特許第5960239号(P5960239)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5960239
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】解剖学的管を連結するための人工器官
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/06 20130101AFI20160719BHJP
【FI】
   A61F2/06
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-500439(P2014-500439)
(86)(22)【出願日】2012年3月5日
(65)【公表番号】特表2014-515653(P2014-515653A)
(43)【公表日】2014年7月3日
(86)【国際出願番号】FR2012050449
(87)【国際公開番号】WO2012127145
(87)【国際公開日】20120927
【審査請求日】2015年1月9日
(31)【優先権主張番号】1152364
(32)【優先日】2011年3月22日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】512260750
【氏名又は名称】カルマ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】ダ クリュ ルロ、ピエール
【審査官】 川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−160081(JP,A)
【文献】 特表平10−508212(JP,A)
【文献】 特表2005−536243(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0095210(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0054405(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/06
A61B 17/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの個々の管状要素(2)および前記個々の要素を互いに連結する機械的手段(4)を備えた、解剖学的管(C)を連結するための管状人工器官であって、
前記個々の管状要素(2)が、その軸方向に延びる波形に形成されかつ可撓性を有する外面(S)を備え、
前記機械的連結手段(4)が密封され、かつ、
− それぞれが1個の管状要素(2)の自由端(5L)に固定される2つの環状接合部(6)と、
− 前記2つの環状接合部(6)の一方によって保持され、前記管状人工器官に形成されている開口(3)の周りの前記2つの環状接合部(6)の間に挿入されるように設計されている少なくとも1つのシール(8)と、
− それぞれ管状要素(2)が通される第1の固定リング(9A)および第2の固定リング(9B)であって、互いに協働して一方が他方に対して1つに保持され、前記2つの環状接合部(6)の間で前記シール(8)が圧迫されるように設計されている、第1の固定リング(9A)および第2の固定リング(9B)と、
を備えることを特徴とする管状人工器官。
【請求項2】
− 前記第1の固定リング(9A)が、内側フランジ(10)を備え、前記環状接合部(6)の一方が、前記内側フランジ(10)に対して強く押圧されるように設計され、
− 前記第2の固定リング(9B)が、突出環状カラー(12)を備え、前記突出環状カラー(12)の端部で前記環状接合部(6)の他方が確実に連結され、かつ
− 前記突出環状カラー(12)が、前記2つの環状接合部(6)が互いに接触するために、前記第1のリング(9A)内に挿入されるのに適している請求項1に記載の人工器官。
【請求項3】
− 前記第1の固定リング(9A)が、径方向内側突出部(11)を備え、かつ、
− 前記第2の固定リング(9B)が、前記突出環状カラー(12)の側壁に形成された凹部(13)を備え、前記凹部(13)が、前記第1のリング(9A)の対応する径方向突出部(11)を収容するのに適している請求項2に記載の人工器官。
【請求項4】
− 前記径方向突出部(11)のそれぞれが、スタッドの形態であり、
− 前記凹部(13)のそれぞれが、
− 径方向突出部(11)が挿入される軸方向ノッチ(13A)と、
− 特定の角度セクタにわたって延在するロック用傾斜面(13B)であって、その入口が関連する軸方向ノッチ(13A)によって形成されている、ロック用傾斜面(13B)と、を備えている請求項3に記載の人工器官。
