(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記駆動機構は、第一ワーク支持部に設けられた第一ラック部材と、第二ワーク支持部に設けられた第二ラック部材と、前記第一及び第二ラック部材を噛合させた状態で前記第一及び第二ワーク支持部を走行させるピニオンと、前記第一ワーク支持部及び第二ワーク支持部を走行させる駆動源とを備えている請求項1に記載されたワーク搬送装置。
前記第一ワーク支持部と第二ワーク支持部には前記第一カム溝と第二カム溝に摺動可能に挿入されたカムフォロワがそれぞれ設けられている請求項1または2に記載されたワーク搬送装置。
前記油圧シリンダまたは電動シリンダは、前記第一ワーク支持部または第二ワーク支持部の揺動に従って揺動可能な支承部に支持されている請求項4に記載されたワーク搬送装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したワーク搬送装置では、個々のワークを支持部材で吊り下げて昇降移動と水平搬送とを行うため、ワークを昇降させるための昇降用シリンダと水平搬送するための水平搬送用シリンダとが配設され、更に昇降機構と水平搬送機構とが配設されるため、2種類の駆動機構が必要である上にワークの搬送経路が長くなるという欠点があった。しかも、それぞれワークを支持する2つの支持部材が接触することなくすれ違うために、水平搬送機構に加えて一対の板カムで外側に傾斜させてすれ違いを行う等、搬送機構の構成とワークの支持部材の動作が複雑であるという欠点があった。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みて、簡単な構成で単一の駆動機構によってワークのすれ違い搬送を行えるようにしたワーク搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるワーク搬送装置は、ワークを支持していて加工位置と交換位置との間をそれぞれ走行可能な第一ワーク支持部及び第二ワーク支持部と、第一ワーク支持部の走行をガイドする直線状の第一ガイド部材と、第二ワーク支持部の走行をガイドする直線状の第二ガイド部材と、第一ワーク支持部の走行と第一ガイド部材の揺動をガイドする第一カム溝と、第二ワーク支持部の走行と第二ガイド部材の揺動をガイドする第二カム溝と、一方のワーク支持部が加工位置にあるときに他方のワーク支持部が交換位置にあるように第一ワーク支持部と第二ワーク支持部を走行させる駆動機構とを備え、第一ワーク支持部と第二ワーク支持部がすれ違う際に互いに干渉しないように、第一カム溝と第二カム溝に互いに離間する方向に湾曲させた湾曲部を形成したことを特徴とする。
本発明によるワーク搬送装置によれば、交換位置と加工位置にある第一ワーク支持部と第二ワーク支持部を駆動機構によって第一カム溝及び第一ガイド部材と第二カム溝及び第二ガイド部材に沿って走行させると、第一ガイド部材が第一カム溝に沿って揺動するため、第一ワーク支持部は第一ガイド部材に沿って直線状に移動しつつ揺動され、第二ガイド部材が第二カム溝に沿って揺動するため、第二ワーク支持部は第二ガイド部材に沿って直線状に移動しつつ揺動され、第一ワーク支持部と第二ワーク支持部がすれ違う際、第一カム溝と第二カム溝の湾曲部で第一及び第二ガイド部材が外側に広がるため、互いに接触することなくすれ違うことができて、第一ワーク支持部と第二ワーク支持部はそれぞれ加工位置と交換位置に到達する。そして、第一ワーク支持部と第二ワーク支持部は加工位置と交換位置でワークが同一位置に至るから、それぞれワークの加工と交換を行える。
【0008】
また、駆動機構は、第一ワーク支持部に設けられた第一ラック部材と、第二ワーク支持部に設けられた第二ラック部材と、第一及び第二ラック部材を噛合させた状態で第一及び第二ワーク支持部を走行させるピニオンと、第一ワーク支持部及び第二ワーク支持部を走行させる駆動源とを備えていることが好ましい。
