特許第5960071号(P5960071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5960071インク・ジェット・プリントヘッド用材料の超音波積層
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5960071
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】インク・ジェット・プリントヘッド用材料の超音波積層
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/16 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
   B41J2/16 503
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-16748(P2013-16748)
(22)【出願日】2013年1月31日
(65)【公開番号】特開2013-169795(P2013-169795A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2016年1月21日
(31)【優先権主張番号】13/401,178
(32)【優先日】2012年2月21日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ジェイ・ニストロム
(72)【発明者】
【氏名】マーク・エイ・セルラ
(72)【発明者】
【氏名】ビジョイラージ・サフー
【審査官】 島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−286146(JP,A)
【文献】 特開2000−202942(JP,A)
【文献】 特開2009−117731(JP,A)
【文献】 特開平06−286145(JP,A)
【文献】 特開2007−160869(JP,A)
【文献】 特開2007−276263(JP,A)
【文献】 特開平07−070335(JP,A)
【文献】 特開2004−017571(JP,A)
【文献】 特開2007−009186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク・ジェット・プリントヘッドを形成する方法であって、
ポリイミドフィルムからなる第1層を第2層と接触して配置するステップと、
前記第1層の表面を処理し、当該表面を熱可塑性物質に変換するステップと、
前記第2層と前記第1層の前記表面を物理的に接触させるステップと、
超音波ホーンを用いて前記第2層に対して圧力を加えて、前記第1層と前記第2層の間の界面において前記第1層に対して前記第2層を保持するステップと、
前記第1層と前記第2層の間の界面において前記超音波ホーンを用いて超音波周波数を加え、前記第1層の前記表面を加熱しかつ融解するステップと、
前記第1層の前記表面を冷却して硬化させて、前記第1層を前記第2層に物理的に取り付け、かつインク・ジェット・プリントヘッドの少なくとも一部を形成するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
記第2層が前記第1層の上を覆う直上層であり、前記方法が、
直下層を前記第1層と接触して配置して、前記第1層が前記直下層と前記直上層との間に介在しかつ接触させるようにするステップと、
前記第1層と前記直上層の間の界面において前記超音波周波数を加えている間、前記第1層を加熱するステップと、
前記第1層を冷却し、前記第1層を硬化させて、前記第1層を用いて前記直下層を前記直上層に物理的に取り付けステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記硬化した第1層および第2層のうちの少なくとも1つを用いて、前記第1層と前記第2層の間に流体密封シールを提供するステップをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2層は、ポリイミド、熱可塑性のポリマー、または金属からなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本教示は、印刷デバイスの分野に関し、さらに詳細にはインク・ジェット・プリントヘッドなどのプリントヘッドを含む印刷デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
