【実施例】
【0007】
図1によって、プロセッサ10を表す。プロセッサ10は3ウェイのスーパースカラ・パイプライン・アーキテクチャである。並列処理手法を用いて、プロセッサ10は大抵、クロック・サイクル毎に3つの命令を復号化し、ディスパッチして、実行を完了する(リタイアする)ことができる。このレベルの命令スループットを取り扱うよう、プロセッサ10は、アウト・オブ・オーダ型命令実行をサポートする分離型12段パイプラインを用いる。プロセッサ10のマイクロ・アーキテクチャ・パイプラインは4つの部分、すなわち、1次キャッシュ12及び2次キャッシュ14、フロント・エンド16、アウト・オブ・オーダ型実行コア18、及びリタイアメント部20、に分割される。命令及びデータはシステム・バス24とインタフェースするバス・インタフェース・ユニット22を通じてこれらのユニットに供給される。フロント・エンド16は非常に高い実行帯域を有して半分のクロック・サイクルのレーテンシによって基本整数演算を実行し得るアウト・オブ・オーダ型コア18に対してプログラムの順序で命令を供給する。フロント・エンド16は命令をフェッチして、マイクロ演算(μ−ops)と呼ばれる、簡単な演算に復号化する。フロント・エンド16は、アウト・オブ・オーダ型コア18に対して、元のプログラム順序で、サイクル毎に複数のマイクロ演算を発出し得る。フロント・エンド16はいくつかの基本機能を行う。例えば、フロント・エンド16は実行されそうなプリフェッチ命令を行い、既にプリフェッチされていない命令をフェッチし、命令をマイクロ演算に復号化し、複雑な命令及び特定用途向コードに対するマイクロ・コードを生成し、実行トレース・キャッシュ26からの復号化命令を配信して、分岐予測ユニット28において高度アルゴリズムを用いて分岐を予測する。
【0008】
プロセッサ10のフロント・エンド16は高速の、パイプライン・マイクロプロセッサにおける共通の問題のいくつかに対応するよう企図されている。これらの問題のうちの2つは、例えば、重大な遅延の原因をもたらしている。これらは当該ターゲットからフェッチされた命令を復号化する時間及びキャッシュ線の中間にある分岐又は分岐ターゲットによる無駄な復号化帯域である。
【0009】
実行トレース・キャッシュ26は復号化命令を記憶することによってこれらの両方の問題に対応する。命令はフェッチされ、翻訳エンジン(図なし)によって復号化されて、トレースと呼ばれる一連のマイクロ演算に組み入れられる。これらのマイクロ演算のトレースはトレース・キャッシュ26に記憶される。最もありそうな分岐のターゲットからの命令は、命令アドレスの連続性にかかわりなく、該分岐の直後に続く。トレースが構築されると、トレース・キャッシュ26はそのトレースに後続する命令についてサーチされる。その命令が既存のトレースにおける第1命令として出現する場合、メモリ階層からの命令30のフェッチ及び復号化は終わって、トレース・キャッシュ26は命令の新たなソースになる。
【0010】
実行トレース・キャッシュ18及び翻訳エンジン(図なし)は協調分岐予測ハードウェアを有する。分岐ターゲットは分岐ターゲット・バッファ(BTBS)28を用いてそれらのリニア・アドレスに基づいて予測されて直ちにフェッチされる。分岐ターゲットは、それらがトレース・キャッシュ26から、実際にそこにキャッシュされている場合、フェッチされる;さもなければ、それらはメモリ階層からフェッチされる。翻訳エンジンの分岐予測情報は最もありうる経路に沿ってトレースを形成するのに用いられる。
【0011】
コア18はプロセッサ10が命令を再配列することを可能にするようアウト・オブ・オーダで命令を実行するので、一マイクロ演算が、データ又は競合実行リソース待ちの間に、遅延された場合、プログラムの順序において後続する他のマイクロ演算はそれを迂回して進み得る。プロセッサ10はT演算(T−ops)の流れを円滑化するよういくつかのバッファを使用する。これは、パイプラインの一部が遅延を経験する場合、その遅延は並列に実行する他の演算又は先行してバッファのキューに入れられたマイクロ演算の実行によって相殺され得ることを示唆する。
【0012】
