特許第5960189号(P5960189)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5960189加工サイクル生成機能を有する数値制御装置およびプログラム編集方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5960189
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】加工サイクル生成機能を有する数値制御装置およびプログラム編集方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/4093 20060101AFI20160719BHJP
   B23Q 15/00 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   G05B19/4093 H
   G05B19/4093 F
   B23Q15/00 301L
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-86401(P2014-86401)
(22)【出願日】2014年4月18日
(65)【公開番号】特開2015-207095(P2015-207095A)
(43)【公開日】2015年11月19日
【審査請求日】2015年7月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】太田 康弘
【審査官】 藤島 孝太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−256009(JP,A)
【文献】 特開平05−158518(JP,A)
【文献】 特開平07−136897(JP,A)
【文献】 特許第5414948(JP,B2)
【文献】 特開2013−175129(JP,A)
【文献】 特開平10−063323(JP,A)
【文献】 特開平08−118200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18−19/416
19/42−19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
NCプログラムを使用して加工制御を行う数値制御装置において、
NCプログラムにおいてあらかじめ指定された工具番号から次の工具番号までの加工指令の範囲を一加工工程と認識する手段と、
切削条件と最終的に作成される加工領域の形である加工領域形状とを定義し、当該切削条件と当該加工領域形状とから複数指令を生成して可動軸を制御する加工サイクル指令を、前記一加工工程から生成する加工サイクル生成手段と、
NCプログラム上の前記一加工工程を前記加工サイクル指令に置き換えたNCプログラムを生成する手段と、を有することを特徴とする数値制御装置。
【請求項2】
前記加工サイクル生成手段は、
工具番号ごとに加工種類と工具形状データが定義されている工具データリストを備え、
前記工具データリストと前記あらかじめ指定された工具番号とに基づいて対応する加工種類と工具形状データを特定し、
特定された前記加工種類と前記工具形状データおよび前記一加工工程から加工サイクル指令を生成する、請求項1記載の数値制御装置。
【請求項3】
前記加工サイクル生成手段は、
加工種類と必要な切削条件を関連付ける切削条件テーブルを更に備え、
特定された前記加工種類と前記工具形状データおよび前記一加工工程に加えて、
前記切削条件テーブルと前記加工種類から前記加工種類に対応する切削条件を特定し、
特定された前記切削条件をも使用して加工サイクル指令を生成する、請求項2記載の数値制御装置。
【請求項4】
前記加工サイクル生成手段は、
特定された前記加工種類と前記工具形状データ、前記一加工工程および特定された前記切削条件に加えて、
前記一加工工程から切削送り指令を抽出し、
前記抽出した切削送り指令を直線または円弧の図形である形状要素データに変換して加工領域形状を生成することによって加工サイクル指令を生成する、請求項3記載の数値制御装置。
【請求項5】
前記加工領域形状は前記形状要素データから刃先Rや工具径の値だけオフセットした形状として生成する加工領域形状である、請求項4記載の数値制御装置。
【請求項6】
NCプログラムの一部を、切削条件と最終的に作成される加工領域の形である加工領域形状とを定義し、当該切削条件と当該加工領域形状とから複数指令を生成して可動軸を制御する加工サイクル指令に置き換えたNCプログラムを生成するプログラム編集方法であって、
