特許第5960227号(P5960227)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5960227
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】電熱アクチュエータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02N 10/00 20060101AFI20160719BHJP
   C01B 31/02 20060101ALI20160719BHJP
   H02N 11/00 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   H02N10/00
   C01B31/02 101F
   H02N11/00 Z
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-218069(P2014-218069)
(22)【出願日】2014年10月27日
(65)【公開番号】特開2016-25839(P2016-25839A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2014年10月27日
(31)【優先権主張番号】201410351924.6
(32)【優先日】2014年7月23日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】598098331
【氏名又は名称】ツィンファ ユニバーシティ
(73)【特許権者】
【識別番号】500080546
【氏名又は名称】鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100200528
【弁理士】
【氏名又は名称】水村 香穂里
(72)【発明者】
【氏名】李 慶威
(72)【発明者】
【氏名】劉 長洪
(72)【発明者】
【氏名】▲ハン▼ 守善
【審査官】 田村 耕作
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−211888(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0160933(US,A1)
【文献】 特開2011−091994(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0049552(US,A1)
【文献】 特開2009−094074(JP,A)
【文献】 特開2008−151818(JP,A)
【文献】 特開2006−325335(JP,A)
【文献】 特開2010−064925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 10/00
C01B 31/02
H02N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブペーパーを提供する第一ステップであって、前記カーボンナノチューブペーパーは、基本的に同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブを含み、前記複数のカーボンナノチューブは、分子間力で長軸方向における端部同士が接続され、前記カーボンナノチューブペーパーの密度は、0.5g/cm〜1.2g/cmである第一ステップと、
切断線に沿って前記カーボンナノチューブペーパーを切断し、パターン化されたカーボンナノチューブペーパーを形成する第二ステップと
前記パターン化されたカーボンナノチューブペーパーに少なくとも二つの電極を設置する第三ステップと、
前記パターン化されたカーボンナノチューブペーパーに柔軟性を有する高分子構造体を形成し、電熱アクチュエータを形成する第四ステップであって、少なくとも前記カーボンナノチューブペーパーの一部を前記柔軟性を有する高分子構造体の中に浸透させ、前記カーボンナノチューブペーパーと前記柔軟性を有する高分子構造体との厚さの比は1:10〜1:7であり、前記柔軟性を有する高分子構造体の熱膨張係数は前記カーボンナノチューブペーパーの熱膨張係数の10倍以上である第四ステップと、
を含み、
前記電熱アクチュエータの動作部における前記カーボンナノチューブペーパーの複数のカーボンナノチューブの延伸方向は、前記動作部における導電経路の方向に対して45°〜90°傾いていることを特徴とする電熱アクチュエータの製造方法。
【請求項2】
前記第四ステップは、
前記パターン化されたカーボンナノチューブペーパーをモールド中に設置する第一サブステップと、
前記モールド中に液体の高分子プレポリマーを注入し、前記液体の高分子プレポリマーで前記パターン化されたカーボンナノチューブペーパーを被覆する第二サブステップと、
前記液体の高分子プレポリマーを固化して、柔軟性を有する高分子構造体を形成し、前記パターン化されたカーボンナノチューブペーパー及び前記柔軟性を有する高分子構造体を前記モールドと分離する第三サブステップと、
前記パターン化されたカーボンナノチューブペーパーと重なっていない前記柔軟性を有する高分子構造体を除去する第四サブステップと、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の電熱アクチュエータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電熱アクチュエータの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アクチュエータは、電気エネルギーを機械エネルギーに変換させるデバイスである。また、アクチュエータは、電歪アクチュエータ、電磁気アクチュエータ及び電熱アクチュエータの3種類に分類することができる。従来の電熱アクチュエータは、ポリマーを主体とするフィルム状の構造体であるため、電流によって、ポリマーの温度を上昇させて体積を膨張させる。これにより、電熱アクチュエータを動作させる。従って、電熱アクチュエータの材料は、優れた導電性、柔軟性、熱安定性を有する必要がある。
