(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に明記するように、4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノンは、有利には、本発明による組成物中に可溶化形態で存在する。
【0012】
4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノンは、次式の化合物である。
【0014】
この化合物4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノンは、本発明による組成物中に、組成物の総質量に対して0.01質量%から10質量%、さらに適切には0.1質量%から7質量%、0.5質量%から7質量%、0.75質量%から5質量%、好ましくは1質量%から5質量%の範囲の含有量で存在することができる。
【0015】
本発明による組成物は、ハンセン溶解度空間における溶解度パラメータが14.5<δ
a<30および15<δ
d<22になるような少なくとも1種の有効量の溶媒を含む。
【0016】
ハンセン溶解度空間による包括的溶解度パラメータδは、Eric A. Grulkeの著書『Polymer Handbook』、3rd Edition、Chapter VII、519〜559頁の中の「Solubility parameter values」の記事に、以下の関係式によって定義されている:
δ=(δ
2=δ
d2+δ
p2+δ
h2)
1/2
式中、
-δ
dは、分子衝突の間に誘起される双極子の形成から生じるロンドン分散力を特徴付け、
-δ
pは、永久双極子間のデバイ相互作用力を特徴付け、
-δ
hは、特異的相互作用力(例えば水素結合、酸/塩基、供与体/受容体など)を特徴付ける。ハンセン三次元溶解度空間における溶媒の定義は、C.M. Hansen著の記事「The three-dimensional solubility parameters」、J. Paint Technol. 39、105(1967)に記載されている。
【0017】
パラメータδ
aは、次の関係式によって定義されている: δ
a2=δ
p2+δ
h2=δ
2-δ
d2
【0018】
パラメータδ
d、δ
p、δ
hおよびδ
aは、(J/cm
3)
1/2で表される。
【0019】
好ましくは、有機溶媒は、次のような溶解度パラメータを有する:
14.5<δ
a<28および15<δ
d<20
【0020】
本発明にしたがって使用される有機溶媒は、エタノール(δ
a=20,20、δ
d=15,10)、1,2-プロピレングリコール(δ
a=25,00、δ
d=16,00)、1,3-プロパンジオール(δ
a=26,32、δ
d=18,00)、PEG-8(8個のエチレングリコール単位を含むポリエチレングリコール)(δ
a=14,80、δ
d=17,90)、炭酸プロピレン(δ
a=18,46、δ
d=20,00)、ジプロピレングリコール(δ
a=19,48、δ
d=16,20)、1,2-ヘキシレングリコール(δ
a=19,20、δ
d=16,40)、PEG-4ポリエチレングリコール(4個のエチレングリコール単位を含む) (δ
a=18,60、δ
d=18,00)から選択することができる。
【0021】
好ましくは、有機溶媒は、エタノール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、PEG-8および炭酸プロピレンから選択される。
【0022】
溶媒は、本発明による組成物中に、組成物の総質量に対して0.05質量%から30質量%、さらに適切には0.05質量%から10質量%、好ましくは0.1質量%から5質量%、優先的には0.1質量%から2.5質量%の範囲の含有量で存在することができる。
【0023】
一実施形態によれば、本発明による有機溶媒および4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン(化合物と呼ぶ)は、10以下、特に5以下、さらに適切には4以下、特に0.5から4の範囲、好ましくは0.5から1.5の範囲の溶媒/化合物の質量比で存在することができる。
【0024】
本発明にしたがって使用される組成物は、生理的に許容される媒体、すなわち皮膚、頭皮、毛髪および爪などのヒトのケラチン物質と適合性がある媒体を含む。