NCプログラムにおいてあらかじめ指定された工具番号から次の工具番号までの加工指令の範囲を一加工工程と認識するステップと、
前記一加工工程から加工サイクル指令を生成する加工サイクル生成ステップと、
NCプログラム上の前記一加工工程を前記加工サイクル指令に置き換えたNCプログラムを生成するステップと、を有することを特徴とするプログラム編集方法。
【請求項7】
工具番号ごとに加工種類と工具形状データが定義されている工具データリストをあらかじめ記憶しておき、
前記加工サイクル生成ステップは、
前記工具データリストと前記あらかじめ指定された工具番号とに基づいて対応する加工種類と工具形状データを特定し、
特定された前記加工種類と前記工具形状データおよび前記一加工工程から加工サイクル指令を生成する、請求項6記載のプログラム編集方法。
【請求項8】
加工種類と必要な切削条件を関連付ける切削条件テーブルをあらかじめ記憶しておき、前記加工サイクル生成ステップは、
特定された前記加工種類と前記工具形状データおよび前記一加工工程に加えて、
前記切削条件テーブルと前記加工種類から対応する切削条件を特定し、
特定された前記切削条件をも使用して加工サイクル指令を生成する、請求項7記載のプログラム編集方法。
【請求項9】
前記加工サイクル生成ステップは、
特定された前記加工種類と前記工具形状データ、前記一加工工程および特定された前記切削条件に加えて、
前記一加工工程から切削送り指令を抽出し、
前記抽出した切削送り指令を直線または円弧の図形である形状要素データに変換して加工領域形状を生成することによって加工サイクル指令を生成する、請求項8記載のプログラム編集方法。
【請求項10】
前記加工領域形状は前記形状要素データから刃先Rや工具径の値だけオフセットした形状として生成する加工領域形状である、請求項9記載のプログラム編集方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NCプログラムの一部から加工サイクル指令を生成する数値制御装置およびNCプログラムの一部から加工サイクル指令を生成するプログラム編集方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークを加工するNCプログラムを作成する場合、オペレータは工具の移動経路の始点、終点を計算し、その移動指令を1ブロックずつ作成する必要がある。ブロックとはNCプログラムの経路を指令する最小単位のことである。
【0003】
このようなNCプログラムを実行することでワークの加工が行われるが、実際に加工が行われている間にも最適な切削条件などを求めてしばしばプログラムの修正や編集が行われる。この場合、オペレータは加工内容に関連する複数のブロックを特定し、各々のブロック毎に必要な編集を行っていた。
【0004】
NCプログラムを直接編集する以外にも、従来技術として、NCプログラムからCAD/CAMや自動プログラミング装置などのNCプログラム作成装置へ入力可能なデータを自動的に生成する技術がある(たとえば、特許文献1参照)。また、NCプログラムから図形データを抽出し、CAD上で図形データを編集することでNCプログラムを間接的に編集できるようにする技術がある(たとえば、特許文献2参照)。
【0005】
一方、加工プログラムに用いられる指令として加工サイクル指令がある。加工サイクル指令は、複数のブロックからなる一連の移動指令を1つの指令で行うようにしたものであり、特許文献3の図1などに例示されるものである。加工サイクル指令は、切削条件と加工領域形状とを定義した指令であり、工作機械を制御する数値制御装置は、加工プログラムに記述された加工サイクル指令により定義された切削条件と加工領域形状とから、複数の移動指令を生成して可動軸を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3650027号公報
【特許文献2】特許第2584229号公報
【特許文献3】特開2014−16982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のNCプログラムの編集方法には以下のような問題点がある。ワークの加工ではNCプログラムの各ブロックに対応する非常に多くの加工制御が行われることで一つの加工形状が形成される。そのため、NCプログラムを編集する際には対象となるNCプログラムにより実行される加工手順を理解した上で関連するブロックをすべて特定する必要があるので、編集するブロックの特定に時間を要し、また、非常に多くのブロックを編集する必要があった。
【0008】