【0003】
従来の技術においては、カーボンナノチューブを含む複合材料を採用して、電熱アクチュエータ用の電熱複合構造体を形成することがある。具体的には、カーボンナノチューブを含む電熱複合構造体は、柔軟性を有する高分子構造体及び該柔軟性を有する高分子構造体に分散されたカーボンナノチューブを含む。カーボンナノチューブを含む電熱複合構造体を通電させて熱を発生させ、カーボンナノチューブを含む電熱複合構造体の体積を膨張させ、湾曲させ、電熱アクチュエータを動作させる。しかし、電熱複合構造体の変形量には制限があり、しかも反応速度が遅い。また、電歪複合構造体を含む電熱アクチュエータの製造方法は複雑であり、コストも高く、大量生産に適さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】中国特許出願公開第103172044号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、前記課題を解決するために、変形量が大きく、反応速度が速く、技術が簡単であり、生産コストが低く、且つ大量生産に適した電熱アクチュエータの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電熱アクチュエータの製造方法は、カーボンナノチューブペーパーを提供する第一ステップであって、カーボンナノチューブペーパーは、基本的に同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブを含み、該複数のカーボンナノチューブは、分子間力で長軸方向における端部同士が接続され、また、カーボンナノチューブペーパーの密度は、0.5g/cm〜1.2g/cmである第一ステップと、切断線に沿ってカーボンナノチューブペーパーを切断し、パターン化されたカーボンナノチューブペーパーを形成する第二ステップであって、少なくとも切断線の一部がカーボンナノチューブペーパーにおけるカーボンナノチューブの延伸方向と成す角度が45°〜90°である第二ステップと、パターン化されたカーボンナノチューブペーパーに少なくとも二つの電極を設置する第三ステップと、パターン化されたカーボンナノチューブペーパーに柔軟を有する高分子構造体を形成し、電熱アクチュエータを形成する第四ステップであって、少なくともカーボンナノチューブペーパーの一部を柔軟性を有する高分子構造体の中に浸透させ、カーボンナノチューブペーパーと柔軟性を有する高分子構造体との厚さの比は1:10〜1:7であり、柔軟性を有する高分子構造体の熱膨張係数は、カーボンナノチューブペーパーの熱膨張係数の10倍以上である第四ステップと、を含む。
【0007】
上記電熱アクチュエータの製造方法の第四ステップは、パターン化されたカーボンナノチューブペーパーをモールド中に設置する第一サブステップと、モールド中に液体の高分子プレポリマーを注入し、この液体の高分子プレポリマーでパターン化されたカーボンナノチューブペーパーを被覆する第二サブステップと、液体の高分子プレポリマーを固化して、柔軟性を有する高分子構造体を形成し、パターン化されたカーボンナノチューブペーパー及び柔軟性を有する高分子構造体をモールドと分離する第三サブステップと、パターン化されたカーボンナノチューブペーパーと重なっていない柔軟性を有する高分子構造体を除去する第四サブステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
従来技術に比べて、本発明の電熱アクチュエータの製造方法によって形成される電熱アクチュエータは以下の有益な効果を奏する。第一に、電熱アクチュエータは積層設置されたカーボンナノチューブペーパー及び柔軟性を有する高分子構造体を含み、カーボンナノチューブペーパーの密度が大きく、湾曲する方向における引張強度は3MPaより大きく、機械強度が大きいので、電熱アクチュエータの変形量を大きくすることができる。第二に、カーボンナノチューブの熱伝導率は高く、通電された後、カーボンナノチューブは素早く昇温でき、且つ発生した熱を柔軟性を有する高分子構造体に素早く伝導でき、柔軟性を有する高分子構造体を熱膨張させ、作動させることができる。これにより、電歪複合構造体及び電熱アクチュエータの熱反応速度を高め、10秒以下にすることができる。第三に、カーボンナノチューブペーパーの導電率が1000S/m〜6000S/mである方向を制御することによって、電歪複合構造体及び電熱アクチュエータの湾曲方向を制御できる。第四に、本発明の電熱アクチュエータの製造方法は簡単であり、生産率が高くなり、コストが低くなり、大量生産に適する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例1に係る電熱複合構造体の立体構造図である。
図2】本発明の実施例1に係る電熱複合構造体の変形前と変形後の対比図である。
図3】本発明の実施例2に係る電熱アクチュエータの構造を示す斜視図である。
図4】本発明の実施例3に係る電熱アクチュエータの構造を示す図である。
図5】本発明の実施例3に係る他の形状を有する電熱アクチュエータの構造を示す図である。
図6】本発明の実施例3に係る複数の電極を有する電熱アクチュエータの構造を示す図である。
図7】本発明の実施例4に係る電熱アクチュエータの構造を示す図である。
図8】本発明の実施例5に係る電熱アクチュエータの構造を示す図である。
図9】本発明の実施例5に係る他の形状を有する電熱アクチュエータの構造を示す図である。
図10】本発明の実施例5に係る複数の導電経路を有する電熱アクチュエータの構造を示す図である。
図11】本発明の実施例6に係る電熱アクチュエータの製造方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明について説明する。また、同じ部材を同じ符号で表示する。
【0011】
(実施例1)
