(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5960110
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】作業機械のフック格納装置
(51)【国際特許分類】
B66C 1/68 20060101AFI20160719BHJP
E02F 3/36 20060101ALI20160719BHJP
E02F 3/40 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
B66C1/68 A
E02F3/36 Z
E02F3/40 B
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-223323(P2013-223323)
(22)【出願日】2013年10月28日
(65)【公開番号】特開2015-86016(P2015-86016A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2015年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】津村 浩志
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 慧
(72)【発明者】
【氏名】高野 賢一
【審査官】
大野 明良
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−226078(JP,A)
【文献】
特開2007−161357(JP,A)
【文献】
特開2000−204579(JP,A)
【文献】
特開2001−159149(JP,A)
【文献】
特開2011−021440(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/121406(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00− 3/20
E02F 3/36
E02F 3/40
E02F 9/00− 9/18
E02F 9/24− 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械の作業装置に備えられるアタッチメントとこのアタッチメントを駆動するバケットシリンダとの間に設けられ、吊荷作業に使用する吊荷フック装置が格納される作業機械のフック格納装置において、
一端側が前記バケットシリンダに接続され、他端側が前記アタッチメントに接続されるバケットリンクを有し、前記吊荷フック装置は前記アタッチメントと前記バケットリンクとの接続部に回動自在に接続されるボス部材と、このボス部材の反対端側に形成され吊りワイヤが係止可能な鉤部とを有し、前記ボス部材には周方向に突起または溝を形成し、前記バケットリンクには前記ボス部材に形成した突起または溝に係合するラッチ装置を設けたことを特徴とする作業機械のフック格納装置。
【請求項2】
前記バケットリンクに設けたラッチ装置は、前記ボス部材に形成した突起または溝に係合する係合部を有するラッチ板と、このラッチ板の一端側に形成された孔に嵌合し前記ラッチ板を回動可能にするピンと、前記ラッチ板の回動を規制し前記ピンおよび前記ラッチ板に係合するばね手段とを有することを特徴とする請求項1に記載の作業機械のフック格納装置。
【請求項3】
前記吊荷フック装置の鉤部とボス部材との中間部を保持可能で、前記吊荷フック装置が回動して前記バケットリンクに保持される際のガイドとなるガイド部材を前記バケットリンクの底板に設け、このガイド部材の断面形状が前記底板と反対方向に向けて広がる溝形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の作業機械のフック格納装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業機械のフック格納装置に係り、特にバケット等のアタッチメントとフックをともに備えた場合に好適な作業機械のフック格納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
