【文献】
RICE-EVANS,ANTIOXIDANT PROPERTIES OF PHENOLIC COMPOUNDS,TRENDS IN PLANT SCIENCE,英国,ELSEVIER SCIENCE,1997年 4月 1日,V2 N4,P152-159
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
今日の汚染された世界及びアウトドアライフスタイルにおいては、ほとんどの消費者が、その皮膚、髪、及び頭皮を太陽から発せられる有害な紫外線から保護することを望んでいる。
【0003】
世界各地の消費者は、皮膚に様々な特徴を有する。これは、人々の遺伝的構造及び地理的条件に起因すると考えられる。しかしながら、世界の様々な地域のほとんど全ての消費者が、日光に曝されつつもその皮膚、髪、及び頭皮を有害なUV光線から保護することを望んでいる。
【0004】
消費者が日光、特にUV光線から皮膚の保護を得られる方法がいくつか存在する。サンスクリーン/サンブロックが、この目的のために一般的に用いられる。サンスクリーンは、一般的には、UV光線を吸収して、異なる形態、例えば、可視領域のスペクトルまたは熱の形態でエネルギーを放出することにより、皮膚を炎症及び日焼けから保護する有機分子である。サンスクリーンは、一般的に小有機分子である。
【0005】
同様に、サンブロックは、起こりうる炎症及び日焼けからの皮膚の保護を助ける。これらのサンブロックは、一般的に、入射するUV可視光線を反射することによって皮膚を保護する無機粒子(ZnO、TiO
2等)を含む。
【0006】
これらの分子を使用するクリーム、ローション、ゲル、またはスプレーの形態の製剤が、当該分野では広く知られている。
【0007】
人々は、皮膚の有効な光保護を求めて、別の天然物質(緑茶抽出物または別の薬草抽出物等)を単独でまたは化学サンスクリーンと共に使用することも試みてきた。
【0008】
これら化学サンスクリーンの一つに、Parsol 1789(登録商標)(またはAvobenzone(登録商標))として市販の4-t-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタンとして知られるジベンゾイルメタンの誘導体があり、これはパーソナルケア組成物中に使用される周知のUVAサンスクリーンである。このサンスクリーンに付随する問題は、その比較的に不安定な性質である。製剤中のParsol 1789(登録商標)の安定性を改善するために、Octocrylene(登録商標)等の某かの外部分子を添加する試みがなされてきた。Parsol 1789(登録商標)の安定性及び光保護有効性を改善する別の選択肢を見出すための研究が、世界中で行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかるに、ジベンゾイルメタン誘導体もしくはParsol 1789(登録商標)の安定性を改善した、パーソナルケア組成物の開発が求められている。
【0012】
US5306486 (McCook et al., 1994)には、緑茶と紫外線によるヒトの皮膚の損傷を少なくとも部分的に防ぐために有効なサンスクリーン化合物とを含む化粧品組成物が記載されている。
【0013】
US2006/0275241 (Padlo et al., 2006)には、水不溶性基質と前記基質と接触した化粧品組成物とを含む化粧用ウェットティッシュ製品が記載されている。前記組成物は、C
3-C
20 酸のビニルエステルから一部構成されたコポリマーと化粧品として許容される担体中に分配された茶抽出物とを含む。コポリマーと茶抽出物との前記組合せにより、製品の色変化が確実に最低限に抑えられる。
【0014】
EP1640041 (Henkel, 2006)には、水中油型エマルション形態の、主に抗老化効果をもたらす化粧用皮膚トリートメント剤が開示されており、このエマルションはタウリンと炭素原子20-40のアルキル鎖長を有する、少なくとも一つの直鎖状第一級脂肪もしくはワックスアルコールとを含む。この特許公報に開示されている実施例では、ジベンゾイルメタンサンスクリーンとコンブチャ(Kombucha)とがスキンケア組成物中に存在している。コンブチャは、加糖紅茶を紅茶キノコと共に発酵させることにより製造される発酵茶飲料である(Food Chemistry, 102 (2007) 392-398)。コンブチャは、一般的に、Kombuchka(登録商標)の商標名でSedermaより入手可能である。コンブチャまたはKombuchka(登録商標)は、通常、スキンケア組成物に約1乃至3w/w%添加される。紅茶抽出物ベースの製品であることから、コンブチャは、典型的には、約1%から最大で2.8%のテアフラビンを含む。しかるに、コンブチャを含むこうしたスキンケア組成物は、一般的に0.01から最大で0.09w/w%のテアフラビンを含む。出願人は、こうした少量のテアフラビンを含むことによっては、本願発明の効果が得られないことを見出した。
