(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0014】
(実施形態)
図1は、本実施形態に係る分散型電源出力予測システムを説明するための模式図である。
図2は、本実施形態に係る配電自動化制御装置を実現するための構成を示す模式図である。
図3は、本実施形態に係る分散型電源出力推定部を説明するための模式図である。
図1に示すように、本実施形態に係る分散型電源出力予測システム200は、開閉器Nを制御する配電自動化制御装置100を備える。分散型電源出力推定部10と、配電制御部20と、を備える。分散型電源出力予測システム200は、配電系統内で事故が発生したときに、事故が発生した配電線(第1配電線)とは異なる配電線(第2配電線)からの電流融通を適切に制御するためのシステムである。以下の説明において、事故が発生する配電線を第1配電線と記載し、第1配電線に電流を融通する配電線を第2配電線と記載して説明する。
【0015】
図2に示すように、配電自動化制御装置100は、入力インターフェース100aと、出力インターフェース100bと、CPU(Central Processing Unit)100cと、ROM(Read Only Memory)100dと、RAM(Random Access Memory)100eと、内部記憶装置100fと、を備える。
図1は、配電自動化制御装置100を機能ブロックを用いて示している。配電自動化制御装置100の各機能は、例えば
図2に示す入力インターフェース100a、出力インターフェース100b、CPU100c、ROM100d、RAM100eおよび内部記憶装置100fを組み合わせて実現される。
【0016】
図1に示すように、分散型電源出力推定部10は、例えば、分散型電源毎気象推定部11と、分散型電源毎出力推定部12と、区間毎出力推定部13と、分散型電源情報記憶部17と、を備える。分散型電源出力推定部10は、配電系統内に設けられた分散型電源の出力を算出する。分散型電源出力推定部10は、配電系統内に設けられた分散型電源の各種情報を管理する分散型電源管理システム5から情報を取得し、分散型電源情報記憶部17に記憶する。本実施形態において、分散型電源は、配電系統に連系された太陽光発電設備または風力発電設備等の自然エネルギーを利用した設備を示す。
【0017】
分散型電源情報記憶部17は、分散型電源位置記憶部14と、分散型電源特性記憶部15と、分散型電源連系区間記憶部16と、を備える。分散型電源位置記憶部14は、各分散型電源の位置情報を記憶している。位置情報は、例えば各分散型電源が配置されている緯度および経度である。分散型電源特性記憶部15は、各分散型電源の出力特性情報を記憶している。出力特性情報は、例えば太陽光発電設備において日射量と出力との相関関係であり、例えば風力発電設備において風速と出力との相関関係である。分散型電源連系区間記憶部16は、各分散型電源の連系区間情報を記憶している。連系区間情報は、例えば、各分散型電源が連系されている区間の情報である。
【0018】
また、分散型電源出力推定部10は、気象予測情報記憶部18を備える。分散型電源出力推定部10は、気象予測システム4から気象予測情報を取得し、気象予測情報記憶部18に記憶している。気象予測システム4は、気象観測情報3に基づいて、例えば5kmメッシュ毎の日射量または風速等の値を算出し、気象予測情報として出力する。気象観測情報3は、例えば気象予報情報または気象衛星画像等の情報である。なお、気象予測情報は、必ずしも5kmメッシュ毎の気象を予測したデータでなくてもよい。
【0019】
分散型電源毎気象推定部11は、分散型電源位置記憶部14に記憶された位置情報と、気象予測情報記憶部18に記憶された気象予測情報と、に基づいて、各分散型電源の位置における気象情報を算出する。分散型電源毎気象推定部11は、各分散型電源の位置情報から各分散型電源が配置されている経度および緯度を特定し、当該経度および緯度を気象予測情報におけるメッシュに関連付ける。これにより、分散型電源毎気象推定部11は、特定した経度および緯度で示される地点が属する気象予測情報におけるメッシュを特定する。そして、分散型電源毎気象推定部11は、各分散型電源の位置における気象情報を、特定したメッシュにおける気象情報として算出することができる。