駆動機構の駆動源によって、第一ワーク支持部と第二ワーク支持部の一方を一方のガイド部材とカム溝に沿って走行させると、第一ラック部材と第二ラック部材がピニオンを介して相互に噛合しているため、ピニオンを介して他方のワーク支持部も他方のガイド部材とカム溝に沿って逆方向に同期して走行させることができる。或いは、駆動機構の駆動源によってピニオンを駆動させると、第一ラック部材と第二ラック部材がピニオンを介してそれぞれガイド部材とカム溝に沿って逆方向に同期して走行する。
そのため、第一及び第二ワーク支持部の一方が交換位置に到達すると他方は加工位置に到達する。
【0009】
また、第一ワーク支持部と第二ワーク支持部には、第一カム溝と第二カム溝に摺動可能に挿入されたカムフォロワがそれぞれ設けられていることが好ましい。
第一ワーク支持部と第二ワーク支持部は、それぞれカムフォロワが第一カム溝と第二カム溝に嵌挿されて摺動することで、揺動する第一ガイド部材と第二ガイド部材に沿って走行して、互いに干渉することなくすれ違って、加工位置と交換位置との間を互いに搬送される。
【0010】
また、駆動源は、第一ワーク支持部と第二ワーク支持部の一方を往復動させる油圧シリンダまたは電動シリンダであることが好ましい。
油圧シリンダまたは電動シリンダによって、第一ワーク支持部と第二ワーク支持部の一方を一方のカム溝及びガイド部材に沿って走行させると、他方のワーク支持部もピニオンを介して他方のガイド部材及びカム溝に沿って逆方向に走行させることができる。
そのため、単一の駆動源で第一ワーク支持部と第二ワーク支持部を加工位置と交換位置に搬送させることができる。
【0011】
また、駆動源は、ピニオンを正逆回転させるモータであってもよい。
モータによってピニオンを正逆回転させることで、ピニオンを介して歯合する第一ラック部材を備えた第一ワーク支持部と第二ラック部材を備えた第二ワーク支持部とを逆方向に走行させることができる。
【0012】
また、油圧シリンダまたは電動シリンダは、第一ワーク支持部または第二ワーク支持部の揺動に従って揺動可能な支承部に支持されていてもよい。
油圧シリンダまたは電動シリンダを駆動源として伸縮させることで第一ワーク支持部または第二ワーク支持部をガイド部材及びガイド溝に沿って揺動しながら走行するため、油圧シリンダまたは電動シリンダも追従して支承部によって揺動することで第一ワーク支持部または第二ワーク支持部をガイド部材に沿ってスムーズに走行させることができる。
【0013】
本発明によるワーク搬送装置の歯合わせ機構は、外周面に加工するための歯が配列されたワークを回動可能に保持する第一及び第二支持部の受け部と、ワークの歯と歯合可能な切刃を配列させた回転可能なカッタと、受け部を弾性部材によって揺動可能に支持すると共に回動可能に支持する軸部とを備え、前記ワークをカッタに押し付けることでワークの歯とカッタの切刃を歯合わせできるようにしたことを特徴とする。
第一または第二支持部のワークを保持する受け部が加工位置に搬送された状態で、ワークがカッタに押し付けられ、ワークが転がってワークの歯とカッタの切刃とを歯合わせできる。また、ワークの歯とカッタの切刃との山部同士が当接して歯合わせできない場合でも、荷重によってワークを保持する受け部が軸部を中心に弾性部材で揺動されるため、ワークの歯の位置がずれて歯合わせ可能である。
そして、カッタを回転させることでワークの歯を切削加工することができる。
【0014】
また、本発明によるワーク搬送装置の歯合わせ機構は、上述したカッタと歯合わせされたワークに対して、テーパ部を有する取付軸を備えた取付具を設け、取付軸をワークの中央孔に挿入してテーパ部で中央孔の上側エッジを押すことで受け部からワークを持ち上げて支持するようにしたことを特徴とする。
取付具の取付軸でワークを受け部から持ち上げて離間させた状態で、カッタを回転させてワークの歯を切削加工でき、その際、ワークは受け部から離間しているのでワークと受け部が接触して損傷するおそれがない。
【発明の効果】
【0015】
