(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5960249
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】ラジアル反応器におけるフィッシャー・トロプシュ法
(51)【国際特許分類】
C10G 2/00 20060101AFI20160719BHJP
B01J 8/06 20060101ALI20160719BHJP
B01J 19/24 20060101ALI20160719BHJP
B01J 8/02 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
C10G2/00
B01J8/06 301
B01J19/24 A
B01J8/02 E
【請求項の数】24
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-506926(P2014-506926)
(86)(22)【出願日】2012年2月6日
(65)【公表番号】特表2014-518905(P2014-518905A)
(43)【公表日】2014年8月7日
(86)【国際出願番号】GB2012050256
(87)【国際公開番号】WO2012146903
(87)【国際公開日】20121101
【審査請求日】2015年1月14日
(31)【優先権主張番号】1107070.3
(32)【優先日】2011年4月27日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】503136668
【氏名又は名称】ジョンソン マシー デイビー テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(74)【代理人】
【識別番号】100129610
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 暁子
(72)【発明者】
【氏名】ガムリン、 ティモシー ダグラス
【審査官】
▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】
特表2006−508234(JP,A)
【文献】
特表2008−526943(JP,A)
【文献】
特表2011−508043(JP,A)
【文献】
特開昭60−232241(JP,A)
【文献】
特開昭60−110328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G,B01J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成ガスを含むガス状流と、粒子状フィッシャー・トロプシュ触媒とを接触させることにより、合成ガスを高級炭化水素へ転化するためのプロセスであって、
入口および出口を有する管状反応器内で当該プロセスが実施され、前記出口は前記入口の下流に配置され、前記管状反応器は、1つ以上の前記粒子状触媒のキャリアをその内部に有する1つ以上の反応管と、前記反応管と接触する冷却媒体とを備え;
前記触媒キャリアは、
使用時に触媒を保持するための環状容器であって、管を画定する有孔内壁、有孔外壁、環状容器を閉鎖する上面および環状容器を閉鎖する底面を有する、環状容器;
環状容器の内壁によって形成された、前記管の底部を閉鎖する面;
前記環状容器の底面または底面近傍の位置からシールの位置より下方の位置まで、環状容器の有孔外壁から上方に延在するスカート;および
環状容器の上面または上面近傍に配置され、スカートの外面を超える長さで環状容器から延在するシールを備えるものであり;
前記プロセスが、
(a)ガス状反応物を入口を通して導入するステップ;
(b)前記反応物を、前記少なくとも1つの反応管を通して、触媒キャリアまたは第1触媒キャリアの上面へと下方に送り、そこで反応物が、環状容器の有孔内壁によって画定された流路内に入り、その後、有孔外壁に向かって触媒床を放射状に通過するステップ;
(c)合成ガスが触媒と接触したときに反応が起こるステップ;
(d)未反応反応物および生成物を有孔外壁を通して環状容器の外へ送り、次に、スカートの内面と環状容器の外壁との間を、シールに到達するまで上方に送り、そこで未反応反応物および生成物は、スカートの端部を越えるように導かれ、スカートの外面と反応管の内面との間を下方へと流れ、そこで熱伝導が起こるステップ;
(e)後続の任意の触媒キャリアにおいて、ステップ(b)から(d)を繰り返すステップ;および
(f)出口から生成物を取り出すステップ
を含む、プロセス。
【請求項2】
触媒粒子が100μmから1mmの直径を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
合成ガスを含むガス状流と、モノリス・フィッシャー・トロプシュ触媒とを接触させることによって、合成ガスを高級炭化水素に転化するためのプロセスであって、
入口および出口を有する管状反応器中で当該プロセスが実施され、前記出口は前記入口の下流に配置され、前記管状反応器は、1つ以上の前記モノリス触媒のキャリアをその内部に有する1つ以上の反応管と、前記反応管と接触する冷却媒体とを備え;
前記触媒キャリアは、
モノリス触媒を保持する容器であって、容器を閉鎖する底面、および、容器の底面から上方へ、シールの位置より下の、シールとの間に間隙のある位置まで延在するスカートを有し、前記スカートは、モノリス触媒の外面とスカートとの間に空間ができるように配置される、モノリス触媒を保持する容器;および
モノリス触媒の上面または上面近傍に配置され、スカートの外面を超える長さでモノリス触媒から延在するシールを備えるものであり;
前記プロセスが、
(a)ガス状反応物を入口を通して導入するステップ;