【0020】
分散型電源毎出力推定部12は、分散型電源毎気象推定部11から取得する分散型電源毎の気象情報と、分散型電源特性記憶部15に記憶された出力特性情報と、に基づいて、各分散型電源の出力を算出する。分散型電源毎出力推定部12は、各分散型電源の出力特性情報に、分散型電源毎気象推定部11から取得する各分散型電源の位置における気象情報を入力する。これにより、分散型電源毎出力推定部12は、各分散型電源の出力を算出することができる。
【0021】
区間毎出力推定部13は、分散型電源毎出力推定部12から取得する各分散型電源の出力と、分散型電源連系区間記憶部16に記憶された連系区間情報と、に基づいて、開閉器Nで区切られた区間毎の分散型電源出力を算出する。区間毎出力推定部13は、同じ区間に属する分散型電源の出力の加算値を算出する。これにより、区間毎出力推定部13は、区間毎の分散型電源出力を算出することができる。
【0022】
図3は、分散型電源出力推定部10が分散型電源出力の算出対象とする配電系統の配置の例を示している。
図3において破線で区切られた四角形は、気象予測情報における5kmメッシュを示す。配電系統は、変電所ssに接続された2つの配電線f1、f2を備える。配電線f1は、開閉器n1、n2、n3によって、区間z1、z2、z3、z4に区切られている。区間z2には、分散型電源g1が連系されている。区間z3には、分散型電源g2、g3が連系されている。例えば、分散型電源g1、g2、g3は、太陽光発電設備である。分散型電源g1は、メッシュm1内に配置されている。分散型電源g2は、メッシュm2内に配置されている。分散型電源g3は、メッシュm3内に配置されている。
【0023】
分散型電源毎気象推定部11の機能は、
図3に示す配電系統を例として用いると、以下のように説明される。分散型電源毎気象推定部11は、位置情報から分散型電源g1、g2、g3が配置されている緯度および経度を特定し、当該緯度および経度を気象予測情報におけるメッシュに関連付ける。これにより、分散型電源g1が気象予測情報におけるメッシュm1に属し、分散型電源g2が気象予測情報におけるメッシュm2に属し、分散型電源g3が気象予測情報におけるメッシュm3に属することを特定する。このため、分散型電源毎気象推定部11は、分散型電源g1、g2、g3それぞれの地点における日射量を、特定したメッシュにおける日射量として算出することができる。
【0024】
分散型電源毎出力推定部12の機能は、
図3に示す配電系統を例として用いると、以下のように説明される。分散型電源毎出力推定部12は、分散型電源g1、g2、g3それぞれの出力特性情報に、分散型電源毎気象推定部11から取得する各分散型電源の位置における日射量を入力する。出力特性情報は、分散型電源g1、g2、g3それぞれに関する日射量と出力との相関関係である。これにより、分散型電源毎出力推定部12は、分散型電源g1、g2、g3それぞれの出力を算出することができる。
【0025】
区間毎出力推定部13の機能は、
図3に示す配電系統を例として用いると、以下のように説明される。区間毎出力推定部13は、連系区間情報から、分散型電源g1が連系されるのが区間z2であり、分散型電源g2、g3が連系されるのが区間z3であることを特定する。区間毎出力推定部13は、同じ区間に属する分散型電源の出力の合計値を算出する。すなわち、区間毎出力推定部13は、区間z2の分散型電源出力を分散型電源g1の出力として求め、区間z3の分散型電源出力を分散型電源g2および分散型電源g3の出力の合計値として算出する。また、区間毎出力推定部13は、区間z1、z4の分散型電源出力を0と算出する。これにより、区間毎出力推定部13は、区間z1、z2、z3、z4それぞれの分散型電源出力を算出することができる。
【0026】
図1に示すように、配電制御部20は、例えば、区間毎実負荷推定部21と、融通可能範囲判断部22と、停電区間特定部23と、区間毎見掛け負荷算出部24と、遮断器電流値記憶部25と、開閉器電流値記憶部26と、系統構成記憶部27と、を備える。配電制御部20は、配電系統内に配置された遮断器CBおよび開閉器Nの開放(オフ)および投入(オン)を制御する。遮断器CBおよび開閉器Nには、通過する電流値を計測できるセンサが設けられている。配電制御部20は、遮断器CBを通過する電流値を所定時間毎に取得し、遮断器電流値記憶部25に記憶している。配電制御部20は、開閉器Nを通過する電流値を所定時間毎に取得し、開閉器電流値記憶部26に記憶している。