図1を参照すると、本実施例は電熱複合構造体100を提供する。電熱複合構造体100は、柔軟性を有する高分子構造体140及びカーボンナノチューブペーパー120を含む。カーボンナノチューブペーパー120は、柔軟性を有する高分子構造体140の一つの表面に積層されて設置されている。カーボンナノチューブペーパー120の少なくとも一部は、柔軟性を有する高分子構造体140の中に浸透している。柔軟性を有する高分子構造体140の熱膨張係数は、カーボンナノチューブペーパー120の熱膨張係数の10倍以上であり、好ましくは、高分子構造体140の熱膨張係数は、カーボンナノチューブペーパー120の熱膨張係数の100倍以上である。
【0012】
カーボンナノチューブペーパー120の厚さは30μm〜50μmである。カーボンナノチューブペーパー120の表面に平行なある一つの方向X(図示せず)におけるカーボンナノチューブペーパー120の導電率は、1000S/m〜6000S/mである。カーボンナノチューブペーパー120の導電率が大き過ぎる場合、例えば、カーボンナノチューブペーパー120の導電率が6000S/mより大きい場合、カーボンナノチューブペーパー120は小さい抵抗を有する。これにより、特定の電圧(例えば、10V)をカーボンナノチューブペーパー120に印加すると、カーボンナノチューブペーパー120は十分な熱を発生させることができず、且つ柔軟性を有する高分子構造体140を容易に熱膨張、変形させることができない。また、カーボンナノチューブペーパー120の導電率が小さ過ぎる場合、例えば、カーボンナノチューブペーパー120の導電率が1000S/mより小さい場合、カーボンナノチューブペーパー120は大きい抵抗を有する。これにより、特定の電圧(例えば、10V)をカーボンナノチューブペーパー120に印加すると、電熱複合構造体100の反応速度が遅くなる。好ましくは、カーボンナノチューブペーパー120の表面に平行なX方向におけるカーボンナノチューブペーパー120の導電率は、2000S/m〜3500S/mである。カーボンナノチューブペーパー120の密度が0.5g/cm以上であるので、カーボンナノチューブペーパー120の引張強度は3MPaより大きくなる。カーボンナノチューブペーパー120の密度が小さ過ぎる場合、カーボンナノチューブペーパー120の機械強度は弱くなり、電熱複合構造体100を素早く変形させる過程において、カーボンナノチューブペーパー120が破裂し易くなる。従って、好ましくは、カーボンナノチューブペーパー120の密度は0.5g/cm〜1.2g/cmである。
【0013】
カーボンナノチューブペーパー120は、基本的に同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブを含む。好ましくは、カーボンナノチューブペーパー120は、基本的に同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブのみからなる。該複数のカーボンナノチューブは、分子間力で長軸方向における端部同士が端と端で接続され、また、カーボンナノチューブペーパー120の表面に対して平行である。カーボンナノチューブペーパー120におけるカーボンナノチューブの延伸方向は、方向X(図示せず)と角度を成し、該角度は45°〜90°である。これにより、カーボンナノチューブペーパー120の方向Xでの導電率を1000S/m〜6000S/mにすることができる。カーボンナノチューブペーパー120におけるカーボンナノチューブの延伸方向がX方向と成す角度は80°〜90°であるのが好ましい。
【0014】
本実施例において、カーボンナノチューブペーパー120は長方形の平面構造体であり、その長さは6cmであり、幅は3cmであり、厚さは30μmであり、引張強度は約4MPaあり、密度は1.0g/cmである。カーボンナノチューブペーパー120におけるカーボンナノチューブの延伸方向が方向Xと成す角度は90°であり、また、複数のカーボンナノチューブは、分子間力で長軸方向における端部同士が端と端で接続されている。
【0015】
柔軟性を有する高分子構造体140は薄片構造体であり、その厚さは270μm〜450μmである。柔軟性を有する高分子構造体140の厚さが厚過ぎる場合、柔軟性を有する高分子構造体140自体が大きな機械性能を有するので、熱を柔軟性を有する高分子構造体140の全体に素早く伝導することに不利であり、且つ変形が困難である。柔軟性を有する高分子構造体140の厚さが薄過ぎる場合、熱膨張量が材料の体積及び熱膨張係数と正比例するので、電熱複合構造体100の変形量が減少する。柔軟性を有する高分子構造体140の形状は、カーボンナノチューブペーパー120の形状と同じであり、重ねることができる。柔軟性を有する高分子構造体140の材料は、優れた形状記憶性を有し、且つ耐熱性である。ここで、形状記憶性とは、特定の温度まで上昇すると、柔軟性を有する高分子構造体140の材料が変形し、温度が初期の温度まで下がると、柔軟性を有する高分子構造体140の材料の形状も初期の形状に戻ることを指す。
【0016】
柔軟性を有する高分子構造体140の材料は、シリコーンゴム、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリアクリロニトリル、ポリアニリンなどの一種又は数種の混合物である。本実施例において、柔軟性を有する高分子構造体140はシリコーンゴムからなる薄膜である。該柔軟性の高分子構造体140の形状は長方形であり、その厚さは300μmであり、熱膨張係数は3.1×10−4/Kである。
【0017】
更に、電熱複合構造体100を素早く変形させるために、好ましくは、カーボンナノチューブペーパー120と柔軟性を有する高分子構造体140との厚さの比は1:10〜1:7である。カーボンナノチューブペーパー120と柔軟性を有する高分子構造体140との厚さの比が小さ過ぎる場合、例えば、カーボンナノチューブペーパー120と柔軟性を有する高分子構造体140との厚さの比が1:10より小さい場合、柔軟性を有する高分子構造体140が熱を受けて温度が上昇する速度が遅くなるため、電熱複合構造体100の反応速度が遅くなる。カーボンナノチューブペーパー120と柔軟性を有する高分子構造体140との厚さの比が大き過ぎる場合、例えば、カーボンナノチューブペーパー120と柔軟性を有する高分子構造体140との厚さの比が1:7より大きい場合、熱膨張量が材料の体積及び熱膨張係数と正比例するので、柔軟性を有する高分子構造体140とカーボンナノチューブペーパー120との熱膨張量の差が小さくなり、電熱複合構造体100の変形量が減少する。本実施例において、カーボンナノチューブペーパー120と柔軟性を有する高分子構造体140との厚さの比は1:9である。