(b)前記反応物を、前記少なくとも1つの反応管を通して、モノリス触媒または第1モノリス触媒の上面へと下方に送り、ここで反応物がモノリス触媒を通過するステップ;
(c)合成ガスが触媒と接触したとき反応が起こるステップ;
(d)未反応反応物および生成物を触媒の外へ送り、次いで、未反応反応物および生成物を、スカートの内面とモノリス触媒の外面との間を、シールに到達するまで上方に送り、そこで未反応反応物および生成物は、スカートの端部を越えるように導かれ、スカートの外面と反応管の内面との間を下方へと流れ、そこで熱伝導が起こるステップ;
(e)後続の任意の触媒キャリアにおいて、ステップ(b)から(d)を繰り返すステップ;および
(f)出口から生成物を取り出すステップ
を含む、プロセス。
【請求項4】
複数の触媒キャリアが反応管内に積み重ねられる、請求項1から3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
環状容器またはモノリス触媒を保持する容器の外面と反応管壁の内面との間の環状スペースが、高い熱伝導および小さい圧力降下を維持しながら、必要とされるガス流速に適合するように選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
環状容器またはモノリス触媒を保持する容器の外面と反応管壁の内面との間の環状スペースが、3mmから10mmのオーダーである、請求項1から5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
反応管が、75mmから150mmの直径を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
41個より多い触媒キャリアが単一の反応管内に配置される、請求項1から7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
70から200個の触媒キャリアが単一の反応管内に配置される、請求項1から8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
複数の管状反応器が並行して使用される、請求項1から9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
管状反応器の出口または各管状反応器の出口から出る未反応ガスが熱を除去するために処理される、請求項1から10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
取り出された未反応ガスが再使用される、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
2つ以上の管状反応器が直列に配置される、請求項1から9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
直列に配置された管状反応器が、各管状反応器の間に熱除去のために設置された装置に流体連通する、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
一連の相互に連結された管状反応器の最後のステージから出る水蒸気を含有する水素および一酸化炭素が、プロセスの任意の好適なところに再循環される、請求項13または14に記載のプロセス。
【請求項16】
一連の相互に連結された管状反応器の最後のステージから出る水蒸気を含有する水素および一酸化炭素が、第1の管状反応器に再循環される、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
並列の管状反応器群が、各群の間に熱除去のために設置された装置に直列連通する、請求項10に記載のプロセス。
【請求項18】
熱が再使用される、および/または除去され冷却される、請求項14または17に記載のプロセス。
【請求項19】
液状生成物が、同列の後続の管状反応器群に送られる水蒸気を含有する水素および一酸化炭素と共に、各並列の管状反応器群の間で取り出される、請求項17に記載のプロセス。
【請求項20】
一連の相互に連結された管状反応器の最後のステージから出る水蒸気を含有する水素および一酸化炭素が、プロセスの任意の好適なところに再循環される、請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
流れが第1管状反応器の入口に再循環される、請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
水素リッチな流れが、第2管状反応器および/または後続の任意の管状反応器の1つ以上もしくは後続の管状反応器(複数)に供給される、請求項9から21のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項23】
反応温度が190℃から250℃である、請求項1から22のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項24】
反応圧力が20バールから80バールである、請求項1から23のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィッシャー・トロプシュ触媒の存在下、一酸化炭素および水素(合成ガス)を液状炭化水素生成物に転化するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
フィッシャー・トロプシュ合成反応では、一酸化炭素および水素のガス状混合物を触媒の存在下で反応させ、比較的広い分子量分布を有する炭化水素混合物を生成する。生成物は主に、典型的には炭素数が2を超える、例えば、炭素数が5を超える鎖長を有する直鎖飽和炭化水素である。
