特許第5960116号(P5960116)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5960116
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】車両用のパイプ状補強部材
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/02 20060101AFI20160719BHJP
   B62D 25/10 20060101ALI20160719BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   B62D25/02 B
   B62D25/10 D
   B60J5/00 Q
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-262057(P2013-262057)
(22)【出願日】2013年12月19日
(65)【公開番号】特開2015-116948(P2015-116948A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2015年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北口 和章
(72)【発明者】
【氏名】尾林 彰
(72)【発明者】
【氏名】中西 誠
(72)【発明者】
【氏名】中山 剛志
【審査官】 林 政道
(56)【参考文献】
【文献】 特開平4−238725(JP,A)
【文献】 特開2011−104603(JP,A)
【文献】 特開平10−58977(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/075010(WO,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102010012722(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00−25/08
B62D 25/14−29/04
B60J 5/00
B60R 21/02−21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板材を丸めて閉じ合わせた筒形状のパイプ部と、
平坦な取付座を有して前記パイプ部の長手方向の端部に該長手方向へ延び出すように前記金属板材にて一体に設けられた取付部と、
を備え、前記取付座の着座面が車両の取付対象に密着するように配設される車両用のパイプ状補強部材において、
前記取付座は、筒状部を介して前記着座面側へ突き出すように設けられているとともに、
前記取付部の前記筒状部の両側に位置する両側端部には、該筒状部と同じく前記着座面側へ突き出すように一対の側部フランジが設けられており、
前記パイプ部の中心線に対して直角な断面において、前記取付座の両側には前記筒状部および前記側部フランジによって前記着座面と反対側へU字状乃至はJ字状に凹んだ回曲部が形成されている
ことを特徴とする車両用のパイプ状補強部材。
【請求項2】
前記取付座は、前記パイプ部の中心線と平行で且つ該中心線と該パイプ部の閉じ合わせ部分とを結ぶ直線に対して直角になる姿勢で設けられており、
前記パイプ部の中心線まわりにおいて前記閉じ合わせ側が車両の外側向きになる姿勢で配設される
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用のパイプ状補強部材。
【請求項3】
前記取付座には、締結ねじが挿通させられる締結穴が設けられているとともに、該取付座は該締結穴を含んで円板形状を成しており、
前記筒状部は、前記パイプ部側を含む半円以上の部分円筒形状を成している
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用のパイプ状補強部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用のパイプ状補強部材に係り、特に、取付部の座屈を抑制して所定の補強性能が安定して得られるようにする技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(a) 金属板材を丸めて閉じ合わせた筒形状のパイプ部と、(b) 平坦な取付座を有して前記パイプ部の長手方向の端部にその長手方向へ延び出すように前記金属板材にて一体に設けられた取付部と、を備え、(c) 前記取付座の着座面が車両の取付対象に密着するように配設される車両用のパイプ状補強部材が知られている。