【0015】
驚くべきことに、出願人は、テアフラビンまたはテアフラビンの濃度が高めの紅茶抽出物が、ジベンゾイルメタン誘導体またはParsol 1789(登録商標)の光安定化剤として作用しうることを見出した。紅茶の水性抽出物は、典型的には最小で0.1から最大で約2.8w/w%のテアフラビン、稀には最大で3w/w%のテアフラビンを含む。ほとんどの紅茶抽出物は、1乃至2w/w%のテアフラビンを含む (Vermeer et al., J. Agric. Food Chem, 56, 12031 -36 (2008))。
【0016】
本発明の目的は、比較的に安定化されたParsol 1789を含むパーソナルケア組成物を提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は、比較的に長い光保護有効性を有するパーソナルケア組成物を提供することである。
【0018】
本発明のさらに別の目的は、天然物質または植物から誘導される物質の使用によってParsol 1789を安定化することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
したがって、本発明は、
i)ジベンゾイルメタン誘導体;
ii)0.1乃至30質量%のテアフラビン;及び
iii)化粧品として許容されるベース;
を含むパーソナルケア組成物を提供する。
【0020】
別の態様では、本発明は、人の皮膚の光保護のための、本発明による組成物を提供する。
【0021】
これらと別の態様、特徴、及び利点が、以下の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲を読むことにより明らかになるであろう。誤解を避けるために、本発明の一つの態様のあらゆる特徴を、本発明のあらゆる別の態様において利用してよい。「含む」なる語は、「含有する」を意味することを企図するが、必ずしも「からなる」または「から構成される」を意味することを企図しない。以下の詳細な説明に記載された実施例は、本発明を明示することを企図するが、本発明をこれらの実施例自体に限定することを企図するものではない。同様に、全てのパーセンテージは、特記のない限り最終組成物の質量に対する質量パーセントである。全ての量は、特記のない限り最終組成物の質量に対する量である。実施例及び比較例でない限り、あるいは明確に特記のない限り、本発明の詳細な説明及び特許請求の範囲に記載される、物質の量または反応の条件、物質の物理特性、及び/または使用を示す全ての数は、「約」なる語により修正されると理解すべきこととする。「xからyまで」の方式で表された数値範囲は、x及びyを含むと理解される。特定の機能について好ましい範囲が「xからyまで」の方式で記載されている場合には、様々な端点を組み合わせたあらゆる範囲も想定されると理解される。本明細書中の本発明の開示は、請求項に多項従属または重複がなくてもよいという事実とは無関係に、互いに多項従属していると見られる請求項中の全ての実施態様を網羅すると見なされる。
【0022】
本明細書中で使用される「パーソナルケア組成物」は、ほ乳類、特にヒトの皮膚及び/または髪への局所適用のための組成物を含むことを意味する。こうした組成物は、一般的に、洗い流さない組成物または洗い流す組成物に分類され、本発明では主たる目的は日光保護であるが、外観、清浄化、悪臭防止、または一般的な美観の改善のために人体に適用されるあらゆる製品を含む。本発明の組成物は、液体、ローション、クリーム、フォーム、スクラブ、ゲル、固形石鹸、または化粧水の形態であってよく、あるいは用具で、またはフェイスマスク、パッドもしくはパッチで適用してよい。パーソナルケア組成物の非限定的例には、洗い流さないスキンローション及びクリーム、シャンプー、コンディショナー、シャワージェル、化粧石鹸、制汗剤、デオドラント、口紅、ファンデーション、マスカラ、サンレス・タナー、及びサンスクリーンローションが含まれる。