【0003】
合成ガスから炭化水素を合成できることは、石油クラッキングによる炭化水素製造の魅力的な代替手段である。石油生産が高品質燃料に対する増大する需要に必死に対応する中、炭化水素製造に向けてのこのアプローチは拡大してきた。石油埋蔵量は減少し、かつ埋蔵物はより炭素リッチになるので、このアプローチはさらに拡大するだろう。
【0004】
従って、フィッシャー・トロプシュ法を最適化することが望まれる。これに対するいくつかのアプローチがなされてきたが、それらは一般に反応器の設計または触媒配合に向けられたものであった。プロセスに関する主要な問題の1つは、反応によって発生する熱量が極めて大きいということであり、例えば、炭素酸化物に相当する転化において、メタノールを製造するための反応で生成する熱量のほぼ2倍である。
【0005】
高い発熱に対処する1つのアプローチは、反応を固定床反応器で実施することである。この構成においては、触媒ペレットは軸流反応器の管内に装填される。冷却媒体、例えば、蒸発する水が管の周囲に供給される。次いで反応ガスが、触媒と接触してフィッシャー・トロプシュ反応が起きる管を通過する。発生した熱は管壁を介して周囲の冷却媒体に伝導される。管内の熱を制御する必要性から、管の中心から熱交換が起きる壁へと容易に熱を送るために、管の大きさは制限される。従って、必要な熱伝導のレベルを確保し、管の中心に向けて設置された触媒の過熱および熱暴走が起きるのを防ぐために、管は一般に約40mm未満の直径を有する。管が小さいことは、これらの反応器の作製コストが高くなる一因となる。
【0006】
管が小さい場合でも、適当な混合および熱伝導を保証するために、比較的小さい触媒粒子が必要である。さらに、適当な全圧力降下において、必要な熱伝導を維持し反応ガスの転化率を制御するために、見かけの速度およびガス空間速度のような条件を注意深く選択しなければならない。
【0007】
上限に近い大きさの管に対しては、管の冷却を向上するため、より大きな粒径の触媒を使用し、ガスおよび/または液体の再循環を組み込むことが提案されてきた。しかしながら、このアプローチはいくつかの欠点を有する。なぜなら、反応物および軽質生成物がワックスを通って移動しなければならないフィッシャー・トロプシュ触媒粒子内では、物質移動に対して、相当な抵抗があるからである。このことは、望まない軽質生成物への選択率を上げ、粒子の中心で望まない熱をさらに発生させることになる。
【0008】
これらの問題に対処する試みでは、担体表面に触媒を含浸させた、いわゆる「エッグシェル(eggshell)」触媒が提案されてきた。しかしながら、これらの触媒は、反応器の単位容積当たりの活性が低い触媒であり、その結果そのプロセスの生産性ひいては経済性を低下させる。
【0009】
また、触媒粒子中心への一酸化炭素の物質移動を改善するために、反応ガス中の、水素に対する一酸化炭素の比率を下げることも提案されてきた。このことは触媒選択率を向上させるが反応速度を低下させ、その結果、定期的に除去する必要がある炭化物を形成するというような様々な問題につながりうる。
【0010】
さらなる問題は、固定床反応器において一般には還元触媒を使用することができないため、必要に応じて、触媒の再生を可能にするために初期還元を補う装置を備える必要があることである。場合によってはこのことは、通常の操作条件を著しく上回る反応容器設計条件を必要とし、その結果、資本コストを増加させる。
【0011】
代替のアプローチは、バブルスラリー反応器で反応を実施することである。この構成では、小さな触媒粒子、例えば、150μm以下の触媒粒子が炭化水素生成物中に懸濁され、反応器の底に反応ガスを注入することによって撹拌される。ガスは反応器全体にわたって高度に分散され、従って理論上は、ガスから触媒への物質移動面積は非常に大きい。さらに、触媒粒径が小さいため、触媒粒子内の物質移動および熱伝導抵抗も小さい。触媒表面積は比較的大きいため、触媒粒子から流体への熱伝導は大きく、その結果粒子を接近する流体の温度条件で維持することができる。反応中の高い発熱は、内部で水が蒸発する、内部または外部コイルを用いて制御することができる。従って理論上は、バブルスラリー反応器におけるプロセスの実施は様々な利点を有する。
【0012】
しかしながら、実際には、バブルスラリー反応器においては、触媒粒子の内部に高い水分圧が生じるほど物質移動抵抗が大きいことがある。研究者は、触媒担体構造体の熱水作用による触媒の酸化および触媒の劣化などの問題を報告してきた。さらに、触媒の摩耗は、非常に小さな粒子を生成物から適切に分離することが困難であることに起因する、生成物の純度および触媒損失という結果につながる可能性のある深刻な問題である。
【0013】
さらに、コバルト系フィッシャー・トロプシュ触媒は、非常に低レベルの硫黄種のような不純物によっても被毒しやすい場合がある。このことは、バブルスラリー反応器において特に問題となる。なぜなら、合成ガスが触媒毒を含む場合、固定床反応器では、最初に毒に曝露される触媒が後続の触媒に対して保護床として機能する傾向があるのに対し、バブルスラリー反応器では、反応器内のすべての触媒が毒に曝されることになるためである。
【0014】
従って、バブルスラリー反応器は触媒に対して厳しい環境をもたらし、そのため、長い触媒充填寿命を達成することは困難であり、その結果、頻繁にまたは連続的に使用済み触媒を除去して新しい触媒充填に置き換えることになり、結果として、触媒単位当たりの平均生産量が減少し、システムの運転コストが増加することが理解されよう。
【0015】