土砂等の掘削作業に用いる建設機械である油圧ショベルでは、作業装置の先端部にアタッチメントを備えている。このような油圧ショベルにおいて、掘削作業の合間に比較的軽量の吊荷作業も実施できるように、バケットシリンダとバケットの間を連結するバケットリンクに、フックを格納している場合がある。この様な油圧ショベルの例が、特許文献1及び特許文献2に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載のフック付バケットリンク装置では、バケットリンク内の格納空間にフックを迅速に格納し、またはバケットリンク内の格納空間からフックを迅速に取り出すために、フックの鉤部に出入り可能なラッチ板を設けている。具体的には、吊荷フックの移動方向とほぼ直角な方向にスイング可能なラッチ板を設け、ばねで付勢している。そして、バケットリンクの格納空間に吊荷フックを納めるために、吊荷フックを進出させた状態では、ばねがラッチ板を付勢してラッチ板が吊荷フックの鉤部に係合する。一方、吊荷フックをバケットリンクから取り出し作業させるために、吊荷フックを後退させるときは、ばねの付勢力に抗した力をラッチ板に加えて取り出している。これにより、吊荷フックの格納および取り出し作業を迅速に行っている。
【0004】
また、特許文献2に記載のフック付バケットリンクでは、吊荷重量の大きな吊荷フックをバケットリンクに格納するため、吊荷フックを、縮径部を有する鼓状ボスと、ブラケット、支持軸、吊環体、鉤部等から構成する。これにより、鉤部を鼓状ボスの縮径部に取り付けた分だけ大型化して、バケットリンクのフック格納空間内に吊荷フックを格納可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−226078号公報
【特許文献2】特開2000−95476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで油圧ショベルのような作業機械では、アタッチメントを取り付けるバケットリンクに吊荷フックが取り付けられている場合、吊荷フックを使用せずに専らアタッチメントを使用するときはアタッチメントでの作業に邪魔とならないよう、また吊荷フック使用時の作業では正常に動作するよう、吊荷フックをバケットリンクに格納している。吊荷フックの格納は、現場の作業員が実行するので、格納作業が容易であること、および取り出し作業も容易であることが求められる。さらに、アタッチメントを用いた作業中に、不意に吊荷フックがバケットリンクから飛び出さ無いことも要求される。そのため、吊荷フック付バケットリンクでは、吊荷フックをバケットリンクに確実に格納するために、フックキャッチ等の保持手段が設けられている。
【0007】
しかしながら、作業機械がバケットリンクにフックキャッチを備えていても、実際に作業する作業者が格納し忘れると、折角のフックキャッチも有効に活用できない。そのため、作業者が手動で吊荷フックをバケットリンクに格納するのではなく、作業機械の起動動作により自動的に吊荷フックが格納されることが望まれている。
【0008】
上記特許文献1では、バケットリンクに吊荷フックを容易にかつ迅速に格納およびバケットリンクから吊荷フックを容易かつ迅速に取り出すことができる作業機械が開示されている。この公報に記載の作業機械では、確かに吊荷の格納取り出しが容易かつ迅速に行えるが、作業者の格納忘れまでは考慮されていない。同様に、特許文献2に記載の作業機械でも、吊荷重量の大きな吊荷フックをバケットリンクに格納できるが、やはり作業者の吊荷フックの格納忘れについてまでは考慮されていない。したがって、作業者が吊荷フックをバケットリンクに格納し忘れたままアタッチメントによる作業を実行する恐れがある。
【0009】
本発明は上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は、作業機械の作業者がたとえバケットリンク装置に吊荷フックを格納し忘れたまま次の作業を行おうとしても、次の作業の開始までに自動で吊荷フックをバケットリンクに格納できるようにすることにある。それとともに、バケットリンク装置から吊荷フックを取り出すときには、容易に吊荷フックを取り出せるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明の特徴は、作業機械の作業装置に備えられるアタッチメントとこアタッチメントを駆動するバケットシリンダとの間に設けられ、吊荷作業に使用する吊荷フック装置が格納されるフック格納装置において、一端側が前記バケットシリンダに接続され、他端側が前記アタッチメントに接続されるバケットリンクを有し、前記吊荷フック装置は前記アタッチメントと前記バケットリンクとの接続部に回動自在に接続されるボス部材と、このボス部材の反対端側に形成され吊りワイヤが係止可能な鉤部とを有し、前記ボス部材には周方向に突起または溝を形成し、前記バケットリンクには前記ボス部材に形成した突起または溝に係合するラッチ装置を設けたことにある。
