【実施例1】
【0016】
実施例1について、
図1及至
図11を用いて、以下に説明する。
図1は本発明を適用した紙幣取扱装置1の構成を示した図である。紙幣取扱装置1は、入出金口ユニット101と、鑑別ユニット102と、搬送路103と、保管庫104と、第一の予備保管庫105と、第二の予備保管庫106と制御部107を有する。
【0017】
入出金口ユニット101は、利用者が入出金時に紙幣の出し入れを行うためのユニットであり、利用者が投入した入金紙幣を一枚ずつ紙幣取扱装置1の内部に取り込む入金機能や、保管庫104から搬送路103を経由して一枚ずつ送られてきた出金紙幣を集積し、利用者に引き渡す出金機能を有している。
【0018】
鑑別ユニット102は、入金された紙幣、もしくは出金する紙幣の真偽や搬送姿勢等を確かめるためのユニットである。また、鑑別ユニット102では、内部に備えられた画像センサ201を利用し、通過した紙幣の画像情報等を取得し、制御部107に伝達する。保管庫104は、入金された紙幣、もしくは出金する紙幣を保管するための金庫である。
【0019】
保管庫104は、保管庫104内の空間を区分する仕切手段410を有している。保管庫104内で空間を区分することで、運用上区分することが望ましい紙幣を分割して収納することが可能となっている。ここでは、保管庫104は二分割され、図中上部の紙幣P1が収納されている空間を第一の領域、図中下部の紙幣P2が収納されている空間を第二の領域とする。また、保管庫104は、収納されている紙幣を図中上下方向に移動させるための押板409と、収納されている紙幣を保管庫104外へ放出する放出手段としてのピックローラ422を備えている。
【0020】
搬送路103は、上述の各ユニット間を繋ぎ、紙幣を搬送するための機構であり、搬送路103の複数の分岐点において、搬送される紙幣の方向を規制する図示せぬゲート機構を有している。
【0021】
第一の予備保管庫105と第二の予備保管庫106は、その用途に限定は無いが、例えば鑑別ユニット102で確認された紙幣の搬送姿勢が正常で無いと判断された紙幣を保管するリジェクト庫として使用しても良い。上述の入出金口ユニット101、鑑別ユニット102、搬送路103、保管庫104、第一の予備保管庫105、第二の予備保管庫106は、それぞれ複数のゴムローラやゴムベルト等の搬送部で構成される搬送機構を有しており、それらの搬送部は各ユニット内外に備えられているモータによって駆動される。
【0022】
制御部107は、上述の各ユニットや搬送路103に設けられた図示せぬ通過センサで入手した紙幣搬送タイミング情報や、鑑別ユニット102やその内部に備えられた画像センサ201で判別した画像情報等の紙幣の情報を一括、もしくは分割して処理を行い、その状態に応じて駆動指令を行うものである。また、本制御部107は記憶手段としての機能も有しており、上述の通過した紙幣の画像情報等を記憶することが可能である。
【0023】
次に本実施例による保管庫104の詳細について説明する。
図2は本発明を適用した保管庫の外観を示した図である。保管庫104は、その筺体に開閉可能な第一の取出口401、第二の取出口402と、第二の取出口402を含む側面で構成され、その開閉が可能である開放部403と、係員が運搬する際に利用する取手404とを備えている。さらに各開放部にはその施錠をするため、第一の取出口401には第一の施錠部405、第二の取出口402には第二の施錠部406、開放部403には第三の施錠部407が設けられている。
【0024】
上述の第一の取出口401は、保管庫104内に収納されている紙幣のうち、第一の領域に収納されている紙幣を取出す際に利用される。また、第二の取出口402は、第二の領域において、紙幣の取出や補充する際に利用される。更に、開放部403は、保管庫104内の全紙幣の取出や補充に利用される。上述の様に、本発明を適用した保管庫104では、その内部で区分けられている各空間に対応した取出口が設けられている。これにより、保管庫104内の必要な空間の紙幣のみにアクセスすることで、誤って必要としない空間の紙幣を取出すことを防止することが可能である。また、本図では図中手前側に第一の取出口が備えられているが、その場所は任意であり、第一の領域の紙幣を取出せる箇所であれば良く、図中奥側の側面に設置しても良い。
【0025】
