(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、船舶の低負荷運転が盛んに行われており、舶用内燃機関においては、低負荷時に、より高い性能が求められている。
このため、舶用内燃機関や発電用内燃機関等の大型内燃機関と組み合わせて使用されるターボ過給機としては、内側ケーシングと外側ケーシングとの間に形成される空間が、内燃機関から排出された排気ガスをタービンノズルの外周側に導くための第1の排気ガス流路となるよう構成され、内側ケーシングの内周側に、第1の排気ガス流路の途中で分岐された排気ガスをタービンノズルの内周側に導くための第2の排気ガス流路が形成されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
これによって、機関負荷に応じてタービンノズルへ流入する排ガス流入面積を2段階(第1の排気ガス流路のみ、または、第1の排気ガス流路と第2の排気ガス流路の両方)に変化させることができる。
【0003】
しかし、上記したようなターボ過給機においては、第1の排気ガス流路のみから排気ガスをタービンノズルへと導いた場合に、排気ガスが、第1の排気ガス流路と第2の排気ガス流路を隔てるためにタービンノズルに設けられている仕切部材(内側ケーシング)に沿ってタービンノズルの下流側に流れる。そのため、タービンノズルから導出された排気ガスがタービン動翼の全体に導かれなくなり、タービンノズルに仕切部材を設けていないターボ過給機に比べてタービン効率が低下するという問題があった。
【0004】
そこで、特許文献2には、内燃機関から排出された排気ガスが導かれるターボ圧縮機のタービンノズルに、その半径方向の途中位置に仕切部材を設けて、その仕切部材の外周側がタービンノズルに導かれる排気ガスの上流側から下流側に向かってタービンノズルの内周側へと傾斜する構成のターボ過給機が開示されている。
このようなターボ過給機によれば、仕切部材よりも半径方向外側のタービンノズルを流れる排気ガスは、仕切部材の外周側の傾斜に沿ってタービンノズルの内周側に導かれることとなる。これにより、タービンノズルから導出する排気ガスをタービン動翼の全体に導くことができる。したがって、仕切部材の外周側を傾斜させなかった場合に比べて、タービン効率を向上させることが可能となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、タービンノズルから導出する排気ガスをタービン動翼の全体に導くという観点からすると、仕切部材の外周側を傾斜させるだけでなく、仕切部材自体を、なるべく半径方向内側に設けるのが好ましい。
また、低負荷時に、より高い性能を得るという観点でも、仕切部材を、なるべく半径方向内側に設けるのが好ましい。
しかし、仕切部材自体を、半径方向内側に移動させると、仕切部材よりも半径方向内側の第2の排気ガス流路の幅が狭くなる。すると、仕切部材より内側のノズル翼部分が、仕切部材より外側のノズル翼部分を単に延長した構成になっている場合、第2の排気ガス流路の面積が小さくなる。その結果、内燃機関から排出された排気ガスを、第1の排気ガス流路のみに流した場合と、第1の排気ガス流路と第2の排気ガス流路の両方に流した場合とで、タービンノズルへ流入する排ガス流入面積の変化量が小さくなる。すると、機関負荷に応じてタービンノズルへ流入する排ガス流入面積を2段階に変化させることによる効果が小さくなってしまう。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、排気ガス流入面積を小さくした場合のタービン効率を向上させることで、機関低負荷時において最適な排気ガス流入面積に切り替えた状態での機関性能を改善することのできるターボ過給機、タービンノズル及び船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明は、内燃機関の燃焼用空気を圧縮し、前記内燃機関の燃焼室内へ送り込むターボ過給機であって、前記ターボ過給機に設けられたタービンは、前記内燃機関から排出される排気ガスによって回転駆動されるタービン動翼と、該タービン動翼に前記排気ガスを導く複数のタービンノズルと、前記内燃機関の出力に拘わらず前記タービンノズルに排気ガスを導く第一の排ガス通路と、前記内燃機関の出