特許文献1に記載のインパクトビームはその一例で、車両のサイドドア等に配設されて側面衝突時の衝撃荷重に対する補強を行うものであり、取付部(継ぎ手部3)は着座面側へL字状に折り曲げられて取付座がドア等に密着させられ、ボルト等により一体的に固定されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−207424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来のパイプ状補強部材においては、両端の取付部がL字状に折り曲げられているため、例えばパイプ部の長手方向の成分を有する外力(衝撃荷重など)が加えられた場合など、そのL字状の折れ曲がり部が座屈し易く、パイプ部による補強性能が適切に得られない可能性があった。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、取付部の座屈を抑制してパイプ部による補強性能が安定して得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、第1発明は、(a) 金属板材を丸めて閉じ合わせた筒形状のパイプ部と、(b) 平坦な取付座を有して前記パイプ部の長手方向の端部にその長手方向へ延び出すように前記金属板材にて一体に設けられた取付部と、を備え、(c) 前記取付座の着座面が車両の取付対象に密着するように配設される車両用のパイプ状補強部材において、(d) 前記取付座は、筒状部を介して前記着座面側へ突き出すように設けられているとともに、(e) 前記取付部の前記筒状部の両側に位置する両側端部には、その筒状部と同じく前記着座面側へ突き出すように一対の側部フランジが設けられており、(f) 前記パイプ部の中心線に対して直角な断面において、前記取付座の両側には前記筒状部および前記側部フランジによって前記着座面と反対側へU字状乃至はJ字状に凹んだ回曲部が形成されていることを特徴とする。
【0007】
なお、上記U字状乃至はJ字状は、L字のように単に90°折れ曲がっているだけではなく、その先端が更に45°以上折り曲げられ、全体として135°以上の角度で回曲していることを意味する。
【0008】
第2発明は、第1発明の車両用のパイプ状補強部材において、(a) 前記取付座は、前記パイプ部の中心線と平行で且つその中心線とそのパイプ部の閉じ合わせ部分とを結ぶ直線に対して直角になる姿勢で設けられており、(b) 前記パイプ部の中心線まわりにおいて前記閉じ合わせ側が車両の外側向き、言い換えれば衝撃荷重等の外力が加えられる側、になる姿勢で配設されることを特徴とする。
【0009】
第3発明は、第1発明または第2発明の車両用のパイプ状補強部材において、(a) 前記取付座には、締結ねじが挿通させられる締結穴が設けられているとともに、その取付座はその締結穴を含んで円板形状を成しており、(b) 前記筒状部は、前記パイプ部側を含む半円以上の部分円筒形状を成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
このような車両用のパイプ状補強部材においては、取付座が筒状部を介して着座面側へ突き出すように設けられているため、取付対象に対してその着座面が密着するように配設して強固に固定することができる。また、筒状部の両側に位置する両側端部にはそれぞれ側部フランジが設けられており、パイプ部の中心線に対して直角な断面において取付座の両側には、それ等の筒状部および側部フランジによって着座面と反対側へU字状乃至はJ字状に凹んだ回曲部が形成されているため、パイプ部の長手方向の成分を有する外力に対する剛性が高められ、取付部の座屈が抑制されてパイプ部による補強性能が安定して得られるようになる。
【0011】
第2発明では、取付座がパイプ部の中心線と平行で且つその中心線とパイプ部の閉じ合わせ部分とを結ぶ直線に対して直角になる姿勢で設けられており、その閉じ合わせ側が車両の外側向きになる姿勢で配設されるため、車両の外側から加えられる衝撃荷重等の外力に対してパイプ部による補強性能が適切に得られる。
【0012】
第3発明では、取付座が円板形状で、筒状部が半円以上の部分円筒形状を成しているため、その筒状部の両側の側部フランジと相まって取付部の剛性が適切に高められる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明が適用されたインパクトビームの一例を示す図で、パイプ部の接合部側(突き合わせ側)と反対側から見た斜視図である。
図2図1のインパクトビームをパイプ部の接合部側(突き合わせ側)から見た斜視図である。