図3は、第一の実施例における保管庫104の内部の構成を示した図である。保管庫104には、その内部の空間を分割する複数の仕切手段410と、収納されている紙幣を図中上下方向へ移動させるための押板409と、保管庫104から紙幣を放出するための放出手段としてのピックローラ422が備えられている。更に保管庫104には、収納されている紙幣を一枚ずつ分離繰り出しするための複数のローラや、仕切手段410を動作させるためのモータ等が存在するが、
図3においては記載を省略する。
【0026】
仕切手段410は、保管庫104内を第一の領域と第二の領域に区分するための目印手段としての仕切板411と、圧縮バネ412と、支持軸413と、ストッパ414で構成されている。圧縮バネ412はその上部が支持軸413に固定されており、仕切板411に図中下方向へバネ力を作用させる構成となっている。更に、ストッパ414により、圧縮バネ412に押された状態であっても、仕切板411は所定位置を超え図中下方向への移動することは無い。
【0027】
ここで、仕切板411は保管庫104の空間を二つの空間に区分けており、仕切板411を基準とし、図中上方向の空間を第一の領域、図中下方向の空間を第二の領域と呼ぶ。第一の領域に収納されている紙幣P1は、その下面を仕切板411に支えられており、第二の領域に収納されている紙幣P2は、その下面を押板409に支えられている。
【0028】
また、仕切板411の最下点よりも高い位置に、保管庫104の壁面に設けられた第一の取出口401が有る。この第一の取出口401からは、第二の領域に収納されている紙幣P2は仕切板411によって阻害されるために取出しが困難になっている。そのため、係員が第一の取出口401から第一の領域に収納されている紙幣P1を取出す際に、誤って第二の領域に収納されている紙幣P2を取出してしまうことは無い。
【0029】
その一方で、保管庫104の壁面に設けられた第二の取出口402は、仕切板411の最下点よりも低い位置に設けられている。この第二の取出口402からは、第一の領域に収納されている紙幣P1は、仕切板411によって阻害されるために取出しが困難になっている。そのため、係員が第二の区間に収納されている紙幣P2を取出す際に、誤って第一の領域に収納されている紙幣P1を取出してしまうことは無い。
【0030】
仕切手段410は、図示せぬモータにより支持軸413を回転することで動作し、同一モータの回転がギヤ417とタイミングベルト416によって複数の仕切手段410に伝達される。
【0031】
図4は本発明を適用した紙幣取扱装置1の構成を表す斜視図である。紙幣取扱装置1は入出金口ユニット101等を含む上部ユニット110と、保管庫104等を含む下部ユニット111とで構成される。上部ユニット110は支持部材109によって支持されており、下部ユニット111は保管庫104を収納しているトレイ108を図中Xtに引出すことで、保管庫104が露出し、容易に保管庫104を取出す事が可能となっている。
【0032】
ここで、保管庫104の第一の取出口401及び第一の施錠部405は露出しており、トレイ108を引出す事無く、係員のアクセスが可能となっている。これにより、紙幣取扱装置1の動作を止める事無く、第一の区間に収納されている紙幣を、取出口401から容易に取出す事が可能となっている。
【0033】
図5は第一の実施例における仕切手段410の詳細構成を示した図である。本図を用い、仕切手段410の動作について説明する。
図5(a)は仕切手段410の上面図、
図5(b)は仕切手段410の斜視図である。支持軸413は溝部413aを有しており、仕切板411の突起部411aと係合されている。この係合部により、仕切板411は支持軸413の回転動作に追従し、支持軸413の回転により図中θ方向に回動するが、図中Y1、Y2方向の拘束は受けない。
【0034】
また、支持軸413には圧縮バネ412が取り付けられており、その上部は軸と固定されており、仕切板411が図中Y1の方向へ変位すると、バネ力Fが作用する。
仕切板411の図中下方向の第二の領域に押板409が存在し、その押板409の上に紙幣P2が収納されている。第二の領域の紙幣P2は押板409の動作によって図中Y1、Y2方向へ移動する。
【0035】
押板409が図中Y1方向へ動作する際、第二の領域の紙幣P2のうち最上部紙幣P21が仕切板411に接触する。上述の様に、仕切板411は図中Y1、Y2方向に拘束されていないため、最上部紙幣P21が仕切板411と接触を開始した時点より、押板409の図中Y1方向の動力が作用し、仕切板411が押板409に追従し図中Y1方向へ移動する。