【0027】
系統構成記憶部27は、遮断器CBおよび開閉器Nで区分された複数の区間同士の接続関係の情報である接続関係情報と、遮断器CBおよび開閉器Nの開放および投入の状況の情報である開閉情報と、遮断器CBを通過できる最大の電流値である許容通過電流情報と、分散型電源の復電時間の情報である復電時間情報と、を系統構成記憶部27に記憶している。復電時間は、分散型電源が解列された状態で電流が供給された時点から、分散型電源が自動的に再び連系されるまでの時間である。例えば本実施形態において、全ての分散型電源の復電時間が等しく、復電時間は3分である。配電制御部20は、例えば所定時間毎に遮断器CBおよび開閉器Nから開閉情報を取得し、系統構成記憶部27に記憶している。例えば、接続関係情報および許容通過電流情報は、予め系統構成記憶部27に記憶されている。配電制御部20は、例えば所定時間毎に分散型電源管理システム5から復電時間情報を取得し、系統構成記憶部27に記憶している。なお、分散型電源は、必ずしも復電時間後に自動的に再び連系されなくてもよく、例えば指令操作後に連系されてもよい。分散型電源が指令操作によって連系される場合、例えば、系統構成記憶部27が指令操作の入力情報を分散型電源管理システム5から取得し、分散型電源が連系されたことを記憶すればよい。
【0028】
図4は、通常時における配電系統の一部を示す模式図である。
図5は、第1配電線内で事故発生した直後における配電系統の一部を示す模式図ある。
図6は、事故区間が特定された後における配電系統の一部を示す模式図である。
図7は、第2配電線から第1配電線への電流融通が行われた後における配電系統の状態の一例を示す模式図である。
図8は、第2配電線から第1配電線への電流融通が行われた後における配電系統の状態の一例を示す模式図である。
【0029】
図4〜8に示す配電系統は、変電所SSに接続された第1配電線F1および第2配電線F2を備える。変電所SSは、発電所から送られてくる電気の電圧を降下する変圧器TFと、遮断器CB1、CB2を備えている。遮断器CB1、CB2は、
図1に示す遮断器CBである。遮断器CB1は、第1配電線F1の変電所SS側の端部に設けられている。第1配電線F1は、遮断器CB1を介して変圧器TFに接続されている。第1配電線F1は、遮断器CB1および開閉器N1、N2、N3によって、区間Z1、Z2、Z3、Z4に区分されている。区間Z3には分散型電源G1が連系されており、区間Z4には分散型電源G2が連系されている。例えば、分散型電源G1、G2は、太陽光発電設備である。また、遮断器CB2は、第2配電線F2の変電所SS側の端部に設けられている。第2配電線F2は、遮断器CB2を介して変圧器TFに接続されている。第2配電線F2は、遮断器CB2および開閉器N5、N6、N7によって、区間Z5、Z6、Z7、Z8に区分されている。第2配電線F2内には、分散型電源が設けられていない。また、第1配電線F1は、末端に配置される開閉器N4を介して第2配電線F2の末端に接続されている。通常時において、開閉器N4は、
図4に示すように開放されている。開閉器N1〜N7は、
図1に示す開閉器Nである。特定の区間の末端側は、該当特定の区間から見て遮断器CBとは反対側の方向を意味し、以下においても同様の意味で記載される。また、通常時は、配電系統内の全区間に電流が供給されている状態を意味し、以下においても同様の意味で記載される。
【0030】
図5に示すように、例えば第1配電線F1内の区間Z2で事故が発生した場合、遮断器CB1が開放したあと、変電所SSに設けられた継電器により再閉路が行われる。そして、継電器は、遮断器CB1がトリップするまでの時間をカウントすることで、事故区間が区間Z2であることを特定する。その後、継電器は、遮断器CB1を通過する電流が区間Z2よりも末端側に達しなくするため、開閉器N1〜N3に開放状態を保たせる。これにより、配電系統は、