力が特定の出力以上であるときにのみ前記タービンノズルに排気ガスを導く第二の排ガス通路と、を備え、前記タービンノズルは、前記第一の排ガス通路から導かれた排気ガスと前記第二の排ガス通路から導かれた排気ガスとを遮る仕切部材と、前記第一の排ガス通路から導かれた排気ガスが通過する第一の排ガス通路側翼部と、前記第二の排ガス通路から導かれた排気ガスが通過する第二の排ガス通路側翼部と、を備え、周方向において互いに隣接する第二の排ガス通路側翼部どうしの間のスロート幅が、周方向において互いに隣接する前記第一の排ガス通路側翼部どうしの間のスロート幅よりも大きく設定されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、内燃機関の燃焼用空気を圧縮し、前記内燃機関の燃焼室内へ送り込むターボ過給機であって、前記ターボ過給機に設けられたタービンは、前記内燃機関から排出される排気ガスによって回転駆動されるタービン動翼と、該タービン動翼に前記排気ガスを導くタービンノズルと、を備え、前記タービンノズルは、円筒状の内周側部材と、前記内周側部材よりも大きな内径を有し、前記内周側部材の外周側に同心状に配置された外周側部材と、前記内周側部材と前記外周側部材との間に設けられた仕切部材と、前記外周側部材と前記仕切部材との間に、周方向に間隔を隔てて設けられた複数枚の外周翼部と、前記内周側部材と前記仕切部材との間に、周方向に間隔を隔てて設けられた複数枚の内周翼部と、を備え、周方向において互いに隣接する前記内周翼部どうしの間のスロート幅が、周方向において互いに隣接する前記外周翼部どうしの間のスロート幅よりも大きく設定されていることを特徴とする。
【0010】
ここで、スロート幅とは、互いに隣接する外周翼部どうし、内周翼部どうしの間に形成される排ガス流路において、外周翼部どうし、内周翼部どうしの間隔が最も小さくなる部分の間隔寸法を言う。
外周翼部と内周翼部は、同一の断面形状で、仕切部材を挟んだ内周側と外周側とで、径方向に連続して形成した場合、タービンノズルの周方向において互いに隣接する外周翼部どうし、内周翼部どうしの間隔は、タービンノズルの径方向内側に行くほど小さくなる。すると、互いに隣接する外周翼どうしの間、内周翼どうしの間に形成される排ガス流路のスロート幅も、径方向内側に行くほど小さくなる。
これに対し、本発明のターボ過給機によれば、互いに隣接する内周翼部どうしの間のスロート幅を、外周翼部どうしの間のスロート幅よりも大きくすることで、内周側部材と仕切部材との間を流れる排気ガスの流路面積を増大させるこことが可能となる。すると、仕切部材を半径方向内側に移動させて設置しても、内周側部材と仕切部材との間を流れる排気ガスの流量が少なくなってしまうのを抑えることができる。
【0011】
前記仕切部材を挟んだ内周側と外周側とで、前記外周翼部の翼表面形状と前記内周翼部の翼表面形状とが連続するよう形成され、前記内周翼部の後縁部が、前記外周翼部の後縁部よりも前記排気ガスの流れ方向上流側に位置するよう形成されている。
外周翼部と内周翼部を、当初は同一の断面形状として、仕切部材を挟んだ内周側と外周側とで径方向に連続して形成しておき、その後、内周翼部の後縁を切削する。すると、内周翼部の後縁部が、外周翼部の後縁部よりも排気ガスの流れ方向上流側に位置する。これによって、内周翼部どうしの間のスロート幅が、外周翼部どうしの間のスロート幅よりも大きくなる。
【0012】
本発明は、内燃機関の燃焼用空気を圧縮し、前記内燃機関の燃焼室内へ送り込むターボ過給機であって、前記ターボ過給機に設けられたタービンは、前記内燃機関から排出される排気ガスによって回転駆動されるタービン動翼と、該タービン動翼に前記排気ガスを導くタービンノズルと、を備え、前記タービンノズルは、円筒状の内周側部材と、前記内周側部材よりも大きな内径を有し、前記内周側部材の外周側に同心状に配置された外周側部材と、前記内周側部材と前記外周側部材との間に設けられた仕切部材と、前記外周側部材と前記仕切部材との間に、周方向に間隔を隔てて設けられた複数枚の外周翼部と、前記内周側部材と前記仕切部材との間に、周方向に間隔を隔てて設けられた複数枚の内周翼部と、を備え、前記仕切部材を挟んだ内周側と外周側とで、前記外周翼部の翼表面形状と前記内周翼部の翼表面形状とが連続するよう形成され、前記内周翼部の後縁部が、前記外周翼部の後縁部よりも前記排気ガスの流れ方向上流側に位置するよう形成されていることを特徴とする。