コア18は並列実行を容易にするよう企図されている。コア18はサイクル毎に6つのマイクロ演算までディスパッチし得る、すなわち、これはトレース・キャッシュ26及びリタイアメント部20のマイクロ演算の帯域を超える、ことを特筆する。ほとんどのパイプラインは毎サイクル、新しいマイクロ演算の実行を開始し得るので、いくつかの命令がパイプライン毎にいつでも処理し得る。多数の算術論理演算ユニット(ALU)命令は1サイクル毎に2つを開始し得て、多くの浮動小数点命令は2サイクル毎に1つを開始し得る。最後に、マイクロ演算を、アウト・オブ・オーダで、それらのデータ入力が準備完了になってリソースが利用可能になるとすぐに、開始し得る。
【0013】
リタイアメント部20は実行コア18からの実行マイクロ演算の結果を受信して該結果を処理するので、適切なアーキテクチャ状態が元のプログラムの順序によって更新される。意味上正しく実行するよう、命令の結果はリタイアされる前に元のプログラムの順序でコミットされる。命令がリタイアされるのと並行して、例外を発生させ得る。したがって、例外は投機的には発生し得ない。それらは正しい順序にて発生して、プロセッサ10は実行後、正しく再起動し得る。
【0014】
マイクロ演算が完了してその結果をデスティネーションに書き込む場合、それはリタイアされる。3つのマイクロ演算までをサイクル毎にリタイアし得る。リタイアメント部20におけるリオーダ・バッファ(ROB)(図なし)は完了マイクロ演算をバッファし、アーキテクチャ状態を正常に更新して、例外の配列を管理するプロセッサ10におけるユニットである。
【0015】
リタイアメント部20は更に、分岐を常に把握して更新分岐ターゲット情報をBTB28に送信して分岐履歴を更新する。このようにして、もう必要のないトレースをトレース・キャッシュ26から除去し得て、新しい分岐経路を、更新分岐履歴情報に基づいて、フェッチし得る。
【0016】
図2によって、実行環境50を表す。(
図1の)プロセッサ10上で実行中のプログラム又はタスクは何れも命令を実行するリソース群及びコード、データ、並びに状態情報を記憶するリソース群が与えられる。これらのリソースはプロセッサ10に関する実行環境50を構成する。プロセッサ10上で実行中のアプリケーション・プログラム及びオペレーティング・システム又はエグゼクティブは共同で実行環境50を使用する。実行環境50は基本プログラム実行レジスタ52、アドレス空間54、浮動小数点ユニット(FPU)レジスタ56、マルチメディア拡張レジスタ(MMX)58、及びSIMD拡張(SSE(ストリーミングSIMD拡張命令)及びSSE2(ストリーミングSIMD拡張命令2))レジスタ60を含む。
【0017】
プロセッサ10上で実行中のタスク又はプログラムは何れも4ギガバイト(2
32バイト)までのリニア・アドレス・ベース54及び64ギガバイト(2
36バイト)までの物理アドレス・ベースをアドレス指定し得る。アドレス空間54はフラットなものでもセグメント化されたものでもよい。物理アドレス拡張の仕組みを用いて、2
36−1の物理アドレス空間をアドレス指定し得る。
【0018】
基本プログラム実行レジスタ52は8つの汎用レジスタ62、6つのセグメント・レジスタ64、EFLAGSレジスタ(フラグ・レジスタ)66、及びEIP(命令ポインタ)レジスタ68を含む。基本プログラム実行レジスタ52は汎用命令群を実行する基本実行環境を設ける。これらの命令はバイト、ワード、及びダブルワード整数に基本整数算術を行い、プログラムのフロー制御を扱い、ビット及びバイトの強さを演算して、メモリをアドレス指定する。
【0019】
FPUレジスタ56は8つのFPUデータ・レジスタ70、FPU制御レジスタ72、ステータス・レジスタ74、FPU命令ポインタ・レジスタ76、FPUオペランド(データ)ポインタ・レジスタ78、FPUタグ・レジスタ80及びFPU命令操作(OP)コード・レジスタ82を含む。FPUレジスタ56は単精度、倍精度、並びに倍精度拡張浮動小数値、ワード、ダブルワード、並びにクアドワード整数、及び2進化10進符号(BCD)値を演算する実行環境を設ける。
【0020】
8つのマルチメディア拡張レジスタ58は64ビットのパック・バイト、ワード、及びダブルワードの整数に単一命令複数データ(SIMD)演算を行うことをサポートする。
