特許第5960042号(P5960042)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5960042
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/50 20060101AFI20160719BHJP
   F16C 11/06 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   B60N2/50
   F16C11/06 Z
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-280037(P2012-280037)
(22)【出願日】2012年12月21日
(65)【公開番号】特開2014-121997(P2014-121997A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2015年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000198271
【氏名又は名称】株式会社ソミック石川
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】高木 純
(72)【発明者】
【氏名】浦道 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】松浦 規夫
(72)【発明者】
【氏名】北田 達哉
(72)【発明者】
【氏名】瀧井 正明
【審査官】 小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−244509(JP,A)
【文献】 実開平05−066325(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0280302(US,A1)
【文献】 実開昭59−091929(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00−2/72
F16C 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付部に取り付けられるシート本体と、
このシート本体と前記被取付部側とのいずれか一方に連結されるハウジング、及びこのハウジングに回動可能に保持されるボール部及びこのボール部から突出し前記シート本体と前記被取付部側との他方に連結されるスタッド部を有するボールスタッドを備えた少なくとも1つのボールジョイントと
前記シート本体と前記被取付部側とのいずれか一方と前記ボールジョイントのハウジングとを連結して、前記ボールジョイントを前記スタッド部の軸方向に沿って付勢する板ばねと
を具備したことを特徴とするシート
【請求項2】
ボールジョイントは、
ハウジングに収容されボールスタッドのボール部を回動可能に受けるベアリングシートと、
このベアリングシートと前記ボール部との間に介在される潤滑剤とを備えている
ことを特徴とする請求項記載のシート。
【請求項3】
ボールジョイントは、スタッド部の軸方向を水平方向に沿わせて配置されている
ことを特徴とする請求項1または2記載のシート。
【請求項4】
ボールジョイントは、スタッド部の軸方向を上下方向に沿わせて配置されている
ことを特徴とする請求項1または2記載のシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被取付部に取り付けられるシート本体を備えたシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車、船舶、航空機などの各種輸送機械、あるいは作業機械などの乗物に設置されるシートは、衝撃に対して外れないように被取付部に対して強固に固定されている。一方で、このような乗物には、使用中に外部や内部から様々な振動が加わるため、このような振動が強固に固定されているシートに伝わって着座者に不快感を与えないように、振動を減衰あるいは遮断することが求められる。
【0003】
このようなシートとして、例えば、シート本体と、このシート本体が取り付けられる被取付部との間にゴムなどの弾性体を緩衝材として介在させることで、緩衝材の弾性変形によって機械の内外からの振動の吸収を図る構成が知られている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【0004】
