特許第5960063号(P5960063)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5960063
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】電池の満充電容量検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/36 20060101AFI20160719BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20160719BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   G01R31/36 A
   H01M10/48 P
   H02J7/00 M
【請求項の数】6
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2012-555860(P2012-555860)
(86)(22)【出願日】2012年1月30日
(86)【国際出願番号】JP2012051980
(87)【国際公開番号】WO2012105492
(87)【国際公開日】20120809
【審査請求日】2014年9月11日
(31)【優先権主張番号】特願2011-19279(P2011-19279)
(32)【優先日】2011年1月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康司
(72)【発明者】
【氏名】為実 茂人
【審査官】 菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−241358(JP,A)
【文献】 特開2005−83970(JP,A)
【文献】 特開2011−7564(JP,A)
【文献】 特開2008−261669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36
H01M 10/44
H01M 10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のタイミングで充放電される電池の充電電流と放電電流の積算値から電池の容量変化値(δAh)を演算する容量変化検出工程と、
容量変化値(δAh)を検出する前後のタイミングにおいて電池の第1の開放電圧(VOCV1)と第2の開放電圧(VOCV2)を検出する開放電圧検出工程と、
この開放電圧検出工程で検出される第1の開放電圧(VOCV1)から電池の第1の残容量(SOC[%])を判定すると共に、第2の開放電圧(VOCV2)から電池の第2の残容量(SOC[%])を判定する残容量判定工程と、
この残容量判定工程で判定される第1の残容量(SOC[%])と第2の残容量(SOC[%])の差から残容量変化値(δSOC[%])を演算する残容量変化値演算工程と、
前記容量変化値(δAh)と、前記残容量変化値(δSOC[%])と、第1の開放電圧(VOCV1)と第2の開放電圧(VOCV2)との電圧差の少なくとも何れかが、あらかじめ設定している設定値よりも大きな状態において、前記容量変化値(δAh)と残容量変化値(δSOC[%])から電池の満充電容量(Ahf)を演算する満充電容量演算工程と、
を含む電池の満充電容量検出方法であって、
前記残容量変化値(δSOC[%])と容量変化値(δAh)から検出される検出満充電容量(Ahf1)と、先に検出している以前の満充電容量(Ahf2)とから、以下の式で電池の満充電容量(Ahf)を演算する電池の満充電容量検出方法。
満充電容量(Ahf)=ウエイト1×検出満充電容量(Ahf1)+ウエイト2×以前の満充電容量(Ahf2)
ただし、ウエイト1+ウエイト2=1とし、ウエイト1とウエイト2とを、容量変化値(δAh)で変化させると共に、容量変化値(δAh)が多くなるにしたがって、ウエイト1を大きくする。
【請求項2】
所定のタイミングで充放電される電池の充電電流と放電電流の積算値から電池の容量変化値(δAh)を演算する容量変化検出工程と、
容量変化値(δAh)を検出する前後のタイミングにおいて電池の第1の開放電圧(VOCV1)と第2の開放電圧(VOCV2)を検出する開放電圧検出工程と、
この開放電圧検出工程で検出される第1の開放電圧(VOCV1)から電池の第1の残容量(SOC[%])を判定すると共に、第2の開放電圧(VOCV2)から電池の第2の残容量(SOC[%])を判定する残容量判定工程と、
この残容量判定工程で判定される第1の残容量(SOC[%])と第2の残容量(SOC[%])の差から残容量変化値(δSOC[%])を演算する残容量変化値演算工程と、
前記容量変化値(δAh)と、前記残容量変化値(δSOC[%])と、第1の開放電圧(VOCV1)と第2の開放電圧(VOCV2)との電圧差の少なくとも何れかが、あらかじめ設定している設定値よりも大きな状態において、前記容量変化値(δAh)と残容量変化値(δSOC[%])から電池の満充電容量(Ahf)を演算する満充電容量演算工程と、
を含む電池の満充電容量検出方法であって、
前記残容量変化値(δSOC[%])と容量変化値(δAh)から検出される検出満充電容量(Ahf1)と、先に検出している以前の満充電容量(Ahf2)とから、以下の式で電池の満充電容量(Ahf)を演算する電池の満充電容量検出方法。
満充電容量(Ahf)=ウエイト1×検出満充電容量(Ahf1)+ウエイト2×以前の満充電容量(Ahf2)
ただし、ウエイト1+ウエイト2=1とし、ウエイト1とウエイト2とを、残容量変化値(δSOC[%])で変化させると共に、残容量変化値(δSOC[%])が大きくなるにしたがって、ウエイト1を大きくする。
【請求項3】
所定のタイミングで充放電される電池の充電電流と放電電流の積算値から電池の容量変化値(δAh)を演算する容量変化検出工程と、
容量変化値(δAh)を検出する前後のタイミングにおいて電池の第1の開放電圧(VOCV1)と第2の開放電圧(VOCV2)を検出する開放電圧検出工程と、
この開放電圧検出工程で検出される第1の開放電圧(VOCV1)から電池の第1の残容量(SOC[%])を判定すると共に、第2の開放電圧(VOCV2)から電池の第2の残容量(SOC[%])を判定する残容量判定工程と、
この残容量判定工程で判定される第1の残容量(SOC[%])と第2の残容量(SOC[%])の差から残容量変化値(δSOC[%])を演算する残容量変化値演算工程と、
前記容量変化値(δAh)と、前記残容量変化値(δSOC[%])と、第1の開放電圧(VOCV1)と第2の開放電圧(VOCV2)との電圧差の少なくとも何れかが、あらかじめ設定している設定値よりも大きな状態において、前記容量変化値(δAh)と残容量変化値(δSOC[%])から電池の満充電容量(Ahf)を演算する満充電容量演算工程と、
を含む電池の満充電容量検出方法であって、
前記残容量変化値(δSOC[%])と容量変化値(δAh)から検出される検出満充電容量(Ahf1)と、先に検出している以前の満充電容量(Ahf2)とから、以下の式で電池の満充電容量(Ahf)を演算する電池の満充電容量検出方法。
満充電容量(Ahf)=ウエイト1×検出満充電容量(Ahf1)+ウエイト2×以前の満充電容量(Ahf2)
ただし、ウエイト1+ウエイト2=1とし、ウエイト1とウエイト2とを、第1の開放電圧(VOCV1)と第2の開放電圧(VOCV2)との電圧差とで変化させると共に、電圧差が大きくなるにしたがって、ウエイト1を大きくする。
【請求項4】
所定のタイミングで充放電される電池の充電電流と放電電流の積算値から電池の容量変化値(δAh)を演算する容量変化検出工程と、
容量変化値(δAh)を検出する前後のタイミングにおいて電池の第1の開放電圧(VOCV1)と第2の開放電圧(VOCV2)を検出する開放電圧検出工程と、
この開放電圧検出工程で検出される第1の開放電圧(VOCV1)から電池の第1の残容量(SOC[%])を判定すると共に、第2の開放電圧(VOCV2)から電池の第2の残容量(SOC[%])を判定する残容量判定工程と、
この残容量判定工程で判定される第1の残容量(SOC[%])と第2の残容量(SOC[%])の差から残容量変化値(δSOC[%])を演算する残容量変化値演算工程と、
前記容量変化値(δAh)と、前記残容量変化値(δSOC[%])と、第1の開放電圧(VOCV1)と第2の開放電圧(VOCV2)との電圧差の少なくとも何れかが、あらかじめ設定している設定値よりも大きな状態において、前記容量変化値(δAh)と残容量変化値(δSOC[%])から電池の満充電容量(Ahf)を演算する満充電容量演算工程と、
を含む電池の満充電容量検出方法であって、