また、CAD/CAMや自動プログラミング装置を用いて編集を支援する技術を導入すると、個々のブロックを直接編集する必要がないのでオペレータのプログラム編集にかける労力は軽減するものの、当該技術を導入するためには数値制御装置以外にCAD/CAMや自動プログラミング装置という大掛かりな装置を用意する必要があり、コスト面での問題があった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、既存のNCプログラムから切削条件と加工領域形状を抽出し、ブロック数が少なく、数値制御装置上で入力ガイダンスなどを使用して容易に編集できる加工サイクル指令を生成する数値制御装置およびプログラム編集方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願請求項1に係る発明は、NCプログラムを使用して加工制御を行う数値制御装置において、NCプログラムにおいてあらかじめ指定された工具番号から次の工具番号までの加工指令の範囲を一加工工程と認識する手段と、切削条件と最終的に作成される加工領域の形である加工領域形状とを定義し、当該切削条件と当該加工領域形状とから複数指令を生成して可動軸を制御する加工サイクル指令を、前記一加工工程から生成する加工サイクル生成手段と、NCプログラム上の前記一加工工程を前記加工サイクル指令に置き換えたNCプログラムを生成する手段と、を有することを特徴とする数値制御装置である。
【0011】
本願請求項2に係る発明は、前記加工サイクル生成手段は、工具番号ごとに加工種類と工具形状データが定義されている工具データリストを備え、前記工具データリストと前記あらかじめ指定された工具番号とに基づいて対応する加工種類と工具形状データを特定し、特定された前記加工種類と前記工具形状データおよび前記一加工工程から加工サイクル指令を生成する、請求項1記載の数値制御装置である。
【0012】
本願請求項3に係る発明は、前記加工サイクル生成手段は、加工種類と必要な切削条件を関連付ける切削条件テーブルを更に備え、特定された前記加工種類と前記工具形状データおよび前記一加工工程に加えて、前記切削条件テーブルと前記加工種類から前記加工種類に対応する切削条件を特定し、特定された前記切削条件をも使用して加工サイクル指令を生成する、請求項2記載の数値制御装置である。
【0013】
本願請求項4に係る発明は、前記加工サイクル生成手段は、特定された前記加工種類と前記工具形状データ、前記一加工工程および特定された前記切削条件に加えて、前記一加工工程から切削送り指令を抽出し、前記抽出した切削送り指令を直線または円弧の図形である形状要素データに変換して加工領域形状を生成することによって加工サイクル指令を生成する、請求項3記載の数値制御装置である。
【0014】
本願請求項5に係る発明は、前記加工領域形状は前記形状要素データから刃先Rや工具径の値だけオフセットした形状として生成する加工領域形状である、請求項1記載の数値制御装置である。
【0015】
本願請求項6に係る発明は、NCプログラムの一部を、切削条件と最終的に作成される加工領域の形である加工領域形状とを定義し、当該切削条件と当該加工領域形状とから複数指令を生成して可動軸を制御する加工サイクル指令に置き換えたNCプログラムを生成するプログラム編集方法であって、NCプログラムにおいてあらかじめ指定された工具番号から次の工具番号までの加工指令の範囲を一加工工程と認識するステップと、前記一加工工程から加工サイクル指令を生成する加工サイクル生成ステップと、NCプログラム上の前記一加工工程を前記加工サイクル指令に置き換えたNCプログラムを生成するステップと、を有することを特徴とするプログラム編集方法である。
【0016】
本願請求項7に係る発明は、工具番号ごとに加工種類と工具形状データが定義されている工具データリストをあらかじめ記憶しておき、前記加工サイクル生成ステップは、前記工具データリストと前記あらかじめ指定された工具番号とに基づいて対応する加工種類と工具形状データを特定し、特定された前記加工種類と前記工具形状データおよび前記一加工工程から加工サイクル指令を生成する、請求項6記載のプログラム編集方法である。
【0017】
本願請求項8に係る発明は、加工種類と必要な切削条件を関連付ける切削条件テーブルをあらかじめ記憶しておき、前記加工サイクル生成ステップは、特定された前記加工種類と前記工具形状データおよび前記一加工工程に加えて、前記切削条件テーブルと前記加工種類から対応する切削条件を特定し、特定された前記切削条件をも使用して加工サイクル指令を生成する、請求項7記載のプログラム編集方法である。
【0018】