具体的に、特許文献1記載の構成では、シート本体と被取付部とを連結する連結体そのものを弾性体により形成している。また、特許文献2記載の構成では、シート本体と被取付部とを連結する連結体を覆って弾性体を配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平3−34943号公報(第5−6頁、第1図)
【特許文献2】実開平2−6634号公報(第2−4頁、第1図及び第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1記載の構成の場合には、事故時などにシート本体が被取付部から外れないように、耐荷重性を確保した弾性体を用いる必要があるとともに、弾性体自体の減衰能力にも限界があることから、充分な振動吸収性能を得ることが容易でなく、一定以上の振動を減衰、吸収することが容易でない。上述の特許文献2記載の構成の場合も同様に、弾性体自体の減衰能力の限界によって、充分な振動吸収性能を得ることが容易でない。そして、このような課題は、乗物用のシートだけでなく、被取付部から振動が伝達される任意のシートに対しても同様に生じる。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、シート本体と被取付部との固定強度を確保しつつ、被取付部側からの振動に起因する着座時の不快感を抑制できるシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載のシートは、被取付部に取り付けられるシート本体と、このシート本体と前記被取付部側とのいずれか一方に連結されるハウジング、及びこのハウジングに回動可能に保持されるボール部及びこのボール部から突出し前記シート本体と前記被取付部側との他方に連結されるスタッド部を有するボールスタッドを備えた少なくとも1つのボールジョイントと、前記シート本体と前記被取付部側とのいずれか一方と前記ボールジョイントのハウジングとを連結して、前記ボールジョイントを前記スタッド部の軸方向に沿って付勢する板ばねとを具備したものである。
【0009】
求項記載のシートは、請求項記載のシートにおいて、ボールジョイントは、ハウジングに収容されボールスタッドのボール部を回動可能に受けるベアリングシートと、このベアリングシートと前記ボール部との間に介在される潤滑剤とを備えているものである。
【0010】
請求項記載のシートは、請求項1または2記載のシートにおいて、ボールジョイントは、スタッド部の軸方向を水平方向に沿わせて配置されているものである。
【0011】
請求項記載のシートは、請求項1または2記載のシートにおいて、ボールジョイントは、スタッド部の軸方向を上下方向に沿わせて配置されているものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載のシートによれば、シート本体と被取付部側とのいずれか一方にボールジョイントのハウジングを連結するとともに、ハウジングに回動可能に保持されたボールスタッドのボール部から突出するスタッド部をシート本体と被取付部側との他方に連結し、かつ、シート本体と被取付部側とのいずれか一方とボールジョイントのハウジングとを板ばねにより連結して、ボールジョイントをスタッド部の軸方向に沿って付勢することにより、シート本体と被取付部との固定強度を確保しつつ、ボールジョイントと板ばねとによって被取付部側からの振動を確実に減衰するとともにシート本体に伝達される振動の周波数を不快に感じにくい周波数へと確実にシフトさせることができ、被取付部側からの振動に起因する着座時の不快感を抑制できる。
【0013】
求項記載のシートによれば、請求項記載のシートの効果に加えて、ボールジョイントのハウジングに、ボールスタッドのボール部を回動可能に受けるベアリングシートを収容するとともに、このベアリングシートとボール部との間に潤滑剤を介在させることにより、これらベアリングシートと潤滑剤との特性などを適宜設定することによって、被取付部側からの振動の周波数を不快に感じにくい周波数へとより確実にシフトさせることができる。
【0014】
請求項記載のシートによれば、請求項1または2記載のシートの効果に加えて、ボールジョイントを、スタッド部の軸方向を水平方向に沿わせて配置することにより、ボールジョイントがシート本体の重量を支持せず、耐衝撃性をより向上できる。
【0015】
請求項記載のシートによれば、請求項1または2記載のシートの効果に加えて、ボールジョイントを、スタッド部の軸方向を上下方向に沿わせて配置することにより、被取付部に対してボールジョイントとシート本体とを上側から順次組み付けることができるので、製造性をより向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一関連技術のシートを示し、(a)は一部を拡大して示す斜視図、(b)はシートの一部を示す斜視図である。