前記残容量変化値(δSOC[%])と容量変化値(δAh)から検出される検出満充電容量(Ahf1)と、先に検出している以前の満充電容量(Ahf2)とから、以下の式で電池の満充電容量(Ahf)を演算する電池の満充電容量検出方法。
満充電容量(Ahf)=ウエイト1×検出満充電容量(Ahf1)+ウエイト2×以前の満充電容量(Ahf2)
ただし、ウエイト1+ウエイト2=1とし、ウエイト1とウエイト2とを、容量変化値(δAh)を検出するタイミングで変化させると共に、タイミングが長くなるにしたがって、ウエイト1を大きくする。
【請求項5】
前記第1の検出タイミングと前記第2の検出タイミングを、電池に電流が流れないタイミングとする請求項1ないしのいずれかに記載される電池の満充電容量検出方法。
【請求項6】
前記第1の検出タイミングと第2の検出タイミングとが変動する時間間隔である請求項1ないしのいずれかに記載される電池の満充電容量検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充放電するにしたがって実質的に満充電できる容量が小さくなる電池の満充電容量を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電池は、充放電を繰り返すにしたがって、実質的に満充電できる満充電容量(Ahf)が経時的に減少する。満充電容量(Ahf)は、満充電した電池を完全に放電するまでの容量である。電池は、過充電や過放電によって著しく劣化する特性があるので、満充電容量(Ahf)に対して所定の残容量(SOC[%])の範囲で使用することで劣化を少なくできる。このため、過充電や過放電を防止するために、経時的に減少する満充電容量(Ahf)を正確に検出することが大切である。検出する満充電容量(Ahf)に誤差があると、検出した満充電容量(Ahf)に対して所定の割合の残容量(SOC[%])となるように充放電をコントロールしても、電池が過充電や過放電される領域まで充放電が行われてしまい、劣化するからである。たとえば、車両用の電池は、50%を中心とする所定範囲の残容量となるように、充放電をコントロールしている。残容量(SOC[%])は、満充電容量(Ahf)を基準に決定されるので、満充電容量(Ahf)に誤差があると、50%を中心とする決められた範囲に残容量(SOC[%])を制御できなくなる。
【0003】
たとえば、満充電容量(Ahf)を10Ahとする電池が5Ahの容量となるまで放電されると残容量(SOC[%])は50%となるが、満充電容量(Ahf)が5Ahに減少した電池では、電池の容量(Ah)が5Ahとなると残容量(SOC[%])は100%となる。したがって、電池の容量(Ah)が5Ahを中心として充放電するように制御しても、10Ahから5Ahまで満充電容量(Ahf)が半減すると、残容量(SOC[%])は100%を中心に充放電されてしまい、過充電状態となって著しく劣化する。とくに、車両用の電源装置は、電池の残容量(SOC[%])を50%を中心とする範囲にコントロールして、充電も放電も可能な状態とすることが大切である。それは、電池を放電して車両の速度を加速し、充電して回生制動で減速するからである。
【0004】
車両に搭載される電源装置のみでなく、たとえば太陽電池の電力で充電される電源装置も、大電力を充電するために多数の電池が使用される。この用途の電源装置も、多数の電池を備えることから、電池の劣化を少なくして寿命を長くすることが大切である。したがって、電池の満充電容量(Ahf)を正確に検出して、過充電や過放電を防止することが大切である。
【0005】
電池の満充電容量(Ahf)は、完全に放電した電池を満充電するまでの充電容量を積算して検出できる。また、満充電した電池を完全に放電するまでの放電容量を積算しても満充電容量(Ahf)は検出できる。これらの方法は、電池の満充電容量(Ahf)を正確に検出できるが、電池の使用環境を著しく制限する欠点がある。それは、電池を完全に放電された状態にすると、この電池から電力を取り出すことができず、また、満充電された状態にあると、電池に電力を供給できなくなるからである。たとえば、車両に搭載される電池は、電池を放電してモータで車両の速度を加速し、また、車両にブレーキをかけて減速するときに電池を発電機で充電して回生制動するので、電池が完全に放電された状態になると電池で車両の速度を加速できず、また、電池が満充電された状態にあると回生制動で電池を充電できなくなる。車両に限らず、満充電容量(Ahf)を検出するために電池を完全に放電すると、放電に時間がかかるばかりでなく、放電された状態では電池を全く使用できなくなる欠点がある。さらに、電池は満充電と過放電の領域で劣化しやすくなる性質があるので、満充電容量(Ahf)の検出のために電池を完全に放電された状態と、満充電された状態とする方法は、満充電容量(Ahf)の検出が電池を劣化させる原因となる。
【0006】
この欠点を解消する方法として、電池の充電容量の累積量から電池が劣化する程度を検出して、満充電容量(Ahf)が減少する値を検出する方法が開発されている。(特許文献1参照)さらに、特許文献1は、電池の保存温度と残容量をパラメーターとして満充電容量の減少率を検出する方法も記載している。
【0007】
特許文献1の方法は、電池を完全に放電し、また、満充電することなく満充電容量を検出できる。このため、電池の使用環境を制限することなく満充電容量を検出できる。しかしながら、この方法は、充電容量の累積値や保存温度及び残容量から満充電容量がどの程度減少するかを推定するので、常に電池の満充電容量を正確に検出するのが難しい欠点がある。それは、電池の劣化が種々の外的条件により複雑に変化するからである。
【0008】
本発明者は、この欠点を解決することを目的として、充放電される電池の充電電流と放電電流の積算値から電池の容量変化値(δAh)と、この容量変化値(δAh)を検出するタイミングの前後で電池の開放電圧(VOCV)を検出して、各々の開放電圧(VOCV)から残容量変化値(δSOC[%])を検出し、残容量変化値(δSOC[%])と容量変化値(δAh)から、下記の式に基づいて電池の満充電容量(Ahf)を演算する方法を開発した。(特許文献2参照)
【0009】
Ahf=δAh/(δSOC[%]/100)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−236154号公報
【特許文献2】特開2008−241358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上の満充電容量検出方法は、電池を完全に放電したり満充電したりすることなく、電池の満充電容量を検出できる特徴がある。それは、充放電される電池の充電電流と放電電流の積算値から電池の容量変化値(δAh)と、そのタイミングにおける電池の残容量変化値(δSOC[%])とを検出して、残容量変化値(δSOC[%])と容量変化値(δAh)から電池の満充電容量(Ahf)を演算するからである。しかしながら、この方法は常に正しく電池の満充電容量(Ahf)を検出するのが難しい。満充電容量(Ahf)を正確に検出できない状態で、電池の満充電容量(Ahf)を補正すると、補正された電池の満充電容量(Ahf)の誤差が大きくなって、つねに正確に電池の満充電容量(Ahf)を検出できなくなる欠点がある。
【0012】
本発明は、さらに以上の欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、電池を満充電したり完全に放電したりすることなく、より正確に電池の満充電容量(Ahf)を検出できる満充電容量検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0013】
本発明の満充電容量検出方法は、所定のタイミングで充放電される電池の充電電流と放電電流の積算値から電池の容量変化値(δAh)を演算する容量変化検出工程と、
【0014】
容量変化値(δAh)を検出する前後のタイミングにおいて電池の第1の開放電圧(VOCV1)と第2の開放電圧(VOCV2)を検出する開放電圧検出工程と、
【0015】
この開放電圧検出工程で検出される第1の開放電圧(VOCV1)から電池の第1の残容量(SOC[%])を判定すると共に、第2の開放電圧(VOCV2)から電池の第2の残容量(SOC[%])を判定する残容量判定工程と、
【0016】
この残容量判定工程で判定される第1の残容量(SOC[%])と第2の残容量(SOC[%])の差から残容量変化値(δSOC[%])を演算する残容量変化値演算工程と、残容量変化値(δSOC[%])と容量変化値(δAh)から電池の満充電容量(Ahf)を演算する満充電容量演算工程とからなる。
【0017】