【0023】
本明細書中で使用される「皮膚」は、顔及び身体(例えば、首、胸、背中、腕、腋の下、手、脚、尻、及び頭皮)の皮膚を含む。本発明の組成物はまた、皮膚以外の人体のあらゆるケラチン物質、例えば、髪への適用にも関し、ここで、製品は、光保護を提供する特定の目的をもって処方されていてよい。
【0024】
太陽光線の紫外線(UV)部分は、波長に基づく三つの範囲、すなわち、UVC(200-280nm)、UVB(280-320nm)、及びUVA(320-400nm)に分けられる。光保護製剤の中では、UVCのほとんどがオゾン層により吸収されることから、人は一般的にUVAとUVBとを使用する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明によれば、パーソナルケア組成物は、ジベンゾイルメタン誘導体、テアフラビン、及び化粧品として許容されるベースを含む。4-t-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタンが、本発明の目的のためのジベンゾイルメタン誘導体の一つとして選択される。
【0026】
4-t-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタンは、周知のジベンゾイルメタン誘導体の一つであり、Avobenzone(登録商標)またはParsol 1789(登録商標)として一般に既知のサンスクリーン剤である。基体のUV光線からの保護を企図した消費者ケア製品のほとんどがParsol 1789(登録商標)を使用している。Avobenzone(登録商標)もまた、Parsol 1789(登録商標)、Eusolex 9020(登録商標)、Escalol 517(登録商標)、及び他にも多数の商標名で入手可能である。これは、サンスクリーン製品中に使用される油溶性成分であり、UVA光線の全領域に対する保護を提供する。Avobenzoneは、基底状態でエノール型とケト型との混合物として存在し、キレートされたエノールが有利である。これは、多くの有機サンスクリーン剤と比較して、より広い波長範囲に亘って紫外光を吸収することができる。このことが、これが「広域」サンスクリーンと呼称される理由である。Avobenzoneは、357nmの吸収極大を有する。
【0027】
本発明によれば、パーソナルケア組成物は、ジベンゾイルメタン誘導体を、組成物の質量に対して好ましくは0.1乃至10質量%、さらに好ましくは0.1乃至4質量%含む。
【0028】
本発明のパーソナルケア組成物は、任意に、パラ-メトキシ桂皮酸及びその誘導体、例えばParsol MCX(登録商標)として既知のエチルヘキシルメトキシシンナメートなどの別のUVBサンスクリーン類を含んでよい。本発明によれば、パーソナルケア組成物は、組成物の0.1乃至10質量%、好ましくは0.1乃至6質量%のエチルヘキシルメトキシシンナメートを任意に含む。p-メトキシ桂皮酸誘導体の導入は、既知のUV-B保護を提供することに加え、このパーソナルケア組成物がp-メトキシ桂皮酸誘導体の存在下でParsol 1789(登録商標)のより高い安定性を確実にすることから特に有用である。
【0029】
本発明は、テアフラビンによるジアベンゾイルメタン誘導体もしくはAvobenzoneの安定化に関する。本明細書を通して、「テアフラビン」なる語は、単数形で使用された場合はテアフラビン(TF1)またはその誘導体(好ましくはTF2乃至TF4)を単独またはあらゆる組み合わせとして示すことを企図する。通常は集合的にテアフラビン類として知られるテアフラビン(TF1)及びその誘導体は、抗酸化ポリフェノール類であり、茶葉中に存在するカテキンから、ひいては紅茶を生成する茶葉の酵素的酸化の間に生成する。テアフラビンは、テアルビジン類の一種であり、したがって赤みがかった色である。テアフラビンは、緑茶中には知覚可能な量で見いだされない。紅茶の製造においては、モノマー性フラバン-3-オール類がポリフェノールオキシダーゼ依存性酸化重合を経て、通常「発酵」として既知である酸化プロセスにおいて、ビスフラバノール類、テアフラビン、テアルビジン類、及び別のオリゴマーの生成をもたらす。
【0030】
テアフラビン(典型的には紅茶の抽出可能な全乾燥物質の少なくとも約1-2w/w%で存在する)は、テアフラビン、テアフラビン-3-ガレート、テアフラビン-3’-ガレート、及びテアフラビン-3,3’-ジガレートを含み、ジヒドロキシ-またはトリヒドロキシ-置換系を伴うベンゾトロポロン環(
