特許第5960045号(P5960045)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5960045-バイナリー発電システム 図000002
  • 特許5960045-バイナリー発電システム 図000003
  • 特許5960045-バイナリー発電システム 図000004
  • 特許5960045-バイナリー発電システム 図000005
  • 特許5960045-バイナリー発電システム 図000006
  • 特許5960045-バイナリー発電システム 図000007
  • 特許5960045-バイナリー発電システム 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5960045
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】バイナリー発電システム
(51)【国際特許分類】
   F01K 23/02 20060101AFI20160719BHJP
   F01K 25/10 20060101ALI20160719BHJP
   F01K 25/06 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   F01K23/02 Z
   F01K25/10 G
   F01K25/10 Z
   F01K25/06
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-283916(P2012-283916)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2014-125990(P2014-125990A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 亮
(72)【発明者】
【氏名】香月 紀人
(72)【発明者】
【氏名】福田 憲弘
【審査官】 米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭53−1737(JP,A)
【文献】 特開平9−68006(JP,A)
【文献】 特開2010−78216(JP,A)
【文献】 実開昭58−20303(JP,U)
【文献】 特開2012−159065(JP,A)
【文献】 特開昭55−25591(JP,A)
【文献】 特開2004−44455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 23/02
F01K 25/06
F01K 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温熱源と、媒体とを熱交換する熱交換器と、
該熱交換器にて熱交換された前記媒体が供給され、動力を取得する二相流タービンと、
前記二相流タービンによって駆動される発電機と、
前記二相流タービンから流出した前記媒体を気液分離するセパレータと、
該セパレータから、前記媒体を気液分離して得られた蒸気を供給して、動力を取得する蒸気タービンと、
該蒸気タービンによって駆動される発電機と、
該蒸気タービンからの蒸気を凝縮する復水器と、
を備えたことを特徴とするバイナリー発電システム。
【請求項2】
前記媒体は水であことを特徴とする請求項1に記載のバイナリー発電システム。
【請求項3】
前記媒体は低沸点有機媒体であることを特徴とする請求項1に記載のバイナリー発電システム。
【請求項4】
前記媒体は代替えフロンであことを特徴とする請求項1に記載のバイナリー発電システム。
【請求項5】
前記二相流タービンは、衝動式タービンである、ことを特徴とする請求項に記載のバイナリー発電システム。
【請求項6】
前記二相流タービンは、容積型タービンである、ことを特徴とする請求項に記載のバイナリー発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地熱・排熱等の低温熱源によって、低沸点媒体と熱交換させて、その熱エネルギーを動力に変換するバイナリー発電システムに関し、特には、媒体として水を使用することで、安全性向上、低コスト化を図った、バイナリー発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、原発からの脱却への要望と、さらには、CO削減の要請から、自然エネルギーや工場排熱、エンジン冷却水等の低温熱源のエネルギーの利用がますます脚光を浴びつつある。
【0003】
バイナリー発電方式は、他の方式の発電では利用できなかった低温領域の熱水(流体)での発電が可能となり、主に中低温域の流体の利用ができるのが特徴となっている。