図3図1におけるIII −III 矢視部分であるパイプ部の拡大断面図である。
図4図1におけるIV−IV矢視部分である取付部の拡大断面図で、車両の取付対象に固定された状態である。
図5図1のインパクトビームが車両のサイドドアの内部に配設された状態の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の車両用のパイプ状補強部材は、例えば車両のサイドドアの内部や側面パネルの内側等に配設されるが、バックドアやエンジンフード、フロアパネルなど、車両の種々の部位の補強部材に適用できる。パイプ部は、断面が略円形になるように丸めた単純な円筒形状が適当であるが、中心線まわりの一部が平板形状とされていても良いし、断面が四角形等の角筒形状であっても良いなど、種々の態様が可能である。丸められた両側部は、突き合わせるようにしても良いし重ね合わせても良く、その閉じ合わせ部分は、必要に応じてアーク溶接等の溶接などで一体的に接合される。
【0015】
平坦な取付座を有する取付部は、例えばパイプ部の長手方向の両端部にパイプ部を挟んで対称的に一対設けられ、その両方に本発明を適用することが望ましいが、非対称であっても良いし、一対の取付部の何れか一方のみに本発明を適用するだけでも良い。平坦な取付座は、例えばパイプ部の中心線と平行に設けられるが、パイプ部から離間する先端側程中心線から離間し、或いは中心線に接近する傾斜姿勢で設けることもできる。一対の側部フランジは、例えば筒状部の両側ではパイプ部の中心線と略平行に設けられ、そのまま徐々に丸められてパイプ部へ滑らかに移行するように構成される。
【0016】
第2発明では、取付座がパイプ部の中心線と閉じ合わせ部分とを結ぶ直線に対して直角になる姿勢で設けられているが、他の発明の実施に際しては、取付対象の構造などを考慮して取付座の姿勢を適宜設定することができる。第2発明の実施に際しては、取付座は、例えばパイプ部の閉じ合わせ側の面を着座面として、その閉じ合わせ側へ突き出すように設けられるが、逆に、パイプ部の閉じ合わせ側と反対側の面を着座面として、その反対側へ突き出すように設けることも可能である。
【0017】
パイプ部の中心線から着座面までの寸法tを、中心線からパイプ部の外周面までの寸法以上とすれば、平坦な取付対象に対してパイプ部が干渉することのないように、取付部を介してパイプ状補強部材を取り付けることができる。取付対象の構造によっては、寸法tがパイプ部の中心線から外周面までの寸法より小さくても、パイプ部が干渉しないように取り付けることができる。
【0018】
第3発明では、取付座に締結穴が設けられ、締結ねじを用いて取付対象に固定されるようになっているが、溶接等の他の固定手段で取付座を取付対象に固定することも可能である。また、取付座が円板形状で、筒状部が半円以上の部分円筒形状を成しているが、これ等の形状は適宜定められる。筒状部を完全な円筒形状とすることも可能で、プレスによる絞り加工などで成形できる。筒状部は、先端側すなわち取付座側程小径となる截頭円錐形状等の先細形状とすることもできる。
【実施例】
【0019】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が適用された車両用のインパクトビーム10の斜視図で、図2はインパクトビーム10の裏面側すなわち接合部18側から見た斜視図である。また、図3は、図1におけるIII −III 矢視部分であるパイプ部12の拡大断面図で、図4は、図1におけるIV−IV矢視部分である取付部14の拡大断面図で、車両の取付対象20に固定された状態である。このインパクトビーム10はパイプ状補強部材に相当し、例えば図5に示すように車両用サイドドア22の内部に配設されて、側面衝突時等に車両の外側から加えられる衝撃荷重で車両用サイドドア22が車室内側へ変形することを抑制するためのものである。車両用サイドドア22は、インナーパネル24およびアウターパネル26を備えており、インパクトビーム10は、窓ガラス28が一点鎖線で示すように下げられた場合でも干渉しないように、アウターパネル26側に車両の前後方向(図5の紙面の表裏方向)に沿って配設される。図4の取付対象20は、例えば補強すべきアウターパネル26そのもの、或いはそのアウターパネル26が取り付けられるドアフレームなどである。
【0020】
インパクトビーム10は、一枚の金属板材に曲げ加工、絞り加工等のプレス加工を行って一体に成形したもので、金属板材を丸めて閉じ合わせた円筒形状のパイプ部12を主体として構成されている。パイプ部12の閉じ合わせ部分では、金属板材の側端部が図3に示すように内側へ曲げられて突き合わされているとともに、アーク溶接による接合部18によって長手方向に連続的にまたは断続的に接合されている。図5の車両用サイドドア22に対しては、その接合部18側すなわちパイプ部12の閉じ合わせ側が車両の外側向きになる姿勢で配設される。