【0011】
そしてこの特徴において、前記バケットリンクに設けたラッチ装置は、前記ボス部材に形成した突起または溝に係合する係合部を有するラッチ板と、このラッチ板の一端側に形成された孔に嵌合し前記ラッチ板を回動可能にするピンと、前記ラッチ板の回動を規制し前記ピンおよび前記ラッチ板に係合するばね手段とを有することが好ましい。
【0012】
また上記特徴において、前記吊荷フック装置の鉤部とボス部材との中間部を保持可能で、前記吊荷フック装置が回動して前記バケットリンクに保持される際のガイドとなるガイド部材を前記バケットリンクの底板に設け、このガイド部材の断面形状が前記底板と反対方向に向けて広がる溝形状であるのがよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、作業機械のフック格納装置を構成するバケットリンク装置において、吊荷フック取付け部にラッチ手段を設けたので、作業機械の前部に取り付けた作業装置の動作により、吊荷フックがバケットリンクに自動的に係合する。これにより、作業機械の作業者がたとえバケットリンク装置に吊荷フックを格納し忘れたまま次の作業を行おうとしても、次の作業の開始までに吊荷フックをバケットリンクに格納できる。また、ラッチ装置に手動の解除手段を設けたので、作業者が手動でバケットリンクから吊荷フックを容易に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る作業機械の一実施例の側面図である。
【
図2A】
図1のA部詳細図であり、フック格納装置の正面図である。
【
図2B】フック格納装置が備えるガイド部材の断面図である。
【
図3】
図2に示したフック格納装置の側面図であり一部A−A矢視断面図(
図3(a))および一部B−B矢視断面図(
図3(b))である。
【
図4】
図2に示したフック格納装置が備えるラッチ装置の正面図、両側面図及び上面図である。
【
図5】
図4に示したラッチ装置の分解斜視図である。
【
図6】
図2に示したフック格納装置の動作を説明する図であり、フック格納装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る作業機械の一実施例を、図面を用いて説明する。本実施例では、作業機械20として油圧ショベルを例にとり説明するが、作業機械は油圧ショベル20に限るものではなく、アタッチメント4cに吊荷フックを付設したものであれば、各種作業機械に適用できる。
【0016】
図1は、本発明に係る油圧ショベル20の一実施例の側面図である。油圧ショベル20は、下部走行体1と、この下部走行体1上に旋回可能に搭載され、下部走行体1とともに油圧ショベル20の車体を構成する上部旋回体2と、この上部旋回体2の前部側に俯仰動可能に設けられたフロント4とを備えている。
【0017】
下部走行体1は、この下部走行体1を駆動し後側に配置される駆動モータ11と、前側に配置される従動輪12と、従動輪12及び駆動モータに連結する駆動輪に装架される履帯10とを有している。上部旋回体2は、旋回フレーム上の前方側に搭載されるキャブ3と、旋回フレームの上側であって後方側に搭載されるカウンタウエイト8とを有している。
【0018】
上部旋回体2の前部に一端側を取り付けられたフロント4は、俯仰動可能に上部旋回体2に根元側を取付けたブーム4aと、ブーム4aの他端側が取り付けられ俯仰動可能なアーム4bと、アームの先端側に取り付けた掘削用のアタッチメントとしてのバケット4cとを有している。ブーム4aはブームシリンダ5aにより、アーム4bはアームシリンダ5bにより、それぞれ俯仰動を制御される。バケット4cは、バケットシリンダ5cにより掘削動作が制御される。
【0019】