バイナリー発電方式は、単体の流体を媒体として用いるものをランキンサイクルと称し、ORCは、蒸気やガスの熱で水より沸点の低い有機
(オーガニック)媒体を気化、その蒸気でタービンを駆動する発電方式である。
【0004】
バイナリー発電システム100は、例えば図6に示すように、中低温資源からの熱源を取り込んで低沸点有機媒体と熱交換する熱交換器11と、熱交換器11で低沸点有機媒体からの蒸気を取り込んで作動する蒸気タービン13と、蒸気タービン13に接続された発電機17と、蒸気タービン13で使用された蒸気を凝縮して水に戻す復水器14と、復水器14で得られた水を熱交換器11に低沸点有機媒体と共に、熱交換器11に送るポンプ18とを備えている。
【0005】
かかるバイナリー発電システム100の温度−エントロピー(T−S)線図は、図7のように示すことができる。図6中の丸囲み数字は、図7に示す状態図の各ポイント位置を示すものである。なお、図6中の丸囲み数字1−9は、明細書中では、それぞれ1−9として記載する。
このT−S線図によれば、状態1から状態2において、低沸点有機媒体は、状態1で飽和液としてポンプ18に入る。ポンプ18から熱交換器11入口まで断熱圧縮であり、低沸点有機媒体は温度が微増する。
状態2から状態3において、低沸点有機媒体は、熱交換器11において、中低温資源からの熱源との熱交換により定圧加熱される。これにより、低沸点有機媒体が沸騰して蒸気が取り出される。
状態3から状態4において、蒸気は断熱膨張し、状態4から状態5では、蒸気タービン13において蒸気が断熱膨張しながら仕事をして温度が下降し、復水器14にもたらされる。
そして状態5から状態1’において、温度下降した蒸気は、復水器14で送風機14aにより凝縮して飽和液となってポンプ18に送り込まれる。
以上のように、バイナリー発電システム100は、低温領域の熱水(流体)での発電が可能となり、主に低・中低温域の流体の利用ができることがわかる。
【0006】
ところで、従来、バイナリー発電装置の中には、例えば特許文献1で開示されるように、熱水に含まれる蒸気と熱水とに分離する手段として回転分離式二相流タービンを利用して蒸気と熱水とに分離し、熱水を昇圧して直接熱交換器に供給し、低沸点媒体と直接接触させて熱交換して低沸点媒体の蒸気を発生させ、この蒸気によってタービンを駆動して発電するようにしている。
【0007】
また、特許文献2では、地熱井の坑底に坑底ポンプを設けるとともに、地表に回転分離器を有する二相流タービンを設置し、坑底ポンプにより地上に輸送された地熱水を回転分離式二相流タービンの回転分離器に導入して回転分離器を回転させるとともに、蒸気と熱水とに分離し、かつ回転分離器の動力を利用して坑底ポンプを駆動するようにしたことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平1−47601号公報
【特許文献2】特公平2−43915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1のものでは、二相流タービンを使用し、低沸点媒体としてイソブタン、ブタン等、親水性のない特性を有するものが記載されているに過ぎない。
また、特許文献2のものでは、二相流タービンを使用しているものの、熱交換後の二相流と蒸気タービンの組み合わせのものではなく、媒体として水を使用することも想定されていない。
ORCに代表されるバイナリー発電を行う際、熱交換器で上昇させることが可能なタービン入口温度が低くなるため(熱落差が小さい)ため、サイクル効率が低い。また、低沸点有機媒体を使用するため、取り扱いが難しく、安全性他の確保のため高コスト、環境のリスクが大きい。水を媒体に使用した場合、効率が悪い。
本発明は、以上のような背景から提案されたものであって、有機媒体の代わりに水を媒体として用いることにより、サイクル効率を高めるようにした、バイナリー発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1にかかる発明では、50°〜300℃の低温熱源と、媒体とを熱交換する熱交換器と、熱交換器にて熱交換された前記媒体が供給され、動力を取得する二相流タービンと、前記二相流タービンによって駆動される発電機と、前記二相流タービンから流出した前記媒体を気液分離するセパレータと、セパレータから、前記媒体を気液分離して得られた蒸気を供給して、動力を取得する蒸気タービンと、蒸気タービンによって駆動される発電機と、蒸気タービンからの蒸気を凝縮する復水器と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