図6に示す状態となる。
【0031】
停電区間特定部23は、第1配電線F1で事故が発生したとき、系統構成記憶部27に記憶された接続関係情報および開閉情報に基づいて、複数の区間Z1〜Z4の中から事故区間を特定する。例えば、事故区間は、
図5に示すように区間Z2である。そして、停電区間特定部23は、複数の区間Z1〜Z4の中から事故区間Z2よりも末端側に位置する区間をそれぞれ停電区間として特定する。例えば、停電区間は、区間Z3および区間Z4である。停電区間特定部23は、
図1に示すように、例えば遮断器電流値記憶部25に接続されており、遮断器電流値記憶部25が記憶する値が0になることを契機に作動する。
【0032】
区間毎見掛け負荷算出部24は、系統構成記憶部27に記憶された接続関係情報および開閉器電流値記憶部26に記憶された開閉器を通過する電流値に基づいて、事故の発生前における停電区間Z3、Z4の通過電流である見掛け負荷を停電区間Z3、Z4毎に算出する。例えば、区間Z3の見掛け負荷は、開閉器N2の電流値と開閉器N3の電流値との減算値である。区間Z4の見掛け負荷は、開閉器N3の電流値である。
【0033】
区間毎実負荷推定部21は、分散型電源出力推定部10の出力である分散型電源の出力および区間毎見掛け負荷算出部24の出力である見掛け負荷に基づいて、事故の発生前において停電区間Z3、Z4で実際に消費されていた電流である実負荷を算出する。例えば、区間Z3の実負荷は、区間Z3の分散型電源出力と区間Z3の見掛け負荷との加算値である。区間Z4の実負荷は、区間Z4の分散型電源出力と区間Z4の見掛け負荷との加算値である。
【0034】
融通可能範囲判断部22は、遮断器電流値記憶部25に記憶された遮断器CB2を通過する電流値、系統構成記憶部27に記憶された接続関係情報、開閉情報および許容通過電流情報、並びに区間毎実負荷推定部21の出力である実負荷に基づいて、第2配電線F2が電流を融通できる区間の範囲である第1融通可能範囲を特定する。
【0035】
具体的には、融通可能範囲判断部22は、系統構成記憶部27に記憶された接続関係情報から、停電区間Z4が第1配電線F1の最も末端の区間であることを特定する。また、融通可能範囲判断部22は、系統構成記憶部27に記憶された開閉情報から、開閉器N4が開放状態であることを把握する。融通可能範囲判断部22は、第2配電線F2の遮断器CB2の許容通過電流情報と、遮断器CB2を通過している電流との減算値から、第1配電線F1に融通できる電流(融通可能電流)を算出する。そして、融通可能範囲判断部22は、融通可能電流と停電区間Z4の実負荷とを比較する。融通可能電流が停電区間Z4の実負荷より小さければ、融通可能範囲判断部22は、第1融通可能範囲がないことを特定する。このため、融通可能範囲判断部22は電流の融通を行わない。これに対して、融通可能電流が停電区間Z4の実負荷より大きければ、融通可能範囲判断部22は、さらに停電区間Z3まで電流の融通が可能かどうかを判断する。
【0036】
すなわち、融通可能範囲判断部22は、系統構成記憶部27に記憶された接続関係情報から、停電区間Z3が停電区間Z4に隣接していることを特定する。また、融通可能範囲判断部22は、系統構成記憶部27に記憶された開閉情報から、開閉器N3が開放状態であることを把握する。そして、融通可能範囲判断部22は、融通可能電流と、停電区間Z4の実負荷および停電区間Z3の実負荷の加算値と、を比較する。融通可能電流が停電区間Z4の実負荷および停電区間Z3の実負荷の加算値より小さければ、融通可能範囲判断部22は、第1融通可能範囲が停電区間Z4のみであることを特定する。そして、融通可能範囲判断部22は、開閉器N4のみ投入し、区間Z4にのみ電流の融通を行う。これにより、配電系統は、
図7に示す状態となる。これに対して、融通可能電流が停電区間Z4の実負荷および停電区間Z3の実負荷の加算値より大きければ、融通可能範囲判断部22は、第1融通可能範囲が停電区間Z4および停電区間Z3であることを特定する。そして、融通可能範囲判断部22は、開閉器N3、N4を投入し、停電区間Z3、Z4に電流の融通を行う。これにより、配電系統は、
図8に示す状態となる。
【0037】