さらに、本発明の電池の満充電容量検出方法は、容量変化値(δAh)と、残容量変化値(δSOC[%])と、第1の開放電圧(VOCV1)と第2の開放電圧(VOCV2)との電圧差の少なくとも何れかが、あらかじめ設定している設定値よりも大きな状態において、容量変化値(δAh)と残容量変化値(δSOC[%])から電池の満充電容量を演算する。
【0018】
以上の満充電容量検出方法は、電池を満充電したり完全に放電したりすることなく、より正確に電池の満充電容量(Ahf)を検出できる特徴がある。それは、以上の満充電容量検出方法が、容量変化値(δAh)、残容量変化値(δSOC[%])、第1の開放電圧(VOCV1)と第2の開放電圧(VOCV2)との電圧差の少なくとも何れかが、あらかじめ設定している設定値よりも大きな状態においてのみ、容量変化値(δAh)と残容量変化値(δSOC[%])から電池の満充電容量を演算するからである。
【0019】
開放電圧(VOCV)から電池の残容量[SOC(%)]を推定する方法は、開放電圧(VOCV)に対する残容量[SOC(%)]を常に正確に特定するのが難しい。それは、充放電される電池の種々の条件が、開放電圧(VOCV)に対する残容量[SOC(%)]を変動させる原因となるからである。開放電圧(VOCV)から残容量[SOC(%)]を推定する方法は、開放電圧(VOCV)が同じであっても、電池の現実の残容量[SOC(%)]が異なることがある。したがって、開放電圧(VOCV)から残容量[SOC(%)]を推定し、推定される残容量[SOC(%)]をひとつのパラメーターとして電池の満充電容量(Ahf)を検出すると、開放電圧(VOCV)に対する残容量[SOC(%)]の誤差が、検出される満充電容量(Ahf)の誤差の原因となる。開放電圧(VOCV)に対する残容量[SOC(%)]の誤差は、プラス側とマイナス側の両方に変動するので、残容量[SOC(%)]の差から残容量変化値(δSOC[%])を検出すると、誤差が累積されることがある。とくに、充放電される電池の容量変化値(δAh)が小さく、開放電圧(VOCV)の変化の少ない状態で、各々の開放電圧(VOCV)から残容量[SOC(%)]を推定して、残容量変化値(δSOC[%])を検出すると、誤差が相当に大きくなることがある。それは、各々の開放電圧(VOCV)から推定される残容量[SOC(%)]に、プラス側とマイナス側とに変化する誤差があるので、残容量変化値(δSOC[%])の差には誤差が累積されることがあるからである。
【0020】
図1は残容量変化値(δSOC[%])が小さい状態と、大きい状態とで残容量変化値(δSOC[%])に対する誤差が変化する状態を示している。この図の(a)は残容量変化値(δSOC[%])が小さい状態を示し、(b)は残容量変化値(δSOC[%])が大きい状態を示している。この図から明らかなように、残容量変化値(δSOC[%])が大きくなると、残容量変化値(δSOC[%])に対する誤差の割合は小さくなる。残容量変化値(δSOC[%])は、(a)と(b)に示すように、最小値のδSOC[%]minから最大値のδSOC[%]maxまで変化する。したがって、残容量変化値(δSOC[%])に対する誤差は、(δSOC[%]max−δSOC[%]min)/(δSOC[%])となり、分母の残容量変化値(δSOC[%])が大きくなると、誤差は小さくなる。
【0021】
以上の満充電容量検出方法は、残容量変化値(δSOC[%])の誤差の割合が小さくなる状態でのみ、電池の満充電容量(Ahf)を検出するので、より正確に満充電容量(Ahf)を検出できる特徴が実現される。
【0022】
本発明の電池の満充電容量検出方法は、満充電容量演算工程において、下記の式に基づいて電池の満充電容量を演算することができる。
【0023】
Ahf=δAh/(δSOC[%]/100)
【0024】
本発明の電池の満充電容量検出方法は、容量変化値(δAh)を設定値に比較して、容量変化値(δAh)が設定値よりも大きい状態において、容量変化値(δAh)と残容量変化値(δSOC[%])から電池の満充電容量を演算することができる。
【0025】
また、本発明の電池の満充電容量検出方法は、残容量変化値(δSOC[%])を設定値に比較して、残容量変化値(δSOC[%])が設定値よりも大きな状態において、容量変化値(δAh)と残容量変化値(δSOC[%])から電池の満充電容量を演算することもできる。
【0026】
さらに、本発明の満充電容量検出方法は、第1の開放電圧(VOCV1)と第2の開放電圧(VOCV2)との電圧差を設定値に比較して、電圧差が設定値よりも大きな状態において、容量変化値(δAh)と残容量変化値(δSOC[%])から電池の満充電容量を演算することができる。
【0027】
さらに、本発明の満充電容量検出方法は、残容量変化値(δSOC[%])と容量変化値(δAh)から検出される検出満充電容量(Ahf1)と、先に検出している以前の満充電容量(Ahf2)とから、以下の式で電池の満充電容量(Ahf)を検出することができる。
【0028】
満充電容量(Ahf)=ウエイト1×検出満充電容量(Ahf1)+ウエイト2×以前の満充電容量(Ahf2)
【0029】
ただし、ウエイト1+ウエイト2=1とする。
【0030】
以上の満充電容量検出方法は、以前の満充電容量(Ahf2)を考慮しながら電池の満充電容量(Ahf)を検出するのでより正確に満充電容量(Ahf)を検出できる。
【0031】
さらに、本発明の満充電容量検出方法は、ウエイト1とウエイト2を、容量変化値(δAh)で変化させると共に、容量変化値(δAh)が大きくなるにしたがって、ウエイト1を大きくすることができる。
【0032】
この方法は、容量変化値(δAh)が大きくなるにしたがって、すなわち、より正確に検出される容量変化値(δAh)から検出される電池の満充電容量(Ahf)のウエイトを大きくして、電池の満充電容量(Ahf)を書き換えるので、より正確に電池の満充電容量(Ahf)を検出できる。
【0033】
さらに、本発明の満充電容量検出方法は、ウエイト1とウエイト2とを、残容量変化値(δSOC[%])で変化させると共に、残容量変化値(δSOC[%])が大きくなるにしたがって、ウエイト1を大きくすることもできる。
【0034】
この満充電容量検出方法は、残容量変化値(δSOC[%])が大きくなるしたがって、すなわちより正確に検出される残容量変化値(δSOC[%])から検出される電池の満充電容量(Ahf1)のウエイトを大きくして、電池の満充電容量(Ahf)を書き換えるので、より正確に電池の満充電容量(Ahf)を検出できる。
【0035】
また、本発明の満充電容量検出方法は、ウエイト1とウエイト2とを、第1の開放電圧(VOCV1)と第2の開放電圧(VOCV2)との電圧差とで変化させると共に、電圧差が大きくなるにしたがって、ウエイト1を大きくすることもできる。この方法は、電圧差が大きくなる状態で検出される検出される満充電容量(Ahf1)、すなわちより正確に検出される電池の満充電容量(Ahf1)のウエイトを大きくして、電池の満充電容量(Ahf)を書き換えるので、より正確に電池の満充電容量(Ahf)を検出できる。
【0036】
さらにまた、本発明の満充電容量検出方法は、ウエイト1とウエイト2を、容量変化値(δAh)を検出するタイミングで変化させると共に、タイミングが長くなるにしたがって、ウエイト1を大きくすることもできる。
【0037】
この方法は、容量変化値(δAh)を検出するタイミングが長い状態で検出される容量変化値(δAh1)、すなわちより正確に検出される電池の満充電容量(Ahf1)のウエイトを大きくして、電池の満充電容量(Ahf)を書き換えるので、より正確に電池の満充電容量(Ahf)を検出できる。
【0038】
さらにまた、本発明の満充電容量検出方法は、前記容量変化値(δAh)と、前記残容量変化値(δSOC[%])と、第1の開放電圧(VOCV1)と第2の開放電圧(VOCV2)との電圧差の全てが、あらかじめ設定している設定値以下である状態において、電池温度を検出して、検出される電池温度から電池の劣化度[%]を演算すると共に、この電池の劣化度[%]と、電池の初期満充電容量(Ahf0)と、先に検出している以前の満充電容量(Ahf2)とから、電池の満充電容量(Ahf)を演算することができる。
【0039】
第1の検出タイミングと第2の検出タイミングは、電池に電流が流れないタイミングとすることができ、また、第1の検出タイミングと第2の検出タイミングとを、変動する時間間隔とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】残容量変化値(δSOC[%])の大きさによって、誤差が異なることを示す図である。
図2】本発明の一実施例にかかる電池の満充電容量検出方法に使用する電源装置の回路図である。
図3】電池の残容量−開放電圧特性を示すグラフである。