【0013】
このようなターボ過給機は、内周翼部の後縁部が、外周翼部の後縁部よりも排気ガスの流れ方向上流側に位置するよう形成されているのであればよく、内周翼部どうしの間のスロート幅が、外周翼部どうしの間のスロート幅よりも大きく設定されていなくてもよい。内周翼部どうしの間のスロート幅が、外周翼部どうしの間のスロート幅よりも小さくても、外周翼部と内周翼部が同一の断面形状で、仕切部材を挟んだ内周側と外周側とで径方向に連続して形成されている場合に比較すれば、上記構成により十分な作用効果が得られる。
【0014】
また、前記周方向に沿った前記外周翼部の枚数よりも、前記内周翼部の枚数の方が少なく形成されているようにしてもよい。
これによっても、内周翼部どうしの間のスロート幅が、外周翼部どうしの間のスロート幅よりも大きくなる。
【0015】
本発明は、内燃機関の燃焼用空気を圧縮し、前記内燃機関の燃焼室内へ送り込むターボ過給機のタービン動翼の上流側に配置され、前記タービン動翼に前記排気ガスを導くタービンノズルとすることもできる。このタービンノズルは、円筒状の内周側部材と、前記内周側部材よりも大きな内径を有し、前記内周側部材の外周側に同心状に配置された外周側部材と、前記内周側部材と前記外周側部材との間に設けられた仕切部材と、前記外周側部材と前記仕切部材との間に、周方向に間隔を隔てて設けられた複数枚の外周翼部と、前記内周側部材と前記仕切部材との間に、周方向に間隔を隔てて設けられた複数枚の内周翼部と、を備え、周方向において互いに隣接する前記内周翼部どうしの間のスロート幅が、周方向において互いに隣接する前記外周翼部どうしの間のスロート幅よりも大きく設定されていることを特徴とする。
このようなタービンノズルは、既設のターボ過給機に組み込むことも可能である。
【0016】
本発明は、船体に、内燃機関と、上記したようなターボ過給機と、を備えることを特徴とする船舶とすることもできる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るターボ過給機によれば、排気ガス流入面積を小さくした場合のタービン効率を向上させることで、機関低負荷時において最適な排気ガス流入面積に切り替えた状態での機関性能を改善することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る排気タービン過給機の一実施形態について、
図1から
図5を参照しながら説明する。
図1は本実施形態に係るターボ過給機のタービン側を示す断面図、
図2は、
図1のターボ過給機に備えたタービンノズルを中心軸に直交する方向からみた図である。
図3(a)は
図2のD−D矢視断面図、(b)は
図2のE−E矢視断面図である。
図4は、
図2のF−F矢視断面図である。
図5は、タービンノズルにおける半径方向位置とスロート幅との関係を説明するための図である。
【0020】
図1に示すように、ターボ過給機(「排気タービン過給機」ともいう。)10は、内燃機関(図示せず)の燃焼用空気を圧縮し、密度を高めた空気を内燃機関の燃焼室(図示せず)内へ強制的に送り込むものである。ターボ過給機10は、タービン20と、圧縮機(図示せず)と、を備えている。
タービン20は、内燃機関から排出される排気ガスによって回転駆動されるタービン動翼30と、タービン動翼30に排気ガスを導くタービンノズル25と、を備えている。
このようなターボ過給機は、内燃機関とともに船体(図示せず)に搭載され、船舶を構成する。
【0021】
ターボ過給機10は、タービン20に導入した内燃機関の排気ガスが膨張して得られる軸出力によりロータ軸31の他端部に配置された圧縮機(図示せず)を回転させ、高密度に圧縮した圧縮空気を内燃機関に供給するように構成された、例えば、軸流式のタービンである。
なお、
図1中に格子状のハッチングで示す部分は、断熱および防音の目的で設置された断熱材11である。
【0022】
タービン20は、内側ケーシング21と外側ケーシング22との間に形成される空間が、内燃機関の出力に拘わらず排気ガスをタービンノズル25に導くための排気ガス流路(第一の排ガス流路)26となるよう構成されたガス入口ケーシング27を備えている。
【0023】