図2】同上シートのボールジョイントを示し、(a)はその断面図、(b)はその斜視図である。
図3】同上シートを示す斜視図である。
図4】本発明の実施の形態のシートを示し、(a)は一部を拡大して示す斜視図、(b)はシートの一部を示す斜視図である。
図5】同上シートのボールジョイントを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一関連技術の構成を図1ないし図3を参照して説明する。
【0018】
図3において、11はシートを示し、このシート11は、例えば自動車などの車両に用いられる車両用シート(輸送機械(乗物)用シート)である。
【0019】
そして、このシート11は、シート本体13と、このシート本体13を車体側の被取付部14に取り付けるための単数または複数、本関連技術では4つのボールジョイント15とを備えている。なお、以下、前後、両側、上下などの方向は、例えば車両の直進方向を基準とする。
【0020】
シート本体13は、背凭れ部であるシートバック21と、着座部であるシートクッション22とを有している。
【0021】
シートバック21は、シートクッション22に着座した使用者の後部である背後を支持するもので、例えば金属、あるいは樹脂などの部材により形成されたバック基体としてのバックフレーム24が、クッション性を有する例えば樹脂製などのバック被覆部としての図示しないバックパッド部により被覆されて構成されている。また、このシートバック21の上端部には、必要に応じてヘッドレストが取り付けられている。
【0022】
バックフレーム24は、両側をなす側部バックフレーム27,27と、これら側部バックフレーム27,27の上端部間を連結する上部バックフレーム28とを一体に備えるとともに、側部バックフレーム27,27の下端部間に亘って、図示しないリクライニング装置の一部を構成する回動軸であるパイプ状のリクライニング軸29が設けられ、四角形枠状となっている。また、側部バックフレーム27,27の上下方向の中間部には、補強用の補強フレーム30が設けられている。さらに、上部バックフレーム28には、ヘッドレストの取り付け用の角筒状の取付フレーム31,31が上下方向に沿って一体的に取り付けられている。そして、シートバック21(バックフレーム24)は、リクライニング軸29を介してシートクッション22に対して前後方向に回動可能に取り付けられている。
【0023】
また、シートクッション22は、例えば金属、あるいは樹脂などの部材により形成されたシート側取付部としてのクッション基体であるクッションフレーム33が、クッション性を有する例えば樹脂製などのクッション被覆部としての図示しないクッションパッド部により被覆されて構成されている。
【0024】
クッションフレーム33は、両側をなすシート側取付部本体としての側部クッションフレーム36,36と、これら側部クッションフレーム36,36の前端部間を連結する前部クッションフレーム37と、これら側部クッションフレーム36,36の後端部間を連結する後部クッションフレーム38とを備え、四角形枠状となっている。
【0025】
また、被取付部14は、例えば図示しない車両のフロアに固定された例えば前後左右4つの連結固定部としてのレッグ部41と、これらレッグ部41に設けられたスライド装置42とを備えたレッグフレームである。また、スライド装置42は、前後に位置するレッグ部41,41間に亘ってそれぞれ設けられた第1のレール部である下部レール部44と、これら下部レール部44,44間に左右方向に沿って設けられた前後一対の第2のレール部である上部レール部45,45とを備え、下部レール部44,44に沿って、上部レール部45,45が互いに平行を保った状態で前後方向にスライド可能となっている。そして、上部レール部45,45が、それぞれボールジョイント15,15を介してクッションフレーム33の側部クッションフレーム36,36と連結されている。
【0026】
また、各ボールジョイント15は、可動部材としてのボール側部材である金属製などのボールスタッド51と、固定部材としてのボール受け側部材である金属製などのハウジング52と、このハウジング52とボールスタッド51との間に介在される合成樹脂製などのベアリングシートであるボールシート53とを備え、側部クッションフレーム36,36と上部レール部45,45との各交差位置にて、側部クッションフレーム36,36の内側部、及び上部レール部45,45の上部にそれぞれ配置されている。なお、このボールジョイント15は、必要に応じて、ボールスタッド51とハウジング52とに亘ってダストカバーを取り付けてもよい。