さらに、バブルスラリー反応器の操作を最適化するために、反応器は、必要なレベルの攪拌および物質移動を実現するために比較的長くなければならない。触媒を20から30重量%の範囲の濃度で収容するために、十分な液体が反応器に含まれなければならないが、その結果、含有される液体は多量になる。これらの反応器の稼動中は、スラリー内のガス保持量もかなりの量である。このため、ガスが流通されている状態にあるスラリー床を収容するための、さらなる反応器容量が必要となる。これに対応するために、反応器は一般に、高さ60m程度である。そのような大きな反応器は重いため、それらの配置には費用が掛かりかつ困難である。プラント用地がしっかりした水路に隣接していない場合、そのような大きな反応器の輸送問題が重要になる。
【0016】
最近になって、フィッシャー・トロプシュ反応システムをプロセス強化によって改良するために、いわゆるマイクロチャネル反応器を使用できることが提案された。このアプローチにおいて重要なことは、スチームを発生する反応器のプレート間の狭いチャネルで反応を実施することである。この構成では、高い熱伝導係数および高い比生産性を達成することができる。また、このアプローチでは、拡張された表面上の高活性触媒を使用することにより、物質移動抵抗を最小にすることができる。
【0017】
これらのマイクロチャネル反応器は、冷却媒体を流すための流路を形成するためにプレートを接合して製造される。これらの反応器は、専門家が製造する必要があり、格納容器に収容しなければならない。従って、これらの装置の資本コストは大きい。さらなる問題は、モジュール単位を製造することができる大きさには限界があり、反応器の製造単位当たりの比重が驚くほど大きいため、製造するのにコストがかかるということである。
【0018】
マイクロチャネル反応器で使用される触媒は高い比活性が要求されるため、それらはより高い温度で運転され、炭化水素鎖分布の軽質末端部の生成物を生成する傾向がある。
【0019】
マイクロチャネル反応器に関連するさらなる問題は被毒のリスクと関係し、上記のとおり、フィッシャー・トロプシュ触媒は特にその影響を受けやすい。マイクロチャネル反応器では、使用される触媒の相対量は少なく、従って、被毒が起きた場合には顕著な性能低下も認められるだろう。開発者らは、触媒が失活した場合には触媒を除去して交換するために反応器モジュールを工場に戻す必要があると述べているが、その結果として、コストが高く、また、高価な反応器を予備品として保持していない限り、稼働停止時間が相当長くなる。従って、マイクロチャネル反応器が使用されるのは通常、不都合なガスの廃棄に関する問題と比べて性能およびコストが問題とならない、いわゆる「フレア燃焼(flare busting)」作業のような、小容量の状況のみである。
【0020】
代替の構成が、国際公開2010/069486号で議論されており、ここでは、多くの断熱反応器が直列に配置されている。記載されている温度上昇が大きいため、この構成が従来のフィッシャー・トロプシュ触媒を使用して優れた性能を発揮することは期待されないであろう。特に、高温により急速な触媒失活が起きることが予想される。さらに、適当な全転化率において高いメタン生成が予想される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
このように、フィッシャー・トロプシュ反応を実施する様々なアプローチは各々いくつかの利点を有するが、各々にデメリットも有することが理解されよう。従って、依然として先行技術の構成における問題点の1つ以上を解決する、改良されたフィッシャー・トロプシュ法を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明により、合成ガスを含むガス状流と粒子状フィッシャー・トロプシュ触媒とを接触させることにより、合成ガスを高級炭化水素へと転化するためのプロセスが提供され、前記プロセスは入口および出口を有する管状反応器内で実施され、前記出口は前記入口の下流に配置され、前記反応器は、1つ以上の粒子状触媒のキャリアをその内部に有する1つ以上の管と、前記少なくとも1つの管と接触する冷却媒体とを備え;
ここで、前記触媒キャリアは、
管を画定する有孔内壁と、有孔外壁と、環状容器を閉鎖する上面および環状容器を閉鎖する底面とを有する、触媒を保持する環状容器;
環状容器の内壁によって形成された前記管の底部を閉鎖する面;
前記容器の底面または底面近傍の位置から、シールの位置より下の位置まで、環状容器の有孔外壁から上方に延在するスカート;および
上面または上面近傍に配置され、スカートの外面を超える長さで容器から延在するシールとを備え、
このプロセスは、
(a)ガス状反応物を入口を通して導入するステップ;
(b)前記反応物を、前記少なくとも1つの管を通して、前記触媒キャリアまたは第1触媒キャリアの上面へと下方に送り、ここで反応物は、容器の有孔内壁によって画定された流路内に入り、その後、有孔外壁に向かって触媒床を放射状に通過するステップ;
(c)合成ガスが触媒と接触したときに反応が起こるステップ;
(d)未反応反応物および生成物を有孔外壁を通して容器から外に送り、次いで未反応反応物および生成物を、シールに到達するまでスカートの内面と環状容器の外壁との間を上方に送り、ここで未反応反応物および生成物はスカートの端部を越えるように導かれ、スカートの外面と反応管の内面との間を下方へと流れ、そこで熱伝導が起こるステップ;
(e)後続の任意の触媒キャリアにおいて、ステップ(b)から(d)を繰り返すステップ;および
(f)出口から生成物を取り出すステップ
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の触媒キャリアの上からの斜視図である。
【
図5】管内に設置された場合の、本発明のキャリアの下からの概略図でである。
【
図6】管内に設置された3つの触媒キャリアの概略断面図である。
【
図8】本発明の代替の実施形態の概略図であり、流路を図示する。
【