【0018】
電熱複合構造体100が作動する時、電圧を電熱複合構造体100におけるカーボンナノチューブペーパー120の両端に印加すると、電流がカーボンナノチューブペーパー120におけるカーボンナノチューブによって形成された導電ネットに流れる。カーボンナノチューブペーパー120及び柔軟性を有する高分子構造体140の各パラメーターを総合的に最適化するので、電熱複合構造体100は比較的速い熱反応速度を有し、この時電熱複合構造体100の熱反応速度は10秒以下である。即ち、電熱複合構造体100を180°まで湾曲させる時間は10秒以下である。また、カーボンナノチューブは、機械強度及び耐湾曲性に優れているので、電熱複合構造体100も優れた機械強度を有し、一万回以上繰り返し湾曲することができる。
【0019】
図2を参照すると、電源からの電圧を導線によって電熱複合構造体100の両端に20Vで印加し、電熱複合構造体100に0.2Aの電流が流れ、8秒後に、電熱複合構造体100がカーボンナノチューブペーパー120側に向かって180°湾曲する。ここで、電熱複合構造体100のカーボンナノチューブペーパー120側に向かって180°湾曲することは、電熱複合構造体100のカーボンナノチューブ側が直線型からU字型に湾曲することを指す。
【0020】
(実施例2)
図3を参照すると、本実施例2は電熱アクチュエータ10を提供する。電熱アクチュエータ10は動作部102と、二つの電極112と、を含む。動作部102は、電熱複合構造体100を直接切断して形成されたストリップ状の構造体である。動作部102の少なくとも一部は方向X(図示せず)に沿って延伸する。動作部102における複数のカーボンナノチューブの延伸方向は、動作部102の長手方向と基本的に垂直であり、また、複数のカーボンナノチューブはその延伸方向において、分子間力で端と端で接続されているので、動作部102の長手方向における導電率は約3000S/mであり、動作部102の長手方向に対して垂直方向における導電率は約30000S/mである。二つの電極112の延伸方向は動作部102の長手方向と基本的に垂直であり、且つ動作部102の対向する両端に間隔をあけて平行に設置されて、動作部102におけるカーボンナノチューブペーパー120と電気的に接続される。
【0021】
二つの電極112の材料は導電材料であり、例えば、金属、カーボンナノチューブ、導電銀ペーストの何れか一種であるが、二つの電極112を通電できればその他の導電材料でも良い。また、動作部102の湾曲動作は、二つの電極112の導電性に影響を与えない、或いは影響を与えてもごく僅かであることが好ましい。この際、二つの電極112の材料として、導電性且つ柔軟性を有する材料を採用してもよく、例えば、カーボンナノチューブ或いは導電銀ペーストを採用してもよい。更に、電熱アクチュエータ10は複数の電極を備えてもよく、必要に応じて設置できる。本実施例において、二つの電極112は銅片からなり、該銅片は動作部102の対向する両端に設置され、且つ動作部102におけるカーボンナノチューブペーパー120と電気的に接続される。
【0022】
電熱アクチュエータ10が作動する際、導線によって電源電圧を二つの電極112に印加すると、電流が動作部102の長手方向に沿って、動作部102の一端から該一端と対向する他端まで流れ、動作部102を加熱する。動作部102の長手方向における導電率は約3000S/mであるので、動作部102を加熱させる際、動作部102は十分な熱を発生させることができ、且つ速い反応速度を得ることができる。これにより、電熱アクチュエータ10を動作部102の長手方向に沿って、素早く湾曲でき、動作させることができる。
【0023】
(実施例3)
図4を参照すると、本発明の実施例3は電熱アクチュエータ20を提供する。電熱アクチュエータ20は、二つの動作部202と、二つの電極212と、を含む。各動作部202は、電熱複合構造体100を直接切断して形成されたストリップ状の構造体である。二つの動作部202は相互に電気的に接続されて、L字状の導電経路を形成する。二つの電極212は、L字状の導電経路の両端にそれぞれ設置され、且つ二つの動作部202と電気的に接続される。二つの動作部202は、基本的に同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブを含む。また、複数のカーボンナノチューブはその延伸方向において、分子間力で端と端で接続されている。二つの動作部202におけるカーボンナノチューブの延伸方向は、例えば、電流方向と角度45°を成す。これにより、二つの動作部202におけるカーボンナノチューブペーパーの電流方向での導電率は1000S/m〜6000S/mである。これにより、電熱アクチュエータ20に電流が流れると、各動作部202は十分な熱を発生させることができ、各動作部202を電流方向に沿って湾曲させることができる。
【0024】
また、複数の動作部202が相互に電気的に接続され、且つ各動作部202におけるカーボンナノチューブペーパーの電流方向における導電率が1000S/m〜6000S/mであることを保証できれば、各電熱アクチュエータ20が二つの動作部202を含むこと、及び電熱アクチュエータ20の導電経路の形状がL字状であることに限定されず、電熱アクチュエータ20は複数の動作部202を含んでもよく、且つ電熱アクチュエータ20の導電経路の形状は他の形状でもよい。更に、電熱アクチュエータ20の導電経路の形状を制御することによって、電熱アクチュエータ20を湾曲作動させて、異なる機能を実現することができる。
【0025】