図4】電池の特定の検出電圧において、充放電電流に対する開放電圧特性を示すグラフである。
図5】容量変化値(δAh)に対するウエイト1とウエイト2を示す図である。
図6】残容量変化値(δSOC[%])に対するウエイト1とウエイト2を示す図である。
図7】最低電圧と最大電圧の電圧差に対する開放電圧(VOCV)の比率に対するウエイト1とウエイト2を示す図である。
図8】本発明の他の実施例にかかる電池の満充電容量検出方法を示すフローチャートである。
図9】本発明の他の実施例にかかる電池の満充電容量検出方法を示すフローチャートである。
図10】本発明の他の実施例にかかる電池の満充電容量検出方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための電池の満充電容量検出方法を例示するものであって、本発明は満充電容量検出方法を以下に特定しない。さらに、この明細書は、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0042】
図2は、本発明の電池の満充電容量検出方法に使用する電源装置の回路図である。この電源装置は、車両を走行させるモータに電力を供給する装置に使用され、また、昼間に太陽電池で電池を充電して、充電された電力を昼間や夜間に出力する装置に使用される。この電源装置は、充電できる電池1と、電池1の充放電の電流を検出する電流検出部2と、電池1の電圧を検出する電圧検出部3と、電池1の温度を検出する温度検出部4と、電流検出部2の出力信号を演算して電池1を充放電する電流を積算して電池1の容量(Ah)を検出する容量演算部5と、電圧検出部3の出力信号から電池1の残容量(SOC[%])を判定する残容量検出部6と、この残容量検出部6と容量演算部5の出力信号で電池1の満充電容量を検出する満充電容量検出部7と、満充電容量検出部7で検出される満充電容量でもって電池1の残容量(SOC[%])を補正して正確な残容量(SOC[%])を検出する残容量補正回路8と、電池1を電源として使用する本体側の車両や太陽電池装置に、電池情報を伝送する通信処理部9とを備える。
【0043】
電池1は、リチウムイオン二次電池またはリチウムポリマー電池である。ただ、電池は、ニッケル水素電池やニッケルカドミウム電池などの充電できる電池を用いることができる。電池1は、ひとつまたは複数の二次電池を直列または並列に接続している。
【0044】
電池1の充放電の電流を検出する電流検出部2は、電池1と直列に接続している電流検出抵抗10の両端に発生する電圧を検出して充電電流と放電電流を検出する。電流検出部2は、電流検出抵抗10の両端に誘導される電圧をアンプ(図示せず)で増幅し、アンプの出力信号であるアナログ信号をA/Dコンバータ(図示せず)でデジタル信号に変換して出力する。電流検出抵抗10は、電池1に流れる電流に比例した電圧が発生するので、電圧で電流を検出することができる。アンプは、+−の信号を増幅できるオペアンプで、出力電圧の+−で充電電流と放電電流を識別する。電流検出部2は、容量演算部5と残容量検出部6と通信処理部9に電池1の電流信号を出力する。
【0045】
電圧検出部3は、電池1の電圧を検出し、検出したアナログ信号をA/Dコンバータ(図示せず)でデジタル信号に変換して出力する。電圧検出部3は、残容量検出部6と通信処理部9に検出した電池1の電圧信号を出力する。複数の素電池を直列に接続している電源装置にあっては、各々の電池電圧を検出してその平均値を出力することもできる。また、複数の素電池を直列に接続して電池モジュールとし、さらに複数の電池モジュールを直列に接続している電源装置にあっては、電池モジュールの平均値を電池電圧として出力する。
【0046】
温度検出部4は、電池1の温度を検出し、検出した信号をA/Dコンバータ(図示せず)でデジタル信号に変換して出力する。温度検出部4は、容量演算部5と残容量検出部6と通信処理部9とに温度信号を出力する。
【0047】
容量演算部5は、電流検出部2から入力されるデジタル信号の電流信号を演算して電池1の放電できる容量(Ah)を演算する。この容量演算部5は、電池1の充電容量から放電容量を減算して、電池1の放電できる容量(Ah)を電流の積算値(Ah)として演算する。充電容量は、電池1の充電電流の積算値で、あるいはこれに充電効率をかけて演算される。放電容量は、放電電流の積算値で演算される。容量演算部5は、温度検出部4から入力される信号で、充電容量と放電容量の積算値を補正して正確に容量を演算することができる。
【0048】
残容量検出部6は、電池1の開放電圧(VOCV)から電池1の残容量(SOC[%])を、判定する。残容量検出部6は、電圧検出部3から入力される電池1の電圧信号と、電流検出部2から入力される電流信号から電池1の開放電圧(VOCV)を検出し、あるいは電流検出部2から入力される充放電の電流値が0となるタイミングにおいて、電圧検出部3から入力される電圧値を開放電圧(VOCV)として検出する。さらに、残容量検出部6は、検出した電池1の開放電圧(VOCV)から電池1の残容量(SOC[%])を判定するために、電池1の開放電圧(VOCV)に対する残容量(SOC[%])を、関数又はルックアップテーブルとしてメモリ11に記憶している。図3は、電池の開放電圧(VOCV)に対する残容量(SOC[%])を示すグラフである。メモリ11は、このグラフで示す開放電圧−残容量の特性を関数として、あるいはテーブルとして記憶している。残容量検出部6は、メモリ11に記憶される関数やテーブルから、開放電圧(VOCV)に対する残容量(SOC[%])を判定する。
【0049】
残容量検出部6は、必ずしも充放電の電流が0になるタイミングにおいて、開放電圧(VOCV)を検出する必要はなく、電流検出部2で検出される電池1の充放電の電流から電池1の開放電圧(VOCV)を演算して検出することもできる。この残容量検出部6は、電池1の検出電圧(VCCV)と充放電の電流に対する開放電圧(VOCV)を、関数又はテーブルとしてメモリ11に記憶している。図4は、特定の検出電圧(VCCV)における、電池の充放電電流に対する電池の開放電圧(VOCV)を示すグラフである。メモリ11は、このグラフで示す電流−開放電圧の特性を関数として、あるいはテーブルとして記憶している。残容量検出部6は、メモリ11に記憶される関数やテーブルから、検出電圧と充放電の電流に対する開放電圧(VOCV)を演算し、さらに、演算された開放電圧(VOCV)から電池1の残容量(SOC[%])を判定する。この残容量検出部6は、電池1の充放電の状態にかかわらず、いいかえると、電池1に充放電の電流が流れる状態においても、電池1の開放電圧(VOCV)を検出できる。
【0050】
容量演算部5と残容量演算部6は、第1の検出タイミングと第2の検出タイミングとで電池の容量(Ah)と残容量[SOC(%)]を検出する。第1の検出タイミングと第2の検出タイミングは、好ましくは電池に電流が流れないタイミングとする。検出タイミングは、あらかじめ設定している設定時間よりも長い時間、電池に電流が流れない状態が継続した後に設定することで、開放電圧(VOCV)に対する残容量[SOC(%)]をより正確に検出できる。設定時間は、好ましくは30分とする。ただし、設定時間は、例えば1分ないし10時間、好ましくは10分ないし3時間とすることもできる。設定時間を長くして、開放電圧(VOCV)に対する残容量[SOC(%)]をより正確に検出できる。第1の検出タイミングの設定時間を、第2の検出タイミングの設定時間よりも長くすることで、第1の検出タイミングにおける開放電圧(VOCV)に対する残容量[SOC(%)]をより正確に検出できる。また、第2の検出タイミングの設定時間を第1の検出タイミングの設定時間よりも短くすることで、充電や放電を停止した後、速やかに開放電圧(VOCV)を検出して残容量[SOC(%)]を検出できる。
【0051】
ただし、検出電圧と充放電の電流値から開放電圧(VOCV)を演算して残容量(SOC[%])を判定する方法においては、第1の検出タイミングと第2の検出タイミングは、電池1の充放電の電流が0になるタイミングに特定することなく、検出タイミングを電池に電流が流れているタイミングとすることができる。
【0052】
第1の検出タイミングと第2の検出タイミングの時間間隔は、あらかじめ設定している一定の時間とすることなく、変動する時間間隔とすることで、第1の検出タイミングと第2の検出タイミングとを最適なタイミングに設定して、電池の満充電容量(Ahf)をより正確に検出できる。たとえば、プラグインハイブリッドカーにあっては、充電ステーションで充電を開始する直前のタイミングを第1の検出タイミングとし、充電ステーションで充電を終了したタイミングを第2の検出タイミングとする。充電ステーションで電池を充電する状態は、ほとんどの場合、充電時間が長くなるので容量変化値(δAh)と残容量変化値(δSOC[%])が大きく、電池の満充電容量(Ahf)を正確に検出できる確率が高くなる。