図1に示される)を有し、これにより紅茶の特徴的な色及び味がもたらされる。
【0032】
以下の表は、R
1及びR
2に関して様々なタイプのテアフラビンを示す。
【表1】
【0033】
好ましい一実施態様では、この組成物中に使用されるテアフラビンは、紅茶葉から抽出される。茶樹から摘まれた茶葉はカテキン類として既知のポリフェノール類を含む。これらのカテキン類は、無色の化合物である。テアフラビン類は、紅茶を製造するための茶葉の酸化的発酵の間に生成される。本発明の目的に好ましい茶種は、カメリアシネンシス種の茶から選択される。高濃度のテアフラビン類を含むように分画された紅茶の水性抽出物が、ジベンゾイルメタン誘導体及びParsol 1789の安定性を向上させることが判明している。
【0034】
本発明の目的のための紅茶抽出物は、好ましくは0.1乃至100w/w%、さらに好ましくは0.1乃至80w/w%、さらにいっそう好ましくは2乃至15w/w%のテアフラビンを含む。紅茶中のこうしたテアフラビンの高濃度は、本出願人により先行する公開特許文献に開示されている様々な処理、例えばタンナーゼ処理によって得られる。本発明による組成物は、カメリアシネンシス種の紅茶の水性抽出物を、好ましくは0.1乃至40w/w%、さらに好ましくは0.1乃至30w/w%、よりいっそう好ましくは0.1乃至10w/w%含む。
【0035】
通常の製造過程における紅茶は、典型的には、約0.2乃至2w/w%のテアフラビン類を含む。これは、大抵、紅茶の1乃至2w/w%の範囲内である。テアフラビンが豊富な画分が、好ましくは本発明の組成物に用いられ、好ましくは溶媒分別によって調製される。あらゆる適当な溶媒、例えばアルコール類、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素類、ケトン類、エステル類、エーテル類、グリコール類、グリコールエーテル類、アルキルハライド類、または芳香族ハライド類を、抽出処理に使用することができる。好ましい溶媒は、例えば、エタノール、酢酸エチル、クロロホルム、エチルエーテル、n-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトン、メチル-イソ-ブチルケトン、トルエン、メチルエチルケトン、イソプロピルミリステート、フェノキシエタノール、脂肪油類、例えばコーン油、大豆油、オリーブ油、菜種油、綿実油、イワシ油、ニシン油、及び鯨油である。
【0036】
本発明の組成物は、この組成物の質量の0.1乃至30%、好ましくは0.3乃至10%、さらにいっそう好ましくは0.45乃至5%のテアフラビンを含む。
【0037】
本発明者らは、フェノール化合物が固有の抗酸化特性を備えていることを認識している。しかしながら、本発明者らは、テアフラビン類に似た抗酸化活性を有する既知の抗酸化剤であるフェノール基を有する数種の化合物、例えばイソブテン(isobutein)、メチルガレート、様々な緑茶カテキン類を、サンスクリーン類を安定化するための候補として試したが、これらはテアフラビンにより提供されることが判明した安定化特性を提供しなかった。理論に縛られることを望まず、本発明者らは、本発明の組成物中のテアフラビンが、単項励起消光機構によるかまたはジベンゾイルメタン誘導体の励起種と複合体を形成することによって作用しうる、高い蛍光消光能を有するという固有の更なる特性によって本発明の利点を提供すると考える。上記機構は、本発明の所望の利点をもたらす上で、テアフラビンの周知の抗酸化特性をはるかに上回ると考えられる。
【0038】
本発明の好ましい組成物は、ジベンゾイルメタン誘導体のテアフラビンに対する質量比が、10:1乃至1:5となるものである。
【0039】
パーソナルケア組成物は、化粧品として許容されるベースを含む。化粧品として許容されるベースは、クリーム、ローション、ゲル、またはエマルションであってよい。エマルションが好ましく、油中水型エマルションがより好ましい。特に適切な化粧品として許容されるベースは、連続相としてシリコーン油類を含む油中水型エマルションを含むものである。油中水型エマルションは、好ましくは、架橋シリコーンエラストマーブレンドを含む。
【0040】