ここで、50℃〜300℃の低温熱源としたのは、低沸点媒体として例えばペンタン(沸点:36度)を始めとして、イソブタン(C10、沸点−11.7℃)、アンモニア(沸点:−33℃)と水の混合流体、あるいは代替えフロン(沸点:34℃)を用いた場合でも、熱交換によって、低沸点媒体を十分に沸騰させることができるからである。
このように、セパレータにて気液二相流媒体を蒸気と熱水とに気液分離し蒸気タービンにて発電機を駆動させることで、これまで発電に利用が困難であった低中温度の熱源を発電に利用が可能となることがわかる。
【0012】
これにより、熱交換出口が飽和蒸気でなく、飽和水でよくなるため、大きな熱落差が得られ、サイクル全体としては効率が向上する。安全性、環境性、取扱い易さという点で有利であり、プラント全体の低コスト化、安全性が向上する。
【0013】
また、請求項2にかかる発明では、媒体は水であることを特徴とする。
【0014】
これにより、熱交換出口が飽和水でよく、二相流タービンでのタービン効率が低下するものの、サイクル全体としては効率が向上する。しかも、媒体が水であるから、プラント全体のコスト抑制、安全性も向上する。
【0015】
また、請求項3にかかる発明では、媒体は低沸点有機媒体であることを特徴とする。
【0016】
媒体に低沸点有機媒体を用いることにより、システム効率は低下するが、二相流タービンの出力が全体の15パーセントであり、ペンタンを用いた、ORCと比較すれば同等の出力が得られる。
熱交換器では、液−液の状態で熱交換が可能であるため、従来ORCの気−液熱交換より作動流体比体積が小さく、熱交換器を小型化できる分、コストを抑えることができる。
【0017】
また、請求項4にかかる発明では、媒体は代替えフロンであることを特徴とする。
【0018】
これにより、プラントの安全性は確保される。二相流タービンでのタービン効率が低下するものの、サイクル全体としては効率が向上する。
【0019】
また、請求項5にかかる発明では、二相流タービンは、衝動式タービンである、ことを特徴とする。
【0020】
これにより、低沸点有機媒体を使用時には、条件次第でノズル出口を渇き度100%で出すことが可能であり、タービン効率の向上が期待できる。
【0021】
さらに、請求項6に記載の発明では、二相流タービンは、容積型タービンである、ことを特徴とする。
【0022】
これにより、スクリューは渇き度に対してロバスト性があり、信頼性向上が期待できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、システム全体効率が向上し、且つ、水を媒体として使用することにより安全性が向上し、設備コストの抑制が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明によるバイナリー発電システムの第1実施形態を示す全体系統説明図である。
図2図1に示すバイナリー発電システムのT−S線図である。
図3図1に示すバイナリー発電システムにおいて、低沸点有機媒体にペンタンを用いた場合の、熱源温度とサイクル効率の関係を示すグラフである。
図4イナリー発電システムの参考例を示す全体系統説明図である。
図5】本発明によるバイナリー発電システムの第実施形態において用いられる蒸気タービンの一例を示す斜視説明図である。
図6】従来におけるバイナリー発電システムの一例を示した、概略系統図である。
図7図6に示すバイナリー発電システムのT−S線図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明にかかるバイナリー発電システムの実施形態を挙げ、添付の図面に基づいて説明する。
【0026】
(第1実施形態)
図1に、第1実施形態にかかるバイナリー発電システム10を示す。
このバイナリー発電システム10は、50°〜300℃の低温熱源と媒体とを熱交換する熱交換器11を備えている。
また、バイナリー発電システム10は、熱交換器11からの媒体の気液二相流媒体を蒸気と熱水とに気液分離するセパレータ12を備えている。
さらに、バイナリー発電システム10は、セパレータ12から、気液分離後の蒸気を供給して、動力を取得する蒸気タービン13と、蒸気タービン13からの蒸気を凝縮する復水器14と、を備えている。
そして、熱交換器11とセパレータ12との間には、熱交換後の媒体の気液二相流媒体を供給して動力を取得する二相流タービン15を備えている。
【0027】
このバイナリー発電システム10では、媒体として、水を用いている。
地熱における熱源は、略220℃で、熱交換器11において媒体としての水は、熱交換によって熱交換器11の出口から190℃前後の飽和水として取り出され、後述の二相流タービン15に供給されるようになっている。
【0028】
二相流タービン15は、図示は省略するが周知の軸流タービンが可能である。