融通可能範囲判断部22が、第1融通可能範囲が停電区間Z4のみであると特定し、停電区間Z4にのみ電流の融通を行った場合(配電系統が
図7の状態となった場合)、停電区間Z4には第2配電線F2から電流が供給される。停電区間Z4に電流が供給されると、停電区間Z4から解列されていた分散型電源G2は、復電時間後に自動的に再び停電区間Z4に連系される。復電時間は、第2配電線F2から停電区間Z4に電流が融通された後に停電区間Z4に分散型電源G2が再び連系されるまでの時間である。分散型電源G2の復電時間は、上述したように系統構成記憶部27に記憶されている。例えば、分散型電源G2の復電時間は3分である。分散型電源G2が区間Z4に再び連系されると、分散型電源G2の出力が区間Z4における負荷の一部を賄うので、遮断器CB2を通過する電流が減少する。これにより、第2配電線F2の融通可能電流が増加する。
【0038】
融通可能範囲判断部22は、系統構成記憶部27に記憶された復電時間情報に基づいて、第1融通可能範囲の分散型電源G2が連系したことを特定する。そして、融通可能範囲判断部22は、遮断器電流値記憶部25に記憶された遮断器CB2を通過する電流値、系統構成記憶部27に記憶された接続関係情報、開閉情報および許容通過電流情報、並びに区間毎実負荷推定部21の出力である実負荷に基づいて、第1融通可能範囲よりも広い第2融通可能範囲を特定する。なお、本実施形態において復電時間が全ての分散型電源で同じとしているが、分散型電源毎に異なる復電時間が設定されていてもよい。復電時間が分散型電源毎に異なる場合、融通可能範囲判断部22は、例えば分散型電源連系区間記憶部16に記憶された連系区間情報および系統構成記憶部27に記憶された復電時間情報に基づいて、第1融通可能範囲の分散型電源G2が連系したことを特定すればよい。
【0039】
具体的には、融通可能範囲判断部22は、停電区間Z4に電流が融通されてから分散型電源G2の復電時間である3分が経過したことから、分散型電源G2が停電区間Z4に連系されたことを特定する。そして、融通可能範囲判断部22は、系統構成記憶部27に記憶された接続関係情報から、停電区間Z3が停電区間Z4に隣接していることを特定する。また、融通可能範囲判断部22は、系統構成記憶部27に記憶された開閉情報から、開閉器N3が開放状態であることを把握する。そして、融通可能範囲判断部22は、融通可能電流と、停電区間Z3の実負荷と、を比較する。融通可能電流が区間Z3の実負荷より小さければ、融通可能範囲判断部22は、第2融通可能範囲がないことを特定する。このため、融通可能範囲判断部22は、停電区間Z3への電流の融通を行わない。これに対して、融通可能電流が区間Z3の実負荷より大きければ、融通可能範囲判断部22は、第2融通可能範囲が停電区間Z3および停電区間Z4であることを特定する。これにより、融通可能範囲判断部22は、開閉器N3を投入し、停電区間Z3にも電流の融通を行う。これにより、配電系統は、
図8に示す状態となる。
【0040】
図9は、本実施形態に係る分散型電源出力予測システムを用いて電流を融通する方法を示すフローチャートである。より具体的に説明するため、通常時を示す
図4において遮断器CB1、CB2を通過する電流が200[A]、開閉器N1を通過する電流が150[A]、開閉器N2を通過する電流が100[A]、開閉器N3を通過する電流が50[A]、分散型電源G1、G2の発電量がそれぞれ100[A]、遮断器CB2の許容通過電流が420[A]であると仮定して、配電自動化制御装置100を用いて配電する方法が以下で説明される。
【0041】
配電自動化制御装置100は、
図4に示すような通常時において、遮断器CB1、CB2および開閉器N1〜N7から電流値を取得し、遮断器電流値記憶部25および開閉器電流値記憶部26に記憶している(ステップS1)。遮断器電流値記憶部25は、遮断器CB1を通過する電流が200[A]であることを記憶する。開閉器電流値記憶部26は、開閉器N1を通過する電流が150[A]、開閉器N2を通過する電流が100[A]、開閉器N3を通過する電流が50[A]であることを記憶する。
【0042】