【0036】
逆に押板409が図中Y2方向へ下降した場合は、仕切板411には圧縮バネ412のバネ力Fが作用するため、仕切板411は押板409に追従し、図中Y2方向へ下降する。仕切板411の下降が所定位置に達すると、ストッパ414に規制されるため、仕切板411の下降は停止する。
【0037】
以上説明した通り、仕切板411は第二の領域に収納されている紙幣P2を介し、押板409から力を受け、その動作に追従するため、仕切板411は図中Y1、Y2方向の動作に関して、駆動源を必要としない。尚、本実施例においては、仕切手段410は三箇所設けられている。そのうち、中央の仕切手段に設けられたストッパは、他の仕切手段のストッパより低い位置に配置されている。これは仕切板の退避時に互いの干渉を防止するためである。
【0038】
(1)入金、収納、返却動作
次に
図6乃至
図9を用い、本発明を適用した紙幣取扱装置1の入金、収納、返却動作について説明する。
図6は入金、収納、及び返却時における紙幣の流れを示す図である。
図6(a)は入金及び収納時における紙幣の流れを示す図である。利用者によって、入出金口ユニット101に入金された紙幣は一枚ずつ繰り出され、図中経路Aを通り、鑑別ユニット102に送られる。そして、鑑別ユニット102において、搬送された紙幣の真偽や金種、搬送姿勢や形状を確認し、正常紙幣か否かを判別する。また、その際に画像センサ201によって取得された紙幣の画像情報は、記憶手段としての制御部107に記憶される。ここで取得された取引中の紙幣の画像情報を記憶することで、取引中の紙幣と取引前に既に紙幣取扱装置1内に保管されていた紙幣との識別が可能となる。
【0039】
鑑別ユニット102によって、正常紙幣と判別された紙幣は図中経路Cを通り、金種毎に振り分けられて保管庫104に収納される。そして、保管庫104内の仕切手段410上部の第一の領域に一時的に収納される。正常紙幣と判別されない異常紙幣は、経路Bを通り、入出金口ユニット101に送られ、利用者に返却する。入出金口ユニット101内の全紙幣の入金処理が為された後、利用者が入金された金額を確認し、承認操作が実施された場合、保管庫104上部の第一の領域に収納されている紙幣が、保管庫104内部の仕切手段410が退避することで、仕切手段410下部の第二の領域に収納される。
【0040】
図6(b)は返却動作時における紙幣の流れを示す図である。利用者が入金金額を確認した際に、取引の中止操作を実施した場合、返却動作を行う。この場合、保管庫104内の第一の領域に収納されている紙幣を放出手段であるピックローラ422によって、保管庫104から放出する。保管庫104から放出された紙幣は、図中経路D、Eを通り、入出金口ユニット101に搬送され、利用者へ返却される。この動作を実施する際に、鑑別ユニット102とその内部の画像センサ201によって、返却される紙幣の画像情報を確認する。ここで入金時に確認され制御部107に記憶されている入金時の紙幣の画像情報と比較が為され、入金された紙幣と返却した紙幣が一致するか確認される。そして、一致した場合にのみ利用者へ返却することによって、入金した紙幣以外を誤って返却することを防止している。
【0041】
(1)−1 入金動作
次に保管庫104に紙幣が入金される際の動作について説明する。
図7は第一の実施例における保管庫104の入金動作を示す側面図である。
図7(a)は入金動作開始直前の保管庫104の状態を表す図であり、
図7(b)は入金動作中の保管庫104の状態を表す図である。
【0042】
保管庫104の内部には、収納されている紙幣を保管庫104の外部に放出するための放出手段としてのピックローラ422と、放出時にピックローラ422によって搬送された紙幣を一枚ずつ分離し繰り出すためのフィードローラ420及びゲートローラ421と、仕切手段410と、収納されている紙幣を移動させるための押板409と、紙幣の集積時に所定の集積空間を確保するため、集積される紙幣を図中Y2方向へ叩き落とすためのシートローラ423が備えられている。
【0043】
図7(a)に示す様に、入金動作の開始直前に、押板409は図中Y1方向に上昇をする。押板409が上昇することで、第2の空間に収納されている紙幣P2は持ち上げられ、その最上部紙幣P21が仕切板411と接触する。そして、第2の空間に収納されている紙幣P2を介して、押板409の図中Y1方向の動力が仕切板411に作用することで、仕切板411も図中Y1方向へ持ち上げられる。仕切板411が上昇し、集積動作に最適な所定の集積空間Ysを確保する位置で、押板409は停止しそれに伴い仕切板411も停止する。