【0053】
ハイブリッドカーにあっては、イグニッションスイッチ12をオンに切り換えるタイミングであって、電池1の負荷電流を遮断するタイミングを第1の検出タイミングとし、イグニッションスイッチ12をオフに切り換えた後を第2の検出タイミングとする。ハイブリッドカーにおける第1の検出タイミングは、イグニッションスイッチ12がオンに切り換えられる前後における所定の範囲、たとえば、イグニッションスイッチ12がオンに切り換えられる2時間前から、オンに切り換えた後3秒以内、好ましくは1秒以内とするタイミングとすることができる。第1の検出タイミングを、イグニッションスイッチ12がオンに切り換えられる前とする場合は、電圧検出部3が、前回、電池1の電圧を検出したタイミングを第1の検出タイミングとし、このとき検出されてメモリ11に記憶される電池電圧を第1の開放電圧(VOCV1)とすることができる。また、第2の検出タイミングは、イグニッションスイッチ12をオフに切り換えた後であって、電池1の電圧が安定したタイミング、たとえばイグニッションスイッチ12をオフに切り換えた後、2時間経過後とする。
【0054】
太陽電池の電源に使用される電池にあっては、第1の検出タイミングと第2の検出タイミングとを、太陽電池で充電されず、また負荷に放電されないタイミングとする。ただし、この用途に使用される電池は、特定の時間に、あるいは一定の時間間隔で第1の検出タイミングと第2の検出タイミングとを特定することもできる。
【0055】
電池1は、充放電されて、完全に放電されるまで放電できる容量(Ah)と残容量(SOC[%])を変化させる。電池は、放電されて電池の放電できる容量(Ah)と残容量(SOC[%])は減少し、充電されて電池の放電できる容量(Ah)と残容量(SOC[%])は増加する。第1の検出タイミングから第2の検出タイミングまでに変化する電池の放電できる容量(Ah)は、容量演算部5で検出される。容量演算部5は、第1の検出タイミングから第2の検出タイミングまでの時間帯において、電池1の充電電流と放電電流を積算して容量変化値(δAh)を検出し、容量変化値(δAh)から放電できる容量(Ah)を演算する。一方、第1の検出タイミングから第2の検出タイミングまでに変化する電池の残容量(SOC[%])は、残容量検出部6で検出される。残容量検出部6は、第1の検出タイミングにおける電池1の電圧から特定される第1の残容量(SOC1[%])と、第2の検出タイミングにおける電池の電圧から特定される第2の残容量(SOC2[%])の差から残容量変化値(δSOC[%])を検出する。
【0056】
容量演算部5は、第1の検出タイミングから第2の検出タイミングまでの時間帯における充放電の電流を積算して容量変化値(δAh)を検出し、容量変化値(δAh)から変化する電池の放電できる容量(Ah)を検出する。残容量検出部6は変化する電池の開放電圧(VOCV)から残容量(SOC[%])を検出する。満充電容量検出部7は、変化する電池の容量変化値(δAh)と、残容量変化値(δSOC[%])から満充電容量(Ahf)を演算する。満充電容量検出部7は、電池1の容量変化値(δAh)と残容量変化値(δSOC[%])とを検出するために、第1の検出タイミングと第2の検出タイミングとの間において、充放電される電池1の容量変化値(δAh)と残容量変化値(δSOC[%])とを演算する。
【0057】
満充電容量検出部7は、残容量検出部6で検出される電池1の残容量(SOC[%])の変化、すなわち第1の検出タイミングから第2の検出タイミングまでに変化する残容量(SOC[%])の変化値(δSOC[%])と、容量演算部5で検出される電池1の放電できる容量(Ah)の変化、すなわち容量変化値(δAh)から、下記の式で電池1の満充電容量(Ahf)を検出する。
【0058】
Ahf=δAh/(δSOC[%]/100)
【0059】
ただし、満充電容量検出部は、残容量変化値(δSOC[%])と容量変化値(δAh)とからつねに満充電容量(Ahf)を検出するのではない。満充電容量検出部は、第1の検出タイミングから第2の検出タイミングまでに検出される容量変化値(δAh)をあらかじめ記憶している設定値に比較し、容量変化値(δAh)が設定値よりも大きい状態においてのみ、容量変化値(δAh)と残容量変化値(δSOC[%])から電池の満充電容量を演算する。この満充電容量検出部が記憶している設定値は、定格満充電容量(Ahf)の例えば10%以上とする。
【0060】
満充電容量検出部は、容量変化値(δAh)でなく、第1の検出タイミングから第2の検出タイミングまでに検出される残容量変化値(δSOC[%])を設定値に比較して、残容量変化値(δSOC[%])が設定値よりも大きな状態に限って、容量変化値(δAh)と残容量変化値(δSOC[%])から電池の満充電容量を演算することもできる。この満充電容量検出部は、残容量変化値(δSOC[%])の設定値を記憶している。設定値は、たとえば10%以上とする。
【0061】
さらに、満充電容量検出部は、第1の検出タイミングにおける第1の開放電圧(VOCV1)と第2の検出タイミングにおけ第2の開放電圧(VOCV2)との電圧差を設定値に比較して、電圧差が設定値よりも大きな状態においてのみ、容量変化値(δAh)と残容量変化値(δSOC[%])から電池の満充電容量を演算することもできる。満充電容量検出部は、電圧差を設定値にして記憶している。設定値は、最低電圧と最高電圧との差の20%以上とする。
【0062】
以上のように、満充電容量検出部は、第1の検出タイミングから第2の検出タイミングまでの容量変化値(δAh)と、残容量変化値(δSOC[%])と、第1の開放電圧(VOCV1)と第2の開放電圧(VOCV2)との電圧差の少なくとも何れかが、あらかじめ設定している設定値よりも大きな状態においてのみ、容量変化値(δAh)と残容量変化値(δSOC[%])から電池の満充電容量を演算する。
【0063】
満充電容量検出部7は、以上のように特定の条件を満足する状態に限って、第1の検出タイミングで検出される電池の第1の放電できる容量(Ah)と第2の検出タイミングで検出される電池の第2の放電できる容量(Ah)との差から容量変化値(δAh)を演算し、あるいは、第1の検出タイミングから第2の検出タイミングまでの間に充放電される電流の積算値から容量変化値(δAh)を演算する。また、満充電容量検出部7は、第1の検出タイミングで検出される電池の第1の開放電圧(VOCV1)から特定される残容量(SOC[%])と、第2の検出タイミングで検出される第2の開放電圧(VOCV2)から特定される残容量(SOC[%])の差から残容量変化値(δSOC[%])を演算する。
【0064】
満充電容量検出部7は、残容量変化値(δSOC[%])と容量変化値(δAh)から検出される検出満充電容量(Ahf1)と、先に検出している以前の満充電容量(Ahf2)とから、以下の式で電池の満充電容量(Ahf)をより正確に検出する。
【0065】
満充電容量(Ahf)=ウエイト1×検出満充電容量(Ahf1)+ウエイト2×以前の満充電容量(Ahf2)
【0066】
ただし、ウエイト1+ウエイト2=1とする。
【0067】
以上の満充電容量検出部7は、残容量変化値(δSOC[%])と容量変化値(δAh)から検出した最新の検出満充電容量(Ahf1)を電池の正しい満充電容量(Ahf)とせず、以前に検出した満充電容量(Ahf2)を補正して電池の満充電容量(Ahf)を決定することで、より正確に電池の満充電容量(Ahf)を検出する。
【0068】
ウエイト1は、第1の検出タイミングから第2の検出タイミングまでの時間帯における容量変化値(δAh)で変化させる。すなわち、容量変化値(δAh)が大きくなるにしたがって、ウエイト1を大きくする。この方法は、容量変化値(δAh)を定格容量又は満充電容量(Ahf)の10%とする状態で、ウエイト1を0.1とし、容量変化値(δAh)が10%よりも小さくなるにしたがって、ウエイト1を小さく、また10%よりも大きくなるにしたがってウエイト1を大きくする。図5は、容量変化値(δAh)に対するウエイト1とウエイト2を示している。容量変化値(δAh)に対するウエイト1とウエイト2は、あらかじめメモリに記憶している。この方法は、容量変化値(δAh)が大きくなって、検出満充電容量(Ahf)の精度が高くなるにしたがって、ウエイト1を大きくして、より正確に電池の満充電容量(Ahf)を検出できる。
【0069】