【0025】
本発明による組成物は、水溶液、水性アルコール溶液、水中油型(O/W)エマルション、油中水型(W/O)エマルションまたは多重エマルション(三重: W/O/WまたはO/W/O)または水性ゲルの形態であってもよい。これらの組成物は、通常の方法により調製する。
【0026】
組成物は、少なくとも1種の油を含むことができる。使用できる油の例として、以下を挙げることができる:
- 植物起源の炭化水素系油、例えば4〜10個の炭素原子を含む脂肪酸の液体トリグリセリド、例えばヘプタンもしくはオクタン酸トリグリセリド、または例えばヒマワリ油、コーン油、ダイズ油、マロー油(marrow oil)、グレープシード油、ゴマ油、ヘーゼルナッツ油、アプリコット油、マカダミア油、アララ油(arara oil)、ヒマシ油、アボカド油、カプリル/カプリン酸トリグリセリド(例えばStearineries Dubois社から販売されているものまたはDynamit Nobel社からMiglyol 810、812および818という名称で販売されているもの)、ホホバ油およびシアバター油;
- 特に脂肪酸の合成エステルおよびエーテル、例えば式R
1COOR
2およびR
1OR
2(式中、R
1は8〜29個の炭素原子を含む脂肪酸残基を表し、R
2は3〜30個の炭素原子を含む分枝または非分枝の炭化水素系鎖を表す)の油、例えばピュアセリンオイル(Purcellin oil)、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸2-オクチルドデシル、エルカ酸2-オクチルドデシルまたはイソステアリン酸イソステアリル;ヒドロキシル化エステル、例えば乳酸イソステアリル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、ヒドロキシステアリン酸オクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリルまたはクエン酸トリイソセチル;脂肪アルコールヘプタノエート、オクタノエートまたはデカノエート;ポリオールエステル、例えばジオクタン酸プロピレングリコール、ジヘプタン酸ネオペンチルグリコールおよびジイソノナン酸ジエチレングリコール;ならびにペンタエリスリトールエステル、例えばテトライソステアリン酸ペンタエリスリチル;
- 鉱物もしくは合成起源の直鎖または分枝鎖の炭化水素、例えば揮発性もしくは不揮発性流動パラフィンおよびその誘導体、ワセリン、ポリデセン、ならびに水素化ポリイソブテン、例えばパールリーム(Parleam)油;
- 8〜26個の炭素原子を含む脂肪アルコール、例えばセチルアルコール、ステアリルアルコールおよびこれらの混合物(セチルステアリルアルコール)、オクチルドデカノール、2-ブチルオクタノール、2-ヘキシルデカノール、2-ウンデシルペンタデカノール、オレイルアルコールあるいはリノレイルアルコール;
- シリコーン油、例えば室温で液体またはペースト状の、直鎖もしくは環状のシリコーン鎖を有する揮発性または不揮発性のポリメチルシロキサン(PDMS)、特にシクロポリジメチルシロキサン(シクロメチコーン)、例えばシクロヘキサシロキサン;2〜24個の炭素原子を含む、シリコーン鎖のペンダントであるもしくはその末端にあるアルキル基、アルコキシ基またはフェニル基を含むポリジメチルシロキサン;フェニルシリコーン、例えばフェニルトリメチコーン、フェニルジメチコーン、フェニルトリメチルシロキシジフェニルシロキサン、ジフェニルジメチコーン、ジフェニルメチルジフェニルトリシロキサンもしくは2-フェニルエチルトリメチルシロキシシリケートおよびポリメチルフェニルシロキサン;
-それらの混合物。
【0027】
上記油のリストにおいて、「炭化水素系油」という用語は、主に炭素原子および水素原子、ならびに場合によってエステル、エーテル、フルオロ、カルボン酸および/またはアルコール基を主に含む任意の油を意味する。
【0028】
本発明による組成物は、室温(25℃)で固体である物質、例えば、8〜30個の炭素原子を含有する脂肪酸、例えばステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸およびオレイン酸;ワックス、例えばラノリン、蜜蝋、カルナウバワックスまたはカンデリラワックス、パラフィンワックス、微晶蝋、セレシンまたはオゾケライト、およびポリエチレンワックスおよびフィッシャー-トロプシュワックスなどの合成ワックスを含んでもよい。