図5を参照すると、一つの例として、電熱アクチュエータは、複数の動作部202と、二つの電極212と、を含む。複数の動作部202は相互に電気的に接続されて、導電経路が形成される。複数の動作部202が相互に電気的に接続されて形成された導電経路は、二つの端部を有する。二つの電極212は導電経路の両端にそれぞれ設置され、且つ動作部202と電気的に接続され、導電経路に駆動電流を印加する。複数の動作部202は、基本的に同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブを含み、複数のカーボンナノチューブはその延伸方向において分子間力で端と端で接続されている。
【0026】
もう一つの例として、電熱アクチュエータは、複数の動作部202と、複数の電極212と、を含む。この時、複数の動作部202において、少なくとも二つの動作部202が電気的に接続され、少なくとも二つの導電経路が形成される。複数の電極212は、少なくとも二つの導電経路を並列接続させる。図6を参照すると、電熱アクチュエータは、二つの動作部202と、三つの電極212と、を含む。二つの動作部202はT字状の導電経路を形成する。一つの動作部202の端部は他の動作部202と接触して設置される。これにより、二つの動作部202の三つの端部を露出させる。三つの電極212は、間隔をあけて二つの動作部202の露出する三つの端部にそれぞれ設置されている。三つの電極212が外部電路に電気的に接続されると、二つの動作部202は並列接続された二つの導電経路を形成する。
【0027】
前記少なくとも二つの動作部202は、電熱複合構造体100を直接切断して形成された一体成形の構造体であり、或いは導電ゴムによって接着されて形成された構造体である。好ましくは、前記少なくとも二つの動作部202は一体成形の構造体である。更に、好ましくは、前記少なくとも二つの動作部202における柔軟性を有する高分子構造体140は一体構造体であり、前記少なくとも二つの動作部202におけるカーボンナノチューブペーパー120も一体構造体である。
【0028】
各動作部202におけるカーボンナノチューブペーパーの電流方向での導電率が1000S/m〜6000S/mであることを保証できれば、前記少なくとも二つの動作部202における複数のカーボンナノチューブの延伸方向が電流方向と成す角度は45°に限定されない。好ましくは、動作部202における複数のカーボンナノチューブの延伸方向が電流方向と成す角度は45°〜90°である。更に、動作部202における複数のカーボンナノチューブの延伸方向が電流方向と成す角度は80°〜90°であることも好ましくなり得る。
【0029】
(実施例4)
図7を参照すると、本実施は電熱アクチュエータ30を提供する。電熱アクチュエータ30は、一つのストリップ状動作部302と、二つの電極312と、を含む。ストリップ状動作部302は、第一方向及び第二方向に沿って延伸して、
【数1】
型の導電経路を形成する。第一方向は第二方向に対して垂直である。ストリップ状動作部302は、電熱複合構造体100を直接切断して形成できる。二つの電極312は、ストリップ状動作部302の両端にそれぞれ設置され、且つストリップ状動作部302と電気的に接続されて、
【数2】
型の導電経路に電流を印加することに用いられる。ストリップ状動作部302は、基本的に同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブを含み、この複数のカーボンナノチューブはその延伸方向において分子間力で端と端で接続されている。ストリップ状動作部302における複数のカーボンナノチューブの延伸方向は、例えば、第一方向及び第二方向と角度45°を成す。これにより、ストリップ状動作部302におけるカーボンナノチューブペーパーの第一方向及び第二方向での導電率は1000S/m〜6000S/mである。従って、電熱アクチュエータ30に電流が流れると、第一方向に沿って延伸するストリップ状動作部302は第一方向に沿って湾曲でき、第二方向に沿って延伸するストリップ状動作部302は第二方向に沿って湾曲できる。
【0030】
ストリップ状動作部302におけるカーボンナノチューブペーパーの第一方向及び第二方向での導電率が1000S/m〜6000S/mであることを保証できれば、ストリップ状動作部302における複数のカーボンナノチューブの延伸方向は、第一方向及び第二方向と成す角度は45°に限定されない。好ましくは、ストリップ状動作部302における複数のカーボンナノチューブの延伸方向が第一方向及び第二方向と成す角度は45°〜90°である。更に、ストリップ状動作部302における複数のカーボンナノチューブの延伸方向が第一方向及び第二方向と成す角度は80°〜90°である。
【0031】
ストリップ状動作部302が第一方向及び第二方向に沿って延伸して形成する導電経路は、
【数3】
型に限定されず、必要に応じて他の形状に形成してもよい。
【0032】
(実施例5)
図8を参照すると、本実施は電熱アクチュエータ40を提供する。電熱アクチュエータ40は二つの動作部402と、一つの連接部404と、二つの電極412と、を含む。二つの動作部402は間隔をあけて平行に設置され、且つ連接部404によって互いに電気的に接続されて、コ字型の導電経路が形成される。更に、コ字型の導電経路は、電熱複合構造体100を直接切断して形成された一体構造体でもよい。二つの電極412は、二つの動作部402における連接部404と連接されない端部に設置され、コ字型の導電経路に駆動電流を入力する。
【0033】