【0027】
ボールスタッド51は、例えば鉄やアルミニウムなどの剛性を有する部材により一体に形成され、略球状の球頭部であるボール部55と、このボール部55から突出する例えば金属製などの長手状の丸軸状の軸部であるスタッド部56とを備えている。
【0028】
ボール部55は、ボールシート53の内部に摺動(回動)可能に保持された状態でハウジング52に取り付けられている。
【0029】
また、スタッド部56は、例えばボール部55の中心位置を軸心が通る位置にてボール部55から突出している。さらに、このスタッド部56の外周には、ボール部55から離間された基端側寄りの位置に、取付座部である鍔部56aが突設されている。そして、このスタッド部56は、被取付部14の上部レール部45に取り付け固定された取付ブラケット58と連結されている。
【0030】
ここで、取付ブラケット58は、上部レール部45の上面に取り付けられる板状の取付ブラケット本体58aと、この取付ブラケット本体58aの上部に略垂直に突出する前後方向に沿う板状のスタッド部取付部58bとを一体に備えている。そして、この取付ブラケット58は、取付ブラケット本体58aがボルトなどの取付部材59によって上部レール部45に一体的に固定されている。また、スタッド部取付部58bには、スタッド部56が両側方向外側から内側へと水平状に、すなわちこのスタッド部取付部58bに対して略垂直な方向に沿って挿通されており、このスタッド部56が、鍔部56aがスタッド部取付部58bに当接した状態で図示しないナットなどを介して一体的に取り付け固定されている。したがって、各ボールジョイント15は、スタッド部56(ボールスタッド51)及びハウジング52の軸方向を水平方向に沿わせて、すなわち横置き状態で配置されている。
【0031】
また、ハウジング52は、ソケットとも呼ばれるもので、例えば鉄やアルミニウムなどの剛性を有する部材により円筒状に形成されている。このハウジング52は、ボールシート53を介してボール部55を保持するボール受け部である内室61と、この内室61に連通する(一方及び他方の)開口62,63とを有している。さらに、このハウジング52の外周には、取付部材であるブラケット64が一体的に設けられており、このブラケット64が側部クッションフレーム36に取り付けられている。
【0032】
また、開口62は、ハウジング52と同軸に位置している。さらに、この開口62には、ボールスタッド51のスタッド部56が挿通され、ボール部55の一部とスタッド部56とがハウジング52の外部に露出している。そして、この開口62の周縁部は、中心側へとかしめ変形などにより湾曲されてボールシート53を内室61に保持するための保持部66となっている。
【0033】
また、開口63は、ハウジング52と同軸に位置している。さらに、この開口63は、閉塞部材である円形板状のプラグ68によって覆われて閉塞されている。このプラグ68は、円形板状に形成されており、外周縁部が開口63の外方に形成された取付段部70に取り付けられているとともに、この取付段部70の外縁部を内方へとかしめ変形させた保持部であるかしめ変形部71によって保持されることで、ハウジング52に対して固定されている。
【0034】
また、ブラケット64は、ハウジング52の周囲に嵌合される円環状の嵌合部64aと、この嵌合部64aからハウジング52の径方向に沿って直線状に突出する四角形板状のフレーム取付部64bとを一体に備えている。このフレーム取付部64bは、例えばボルトなどの図示しない固定部材により、側部クッションフレーム36の内側に例えば溶接された金属製などの台座部72などに対して一体的に取り付け固定されている。
【0035】
また、ボールシート53は、例えば合成樹脂により略円筒状に一体成形されている。すなわち、このボールシート53は、開口径寸法がボール部55の外径寸法より小さい略円形状の(一方及び他方の)端面開口73,74を軸方向両端部に有している。そして、このボールシート53の内部には、端面開口73,74と連通する保持面である摺接面75が形成されており、この摺接面75がボール部55の外周面を摺動(回動)可能に保持している。したがって、ボールシート53が、ボールスタッド51のボール部55とともにハウジング52の内室61内に収容配設され、ボール部55が、ボールシート53を介して内室61内にて回動可能に保持されている。さらに、このボールシート53の摺接面75には、潤滑剤(グリース)76がボール部55の外周面との間に介在されている。
【0036】