【0021】
SIMD拡張命令(SSE及びSSE2)レジスタ60は8つの拡張マルチメディア(XMM)データ・レジスタ84及びMXCSRレジスタ86を含む。SIMD拡張命令(SSE及びSSE2)レジスタ60は128ビットのパック単精度並びに倍精度浮動小数値及び128ビットのパック・バイト、ワード、ダブルワード及びクワドワード整数にSIMD演算を実行することをサポートする。
【0022】
スタック(図なし)はプロシジャ又はサブルーチン・コール及びプロシジャ又はサブルーチン間でのパラメータ渡しをサポートする。
【0023】
汎用レジスタ62はオペランド及びポインタを記憶するのに利用可能である。セグメント・レジスタ64はセグメント・セレクタを6つまで収容する。EFLAGS(プログラム・ステータス及び制御)レジスタ66は実行中のプログラムのステータスについて通知してプロセッサの限定的な(アプリケーション・プログラム・レベルの)制御を可能にする。EIP(命令ポインタ)レジスタ68は実行する次の命令に対する32ビットのポインタを含む。
【0024】
32ビットの汎用レジスタ62は論理及び算術演算用オペランド、アドレス計算用オペランド、及びメモリ・ポインタを収容するよう備えられる。セグメント・レジスタ64は16ビットのセグメント・セレクタを収容する。セグメント・セレクタはメモリにおけるセグメントを識別する特別なポインタである。メモリにおいて特定のセグメントをアクセスするよう、そのセグメントに対するセグメント・セレクタが適切なセグメント・レジスタ64になければならない。
【0025】
アプリケーション・コードを作成する場合、プログラマは一般に、アセンブラ指令及び記号のあるセグメント・セレクタを生成する。アセンブラ及び他のツールはその場合、これらの指令及び記号に関連した実際のセグメント・セレクタ値を生成する。システム・コードを作成する場合、プログラマはセグメント・セレクタを直接生成する必要があるかもしれない。
【0026】
セグメント・レジスタ64の使用方法はオペレーティング・システム又はエグゼクティブが用いるメモリ管理モデルの種類によって変わってくる。フラットな(非セグメント化)メモリ・モデルを用いる場合、セグメント・レジスタ64は重複セグメントに向けられたセグメント・セレクタによってロードされ、それらの各々はリニア・アドレス空間上のアドレス・ゼロから始まる。これらの重複セグメントは更にプログラムに対するリニア・アドレス空間を含む。一般に、2つ:コードに対する1つ;及びデータ並びにスタックに対するもう1つ;の重複セグメントが定義される。セグメント・レジスタ64のCS(コード・セグメント)セグメント・レジスタ(図なし)はコード・セグメントに向けられて全ての他のセグメント・レジスタはデータ及びスタック・セグメントに向けられる。
【0027】
セグメント化メモリ・モデルを用いる場合、各セグメント・レジスタ64は通常、異なるセグメント・セレクタによってロードされるので、各セグメント・レジスタ64はリニア・アドレス空間内で異なるセグメントに向けられる。したがって、常に、プログラムはリニア・アドレス空間においてセグメントを6つまでアクセスし得る。セグメント・レジスタ64の1つによって向けられることのないセグメントをアクセスするよう、プログラムは第1に、アクセスされるセグメント・セレクタをセグメント・レジスタ64にロードする。
【0028】
32ビットEFLAGSレジスタ66はステータス・フラグ群、制御フラグ、及びシステム・フラグ群を含む。EFLAGSレジスタ66におけるフラグの一部は、特定用途向命令を用いて、直接修正し得る。該全部のレジスタ66が直接検査又は修正されることを可能にする命令はない。しかしながら、以下の命令:LAHF(ステータス・フラグをAHレジスタにロードする)、SAHF(ステータス・フラグをAHレジスタに記憶する)、push−F(Fレジスタのプッシュ)、push−FD(FDレジスタのプッシュ)、pop−F(Fレジスタのポップ)、及びpop−FD(FDレジスタのポップ);をプロシジャ・スタック又は汎用レジスタにフラグ群を移動してプロシジャ・スタック又は汎用レジスタからフラグ群を移動するのに用い得る。EFLAGSレジスタ66の内容がプロシジャ・スタック又は汎用レジスタに転送された後、フラッグを、プロセッサ10ビット操作命令を用いて、検査及び修正し得る。