民生用および産業用向け用紙などの印刷媒体上に画像を印刷する技術分野では、一般にレーザ技術およびインクジェット技術が支配的である。インクジェット技術は、インクジェット印刷の解像度および印刷品質が向上するにつれて一層一般的になってきた。インク・ジェット・プリンタは、典型的にはサーマル・インク・ジェット技術または圧電技術を使用する。圧電インクジェットは、サーマル・インク・ジェットよりも製造に費用がかかるが、例えば幅広い多様なインクを使用することができるので、一般に好まれている。
【0003】
圧電インク・ジェット・プリントヘッドは、典型的には、例えばステンレス鋼から製造された柔軟性のあるダイアフラムを含む。圧電インク・ジェット・プリントヘッドは、ダイアフラムに取り付けた圧電変換器(すなわち、アクチュエータ)のアレイも含むことができる。別のプリントヘッド構造体は、1つ以上のレーザパターニングされた誘電性絶縁層および各変換器に電気的に結合されたフレキシブルプリント回路(フレックス回路)またはプリント回路基板(PCB)を含むことができる。プリントヘッドは、本体板、注入口/放出口板、および開口板をさらに含み、それぞれは、ステンレス鋼から製造することができる。開口板は、複数のノズル(すなわち、1つ以上のオープニング、開口部)、または噴出口を含み、印刷中に同ノズルを通ってインクが施される。
【0004】
圧電プリントヘッドの使用中に、典型的には電圧源に電気的に結合されたフレックス回路電極との電気的接続を介して、圧電変換器に電圧を加え、圧電変換器を湾曲させまたはゆがめさせて、結果的にダイアフラムに湾曲をもたらす。圧電変換器によってダイアフラムが曲がると、インクチャンバの内部の圧力が増大し、チャンバから開口板内の個々ノズルを通って多少のインクが放出される。ダイアフラムが弛緩(曲がっていない)位置に戻るにつれて、ダイアフラムはチャンバ内部の圧力を低減し、オープニングを通して主要なインク容器からチャンバ内へインクを吸引して、放出されたインクを戻す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インク・ジェット・プリントヘッド用の複雑な3次元マイクロ流体チャンネル(インクポート)は、1つ以上のレーザパターニングされたポリマー、エッチングされたステンレス鋼層、およびアルミニウム層などの相当数の種々の材料を含むことができる複数の層を組み立てて製作することができる。製造工程は、プレス機の内部に層を積み重ねるステップおよび高圧かつ高温を加えるステップを含むことができる。材料層をいっしょに接合するために、複数の接着剤フィルムが用いられる。接着剤の硬化サイクルは、長い継続時間の間、例えば2時間の間、プレス機の内部で層スタックに圧力および温度を加えるステップを必要とし、層間剥離および使用中のプリントヘッドの早期故障を最小化することができる。種々のプリントヘッド層をいっしょに接合する接着剤は、固体インクおよび紫外線インクとの接合信頼性および適合性に対して調製される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
プリンタサブアセンブリを形成する方法の一実施形態は、第1層を第2層と接触して配置するステップと、超音波ホーンを用いて第2層に対して圧力を加えて、第1層と第2層の間の界面において第1層に対して第2層を保持するステップと、第1層と第2層の間の界面において超音波ホーンを用いて超音波周波数を加えるステップと、第1層および第2層のうちの少なくとも1つを硬化させて、第2層に第1層を物理的に取り付けるステップとを含む方法を用いて、インク・ジェット・プリントヘッドを形成するステップを含むことができる。
【0007】
プリンタサブアセンブリの一実施形態は、第1層と、第2層と、第1層と第2層を物理的に接触させ、かつ第1層と第2層を物理的に接続する超音波接合層とを有するインク・ジェット・プリントヘッドを含むことができる。
【0008】
プリンタの一実施形態は、第1層と、第2層と、第1層と第2層を物理的に接触させ、かつ第1層と第2層を物理的に接続する超音波接合層とを有するインク・ジェット・プリントヘッドを含むことができる。プリンタは、インク・ジェット・プリントヘッドを囲む筺体をさらに含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本教示による一実施形態に従う2つの層の超音波ボンディングを示す断面図である。