本発明によるワーク搬送装置によれば、第一ワーク支持部と第二ワーク支持部がすれ違う際に、直線状の第一ガイド部材及び第二ガイド部材に沿って走行しつつ湾曲部を形成した第一及び第二カム溝によって互いに干渉しないように離間して搬送されるので、単一の駆動機構によって第一及び第二ワーク支持部のすれ違い搬送と交換位置と加工位置との間の搬送を行うことができる。しかも、ワーク搬送装置の構成が簡単で製造コストを低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態によるワーク搬送装置について添付図面により説明する。
図1は実施形態によるワーク搬送装置1を示すものであり、ワーク搬送装置1は、交換位置Aで加工済みのワークWを未加工のワークWに交換して加工位置Bまで搬送する一方、加工位置Bにある未加工のワークWをカッタで加工した後、交換位置Aへ戻してワークWを交換するものである。
図1乃至
図3に示すワーク搬送装置1は、基板2上に、ワークWを支持して搬送と加工をするための第一ワーク支持部3と第二ワーク支持部4とを並列に備えており、更に各ワーク支持部3,4が交換位置Aと加工位置Bとの間で往復走行することをガイドする第一ガイド部材及び第二ガイド部材として直線状の第一ガイドレール5と第二ガイドレール6を備えている。第一ワーク支持部3と第二ワーク支持部4は、その下面に形成された凹部によってそれぞれ第一ガイドレール5と第二ガイドレール6に摺動可能に嵌合されている。
【0018】
また、基板2には、略くの字形状をなす第一カム溝8と第二カム溝9が線対称に形成され、第一カム溝8と第二カム溝9は、第一ワーク支持部3と第二ワーク支持部4を接触することなくすれ違いさせるために外側に湾曲する湾曲部8a,9aをそれぞれ形成している。
また、第一ワーク支持部3と第二ワーク支持部4の下部には、第一カム溝8と第二カム溝9にそれぞれ摺動可能に嵌挿されるカムフォロワ10、11が形成されている。第一ワーク支持部3及び第二ワーク支持部4と基板2との間には、第一及び第二ガイドレール5,6がその長手方向に直交する方向に揺動可能に配設されている。
【0019】
そして、第一ワーク支持部3のカムフォロワ10は第一ガイドレール5の内側に配設され、第二ワーク支持部4のカムフォロワ11は第二ガイドレール6の内側に配設されている。そのため、第一ワーク支持部3と第二ワーク支持部4が第一カム溝8と第二カム溝9に沿って摺動する際、第一ガイドレール5と第二ガイドレール6はカムフォロワ10、11と上記凹部に押されてその長手方向に直交する方向に揺動させられる。
なお、本明細書において、第一ワーク支持部3や第二ワーク支持部4が交換位置Aから加工位置B方向へ移動する方向を前方、前進、前部等といい、加工位置Bから交換位置Aへ移動する方向を後方、後退、後部等というものとする。
【0020】
第一ワーク支持部3は、
図1乃至
図3に示すように、基部13Aに受け面14aを備えた受け部14Aが設けられ、受け面14a上に例えば加工途中の略歯車形状のワークWが載置されているが、図では略リング状に省略して表示されている。受け面14aはワークWの下側半円弧状部分を受ける凹曲面形状を有していてワークWの略下半分が載置される。
図3に示すように、基部13A上に固定する受け部14Aは基部13Aの内側(第二ワーク支持部4側)に偏って位置している。
図2及び
図3に示すように、基部13Aには連結部15Aを介して棒状の支持部材16Aが連結されており、支持部材16Aの長手方向の先端側の内側にはラック18aが形成されたラック部材18Aが固定されている。
【0021】
第二ワーク支持部4も第一ワーク支持部3と線対称な構成を有しており、対称的に配設された各部材として、基部13B、ワークWを保持する受け部14B,連結部15B,支持部材16B、支持部材16Bの先端内側に固定されていてラック18bを形成したラック部材18Bが設けられている。
そして、第一ワーク支持部3と第二ワーク支持部4はいずれか一方が交換位置Aにあり、他方が加工位置Bにある場合、
図3に示すように、各受け部14A,14B上のワークWは互いに同一直線状にあるものとする。また、第一ワーク支持部3と第二ワーク支持部4のラック部材18A、18Bはラック18a、18bが内側を向いて互いに対向する位置にある。