各動作部402は、基本的に同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブを含み、この複数のカーボンナノチューブはその延伸方向において分子間力で端と端で接続されている。各動作部402における複数のカーボンナノチューブの延伸方向は、例えば、各動作部402における電流方向と角度90°を成す。これにより、二つの動作部402におけるカーボンナノチューブペーパーの電流方向における導電率は約1000S/m〜6000S/mである。連接部404は基本的に同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブを含み、この複数のカーボンナノチューブはその延伸方向において分子間力で端と端で接続されている。連接部404における複数のカーボンナノチューブの延伸方向は、例えば、連接部404における電流方向と角度0°を成す。これにより、連接部404におけるカーボンナノチューブペーパーの電流方向における導電率は6000S/mより大きい。また、二つの動作部402における複数のカーボンナノチューブの延伸方向は、連接部404における複数のカーボンナノチューブの延伸方向と同じでも良い。
【0034】
電熱アクチュエータ40において、連接部404は、二つの動作部402を電気的に接続させることに用いられる。連接部404は、カーボンナノチューブペーパーの電流方向における導電率が6000S/m以上であるため、優れた導電性能をもち、電熱アクチュエータ40は、比較的速い反応速度をもつ。また同時に、電熱アクチュエータ40に電流が流れると、連接部404は、抵抗が小さいので湾曲しない。つまり、電熱アクチュエータ40の作動方向は、二つの動作部402の作動方向に関係し、連接部404には関係しない。電極412によって電熱アクチュエータ40に電流を印加する際、電極412が設置された動作部402の一端が固定されるので、連接部404と連接された動作部402の一端を、電極412が設置された動作部402の一端に向けて湾曲させて、コ字型の導電経路を有する電熱アクチュエータ40を縦方向に作動させる。
【0035】
各動作部402におけるカーボンナノチューブペーパーの電流方向での導電率が1000S/m〜6000S/mであることを保証できれば、各動作部402における複数のカーボンナノチューブの延伸方向が動作部402の電流方向と成す角度は本実施例の90°に限定されない。好ましくは、各動作部402における複数のカーボンナノチューブの延伸方向が動作部402の電流方向と成す角度は45°〜90°である。更に、好ましくは、動作部402における複数のカーボンナノチューブの延伸方向が動作部402の電流方向と成す角度は80°〜90°である。
【0036】
また、連接部404におけるカーボンナノチューブペーパーの電流方向での導電率が6000S/mより大きいことを保証できれば、連接部404における複数のカーボンナノチューブの延伸方向が連接部404における電流方向と成す角度は本実施例の0°に限定されない。好ましくは、連接部404における複数のカーボンナノチューブの延伸方向が連接部404における電流方向と成す角度は0°〜45°である。更に、好ましくは、連接部404における複数のカーボンナノチューブの延伸方向が連接部404における電流方向と成す角度は0°〜10°である。
【0037】
少なくとも二つの動作部402が少なくも一つの連接部404によって相互に電気的に接続され、且つ各動作部402におけるカーボンナノチューブペーパーの電流方向での導電率が1000S/m〜6000S/mであり、各連接部404におけるカーボンナノチューブペーパーの電流方向での導電率が6000S/mより大きいことを保証できれば、電熱アクチュエータ40は、二つの動作部402及び一つの連接部を含むことに限定されず、複数の動作部402及び複数の連接部404を含むことができる。また、電熱アクチュエータ40の形状はコ字型の形状に制限されず、必要に応じて他の形状に形成されてもよい。
【0038】
図9を参照すると、一つの例において、電熱アクチュエータ40は、複数の動作部402と、複数の連接部404と、二つの電極412と、を含む。複数の動作部402は同じ方向に沿って延伸する。隣接する二つの動作部402は連接部404によって電気的に接続され、或いは、隣接する二つの動作部402は連接部404によって電極412と電気的に接続される。複数の動作部402及び複数の連接部404は共に導電経路を形成する。導電経路は第一方向及び第二方向を沿って延伸し、輪郭が略T字型の形状を呈する。第一方向は第二方向と垂直である。更に、輪郭が略T字型である導電経路は、電熱複合構造体100を直接切断して形成された一体構造体でもよい。二つの電極412は、輪郭が略T字型である導電経路の両端にそれぞれ設置され、導電経路に電流を印加する。各動作部402におけるカーボンナノチューブペーパーは基本的に同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブを含み、この複数のカーボンナノチューブはその延伸方向において分子間力で端と端で接続されている。各動作部402における複数のカーボンナノチューブの延伸方向が動作部402での電流方向と成す角度は、例えば、90°である。各連接部404におけるカーボンナノチューブペーパーは基本的に同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブを含み、この複数のカーボンナノチューブはその延伸方向において分子間力で端と端で接続されている。各連接部404における複数のカーボンナノチューブの延伸方向が連接部404での電流方向と成す角度は、例えば、0°である。動作部402における複数のカーボンナノチューブの延伸方向は、連接部404における複数のカーボンナノチューブの延伸方向と同じである。電極412によって、輪郭が略T字型である導電経路を有する電熱アクチュエータ40に電流を印加すると、輪郭が略T字型である導電経路の“T”の“一”の部分の両端を同時に“一”の部分の中央部まで湾曲させる。つまり、電熱アクチュエータ40を横方向に湾曲させて作動させることができる。複数の動作部402及び複数の連接部404は相互に連接して異なる形状の導電経路を有する電熱アクチュエータ40を形成でき、電熱アクチュエータ40を湾曲させて作動させて、異なる機能を実現することができる。
【0039】