本発明により、油中水型エマルションにシリコーンエラストマーブレンドを導入することによって、かくして調製された組成物の安定性が改善されることが示された。シリコーン流体と異なり、シリコーンエラストマー類は架橋している。直鎖状ポリマー類、例えばジメチコーン間の架橋の形成により、直鎖状ポリマーはシリコーンエラストマーに変換される。シリコーン流体ポリマーとは対照的に、エラストマーの物理特性は、典型的には分子量でなく架橋の数に依存する。シリコーンエラストマーが膨潤する性能により、これらは油相のための理想的な増粘剤となる。エラストマーは、皮膚または髪に適用された場合に非常に滑らかで柔らかな感触を有する。これらは、化粧品組成物中の香料、ビタミン、及び別の添加剤の送達剤として使用することもできる。
【0041】
市販品を入手可能であり、本発明の組成物への導入に適切であり、安定性を改善することが判明している、適切なシリコーンエラストマーブレンドまたはゲルは、Dow Corning(登録商標)EL-8051 IN Silicone Organic Elastomer Blend(INCI名:イソデシルネオペンタノエート(及び)ジメチコーン/ビスイソブチルPPG-20クロスポリマー);EL-8050(INCI名:イソドデカン(及び)ジメチコーン/ビス-イソブチルPPG-20クロスポリマー)、DC 9040、DC 9041、DC 9045(ジメチコーンクロスポリマー);DC 9506、DC 9509(ジメチコーンビニルジメチコーンクロスポリマー);Shin-Etsu KSG-15、KSG-16、及びKSG-17(ジメチコーンビニルジメチコーンクロスポリマー)である。この組成物が、シリコーンベースの乳化剤を含むことがさらに好ましい。
【0042】
本発明のパーソナルケア組成物は、様々な化粧品として許容される乳化系もしくは非乳化系及び媒体を使用して調製してよい。高度に適切なベースはエマルションである。バニシングクリームもまた化粧品として許容されるベースとして使用してよい。バニシングクリームベースは、一般的に5乃至25%の脂肪酸及び0.1乃至10%の石鹸を含む。
【0043】
本発明の組成物は、皮膚明色化剤を更に含んでよい。皮膚明色化剤は、好ましくは、ビタミンB3化合物またはその誘導体、例えば、ナイアシン、ニコチン酸、ナイアシンアミド、または別の周知の皮膚明色化剤、例えば、アロエ抽出物、乳酸アンモニウム、アルブチン、アゼライン酸、コウジ酸、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、クエン酸エステル類、3-ジフェニルプロパン誘導体、2,5-ジヒドロキシ安息香酸及びその誘導体、エラグ酸、フェンネル抽出物、グルコピラノシル-1-アスコルベート、グルコン酸、グリコール酸、緑茶抽出物、ハイドロキノン、4-ヒドロキシアニソール及びその誘導体、4-ヒドロキシ安息香酸誘導体、ヒドロキシカプリル酸、レモン抽出物、リノール酸、リン酸アスコルビルマグネシウム、マルベリールート抽出物、2,4-レゾルシノール誘導体、3,5-レゾルシノール誘導体、サリチル酸、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンA等のビタミン類、ジカルボン酸、レゾルシノール誘導体、乳酸等のヒドロキシカルボン酸及びその塩、例えば乳酸ナトリウム、並びにこれらの混合物から選択される。ビタミンB3化合物またはその誘導体、例えば、ナイアシン、ニコチン酸、ナイアシンアミドは本発明によるさらに好ましい皮膚明色化剤であり、最も好ましいのはナイアシンアミドである。ナイアシンアミドは、使用の際は、組成物の質量の0.1乃至10%の範囲の量で存在するのが好ましく、より好ましくは0.2乃至5%の量で存在する。
【0044】
有用な無機サンブロック剤もまた、本発明に好ましく使用される。これらには、例えば、酸化亜鉛、酸化鉄、シリカ、例えばヒュームド・シリカ、及び二酸化チタンが含まれる。
【0045】
二つの形態、すなわち、二酸化チタンの水性分散物及び二酸化チタンの油性分散物のいずれかでの超微細な二酸化チタンが本発明には特に適切である。水分散性二酸化チタンは、超微細な二酸化チタンであり、その粒子は未被覆であるか、または粒子に親水性表面特性を付与するために物質で被覆されている。こうした物質の例には、酸化アルミニウム及びケイ酸アルミニウムが含まれる。
【0046】
油分散性二酸化チタンは、超微細な二酸化チタンであり、その粒子は疎水性表面特性を示し、この目的のためには、金属石鹸、例えばステアリン酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、またはステアリン酸亜鉛、あるいは有機シリコーン化合物で被覆されてよい。
【0047】