【0029】
これらの脂肪物質は、例えば稠度または質感の点で所望の特性を有する組成物を調製するように、当業者により様々な方法で選択され得る。
【0030】
本発明の特定の一実施形態によれば、本発明による組成物は油中水型(W/O)または水中油型(O/W)エマルションである。エマルションの油相の割合は、組成物の総質量に対して5質量%〜80質量%、好ましくは5質量%〜50質量%の範囲に及び得る。
【0031】
エマルションは一般に、単独でまたは混合物として使用される、両性、アニオン性、カチオン性および非イオン性乳化剤から特に選択される少なくとも1種の乳化剤および場合によって共乳化剤を含有する。乳化剤は、得ようとするエマルション(W/OまたはO/W)に応じて適切に選択される。乳化剤および共乳化剤は一般に、組成物中に、組成物の総質量に対して0.3質量%から30質量%、好ましくは0.5質量%から20質量%を範囲とする割合で存在する。
【0032】
W/Oエマルションの場合、乳化剤の例として、ジメチコーンコポリオール、例えばDow Corning社によりDC5225Cの商標名で販売されているシクロメチコーンおよびジメチコーンコポリオールの混合物、ならびにアルキルジメチコーンコポリオール、例えばDow Corning社によりDow Corning 5200 Formulation Aidの名称で販売されているラウリルジメチコーンコポリオールおよびGoldschmidt社によりAbil EM 90(登録商標)の名称で販売されているセチルジメチコーンコポリオールを挙げることができる。少なくとも1つのオキシアルキレン基を含む架橋エラストマー性固体オルガノポリシロキサン、例えば米国特許第5412004号の実施例3、4および8、ならびに米国特許第5811487号の実施例の手順に従って得られるもの、特に米国特許第5412004号の実施例3(合成実施例)の生成物、例えばShin-Etsu社から参照名KSG 21で販売されている製品は、W/Oエマルションの界面活性剤として使用することもできる。
【0033】
O/Wエマルションの場合、乳化剤の例として、グリセロールのオキシアルキレン化(より具体的にはポリオキシエチレン化)脂肪酸エステル;ソルビタンのオキシアルキレン化脂肪酸エステル;オキシアルキレン化(オキシエチレン化および/またはオキシプロピレン化)脂肪酸エステル;オキシアルキレン化(オキシエチレン化および/またはオキシプロピレン化)脂肪アルキルエーテル;糖エステル、例えばステアリン酸スクロース;ならびにこれらの混合物、例えばステアリン酸グリセリルおよびステアリン酸PEG-40の混合物(40個のエチレングリコール単位を含むステアリン酸ポリエチレングリコール)などの非イオン性乳化剤を挙げることができる。
【0034】
組成物は、水性ゲルであってもよく、特に通常の水性ゲル化剤を含んでもよい。
【0035】
本発明による組成物は、ゲル化剤、膜形成ポリマー、保存剤、香料、充填剤、UV遮断剤、殺菌剤、臭気吸収剤、染料、植物エキス、化粧品用および皮膚科用の活性剤、ならびに塩などの化粧品または皮膚科で通常の補助剤も、知られているようにして含んでもよい。これらの様々な補助剤の量は、想定される分野で通常に使用される量、例えば、組成物の総質量の0.01%〜20%である。
【0036】
本発明を、下記の実施例において、さらに詳細に例証する。各成分の量は質量パーセンテージで表す。
【実施例1】
【0037】
溶解度試験
試験溶媒をビーカーに注ぎ、ある量の化合物、4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノンを磁気撹拌しながら加え、混合物を1時間から24時間の間そのまま放置した。次いで混合物を50℃まで加熱し、次いで24時間かけて室温(25℃)まで冷却した。次いで、系を観察して、添加した量の化合物が再結晶化したか、または溶解したままかを確かめた。
【0038】
試験溶媒中に溶解できる化合物の量は、このようにして求めた。最大値は、エステル化合物が、評価される溶媒中にそれ以上は溶解しなくなる量に相当する。
【0039】
評価した、いくつかの溶媒において以下の結果が得られた:
【0040】
【表1】
【0041】
したがって、4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノンは、エタノール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、PEG-8および炭酸プロピレンに非常に十分に溶解し、グリセロールには非常にわずかしか溶解しないことが分かった。
【実施例2】
【0042】
以下の組成を有する顔用ケアクリーム(水中油型エマルション)を調製した:
トリステアリン酸ソルビタン(Croda製のSpan 65 V) 0.9
ジステアリン酸ポリエチレングリコール(40EO) 2
セチルアルコール 4
モノ/ジステアリン酸グリセリル(36/64)/ステアリン酸カリウム混合物(Goldschmidt製のTegin Pellets) 3
ステアリン酸 1.2
白色ワセリン(液体ワセリン、微晶蝋およびワセリンの混合物)(Aiglon製のVaseline Blanche Codex 236) 4
水素化ポリイソブテン(NOF Corporation製のParleam) 7.2
ミリスチン酸ミリスチル 2
シアバターの液体分率(Olvea製のShea Olein) 1
杏仁油 0.3
シクロペンタシロキサン 5
グリセロール 3
カフェイン 0.1
4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン 1
1,3-プロパンジオール 5
水 100%までの適量
【0043】
組成物は、2カ月間45℃で保管した後、安定性で均質である。
【実施例3】
【0044】
オレオソームの形態の水中油型(O/W)エマルション
以下の組成を有するサンクリームを調製した:
相A:
4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン 1
1,3-プロパンジオール 5
グリセロール 5
水 100%までの適量
相B:
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(4EO)(Croda製のTween 61 V) 1
トリステアリン酸スクロース(Mitsubishi Kagaku Foods製のRyoto Sugar Ester S 370) 2
セバシン酸ジイソプロピル 2.71
イソノナン酸イソノニル 5.57
2-エチルヘキシルシアノ-3,3-ジフェニルアクリレート 7
ブチルメトキシジベンゾイルメタン 3
サリチル酸エチルヘキシル 5
シクロヘキサシロキサン 1.72
ステアロイルグルタミン酸ナトリウム(Ajinomoto製のAmisoft HS 11 PF) 0.75
相C
水 15
カルボキシビニルポリマー(3V製のSynthalen K) 0.3
トリエタノールアミン 0.3
相D
水 6
キサンタンガム(Rhodia製のRhodicare XC) 0.2
相E
オクテニルコハク酸無水物でエステル化したコーンスターチのアルミニウム塩(National Starch製のDry Flo Plus 28-1160) 3
相F
PEG-12ジメチコーン(Momentive Performance Materials製のSilsoft 880) 0.5
【0045】
相Aを80℃から85℃に加熱した。
【0046】
相Bを、すべての脂肪性物質が完全に溶解する(約85℃)まで加熱した。
【0047】
相Aを、非常に激しく撹拌しながら、相Bに速やかに添加した。次いで、エマルションを、高圧均質化した。相CからFを、最終的に添加した。
【0048】
得られたエマルションは、オレオソームの形態である。2カ月間、45℃で保管した後、製剤は安定で、均質である。
【実施例4】
【0049】
以下の組成を有するシャワー用ジェルを調製した:
70%の活性物質を含む、水溶液としてのラウリルエーテル硫酸ナトリウム 15(すなわち10.5% AM)
グリセロール 2
4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン 1
1,3-プロパンジオール 5
30%の活性物質を含む、水溶液としてのココイルベタイン 5(すなわち1.5% AM)
水 100%までの適量
【0050】
2カ月間、45℃で保管した後、製剤は安定性で、均質である。