた位置情報と前記設定端末によって設定された自己の位置情報が一致しない場合は前記位置情報を発信しない
ことを特徴とする位置情報システム。
【請求項2】
前記発信機と前記認証装置は、
前記暗号鍵として公開鍵と秘密鍵のペアをあらかじめ共有しており、
前記設定端末は、
前記発信機に設定した前記位置情報を所定関数によってエンコードしたコード化位置情報を、前記有効化リクエストとして前記認証装置に対して送信し、
前記認証装置は、
前記コード化位置情報が記述している前記発信機の位置情報が、あらかじめ保持している前記発信機の位置情報と一致するか否かを判定し、
一致する場合は、前記発信機を有効化する旨の前記応答と併せて、前記コード化位置情報を前記秘密鍵によって暗号化することにより生成した前記暗号化位置情報を返信し、
前記発信機は、
前記暗号化位置情報を前記公開鍵によって復号する
ことを特徴とする請求項1記載の位置情報システム。
【請求項3】
前記位置情報システムは、複数の前記発信機を備え、
前記発信機は、各前記発信機を識別するための情報を表示する表示部を備える
ことを特徴とする請求項1または2記載の位置情報システム。
【請求項4】
前記位置情報システムは、前記発信機が初期の設置場所から移動したことを検出するセンサを備え、
前記発信機は、自己の位置が初期の設置場所から移動したことを前記センサが検出した場合は、位置情報の発信を中止する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の位置情報システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置情報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
位置を特定する情報として、無線LAN(Local Area Network)のアクセスポイントから送信されるビーコンやBlue Tooth(登録商標)ビーコンが利用されている。しかし、これらの無線信号に含まれる位置情報は絶対位置情報(緯度・経度)ではなく、相対的に現在位置を特定する技術であるため、機器を設置している場所が移動されると機器から異なる位置情報を発信することになる。
【0003】
下記特許文献1には、屋内や地下街等の衛星測位信号を受信できないエリア内に、位置を示す情報である位置情報を、GPSで使用している周波数(例えば、中心周波数1.57542GHz)、変調方式(具体的には、BPSK(Binary Phase−Shift Keying))、多元接続方式(具体的には、ダイレクト・スペクトラム拡散方式のCDMA(Code Division Multiple Access))などと互換性のある信号(以下、「位置情報信号」と記載する)によって発信する位置情報発信機を設置しておき、携帯電話などの通信端末が受信した位置情報信号に基づき自身の現在位置を取得する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−278756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1などに記載されている従来技術においては、移動体端末の利用者に対して自身の位置情報を提供する方法として、発信機の設置場所を特定する緯度、経度、高度を含む位置データを送信している。この技術においては、発信機に正しい位置情報が設定されていることが必要になる。発信機から誤った位置データが送信されると、利用者は謝った位置データを取得することになり、正当なサービスを受けることができない。
【0006】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、発信機が正しい位置情報を発信することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る位置情報システムは、発信機を有効化するか否かを認証する認証装置を備え、認証装置があらかじめ保持している発信機の位置情報と、発信機が保持している位置情報とが一致する場合は、発信機を有効化して位置情報を発信させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る位置情報システムによれば、発信機から正確な位置情報を送信することができる。上記した以外の課題、構成、および効果は、以下の実施形態の説明により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る位置情報システム100の構成図である。
【