【0021】
上記パイプ部12の長手方向の両端には、それぞれその長手方向に延び出すように一対の取付部14、16がパイプ部12と一体に設けられている。これ等の取付部14、16は、パイプ部12を挟んで対称的に構成されており、それぞれ中央に締結穴30が設けられた円板形状の平坦な取付座32を備えている。取付座32は、パイプ部12の中心線Oと平行で且つ中心線Oと接合部18とを結ぶ直線に対して略直角になる姿勢、すなわち図4において略左右方向になる姿勢で設けられている。また、その接合部18側の面すなわち図4における下側の面が着座面32fとされている。すなわち、その着座面32fが取付対象20に面接触するように密着させられた状態で、締結ねじ34が締結穴30内を挿通させられて取付対象20のナット36に螺合されることにより、インパクトビーム10が取付対象20に強固に一体的に固定される。
【0022】
取付座32はまた、パイプ部12が取付対象20等と干渉することなく取付対象20に固定できるように、パイプ部12側を含む周辺部から半円以上の部分円筒形状の筒状部38を介して着座面32f側、すなわち接合部18側へ突き出すように設けられている。筒状部38は略半円筒形状で、プレスによる絞り加工等によって成形されており、一定の径寸法でも良いが、先端側すなわち取付座32側程小径となる截頭円錐形状とすることもできる。また、パイプ部12の中心線Oから着座面32fまでの寸法tは、中心線Oからパイプ部12の外周面までの寸法、すなわちパイプ部12の半径寸法よりも大きく、着座面32fがパイプ部12の外周面よりも外側、この実施例では接合部18よりも外側へ突き出している。
【0023】
一方、取付部14、16の上記筒状部38の両側に位置する両側端部には、筒状部38と同じく着座面32f側へ突き出すように一対の側部フランジ40、42が設けられている。これ等の側部フランジ40、42は、着座面32f側すなわち図4における下方側へ略直角に折り曲げられているとともに、その突出寸法は筒状部38よりも低く、取付対象20との間に空間が形成される。また、筒状部38の両側に位置する部分では、パイプ部12の中心線Oと略平行に直線状に設けられているが、パイプ部12側へ向かうに従って徐々に丸められ、そのままパイプ部12へ滑らかに移行するように構成されている。そして、このように筒状部38の両側に側部フランジ40、42が設けられることにより、パイプ部12の中心線Oに対して直角な断面である図4において、前記取付座32の両側には、筒状部38および側部フランジ40、42によって着座面32fと反対側へU字状に凹んだ回曲部44、46が形成される。
【0024】
このような本実施例のインパクトビーム10においては、取付座32が筒状部38を介して着座面32f側へ突き出すように設けられているため、取付対象20に対してその着座面32fが密着するように配設して強固に固定することができる。また、筒状部38の両側に位置する両側端部にはそれぞれ側部フランジ40、42が設けられており、パイプ部12の中心線Oに対して直角な断面において取付座32の両側には、それ等の筒状部38および側部フランジ40、42によって着座面32fと反対側へU字状に凹んだ回曲部44、46が形成されているため、パイプ部12の長手方向の成分を有する外力に対する剛性が高められ、取付部14、16の座屈が抑制されてパイプ部12による補強性能が安定して得られるようになる。
【0025】
また、取付座32がパイプ部12の中心線Oと平行で且つ中心線Oと接合部18とを結ぶ直線に対して略直角になる姿勢で設けられており、その接合部18側が車両の外側向きになる姿勢で車両用サイドドア22等に配設されるため、車両の外側から加えられる衝撃荷重に対してパイプ部12による補強性能が適切に得られる。
【0026】
また、取付座32が円板形状で、筒状部38が半円以上の部分円筒形状を成しているため、その筒状部38の両側の側部フランジ40、42と相まって取付部14、16の剛性が適切に高められる。
【0027】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0028】
10:インパクトビーム(パイプ状補強部材) 12:パイプ部 14、16:取付部 18:接合部(閉じ合わせ部分) 20:取付対象 30:締結穴 32:取付座 32f:着座面 34:締結ねじ 38:筒状部 40、42:側部フランジ 44、46:回曲部 O:中心線
図1
図2
図3
図4
図5