【0044】
この状態で、入金動作が開始される。
図7(b)に示す様に、取込放出口408から送られてきた紙幣は、図中矢印ω1の方向へ回転するフィードローラ420とゲートローラ421、及びフィードローラ420と接触し回転するピンチローラ424によって搬送され、図中破線矢印X1に示す方向で保管庫104内に進入する。保管庫内に進入した紙幣P11は、その後端がフィードローラ420とゲートローラ421の挟持から抜けた後に、回転するシートローラ423によって叩き落とされる。そして、仕切板411の上部である第一の領域に収納される。
【0045】
第一の領域に収納される紙幣の数が増え、集積空間が所定量よりも狭くなった場合、その状態を図示せぬセンサによって検知し、押板409を図中Y2方向へ降下させる。押板409が降下すると、第二の領域に収納されている紙幣P2も降下するため、その最上部紙幣P21と接触している仕切板411も、圧縮バネ412のバネ力によって降下する。この様に、仕切板411の高さを、適正な集積空間を保持する様に動作させることで、例えば集積中紙幣が干渉しジャムが発生することを防止することができ、確実な集積が可能となる。
【0046】
また、この仕切板411の高さは、押板409の動作に追従し変化するため、仕切板411の上下動のための駆動源を設ける必要が無く、機構の大型化や煩雑化、またはそれに伴う装置の異常停止等を防止することができる。
【0047】
(1)−2 収納動作
次に保管庫104内において、第一の領域に収納されている紙幣を第二の領域へ収納する動作について説明する。
図8は第一の実施例における保管庫104の収納動作を示す図である。
図8(a)は収納動作時の保管庫104の側面図であり、
図8(b)は収納動作時の保管庫104の上面図である。
【0048】
入金動作の終了後、利用者が入金された金額を確認し、承認操作が為された場合、保管庫104内の第一の領域に収納されている紙幣P1は、第二の領域に収納される。本実施例では、仕切手段は三箇所設けられており、それぞれ仕切手段410a、410b、410cとする。全ての仕切手段は、その支持軸413a、413b、413cの回転によって、仕切板411a、411b、411cが回動することで、退避が可能となっている。
第一の領域に収納されている紙幣を第二の領域へ収納する際は、予め押板409を図中Y2方向へ降下させる。この時、仕切板411a、411b、411cは、ストッパ414a、414b、414cに規制されるため、所定の位置に存在する。また、この状態において、第二の領域に収納されている紙幣P2の最上部の紙幣P21は仕切板411a、411b、411cから十分離間しており、紙幣P21は仕切板411a、411b、411cの動作の影響を受けない。
【0049】
この状態で、仕切板411b、411cは図中θ2の方向へ回動し、仕切板aは図中θ1の方向へ回動する。ここで、ストッパ414bはストッパ414cよりも図中Y2方向に低い位置に取付けられているため、仕切板411bは仕切板411cよりも低い位置に存在しており、退避時に仕切板411bと仕切板411cが干渉することは無い。仕切板411a、411b、411cの退避により、第一の領域に収納されている紙幣P1は自重により、Y2方向へ移動し、第二の領域へ収納される。
【0050】
(1)−3 返却動作
次に、返却動作時の収納庫104の動作について説明する。
図9は第一の実施例における保管庫104の返却動作を示す側面図である。
図9(a)は返却動作時の保管庫104の側面図であり、
図9(b)は返却動作時の保管庫104の上面図である。
【0051】
ここで、収納庫104内の紙幣において、返却の対象となる紙幣は仕切板411上部の第一の領域に存在する紙幣P1である。返却処理時には、押板409は図中Y1方向へ上昇しており、仕切板411下部の第二の領域に存在する紙幣P2を介し、仕切板411を同様に図中Y1方向へ持上げている。仕切板411が持上ることにより、第一の領域に存在する紙幣P1のうち、最上部紙幣P11がピックローラ422に押し当てられ、所定の押圧が作用する状態となる。
【0052】
この状態で、ピックローラ422とフィードローラ420を図中ω2の方向へ回転させることにより、第一の領域に存在する紙幣P1は一枚ずつ、図中X2の方向へ分離され放出される。放出動作が進み、第一の領域に存在する紙幣P1の最下部の紙幣P1Eが繰出されると返却動作は終了である。