停電区間特定部23は、遮断器電流値記憶部25に記憶される遮断器CB1、CB2の電流値を常に取得しており、遮断器CB1の電流値が0になった場合、遮断器CB1が開放されたことを感知する(ステップS2、Yes)。遮断器CB1の電流値が0にならない限り、遮断器電流値記憶部25および開閉器電流値記憶部26が、遮断器CB1、CB2および開閉器N1〜N7の電流値を記憶し続ける(ステップS2、No)。
【0043】
遮断機CB1が開放されると、第1配電線F1に電流が供給されなくなり、自動的に開閉器N1〜N3も開放される。このため、第1配電線F1に連系されていた分散型電源G1、G2は、単独運転を防止するために、自動的に解列される(ステップS3)。これにより、配電系統は、
図5に示す状態となる。
【0044】
次に、停電区間特定部23は、系統構成記憶部27に記憶された接続関係情報および開閉情報に基づいて、複数の区間Z1〜Z4の中から事故区間を特定する(ステップS4)。そして、停電区間特定部23は、複数の区間Z1〜Z4の中から事故区間Z2よりも末端側に位置する区間Z3、Z4をそれぞれ停電区間Z3、Z4として特定する。
【0045】
次に、停電区間特定部23が停電区間Z3、Z4を特定したことを契機として、区間毎見掛け負荷算出部24は、停電区間Z3、Z4の見掛け負荷を算出する(ステップS5)。区間毎見掛け負荷算出部24は、開閉器電流値記憶部26に記憶された開閉器N2の電流値100[A]と開閉器N3の電流値50[A]との減算値から、停電区間Z3の見掛け負荷が50[A]であることを算出する。また、区間毎見掛け負荷算出部24は、開閉器電流値記憶部26に記憶された開閉器N3の電流値50[A]から、停電区間Z4の見掛け負荷が50[A]であることを算出する。
【0046】
次に、分散型電源出力推定部10が、事故の発生前に停電区間Z3、Z4に連系されていた分散型電源の出力を区間毎に算出する(ステップS6)。具体的には、まず分散型電源毎気象推定部11が、分散型電源G1、G2における日射量を算出する。そして、分散型電源毎出力推定部12が、分散型電源G1、G2それぞれの出力が100[A]であることを算出する。その後、区間毎出力推定部13は、同じ区間に属する分散型電源の出力の加算値を求め、停電区間Z3の分散型電源出力が100[A]であり、停電区間Z4の分散型電源出力が100[A]であることを算出する。なお、ステップS5とステップS6の順番は逆であってもよい。
【0047】
次に、区間毎実負荷推定部21が、停電区間Z3、Z4毎の実負荷を算出する(ステップS7)。停電区間Z3の見掛け負荷が50[A]であり、停電区間Z3の分散型電源出力が100[A]であることがすでに算出されている。このため、区間毎実負荷推定部21は、停電区間Z3の実負荷が50[A]と100[A]との加算値である150[A]であることを算出する。停電区間Z4の見掛け負荷が50[A]であり、停電区間Z4の分散型電源出力が100[A]であることがすでに算出されている。このため、区間毎実負荷推定部21は、停電区間Z4の実負荷が50[A]と100[A]との加算値である150[A]であることを算出する。
【0048】
次に、融通可能範囲判断部22が、事故が発生していない健全配電線である第2配電線F2から第1配電線F1へ電流を融通できるかどうかを判断する。具体的には、融通可能範囲判断部22は、第2配電線F2の遮断器CB2の許容通過電流420[A]と、遮断器CB2を通過している電流200[A]との減算値から、融通可能電流が220[A]であることを算出する。そして、融通可能範囲判断部22は、融通可能電流220[A]と区間Z4の実負荷150[A]とを比較する。融通可能電流220[A]が区間Z4の実負荷150[A]より大きいので、融通可能範囲判断部22は、融通可能であることを特定し、ステップS9に進む(ステップS8、Yes)。仮に融通可能電流が区間Z4の実負荷よりも小さい場合、融通可能範囲判断部22は、融通不可能と判断する(ステップS8、No)。
【0049】
次に、融通可能範囲判断部22が、第1融通可能範囲を特定する(ステップS9)。融通可能範囲判断部22は、融通可能電流220[A]と、区間Z4の実負荷150[A]および区間Z3の実負荷150[A]の加算値である300[A]と、を比較する。融通可能電流220[A]が区間Z4および区間Z3の実負荷の加算値300[A]より小さいため、融通可能範囲判断部22は、第1融通可能範囲が停電区間Z4のみであることを特定する。