【0029】
タスクを一時停止する場合、プロセッサ10は自動的に一時停止されているタスクについての(図なしの)タスク状態セグメント(TSS)においてEFLAGSレジスタ66の状態をセーブする。プロセッサ10は、該プロセッサ自体に新しいタスクを結びつける場合、新しいタスク・プログラム状態レジスタ(PSS(プログラム状態セグメント)、図なし)からのデータによってEFLAGSレジスタ66をロードする。
【0030】
コールがインタラプト又は例外ハンドラ・プロシジャに対して行われた場合、プロセッサ10は自動的にプロシジャ・スタック上でEFLAGSレジスタ66の状態をセーブする。インタラプト又は例外がタスク・スイッチによって扱われる場合、EFLAGSレジスタ66の状態は一時停止されているタスクに対するTSS上にセーブされる。
【0031】
プロセッサ10において用いられる基本データ・タイプはバイト、ワード、ダブルワード、クワドワード及びダブルクワドワードである。1バイトは8ビットで、1ワードは2バイト(16ビット)で、ダブルワードは4バイト(32ビット)で、クワドワードは8バイト(64ビット)で、ダブルクワドワードは16バイト(128ビット)である。
【0032】
図3によって、メモリにおいてオペランドとして表される基本データ・タイプ各々のバイト・オーダを表す。各データ・タイプのロー・バイト(ビット0乃至7)はメモリにおける最下位のアドレスを占めてそのアドレスは更にオペランドのアドレスである。
【0033】
ワード、ダブルワード及びクアドワードはメモリにおいて自然境界上でアラインされる必要はない。ワード、ダブルワード及びクワドワードに対する自然境界は各々、偶数のアドレス、4で割り切れるアドレス、及び8で割り切れるアドレスである。しかしながら、プログラムの性能を向上させるよう、データ構造(特にスタック)は可能な限り、自然境界上でアラインされるべきである。この理由はプロセッサ10がアラインされていないメモリ・アクセスを行うのに2つのメモリ・アクセスを必要とする一方、アラインされたアクセスは1つのメモリ・アクセスを必要とすることにある。4バイトの境界をまたがるワード若しくはダブルワードのオペランド又は8バイトの境界をまたがるクワドワードのオペランドはアラインされていないとみなされ、それをアクセスするのに2つの別個のメモリ・バス・サイクルを必要とする。奇数のアドレスから開始するがワードの境界をまたがらないワードはアラインされているとみなされて、なお、1つのバス・サイクルにおいてアクセスし得る。
【0034】
ダブルクワドワードを演算する命令のいくつかはメモリ・オペランドが自然境界上でアラインされることを必要とする。これらの命令は、アラインされていないオペランドが特定された場合、一般保護例外(#GP)を生成する。ダブルクワドワードに対する自然境界は16によって割り切れるアドレスの何れかである。ダブルクワドワードを演算する他の命令はアラインされていないアクセスを、一般保護例外を生成することなく、可能にするが、メモリからアラインされていないデータをアクセスするには追加のメモリ・バス・サイクルが必要になる。
【0035】
バイト、ワード及びダブルワードはプロセッサ10の基本データ・タイプであるが、命令のいくつかは演算を数値データ・タイプに行うことを可能にするよう更にこれらのデータ・タイプを解釈・実行することをサポートする。例えば、プロセッサ10は2つの種類:符号無し;及び符号付き;の整数を定義する。符号無しの整数はゼロから、選定オペランド・サイズで符号化し得る最大の正数までの範囲の通常の(ordinary)2進値である。符号付きの整数は正及び負の整数の値の両方を表すのに用い得る2の補数の2進値である。
【0036】
プロセッサ10は3つの浮動小数点データ・タイプ;単精度浮動小数点;倍精度浮動小数点;及び倍精度拡張浮動小数点;を定義して該データ・タイプを演算する。これらのデータ・タイプに対するデータ・フォーマットは2進の浮動小数点算術に関するIEEE(米国電気電子学会)標準754に規定されたようなフォーマットに直接相当する。