このような二重構造のガス入口ケーシング27では、排気ガス流路26がタービン20の回転方向の全周にわたって形成されている。ガス入口ケーシング27のガス入口27aから
図1中に矢印Giで示すように導入された排気ガスは、排気ガス流路26を通ってガス入口ケーシング27のガス出口27bに導かれた後、
図1中に矢印Goで示すようにしてガス出口ケーシング28の出口から外部へ排出される。また、ガス出口27bは、回転方向の全周にわたってタービンノズル25へ排気ガスを供給するように開口して設けられている。
【0024】
また、タービン20は、ロータ軸31の一端部に設けられたロータディスク32と、このロータディスク32の周縁部に、周方向に沿って取り付けられた多数のタービン動翼30とを備えている。タービン動翼30は、タービンノズル25の出口となる下流側に近接して設けられている。そして、タービンノズル25から噴出する高温の排気ガスがタービン動翼30を通過して膨張することにより、ロータディスク32およびロータ軸31が回転するようになっている。
【0025】
ガス入口ケーシング27において、内側ケーシング21の一端部は、外側ケーシング22の一端部に締結手段(例えば、スタッドボルト23およびナット24)により固定支持されている。すなわち、内側ケーシング21は、ロータディスク32の反対側となる紙面右側のケーシング端部に形成されたフランジ面21aと、このフランジ面21aに対向するように形成された外側ケーシング22のフランジ面22aとを重ね合わせた状態にして、この状態で締結手段(例えば、ナット24)を締め付けていくことにより固定支持されている。これらのフランジ面21a,22aは、いずれもロータディスク32と一体に回転するロータ軸31の軸方向と直交する面とされている。
【0026】
内側ケーシング21の内周側(半径方向内側)には、内燃機関の出力が特定の出力以上であるときにのみ、排気ガス流路26の途中で分岐された排気ガスをタービンノズル25の内周側(半径方向内側)に導く排気ガス流路(第二の排ガス流路)36が、タービン20の回転方向の全周にわたって形成されている。この排気ガス流路36は、排気ガス流路26の内周側(半径方向内側)に設けられており、排気ガス流路26と排気ガス流路36とは、内側ケーシング21に設けられた隔壁37によって仕切られている。
【0027】
また、内側ケーシング21の一端内周部(一端部内周側)には、配管38を接続するためのフランジ39が設けられている。配管38の途中には、制御装置40によって自動的に開閉される開閉弁(例えば、バタフライ弁)41が接続されている。そして、排気ガス流路26の途中で分岐された排気ガスは、フランジ39および配管38を通って内周側の排気ガス流路36に導かれるようになっている。
【0028】
図2に示すように、一般にノズルリングと呼ばれてタービンノズル25を形成するリング状部材は、円筒状の内周側部材25aと、内周側部材25aよりも大きな内径を有した円筒状で、内周側部材25aの外周側に同心状に配置された外周側部材25bと、内周側部材25aと外周側部材25bとの間に同心状に設けられた円筒状の仕切部材42と、を備えた二重リング構造とされている。仕切部材42は、排ガス通路26から導かれた排気ガスと排ガス通路36から導かれた排気ガスとを遮る。
【0029】
図1に示すように、タービンノズル25の内周側部材25aは、内側ケーシング21の他端(ロータディスク32側の端部)内周部(他端部内周側)にボルト35を介して結合されて(取り付けられて)いる。
【0030】
一方、タービンノズル25の外周側部材25bは、ガス入口側(ガス出口27bの側)の端部内周面25cがラッパ形状に拡径されている。また、外側ケーシング22のロータディスク32側の端部には、外側ケーシング22の内周面をロータディスク32の方向へ折曲するようにして形成された段差部22bが設けられている。そして、この段差部22bと、ノズルリングのガス入口側の端部に設けられた段差部25dとが軸方向で係合(嵌合)するように構成されている。
【0031】
さらに、ノズルリングの外周側部材25bには、ガス出口側(タービン動翼30の側)となる端部にガス案内筒29が連結されている。ノズルリングの外周側部材25bとガス案内筒29との連結部は、互いの端部どうしを嵌合させたインロー構造とされている。