また、ウエイト1は、第1の検出タイミングから第2の検出タイミングまでの残容量変化値(δSOC[%])で変化させることもできる。満充電容量検出部は、残容量変化値(δSOC[%])が大きくなるにしたがって、ウエイト1を大きくし、たとえば、残容量変化値(δSOC[%])が10%となる状態で、ウエイト1を0.1とし、残容量変化値(δSOC[%])が10%よりも小さくなるにしたがって、ウエイト1を小さく、また10%よりも大きくなるにしたがってウエイト1を大きくする。図6は、残容量変化値(δSOC[%])に対するウエイト1とウエイト2を示している。この方法は、残容量変化値(δSOC[%])が大きくなって、検出満充電容量(Ahf)の精度が高くなるにしたがって、ウエイト1を大きくして、より正確に電池の満充電容量(Ahf)を検出できる。
【0070】
さらに、満充電容量検出部は、ウエイト1を、第1の開放電圧(VOCV1)と第2の開放電圧(VOCV2)との電圧差で変化させることもできる。この満充電容量検出部は、開放電圧(VOCV)の電圧差が大きくなるにしたがって、ウエイト1を大きくし、たとえば、開放電圧(VOCV)の電圧差が、最低電圧と最大電圧の電圧差の10パーセントとなる状態で、ウエイト1を0.1とし、電圧差が10%よりも小さくなるにしたがって、ウエイト1を小さく、また10%よりも大きくなるにしたがってウエイト1を大きくする。図7は、最低電圧と最大電圧の電圧差に対する開放電圧(VOCV)の比率に対するウエイト1とウエイト2を示している。この方法は、電圧差が大きくなって、検出満充電容量(Ahf)の精度が高くなるにしたがって、ウエイト1を大きくして、より正確に電池の満充電容量(Ahf)を検出できる。
【0071】
さらにまた、満充電容量検出部は、ウエイト1を、第1の検出タイミングから第2の検出タイミングまでの時間帯の長さ変化させることができる。この満充電容量検出部は、時間帯が長くなるにしたがって、ウエイト1を大きく、たとえば、時間帯が1時間となる状態で、ウエイト1を0.1とし、時間帯の長さが1時間よりも短くなるにしたがって、ウエイト1を小さく、また1時間よりも大きくなるにしたがってウエイト1を大きくする。この方法は、第1の検出タイミングから第2の検出タイミングまでの時間帯が長くなって、検出満充電容量(Ahf)の精度が高くなるにしたがって、ウエイト1を大きくして、より正確に電池の満充電容量(Ahf)を検出できる。
【0072】
残容量補正回路8は、満充電容量検出部7で検出される電池1の満充電容量(Ahf)で補正して、電池1の正確な残容量(SOC[%])を検出する。すなわち、満充電容量検出部7で検出される電池1の満充電容量(Ahf)と、容量演算部5で演算される電池1の放電できる容量(Ah)から以下の式で残容量(SOC[%])を検出する。
【0073】
残容量(SOC[%])=[放電できる容量(Ah)/満充電容量(Ahf)]×100
【0074】
残容量補正回路8は、以上の式で演算される電池1の残容量(SOC[%])と、残容量検出部6が電池電圧から検出する残容量(SOC[%])との両方から、電池1の残容量を正確に検出することができる。残容量補正回路8は、たとえば、満充電容量(Ahf)と放電できる容量(Ah)から演算する残容量(SOC[%])と、電池電圧から判定する残容量(SOC[%])を平均して、電池1の正確な残容量(SOC[%])を演算する。また、電池電圧や残容量(SOC[%])によって、満充電容量(Ahf)と放電できる容量(Ah)から演算される残容量(SOC[%])と、電池電圧から判定される残容量(SOC[%])を重みつけして電池1の正確な残容量(SOC[%])を演算することもできる。
【0075】
通信処理部9は、残容量補正回路8で検出される残容量(SOC[%])、満充電容量検出部7で検出する満充電容量(Ahf)、残容量検出部6で検出された残容量(SOC[%])、電圧検出部3で検出した電池電圧、電流検出部2で検出した電流値、温度検出部4で検出した温度等の電池情報を、通信回線13を介して電源装置を装着している機器に伝送する。
【0076】
さらに、電源装置は、演算された満充電容量(Ahf)に基づいて、電池1の劣化度を判定することもできる。この電源装置は、演算された満充電容量(Ahf)が、電池の定格容量(Ahs)に対してどの程度減少したかによって電池1の劣化度を判定する。この電源装置は、電池の満充電容量(Ahf)や、定格容量に対する比率(Ahf/Ahs)から電池の劣化度を検出する関数やテーブルを記憶しており、記憶される関数やテーブルに基づいて電池の劣化度を検出する。
【0077】
以上の電源装置は、以下に示す工程で電池の満充電容量(Ahf)を検出する。
[容量変化検出工程]
【0078】
満充電容量検出部7が、第1の検出タイミングと第2の検出タイミングとの間において、充放電される電池1の充電電流と放電電流の積算値から電池1の容量変化値(δAh)を演算する。
【0079】
この工程において、満充電容量検出部7は、容量演算部5が第1の検出タイミングで検出する電池の第1の容量(Ah)と第2の検出タイミングで検出する電池の第2の容量(Ah)との差から容量変化値(δAh)を演算し、あるいは、第1の検出タイミングから第2の検出タイミングまでの間に充放電される電流の積算値として容量演算部5が演算する容量変化値(δAh)を検出する。
[開放電圧検出工程]
【0080】
残容量検出部6が、第1の検出タイミングにおける電池1の第1の開放電圧(VOCV1)と第2の検出タイミングにおける電池1の第2の開放電圧(VOCV2)を検出する。残容量検出部6は、電池1の充放電の電流が0になるタイミングにおいて開放電圧(VOCV)を検出し、あるいは、充放電の電流から開放電圧(VOCV)を演算して検出する。
[残容量判定工程]
【0081】
さらに、残容量検出部6は、開放電圧検出工程で検出される第1の開放電圧(VOCV1)から電池1の第1の残容量(SOC[%])を判定し、第2の開放電圧(VOCV2)から電池1の第2の残容量(SOC[%])を判定する。残容量検出部6は、メモリ11に記憶する関数又はテーブルに基づいて開放電圧(VOCV)から電池1の残容量(SOC[%])を判定する。
[残容量変化値演算工程]
【0082】
満充電容量検出部7が、残容量判定工程で判定される第1の残容量(SOC[%])と第2の残容量(SOC[%])の差から残容量変化値(δSOC[%])を演算する。
[満充電容量演算工程]
【0083】
さらに、満充電容量検出部7は、第1の検出タイミングから第2の検出タイミングまでの容量変化値(δAh)が設定値よりも大きいか、あるいは残容量変化値(δSOC[%])が設定値よりも大きいか、あるいは又第1の開放電圧(VOCV1)と第2の開放電圧(VOCV2)との電圧差が設定値よりも大きいかを判定し、容量変化値(δAh)と、残容量変化値(δSOC[%])と、電圧差の何れかひとつ、あるいは複数の数値が設定値よりも大きい状態に限って、容量変化検出工程で検出される容量変化値(δAh)と、残容量変化値演算工程で演算される残容量変化値(δSOC[%])とから、下記の式で電池1の満充電容量(Ahf)を演算する。
【0084】
Ahf=δAh/(δSOC[%]/100)
【0085】
さらに、満充電容量検出部7は、第1の検出タイミングから第2の検出タイミングまでの容量変化値(δAh)と、残容量変化値(δSOC[%])と、第1の開放電圧(VOCV1)と第2の開放電圧(VOCV2)との電圧差の全てが設定値以下であるとき、電池温度を検出し、検出された電池温度から電池1の劣化度[%]を演算し、演算された電池1の劣化度[%]から電池1の満充電容量(Ahf)を演算する。電池温度は、温度検出部4において検出される。満充電容量検出部7は、温度検出部4で検出される電池温度を電池1の劣化度合いに換算する温度係数を記憶しており、この温度係数に基づいて電池1の劣化度[%]を演算する。電池1の劣化は、電池温度が高いほど進行する。したがって、電池温度から電池1の劣化度合いに換算する温度係数は、負の係数であって、電池1が高い温度で充放電されるにしたがって絶対値が大きくなるように特定される。この温度係数は、例えば、関数やテーブルとしてメモリ等に記憶される。
【0086】
満充電容量検出部7は、電池1の一定時間(例えば1秒)ごとの電池温度(例えば、最大電池温度)を検出し、検出された電池温度から換算される温度係数と、電池1がその温度にあった時間との積である劣化係数を演算し、この劣化係数を、第1の検出タイミングから第2の検出タイミングまで加算して、加算劣化係数を演算する。この劣化係数が加算される第1の検出タイミングから第2の検出タイミングまでの時間は、例えば最大4時間をインターバルとする所定の時間とすることができる。さらに、満充電容量検出部7は、電池1の初期満充電容量(Ahf0)と、先に検出している以前の満充電容量(Ahf2)、すなわち、前回の満充電容量(Ahf2)と、演算された加算劣化係数とから、以下の式で電池1の劣化度[%]を演算する。