「超微細な二酸化チタン」は、100nm未満、好ましくは70nm以下、さらに好ましくは10乃至40nm、最も好ましくは15乃至25nmの平均粒径を有する二酸化チタンの粒子を意味する。
【0048】
水分散性超微細二酸化チタンと油分散性超微細二酸化チタンとの混合物の皮膚への局所適用により、UV-A光線とUV-B光線との両方の有害な作用に対する、皮膚保護の改善が達成できる。
【0049】
超微細二酸化チタンが、本発明による好ましい無機サンブロック剤である。本発明による組成物に好ましく導入されるサンブロックの総量は、組成物の0.1乃至5質量%である。
【0050】
本発明による組成物は、別の希釈剤を更に含んでよい。希釈剤は、組成物中に存在する別の物質の分散剤または担体として作用して、この組成物が皮膚に適用された際の前記物質の分配を促進する。
【0051】
水以外の希釈剤は、液体または固体の皮膚軟化剤、溶媒、保湿剤、増粘剤、及び粉末を含んでよい。これらのタイプの媒体は、単独でまたは一つ以上の媒体の混合物として使用でき、そのそれぞれの例は以下の通りである。
【0052】
皮膚軟化剤、例えば、ステアリルアルコール、グリセリルモノリシノレエート、ミンクオイル、セチルアルコール、イソプロピルイソステアレート、ステアリン酸、イソブチルパルミテート、イソセチルステアレート、オレイルアルコール、イソプロピルラウレート、ヘキシルラウレート、デシルオレエート、オクタデカン-2-オール、イソセチルアルコール、エイコサニルアルコール、ベヘニルアルコール、セチルパルミテート、シリコーンオイル類、例えばジメチルポリシロキサン、ジ-n-ブチルセバケート、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、イソプロピルステアレート、ブチルステアレート、ポリエチレングリコール、トリエチレングリコール、ラノリン、ココアバター、コーン油、綿実油、オリーブ油、パーム核油、菜種油、紅花油、イブニングプリムローズオイル、大豆油、サンフラワーシードオイル、アボカドオイル、セサミシードオイル、ココナッツオイル、落花生油、蓖麻子油、アセチル化ラノリンアルコール類、ワセリン、鉱物油、ブチルミリステート、イソステアリン酸、パルミチン酸、イソプロピルリノレエート、ラウリルラクテート、ミリスチルラクテート、デシルオレエート、ミリスチルミリステート;
【0053】
溶媒、例えば、エチルアルコール、イソプロパノール、アセトン、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル;
【0054】
粉末、例えば、チョーク、タルク、フラー土、カオリン、デンプン、ゴム類、コロイダルシリカナトリウムポリアクリレート、テトラアルキル及び/またはトリアルキルアリールアンモニウムスメクタイト類、化学変性ケイ酸マグネシウムナトリウム、有機変性モンモリロナイト粘土、水和ケイ酸アルミニウム、ヒュームド・シリカ、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチレングリコールモノステアレート。
【0055】
化粧品として許容されるベースは、通常は組成物の10乃至99.9質量%、好ましくは50乃至99質量%であり、パーソナルケア助剤が存在しない場合は、組成物の残余を形成しうる。
【0056】
本発明の組成物は、化粧品として許容される担体として通常のデオドラントベースを含んでよい。デオドラントとは、パーソナルデオドラントの手助け、例えば、制汗活性剤を含んでも含まなくてもよい、腋の下領域における適用のために使用される、スティック、ロールオン、または噴射媒質中の製品を意味する。
【0057】
デオドラント組成物は、一般的に、硬質固体、軟質固体、ゲル、クリーム、及び液体の形態であってよく、その組成物の物理特性に適当なアプリケーターを使用して分配される。ロールオンにより送達されるデオドラント組成物は、一般的に液体担体を含む。こうした液体担体は、疎水性であっても、親水性と疎水性との両方の液体の混合物を含んでも良い。これらはエマルションまたはマイクロエマルションの形態であってよい。液体担体または担体の混合物は、しばしば組成物の30乃至95質量%を構成し、多くの場合に40乃至80%を構成しうる。疎水性液体担体は、一般的に、25℃以下の融点と少なくとも100℃の沸点を有するシロキサン類、炭化水素類、分枝状脂肪族アルコール類、エステル類、及びエーテル類の化学種から選択される1つ以上の物質を含んでよい。本明細書中の組成物に使用可能な水性担体液体は、一般的に、水及び/または一価もしくは多価アルコールまたは水混和性相同物を含む。一価アルコール類はしばしば短鎖であり、このことはこれらが6つまでの炭素を含むことを意味するが、実際には、エタノールであることが最も一般的であり、イソプロパノールである場合もある。多価アルコール類は、一般的にエチレンもしくはプロピレングリコールを含み、あるいはジエチレングリコール等の相同物が使用可能である。これ以外は、デオドラント組成物に使用される適切な別の媒体及び成分を添加してよい。