【0037】
ポインタはメモリにおける位置のアドレスである。プロセッサ10は2つの種類のポインタ;ニア・ポインタ(32ビット);及びファー・ポインタ(48ビット);を定義する。ニア・ポインタはセグメント内部の(実効アドレスとも呼ばれる)32ビットのオフセットである。フラットなメモリ・モデルにおける全てのメモリ参照に、又はアクセスされるセグメントの身元が暗示される場合に、セグメント化されたモデルにおける参照に、用いられる。ファー・ポインタは48ビットの論理アドレスで、16ビットのセグメント・セレクタ及び32ビットのオフセットから成る。ファー・ポインタはアクセスされるセグメントの身元が明示的に規定されなければならない場合に、メモリ参照及びセグメント化されたメモリ・モデルにおける参照に用いられる。
【0038】
ビット・フィールドは連続する一連のビットのことである。それはメモリにおける如何なるバイトの如何なるビット位置からでも開始し得、32ビットまで含み得る。ストリングは連続する一連のビット、バイト、ワード又はダブルワードのことである。ビット列は如何なるバイトの如何なるビット位置からでも開始し得、2
32−1ビットまで含み得る。バイト列はバイト、ワード又はダブルワードを含み得、ゼロから2
32−1バイト(4ギガバイト)までの範囲に及び得る。
【0039】
2進符号化10進整数(BCD整数)は0から9までの範囲の有効値を有する符号無しの4ビット整数である。プロセッサ10は1つ以上の汎用レジスタ62又は1つ以上のFPUレジスタ56にあるBCD整数の演算を定義する。
【0040】
図4によれば、実数はFPU56浮動小数点レジスタ70における浮動小数点フォーマット100にて表される。浮動小数点フォーマットは3つの部分;符号102;有効数字104;及び指数106;を含む。符号102は該数が正(0)か負(1)を示す2進値である。有効数字104は2つの部分:1ビットの(更にJビットとも呼ばれる)2進整数108及び2進分数110;を有する。整数ビット108は表されないことがあり、その代わりに暗黙の値である。指数106は有効数字104が乗算される2を基底とする累乗を表す2進整数である。
【0041】
プロセッサ10はSIMD演算において用いられる64ビット及び128ビットのパック・データ・タイプの群を規定して該群を演算する。これらのデータ・タイプは基本データ・タイプ(パックされた、バイト、ワード、ダブルワード並びにクワドワード)及びパック整数及びパック浮動小数点演算において用いる基本データ・タイプの数値解釈を含む。
【0042】
64ビットのSIMDデータ・タイプは主に、64ビットのマルチメディア拡張レジスタ58において演算される。基本64ビット・パック・データ・タイプはパック・バイト、パック・ワード及びパック・ダブルワードである。マルチメディア拡張レジスタ58においてこれらのデータ・タイプに数値SIMD演算を行う場合、これらのデータ・タイプはバイト、ワード、又はダブルワード整数値を含むものとして解釈される。
【0043】
128ビットのパックSIMDデータ・タイプは主に、128ビットの拡張マルチメディア(XMM)レジスタ84及びメモリ54において演算される。基本128ビット・パック・データ・タイプはパック・バイト、パック・ワード、パック・ダブルワード及びパック・クワドワードである。拡張マルチメディア(XMM)レジスタ84においてこれらの基本データ・タイプにSIMD演算を行う場合、これらのデータ・タイプはパック若しくはスカラ単精度浮動小数点又は倍精度浮動小数点値を含むものとしてか、パックされた、バイト、ワード、ダブルワード、又はクワドワード整数値を含むものとして、解釈される。
【0044】
図5によれば、表120は種々のSIMD拡張、演算されるデータ・タイプ、及びデータ・タイプがマルチメディア拡張レジスタ58及び拡張マルチメディア(XMM)レジスタ84にパックされる方法のまとめを表す。
【0045】