本願請求項9に係る発明は、前記加工サイクル生成ステップは、特定された前記加工種類と前記工具形状データ、前記一加工工程および特定された前記切削条件に加えて、前記一加工工程から切削送り指令を抽出し、前記抽出した切削送り指令を直線または円弧の図形である形状要素データに変換して加工領域形状を生成することによって加工サイクル指令を生成する、請求項8記載のプログラム編集方法である。
【0019】
本願請求項10に係る発明は、前記加工領域形状は前記形状要素データから刃先Rや工具径の値だけオフセットした形状として生成する加工領域形状である、請求項6記載のプログラム編集方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、既存のNCプログラムから、ブロック数が少なく、数値制御装置上で入力ガイダンスなどを使用して容易に編集できる加工サイクル指令を生成することができるので、CAD/CAMや自動プログラミング装置を使用せずに、NCプログラムを容易に編集することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の数値制御装置のブロック図である。
図2】加工サイクル生成部のブロック図である。
図3】工具データリストの一例を示す図である。
図4】切削条件テーブルの一例を示す図である。
図5】実施形態において加工対象となるワークの図面を示す図である。
図6】実施形態におけるNCプログラムを示す図である。
図7】加工領域形状生成部の基本フローチャートである。
図8】NCプログラムから形状要素データ群抽出処理の流れを説明する図である。
図9】旋削荒加工の場合の加工領域形状生成処理の流れを説明する図である。
図10】実施形態におけるNCプログラムの一部を加工サイクル指令に変換したプログラムを示す図である。
図11】旋削仕上げ加工の場合の加工領域形状生成処理の流れを説明する図である。
図12】旋削溝荒加工の場合の加工領域形状生成処理の流れを説明する図である。
図13】旋削溝仕上げ加工の場合の加工領域形状生成処理の流れを説明する図である。
図14】穴あけ加工の場合の加工領域形状生成処理の流れを説明する図である。
図15】平面加工の場合の加工領域形状生成処理の流れを説明する図である。
図16】輪郭加工の場合の加工領域形状生成処理の流れを説明する図である。
図17】ポケット加工の場合の加工領域形状生成処理の流れを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る数値制御装置、プログラム編集方法の実施の形態の一例を適宜図面に基づいて説明する。
【0023】
図1は、本発明に係る数値制御装置100のブロック図である。数値制御装置100は、ISOコードで作成されているNCプログラム10から一加工工程を認識する一加工工程認識部20、一加工工程認識部20によって認識された一加工工程のISOコードから加工サイクルを生成する加工サイクル生成部30、生成した一加工サイクルにより一加工工程のISOコードを置き換えたNCプログラム50を生成するNCプログラム生成部40を備えている。
【0024】
図2は、数値制御装置100が備える加工サイクル生成部30のブロック図である。加工サイクル生成部30は、認識された一加工工程のNCプログラム31から切削条件を抽出する切削条件生成部32、認識された一加工工程のNCプログラム31から加工領域形状を生成する加工領域形状生成部33、図示しないメモリ乃至記憶装置にあらかじめ記憶された工具データリスト34と切削条件テーブル35とを備えている。
【0025】
図3は工具データリスト34の一例を示したものである。工具データリスト34は、工具番号に対して工具種類、加工種類、工具形状データを対応付けて記憶したリストである。例えば、工具番号1には、工具種類は汎用工具、加工種類は旋削荒加工、工具形状データとして、刃先R0.8、仮想刃先方向3、が対応付けて記憶されている。
【0026】
図4は切削条件テーブル35の一例を示したものである。切削条件テーブル35は、加工種類に対して切削条件を対応付けて記憶したテーブルである。例えば、加工種類である旋削荒加工には、切削条件として送り速度、周速、切込量が設定されている。
【0027】
以下では、本発明に係る数値制御装置上でNCプログラムから加工サイクル指令を生成する動作手順を説明する。本実施形態では図5の図面に合わせてワークを加工するNCプログラムを編集する場合を例に説明する。図6は、図5の図面に合わせてワークを加工するNCプログラムを示したものである。
【0028】