【0053】
ここで、収納されている紙幣の長手方向に関して、仕切板411はピックローラ422と同位置に備えられており、第一の領域に紙幣が存在しない場合、仕切板411はピックローラ422と図中CPの位置において接触する。すなわち、仕切板411は、第一の領域に設けられたピックローラ422に対して、紙幣の積層方向の重なる位置に設けられている。そのため、ピックローラ422は第二の領域に存在する紙幣P2と接触することは無く、誤って返却すべきでない第二の領域に存在する紙幣P2を保管庫104外へ放出することは無い。そのため、確実に利用者が取引中の紙幣のみを返却することが可能である。更に、本発明を適用した紙幣取扱機構1によれば、上述の画像センサ201を用いた、入金紙幣と返却紙幣の画像情報の照合動作を併用するため、確実な入金紙幣の返却が可能である。
【0054】
また、第一の領域に紙幣が存在しない場合、仕切板411が第二領域に存在する紙幣P2と接触することはないため、例えば、第二領域に存在する紙幣P2が、誤搬送時に仕切りシート430に接触してジャムを引き起こす等の障害も起こり得ず、そのような障害に対する係員の操作性を向上させることができる。
【0055】
(2)出金動作
次に
図10及び
図11を用い、本発明を適用した紙幣取扱装置1の出金動作について説明する。
図10は出金時における紙幣の流れを示す図である。出金時は、利用者が要求する金額に応じた紙幣が、保管庫104から放出される。保管庫104から放出された紙幣は、図中経路Fを経由し、鑑別ユニット102を含む経路Gに従って搬送される。この時、鑑別ユニット102では、搬送された紙幣の真偽や金種、搬送姿勢や形状を確認し、正常紙幣か否かを判別される。そして正常紙幣と判別された紙幣のみ経路Hを通り入出金口ユニット101へ送られ、利用者へ受け渡す。鑑別ユニット102で異常紙幣と判別された紙幣は、経路Iを通り、第一の予備保管庫へ収納される。
【0056】
次に出金動作時の収納庫104の動作について説明する。
図11は、第一の実施例における保管庫104の出金動作を示す側面図である。出金動作時において、上述の収納動作時と同様に、仕切板411は退避状態となっている。この状態で、押板409を図中Y1方向へ上昇させることで、第二の領域に存在する紙幣P2のうち、最上部紙幣P21がピックローラ422に押しあてられ、所定の押圧が作用する状態となる。この状態で、ピックローラ422とフィードローラ420を図中ω2の方向へ回転させることにより、第二の領域に存在する紙幣P2は一枚ずつ、図中X2の方向へ分離され放出される。そして、指定枚数の紙幣を放出した後、動作が終了する。
【0057】
以上のように、本発明を適用した本実施例における紙幣取扱装置1によれば、シャッター等の大掛かりな機構を使用せずに、簡素な機構で、利用者が入金した取引中の紙幣と、取引前に既に紙幣取扱装置内に保管されていた紙幣とを確実に区分し、返却時には確実に入金された紙幣を返却することが可能である。これにより、装置の異常停止ポテンシャルの低減が可能である。
【実施例2】
【0058】
第二の実施例における紙幣取扱装置1について以下に説明する。なお実施例1との相違点についてのみ以下説明し、上実施例と同一部材は同じ番号を使用する。本実施例では、紙幣取扱装置1の構成や保管庫104の外観等は実施例1と同様である。本実施例の実施例1との差異は、保管庫104内部に備えられている仕切手段410の構成である。
【0059】
図12は、第二の実施例における保管庫104の内部構成を示した図である。保管庫104には、その内部の空間を分割する複数の仕切手段410と、収納されている紙幣を図中上下方向へ移動させるための押板409が備えられている。更に保管庫104には、収納されている紙幣を一枚ずつ保管庫104外へ出すための複数のローラや仕切手段410を動作させるためのモータが存在するが、
図12では記載を省略する。
【0060】
仕切手段410は、仕切シート430と、仕切シート430の巻取り及び送出しを行う巻取ローラ431とで構成される。ここで、仕切シート430は保管庫104の空間を二つの空間に区分けており、仕切シート430を基準とし、図中上方向の空間を第一の領域、図中下方向の空間を第二の領域と呼ぶ。
【0061】