【0050】
次に、融通可能範囲判断部22が、開閉器N4を投入し、第1融通可能範囲である停電区間Z4を健全配電線である第2配電線F2に連系する(ステップS10)。これにより、配電系統は、
図7に示す状態となる。このため、停電区間Z4には第2配電線F2から電流が供給される。この時点で、遮断器CB2を通過する電流は、元々通過していた電流200[A]と区間Z4の実負荷150[A]との加算値である350[A]となる。
【0051】
次に、第1融通可能範囲である停電区間Z4の分散型電源G2が、融通を受けてから復電時間である3分経過後に自動的に区間Z4に連系される(ステップS11)。融通可能範囲判断部22は、停電区間Z4に電流が融通されてから分散型電源G2の復電時間である3分が経過したことから、分散型電源G2が停電区間Z4に連系されたことを特定する。分散型電源G2が停電区間Z4に連系されると、分散型電源G2の出力100[A]が区間Z4における負荷の一部を賄うので、遮断器CB2を通過する電流が350[A]から250[A]に減少する。なお、分散型電源G2の出力は、事故の発生前からの時間の経過により変化している可能性があるが、説明の便宜上、100[A]のままであると仮定している。
【0052】
次に、融通可能範囲判断部22が、系統構成記憶部27に記憶された開閉情報に基づいて、停電区間Z3、Z4の全てが連系済であるかどうかを判断する。融通可能範囲判断部22は、開閉器N3が開放されていることから、停電区間Z3、Z4のうち停電区間Z3が連系されていないことを特定し(ステップS12、No)、ステップS8に戻る。
【0053】
次に、融通可能範囲判断部22は、健全配電線である第2配電線F2から第1配電線F1へ電流を融通できるかどうかを判断し直す。具体的には、融通可能範囲判断部22は、第2配電線F2の遮断器CB2の許容通過電流420[A]と、遮断器CB2を通過している電流250[A]との減算値から、融通可能電流が170[A]であることを算出する。そして、融通可能範囲判断部22は、融通可能電流170[A]と停電区間Z3の実負荷150[A]とを比較する。融通可能電流220[A]が停電区間Z3の実負荷150[A]より大きいので、融通可能範囲判断部22は、融通可能であることを特定し、ステップS9に進む(ステップS8、Yes)。
【0054】
次に、融通可能範囲判断部22が、第1融通可能範囲よりも広い第2融通可能範囲を特定する(ステップS9)。融通可能範囲判断部22は、開閉情報から、停電区間Z3、Z4のうち連系されていないのが停電区間Z3のみであることを特定する。そして、融通可能範囲判断部22は、融通可能電流220[A]が停電区間Z3の実負荷150[A]より大きいことから、第2融通可能範囲が停電区間Z3および停電区間Z4であることを特定する。
【0055】
次に、融通可能範囲判断部22が、開閉器N3を投入し、第2融通可能範囲である停電区間Z3および停電区間Z4を第2配電線F2に連系する(ステップS10)。これにより、配電系統は、
図8に示す状態となる。このため、区間Z3には第2配電線F2から電流が供給される。
【0056】
次に、第2配電線F2から融通を受けた停電区間Z3の分散型電源G1が、融通を受けてから復電時間である3分後に自動的に停電区間Z3に連系される(ステップS11)。
【0057】
次に、融通可能範囲判断部22が、系統構成記憶部27に記憶された開閉情報に基づいて、停電区間Z3、Z4の全てが連系済であるかどうかを判断する。融通可能範囲判断部22は、開閉器N3、N4が投入されていることから、停電区間Z3、Z4の全てが連系済であることを特定する(ステップS12、Yes)。
【0058】
なお、分散型電源出力は、必ずしも分散型電源出力推定部10により算出しなくてもよい。例えば、分散型電源それぞれに出力を測定できる測定器を設けることで、分散型電源出力が直接求められる。ただし、分散型電源それぞれに測定器を設けるためには多大なコストが必要となるため、本実施形態のように、分散型電源出力推定部10を用いて分散型電源出力を算出する方が望ましい。
【0059】