上記のように、マルチメディア拡張命令はメモリ54、マルチメディア拡張レジスタ58、及び/又は汎用レジスタ62に含まれた、パックされた、バイト、ワード、ダブルワード又はクワドワード整数オペランドを演算する。マルチメディア拡張命令はデータ転送命令、変換命令、パック算術命令、比較命令、論理命令、シフト並びに回転命令及び状態管理命令を含む。
【0046】
SIMD拡張(SSE及びSSE2)命令はいくつかの、例えば、4つの、群:拡張マルチメディア(XXM)レジスタ84を演算するSIMD単精度浮動小数点命令、MXSCRレジスタ86を演算するMXSCR命令、MXXレジスタ58を演算する64ビットSIMD整数命令、及びキャッシュ可能性制御、プリフェッチ並びに命令順序付け命令に分割される。
【0047】
命令の1つのクラスに移動/ロード及び複製タイプの命令がある。これらの命令は、例えば、ビットの複製を得るようロード値に明示的な演算を行う必要性を省くものであるため、「複合」命令とも呼ばれる。現在のアーキテクチャはMOVDDUP命令、MOVSHDUP命令及びMOVSLDUP命令を含む。これらの命令はパック単精度及びパック倍精度浮動小数点データ・タイプの複雑な算術をサポートするよう備えられる。これらの命令は種々のアプリケーションにおいて用い得る。例えば、これらの命令は信号処理アプリケーション及び自然データ・タイプの処理に関係するアプリケーションの効率を向上し得る。
【0048】
MOVDDUP命令は、64ビット(ソースがレジスタの場合、ビット〔63−0〕)をロード/移動する、倍精度浮動小数点の1だけの移動及びSSE2複製命令である。MOVDDUP命令は、同じ結果レジスタの下半分と上半分との両方において同じ64ビットを返す、すなわち、ソースからの64ビットを複製する。したがって、ソースが0/1のエントリを有する場合、デスティネーションは1/0/1/0のエントリを有する。MOVEDDUP命令は以下のフォーマット:
MOVEDDUP デスティネーション、ソース;
を有し、ソース・オペランドはメモリ位置54又は第2拡張マルチメディア(XMM)レジスタ84でデスティネーション・オペランドは第1拡張マルチメディア(XMM)レジスタ84である。ソースは倍精度浮動小数点データ・タイプを含む。
【0049】
演算においては、ソース・オペランドがメモリ・アドレスの場合、第1拡張マルチメディア(XMM)レジスタのビット〔63−0〕がメモリ・アドレスのビット〔63−0〕によってロードされて、第1拡張マルチメディア(XMM)レジスタのビット〔127−64〕はメモリ位置のビット〔63−0〕によってロードされる。ソース・オペランドが第2拡張マルチメディア(XMM)レジスタの場合、第1拡張マルチメディア(XMM)レジスタのビット〔63−0〕は第2拡張マルチメディア(XMM)レジスタのビット〔63−0〕に等しくなるよう設定されて第1拡張マルチメディア(XMM)レジスタのビット〔127−64〕は第2拡張マルチメディア(XMM)レジスタのビット〔63−0〕に等しくなるよう設定される。
【0050】
リニア・アドレスは参照メモリ・データの最下位バイトのアドレスに相当する。メモリ・アドレスが示された場合、メモリ位置でのデータの16バイトがロード又は記憶される。レジスタ−レジスタ形式の演算が用いられる場合、128ビットのソース・レジスタの内容は128ビットのデスティネーション・レジスタに複製される。
【0051】
MOVSHDUP命令は128ビットをロード/移動して結果として生じるレジスタにエントリ1及び3を複製する、単精度浮動小数点上位移動及びSSE2複製命令である。128ビットのソース・レジスタ幅の例においては、各エントリは32ビットである。特に、ソースのエントリが、3/2/1/0の(0が下位単精度エントリで3が上位単精度エントリである)、場合、MOVSHDUP命令の実行後の結果レジスタは複製されたエントリ3及び1を記憶してエントリ3/3/1/1を設ける。MOVSHDUPは以下のフォーマット:
MOVSHDUP デスティネーション、ソース;
を有し、ソース・オペランドはメモリ位置54又は第2拡張マルチメディア(XMM)レジスタ84を表してデスティネーション・オペランドは第1拡張マルチメディア(XMM)レジスタ84である。ソース・オペランドはパック単精度浮動小数点データ・タイプを有する。
【0052】