ここで仕切シート430は、例えば樹脂フィルム等の可撓性材料で構成されており、十分な柔軟性を有している。そのため、仕切シート430は、第一の領域に存在する紙幣P1の自重によって変形し、それにより第一の領域を形成している。また、第一の領域と第二の領域の境界を明確にするために、仕切シート430の先端が、第一の領域に存在する紙幣P1と第二の領域に存在する紙幣P2の側端位置から突出していることが望ましい。
【0062】
仕切手段410は、
図12中では図示していないモータにより巻取軸433を回転させることで、仕切シート430の長さの変更が可能となっている。本実施例では、仕切手段410が複数存在するが、全て同一の巻取軸433に取り付けられているため、同一モータにより複数の仕切手段410の動作が可能となっている。
【0063】
図13は第二の実施例における仕切手段410の詳細構成を示した図である。本図を用い、仕切手段410の動作について説明する。上述の通り、仕切シート430は可撓性材料で構成されているため、押板409の図中上方向Y1、図中下方向Y2の動作によって、仕切シート430が変形し、第一の領域と第二の領域の境界位置は、押板409の上下方向の動作のみで調整が可能となっている。押板409の上下方向の動作が行われると、仕切シート430の図中鉛直方向の長さl1と、第一の領域と第二の領域を区分する仕切シート430の水平方向長さl2が変わるため、それに応じ巻取軸433を図中ω3、ω4方向に回転させ、その長さを調整する。
【0064】
すなわち押板409が図中上方向Y1に移動した際は、l1は短くなる(l2は長くなる)ため、それに合わせ巻取軸433を図中ω4方向に回転させ、仕切シート430を巻取り、有効長さを短くする。逆に押板409が図中下方向Y2に移動した場合は、l1が長くなる(l2は短くなる)ため、それに合わせ巻取り軸433を図中ω3方向に回転させ、仕切シート430を送出し、有効長さを長くする。
【0065】
上述の仕切シート430の巻取り動作の際、タッチローラ434によって、仕切シート430に圧縮力が作用した状態で巻取るため、整然と巻取ローラ431に巻取ることが可能である。以上説明した通り、仕切シート430は第二の領域に収納されている紙幣P2を介し、押板409の動作に追従するため、その図中Y1、Y2方向の動作に関して、駆動源を必要としない。
【0066】
(1)入金、収納、返却動作
次に
図14乃至
図16を用い、本実施例による紙幣取扱装置1の入金、収納、返却動作について説明する。本動作時の紙幣取扱装置1中の紙幣の流れに関しては、実施例1と同様である。
【0067】
(1)−1 入金動作
図14は、第二の実施例における保管庫104の入金動作を示す側面図である。保管庫104の内部には、収納されている紙幣を保管庫104の外部に放出するための放出手段としてのピックローラ422と、放出時にピックローラ422によって搬送された紙幣を一枚ずつ分離し繰り出すためのフィードローラ420及びゲートローラ423と、仕切手段410と、収納されている紙幣を移動させるための押板409と、紙幣の集積時に所定の集積空間を確保するため、集積される紙幣を図中Y2方向へ叩き落とすためのシートローラ423が備えられている。
【0068】
図14(a)に示す様に、入金動作の開始直前に、押板409は図中Y1方向に上昇をする。押板409が上昇することで、第2の空間に収納されている紙幣P2は持ち上げられ、その最上部紙幣P21が仕切シート411と接触する。そして、第2の空間に収納されている紙幣P2を介して、押板409の図中Y1方向の動力が仕切シート430に作用することで、仕切シート430も図中Y1方向へ持ち上げられる。仕切板411が上昇し、集積動作に最適な所定の集積空間Ysを確保する位置で、押板409は停止する。ここで、仕切シート430の、第一の領域と第二の領域を区分するのに必要な水平方向の長さl2を所定量とするために、それに応じ巻取軸433を回転させ、その長さを調整する。
【0069】
この状態で、入金動作が開始される。
図14(b)に示す様に、取込放出口408から送られてきた紙幣は、図中矢印ω1で記載されている方向へ回転するフィードローラ420とゲートローラ421、及びフィードローラ420と接触し回転するピンチローラ424によって搬送され、図中破線矢印X1に示す方向で保管庫104内に侵入する。保管庫内に侵入した紙幣P11は、その後端がフィードローラ420とゲートローラ421の挟持から抜けた後に、回転するシートローラ423によって叩き落とされる。そして、仕切シート430の上部である第一の領域に収納される。