【0022】
第一ワーク支持部3と第二ワーク支持部4の各ラック部材18Aと18Bの間には、各ラック部材18A,18Bの走行範囲の中央にピニオン19が回転可能に支持されている。そして、各ラック部材18A,18Bのラック18a、18bがピニオン19に両側から噛合されている。
また、基板2の前方側領域にはボックス20が配設され、このボックス20内に少なくともラック部材18A,18B及びピニオン19が配設されている。更に、ボックス20内には交換位置Aから加工位置Bに向けて走行する支持部材16A,16Bの一部が収容される。ボックス20は、加工時にワークWから飛散する切り粉や塵等がラック部材18A,18Bやピニオン19等に付着しないように保護している。
【0023】
しかも、第一カム溝8と第二カム溝9は、第一ワーク支持部3の受け部14Aに支持されたワークWと第二ワーク支持部4の受け部14Bに支持されたワークWとが、交換位置Aと加工位置Bとでそれぞれ同一位置にあるように湾曲して形成されている。
また、第一カム溝8と第二カム溝9は、少なくとも交換位置Aと加工位置Bの間、好ましくは各ラック部材18A,18Bの長手方向の全長において、各ラック18a、18bが同時にピニオン19に噛合するように、全体に線対称に湾曲して形成されている。
【0024】
また、第一ワーク支持部3と第二ワーク支持部4の駆動源として、例えばボックス20内で第一ワーク支持部3の支持部材16Aまたはラック部材18Aの上方に油圧シリンダ22が設置されている。油圧シリンダ22は、その筒状の本体から突出して伸縮可能なロッド23の自由端がワーク支持部3の連結部15Aに回転可能に支持されており、ロッド23とは反対側の端部は油圧シリンダ22を揺動可能に支持する支承部24によって支持されている。そのため、油圧シリンダ22は第一ワーク支持部3の揺動に追従して支承部24を中心に揺動しながら、ロッド23を伸縮させて第一ワーク支持部3を往復動させる。
支承部24はボックス20の底板20aに支柱を介して取り付けられているが、これに代えて、支持部材16A及びラック部材18Aの走行の邪魔にならないようにボックス20の天井に取り付けられていてもよい。
【0025】
図1に示すボックス20の後端側の面20bは、第一及び第二ワーク支持部3,4とラック部材18A,18Bを仕切る領域にあり、第一ワーク支持部3の揺動範囲に対応するロッド23の揺動範囲を切除した窓部20cが設けられている。ロッド23の自由端が回転可能に支持された第一ワーク支持部3の連結部15Aには支持部材16Aの自由端が連結されている。
そのため、油圧シリンダ22のロッド23を収縮させると第一ワーク支持部3が交換位置Aから前進してラック部材18Aのラック18aが歯合するピニオン19を回転させ、このピニオン19に噛合する第二ワーク支持部4のラック部材18Bのラック18bが後退する方向に移動して第二ワーク支持部4を加工位置Bから交換位置Aに向けて後退させる。
【0026】
本実施形態によるワーク搬送装置1は上述の構成を備えており、次にワークWの搬送方法及び加工方法を
図4及び
図5を中心に説明する。
図4(a)において、ワーク搬送装置1は、未加工のワークWを受け部14Aに保持した第一ワーク支持部3が交換位置Aにあり、加工済みのワークWを受け部14Bに保持した第二ワーク支持部4が加工位置Bにあるものとする。交換位置Aから未加工のワークWを加工位置Bに搬送すると共に、加工済みのワークWを加工位置Bから交換位置Aに搬送する動作を説明する。
【0027】
まず、油圧シリンダ22を作動させてロッド23を収縮させると、
図4(b)に示すように、ロッド23に連結された連結部15Aを介して第一ワーク支持部3が交換位置Aから前進移動する。すると、第一ワーク支持部3に固定されたカムフォロワ10は第一カム溝8に沿って前方へ摺動しながら湾曲部8aに沿って外側に移動する。第一ワーク支持部3の外側移動によって、第一ガイドレール5も外側に開くと共にロッド23の収縮に応じて第一ワーク支持部3は直線状の第一ガイドレール5に沿って前進する。