演算においては、ソース・オペランドがメモリ・アドレスの場合、第1拡張マルチメディア(XMM)レジスタのビット〔31−0〕がメモリ・アドレスのビット〔63−32〕によってロードされ、第1拡張マルチメディア(XMM)レジスタのビット63−32がメモリ・アドレスのビット〔63−32〕によってロードされ、第1拡張マルチメディア(XMM)レジスタのビット95−64がメモリ・アドレスのビット〔127−96〕によってロードされて、第1拡張マルチメディア(XMM)レジスタのビット127−96がメモリ・アドレスのビット〔127−96〕によってロードされる。
【0053】
ソース・オペランドが第2拡張マルチメディア(XMM)レジスタの場合、第1拡張マルチメディア(XMM)レジスタのビット〔31−0〕が第2拡張マルチメディア(XMM)レジスタのビット〔63−32〕に等しくなるよう設定され、第1拡張マルチメディア(XMM)レジスタのビット〔63−32〕が第2拡張マルチメディア(XMM)レジスタのビット〔63−32〕に等しくなるよう設定され、第1拡張マルチメディア(XMM)レジスタのビット〔95−64〕が第2拡張マルチメディア(XMM)レジスタのビット〔127−96〕に等しくなるよう設定され、第1拡張マルチメディア(XMM)レジスタのビット〔127−96〕が第2拡張マルチメディア(XMM)レジスタのビット〔127−96〕に等しくなるよう設定される。
【0054】
リニア・アドレスは参照メモリ・データの最下位バイトのアドレスに相当する。メモリ・アドレスが示された場合、メモリ位置での16バイトのデータがロード又は記憶される。レジスタ−レジスタ形式の演算が用いられる場合、128ビットのソース・レジスタの内容は128ビットのデスティネーション・レジスタに複製される。
【0055】
MOVSLDUP命令は、128ビットをロード/移動してエントリ0及び2を複製する、パック単精度浮動小数点下位移動及びSSE2複製命令である。特に、ソースが3/2/1/0(0が下位単精度エントリ)である場合、結果レジスタはエントリ2/2/0/0を記憶する。MOVSLDUP命令は以下のフォーマット:
MOVSLDUP デスティネーション、ソース;
を有し、ソース・オペランドはメモリ位置54又は第2拡張マルチメディア(XMM)レジスタ84でデスティネーション・オペランドは第1拡張マルチメディア(XMM)レジスタ84である。ソース・オペランドはパック単精度浮動小数点データ・タイプを含む。
【0056】
演算においては、ソース・オペランドがメモリ・アドレスの場合、第1拡張マルチメディア(XMM)レジスタのビット〔31−0〕はメモリ・アドレスのビット〔31−0〕によってロードされて、第1拡張マルチメディア(XMM)レジスタのビット〔63−32〕はメモリ・アドレスのビット〔31−0〕によってロードされて、第1拡張マルチメディア(XMM)レジスタのビット〔95−64〕はメモリ・アドレスのビット〔95−64〕によってロードされて、第1拡張マルチメディア(XMM)レジスタのビット〔127−96〕はメモリ・アドレスのビット〔95−64〕によってロードされる。ソース・オペランドがレジスタの場合、第1拡張マルチメディア(XMM)レジスタのビット〔31−0〕は第2拡張マルチメディア(XMM)レジスタのビット〔31−0〕に等しくなるよう設定され、第1拡張マルチメディア(XMM)レジスタのビット〔63−32〕は第2拡張マルチメディア(XMM)レジスタのビット〔31−0〕に等しくなるよう設定され、第1拡張マルチメディア(XMM)レジスタのビット〔95−64〕は第2拡張マルチメディア(XMM)レジスタのビット〔95−64〕に等しくなるよう設定され、第1拡張マルチメディア(XMM)レジスタのビット〔127−96〕は第2拡張マルチメディア(XMM)レジスタのビット〔95−64〕に等しくなるよう設定される。
【0057】
リニア・アドレスは参照メモリ・データの最下位バイトのアドレスに相当する。メモリ・アドレスが示された場合、メモリ位置での16バイトのデータがロード又は記憶される。レジスタ−レジスタ形式の演算が用いられる場合、128ビットのソース・レジスタの内容は128ビットのデスティネーション・レジスタに複製される。