バケットシリンダ5cの一端部はアーム4bのブーム4a接続側に取り付けられており、バケットシリンダの他端側は、詳細を後述するように、第1、第2のバケットリンク22,23の一端部に接続されている。第1のバケットリンク23(23a、23b)の他端側は、アーム4bの先端側に接続されている。第2のバケットリンク22の他端側は、バケット4cの背面側に取り付けたブラケット21(21a、21b)に接続されている。このブラケット21と第2のバケットリンク22との接続部には、吊荷フック装置30が取り付けられており、第2のバケットリンク22とともにフック格納装置100を構成する。なお、
図1では理解しやすくするため吊荷フック装置30を第2のバケットリンク22からはみ出して示しているが、後述するようにバケット4cでの掘削作業中や移動中には、吊荷フック装置30は第2のバケットリンク22内に保持される。
【0020】
次に
図2A、
図2B、
図3を用いて、フック格納装置100の詳細を説明する。
図2Aは、フック格納装置100の正面図であり、
図2Bはフック格納装置100が有するガイド部材60の断面図である。
図3は、フック格納装置100の側面図であり、それぞれ
図2AのA−A矢視断面図(
図3(a))及びB−B矢視断面図(
図3(b))である。
【0021】
フック格納装置100は、主として、第2のバケットリンク22と、第2のバケットリンク22の底板22cに設けたガイド部材60と、吊荷フック装置30と、この吊荷フック装置に係合するラッチ装置50とから構成される。
【0022】
図2Aに示すように、第2のバケットリンク22の一端側は左右に分かれており、バケットシリンダ5cと連結する上部連結部22a、22bを構成している。上部連結部22a、22b間にはバケットシリンダ5cの端部が介装されており、上部連結部22a、22bおよびバケットシリンダ5cを、ブッシュ45を介して連結軸24aで連結している(
図3(a)参照)。バケットリンク22の上部連結部22a、22bのそれぞれの外側には、アーム4bに接続する第1のバケットリンク23a、23bの端部が配設されており、バケット4cを俯仰動させる掘削動作を可能にしている。
【0023】
第2のバケットリンク22の下部、すなわちバケット4cとの接続側も2つに分かれており、それぞれ下部連結部22d、22eを構成している。下部連結部22d、22eの間には吊荷フック装置30のボス部31が介装されており、これら下部連結部22d、22e及びボス部31は、ブッシュ45を介して連結軸24bにより連結されている(
図3(a)参照)。バケットリンク22の下部連結部22d、22eのそれぞれの軸方向外側には、スペーサ42、43を介してブラケット21a、21bが配設されている。ブラケット21a、21bの一端側は、バケット4cの背面側に溶接等で取り付けられている。
【0024】
吊荷フック装置30は、
図3(a),(b)に示すように、疑問符形状の鉤部30aと、この鉤部30aの内面側に取り付けられ、ワイヤ等の吊具の脱落を防止するストッパ板30bと、鉤部30aの根元側に位置し、鉤部30aをその長手方向軸回りに回動可能にするスイベルジョイント部30cと、スイベルジョイント部30cから延びた連結部30dとを有している。ストッパ板30bの一端側は、鉤部30aにピン30fで回動可能に取り付けられており、他端側は図示しないばね等で鉤部30aの内面に当接するように付勢されている。
【0025】
吊荷フック装置30はさらに、連結部30dと一端側で係合し、バケット4cとの連結に用いる連結軸24bに係合する係合孔が形成されたボス部材31を有している。ボス部材31は、円筒形状をしたボス部31bと、ボス部31bの軸方向中央部であって側面に間隔をおいて平行に延びる2つの連結部31c、31dとを有している。連結部31c、31dの先端側には、貫通孔が形成されており、スイベルジョイント部30cから延びた連結部30dを連結する連結ピン30eがこの貫通孔に貫挿される(
図3(a)参照)。
【0026】
図2AのB−B矢視図である
図3(b)に示すように、ボス部材31の連結部31c、31dの軸方向両側では、円周方向の一部に本発明の特徴的構成である突起31aが形成されている。そして突起31aに係合可能なラッチ装置が第2のバケットリンク22の底板部22cに設けられている。
【0027】
吊荷フック装置30のスイベルジョイント部30cを保持するために、第2のバケットリンク22の底板部22cに、ガイド部材60が溶接等で取り付けられている。このガイド部材の横断面図を