図9】本発明の第3実施形態の概略図であり、流路を図示する。
【
図10】
図9に示した2つの積み重ねられたキャリアの間の流路の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
触媒キャリアは、参照により本明細書に組み込まれる2010年10月19日出願のPTC/GB2010/001931に詳細に記載されている。
【0025】
誤解を避けるために向きに関する議論、例えば、上方に(upwardly)、下に(below)、より下(lower)などの用語は全て、参照しやすいように、添付図面に図示する触媒キャリアの向きに従って議論されている。しかしながら、管、およびそれに従って触媒キャリアが別の方向で使用される場合には、用語は適宜解釈されるべきである。
【0026】
触媒容器は一般に、それが配置される反応管の内寸より小さい寸法に形成されることになる。シールは、本発明の触媒キャリアが管内の適所に配置される時、反応器の管の内壁と接触するように形成される。シールは、十分効果的に、流動ガスの大部分を前記キャリアを通過させることができれば、完全である必要はない。
【0027】
一般に、複数の触媒キャリアが反応管内に積み重ねられることになる。この構成では反応物/生成物は、第2キャリアの上面およびシールと接触するまで、第1キャリアのスカートの外面と反応管の内面との間を下方に流れて行き、環状容器の有孔内壁によって画定される第2キャリアの管中へと下方へ誘導される。次いで上に記載された流路が繰り返される。
【0028】
触媒キャリアは、任意の好適な材料から形成することができる。そのような材料は一般に、反応器の運転条件に耐えるように選択されることになる。一般に触媒キャリアは、炭素鋼、アルミニウム、ステンレススチール、他の合金または反応条件に耐えることができる任意の材料から製造される。
【0029】
環状容器の壁は、任意の好適な厚さであってよい。好適な厚さは、約0.1mmから約1.0mm程度、好ましくは約0.3mmから約0.5mm程度であろう。
【0030】
環状容器の内壁および外壁における孔の大きさは、容器内に触媒を保持すると同時に、反応物(単数または複数)および生成物(単数または複数)が触媒を通って均一に流れることができるように選択されることになる。従って、それらの大きさは、使用される触媒粒子の大きさに依存することが理解されよう。代替の構成においては、孔がより大きくても触媒が環状容器内に確実に保持されるように、孔を覆うフィルターメッシュを有するように形成することができる。これにより、より大きな孔を採用することが可能になり、反応物が顕著な圧力損失なしに自由に移動することが容易になる。
【0031】
孔が任意の好適な形状であってよいことが理解されよう。実際、壁が有孔と記載されている場合、必要なのは反応物および生成物が壁を通過できる手段が存在することのみである。これらは任意の形状の小さな開口であってよく、溝孔であってよく、ワイヤースクリーンによって、もしくは多孔性または透過性表面を作る他の任意の手段によって形成することができる。
【0032】
環状容器を閉鎖する上面は一般に、環状容器の、または、各環状容器の壁の上端に配置されるが、外壁の上端の一部がへりを形成するように、上面を上端より下方に配置することが望ましい場合がある。同様に底面は、環状容器の、または各環状容器の壁の下端に設置されてよく、もしくは、環状容器の壁がへりを形成するように底面を壁の底部末端より上に配置することが望ましい場合がある。
【0033】
環の底面と管の底部を閉鎖する面は、単一ユニットとして形成されてよく、または互いに結合された2つの別の部品であってもよい。2つの面は同一平面上にあってよいが、しかし好ましい構成では、異なる平面上に存在する。一態様では、管の底部を閉鎖する面は、環状容器の底面よりも低い面に存在する。これは、複数の容器が使用される場合、1つのキャリアをその下に配置されるキャリアの上に設置するのを助けるのに役立つ。代替の態様では、管の底部を閉鎖する面は、環状容器の底面より高い位置にある平面にあってよいことが理解されよう。
【0034】
底面は一般に中実(solid)であるが、1つ以上のドレイン孔を備えていてよい。1つ以上のドレイン孔が存在する場合、それらはフィルターメッシュで覆われていてもよい。同様に、任意にフィルターメッシュで覆われたドレイン孔は、管の底部を閉鎖する面内に存在してよい。キャリアが非垂直方向を向いて使用され、ドレイン孔が存在する場合には、それらは代替の位置、すなわち、使用時にキャリアの最も低い位置となる位置に配置されることになる。
【0035】
1つ以上のスペーサー手段が、環状容器の底面から下方に延在してもよい。スペーサー手段または各スペーサー手段は、別個の構成要素としてとして形成されてよく、もしくは、底面における凹部によって形成されてもよい。これらのスペーサー手段が存在する場合、それらは、使用時に第1キャリアの底面とその下にある第2キャリアの上面との間を流れる反応物および生成物のための明確な流路を提供するのを助ける。スペーサーは、約4mmから約15mm、または約6mm程度の深さであってよい。あるいは、または追加的に、スペーサー手段は上面の上に存在してよい。
【0036】
環状容器を閉鎖する上面は、使用時に、その容器の上に積み重ねられる触媒キャリアに対してその容器を設置するための手段を、その上表面上に備えていてよい。容器を設置するための手段は、任意の好適な構成であってよい。1つの構成では、反応物の進入を可能にするための開口部または間隙をその中に有する直立したカラー(つば)を備える。
【0037】