図2図2は、本教示による別の実施形態に従う2つの層の超音波ボンディングを示す断面図である。
図3図3は、本教示による1つ以上の実施形態を用いて形成することができるプリントヘッドの一部を示す断面図である。
図4図4は、本教示による形成されたプリントヘッドを含むことができるプリンタの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面の一部の詳細は、厳密な構造的正確さ、細部、および拡大/縮小比率を維持するよりも、むしろ本教示の理解を容易にするように、単純化されて描かれていることに留意されたい。
【0011】
本明細書で使用される単語「プリンタ」は、他に特に指定されない限り、任意の目的用に印刷出力機能を実行する、デジタル複写機、書籍制作機、ファックス、複合機、プロッタなどの任意の装置を包含することができる。
【0012】
単語「ポリマー」は、熱硬化性樹脂、熱可塑性物質、ポリカーボネート、エポキシなどの樹脂、および当技術分野で周知の関連化合物を含む、長鎖分子から形成された広範囲の炭素系化合物のうちの任意の1つを包含する。
【0013】
用語「硬化された」は、本明細書では完成した接着剤層を提供するように改変されている層を説明するのに用いられる。硬化層は、融解され冷却されて別の層に対する硬化層の接着力を提供する。硬化層は、さらに、加熱によって硬化している熱硬化性接着剤であってよい。
【0014】
上述したように、組み立てられたスタック状のインク・ジェット・プリントヘッド層は、プリントヘッドの製造中に、加熱されたプレス機の内部に配置されて従来の接着剤を硬化させることができる。比較的高温かつ高圧、例えば300°Cかつ300psiにおいて、例えば2時間以上の比較的長い処理時間が、接着剤を硬化させるために必要である。接着剤を硬化させるために必要となる高い温度によって、シリコンベースの構造体などの他のプリントヘッド構造体はダメージを受け、その後の処理に利用可能なサーマルバジェットが低減される。さらに加えて、層スタックは、液体接着剤が所望の領域から流出しないことを確実にするように液体接着剤を収容するために用いられる、パターニングされた絶縁体を含むことができるが、液体接着剤の流出は、汚れ、インクポートの目詰まり、およびプリントヘッドの故障を結果的にもたらすことにもなりうる。パターニングされた絶縁体は、費用がかかり、正確な配置を必要とし、製造コストを増すことがある。さらに、2つの異なる材料の特徴により、これらの材料を物理的に接続することが困難なことがあり、2つの材料をいっしょに確実に接続するのに、接着剤を用いることができないようにしている。従来の接着剤を用いて材料を物理的に接続する試みは、結果的に2つの材料の層間剥離およびプリントヘッドの故障をもたらす。
【0015】
プリントヘッドを形成するために必要な組立時間および材料数を低減すると、製造コストおよび工程複雑性を減少させることができる。さらに、2つの異なる材料を接続する新たなやり方が、結果的にプリントヘッドを形成するのに役立つ材料をさらにもたらすことができる。
【0016】
本教示の種々の実施の形態では、以下で説明する超音波ボンディング工程および技術が、インク・ジェット・プリントヘッド層の多重スタックを接合するために具体的に適合される。本教示の種々の実施の形態では、2つ以上のプリントヘッド層が、超音波ボンディング工程を用いて、互いに物理的に取り付けることができる。本教示の一実施形態を用いると、例えば2つの層をいっしょに物理的に接続するための接着剤層の必要性を排除することによって、使用する材料数を低減することができる。別の実施の形態では、超音波接合層または硬化した接着剤層は、2つの層の間に介在することができ、同2つの層は、あらかじめ不適合でありかつ従来の接着剤を用いては物理的に確実に接続されないはずの材料である。これは、DuPont(登録商標)Teflon(登録商標)およびポリエチレン、ポリマーから金属まで、ならびに低表面エネルギを有する材料などの従来の接着剤接合に向いていない他の材料、などの材料を含むことができる。
【0017】