一加工工程認識部20は、入力されたNCプログラム10から一加工工程を認識する。一加工工程認識部20は、NCプログラム10のブロックを先頭から順に読み込み、加工サイクルに変換する対象となる指令範囲で使用している工具番号を特定する。図6のNCプログラム中では、ブロックN0002のT指令「T101」により工具番号1を指定している。一加工工程認識部20は、N0002以降のブロックで次にT指令が現れるブロックを特定する。図6のプログラム中では、ブロック0048のT指令「T202」で工具番号2を指定しており、ここで工具が変更されることがわかる。一加工工程認識部20は、ブロック0048のT指令のひとつ前のブロックN0047までを工具番号1に対応する加工を行う一加工工程として認識する。
【0029】
次に、加工サイクル生成部30は、一加工工程認識部20によって認識された一加工工程のNCプログラム31を入力として加工サイクルを生成する。加工サイクル生成部30は一加工工程のNCプログラム31内において指定されている工具番号を用いて、図3に示す工具データリスト34から指定された工具番号に対応する加工種類を特定する。図6のプログラムから認識された一加工工程では工具番号1が指定されているので、工具データリスト34を参照し加工種類を旋削荒加工と特定することができる。
【0030】
加工種類が特定されると、加工サイクル生成部30は特定された加工種類を用いて、図4に示す切削条件テーブル35から旋削荒加工の切削条件を特定する。図6のNCプログラムから認識された一加工工程では加工種類が旋削荒加工と特定されているので、切削条件テーブル35を参照し切削条件を送り速度、周速、切込量と特定することができる。そして、切削条件生成部32は、特定した切削条件を用いて一加工工程から切削条件を抽出する。例えば、図6のNCプログラムにおける送り速度としては、N0010のF0.8を抽出する。
【0031】
次に、加工領域形状生成部33は、一加工工程認識部20により認識された一加工工程のNCプログラム31から加工領域形状を生成する。加工領域形状生成処理の基本フローチャートを図7に示す。
【0032】
加工領域形状生成部33は、一加工工程認識部20により認識された一加工工程のNCプログラム31から切削送り指令をすべて抽出する(S701)。次に、抽出した切削送り指令を形状要素データに変換する(S702)。そして、変換した形状要素データを形状要素データ群へと変換し(S703)、最後に形状要素データ群から加工領域形状を生成する(S704)。
【0033】
図6のNCプログラムから認識された一加工工程に対して形状要素データ群の抽出処理(S701〜S703)を適用した例を図8に示す。まず加工領域形状生成部33は、一加工工程のプログラムを構成するブロック群の中から切削送り指令(G01,G02など)を抽出し、抽出した切削送り指令から各切削送り指令の開始点を求める(S801,S802)。そして、これら開始点の情報と切削送り指令の種類およびパラメータを形状要素データに変換する(S803)。例えば、切削指令が「G01X40.Z−0762」、開始点が「X40.,Z1.」である場合、G01は直線補間であるから、当該指令から変換される形状要素データは「直線、始点X40.Z1.、終点X40.Z−0.762」となる。そして各切削送り指令に対して同様の変換を行うことで、形状要素データ群が生成される。
【0034】
次に、図6のNCプログラムから抽出された形状要素データ群に基づいて加工領域形状を生成する処理(S704)を図9に示す。図9は、加工種類が旋削荒加工である場合の加工領域形状の生成処理手順を示している。
【0035】
旋削荒加工における加工領域形状の生成処理では、まず加工領域形状生成部33は、一加工工程認識部20が認識した一加工工程から形状要素データ群を抽出する(S901、S902)。
【0036】
形状要素データ群が生成されると、加工領域形状生成部33は、生成された形状要素データ群の中から切削方向、切込方向と逆方向の形状要素データを特定し、これを削除する(S903)。
【0037】
次に、加工領域形状生成部33は、削除された後に残った形状要素データ全てを包含する矩形データを求める(S904)。本実施形態ではS904に示すように、(a)と(b)とを結ぶ直線を対角線とする矩形ですべての形状要素データを囲むことができる。
【0038】
次に、加工領域形状生成部33は、(a)点から(b)点までの連続する形状要素データを抽出し、抽出された形状要素データを部品形状へと変換する(S905)。
【0039】
次に、S904で求めた矩形を素材形状とし、素材形状とS905で変換した部品形状とを合成する(S906)。
【0040】
次に、仕上げ代、刃先R分をオフセットして加工サイクルの加工領域形状を作成する(S907)。
【0041】