上方に延在するスカートは平坦であってよく、または成形されていてもよい。任意の好適な形状を採用することができる。好適な形状としては、襞、波形などが挙げられる。襞、波形などは一般に、キャリアの長さに沿って長手方向に配置されるであろう。直立したスカートの形状は、スカートの表面積を増大させ、反応管の内面のいかなる表面粗さ、または収容される管の公差の違いも許容することができるため、触媒キャリアを反応管に挿入するのに役立つ。
【0038】
上方に延在するスカートが成形される場合、スカートは一般に、環状容器と共にガスシールを形成する環状容器との接合点に向かって、滑らかな形状に平坦化される。直立したスカートは一般に、環状容器の底部または底部近傍で環状容器の外壁へ接合されることになる。スカートが壁の底部より上の位置で接合される場合、接合点より下の領域内では壁は孔を有さない。直立したスカートはフレキシブルであってよい。
【0039】
一般に、直立したスカートは、環状容器の上面よりも約0.5cmから約1.5cm、好ましくは約1cm短い。
【0040】
いかなる理論にも束縛されるものではないが、直立したスカートは、環状容器の有孔外壁からの反応物/生成物を収集し、スカートの形状によって、それらを触媒キャリアの頂部に誘導し、その際、上方に移動しながら、環状容器の外壁から出てくるより多くの反応物/生成物を収集するのに役立つと考えられる。上に記載されたとおり、次いで反応物/生成物は、管壁と直立したスカートの外側との間を下方へ誘導される。この方法によってキャリアの全長にわたって熱伝導が促進されるが、熱交換が触媒から分離されているために、管壁において反応を止めることなく、より高温またはより低温のどちらか適切な方の熱交換流体を使用することができ、同時に、確実に、キャリアの中心に向かって触媒の温度を適切に維持できる。
【0041】
シールは、任意の好適な方法で形成することができる。しかしながら、それは一般に、反応管の最小直径に適合するのに十分な圧縮性を有することになる。シールは一般に、柔軟性のある摺動シールであろう。一態様では、O−リングが使用されてよい。圧縮性のスプリットリングまたは高い膨張係数を有するリングを使用することができる。シールは、反応条件に耐えることができる限りにおいて、適した任意の材料から形成されてよい。一態様では、それはキャリアから延在する変形可能なフランジであってよい。フランジは、環状容器が管に挿入されるときに変形して管の内側に適合し、管と接触するように、反応管の内径より大きい寸法であってよい。
【0042】
本発明では、触媒容器の外面と管壁の内面との間の環状スペースは小さく、一般に、約3mmから約10mm程度である。間隔が狭いことにより、冷却された出口ガスと冷却液との間の温度差が許容可能な約10℃から約40℃程度になるような熱伝導係数を実現することができる。
【0043】
スカートと触媒壁との間およびスカートと管壁との間の環の大きさは、一般に、高い熱伝導および小さい圧力降下を維持しながら必要とされるガス流速に適合するように選択されることになる。従って、本発明のプロセスは、これらの基準を満足するために適切な大きさの環を選択するステップをさらに含んでよい。
【0044】
本発明のプロセスは、比較的大きな反応管を採用できる。特に、従来のシステムで採用されている約40mm未満の直径と比較して、約75mmから約130mm、または、さらに約150mmまでの範囲の直径を有する管を使用することができる。より大きな直径の管を使用することにより、直径6m未満、重量700トン未満の単一反応器において、およそ10,000USバーレル/日の生産量を達成することができるであろう。
【0045】
上で議論されたように、フィッシャー・トロプシュ反応の高い発熱特性は、その反応を実施することができる反応器の設計における主要因子である。本発明のプロセスにおける触媒キャリアを使用することにより、複数の触媒キャリアを備える管は、実質的には中間冷却(inter−cooling)を備えた複数の断熱反応器となる。
【0046】
任意の好適な触媒が本発明のプロセスにおいて使用されてよい。粉末、発泡体、構造体、または他の適した形態を採用することができる。
【0047】
本発明のプロセスの1つの利点は、キャリアが、小さな径のフィッシャー・トロプシュ触媒、例えば、約100μmから約1mmの径を有する触媒の採用を可能にすることである。これらは固定床で使用されるため、先行技術の構成に比べて物質移動抵抗を顕著に低下させることができる。このことは、必要な生成物、特に、炭素鎖長が5以上の生成物への選択率を向上させることになる。
【0048】
さらに、これらの小さな触媒は高表面積を有し反応ガスの流れの中に直接置かれるため、流動ガスの温度と非常に近い温度に維持される。この結果、副生物生成の傾向が軽減されることになる。
【0049】
1つの代替の実施形態では、モノリス触媒を使用することができる。この構成では、触媒容器の構造を変更してもよい。モノリス触媒と共に使用するのに適した触媒容器の全詳細は、2011年4月4日に出願された英国特許出願公開第1105691.8号明細書に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0050】
従って、本発明の第2態様では、合成ガスを含むガス状流と、モノリス・フィッシャー・トロプシュ触媒とを接触させることによって、合成ガスを高級炭化水素に転化するためのプロセスが提供され、このプロセスは入口および出口を有する管状反応器中で実施され、前記出口は前記入口の下流に設置され、前記反応器は、1つ以上の前記モノリス触媒のキャリアをその内部に有する1つ以上の管、および前記管と接触する冷却媒体とを備え;
前記触媒キャリアは
容器を閉鎖する底面と、前記容器の底面から上方に、シールの位置より下の、シールとの間に間隙のある位置まで延在するスカートとを有し、スカートは、モノリス触媒の外面とスカートとの間に空間ができるように配置される、モノリス触媒を保持する容器;および