図2Bに示す。第2のバケットリンク22では、底板22cの両端側にこの底板22cに垂直に、一対のリンク板22g、22hが設けられている。
【0028】
一対のリンク板22g、22h及び底板で形成される矩形状の空間に、上面が開口したV字状のブロックであるガイド部材60が取り付けられている。
図2Bに、ガイド部材を断面図で示す。ガイド部材60の開口の側面61はリンク板22g、22h面よりθだけ傾いており、底面62はスイベルジョイント部30cの外形とほぼ同じR形状になっている。これにより、連結ピン30eを中心に吊荷フック装置30の鉤部30aが左右に傾いて第2のバケットリンク22内に収まろうとしたときでも、開口部の傾斜部に沿ってスイベルジョイント部30cが押し込まれ、鉤部30aが真っすぐな状態で第2のバケットリンク22内の空間に保持される。なお、本実施例ではガイド部材60の床面形状を円弧形状としたが、円弧形状ではなく平面形状でもかまわない。ただし、円弧形状の方が、後述する吊荷フック装置30をこのガイド部材60に保持するための動作における衝撃をより緩和できる。
【0029】
次に、
図4ないし
図6を用いて、ボス部材31に設けた突起31a及びこの突起が係止するラッチ装置50の詳細およびその動作について説明する。
図4は、ラッチ装置50の4面図であり、正面図及び左右側面図、上面図を示している。
図5は、ラッチ装置50の分解斜視図である。
図6は、突起31aとラッチ装置50を用いた係止動作を説明する図であり、フック格納装置30の側面図である。
【0030】
図5に示すように、ラッチ装置50では、ブラケット53の上面にコの字型に背面板部52aと両側面板部52bを立設している。両側面板部52bには、その中央部付近にピン孔52cが形成されている。ブラケット53及び背面板部52a、両側面板部52bとで、上面及び前面側が開口した箱状のベースが形成される。ブラケット53は、上述したように、第2のバケットリンク22に溶接等で固定される。
【0031】
箱状のベースの上部開口からラッチ板51が嵌入される。ラッチ板51は上下方向に長い矩形状の板であり、上部の角部が面取りされており、下端部は円弧状に形成されている。ほぼ半円形に形成された下端部の円弧中心付近には、上記側面板部52bに形成したピン孔52cとほぼ同径のピン孔51bが形成されている。これらのピン孔51b、52cにはピン55の軸部55aが貫挿される。
【0032】
ピン55の先端部には、ピン55の軸方向に直角な方向に貫通して抜け止めピン孔55cが形成されている。一方、ピン55の他端にはピン55をベースに保持するためピン55の軸部55aよりも大径の頭部55bが形成されている。平座金55kを一方の側面板部52bに隣り合って配置し、ピン孔51b、52bに嵌合したピン55を平座金55kをも貫通させる。その後、抜け止めピン孔55cに抜け止めピン55dを嵌合することで、ラッチ板51は、垂直方向から水平方向までほぼ90度回動可能になる。
【0033】
ラッチ板51の上下方向中間部であって一方の側面には、吊荷フック装置30のベース部材31に形成した突起31aと係合する突起状のラッチ部51dが形成されている。ラッチ部51dの上面角には、面取り状の傾斜部51fが形成されている。
【0034】
ここで、ラッチ板51にはばね54が取付けられており、ラッチ板51が垂直位置を保つように付勢する。ばね54は、ラッチ板51に当接してラッチ板51に保持されるコの字型のラッチ板当設部54bと、このラッチ板当設部54bの両側に形成されたコイルばね状の付勢部54aと、付勢部54aの端部を一方向に直線状に延ばしてブラケット53に当接させるようにしたストッパ部54cとから構成されている。この様にばね54を形成したので、ラッチ板51が垂直位置から水平方向に傾くと、ばね54の両端部であるストッパ部54cと当設部54bとの距離が短くなり、付勢部54aにばね力が蓄えられ、ラッチ板51を垂直方向に戻す反力がラッチ板51に作用する。
【0035】
図6により、吊荷フック装置30を格納する格納動作について説明する。この
図6では、第2のアームリンク22を構成する一方の下部連結番22dを取り去って示している。作業機械を用いて作業を開始するとき、または吊荷フック装置30を用いた吊荷作業を終え、バケット4cを用いた掘削作業に移るときは、初めにアーム4bを上方向に回動させる(