図2】位置情報システム100の動作シーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明に係る位置情報システム100の構成図である。位置情報設定システム100は、移動体端末101、位置情報発信機102、設定端末103、位置情報認証装置104を備える。
【0011】
移動体端末101は、位置情報発信機102が発信する位置情報を受信することにより自己の位置を測位する機能を有する端末である。したがって、移動端末101による測位結果は、位置情報発信機102が発信する位置情報に依存することになる。
【0012】
位置情報発信機102は、後述の
図2で説明するシーケンスによって有効化されている場合に限り、自己の位置情報を発信する。位置情報発信機102は、ネットワークを介して設定端末103に接続されている。位置情報発信機102は2つ以上設置することができる。位置情報発信機102が複数存在する場合は、各位置情報発信機102のシリアル番号などの識別情報を表示する表示部を位置情報発信機102の筐体上に設けることが望ましい。位置情報発信機102は、天井や壁に固定して設置することができる。
【0013】
位置情報システム100は、位置情報発信機102を設置位置から移動したことを検出するセンサを任意の箇所(例えば位置情報発信機102自身の内部)に有している。位置情報発信機102が初期の設定位置から移動したことをセンサが検出すると、位置情報発信機102は自身を無効化し、位置情報の発信を中止する。
【0014】
設定端末103は、設定者が入力した位置情報発信機102の位置情報を、ネットワークを介して位置情報発信機102に送信する。この位置情報は、緯度/経度の座標であってもよいし、位置を識別するIDであってもよい。設定端末103は、ネットワークを介して位置情報認証装置104に接続されている。
【0015】
さらに、設定端末103は、位置情報発信機102を有効化にするよう要求する有効化要求を、位置情報認証装置104に対して送信する。詳細は後述の
図2を用いて改めて説明する。
【0016】
位置情報認証装置104は、位置情報発信機102が保持している位置情報が正しいか否かを認証し、正しい場合はその位置情報発信機102を有効化すべき旨を回答する装置である。位置情報認証装置104は、位置記録管理部105、設置場所DB106、発信機DB107を備える。
【0017】
設置場所DB106は、位置情報発信機102の固有ID(例えばシリアル番号)と設置場所についての情報を格納する。発信機DB107は、位置情報発信機102の発信機IDと位置情報発信機102の固有IDを紐付けて格納する。すなわち、位置情報発信機102の発信機IDが分かれば、発信機DB107に基づきこれに対応する固有IDを特定し、さらに設置場所DB106に基づきその設定場所を特定することができる。これらDBが格納する情報は、システム管理者があらかじめ入力しておく。
【0018】
位置記録管理部105は、設定端末103から受信した有効化要求に対し、設置場所DB106と発信機DB107が格納している情報を照合することにより、位置情報発信機102を有効化するか否かを判定する。
【0019】
位置情報発信機102の発信機IDについて補足する。発信機IDは、位置情報発信機102を個別に識別する点においては固有IDと共通であるが、位置情報発信機102の設置場所によって変化する点が異なる。例えば、位置情報発信機102の設置位置の座標とPRN番号(衛星番号)などによって発信機IDを表現することができるが、これに限られるものではない。
【0020】
位置情報発信機102と位置情報認証装置104は、あらかじめ公開鍵と秘密鍵のペアを共有しておくものとする。公開鍵は位置情報発信機102が保持し、秘密鍵は位置情報認証装置104が保持する。これら鍵ペアの使用方法については後述の
図2を用いて説明する。
【0021】
図2は、位置情報システム100の動作シーケンス図である。以下、
図2の各ステップについて説明する。
【0022】
(
図2:ステップS200)
位置情報発信機102は、あらかじめ自己の発信機IDを位置情報認証装置104の発信機DB107に登録しておく。本ステップは、自動的に実施してもよいし、登録者109(例えばシステム管理者)の指示にしたがって設定端末103を介して位置情報発信機102を操作することにより実施してもよい。
【0023】
(
図2:ステップS201)
登録者109は、位置情報発信機102の設置場所を計測し、計測された位置情報と位置情報発信機102の固有IDを、位置情報認証装置104の設置場所DB106に登録する。併せて、位置情報発信機102の固有IDと、ステップS200において発信機DB107に登録された発信機IDとを関連付け、発信機DB107にその関連付けを登録する。
【0024】
(
図2:ステップS202〜S204)