【0070】
第一の領域に収納される紙幣の数が増え、集積空間が所定量よりも狭くなった場合、その状態を図示せぬセンサによって検知し、押板409を図中Y2方向へ降下させる。押板409が降下すると、第二の領域に収納されている紙幣P2も降下するため、その最上部紙幣P21と接触している仕切シート430も第一の領域に収納されている紙幣P1の自重によって降下する。この時、集積紙幣の数が多くなると、l1が長くなる(l2は短くなる)ため、それに合わせ巻取り軸433を回転させ、仕切シート430を送出し、有効長さを長くする。
【0071】
この様に、仕切シート430の高さを、適正な集積空間を保持する様に動作させることで、例えば集積中紙幣が干渉しジャムが発生することを防止することができ、確実な集積が可能となる。また、この仕切シート430の高さを、押板409の動作に追従させ変化させることで、仕切シート430の上下動のための駆動源を設ける必要が無く、機構の大型化や煩雑化、またはそれに伴う装置の異常停止等を防止することができる。
【0072】
(1)−2 収納動作
次に保管庫104内において、第一の領域に収納されている紙幣を第二の領域へ収納する動作について説明する。
図15は第二の実施例における保管庫104の収納動作を示す図である。入金動作の終了後、利用者が入金された金額を確認し、承認操作が為された場合、保管庫104内の第一の領域に収納されている紙幣P1は、第二の領域に収納される。収納のための、仕切シート430の退避動作について説明する。
【0073】
仕切シート430を退避させるために、軸回転モータ432によって、巻取ローラ431を図中ω4の方向へ回転させる。巻取ローラ431の回転により、仕切シート430を巻き取ることで、第一の領域に存在する紙幣P1の底面から仕切シート430が退避される。仕切シート430の退避により、第一の領域と第二の領域の分割が解消され、第一の領域に収納されている紙幣P1は自重により、Y2方向へ移動し、第二の領域へ収納される。
【0074】
(1)−3 返却動作
次に、返却動作時の収納庫104の動作について説明する。
図16は第二の実施例における保管庫104の返却動作を示す側面図である。
図16(a)は返却動作時の保管庫104の側面図であり、
図16(b)は返却動作時の保管庫104の上面図である。ここで、収納庫104内の紙幣において、返却の対象となる紙幣は仕切シート430上部の第一の領域に存在する紙幣P1である。返却処理時には、押板409は図中Y1方向へ上昇しており、仕切シート430下部の第二の領域に存在する紙幣P2を介し、仕切シート430を同様に図中Y1方向へ持上げている。
【0075】
仕切シート430が持上ることにより、第一の領域に存在する紙幣P1のうち、最上部紙幣P11がピックローラ422に押し当てられ、所定の押圧が作用する状態となる。この状態で、ピックローラ422とフィードローラ420を図中ω2の方向へ回転させることにより、第一の領域に存在する紙幣P1は一枚ずつ、図中X2の方向へ分離され放出される。放出動作が進み、第一の領域に存在する紙幣P1の最下部の紙幣P1Eが繰出されると返却動作は終了である。この動作中において、押板409の図中Y1方向への上昇に伴い、巻取ローラ431を回転させ、仕切シート430を送出す、若しくは巻き取ることで、第一の領域と第二の領域を区分する仕切シート430の水平方向長さl2が一定の量を持つように調整する。
【0076】
ここで、収納されている紙幣の長手方向に関して、仕切シート430はピックローラ422と同位置に備えられており、第一の領域に紙幣が存在しない場合、仕切シート430はピックローラ422と図中CPの位置において接触する。すなわち、仕切シート430は、第一の領域に設けられたピックローラ422に対して、紙幣の積層方向の重なる位置に設けられている。そのため、ピックローラ422は第二の領域に存在する紙幣P2と接触することは無く、誤って返却すべきでない第二の領域に存在する紙幣P2を保管庫104外へ放出することは無い。そのため、確実に利用者が取引中の紙幣のみを返却することが可能である。また、第一の領域に紙幣が存在しない場合、仕切りシート430が第二領域に存在する紙幣P2と接触することはないため、例えば、第二領域に存在する紙幣P2が、誤搬送時に仕切りシート430に接触してジャムを引き起こす等の障害も起こり得ず、そのような障害に対する係員の操作性を向上させることができる。
【0077】