以上述べたように、本実施形態に係る分散型電源出力予測システム200は、配電自動化のための分散型電源出力予測システム200であって、第1配電線F1および第1配電線F1に接続される第2配電線F2のそれぞれの変電所SS側の端部に設けられる遮断器CB1、CB2と、第1配電線F1および第2配電線F2を複数の区間Z1〜Z8に区切る複数の開閉器N1〜N7と、第1配電線F1または第2配電線F2に連系される分散型電源G1、G2と、配電自動化制御装置100とを含む。配電自動化制御装置100は、遮断器CB1、CB2を通過する電流値を記憶する遮断器電流値記憶部25と、開閉器N1〜N7を通過する電流値を記憶する開閉器電流値記憶部26と、を備える。配電自動化制御装置100は、複数の区間Z1〜Z8同士の接続関係情報と、複数の遮断器CB1、CB2および複数の開閉器N1〜N7の開閉情報と、分散型電源G1、G2の復電時間情報と、遮断器CB1、CB2の許容通過電流情報を記憶する系統構成記憶部27と、分散型電源G1、G2の情報を記憶する分散型電源情報記憶部17と、を備える。配電自動化制御装置100は、第1配電線F1で事故が発生したとき、接続関係情報および開閉情報に基づいて、複数の区間Z1〜Z8の中から事故区間Z2を特定し、複数の区間Z1〜Z8の中から事故区間Z2よりも末端側に位置する区間をそれぞれ停電区間Z3、Z4として特定する停電区間特定部23を備える。配電自動化制御装置100は、分散型電源の情報に基づいて、事故の発生前に停電区間Z3、Z4に連系されていた分散型電源G1、G2の出力を、停電区間Z3、Z4毎に算出する分散型電源出力推定部10を備える。配電自動化制御装置100は、接続関係情報および開閉器を通過する電流値に基づいて、事故の発生前における停電区間Z3、Z4の通過電流である見掛け負荷を、停電区間Z3、Z4毎に算出する区間毎見掛け負荷算出部24を備える。配電自動化制御装置100は、分散型電源G1、G2の出力および見掛け負荷に基づいて、事故の発生前において停電区間Z3、Z4で実際に消費されていた電流である実負荷を、停電区間Z3、Z4毎に算出する区間毎実負荷推定部21を備える。配電自動化制御装置100は、遮断器を通過する電流値、接続関係情報、開閉情報および許容通過電流情報、並びに実負荷に基づいて、第2配電線F2が電流を融通できる停電区間の範囲である第1融通可能範囲(停電区間Z4)を特定する融通可能範囲判断部22を備える。融通可能範囲判断部22は、復電時間情報に基づいて、第1融通可能範囲の分散型電源が連系したことを特定し、遮断器を通過する電流値、接続関係情報、開閉情報および許容通過電流情報、並びに実負荷に基づいて、第1融通可能範囲(停電区間Z4)よりも広い第2融通可能範囲(停電区間Z4および停電区間Z3)を特定する。
【0060】
これにより、配電自動化制御装置100は、実負荷に基づいて電流の融通を行うことができるため、健全配電線の遮断器がトリップする可能性を抑制できる。また、配電自動化制御装置100は、事故が発生したときに解列された分散型電源が再び連系したことを、分散型電源の復電時間に基づいて特定できるため、融通可能範囲の拡大をより早くすることができる。よって、分散型電源出力予測システム200は、健全配電線の遮断器がトリップする可能性を抑制し、かつ停電区間の範囲の縮小化を早く行うことができる。
【0061】
また、配電自動化制御装置100は、気象予測情報を記憶する気象予測情報記憶部18を備える。分散型電源情報記憶部17は、分散型電源G1、G2の位置情報を記憶する分散型電源位置記憶部14と、分散型電源G1、G2の出力特性情報を記憶する分散型電源特性記憶部15と、分散型電源G1、G2の連系区間情報を記憶する分散型電源連系区間記憶部16と、を備える。分散型電源出力推定部10は、気象予測情報、位置情報、出力特性情報および連系区間情報に基づいて、分散型電源G1、G2の出力を、停電区間Z3、Z4毎に算出する。
【0062】
これにより、分散型電源出力推定部10は、分散型電源G1、G2の出力を測定するための測定器を設けずに、分散型電源G1、G2の出力を算出することができる。このため、配電自動化制御装置100は、見掛け負荷と分散型電源G1、G2の出力との加算値である実負荷を容易に算出することができる。