さらに、ボールシート53の摺接面75は、ボール部55の少なくとも赤道位置を含む、ボール部55の外周面を保持している。ここで、ボール部55の赤道位置とは、スタッド部56の軸方向に対して直交する方向にボール部55の径寸法が最大となる位置をいうものとする。なお、このボールシート53は、例えばボール部55を保持するシート本体部とボール部55を弾性的に支持するクッション部とに分割した、いわゆる2ピース型のものなどとしてもよい。
【0037】
次に、上記一関連技術の動作を説明する。
【0038】
シート11に着座した使用者は、リクライニング装置及びスライド装置42を操作して、シートクッション22に対するシートバック21の角度や、シート本体13の前後位置を適宜調整する。
【0039】
車両の走行により生じる振動は、車体側から、レッグ部41を介して被取付部14へと一体的に入力され、この被取付部14の上部レール部45,45に取り付けられた取付ブラケット58が一体的に振動する。
【0040】
このとき、この取付ブラケット58のスタッド部取付部58bに連結固定されたボールジョイント15のボールスタッド51のスタッド部56を介して、ボールスタッド51に振動が伝達され、このボールスタッド51のボール部55が、潤滑剤76を介してボールシート53の摺接面75を摺接しながら回動することで、このボール部55とハウジング52(ボールシート53)との摩擦抵抗(摺動抵抗)によって、ボールスタッド51の回動がボールジョイント15のハウジング52に対して減衰して伝達または遮断される。したがって、各ボールジョイント15により、ハウジング52がブラケット64を介して固定されたクッションフレーム33すなわちシート本体13に、車体側(被取付部14側)からの振動が減衰されて伝達、または遮断される。
【0041】
このように、上記一関連技術によれば、シート本体13と被取付部14とを、ボールジョイント15を用いて連結することにより、車体側からの振動が、各ボールジョイント15において、ハウジング52、ボールシート53、潤滑剤76、ボールスタッド51と伝達していくに従い、振動領域、すなわち振動周波数が変化していく効果が得られるので、これらハウジング52、ボールシート53、潤滑剤76及びボールスタッド51の材質やボールジョイント15の剛性(かしめ強度など)を適宜設定することで、シート11に着座した使用者が不快に感じる周波数から、不快に感じにくい(不快に感じない)周波数へと任意にシフトさせることができるとともに、シート11に着座したときにシート本体13が不必要に揺れないようにすることができる。
【0042】
この結果、単に被取付部14側からの振動を減衰するだけでなく、シート本体13に伝達される振動の周波数を着座した使用者が不快に感じにくい周波数にシフトできるので、被取付部14側からの振動に起因する着座時の不快感を抑制でき、かつ、被取付部14側からの振動がない状態で着座者の体重などによってシート本体13が不必要に揺れたりしないなど、快適な座り心地(乗り心地)を得ることができる。
【0043】
しかも、ボールスタッド51及びハウジング52は、それぞれ金属を材質として用いることができるので、単に弾性体によりシート本体13を被取付部14と連結する場合と比較して、耐荷重性(衝撃特性)に優れ、シート本体13と被取付部14との固定強度を確保できる。
【0044】
また、ボールジョイント15のハウジング52に、ボールスタッド51のボール部55を回動可能に受けるボールシート53を収容するとともに、このボールシート53とボール部55との間に潤滑剤76を介在させることにより、これらボールシート53と潤滑剤76との特性などを適宜設定することによって、被取付部14側からの振動の周波数を不快に感じにくい周波数へとより確実にシフトさせることができる。
【0045】
さらに、各ボールジョイント15を、ボールスタッド51のスタッド部56の軸方向を水平方向に沿わせて配置することにより、各ボールジョイント15(ボールスタッド51)がシート本体13の重量を支持しないため、シート本体13などに衝撃が加わった際の各ボールジョイント15への荷重をより抑制でき、耐衝撃性をより向上できる。
【0046】
そして、ボールジョイント15は、シート本体13のクッションフレーム33の四隅にそれぞれ配置することにより、シート本体13をバランスよく、かつ、確実にボールジョイント15によって被取付部14に取り付けできる。
【0047】
なお、上記一関連技術において、ブラケット64に代えて、例えば板ばねを用い、各ボールジョイント15のハウジング52を側部クッションフレームに対して弾性的に固定してもよい。
【0048】