モノリス触媒の上面または上面近傍に配置され、モノリス触媒からスカートの外面を超える長さで延在するシール
を備え、
このプロセスは
(a)ガス状反応物を入口を通して導入するステップ;
(b)前記反応物を、前記少なくとも1つの管を通して、モノリス触媒または第1のモノリス触媒の上面へと下方へ送り、ここで前記反応物がモノリス触媒を通過するステップ;
(c)合成ガスが触媒と接触したときに反応が起こるステップ;
(d)未反応反応物および生成物を触媒から外へ送り、次いで未反応反応物および生成物を、シールに到達するまでスカートの内面とモノリス触媒の外面との間を上方に導き、次に、未反応反応物および生成物は、前記スカートの端部を越えるように導かれ、スカートの外面と反応管の内面との間を下方へと流れ、そこで熱伝導が起こるステップ;
(e)後続の任意の触媒キャリアにおいて、ステップ(b)から(d)を繰り返すステップ;および
(f)出口から生成物を取り出すステップ
を含む。
【0051】
一態様では、モノリス触媒の本体内に触媒によって満たされていないスペースが実質的にないという点で、モノリス触媒は中実(solid)である。モノリスが下方へ流れる垂直の反応器で使用される場合、反応物(単数または複数)は反応管を通って下方に流れ、反応物(単数または複数)は最初にモノリス触媒の上部表面と接触し、円筒の軸に平行な方向に触媒を通って流れる。容器のシールは、反応物(単数または複数)がモノリスの周囲に流れるのを防ぎ、反応物を触媒内に誘導するのを助ける。次いでモノリス触媒内で反応が起きることになる。次いで生成物も円筒の軸に平行な方向にモノリスを通って流れ落ちる。
【0052】
反応物(単数または複数)および生成物は、触媒キャリアの底面に到達するとキャリアのスカートの方へ導かれる。この流れを容易にするため、キャリアの底面の上側に脚(複数)を備えることができ、これにより、使用時、モノリス触媒は脚(複数)上に支持され、モノリス触媒の底部と触媒キャリアの底面との間に間隙ができる。次に反応物(単数または複数)および生成物は、上方に延在するスカートにより、シールの裏面に到達するまでスカートの内面とモノリス触媒の外面との間を上方に導かれる。次に、反応物(単数または複数)および生成物は、シールの裏面によってスカートの端部を越えるように導かれ、次いで、スカートの外面と反応管の内面との間を下方に流れ、そこで熱伝導が起きる。
【0053】
1つの代替の実施形態では、モノリス触媒はその中を通って縦方向に伸びているチャネルを有する。一般にチャネルは、モノリス触媒の中心軸上に配置される。従って、反応管の断面が円形である場合、この構成のモノリス触媒の断面は環状となる。この構成では、使用時、下方へ流れる垂直の反応器において反応物(単数または複数)は反応管を通って下方に流れ、最初にモノリス触媒の上面に接触する。シールは、反応物(単数または複数)が触媒の脇周囲を通るのを妨げる。反応物(単数または複数)の流路は触媒によって妨げられるため、それは一般に流れ易い流路を選び、モノリス中のチャネルに進入する。次に、反応物(単数または複数)は環状モノリス触媒に進入し、触媒モノリスの外面に向かって触媒中を放射状に通過する。触媒モノリス中を通過する間に反応が起きる。次いで、未反応反応物および生成物は、モノリス触媒の外面から流れ出る。次いで、反応物および生成物は、上方へ延在するスカートにより、シールに到達するまでスカートの内面とモノリス触媒の外壁との間を上方に導かれる。次いで、それらはシールの裏面によってスカートの端部を越えるよう導かれ、スカートの外面と反応管の内面との間で下方へと流れ、そこで熱伝導が起きる。
【0054】
モノリス触媒がチャネルを備える構成では、触媒キャリアは、チャネルの部分は覆わずに残しモノリス触媒上を覆う上面を備えていてよい。この上面は、反応物(単数または複数)が触媒モノリスに頂部からは進入せずに、確実にチャネル中へと誘導されて放射状に流れるのに役立つ。
【0055】
第1の実施形態に関する触媒キャリアの特定の特徴についての上記の議論は、それと対応する特徴が第2の実施形態のモノリス触媒の触媒キャリアに存在する限り、等しく当てはまる。
【0056】
一実施形態では、どちらのタイプの触媒キャリアが使用された場合でも、40個より多い、好ましくは41個より多いキャリアが単一管内に配置される。より好ましくは、約70から約200個のキャリアを使用することができる。これにより、各ステージで約10℃から約20℃程度の適切な温度上昇を維持することができる。
【0057】
管内の触媒キャリアまたは各触媒キャリアを通る放射状の流れにより、先行技術の構成と比べてガス流路長が非常に短くなる。時間当たりの触媒空間速度約4000で最大20メートルの長さの管内において、約2メートル程度の総触媒深度(total catalyst depths)を実現することができる。短い流路長により、本発明のプロセスを採用せずに軸流管中で同じ触媒を使用した場合に認められるであろう数値より、1桁程度小さい全圧力降下が実現されることになる。
【0058】
本発明のプロセスにより、全圧力降下を小さくできることの利点のひとつは、従来の固定床システムで高流量において認められる圧力降下および触媒の破砕の可能性というデメリットを伴わずに、見かけのガス速度の大きい長い管、多量の不活性ガスを含むガスまたはガス再循環に適合することができることである。再循環に適合することができれば、低い単流転化率(per pass conversion)で、高い触媒生産性および選択性の全転化率を実現することが可能となる。
【0059】
繰り返しかつ確実に還元された還元触媒を触媒の製造場所において触媒キャリアに充填し、容器の残りはワックスで満たすことができる。容器は結合ユニットに組み立てることができるため、反応器の装填が容易になり、特に、作業者が触媒を取り扱う必要がなくなる。再生処理のために輸送する前にキャリアを容易に排出することができるため、取り出し手順も単純化される。