図1は、本教示の一実施形態を示す断面図である。本実施の形態では、少なくとも第1層10および第2層12を含む噴出口スタックは、超音波ボンディング用備品またはチャック14内へ配置することができる。第1層10および第2層12は、超音波ボンディングを介して互いに物理的に取り付けられた2つの別個の層である。ボンディング用備品14は、超音波ボンディング工程中に第2層12に対して第1層10を位置決めしてアラインメントすることができる。例えば、備品14は、第1層10を受けるリセスを定める壁16を含むことができ、第1層および第2層を互いにアラインメントするように第2層12を受けることができる。壁16によって形成されたリセスのサイズは、壁と層12の間にギャップを含み、ギャップが結果的に層10に対する層12の不正確なアラインメントをもたらさない限り、超音波ボンディング工程中に層12の移動を可能にすることができる。別の実施の形態では、壁16は、層10の上面を超えて延びることがない。例えば、壁16に加えて(または代わりに)、備品14は、第1層10に真空を加えるのに用いることができる1つ以上のチャンネル18を含むことができる。第1層10は、備品14上へアラインメントされて位置決めされ、チャンネル18を通る真空が、超音波ボンディング中に第1層10を正常な位置に保持することができる。超音波ボンディング用備品14は、ベース板20上に位置することができる。
【0018】
いったん第1層10および第2層12がアラインメントされ、互いに接触して配置されると、超音波ヘッド(ホーン)22を用いて、第2層12に対して圧力24を加えて、物理的接続のターゲットである2つの層間の界面26において第1層10に対して第2層12を保持する。超音波ホーン22を貫く1つ以上のチャンネル28を通る真空を用いて、第2層12を正常な位置に保持することができる。
【0019】
引き続いて、第1層10と第2層12の間の界面26において超音波ホーン22によって加えられた超音波周波数は、結果的に界面26において層10、12の温度増加をもたらす。界面26において発生した熱は、最初は界面の摩擦から生じることができ、第1層10か、第2層12か、またはこれらの両方かが融解するにつれて粘弾性加熱になることが可能である。界面26において到達する温度は、例えば界面26において加えられた圧力24ならびに接合中に加えられた周波数および振幅によって制御することができる。
【0020】
一実施形態では、層10、12は、ポリイミドまたは熱可塑性物質などのポリマー、ステンレス鋼またはアルミニウムなどの金属、熱硬化性接着剤、シリコン層などを含む。層10、12は、同一または異なる材料とすることができる。一実施形態では、層10、12のうちの一方はポリマーであり、層10、12のうちの他方は異なる材料であり、ポリマーはこの異なる材料よりも低融点を有する。本実施の形態では、ポリマーは、超音波ボンディングを介して発生した熱の結果として融解することができ、超音波工程を終了させた後、ポリマーは冷却して結果的に2つの層10、12をいっしょに物理的に取り付ける(接合する)。
【0021】
超音波ホーン22によって加えられた圧力24は、結果的に第1層10と第2層12の間の界面26へ伝達された圧力24となることができる。目標圧力は、層10、12に用いられる具体的な材料とともに変化することになる。材料の融点がより高くなるにつれて、超音波ボンディング工程における、圧力、超音波ボンディング工程継続期間、または周波数の振幅(またはこれらの任意の組み合わせ)は、増加して結果的に界面26においてより高い摩擦熱をもたらすことができる。
【0022】
一実施形態では、層10、12のうちの一方はステンレス鋼層とすることができ、層10、12のうちの他方はポリマーなどの合成材料である。一実施形態では、ステンレス鋼の表面は、ポリマーとの接合を高めるように処理することができる。例えば、滑らかなステンレス鋼の表面は、化学的または機械的エッチングを用いてすり減らされまたは粗くされ、表面積および表面粗さを増大させて、ポリマー層との接合を改善する、および/またはより滑らかな表面を有する層を使用する別のやり方の等価な超音波工程中に、結果的により高い摩擦熱をもたらすことができる。
【0023】