【0032】
仕切部材42の内周面42aは、タービンノズル25の根元側(ノズルリングの内周側部材25aの側)において、隔壁37の内周面(半径方向内側の表面)37aに連続する面を形成するとともに、ロータ軸31およびノズルリングの内周側部材25aと略平行になっている。
また、仕切部材42の外周面(外周側)42bは、排気ガス流路26から外周側のタービンノズル25に導かれる排気ガスの上流側から下流側(
図1において右側から左側)に向かってタービンノズル25の内周側へと傾斜するテーパー形状とするのが好ましい。
外周側のタービンノズル25に導かれる排気ガスの上流側から下流側に向かってテーパー形状とされている仕切部材42の外周面42bは、そのテーパー角度が、例えば、20°程度とされている。
【0033】
また、仕切部材42は、外周側部材25bと仕切部材42との間に形成されるスロート面積と、内周側部材25aと仕切部材42との間に形成されるスロート面積との比が、例えば9:1(90%:10%)となる位置に設けられている。
【0034】
図2に示すように、タービンノズル25において、外周側部材25bと仕切部材42との間に、周方向に間隔を隔てて設けられた複数枚の外周翼部(第一の排ガス流路側翼部)44が設けられ、内周側部材25aと仕切部材42との間に、周方向に間隔を隔てて設けられた複数枚の内周翼部(第二の排ガス流路側翼部)45が設けられている。外周翼部44には、排ガス通路26から導かれた排気ガスが通過し、内周翼部45は、排ガス通路36から導かれた排気ガスが通過する。
【0035】
図3(a)、(b)に示すように、外周翼部44および内周翼部45は、排気ガスの流れ方向上流側を向いた翼表面44s,45sが、流れ方向下流側に凹となる湾曲面をなしている。また、外周翼部44および内周翼部45において、排気ガスの流れ方向下流側を向いた翼表面44t,45tが、流れ方向下流側に凸となる湾曲面をなしている。そして、仕切部材42を挟んだ内周側と外周側とで、外周翼部44と内周翼部45は、翼表面44s,44tの形状と内周翼部45の翼表面45s,45tの形状とが仕切部材42を挟んで連続するよう形成されている。
これにより、
図3、
図4に示すように、外周翼部44の排気ガスの流れ方向上流側の前縁部44fと、内周翼部45の前縁部45fは、排気ガスの流れ方向において同一位置に形成されている。
【0036】
一方、内周翼部45の排ガスの流れ方向下流側の後縁部45bは、外周翼部44の後縁部44bよりも排気ガスの流れ方向上流側に位置するよう形成されている。
すると、
図3に示すように、タービンノズル25の周方向において互いに隣接する内周翼部45,45どうしの間の流路の最狭幅の値、すなわちスロート幅S1が、周方向において互いに隣接する外周翼部44,44どうしの間のスロート幅S2よりも大きく設定されている。
【0037】
このような内周翼部45を形成するには、例えば、外周翼部44と内周翼部45を、当初は同一の断面形状として、仕切部材42を挟んだ内周側と外周側とで、径方向に連続して形成しておき、その後、内周翼部45の後縁を切削する。すると、内周翼部45の後縁部45bが、外周翼部44の後縁部44bよりも排気ガスの流れ方向上流側に位置する。これによって、内周翼部45,45どうしの間のスロート幅S1が、外周翼部44,44どうしの間のスロート幅S2よりも大きくなる。
もちろん、このように、内周翼部45の後縁部45bを後から切削するのではなく、予め、所定寸法に形成してもよい。このタービンノズル25の製造方法については、何ら限定するものではない。
【0038】
次に、このように構成されたターボ過給機10における排気ガスの流れについて説明する。
例えば、内燃機関の負荷が低く、排気ガスの量が少ない場合には、開閉弁41が全閉状態とされ、内燃機関の負荷が高く、排気ガスの量が多い場合に開閉弁41が全開状態とされる。
【0039】
すなわち、内燃機関の負荷が低く、排気ガスの量が少ない場合には、ガス入口ケーシング27のガス入口27aから導入された排気ガスの全量が、排気ガス流路26を通って外周側のガス出口27bに導かれる。外周側のガス出口27bに導かれた排気ガスは、ガス出口27bからタービンノズル25の外周側(外周側部材25bと仕切部材42とで仕切られた空間内)に導かれる。
【0040】