【0087】
劣化度[%]=[{(前回の満充電容量(Ahf2)/初期満充電容量(Ahf0))×100}+加算劣化係数]1/2
【0088】
さらに、満充電容量検出部7は、電池温度から演算された劣化度[%]と、初期満充電容量(Ahf0)と、以前の満充電容量(Ahf2)である前回の満充電容量(Ahf2)とから、以下の式で電池1の満充電容量(Ahf)を演算する。
【0089】
満充電容量(Ahf2)=前回の満充電容量(Ahf2)×a+初期満充電容量(Ahf0)×劣化量[%]/100×(1−a)
【0090】
ただし、a、bは電池の種類や条件等により特定されるウエイトであって、a+b=1である。
【0091】
プラグインハイブリッドカーの電源装置に使用される電池は、以下のステップで、図8のフローチャートに基づいて電池の満充電容量を検出する。
[n=1のステップ]
【0092】
充電ステーションでの充電が開始される状態にあるかどうかを判定する。充電ステーションで充電が開始される状態にあっては、充電を開始する以前の電池に電流が流れない状態を第1の検出タイミングとする。
[n=2のステップ]
【0093】
残容量検出部6が、第1の検出タイミングにおける電池1の第1の開放電圧(VOCV1)を検出する。
[n=3のステップ]
【0094】
残容量検出部6は、検出された第1の開放電圧(VOCV1)から電池1の第1の残容量(SOC[%])を関数やテーブルから判定する。
[n=4のステップ]
【0095】
満充電容量検出部7が、第1の検出タイミングにおける電池1の第1の容量(Ah)を検出する。満充電容量検出部7は、たとえば、前回、検出した電池1の満充電容量(Ahf)に、n=3のステップで判定した電池1の第1の残容量(SOC[%])をかけて、電池1の第1の容量(Ah)を演算して検出することができる。
[n=5のステップ]
【0096】
充電ステーションでの充電が完了したかどうかを判定する。充電ステーションでの充電が終了するまでこのステップをループする。
[n=6のステップ]
【0097】
充電ステーションでの充電が終了すると、所定の時間経過後を第2の検出タイミングとして、残容量検出部6が、電池1の第2の開放電圧(VOCV2)を検出する。
[n=7のステップ]
【0098】
残容量検出部6は、検出された第2の開放電圧(VOCV2)から電池1の第2の残容量(SOC[%])を関数やテーブルから判定する。
[n=8のステップ]
【0099】
満充電容量検出部7が、第2の検出タイミングにおける電池1の第2の容量(Ah)を検出する。電池1の第2の容量(Ah)は、容量演算部5によって、充放電される電池1の充電電流と放電電流の積算値から演算される。
[n=9のステップ]
【0100】
満充電容量検出部7が、第1の検出タイミングにおける電池1の第1の容量(Ah)と第2の検出タイミングにおける電池1の第2の容量(Ah)の差から容量変化値(δAh)を演算する。
[n=10のステップ]
【0101】
電池1の第1の残容量(SOC[%])と第2の残容量(SOC[%])の差から残容量変化値(δSOC[%])を演算する。
[n=11のステップ]
【0102】
満充電容量検出部7が、検出される容量変化値(δAh)と、残容量変化値(δSOC[%])と、第1の開放電圧(VOCV1)と第2の開放電圧(VOCV2)との電圧差の少なくとも何れかが、あらかじめ設定している設定値よりも大きな状態にあるかどうかを判定する。
【0103】
これらの何れかが設定値よりも大きいと、n=12〜13のステップに進み、設定値以下であると、n=14〜16のステップに進む。
[n=12のステップ]
【0104】
満充電容量検出部7が、演算された容量変化値(δAh)と残容量変化値(δSOC[%])から、以下の式で電池1の満充電容量(Ahf)を演算する。
【0105】
Ahf=δAh/(δSOC[%]/100)
[n=13のステップ]
【0106】
残容量補正回路8が、満充電容量検出部7で検出される電池1の満充電容量(Ahf)を基準として、容量演算部5で検出される放電できる容量(Ah)から残容量(SOC[%])を演算する。演算された残容量(SOC[%])と、残容量検出部6で電池電圧から検出される残容量(SOC[%])の両方から電池1の残容量(SOC[%])を演算する。これにより、より正確な残容量(SOC[%])を演算できる。
[n=14のステップ]
【0107】
満充電容量検出部7は、温度検出部4で検出される電池温度に基づいて、電池1の劣化度[%]を演算する。満充電容量検出部7は、電池温度から特定される温度係数と、電池1がその温度にあった時間との積である劣化係数を演算し、この劣化係数を、第1の検出タイミングから第2の検出タイミングまで加算して、加算劣化係数を演算する。さらに、さらに、満充電容量検出部7は、電池の初期満充電容量(Ahf)と前回の満充電容量(Ahf)、及び加算劣化係数から、以下の式で電池1の劣化度[%]を演算する。
【0108】
劣化度[%]=[{(前回の満充電容量(Ahf2)/初期満充電容量(Ahf0))×100}+加算劣化係数]1/2
[n=15のステップ]
【0109】
満充電容量検出部7は、電池温度から演算された劣化度[%]と、初期満充電容量(Ahf0)と、以前の満充電容量(Ahf2)である前回の満充電容量(Ahf2)とから、以下の式で電池1の満充電容量(Ahf)を演算する。
【0110】
満充電容量(Ahf2)=前回の満充電容量(Ahf2)×a+初期満充電容量(Ahf0)×劣化量[%]/100×(1−a)
【0111】
ただし、a、bは電池の種類や条件等により特定されるウエイトであって、a+b=1である。
[n=16のステップ]
【0112】
残容量補正回路8が、満充電容量検出部7で検出される電池1の満充電容量(Ahf)を基準として、容量演算部5で検出される放電できる容量(Ah)から残容量(SOC[%])を演算する。演算された残容量(SOC[%])と、残容量検出部6で電池電圧から検出される残容量(SOC[%])の両方から電池1の残容量(SOC[%])を演算する。これにより、より正確な残容量(SOC[%])を演算できる。
【0113】
ハイブリッドカーの電源装置は、以下のステップで、図9のフローチャートに基づいて電池の満充電容量を検出する。
[n=1のステップ]
【0114】
イグニッションスイッチ12がオンに切り換えられたかどうかを判定する。イグニッションスイッチ12がオンに切り換えられるまで、このステップをループする。
[n=2のステップ]
【0115】
イグニッションスイッチ12がオンに切り換えられると、その直後であって、電池の負荷電流が遮断される状態を第1の検出タイミングとして、残容量検出部6が、電池1の第1の開放電圧(VOCV1)を検出する。
[n=3のステップ]
【0116】
残容量検出部6は、検出された第1の開放電圧(VOCV1)から電池1の第1の残容量(SOC[%])を関数やテーブルから判定する。
[n=4のステップ]
【0117】
満充電容量検出部7が、第1の検出タイミングにおける電池1の第1の容量(Ah)を検出する。満充電容量検出部7は、たとえば、前回、検出した電池1の満充電容量(Ahf)に、n=3のステップで判定した電池1の第1の残容量(SOC[%])をかけて、電池1の第1の容量(Ah)を演算して検出することができる。
[n=5のステップ]
【0118】
イグニッションスイッチ12がオフに切り換えられたかどうかを判定する。イグニッションスイッチ12がオフに切り換えられるまで、このステップをループする。
[n=6のステップ]
【0119】
イグニッションスイッチ12がオフに切り換えられると、所定の時間経過後を第2の検出タイミングとして、残容量検出部6が、電池1の第2の開放電圧(VOCV2)を検出する。
[n=7のステップ]
【0120】
残容量検出部6は、検出された第2の開放電圧(VOCV2)から電池1の第2の残容量(SOC[%])を関数やテーブルから判定する。
[n=8のステップ]
【0121】
満充電容量検出部7が、第2の検出タイミングにおける電池1の第2の容量(Ah)を検出する。電池1の第2の容量(Ah)は、容量演算部5によって、充放電される電池1の充電電流と放電電流の積算値から演算される。
[n=9のステップ]
【0122】
満充電容量検出部7が、第1の検出タイミングにおける電池1の第1の容量(Ah)と第2の検出タイミングにおける電池1の第2の容量(Ah)の差から容量変化値(δAh)を演算する。
[n=10のステップ]
【0123】
満充電容量検出部7が、電池1の第1の残容量(SOC[%])と第2の残容量(SOC[%])の差から残容量変化値(δSOC[%])を演算する。
[n=11のステップ]
【0124】