【0060】
本発明の一態様では、複数の反応器を並列に使用することができる。
【0061】
反応器から排出される流れから分離された液状生成物の流れが回収されることになる。本発明のプロセスでは、反応器または各反応器の出口から外に出る未反応ガスを、さらに処理して熱を除去してもよい。除去された熱を、再使用する、および/または排出して冷却することができる。反応器から排出される流れから分離された液状生成物が回収されることになる。
【0062】
一態様では、2つ以上の反応器を、熱を除去するために各反応器の間に設置された装置に直列に流体連通するように配置することができる。その熱を再使用する、および/または排出して冷却することができる。一態様では、一連の相互に連結された反応器の最後のステージから流れ出る水蒸気を含む水素および一酸化炭素を、プロセスの任意の好適なところに再循環することができる。一態様では、第1の反応器の入口に再循環される。
【0063】
1つの代替の態様では、2つ以上の並列の反応器群を、直列に配置することができる。この態様では、並列の反応器群は、熱を除去するために各群の間に設置された装置に直列に連通する。その熱を、再使用する、および/または排出して冷却することができる。一態様では、同列の後続の反応器群へ送られる水蒸気を含む水素および一酸化炭素と共に、液状生成物を各ステージの間で取り出すことができる。一連の相互に連結された反応器の最後のステージから流れ出る水蒸気を含む水素および一酸化炭素を、プロセスの任意の好適なところに再循環することができる。一態様では、第1反応器の入口へ再循環される。
【0064】
プロセスが複数の反応ステージを含む場合、水素リッチな流れは、第2および/または1つ以上の任意の後続のステージへ供給されてよい。
【0065】
任意の好適な反応条件を採用することができる。一態様では、反応温度は約190℃から約250℃である。反応圧力は約20バール(bara)から約80バール(bara)であってよい。
【0066】
本発明を、一例として、添付する図面を参照してここに説明する。
【0067】
本発明の触媒キャリア1を、
図1から
図3に示す。キャリアは、有孔壁3および4を有する環状容器2を備える。内側の有孔壁3は管5を画定する。上面6は、上部において環状容器を閉鎖する。上面6は、環状容器2の壁3および4の上部の方にへり6が形成されるよう配置される。底面7は環状容器2の底部を閉鎖し、表面8は管5の底部を閉鎖する。面8は底面7より低い面に位置する。複数の凹部9の形状のスペーサー手段は、環状容器2の底面7に存在するように配置される。ドレイン孔10および11は、底面7および面8上に配置される。
【0068】
シール12は上面6から延在し、直立したカラー(つば)13は、管5と同軸方向に設けられている。
【0069】
波形の直立したスカート14は、容器2を取り囲む。波形は、キャリア1の底部に向かって領域L内で平坦化される。
【0070】
本発明の触媒キャリア1は、反応管15内に配置される。ガスの流れを、矢印により
図4に模式的に図示する。
【0071】
本発明の複数の触媒キャリアが反応管15内に配置される場合、それらは
図6および7に示すように連結される。流路への効果を、
図7に示す拡大図に図示する。
【0072】
第2実施形態の触媒キャリア101を
図8に図示する。底面102は容器101の底部を閉鎖する。脚103は、モノリス触媒104を支持するように底面から上方に延びる。直立したスカート105は底面102から延在する。スカートは波形であってよく、底面103に向かった領域で平坦化されてよい。
【0073】
シール106は、モノリス触媒104から延在するように設けられ、反応管107の壁と接触する。バッフル108はシールに対して上方に延在する。これらは流れを誘導し、キャリアの上に配置されたキャリアの底面から下のキャリアを離す働きをする。ガスの流れを矢印によって模式的に図示する。
【0074】
本発明の代替の実施形態を
図9に示す。この構成では、モノリス触媒104は、その中を通る縦方向のチャネル109を有する。この構成では、第1実施形態の脚(複数)は無くともよい。このキャリアは第1実施形態に類似した構成であるが、モノリス触媒の上面を覆うように上面110が追加的に備えられる。
図9の構成におけるガスの流れを、矢印によって模式的に示す。
【0075】
本発明の複数の触媒キャリアが反応管107内に配置される場合の流路への効果を
図10に示す拡大図に図示する。
【0076】
触媒キャリアは、円形の断面を持つ管における使用を特に参照して説明されているが、管は円形でない断面のもの、例えばプレート型反応器であってもよいことが理解されよう。管が円形でない断面のものである場合、キャリアは適切な形状をとる。この構成では、環状モノリスが使用されると記載されている実施形態において、そのモノリスは円環状ではなく、この用語は適宜解釈されるべきであることが理解されよう。
【実施例】
【0077】
本発明を下記の実施例を参照してここに説明する。
【0078】
(実施例1)
現在稼働中である従来の固定床反応器は、フィッシャー・トロプシュ液体を約5833USバーレル/日で製造することができる。これらの反応器は1200トンの重量があり、7.2mの直径を有し、28000本を超える管を備えることが公表されている。天然ガスに由来する水素および一酸化炭素を含む供給ガスを処理する直径5.6mの本発明のプロセスの反応器は、フィッシャー・トロプシュ液体を約10000USバーレル/日で製造し、各々約80本の触媒キャリアで充填された約2300本の軸流管を備え、重量約700トンとなる。すなわち、生産単位当たりに装填された比重において、先行技術構成に対してほぼ3倍の改善を表すことが理解されよう。