図6中の左側の図参照)。このアーム4bの回動に伴って、バケット4cの背面に設けたブラケット21と第2のバケットリンク22との接続部が有する連結軸24b周りに、吊荷フック装置30も回動する。その際、吊荷フック装置30は鉤部30a側が規制されていないので、アーム4bの回動角よりも多く回動することが可能になる。
【0036】
アーム4bの回動が進むと、吊荷フック装置30は、第2のバケットリンク22の底板部に取り付けたガイド部材60に形成したV溝をガイドとして、第2のバケットリンク22内に入り込む。ここで、吊荷フック装置30が有するボス部材31のボス部31bには突起31aが形成されている。この突起31aの形状は、
図3(b)に示すように、ボス部31bの外周から半径方向外側に延びる面と、この半径方向に延びる面に接続し、周方向に徐々にボス部31bの外径までその高さを変える斜めの面とで構成されている。したがって、ボス部31bが回動すると、ボス部31bに当接するように配置されたラッチ板51のラッチ部51dがカム装置のように作用して、突起31aに押されてばね54の付勢力に抗して傾き始める(
図6中の中央の図参照)。
【0037】
さらに吊荷フック装置30が回動すると、ボス部31bに形成した突起の半径方向に延びる面をラッチ板51のラッチ部51dが乗り越える。このとき、ボス部31bの外径が急激に減少するので、ラッチ板51を付勢しているばね54の付勢力が作用して、ラッチ板51は第2のバケットリンク22の底板22cに垂直な方向に戻される(
図6中の右側の図参照)。
【0038】
これにより、吊荷フック装置30とラッチ装置50とが係合し、吊荷フック装置30は第2のバケットリンク22に保持され、ラッチ板51に外力を加えない限り吊荷フック装置30とラッチ装置50との係合は外れなくなる。したがって、吊荷フック装置30を使用するときは、ラッチ板51に強制力(例えば作業者の人力)を作用させて、吊荷フック装置30とラッチ装置50との係合を解消することになる。
【0039】
上記実施例では、吊荷フック装置のボス部材に突起を、ラッチ装置にこの突起に係合するラッチ部を設けているが、吊荷フック装置のボス部材に溝を、ラッチ装置にこの溝に係合するラッチ部を設けても同様に動作可能である。
【0040】
本実施例によれば、作業機械が備えるアームの回動により、自動的に吊荷フック装置の突起とラッチ装置が係合し、しかもガイド部材により吊荷フック装置がピン連結部で傾くことなく真っ直ぐな状態で第2のバケットリンク内に保持される。これにより、バケットによる掘削作業等において、吊荷フック装置が第2のバケットリンク内に未収納のために吊荷フック装置を損傷するという事態の発生を防止できる。また、作業者による吊荷フック装置の収納し忘れも防止できる。一方、吊荷フック装置を使用するときは、ラッチ板を作業者が押すだけでよく、作業効率も向上する。
【符号の説明】
【0041】
1…下部走行体、2…上部旋回体、3…キャブ、4…作業装置、4a…ブーム、4b…アーム、4c…アタッチメント(バケット)、5a…ブームシリンダ、5b…アームシリンダ、5c…バケットシリンダ、8…カウンタウエイト、10…履体、11…駆動モータ、12…従動輪、20…作業機械(油圧ショベル)、21〜21b…ブラケット、22…(第2の)バケットリンク、22a、22b…(上部)連結部、22c…底板部、22d、22e…下部連結部、22g、22h…リンク板、23〜23b…(第1の)バケットリンク、24a…連結軸、24b…連結軸、30…吊荷フック装置、30a…鉤部、30b…ストッパ板、30c…スイベルジョイント部、30d…連結部、30e…連結ピン、30f…ピン、31…ボス部材、31a…突起、31b…ボス部、31c、31d…連結部、41…フックキャッチャー、42、43…スペーサ、44、45…ブッシュ、50…ラッチ装置、51…ラッチ板、51a…プレート、51b…ピン孔、51c…底部回動部、51d…ラッチ部、51f…傾斜面、52…半座、52a…背面板部、52b…側面板部、52c…ピン孔、52d…開口部、53…ブラケット、54…ばね、54a…付勢部、54b…ラッチ板当接部、54c…ストッパ部、55…抜け止めピン、55a…軸部、55b…頭部、55c…ピン孔、55d…ピン、60…ガイド部材、100…フック格納装置。