【0058】
本発明の組成物は、広範な別の任意の成分を含んでよい。参照のために本明細書中にその全体を援用することとするCTFA Parsonal Care Ingredient Handbook, Second Edition, 1992には、スキンケア産業において通常使用されており、本発明の組成物における使用に適切な、広範な非限定的パーソナルケア及び医薬成分が記載されている。例には、抗酸化剤、結合剤、生物学的添加剤、緩衝剤、着色剤、増粘剤、ポリマー、収斂剤、香料、保湿剤、乳白剤、コンディショナー、剥離剤、pH調整剤、保存料、天然抽出物、精油、皮膚感触改善剤(skin sensates)、皮膚鎮静剤、及び皮膚治癒剤が含まれる。
【0059】
この組成物は、あらゆる既知の形態で、より好ましくは、クリームまたはローションの形態で処方される。
ここで、本発明を、以下の非限定的実施例に詳説する。
【実施例】
【0060】
(実施例1:テアフラビンまたはテアフラビンを含む茶抽出物で安定化された、Parsol 1789)
TF1が、1w/w%の紅茶の水性抽出物を、水中に1w/w%のタンナーゼで40℃にて約3乃至4時間に亘って処理することによって得られた。その後、得られた混合物をスチレンジビニルベンゼン(Diaion HP-20)及び架橋ヒドロキシプロピル化デキストラン(Sephadex LH-20)液体クロマトグラフィーカラムに通し、TF1を分離した。
【0061】
TF3が、茶葉を、水中のエピガロカテキンガレート及びエピカテキンで、エアスパージ下で処理し、その後この混合物の液相を、水/エタノール傾斜混合物で溶離するスチレンジビニルベンゼン(Amberlite XAD1600)カラムに通すことによって得られ、ここで、95v/v%のエタノール画分を、エタノールで溶離する架橋ヒドロキシプロピル化デキストラン(Sephadex LH-20)カラムに通すことにより更に精製して、TF3を95%を超える純度で生成させた。
【0062】
TF4が、エピカテキンをエピカテキンガレートで置き換えたこと以外はTF3と同様の方法で得られ、TF4でのデキストランカラムからの溶離液の後半の画分の純度は、95%超に増大した。
【0063】
この方法は、HPTLCプレート(二重測定)に、懸案のサンスクリーン分子を、潜在的な消光分子もしくは製剤と共にスポッティングすることに基づいていた。プレートをその後UVR(強度5.5mW/cm
2)に120分間に亘って暴露する。この後、クロマトグラフィー分離を適切な溶媒系を使用して実施した。デンシトメトリー分析が、分解したサンスクリーンの量を決定するために行われる。
【0064】
ストック溶液を、以下の表に記載の割合に従ってメタノール中に調製した。14μLのストック溶液を、100μL マイクロシリンジ(Hamilton, Switzerland)を取り付けたCAMAG LINOMAT 5アプリケーターを用いて10×10cm F254 HPTLCプレートに乗せた(3mm幅、16mm間隔)。上行性クロマトグラフィーを、TLCチャンバーにて85mmの距離で、移動相として9:1(v/v)のn-ヘキサン―酢酸エチル(〜10mL)を使用して行った。プレートを室温で乾燥させて、紫外吸収デンシトメトリースキャンにかけた。サンスクリーンの存在による、濃度依存性の蛍光帯が、重水素源の存在下でCamag TLC Scanner 3を使用したアナログスキャンで310乃至357nmに検出された。8×0.4mmのスリット幅及び20mms
-1の走査速度を、各デンシトメトリースキャンの間維持した。各レーンに存在する4-t-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン濃度を、Win CATS Planarクロマトグラフィーマネージャーソフトウェアを使用し、日光暴露の前後にデンシトグラムピーク領域から決定した。結果を以下の表に示す。
【0065】