最後に、切削条件生成部32が抽出した切削条件と、加工領域形状生成部33が生成した加工領域形状とに基づいてNCプログラム上で編集可能な加工サイクル指令を生成する。生成された加工サイクル指令の例を図10に示す。この例では、「G1120」が切削条件を意味し、「G1450」から続く各指令が加工領域形状(それぞれのブロックがS907の一連の形状要素に対応している)を意味している。
【0042】
このような処理手順により生成された加工サイクル指令は、加工領域形状を直接的に意味する指令で表現されるため、通常のNCプログラムと比較してオペレータが形状を想定しながら容易に編集することができる。
【0043】
以上の実施形態では、加工種類が旋削荒加工の場合における加工領域形状の生成処理について示したが、本願発明における加工領域形状の生成は旋削荒加工の場合にとどまるものではない。以下に、他の加工種類における加工領域形状の生成処理を例示する。
【0044】
(旋削仕上げ加工の場合の加工領域形状生成処理の流れ)
一加工工程認識部20によって認識された一加工工程から特定された加工種類が旋削仕上げ加工である場合における加工領域形状生成の流れを図11に示す。
【0045】
旋削仕上げ加工における加工領域形状の生成処理では、まず加工領域形状生成部33は、一加工工程認識部20が認識した一加工工程から形状要素データ群を抽出する(S1101、S1102)。
形状要素データ群が生成されると、抽出された形状要素データ全てを包含する矩形データを求める(S1103)。
次に、加工領域形状生成部33は、形状要素データを部品形状へと変換し、S1103で求めた矩形を素材形状として部品形状と合成する(S1104)。
最後に、刃先R分をオフセットして加工サイクルの加工領域形状を作成する(S1105)。
【0046】
(旋削溝荒加工の場合の加工領域形状生成処理の流れ)
一加工工程認識部20によって認識された一加工工程から特定された加工種類が旋削溝荒加工である場合における加工領域形状生成の流れを図12に示す。
【0047】
旋削溝荒加工における加工領域形状の生成処理では、まず加工領域形状生成部33は、一加工工程認識部20が認識した一加工工程から形状要素データ群を抽出する(S1201、S1202)。
形状要素データ群が抽出されると、加工領域形状生成部33は、抽出した形状要素データ群を刃先基準方向で並び替え、形状要素データ間が溝幅以上に空いている部分を境目としてそれぞれを別の加工領域として抽出する(S1203)。
次に、加工領域形状生成部33は、加工領域の1ケ分の形状要素データ群を抽出し、抽出された形状要素データ全てを包含する矩形データを求める(S1204)。
次に、加工領域形状生成部33は、(a)点から(f)点までの連続する形状要素データを抽出し、抽出された形状要素データを要素部品形状へと変換する(S1205)。
次に、S1204で求めた矩形を素材形状とし、素材形状とS1205で変換した要素部品形状とを合成する(S1206)。
次に、溝幅の分だけ領域を拡張する(S1207)。
次に、仕上げ代、刃先R分をオフセットして加工サイクルの加工領域形状を作成する(S1208)。
そして、すべての加工領域を加工領域形状に変換するまでS1204〜S1208を繰り返す。
【0048】
(旋削溝仕上げ加工の場合の加工領域形状生成処理の流れ)
一加工工程認識部20によって認識された一加工工程から特定された加工種類が旋削溝仕上げ加工である場合における加工領域形状生成の流れを図13に示す。
【0049】
旋削溝仕上げ加工における加工領域形状の生成処理では、まず加工領域形状生成部33は、一加工工程認識部20が認識した一加工工程から形状要素データ群を抽出する(S1301、S1302)。
形状要素データ群が抽出されると、加工領域形状生成部33は、生成された形状要素データ群の中から切込逆方向の形状要素データを特定し、これを削除する(S1303)。
次に、加工領域形状生成部33は、加工領域の1ケ分の形状要素データ群を抽出し、抽出された形状要素データ全てを包含する矩形データを求める(S1304)。
次に、加工領域形状生成部33は、(a)点から(f)点までの連続する形状要素データを要素部品形状へと変換する(S1305)。
次に、S1304で求めた矩形を素材形状とし、素材形状とS1305で変換した要素部品形状とを合成する(S1306)。
次に、溝幅の分だけ領域を拡張する(S1307)。
次に、仕上げ代、刃先R分をオフセットして加工サイクルの加工領域形状を作成する(S1308)。
そして、すべての加工領域を加工領域形状に変換するまでS1304〜S1308を繰り返す。
【0050】
(穴あけ加工の場合の加工領域形状生成処理の流れ)