また、少なくとも二つの動作部402及び少なくとも一つの連接部404が一つの導電経路を形成することに制限されず、必要に応じて複数の導電経路を形成することができる。この際、複数の導電経路には複数の電極412が設置され、複数の導電経路が相互に並列接続され、或いは相互に直列接続される。図10を参照すると、一つの例において、電熱アクチュエータ40は、複数の動作部402及び複数の連接部404が相互に連接されて形成された二つの導電経路を含む。二つの導電経路には、間隔をあけて三つの電極412が設置されており、該三つの電極412によって、二つの導電経路に同時に電流を入力でき、二つの導電経路を並列接続させる。
【0040】
少なくとも二つの動作部402は第一方向に沿って延伸し、少なくとも一つの連接部404は第二方向に沿って延伸し、且つ少なくとも二つの動作部402と少なくとも一つの連接部404とが電気的に接続されることによって、少なくとも一つの導電経路を形成することができる。各動作部402の第一方向における導電率は1000S/m〜6000S/mであり、各連接部404の第二方向における導電率は6000S/mより大きい。各動作部402における複数のカーボンナノチューブの延伸方向が第一方向と成す角度は45°〜90°である。各連接部404における複数のカーボンナノチューブの延伸方向が第二方向と成す角度は0°〜45°である。
【0041】
(実施例6)
図11を参照すると、本実施例は電熱アクチュエータの製造方法を提供する。電熱アクチュエータの製造方法は、カーボンナノチューブペーパーを提供するステップであって、該カーボンナノチューブペーパーは基本的に同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブを含み、複数のカーボンナノチューブの延伸する方向において、分子間力で長軸方向における端部同士が端と端で接続され、また、カーボンナノチューブペーパーの密度は0.5g/cm〜1.2g/cmであるステップ(S1)と、切断線に沿ってカーボンナノチューブペーパーを切断し、パターン化されたカーボンナノチューブペーパーを形成するステップであって、少なくとも切断線の一部がカーボンナノチューブペーパーにおける複数のカーボンナノチューブの延伸方向と成す角度が45°〜90°であるステップ(S2)と、パターン化されたカーボンナノチューブペーパーに少なくとも二つの電極を設置するステップ(S3)と、パターン化されたカーボンナノチューブペーパーに柔軟性を有する高分子構造体を形成し、電熱アクチュエータを形成するステップであって、少なくともカーボンナノチューブペーパーの一部を柔軟性を有する高分子構造体の中に浸透させ、カーボンナノチューブペーパーと柔軟性を有する高分子構造体との厚さの比は1:10〜1:7であり、また、柔軟性を有する高分子構造体の熱膨張係数は、カーボンナノチューブペーパーの熱膨張係数の10倍以上であるステップ(S4)と、を含む。
【0042】
ステップ(S1)において、カーボンナノチューブペーパーの製造方法は、ローラー及び押し出し装置を提供するステップであって、押し出し装置は、ローラーに対応する押し出し面を有し、該押し出し面は、ローラーの軸線と平行するステップ(S11)と、カーボンナノチューブアレイを提供し、カーボンナノチューブアレイからカーボンナノチューブフィルム構造体を引き出し、カーボンナノチューブアレイから引き出したカーボンナノチューブフィルム構造体をローラーに固定させるステップ(S12)と、ローラーを転がして、カーボンナノチューブフィルム構造体をローラーに巻き、ローラーを転がす工程において、押し出し装置の押し出し面がローラーに巻かれたカーボンナノチューブフィルム構造体を押し出すステップ(S13)と、カーボンナノチューブフィルム構造体を所望の厚さまでローラーを転がして、カーボンナノチューブペーパーを獲得するステップ(S14)と、を含む。また、押し出すカーボンナノチューブフィルムの層数を制御することによって、カーボンナノチューブペーパーの厚さ及び強度を制御できる。前記カーボンナノチューブペーパーの製造方法は特許文献1に掲示されている。
【0043】
本実施例において、カーボンナノチューブペーパーの厚さは30μm〜50μmである。カーボンナノチューブペーパーにおける複数のカーボンナノチューブの延伸方向での導電率は約3000S/mであり、カーボンナノチューブペーパーにおける複数のカーボンナノチューブの延伸方向と垂直である方向での導電率は約3000S/mである。
【0044】
ステップ(S2)において、切断線を閉回路として、パターン化されたカーボンナノチューブペーパーを導電経路に形成させることができる。また、カーボンナノチューブペーパーを切断する前に、必要に応じて、カーボンナノチューブペーパーのパターンをデザインできる。例えば、グラフィックスソフトウェアによって、カーボンナノチューブペーパーのパターンをU字型、T字型、十字型、他の規則的或いは不規則なパターンにデザインできる。また、カーボンナノチューブペーパーのパターンをデザインすることによって、パターン化されたカーボンナノチューブペーパーを複雑に作動させて、異なる機能を実現できる。例えば、カーボンナノチューブペーパーのパターンを指の形状にデザインする。これにより、パターン化されたカーボンナノチューブペーパーは簡単な手の動作を模倣できる。
【0045】
切断線は第一方向及び第二方向に沿って延伸しており、第一方向は第二方向に対して垂直である。一つの例において、カーボンナノチューブペーパーにおける複数のカーボンナノチューブの延伸方向が、第一方向及び第二方向と成す角度は45°である。これにより、パターン化されたカーボンナノチューブペーパーの第一方向及び第二方向での導電率は1000S/m〜6000S/mである。もう一つの例において、カーボンナノチューブペーパーにおける複数のカーボンナノチューブの延伸方向が第一方向と成す角度は90°であり、カーボンナノチューブペーパーにおける複数のカーボンナノチューブの延伸方向が第二方向と成す角度は0°である。これにより、パターン化されたカーボンナノチューブペーパーの第一方向での導電率は1000S/m〜6000S/mであり、パターン化されたカーボンナノチューブペーパーの第二方向での導電率は6000S/mより大きい。
【0046】