【0028】
第一ワーク支持部3の前進によって、ラック部材18Aのラック18aが歯合するピニオン19を回転させるため、このピニオン19に噛合するラック部材18Bのラック18bによって第二ワーク支持部4が後退移動する。そのため、第二ワーク支持部4の受け部14Bは、これに固定されたカムフォロワ11が第二カム溝9の外側に湾曲する湾曲部9aにガイドされて後方へ摺動するので、第二ガイドレール6も緩やかに外側に揺動する。
【0029】
そして、
図4(c)において、第一ワーク支持部3の受け部14Aと第二ワーク支持部4の受け部14Bがすれ違う時、カムフォロワ10、11は第一カム溝8と第二カム溝9の互いに外側に湾曲する湾曲部8a、9aの前方側の傾斜部分に位置する。即ち、第一ワーク支持部3のカムフォロワ10が第一カム溝8の湾曲部8aを乗り越えた傾斜部にあり,第二ワーク支持部4のカムフォロワ10が第二カム溝9の湾曲部9aに近づく傾斜部にあることで、第一ガイドレール5及び第二ガイドレール6の後端側が最も開く傾斜状態になる。
そのため、第一ガイドレール5及び第二ガイドレール6にガイドされる第一ワーク支持部3及び第二ワーク支持部4の各受け部14A、14Bは、並列する位置で互いに外側に傾斜しているため非接触ですれ違うことができる。
【0030】
その後、
図5(a)に示すように、第一ワーク支持部3の受け部14Aのカムフォロワ10が第一カム溝8の湾曲部8aを通り過ぎ、第二ワーク支持部4の受け部14Bのカムフォロワ11が更に第二カム溝9の湾曲部9aに到達するため、各受け部14A,14Bは第一及び第二ガイドレール5,6に沿って摺動して互いに前後方向に離れていく。しかも、第一及び第二ガイドレール5,6は互いの傾斜角度を小さくする。
そして、
図5(b)に示すように、第一ワーク支持部3の受け部14Aはカムフォロワ10が第一カム溝8の湾曲部8aの傾斜部を脱して直線状の前端部に到達することで、受け部14Aは第二ワーク支持部4側に近づく。また、第二ワーク支持部4の受け部14Bは、カムフォロワ11が第二カム溝9の湾曲部9aを乗り越えて直線状の後端部に到達することで、受け部14Bは第一ワーク支持部3側に近づく。
【0031】
そして、油圧シリンダ22のロッド23が収縮した停止位置で、第一ワーク支持部3の受け部14Aの未加工ワークWは加工位置Bに到達し、第二ワーク支持部4の受け部14Bの加工済みワークWは交換位置Aに到達する。この位置で、第一ガイドレール5と第二ガイドレール6は互いに平行な状態になり、第一ワーク支持部3と第二ワーク支持部4は互いに長手方向にずれて平行になり、第一ワーク支持部3の未加工ワークWと第二ワーク支持部4の加工済みワークWが同一直線状に並ぶ。
しかも、加工位置B及び交換位置Aにおいて、第一ワーク支持部3のワークWと第二ワーク支持部4のワークWは、互いに搬送前の交換位置A及び加工位置Bと同一位置に停止する。そのため、交換位置Aにある第二ワーク支持部4の加工済みワークWは新たな未加工ワークWに交換され、加工位置Bにある第一ワーク支持部3の未加工ワークWは加工に供される。
【0032】
その後、収縮状態にある油圧シリンダ22のロッド23を伸張させることで、上述した動作と逆の動作によって、第一ワーク支持部3は押されて第一カム溝8及び第一ガイドレール5に沿って加工位置Bから交換位置Aに搬送され、第二ワーク支持部4はピニオン19によって第二カム溝9及び第二ガイドレール6に沿って交換位置Aから加工位置Bに搬送されることになる。
【0033】
上述のように本実施形態によるワーク搬送装置1によれば、それぞれワークWを支持する第一ワーク支持部3及び第二ワーク支持部4は、油圧シリンダ22によって、外側への湾曲部8a、9aを形成した第一カム溝8及び第二カム溝9と、第一ガイドレール5及び第二ガイドレール6に沿って、ワークWを交換位置Aと加工位置Bとの間で互いに干渉することなくすれ違いながら搬送することができる。しかも、ワーク搬送装置1の構成が簡単で製造コストが低廉である上にシンプルな動作ですれ違い搬送することができるので作業効率が良い。