設定者108は、設定端末103を介して、位置情報発信機102に対して位置情報を設定する(S202)。設定端末103は、設定者108が入力した位置情報を、位置情報発信機102に送信する(S203)。位置情報発信機102は、受信した位置情報に基づいて自己の位置情報を設定し、自己の発信機IDを設定端末103に送信する(S204)。
【0025】
(
図2:ステップS205)
設定者108は、設定端末103を介して、位置情報発信機102を有効化するよう要求する指示を入力する。本ステップは、ステップS204に続いて位置情報発信機102が自動的に以後のステップを開始する場合は、省略することもできる。
【0026】
(
図2:ステップS206)
設定端末103は、位置情報発信機102を有効化するよう要求するリクエストを、位置情報認証装置104に対して送信する。このとき、ステップS204で受信した発信機IDと、ステップS203で位置情報発信機102に設定した位置情報とを併せて送信する。具体的には、例えば発信機IDと位置情報を所定のハッシュ関数などによってエンコードした情報(コード化位置情報)を送信する。
【0027】
(
図2:ステップS207)
位置情報認証装置104の位置記録管理部105は、設定端末103が送信した有効化要求を受信すると、設置場所DB106を参照して有効化要求が適正か否かを判定する。具体的には、設定端末103がステップS206において使用したものと同じハッシュ関数を用いて位置情報と発信機IDを取り出し、これを設置場所DB106および発信機DB107が格納している情報と照合することにより、発信機IDと位置情報の対応関係があらかじめ格納しておいた情報と一致するか否かを判定する。設定端末103から受信した情報が正しい場合は位置情報発信機102を有効化することを許可する旨を応答し、正しくない場合は有効化を許可しない旨を応答する。ここでは有効化を許可するものとして以下のステップを説明する。
【0028】
(
図2:ステップS207:補足)
位置記録管理部105は、位置情報発信機102を有効化する旨の応答と併せて、ステップS206で設定端末103から受け取ったコード化位置情報を秘密鍵によって暗号化した情報(暗号化位置情報)を応答する。
【0029】
(
図2:ステップS208:ステップ1)
設定端末103は、位置情報認証装置104より位置情報発信機102を有効化すべき旨の応答を受け取ると、その旨を示す有効化情報を位置情報発信機102へ送信する。このとき、位置情報認証装置104が送信した暗号化位置情報を併せて送信する。
【0030】
(
図2:ステップS208:ステップ2)
位置情報発信機102は、設定端末103から受け取った暗号化位置情報を、位置情報認証装置104との間で共有している暗号鍵によって復号し、復号によって得た位置情報が自己の位置情報と一致するか否かをチェックする。一致する場合は位置情報発信機102は自己を有効化し、一致しない場合は無効化する。
【0031】
(
図2:ステップS209)
設定者108は、設定端末103を介して、位置情報を発信開始するよう要求する指示を入力する。本ステップは、ステップS208に続いて位置情報発信機102が自動的に以後のステップを開始する場合は、省略することもできる。
【0032】
(
図2:ステップS210)
位置情報発信機102は、有効化された状態において、設定端末103から位置情報を送信開始するよう要求するリクエストを受信すると、位置情報の送信を開始する。
【0033】
<本発明のまとめ>
以上のように、本発明に係る位置情報システム100において、位置情報認証装置104は、あらかじめ保持している位置情報発信機102の位置情報と、設定端末103から受け取った位置情報発信機102の位置情報とが一致する場合に限り、位置情報発信機102を有効化することを許可する旨の応答を返信する。これにより、位置情報発信機102が保持する位置情報が正確である場合に限り、位置情報を発信させるように制御することができる。
【0034】
また、本発明に係る位置情報システム100において、位置情報発信機102と位置情報認証装置104は、あらかじめ共有している鍵ペアを用いて、位置情報を互いに送受信する。これにより、不正な位置情報認証装置104が介入することを防止できる。
【0035】
また、本発明に係る位置情報システム100において、鍵ペアによる認証は実質的に位置情報発信機102と位置情報認証装置104の間のみで実施され、設定端末103は情報を中継するのみである。そのため、設定端末103に特別な機能を実装する必要はないとともに、不正な設定端末103が介入する余地を排除することができる。
【符号の説明】
【0036】
100:位置情報設定システム、101:移動体端末、102:位置情報発信機、103:設定端末、104:位置情報認証装置。