【請求項5】
前記ロック用傾斜面(13B)が、螺旋状であり、かつロック用ノッチ(13C)で終端している請求項4に記載の人工器官。
【請求項6】
前記径方向突出部(11)および前記対応する凹部(13)が、等角度で分布している請求項3〜5のいずれか1項に記載の人工器官。
【請求項7】
前記環状接合部(6)を互いに対して確実に保持するための補助固定手段(14)をさらに備えている請求項1〜6のいずれか1項に記載の人工器官。
【請求項8】
前記補助固定手段(14)が、前記第1の固定リング(9A)に確実に連結される少なくとも1つの固定アイレット(14A)、および前記第2の固定リング(9B)の前記側壁に形成された少なくとも1つの対応する固定孔(14B)を備えている請求項7に記載の人工器官。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解剖学的管を連結するための人工器官に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に係る人工器官は、同じ解剖学的管(例えば、血管)の2つの部分を連結するのに特に適しているが、この人工器官は、解剖学的管を臓器あるいは人工装置(例えば人工心臓あるいは自補助人工心臓)に連結するために使用することができます。
【0003】
さらに、いくつかの疾病あるいは医学的異常により血管(例えば動脈または静脈)の一部を人工器官に置換することを求められることは知られている。このタイプの人工器官は、例えば、その全長にわたって解剖学的管を形成する、概ね円筒形の一体型管状本体を含む。
【0004】
上記のタイプの人工血管を植え込む場合、外科チームは、血管の病変部を切断して、このように切断された血管の各自由部分を一体型人工血管の端部に縫合しなければならないことも知られている。
【0005】
しかしながら、一部の血管は、アクセスが困難であるため、および/または人工器官を血管に縫合するのが困難であるため、外科医は、処置される血管への前記人工器官の端部の縫合を容易にするために、人工血管を2つに切断しなければならない。この切断が行われたら、外科医は、人工器官の2つの自由端を互いに縫合する。
【0006】
言い換えれば、このタイプの人工血管は、追加の縫合ゾーン(人工血管の2つの切断端部間に画定されるゾーン)を必要とし、これにより、人工血管を植え込むのに必要な時間と血行力学的リスク(例えば、うっ血、形成された縫合部からの出血など)が増大する。
【0007】
このタイプの欠点は、上記のタイプの一体型人工血管によって血管を人工心臓に連結する場合にも観察される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、これらの欠点を解消することにある。
【0009】
したがって、本発明によると、少なくとも2つの個々の管状要素、および前記個々の要素を互いに連結するための機械的手段を備える解剖学的管を連結するための管状人工器官は、
前記個々の管状要素が、その軸方向に延びる波形に形成されかつ可撓性を有する外面を備え、
前記機械的連結手段が密封され、か
・ それぞれが1個の管状要素の自由端に固定される2つの環状接合部と、
・ 2つの環状接合部の一方に取り付けられ、管状人工器官によって形成された開口の周りの2つの環状接合部の間に挿入されるように設計されている少なくとも1つのシール(例えば、予備成形圧縮性機械的シールか、またはGRF(ゼラチン−レゾルシノール−ホルムアルデヒド)外科接着剤の形態を採る)と、
・ それぞれ管状要素を通される第1および第2の固定リングであって、互いに協働して一方が他方に対して1つに保持され、2つの環状接合部の間でシールが圧迫されるように設計されている、第1および第2の固定リングと、
を備えているという点で注目に値する。
【0010】
したがって、本発明により、人工器官が少なくとも2つの個々の管状要素からなり、これにより清潔で規則的な切断ゾーンが保証されるため、人工器官を切断する必要がない。加えて、人工器官に取り付けられる機械的連結手段により、追加の縫合を行わなくても、個々の要素の2つの自由端を迅速かつ容易に互いに接合することができる。結果として、血行学的リスクが実質的に軽減され、外科医の作業が格段に容易になる。
【0011】
加えて、第1および第2の固定リングは、接合部を互いに対して強く保持し、前記リング間のシールを圧迫し、このシールが、管状人工器官に沿った(特に、2つの接合部において)密封を保証する。人工器官に流入する体液(例えば、解剖学的管が血管である場合は血液)が、個々の管状要素(好ましくは、生体適合性材料、例えば、織りポリエステルから形成される)の材料以外の材料と接触するのも防止される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による一実施形態では、