また、第一ワーク支持部3と第二ワーク支持部4のすれ違い搬送に際し、互いに湾曲部8a、9aを有して線対称に配設された第一カム溝8及び第二カム溝9に沿って揺動する第一及び第二ガイドレール5,6に沿って摺動させるだけで、受け部14A及び14Bは互いに干渉することなくすれ違うことができる。
【0034】
また、第一ワーク支持部3と第二ワーク支持部4は、湾曲形成された第一カム溝8と第二カム溝9に沿ってカムフォロワ10、11を摺動させながら、直線状の第一及び第二ガイドレール5,6に沿って走行することで、各受け部14A,14Bをすれ違い搬送できるから、第一及び第二ワーク支持部3,4にかかる荷重を、第一及び第二カム溝8,9と第一及び第二ガイドレール5,6によって分散させることができて、搬送時に各カムフォロワ10,11にかかる加速度が緩やかになる。
また、第一ワーク支持部3を往復動させる油圧シリンダ22を設けて、ピニオン19を介して第二ワーク支持部4を連動させるようにしたから、単一の駆動源によって二つのワーク支持部3,4を逆方向に搬送させることができる。
【0035】
次に、ワーク搬送装置1で加工位置Bに搬送されたワークWを切削加工する歯合わせ機構26について
図6及び
図7により説明する。
図6(a)〜(c)に示す歯合わせ機構26は、例えば加工位置Bに停止された第一ワーク支持部3の受け部14A(または第二ワーク支持部4の受け部14B)に保持されたワークWを切削加工して歯車を製作するものである。加工位置Bの上方に待機するカッタ27はワークWの形成すべき歯25と略同一形状で同一ピッチの歯形状の切刃27aを有しており、その外径はワークWの外径より大きいものとする。
【0036】
ワークWを保持する受け部14Aは、基板2との間にバネ部材28が連結され、バネ部材28によって受け部14Aを支持する軸部29を中心に上下方向に揺動可能に支持されている。受け部14Aの受け面14aはその内径がワークWの外径より若干大きい(例えば1mm程度の差)ものとし、ワークWは凹曲面形状の受け面14aに載置されているだけであるから、カッタ27によって押圧されると歯25と切刃27aが互いに擦られることでワークWは受け面14a内で滑ってわずかに回転可能とする。
【0037】
上述の構成を備えた歯合わせ機構26において、
図6(a)及び(b)に示すように、ワークWを支持する第一ワーク支持部3の受け部14Aが加工位置Bに搬送されると、待ち構えていたカッタ27の切刃27aに当接する。そして、
図6(c)に示すように、受け部14Aで保持されたワークWの歯の山が転がってカッタ27の切刃27aの谷に噛み合うことで歯合わせが行われる。
なお、ワークWとカッタ27との歯合わせの完了はワークWの加工位置Bでの位置決めを図示しないセンサーで検知することで行える。これにより、カッタ27を回転可能とする。
【0038】
また、搬送されるワークWの歯の山とカッタ27の切刃27aの山が当接すると歯合わせできないが、カッタ27の切刃27aの山にワークWの歯の山が当接することでワークW及び受け部14Aを下方に押し込む。これによって、
図6(d)に示すように、受け部14Aを支持するバネ部材28が弾性変形して、受け部14Aが軸部29を中心に揺動させられ、ワークWの歯がずれて転がることでカッタ27の切刃27aと噛み合って歯合わせされる。1回で歯合わせできなくても、受け部14Aを加工位置から外しては加工位置Bまで搬送させる動作を1〜数回行うことでワークWの歯とカッタ27の切刃27aが歯合わせされる。
【0039】
また、バネ部材28と軸部29による揺動によってもワークWの歯の山とカッタ27の切刃27aの山が当接して歯合わせできない場合、固定されているカッタ27に対して加工位置Bへ搬送された受け部14Aを加工位置Bから変換位置A方向に若干戻し、再度加工位置Bへ搬送する動作を1〜数回繰り返すことで、ワークWの歯がずれて転がり、カッタ27の切刃27aと噛み合わせできるようになる。
【0040】
こうしてワークWとカッタ27の歯合わせが完了すると、次に