前述の190℃程の飽和水が通流することで回転して回転軸につながる発電機16が回されて電力を取り出すようになっている。
【0029】
次に二相流タービン15の出口側につながる密封型のセパレータ12は、二相流タービン15からの飽和水を含む気体と熱水の二相流から、蒸気と熱水とを分離するもので、密封された筐体12bを備える。すなわち、筐体12bの上部から蒸気が分離され、筐体の底部から熱水を取り出して分離するようになっている。
【0030】
さらに、セパレータ12の下流側の蒸気タービン13は、セパレータ12で分離された蒸気で回転して、蒸気タービン13の回転軸につながる発電機17が回されて電力を取り出すようになっている。
【0031】
そして復水器14は、空冷式のもので、蒸気タービン13を通過した蒸気を送風機14aにより凝縮して、飽和液となって下流側の第1ポンプ18に送り込まれるようになっている。
【0032】
第1ポンプ18の下流側は、前述のセパレータ12において分離された熱水と合流するようになっており、熱交換器11へ圧力を高めた飽和液として送り込むための第2ポンプ19に送り込まれる構成である。
【0033】
第1実施形態にかかるバイナリー発電システム10は以上のように構成されるものであり、次に、図2に示す温度−エントロピー(T−S)線図に基づいて動作を説明する。
媒体としての水は、状態1において、復水器14から出力された復水を第1ポンプ18により、状態2’でセパレータ12から分離された熱水と等圧になるまで昇圧されると共に混合され(状態2)、状態3で、第2ポンプ19により熱交換器11へ送り込まれる。
復水器14からの復水は第1ポンプ18により昇圧されて温度は微増し、セパレータ12から分離された熱水と混合することで温度は上昇する。
状態4から状態5にかけて、熱交換器11において、地熱における略200℃程の熱源とで、媒体としての水は、熱交換によって昇温して190℃程の飽和水として取り出され、状態6で二相流タービン15に送り込まれる。
【0034】
二相流タービン15では、上記飽和水が通流することでタービン軸が回転してタービン軸につながる発電機16が回されて電力を取り出すことができる。
この二相流タービン15を通過するとき、190℃の飽和水は、状態6から状態7に向かって断熱膨張しながら仕事をして温度が下降し、150℃程の飽和水としてセパレータ12に送り込まれる。
【0035】
次にセパレータ12では、二相流タービン15からの気体と熱水との二相流から、蒸気と熱水とを分離して、密封された筐体12bの上部から蒸気が分離され、筐体12bの底部から熱水が分離される。
【0036】
セパレータ12から取り出された蒸気は、状態8.の蒸気タービン13においてタービン軸を回転することで、タービン軸につながる発電機17が回されて電力を取り出すことができる。
この蒸気タービン13を通過するとき、状態8から状態9にかけて蒸気は断熱膨張しながら再度仕事をして温度が下降し、復水器14へと送り込まれる。
【0037】
そして、復水器14で送風機14aにより、蒸気は凝縮され、飽和水として第1ポンプ18により、セパレータ12から分離された熱水と等圧になるまで昇圧されると共に混合され、第1ポンプ19により再度熱交換器11へ送り込まれる。このようにランキンサイクルとしての動作が実行される。
【0038】
以上のように、第1実施形態にかかるバイナリー発電システム10によれば、媒体として水を使用したことにより、熱交換器11の出口が飽和蒸気でなく、飽和水で足りるため、地熱における熱源が略220℃であっても、十分大きな熱落差が得られ、サイクル全体としては効率が向上する(図3参照)。
このように、媒体として水を使用することは、安全性、環境性、取扱い易さという点で有利であり、プラント全体の低コスト化、安全性の向上につながる。
【0039】
本発明は、第2実施形態にかかるバイナリー発電システム10によっても実施することができる。
(第2実施形態)
第2実施形態にかかるバイナリー発電システム10においては、システム構成自体は第1実施形態と同一であるので図示は省略し、相違点のみを説明する。
すなわち、第2実施形態にかかるバイナリー発電システム10では、媒体として、水の代わりにペンタン(沸点:36度)などの有機媒体や環境負荷の高い代替えフロン(沸点:34℃)を使用することもできる。さらには、媒体としては、イソブタン(C4H10、沸点−11.7℃)、アンモニア(沸点:−33℃)と水の混合流体も可能である。
【0040】
以上のような第2実施形態にかかるバイナリー発電システム10によれば、熱交換器11の出口が飽和蒸気でなく、飽和水で足りるため、地熱における熱源が略220℃であっても、十分大きな熱落差が得られ、二相流タービン15でのタービン効率が約20%程低下するものの、サイクル全体としては効率が向上する。