・ 第1の固定リングが、内側フランジを備え、管状接合部の一方が、この内側フランジに対して強く押圧されるように設計され、
・ 第2の固定リングが、突出環状カラーを備え、この突出環状カラーの端部で他方の環状接合部が確実に連結され、かつ
・ この突出環状カラーが、2つの環状接合部が互いに接触するために、第1のリング内に挿入されるのに適している。
【0013】
加えて、この実施形態によると、
・ 第1の固定リングが、径方向内側突出部を備えることができ、かつ
・ 第2の固定リングが、突出環状カラーの側壁に形成された凹部を備えことができ、この凹部が、第1のリングの対応する径方向突出部を収容するのに適している。
【0014】
さらに、径方向突出部のそれぞれを、スタッドの形態にすることができ、凹部のそれぞれが、
・ 径方向突出部が挿入される軸方向ノッチと、
・ 特定の角度セクタにわたって延在するロック用傾斜面であって、その入口が関連する軸方向ノッチによって形成されている、ロック用傾斜面と、
を備えることができる。
【0015】
特に、ロック用傾斜面は、螺旋状とし、かつロック用ノッチで終端させることができ、
これにより、シールが所定の要領で圧迫され、ロックされた位置に保持される。
【0016】
さらに、径方向突出部および対応する凹部は、好ましくは3つであり、その全長にわたるシールの均一な圧迫を維持するために、等角度で分布させることができる。
【0017】
本発明による一変更実施形態では、第1のリングの内側側壁が、固定カラーの外側側壁に形成された対応するねじ切りと協働するのに適したねじ切りを有する。加えて、対応する1個の管状要素の周りを自由に回転できるように取り付けられた第1のリングは、このリングに関連する環状接合部とは別個である。
【0018】
さらに、本人工器官は、有利に、前記環状接合部を互いに確実に保持する補助固定手段を備えている。
【0019】
特に、これらの補助固定手段は、第1の固定リングに確実に固定された少なくとも1つの固定アイレット、および第2の固定リングの側壁に形成された少なくとも1つの対応する固定孔を備えることができ、この固定アイレットおよび固定孔は、例えば、縫合糸によって互いに連結するのに適している。
【0020】
さらに、解剖学的管の形状によって、人工器官は、概ね円筒形、円錐形、分岐形(解剖学的管が、それ自体分岐している場合)、または他の形状を有し得ることに留意されたい。
【0021】
添付の図面は、本発明品をどのように製造できるかを明らかにする。これらの図面では、同一の参照符号は同様の要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、2つの個々の管状要素が互いに連結されていない、本発明による人工器官の一実施形態を斜視図で図式的に示している。
図2図2は、人工器官の2つの個々の管状要素が互いに連結されている点を除き、図1と同様である。
図3図3は、第1の固定リングを備える1個の管状要素の自由端の正面から見た線図である。
図4図4は、第2の固定リングを備える1個の管状要素の自由端の正面から見た線図である。
図5図5は、本発明による人工器官の2つの個々の管状要素が互いに連結されていない、図3および図4のV−V線に沿ったこの人工器官の長手方向の断面の線図である。
図6図6は、2つの個々の管状要素が、ここでは互いに連結されている点を除き、図5と同様である。
図7図7は、2つの個々の管状要素が互いに連結されていないときの図6のA部の拡大を図式的に示している。
図8図8は、図6のB部の拡大線図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
前述のように、本発明による人工器官は、同じ解剖学的管(例えば、血管)の2つの部分を連結するのと同様に、解剖学的管を器官または人工装置(例えば、人工心臓)に連結するのにも使用することができる。
【0024】
明確かつ簡潔にするために、本発明による人工器官は、特に血管について以下に説明する。
【0025】
図1および図2に例示されている本発明による管状人工器官1は、例えば、ポリエステルの織物で形成された2つの個々の管状要素2を備え、それぞれの管状要素が内部開口3を画定している。
【0026】
個々の円筒型管状要素2は、一方の端部5Rで、処置される解剖学的管Cの部分Pに外科医によって縫合されるように設計されている。
【0027】
個々の管状要素2のそれぞれの外面Sは、可撓性を有し、かつ解剖学的管Cの対応する部分Pとのより良好な係合が得られるように蛇腹(annulate)である。