タービンノズル25の外周側に導かれた排気ガスは、タービンノズル25に設けられている仕切部材42の外周面42bがテーパー形状となっているので、仕切部材42の外周面42bのテーパー形状に沿ってタービンノズル25の内周側に向けて流れる。そのため、タービンノズル25の下流側から導出される排気ガスは、タービン動翼30の全体にわたって導かれることとなる。このようにタービン動翼30の全体に導かれた排気ガスは、タービン動翼30を通過する際に膨張してロータディスク32およびロータ軸31を回転させる。
【0041】
一方、内燃機関の負荷が高く、排気ガスの量が多い場合には、ガス入口ケーシング27のガス入口27aから導入された排気ガスの大半(例えば約70〜95%)が、排気ガス流路26を通って外周側のガス出口27bに導かれ、ガス入口ケーシング27のガス入口27aから導入された排気ガスの一部(約5〜30%)が、フランジ39、配管38、開閉弁41、排気ガス流路36を通って内周側のガス出口36aに導かれる。
【0042】
外周側のガス出口27bに導かれた排気ガスは、回転方向の全周にわたって開口するガス出口27bからタービンノズル25の外周側(外周側部材25bと仕切部材42とで仕切られた空間内)に導かれる。
タービンノズル25の外周側に導かれた排気ガスはテーパー形状の仕切部材42の外周面42bに沿って流れる。そのため、タービンノズル25の下流側から導出される排気ガスは、タービン動翼30の全体にわたって導かれることとなる。このようにタービン動翼30の全体に導かれた排気ガスは、タービン動翼30を通過する際に膨張してロータディスク32およびロータ軸31を回転させる。
【0043】
一方、内周側のガス出口36aに導かれた排気ガスは、回転方向の全周にわたって開口するガス出口36aからタービンノズル25の内周側(内周側部材25aと仕切部材42とで仕切られた空間内)に導かれる。このとき、互いに隣接する内周翼部45,45どうしの間のスロート幅S1が、外周翼部44,44どうしの間のスロート幅S2よりも大きく設定されているので、内周側部材25aと仕切部材42との間を流れる排気ガスの流量は、スロート幅S1をスロート幅S2以下とした場合に比較して増大する。
タービンノズル25の内周側に導かれた排気ガスは、タービンノズル25に設けられている仕切部材42の内周面42aに沿って流れる。そのため、タービンノズル25の下流側から導出される排気ガスは、タービン動翼30の内周側に導かれることとなる。このようにタービン動翼30の内周側に導かれた排気ガスは、タービン動翼30を通過する際に膨張してロータディスク32およびロータ軸31を回転させる。
【0044】
これらのように、排気ガスがタービン動翼30を通過する際に膨張してロータディスク32およびロータ軸31を回転させることにより、ロータ軸31の他端部に設けられた圧縮機が駆動され、内燃機関に供給する空気が圧縮される。
【0045】
なお、圧縮機で圧縮される空気は、フィルター(図示せず)を通して吸入され、タービン動翼30で膨張した排気ガスは、ガス案内筒29およびガス出口ケーシング28に導かれて外部へ流出する。
また、開閉弁41は、例えば、圧縮機から送出(吐出)される空気の圧力、または内燃機関の燃焼室に供給される空気の圧力が絶対圧力で例えば0.2MPa(2bar)よりも低い場合、すなわち、内燃機関が低負荷運転されている場合に全閉状態とされ、圧縮機から送出(吐出)される空気の圧力、または内燃機関の燃焼室に供給される空気の圧力が絶対圧力で例えば0.2MPa(2bar)以上の場合、すなわち、内燃機関が高負荷運転されている場合に全開状態とされる。
【0046】
上述したように、本実施形態においては、互いに隣接する内周翼部45,45どうしの間のスロート幅S1を、外周翼部44,44どうしの間のスロート幅S2よりも大きくした。
外周翼部44と内周翼部45を、同一の断面形状で、仕切部材42を挟んだ内周側と外周側とで、径方向に連続して形成した場合、タービンノズル25の周方向において互いに隣接する外周翼部44,44どうし、内周翼部45,45どうしの間隔は、タービンノズル25の径方向内側に行くほど小さくなる。すると、
図5中の二点鎖線に示すように、互いに隣接する外周翼部44,44どうしの間、内周翼部45,45どうしの間に形成される排ガス流路のスロート幅も、径方向内側に行くほど小さくなる。