図2は、下に横たわる直下層10と上を覆う直上層12との間に介在しかつ接触させる熱流動性接着剤層30を含む別の実施形態を示す。本実施形態では、熱流動性接着剤層30は、直下層10または直上層12よりも低融点を有する層とすることができる。直上層12に対する直下層10の積層を形成中に、界面の摩擦を介して発生した熱および/または粘弾性加熱は、少なくとも流動性接着剤層30を融解する。加熱すると、直下層10および直上層12のうちの一方もしくは両方を融解することもでき、またはいずれも融解しないこともできる。超音波ボンディング工程を終了させた後、接着剤層30は冷却して(硬化して)直下層10を直上層12に物理的に接着する。一実施形態では、熱流動性層30は、チタン、クロム、またはアルミニウムなどの金属とすることができ、物理気相成長(物理蒸着、PVD)または化学気相成長(CVD)を用いて堆積することができる。熱流動性接着剤層30は、例えばDuPont(登録商標)ELJなどの熱可塑性ポリイミドとすることもできる。一実施形態では、熱流動性層30は、熱可塑性層内の炭素および酸素グループと接合して、Ti−O−C接合を形成することができる。熱流動性接着剤層30は、例えばポリイミドを別のポリイミドに接合するのに用いることができ、または上述した超音波積層工程を用いてポリイミド層を金属層に接合するのに用いることができる。一実施形態では、層10、12は、両方とも金属などの高融点を有する材料とすることができ、一方、熱流動性接着剤層30は、ポリマー、例えば熱可塑性物質などの低融点を有する材料とすることができる。
【0024】
別の実施形態では、層30は、層10と層12の間に介在する未硬化の熱硬化層である。上述したように超音波ボンディングは、層30を加熱して硬化させるのに用いられて、層10および層12が硬化層30によって物理的に接合されるようにする。本実施形態では、層30は、例えば熱硬化性ポリマーとすることができる。
【0025】
図2の実施形態では、層10または層12は、いずれも熱流動層または熱硬化層である必要はなく、それゆえにこれらの実施形態は、層10および層12用に選択されたより幅広い多様な材料を可能にすることができる。
【0026】
層10と層12の超音波ボンディング中に発生する目標温度は、層10を層12に物理的に取り付けるために必要となる融解温度または硬化温度に依存する。
【0027】
超音波ボンディングを容易にするために、任意のまたはすべての層10、12、30に用いられるポリイミドフィルム、例えば宇部興産から入手可能なUpilex(登録商標)またはDuPont(登録商標)Kapton(登録商標)、などの層の表面は、その表面を熱可塑性物質に変換する種々の技術を用いて処理することができ、次いで超音波ボンディング中に融解し、ポリイミドフィルムを別の層と接着するのに用いることができる。例えば、ポリイミドフィルムは、水溶性の塩基溶液、例えば水酸化カリウム(KOH)で処理されまたはプラズマ処理にさらされ、不活性のポリイミドフィルムをポリアミド酸に変換して、結果的に熱可塑性面をもたらすことができる。熱可塑性物質へ変換されているポリイミド表面は、元のポリイミド表面よりも低融点を有することができ、それゆえにこの変換された表面は、未処理のポリイミド表面よりも低温において超音波ボンディングにより良好に適合される。
【0028】
本教示の種々の別の実施形態もまた考えられる。例えば、マイクロ流体チャンネル(インクポート)を形成するプリントヘッド層には精蜜アラインメントを必要とするものもあり、最初は達成するのが困難であるが、アラインメントされた層がスタックプレス内へ配置されながら維持するのがさらに困難となることがある。接合される部品の上端にスタックプレス用柔軟性パッドおよび剥離ライナを追加中に、アラインメントされた層に加わる横方向の力が、接合される層の位置合わせ内にシフトを引き起こすことがある。パッドおよび剥離ライナがいったん配置されると、接合される層は今では隠蔽され、パッドおよび剥離ライナを配置することによって引き起こされるミスアラインメントは、検出するのが困難となる。さらに加えて接合された部品上にプレス板が降りるときの非一様な圧力は、たとえ部品がジンバルに入れられるとしても、アラインメント内にシフトを引き起こすことがある。これらの要因に起因する部品のミスアラインメントは、部品がアラインメントされ、その後で上述した超音波ボンディング工程を用いていっしょに一時的に取り付けられる場合、低減または排除されて、十分に硬化させるためにアセンブリをスタックプレスまたはオーブン内へ配置する前に弱い一時的な物理的取り付けを提供することができる。本実施形態では、弱い超音波接合は流体密封シールを提供しないが、しかし従来の接着剤がスタックプレスまたはオーブン内で硬化している間、層を正常な位置に保持する。超音波積層を用いて第1層10と第2層12をいっしょに取り付ける前に、従来の接着剤はこれら2つの層間に正確に配置することができる。取り付けた後で、直下層10および直上層12は、スタックプレスまたはオーブン(ひとまとめにして、「硬化用備品」)内に配置され、従来の接着剤を硬化させて、従来の接着剤によって種々の層間に提供された流体密封シールを提供する。