【0028】
人工器官1は、2つの個々の管状要素2のそれぞれの自由端5Lを連結するための密封機械的手段4も備えている(自由端5Lは、部分Pに縫合されない端部である)。
【0029】
図3図8に示されているように、機械的連結手段4は、以下を備えている。
− 1個の管状要素2の自由端5Lにそれぞれ固定される2つの環状接合部6。各管状要素2は、接着によって、および/または管状要素2の自由端5Lを環状接合部6に縫合する(人工器官1の製造工程中に漏れないように縫合することが可能である)こと7によって、環状接合部6に固定することができる。特に、各管状要素2を、その自由端5Lが対応する環状接合部6の外面6E(すなわち、他方の管状要素2に向いている表面)の少なくとも一部を覆うようにするために、対応する環状接合部6の内部開口に通す。
− 環状接合部6の外面6Eに確実に連結され、かつ開口3の近傍に配置される環状シール8。このシール8は、対応する2つの個々の管状要素2が互いに連結されるときに2つの環状接合部6によって圧迫されるように設計されている。
− 管状人工器官1を長さ方向に密封するために、環状接合部6を互いに対して保持してシール8を環状接合部6間で圧迫する機械的手段9。
【0030】
保持手段9は、互いに協働し、かつそれぞれ関連する管状要素2が通されるように設計された第1の固定リング9Aおよび第2の固定リング9Bを備えている。
【0031】
この例では、第1のリング9Aは、内側フランジ10を備え、対応する環状接合部6をこの内側フランジに強く押圧することができる。第1のリング9Aはまた、その内部に径方向に向かって延びるスタッドの形態である突出部11も備えている。
【0032】
第2のリング9Bは、突出環状カラー12を備え、その端部に、他方の環状接合部6が確実に連結される。有利なことに、リング9B、カラー12、および関連する環状接合部6は、1つの同じ部品として形成することができる。
【0033】
突出カラー12は、第1のリング9A内に、調整を行い挿入するのに適している。この方法では、突出カラー12に確実に連結される環状接合部6は、リング9Bの環状接合部6によって保持されるシール8に対して強く押圧される。
【0034】
さらに、カラー12は、その側壁に形成された凹部13を備え、この凹部は、対応する径方向突出部11を収容するのに適している。
【0035】
各凹部13は、以下を備えている。
・ 外側を向いた、1つのスタッド11を収容するのに適した軸方向ノッチ13A。
・ 特定の角度セクタにわたって延在するロック用傾斜面13Bであって、その入口が関連する軸方向ノッチ13Aからなる、ロック用傾斜面13B。
【0036】
特に、各ロック用傾斜面13Bは、ロック用ノッチ13Cで終端するように螺旋状にすることができ、これにより、対応するスタッド11がロック用ノッチ13Cに到達すると、2つのリング9Aおよび9Bがロックされた位置に互いに対して固定され、シールが所定の要領で圧迫される。
【0037】
説明された例では、第1のリング9Aは、3つのスタッド11を備え、したがって、カラー12は、対応するスタッド11を収容する3つの関連する凹部13を備えている。
【0038】
スタッド11および対応する凹部13は、有利に、等角度で分布してシール8に沿って均一な圧迫を維持する。
【0039】
加えて、2つのリングの互いに対する固定をさらに確実にするために、人工器官1は、
補助固定手段14を備えている。
【0040】
説明された例では、補助固定手段14は、第1の固定リング9Aに確実に連結された固定アイレット14Aの形態であり、第2の固定リング9Bの側壁に形成された、底部が開口している固定孔14Bがそれぞれ、アイレット14Aに対応している。
【0041】
2つのリング9Aと9Bを、ロックされた位置に互いに対して固定する際には、リング9Aと9Bが互いに対して回転しないように各アイレット14Aを対応する固定孔14Bに連結するために、例えば、縫合糸15(図2を参照)を使用することができる。
【0042】
各アイレット14Aは、第1のリング9Aのスタッド11の長手方向延長部に取り付けられている。さらに、各固定孔14Bは、ロック用ノッチ13Cの長手方向延長部に形成されている。
【0043】
したがって、スタッド11が、凹部13のノッチ13Cに係合すると、アイレット14Aは、対応する固定孔14Bと長手方向に整合する(特に図2を参照)。
【0044】
さらに、本発明は、もちろん、上記の機械的連結手段の実施形態に限定されるものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8