【0047】
これに対し、上記したように互いに隣接する内周翼部45,45どうしの間のスロート幅S1を、外周翼部44,44どうしの間のスロート幅S2よりも大きくすることにより、内周側部材25aと仕切部材42との間を流れる排気ガスの流量が増大する。すると、外周翼部44と内周翼部45を同一の断面形状として仕切部材42を挟んだ内周側と外周側とで連続して形成した場合に比較し、仕切部材42を半径方向内側に移動させて設置しても、内周側部材25aと仕切部材42との間を流れる排気ガスの流量が少なくなってしまうのを抑えることができる。したがって、タービン効率を向上させつつ、機関負荷に応じてタービンノズル25へ流入する排ガス流入面積を明確に2段階に変化させることが可能となる。
【0048】
また、仕切部材42の外周面(外周側)42bがタービンノズル25に導かれる排気ガスの上流側から下流側に向かってタービンノズル25の内周側へと傾斜することとした。そのため、仕切部材42よりも半径方向外側のタービンノズル25を流れる排気ガスは、仕切部材42の外周面42bに沿ってタービンノズル25の内周側に導かれることとなる。これにより、タービンノズル25から導出する排気ガスをタービン動翼30の全体に導くことができる。したがって、仕切部材42の外周面42bを傾斜させなかった場合に比べて、タービン効率を向上させることができる。そして、排気ガス流入面積を小さくした場合のタービン効率を向上させることで、機関低負荷時に最適な排気ガス流入面積に切り替えた状態での機関性能を改善することができる。
【0049】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、適宜必要に応じて変形実施、変更実施することができる。
例えば、上述した実施形態では、仕切部材42の外周面42bのテーパー角度を20°程度として説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、タービンノズル25の下流側からタービン動翼30に導かれる排気ガスがタービン動翼30の全体に導かれる角度であれば何度でもよい。
【0050】
さらに、上述した実施形態では、仕切部材42の外周面42bがタービンノズル25の上流側から下流側に向かって漸次下降傾斜するテーパー形状として説明したが、開閉弁41を閉じたとき下流側に向かって排気ガスの流れをタービンノズル25の内周側に導く形状、例えば、円錐面状であったり、曲面状であっても、タービンノズル25を通過した排気ガスがタービン動翼30の根元側に導かれる形状であれば良い。
【0051】
さらにまた、上述した実施形態では、軸流タービンを用いて説明したが、遠心式/斜流式のタービンや、パワータービン等の回転機械にも適用可能である。
【0052】
また、上記したようなターボ過給機10は、内周翼部45の後縁部45bが、外周翼部44の後縁部44bよりも排気ガスの流れ方向上流側に位置するよう形成されているのであれば、内周翼部45,45どうしの間のスロート幅S1が、外周翼部44,44どうしの間のスロート幅S2よりも大きく設定されていなくてもよい。内周翼部45,45どうしの間のスロート幅S1が、外周翼部44,44どうしの間のスロート幅S2よりも小さくても、内周翼部45の後縁部45bが、外周翼部44の後縁部44bよりも排気ガスの流れ方向上流側に位置していれば、外周翼部44と内周翼部45が同一の断面形状で仕切部材42を挟んだ内周側と外周側とで径方向に連続して形成されている場合に比較すれば、十分な作用効果が得られるからである。
【0053】
また、周方向に沿った外周翼部44の枚数よりも、内周翼部45の枚数の方が少なく形成されているようにしてもよい。
これによっても、内周翼部45,45どうしの間のスロート幅S1が、外周翼部44,44どうしの間のスロート幅S2よりも大きくなり、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0054】
さらにまた、ターボ過給機10全体の構成については、上記に示した構成に限るものではない。例えば、上記したようなタービンノズル25は、既設のターボ過給機に組み込むことも可能である。それにより、タービンノズル25を組み込むのみで、既設のターボ過給機においても、上記実施形態と同様の作用効果が得られる。