【0029】
図3は、プリンタサブアセンブリ、さらに詳しくはインク・ジェット・プリントヘッド40の一部を描写し、本教示の1つ以上の実施形態を用い、超音波接合層を用いて2つ以上の層をいっしょに超音波で接合するように、形成することができる。プリントヘッド設計が、図3に描写された例から変化することができることを理解されたい。図3は、大体において、開口板46の内部の開口部(ノズル)44へ流れるインクの通路用の単一のインクポート42を示す。開口板接着剤48は、開口板46を注入口/放出口板またはマニホールド(多岐管)50に接続する。小石スクリーン(フィルタ)54を含む小石スクリーン層52は、マニホールド50とセパレータ56の間に介在する。図3は、複数の層を含むことができる垂直注入口58、本体板60、ダイアフラム取付接着剤64で本体板60に取り付けられたダイアフラム62、圧電アクチュエータ66、絶縁層68、ならびに接着剤層72で絶縁層68および圧電アクチュエータ66に取り付けられた回路層70をさらに示す。プリントヘッド構造体は、開口板46の内側に数百または数千のインクポート42およびノズル44を有することができる。2つ以上のプリントヘッド層が、本教示の一実施形態を用いて互いに物理的に取り付けることができることを理解されたい。例えば、2つの層は、例えば図1の実施形態に従う工程を用いて、別個の接着剤を使用せずに物理的に接続することができる。別の実施形態では、別個の接着剤層が、例えば図2を参照して説明されたように、超音波ボンディング工程の一実施形態によって形成することができる。他の変形形態がもくろまれる。
【0030】
プリントヘッドの製造が完了すると、本教示に従う1つ以上のプリントヘッドは、プリンタ内に設置することができる。図4は、1つ以上のプリントヘッド102および本教示の一実施形態に従う1つ以上のノズル44から吐出されるインク104を含むプリンタ100を示す。各プリントヘッド102は、デジタル命令に従って動作して、紙シート、プラスチックなどの印刷媒体106上に所望の画像を生み出すように構成される。各プリントヘッド102は、スキャン動作時に印刷媒体106に対して端から端へ移動して、印刷画像を帯状ずつ発生させることができる。代わりに、プリントヘッド102が固定して保持され、印刷媒体106がプリントヘッド102に対して移動して、単一の通過でプリントヘッド102と同じ幅の画像を生み出すことができる。プリントヘッド102の幅は、印刷媒体106よりも狭いまたは同じとすることができる。プリントヘッド102を含むプリンタハードウェアは、プリンタ筺体108内に囲むことができる。別の実施形態では、プリントヘッド102は、回転ドラムまたはベルト(簡単にするために描写されない)などの介在する表面に、続いて印刷媒体へ転写するために、印刷することができる。
【0031】
このように本教示の種々の実施形態は、いくつかの熱硬化工程と比較して処理時間が低減された超音波ボンディング工程を用いて、インク・ジェット・プリントヘッド用の流体密封シールを提供することができる。2時間以上を必要とすることがある硬化用備品内の接着剤硬化とは対照的に、超音波ボンディングは、1分未満、例えば約30秒を必要とすることが可能である。さらに加えて、超音波エネルギ(接合熱)は、プリントヘッドの構造体全体を加熱するよりもむしろ、いっしょに接続される2つの層間の界面において局所的に限定することができ、それゆえに本教示の工程は、接合される層の上方または下方に位置するシリコンベースの構造体などの他の構造体に与えるダメージをより少なくすることができる。さらに、いくつかの実施形態は、接着剤を施す必要がなく、それゆえに必要となる材料数、および接着剤が望まれない場所へ流れ込むことによって引き起こされる問題を低減することができる。さらに加えて、本明細書で説明される超音波ボンディング技術は、より幅広い多様な材料、例えば従来の接着剤を用いては確実に取り付けることができない材料を接続するのに用いることができる。
図1
図2
図3
図4