一加工工程認識部20によって認識された一加工工程から特定された加工種類が穴あけ加工である場合における加工領域形状生成の流れを図14に示す。
【0051】
穴あけ加工における加工領域形状の生成処理では、まず加工領域形状生成部33は、一加工工程認識部20が認識した一加工工程から形状要素データ群を抽出する(S1401、S1402)。
形状要素データ群が抽出されると、加工領域形状生成部33は、生成された形状要素データ群の中から切込方向と逆方向の形状要素データを特定し、これを削除する(S1403)。
次に、加工領域形状生成部33は、形状要素データを直線1形状にまとめる(S1404)。
最後に、加工領域形状生成部33は、加工サイクルの加工領域形状である始点、終点、穴深さを決定する(S1405)。
【0052】
(平面加工の場合の加工領域形状生成処理の流れ)
一加工工程認識部20によって認識された一加工工程から特定された加工種類が平面加工である場合における加工領域形状生成の流れを図15に示す。
【0053】
平面加工における加工領域形状の生成処理では、まず加工領域形状生成部33は、一加工工程認識部20が認識した一加工工程から工具軸方向に一番低い高さの形状要素データ群を抽出する(S1501、S1502)。
形状要素データ群が抽出されると、加工領域形状生成部33は、抽出された形状要素データ全てを包含する矩形データを求める(S1503)。
次に、S1503で求めた矩形を部品形状へと変換する(S1504)。
次に、S1504で変換した部品形状を外部へと広がる方向に工具半径でオフセットする(S1505)。
最後に、加工領域形状生成部33は、S1505で求めたオフセットした部品形状から加工サイクルの加工領域形状を作成する(S1506)。
【0054】
(輪郭加工の場合の加工領域形状生成の流れ)
一加工工程認識部20によって認識された一加工工程から特定された加工種類が輪郭加工である場合における加工領域形状生成の流れを図16に示す。
【0055】
輪郭加工における加工領域形状の生成処理では、まず加工領域形状生成部33は、一加工工程認識部20が認識した一加工工程から工具軸方向に一番低い高さの形状要素データ群を抽出する(S1601、S1602)。
形状要素データ群が抽出されると、加工領域形状生成部33は、抽出された形状要素データの中から最終形状要素データを特定し、特定した最終形状要素データの終点を求める(S1603)。
次に、最終形状要素データが載る形状要素データを求め(S1604)、最終形状要素データから遡って、最終形状要素データの終点が載る形状要素データまでを抽出する(S1605)。
そして、抽出した形状要素データを部品形状へと変換し(S1606)、部品形状が狭まる方向に工具半径でオフセットする(S1607)。
最後に、加工領域形状生成部33は、S1607で求めたオフセットした部品形状から加工サイクルの加工領域形状を作成する(S1608)。
【0056】
(ポケット加工の場合の加工領域形状生成の流れ)
一加工工程認識部20によって認識された一加工工程から特定された加工種類がポケット加工である場合における加工領域形状生成の流れを図17に示す。
【0057】
ポケット加工における加工領域形状の生成処理では、まず加工領域形状生成部33は、一加工工程認識部20が認識した一加工工程から工具軸方向に一番低い高さの形状要素データ群を抽出する(S1701、S1702)。
形状要素データ群が抽出されると、加工領域形状生成部33は、抽出された形状要素データの中から最終形状要素データを特定し、特定した最終形状要素データの終点を求める(S1703)。
次に、最終形状要素データが載る形状要素データを求め(S1704)、最終形状要素データから遡って、最終形状要素データの終点が載る形状要素データまでを抽出する(S1705)。
そして、抽出した形状要素データを部品形状へと変換し(S1706)、部品形状が広がる方向に工具半径でオフセットする(S1707)。
最後に、加工領域形状生成部33は、S1707で求めたオフセットした部品形状から加工サイクルの加工領域形状を作成する(S1708)。
【符号の説明】
【0058】
10 NCプログラム
20 一加工工程認識部
30 加工サイクル生成部
31 一加工工程のNCプログラム
32 切削条件生成部
33 加工領域形状生成部
34 工具データリスト
35 切削条件テーブル
36 加工サイクル
40 NCプログラム生成部
50 NCプログラムの一部を加工サイクル指令に置き換えたNCプログラム
100 数値制御装置
図1
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