(2)出金動作
次に
図17を用い、本発明を適用した紙幣取扱装置1の出金動作について説明する。
図17は、第一の実施例における保管庫104の出金動作を示す側面図である。出金動作時において、上述の収納動作時と同様に、仕切シート430は退避状態となっている。この状態で、押板409を図中Y1方向へ上昇させることで、第二の領域に存在する紙幣P2のうち、最上部紙幣P21がピックローラ422に押しあてられ、所定の押圧が作用する状態となる。この状態で、ピックローラ422とフィードローラ420を図中ω2の方向へ回転させることにより、第二の領域に存在する紙幣P2は一枚ずつ、図中X2の方向へ分離され放出される。そして、指定枚数の紙幣を放出した後、動作が終了する。
【0078】
このように、上述した各実施例によれば、入金した紙幣を一時保留することで、取引中の紙幣と既に収納済みの紙幣を区分可能な紙幣取扱装置において、簡素な機構によって従来の課題を解決することができ、装置の異常停止ポテンシャルの低減が可能である。更に、係員の操作性の向上も可能となっている。例えば、上述した各実施例における紙幣取扱装置の第一の特徴として、紙幣の保管庫内に、保管された複数枚の紙幣を、第一の領域と第二の領域に区分するための目印手段と、紙幣を放出するための放出手段とを設けられている。ここで、上記目印手段は、第一の領域の紙幣を全て放出した後に、上記放出手段と接触する位置に備えられている。すなわち、目印手段は、第一の領域に設けられた放出手段に対して、紙幣の積層方向の重なる位置に仕切部材(例えば、仕切板や仕切シート)を設けている。この第一の特徴のように、各実施例における紙幣取扱装置では、複数の紙幣を第一の領域と第二の領域に区分する手段を保管庫内に設けるという構成にすることにより、第一の領域と第二の領域の間にシャッター等の大掛かりな機構を必要とせず、区分けるための手段は目印程度の簡素なもので実現可能である。このような機構の簡素化によって装置の異常停止ポテンシャルが低減可能である。
【0079】
更に、この目印手段は簡素なものであるが、第一の領域の紙幣を全て放出した後に、目印手段と保留庫から紙幣を放出する放出手段とが接触する位置に備えられているため、第一の領域に存在する紙幣を放出する際に、誤って放出手段が第二の領域に存在する紙幣を放出することは無い。
【0080】
更に第二の特徴として、各実施例における紙幣取扱装置では、紙幣の画像情報を取得する画像情報取得手段(例えば、画像センサ)と、上記画像情報取得手段によって抽出された画像情報を記憶する記憶手段(例えば、制御部が有するメモリ)とを備えている。この第二の特徴のように、各実施例における紙幣取扱装置では、紙幣の画像情報を取得する画像情報取得手段と、上記画像情報取得手段によって抽出された画像情報を記憶する記憶手段とを備えているため、入金時に第一の領域に収納する紙幣の画像情報を記憶することが可能である。入金時の紙幣の画像情報を利用することによって、第一の領域と第二の領域に収納されている紙幣の区分の信頼性が向上する。
【0081】
更に第三の特徴として、各実施例における紙幣取扱装置では、上記保管庫は、上記第一の領域の紙幣を取出すための第一の取出口と、上記第二の領域の紙幣を取出すための第二の取出口とを有する。この第三の特徴のように、各実施例における紙幣取扱装置に備えられている上記保管庫は、係員が上記第一の領域の紙幣を取出すための第一の取出口と、上記第二の領域の紙幣を取出すための第二の取出口とを有しているため、係員が直接特定の領域の紙幣を取出すといった運用が可能であり、操作性が向上する。この時、第一の領域と第二の各領域に関して独立した取出口を有しているため、誤って他の領域の紙幣を取出してしまうことを防止することが可能である。
【0082】
更に第四の特徴として、各実施例における紙幣取扱装置では、上記保管庫は、紙幣を移動させるための駆動可能な押板を有しており、上記目印手段は、上記押板および紙幣と共に移動する構成となっている。また上記目印手段は上記押板より力を受けることで移動することを特徴とする。この第四の特徴のように、各実施例における紙幣取扱装置に備えられている上記保管庫は、紙幣を移動させるための駆動可能な押板を有しており、上記目印手段が、上記押板および紙幣と共に移動する構成となっている。そして、上記目印手段は上記押板より力を受けることで移動するため、目印手段の動作のための駆動源を減らす事ができ、装置の移動停止ポテンシャルを更に低減することが可能となる。