レーザーによって、切断線に沿ってパターン化されたカーボンナノチューブペーパーを切断する。この方法は、カーボンナノチューブペーパーを精確に切断でき、且つ加工効率が高いため、パターン化されたカーボンナノチューブペーパーを大量生産できる。
【0047】
ステップ(S3)において、導電接着剤によって、少なくとも二つの電極をパターン化されたカーボンナノチューブペーパーに設置し、少なくとも二つの電極によってパターン化されたカーボンナノチューブペーパーに電流を印加することができるようにする。導電接着剤は、少なくとも二つの電極及びパターン化されたカーボンナノチューブペーパーを電気的に接続させる。好ましくは、銀系導電性接着剤、金系導電性接着剤、銅系導電性接着剤、炭素系導電性接着剤の何れか一種又は多種である。本実施例において、導電接着剤は導電性銀ペーストである。
【0048】
ステップ(S4)は、パターン化されたカーボンナノチューブペーパーをモールドの中に設置するステップ(S41)と、モールドの中に液体である高分子プレポリマーを注入して、この液体である高分子プレポリマーがパターン化されたカーボンナノチューブペーパーを被覆するステップ(S42)と、液体である高分子プレポリマーを固化し、柔軟性を有する高分子構造体を形成し、パターン化されたカーボンナノチューブペーパー及び柔軟性を有する高分子構造体をモールドと分離するステップ(S43)と、パターン化されたカーボンナノチューブペーパーと重なっていない柔軟性を有する高分子構造体を除去するステップ(S44)と、含む。
【0049】
ステップ(S41)を実施する前に、モールドの内表面に離型剤を塗ってもよい。これにより、ステップ(S43)において、パターン化されたカーボンナノチューブペーパー及び柔軟性を有する高分子構造体をモールドから容易に分離できる。
【0050】
ステップ(S42)において、高分子プレポリマーは、シリコーンゴムプレポリマー、ポリメタクリル酸メチル樹脂プレポリマー、ポリウレタンプレポリマー、エポキシ樹脂、ポリアクリル酸エチルプレポリマー、ポリアクリル酸ブチルプレポリマー、ポリスチレンプレポリマー、ポリブタジエンプレポリマー、ポリアクリロニトリルプレポリマー、ポリアニリンプレポリマーなどの一種又は数種の混合物である。本実施例において、柔軟性を有する高分子プレポリマーは、シリコーンゴムプレポリマーである。
【0051】
モールドにおいて、高分子プレポリマーは、モールドと接触しない側のパターン化されたカーボンナノチューブペーパーを完全に被覆する。パターン化されたカーボンナノチューブペーパーは、複数のカーボンナノチューブが分子間力で結合されて形成された構造体であるので、複数のカーボンナノチューブの間には複数の間隙がある。液体の高分子プレポリマーは、この複数のカーボンナノチューブの間の間隙から、パターン化されたカーボンナノチューブペーパーに浸透できる。これにより、液体である高分子プレポリマーが固化された後、パターン化されたカーボンナノチューブペーパーは、柔軟性を有する高分子構造体と緊密に結合することができる。従って、電熱アクチュエータが繰り返して使用されても、パターン化されたカーボンナノチューブペーパーと柔軟性を有する高分子構造体との結合性は影響を受けない。
【0052】
更に、液体である高分子プレポリマーを固化する前に、液体である高分子プレポリマーに対して脱泡処理を行ってもよい。脱泡の方法は真空脱泡でもよい。
【0053】
ステップ(S43)において、液体である高分子プレポリマーを固化する方法は加熱固化方法でもよい。液体である高分子プレポリマーを加熱固化した後、更に、柔軟性を有する高分子構造体を冷却するステップを設けてもよい。
【0054】
柔軟性を有する高分子構造体の厚さは270μm〜450μmである。柔軟性を有する高分子構造体の厚さが厚過ぎる場合、柔軟性を有する高分子構造体自身が大きな機械性能を有するので、熱が柔軟性を有する高分子構造体の全体に素早く伝導することに不利であり、且つ変形し難い。柔軟性を有する高分子構造体の厚さが薄過ぎる場合、熱膨張量が、材料の体積及び熱膨張係数と正比例するので、電熱複合構造体100の変形量が減少する。
【0055】
電熱複合構造体100を素早く変形でき、且つその変形量を大きくさせるためには、好ましくは、カーボンナノチューブペーパーと柔軟性を有する高分子構造体との厚さの比は1:10〜1:7である。本実施例において、カーボンナノチューブペーパーと柔軟性を有する高分子構造体との厚さの比は1:9である。
【0056】
ステップ(S44)において、パターン化されたカーボンナノチューブペーパーと重なっていない柔軟性を有する高分子構造体の部分を除去し、柔軟性を有する高分子構造体の形状をパターン化されたカーボンナノチューブペーパーの形状と同じにして、電熱アクチュエータを獲得する。
【0057】
本実施例の電熱アクチュエータの製造方法は以下の効果を有する。電熱アクチュエータにおけるカーボンナノチューブペーパーの導電経路は、アクティブに、複雑に、及び機能的にデザインでき、カーボンナノチューブペーパーをパターン化して切断でき、また、切断して形成されたパターン化されたカーボンナノチューブペーパーに電極を設置して、複雑な電熱アクチュエータを形成できるため、異なる機能を実現できる。また、本実施例の電熱アクチュエータの製造方法は、簡単であり、生産率が高く、コストが低いため、電熱アクチュエータのデザイン及び大量生産に適する。
【0058】
電熱複合構造体及び電熱アクチュエータは、生体工学の分野、例えば、人工筋肉、ロボット、義肢、花草魚虫等の模倣に利用できる。また、多機能的な作動器に関する分野、例えば、マクロレンズのピント合わせ、液体・気体などの流れを調節する弁、動態的な点字にも利用できる。
【符号の説明】
【0059】
10、20、30、40 電熱アクチュエータ
100 電熱複合構造体
120 カーボンナノチューブペーパー
140 柔軟性を有する高分子構造体
102、202、302、402 動作部
404 連接部
112、212、312、412 電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11