【表2】
上記表中、TF1、TF3、及びTF4は、発明の詳細な説明中に既に定義した通りである。
【0066】
900kgのリプトンイエローラベル紅茶を、90-95℃にて水で向流抽出した後、遠心分離した。液相を、セラミック膜、限外濾過、及び逆浸透濃縮を使用し、次いで超高温殺菌及び噴霧乾燥を行い、HPLCで測定して1w/w%のテアフラビンを含む180kgの紅茶水性抽出物(茶抽出物1)を得た。
【0067】
上記実施例では、紅茶酢酸エチル抽出物を、以下の方法で調製した。
紅茶水性抽出物(茶抽出物-1)(50g)を、500mLの温水に70℃にて溶解させた。得られる水溶液を、クロロホルムで溶媒抽出した(200mL、3回)。全てのクロロホルム画分を併せて減圧下で乾燥させ(600-0.1mb、40℃)、カフェインを豊富に含む緑色を帯びた白色の残渣(3.0g)を得た。水性相を、酢酸エチルでさらに溶媒抽出した(200mL、3回)。酢酸エチル画分を併せ、減圧下で乾燥させ(100-0.1mb、40℃)、テアフラビンを豊富に含む(6%)橙赤色の残渣(4.0g)を得た(テアフラビンを豊富に含む画分1、9%のTFを含む)。
【0068】
表1のデータは、本発明による実施例(実施例1d、1e、1f、1g、及び1h)により、本発明外の実施例(実施例1a、1b、及び1c)と比較して非常に優れたサンスクリーン安定性が得られることを示す。
【0069】
(実施例2:茶抽出物を含む組成物中でのParsol 1789安定化)
安定性を確認するために、実施例1に記載のものと同じ操作に従った。唯一の相違は、ストック溶液に代えて、ここでは製剤が直接行われたことである。以下の表は、パーソナルケア組成物中のParsol 1789の安定性(%)を表わす(表3に表示)。結果は、表示時間経過後に基体上に残留するParsol 1789のパーセンテージとして報告されている。この表に挙げた実施例1の紅茶酢酸エチル抽出物は、9%までのテアフラビン含量を有する。
【0070】
【表3】
【0071】
表2のデータは、テアフラビンを含む紅茶抽出物を含む本発明によるパーソナルケア組成物が非常に改善されたサンスクリーン安定性を有することを示す。
【0072】
(実施例3:茶抽出物を含む光保護パーソナルケアバニシングクリームベース組成物)
以下の表は、茶抽出物(9%のテアフラビン)を使用して調製される光保護パーソナルケア組成物を示す。
【0073】
【表4】
【0074】
(実施例4:茶抽出物を含む光保護ヘアケア組成物)
Parsol 1789(登録商標)をテアフラビンと共にヘアケア製剤にさらに添加した。このヘアケア製剤は、ヘアスタイリングゲルの形態で調製された。Aristoflex AVC(カチオン性コポリマー)をホモジェナイザーを使用して水に溶解させた。Parsol 1789(登録商標)及びテアフラビンを別々にプロピレンカーボネートに溶解させた。その後、上記二つの混合物を混合し、高速ホモジェナイザーを用いて均質化した。この組成物を表4に示す。
【0075】
【表5】
【0076】
(実施例5乃至8:架橋シリコーンエラストマーベースを含む本発明の組成物の利点)
表5に示されるパーソナルケア組成物を調製した。
【0077】
【表6】
【0078】
安定性を確認するために、実施例1に記載のものと同様の操作に従った。実施例5乃至8の組成物の安定性に関するデータを、表6にまとめる。
【0079】
【表7】
【0080】
上記表6のデータは、本発明による組成物(実施例6及び8)が、テアフラビンを含まないコントロール試料(実施例5及び7)と比較して、シリコーン乳化剤の有無によらずシリコーンエラストマーを含む化粧品として許容されるベース中にテアフラビンが安定化剤として添加された場合にはジベンゾイルメタンサンスクリーンの安定性が非常に改善されることを示す。
【0081】
実施例2c(水中油型エマルション)及び実施例6(油中水型エマルション)の試料を、25℃の温度で貯蔵安定性を調査するために貯蔵した。実施例2cの試料は貯蔵一週間から分解し始めた一方で、実施例6の試料は1カ月間貯蔵した後でさえも全く分解を示さなかった。
【0082】
ここまでは好ましい実施態様の観点から説明される一方で、こうした開示は限定的と解釈されるべきではない。当業者が以上の開示を読んだ後には、当然ながら様々な変性及び変更が想起されるであろう。しかるに、添付の特許請求の範囲がこうした全ての変性及び変更を本発明の真の精神及び範疇に含まれるものとして網羅すると解されるべきことが意図される。