図7(a)に示すように、ワークWの片側に孔部31aを有するホルダ31の当接面を当接させ、対向する側から取付具32の取付軸33をワークWの中央孔34内に挿入する。取付軸33は軸方向中間部にテーパ部35を形成すると共にその先端側をワークWの中央孔34より小径の先端部33aとした段付きの軸部である。
ワークWの中央孔34に取付軸33の先端部33aが挿入されると、
図7(b)に示すように、テーパ部35が中央孔34の上側エッジに当接しながら押すことでテーパ部35にガイドされたワークWを若干受け面14aから持ち上げることができる。
【0041】
これによって
図7(c)に示すように、ワークWは受け部14Aの受け面14aに対してわずかな間隙だけ離間する。この状態でワークWの歯25と切刃27aが噛み合ったカッタ27を回転させることで、ワークWの歯25を所望の形状に切削加工することができる。そして、ワークWの加工終了後に取付軸33を中央孔34から引き抜くと、ワークWは受け部14の受け面14aに落下するので、交換位置Aに搬送可能となる。
【0042】
上述した本実施形態によるワーク搬送装置1の歯合わせ機構26によれば、加工位置Bに移動するワークWの歯に対して待ち構えるカッタ27の切刃27aを自動的に噛み合わせることができる。そして、ワークWに取付具32の取付軸33を挿入することでテーパ部35によってワークWを自動的に受け部14Aの受け面14aから持ち上げて離間できるので、カッタ27を回転させてワークWの歯25をカッタ27の切刃27aで切削加工することができる。
そのため、本実施形態による歯合わせ機構26によって、簡単且つ自動的にワークWとカッタ27との歯合わせを行うと共にカッタ27を回転させてワークWの切削加工を行える。
【0043】
なお、本発明によるワーク搬送装置1は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜の変更や置き換えが可能である。
例えば、上述した実施形態によるワーク搬送装置1では、第一カム溝8と第二カム溝9を各一本に形成したが、分割することで複数のカム溝を所定間隔で分離して形成してもよい。この場合、第一及び第二ワーク支持部3、4に設けるカムフォロワ10,11は分割した第一カム溝8と第二カム溝9の各カム溝毎に1本以上嵌挿するように複数設けることが好ましい。
【0044】
また、ワーク搬送装置1における第一及び第二ワーク支持部3,4の駆動源として、第一ワーク支持部3を往復動させる油圧シリンダ22を、ロッド23と反対側の端部で支承部24によって揺動可能に支持し、ロッド23の自由端で連結部15Aに回転可能に支持したが、第二ワーク支持部4上に油圧シリンダ22を配設して、第二ワーク支持部4を往復動させるように構成してもよい。また、油圧シリンダ22に代えて電動シリンダを設置してもよい。
また、第一及び第二ワーク支持部3,4の駆動源として、油圧シリンダ22や電動シリンダに代えて、ピニオン19を正逆回転させるモータをボックス20の底部20aに設置してもよい。モータの回転によってラック部材18A、18Bを介して第一及び第二ワーク支持部3,4を逆方向に同期搬送できる。
【0045】
また、上述の実施形態では、ワーク搬送装置1の第一カム溝8と第二カム溝9を形成した基板2を下側にのみ設けて、第一ワーク支持部3及び第二ワーク支持部4に設けたカムフォロワ10、11を嵌挿させて第一ガイドレール5及び第二ガイドレール6に沿って摺動させたが、基板2の第一カム溝8及び第二カム溝9を形成した部分の上側にも同一形状の第一カム溝8と第二カム溝9を形成した基板を設けてもよい。これによって、カムフォロワ10、11を上下一対の第一カム溝8及び第二カム溝9に嵌挿して摺動させることができるので、第一ワーク支持部3及び第二ワーク支持部4の走行の安定性が一層向上する。
また、上述した実施形態では、カムフォロワ10,11は第一及び第二ワーク支持部3,4における受け部14A、14Bの後端部に設けたが(
図1参照)、他の位置に設けてもよく、或いは複数設けてもよい。