満充電容量検出部7が、検出される容量変化値(δAh)と、残容量変化値(δSOC[%])と、第1の開放電圧(VOCV1)と第2の開放電圧(VOCV2)との電圧差の少なくとも何れかが、あらかじめ設定している設定値よりも大きな状態にあるかどうかを判定する。
【0125】
これらの何れかが設定値よりも大きいと、n=12〜13のステップに進み、設定値以下であると、n=14〜16のステップに進む。
[n=12のステップ]
【0126】
満充電容量検出部7が、演算された容量変化値(δAh)と残容量変化値(δSOC[%])から、以下の式で電池1の満充電容量(Ahf)を演算する。
【0127】
Ahf=δAh/(δSOC[%]/100)
[n=13のステップ]
【0128】
残容量補正回路8が、満充電容量検出部7で検出される電池1の満充電容量(Ahf)を基準として、容量演算部5で検出される放電できる容量(Ah)から残容量(SOC[%])を演算する。演算された残容量(SOC[%])と、残容量検出部6で電池電圧から検出される残容量(SOC[%])の両方から電池1の残容量(SOC[%])を演算する。これにより、より正確な残容量(SOC[%])を演算できる。
[n=14のステップ]
【0129】
満充電容量検出部7は、温度検出部4で検出される電池温度に基づいて、電池1の劣化度[%]を演算する。満充電容量検出部7は、電池温度から特定される温度係数と、電池1がその温度にあった時間との積である劣化係数を演算し、この劣化係数を、第1の検出タイミングから第2の検出タイミングまで加算して、加算劣化係数を演算する。さらに、さらに、満充電容量検出部7は、電池の初期満充電容量(Ahf)と前回の満充電容量(Ahf)、及び加算劣化係数から、以下の式で電池1の劣化度[%]を演算する。
【0130】
劣化度[%]=[{(前回の満充電容量(Ahf2)/初期満充電容量(Ahf0))×100}+加算劣化係数]1/2
[n=15のステップ]
【0131】
満充電容量検出部7は、電池温度から演算された劣化度[%]と、初期満充電容量(Ahf0)と、以前の満充電容量(Ahf2)である前回の満充電容量(Ahf2)とから、以下の式で電池1の満充電容量(Ahf)を演算する。
【0132】
満充電容量(Ahf2)=前回の満充電容量(Ahf2)×a+初期満充電容量(Ahf0)×劣化量[%]/100×(1−a)
【0133】
ただし、a、bは電池の種類や条件等により特定されるウエイトであって、a+b=1である。
[n=16のステップ]
【0134】
残容量補正回路8が、満充電容量検出部7で検出される電池1の満充電容量(Ahf)を基準として、容量演算部5で検出される放電できる容量(Ah)から残容量(SOC[%])を演算する。演算された残容量(SOC[%])と、残容量検出部6で電池電圧から検出される残容量(SOC[%])の両方から電池1の残容量(SOC[%])を演算する。これにより、より正確な残容量(SOC[%])を演算できる。
【0135】
さらに、太陽電池の電源装置の電池は、以下のステップで、図10のフローチャートで示すようにして、電池の満充電容量を検出することもできる。
[n=1、2のステップ]
【0136】
電池1に電流が流れない状態を検出し、このタイミングを第1の検出タイミングとして、残容量検出部6が、電池1の第1の開放電圧(VOCV1)を検出する。電池1に電流が流れない状態は、たとえば、太陽電池が電池を充電せず、かつ電池が放電されない状態である。
[n=3のステップ]
【0137】
残容量検出部6は、検出された第1の開放電圧(VOCV1)から電池1の第1の残容量(SOC[%])を関数やテーブルから判定する。
[n=4のステップ]
【0138】
満充電容量検出部7が、第1の検出タイミングにおける電池1の第1の容量(Ah)を検出する。電池1の第1の容量(Ah)は、容量演算部5によって、充放電される電池1の充電電流と放電電流を積算して演算される。
[n=5、6のステップ]
【0139】
第1の検出タイミングでタイマー(図示せず)がカウントを開始する。このタイマーは、第1の検出タイミングと第2の検出タイミングの時間を記憶しており、記憶している時間が経過するとタイムアップする。
[n=7のステップ]
【0140】
タイマーがタイムアップすると、このタイミングを第2の検出タイミングとして、残容量検出部6が、電池1の第2の開放電圧(VOCV2)を検出する。電池の開放電圧(VOCV2)は、電流が流れない状態にあっては電池1の電圧とし、電流が流れる状態にあっては、検出電圧と電流から演算する。
[n=8のステップ]
【0141】
残容量検出部6は、検出された第2の開放電圧(VOCV2)から電池1の第2の残容量(SOC[%])を関数やテーブルから判定する。
[n=9のステップ]
【0142】
満充電容量検出部7が、第2の検出タイミングにおける電池1の第2の容量(Ah)を検出する。電池1の第2の容量(Ah)は、容量演算部5によって、電池1の充放電の電流を積算して演算される。
[n=10のステップ]
【0143】
満充電容量検出部7が、第1の検出タイミングにおける電池1の第1の容量(Ah)と第2の検出タイミングにおける電池1の第2の容量(Ah)の差から容量変化値(δAh)を演算する。
[n=11のステップ]
【0144】
満充電容量検出部7が、電池1の第1の残容量(SOC[%])と第2の残容量(SOC[%])の差から残容量変化値(δSOC[%])を演算する。
[n=12のステップ]
【0145】
満充電容量検出部7が、検出される容量変化値(δAh)と、残容量変化値(δSOC[%])と、第1の開放電圧(VOCV1)と第2の開放電圧(VOCV2)との電圧差の少なくとも何れかが、あらかじめ設定している設定値よりも大きな状態にあるかどうかを判定する。
【0146】
これらの何れかが設定値よりも大きいと、n=13〜14のステップに進み、設定値以下であると、n=15〜17のステップに進む。
[n=14のステップ]
【0147】
満充電容量検出部7が、演算された容量変化値(δAh)と残容量変化値(δSOC[%])から、以下の式で電池1の満充電容量(Ahf)を演算する。
【0148】
Ahf=δAh/(δSOC[%]/100)
[n=15のステップ]
【0149】
残容量補正回路8が、満充電容量検出部7で検出される電池1の満充電容量(Ahf)を基準として、容量演算部5で検出される放電できる容量(Ah)から残容量(SOC[%])を演算する。演算された残容量(SOC[%])と、残容量検出部6で電池電圧から検出される残容量(SOC[%])の両方から電池1の残容量(SOC[%])を演算する。これにより、より正確な残容量(SOC[%])を演算できる。
[n=14のステップ]
【0150】
満充電容量検出部7は、温度検出部4で検出される電池温度に基づいて、電池1の劣化度[%]を演算する。満充電容量検出部7は、電池温度から特定される温度係数と、電池1がその温度にあった時間との積である劣化係数を演算し、この劣化係数を、第1の検出タイミングから第2の検出タイミングまで加算して、加算劣化係数を演算する。さらに、さらに、満充電容量検出部7は、電池の初期満充電容量(Ahf)と前回の満充電容量(Ahf)、及び加算劣化係数から、以下の式で電池1の劣化度[%]を演算する。
【0151】
劣化度[%]=[{(前回の満充電容量(Ahf2)/初期満充電容量(Ahf0))×100}+加算劣化係数]1/2
[n=15のステップ]
【0152】
満充電容量検出部7は、電池温度から演算された劣化度[%]と、初期満充電容量(Ahf0)と、以前の満充電容量(Ahf2)である前回の満充電容量(Ahf2)とから、以下の式で電池1の満充電容量(Ahf)を演算する。
【0153】
満充電容量(Ahf2)=前回の満充電容量(Ahf2)×a+初期満充電容量(Ahf0)×劣化量[%]/100×(1−a)
【0154】
ただし、a、bは電池の種類や条件等により特定されるウエイトであって、a+b=1である。
[n=16のステップ]
【0155】
残容量補正回路8が、満充電容量検出部7で検出される電池1の満充電容量(Ahf)を基準として、容量演算部5で検出される放電できる容量(Ah)から残容量(SOC[%])を演算する。演算された残容量(SOC[%])と、残容量検出部6で電池電圧から検出される残容量(SOC[%])の両方から電池1の残容量(SOC[%])を演算する。これにより、より正確な残容量(SOC[%])を演算できる。
【符号の説明】
【0156】
1…電池
2…電流検出部
3…電圧検出部
4…温度検出部
5…容量演算部
6…残容量検出部
7…満充電容量検出部
8…残容量補正回路
9…通信処理部
10…電流検出抵抗
11…メモリ
12…イグニッションスイッチ
13…通信回線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10