また、各ボールジョイント15は、ボールスタッド51のスタッド部56を側部クッションフレーム36に取り付け固定し、ハウジング52を上部レール部に取り付け固定してもよい。
【0049】
次に、実施の形態を図4及び図5を参照して説明する。なお、上記一関連技術と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0050】
この実施の形態は、上記一関連技術の各ボールジョイント15のハウジング52が、有底円筒状に形成されているとともに、このハウジング52の底部81に、このハウジング52と同軸状に円柱状の連結部82が突設されているものである。
【0051】
この連結部82は、側部クッションフレーム36に対して下側から上側へと上下方向に沿って挿通されて取り付け固定されて連結されている。すなわち、各ボールジョイント15は、ハウジング52の底部81を相対的に上側として配置されている。
【0052】
また、各ボールジョイント15のボールスタッドのスタッド部56は、上部レール部45の上方に位置し左右方向に沿って長手状の四角形板状に形成された板ばね84の一端側に対して上側から下側へと上下方向に沿って挿通されて図示しないナットなどを介して一体的に取り付け固定されて連結されており、この板ばね84の他端側が、例えばボルトなどの図示しない固定部材により、上部レール部45の上部に例えば溶接された金属製などの台座部85などに対して一体的に取り付け固定されている。したがって、ボールジョイント15は、板ばね84を介して、被取付部14(上部レール部45)に対して上下方向に弾性的に支持されている。換言すれば、各ボールジョイント15は、ボールスタッド51(スタッド部56)及びハウジング52の軸方向を上下方向に沿わせて、すなわち縦置きに配置されている。
【0053】
そして、シート本体13と被取付部14側とのいずれか一方とボールジョイント15のハウジング52とを板ばね84により連結して、ボールジョイント15をスタッド部56の軸方向に沿って付勢することにより、ボールジョイント15のハウジング52、ボールシート53、潤滑剤76及びボールスタッド51の材質やボールジョイント15の剛性(かしめ強度など)、及び、板ばね84の弾性などを適宜設定することで、これらボールジョイント15と板ばね84とによって、被取付部14側からの振動をより確実に減衰するとともに、シート本体13に伝達される振動の周波数を不快に感じにくい周波数へとより確実にシフトさせることができる。
【0054】
しかも、板ばね84によりボールジョイント15を下方から支持していることにより、シート11の着座者の体重を基本的に板ばね84のみによって受けることができ、ボールジョイント15に着座者の体重が加わることがないので、この体重によってボールジョイント15が不必要に回動することがなく、被取付部14側からの振動がない状態で着座者の体重などによってシート本体13が不必要に揺れたりしない。
【0055】
また、ボールジョイント15を、ボールスタッド51のスタッド部56の軸方向を上下方向に沿わせて配置することにより、被取付部14に対してボールジョイント15を上側から組み付けた後、シート本体13をさらにその上部に組み付けることができる。すなわち、被取付部14に対して、ボールジョイント15とシート本体13とを上側から順次組み付けることができるので、製造性(組み付け性)をより向上できる。
【0056】
なお、上記実施の形態において、各ボールジョイント15は、ボールスタッド51のスタッド部56を側部クッションフレーム36に取り付け固定し、ハウジング52の連結部82を上部レール部に板ばね84を介して固定してもよい。
【0057】
らに、上記実施の形態において、各ボールジョイント15は、全て同じ特性に設定してもよいし、少なくともいずれかのボールジョイント15の特性を、残りの他のボールジョイント15と異ならせてもよい。
【0058】
そして、シート11は車両用のシートだけでなく、飛行機や船舶、あるいは作業機械などの乗物用のシートなど、振動が伝達する位置に配置される任意のシートとして用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、例えば自動車などの輸送機械用シートとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0060】
11 シート
13 シート本体
14 被取付部としてのレッグフレーム
15 ボールジョイント
51 ボールスタッド
52 ハウジング
53 ベアリングシートであるボールシート
55 ボール部
56 スタッド部
76 潤滑剤
84 板ばね
図1
図2
図3
図4
図5