【0041】
(参考例)
図4参考例にかかるバイナリー発電システム10を示す。
参考例では、媒体としてペンタンなどの低沸点有機媒体を用いている。
ここでのバイナリー発電システム10は、第1、第2実施形態のシステムと異なり、二相流タービン15を除いている。その他の構成は、第1、第2実施形態のシステムと同一であるので、説明は省略する。
【0042】
このような参考例にかかるバイナリー発電システム10によれば、システム効率は低下するが、ペンタンなどの低沸点有機媒体では、第1実施形態の二相流タービン15における出力が全体の15%程度と小さいため、ペンタンORCと比較すれば、同等の出力が得られる。
熱交換器11では液−液の状態で熱交換可能であるため、従来ORCの気−液熱交換により、作動流体比体積が小さく、熱交換器が小さくなる分、熱交換器にかかるコストを抑制することができる。
【0043】
以上、本発明について第1〜第実施形態を挙げ、説明した。
第1実施形態にかかるバイナリー発電システム10に用いられる二相流タービン15は、図5に示すように、衝動式タービンを用いることができる。
この場合、二相流タービン15は、タービン軸20とロータ21とノズル22を備えている。ロータ21の外周面には、等間隔に動翼23が突設されている。また、ノズル22は、熱水が動翼23に向かって噴出されるように配置される。この場合ノズル22は、先端噴出口22aが角型に開口し、センタ側に向かって拡開する形状としている。
【0044】
なお、二相流タービン15は、衝動式タービンの他、容積型のタービン(図示省略)も可能である。
【0045】
以上のような衝動式タービンの二相流タービン15を用いると、媒体として、低沸点有機媒体を使用するときは、条件次第でノズル出口を渇き度100%で出すことが可能であり、タービン効率の向上が期待できる。
【0046】
一方、衝動式タービンの二相流タービン15に容積型のタービンを用いると、スクリューは乾き度に対して効率がロバストな特性があり、エロージョン等にも強く、信頼性向上が期待できる。
【0047】
ここで、本発明を実際に、媒体にペンタンを使用した例と、媒体に水を使用した例を挙げて比較して検証する。
図1で示したバイナリー発電システム10において、媒体としてペンタンを用いたペンタンハイブリットサイクルについて説明する。
ペンタンハイブリッドサイクルでは、低温熱源の温度が200℃、熱交換器11による熱交換で得られたペンタンの温度は、189.99℃、二相流タービン15による、発電機16の出力が553kW、蒸気タービン13による発電機17の出力が3542KWであり、総発電出力が4095KW、送電出力が3350KWで、サイクル効率が13.85%であった。
以上のように、ペンタンを媒体として用いた場合、出力の大部分を、蒸気タービンが占めていることがわかる。この場合、蒸気タービンに流入する蒸気の流量他、作動条件は現行ORCと類似しており、実現性が見込まれる。
二相流タービンをなくし、出力を多少下げても、蒸発器が不要となり、低コストで製造可能となり、現行ORCに比較して優位性のあるシステムであるといえる。
【0048】
一方、図1で示したバイナリー発電システム10において、媒体として水を用いた水ハイブリッドサイクルについて説明する。
水ハイブリッドサイクルでは、二相流タービン15による、発電機16の出力が1238kWに対し、蒸気タービン13による発電機17の出力が2206KWであり、総発電出力が3443KW、送電出力が2991KWで、サイクル効率が12.37%であった。
以上のように、水を媒体として用いた場合、出力配分が、二相流タービン15と蒸気タービン13とで、1:2程度となっている。
蒸気タービン13への蒸気の流量が小さくタービンの効率を80%確保できるかが課題ではある。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のバイナリー発電システムは、システム全体効率が向上し、且つ、水を媒体として使用することにより安全性が向上し、設備コストの抑制が可能となる。そのため本発明は、様々な規模の、さらには、様々な方式のバイナリー発電システムに適用可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 バイナリー発電システム
11 熱交換器
12 セパレータ
12b筐体
13 蒸気タービン
14 復水器
15 二相流タービン
16、17 発電機
18 第1ポンプ
19 第2ポンプ
20 タービン軸
21 ロータ
22 ノズル
23 動翼
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7