(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フィルムの長さは少なくとも10m、幅は少なくとも300mmであり、前記フィルムの面積の少なくとも80%が前記シワなし領域であることを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、ポリエーテルイミドと5質量%未満のフッ素とを含む一軸延伸押出フィルムであって、前記フィルムは、第1の表面と第2の表面を有するシワなし(wrinkle−free)領域であって、厚みが0超〜13μm未満であり、前記厚みの変動が前記フィルム厚の±10%以下であり、光学的形状測定法で測定した平均表面粗さが前記フィルムの平均厚の±3%未満であることを特徴とするシワわし領域を少なくとも1つ有しており、前記フィルムはさらに、1KHzおよび室温での誘電率が少なくとも2.7であり、1kHzおよび室温での散逸率が1%以下であり、絶縁破壊強度が少なくとも300V/μmである、ことを特徴とする押出フィルムに関する。
【0007】
上記のフィルムを含む物品も開示される。
【0008】
別の実施形態では、本発明は、一軸延伸押出金属化フィルムに関する。
【0009】
別の実施形態では、本発明は、一軸延伸押出金属化フィルムで製造されたコンデンサに関する。
【0010】
別の実施形態では、本発明は、一軸延伸押出金属化巻きフィルムで製造されたコンデンサを備えた電子物品に関する。
【0011】
(発明の詳細な説明)
本発明者らは、優れた特性を有する静電容量コンデンサ用のポリエーテルイミド基板フィルムが、溶媒を使用しないプロセスで押出により製造できることを見出した。驚くべきまた重要な特徴では、該押出フィルムは、大きなシワなし領域を有し得る。該シワなし領域は十分に平滑であるため、該基板フィルムを金属化して、絶縁破壊強度が少なくとも300V/μmの金属化フィルムが得られる。該シワなし領域は十分に平滑であるため、該基板フィルムを金属化して、該領域全体で実質的に均一の絶縁破壊強度を有する金属化フィルムが得られる。
【0012】
特に、該シワなし領域の厚みは0超〜13μmであり、該厚みの変動はフィルム厚の±10%であり、フィルムの表面粗さはフィルムの平均厚の±3%未満である。該フィルムによって、柔軟性、薄層性および誘電率安定性などの他の有利な物理的・電気的特性を維持しながら、従来のフィルムと比較して、コンデンサ誘電率および誘電体絶縁破壊強度が共に向上する。特に、該フィルムは、高電圧絶縁破壊強度(少なくとも300V/μm)と、高誘電率(2.7超)と、低散逸率(1%未満)と、を有する。また、該フィルムの誘電率は150℃まで安定であり得る。従って、該フィルムとこれから製造されたコンデンサは、現在の材料と、エレクトロニクス産業用の部品の製造方法に対して有利である。特に有利な点は、該フィルムは、溶媒を使用しないプロセスで、工業規模で信頼性高く製造できる点である。溶媒使用時のフィルムから溶媒を除去することは困難であり得る。本明細書の押出フィルムは溶媒なしで処理されるため、コスト面でも製造面でも有利である。別の実施形態では、該押出フィルムは0超〜7μm以下である。
【0013】
本特許出願においては種々の数値範囲が開示される。これらの範囲は連続的であり、最小値と最大値間のすべての数値を含む。別途明示がある場合を除き、本明細書の種々の数値範囲は近似である。同じ成分あるいは特性に係る範囲はすべて終点を含むものであり、該終点は互いに独立に組み合わせ可能である。
【0014】
別途明示がある場合を除き、本出願中の分子量はすべて質量平均分子量を指す。こうした分子量はすべてダルトン単位で表される。
【0015】
単数表現は量の限定を示すものではなく、参照されたアイテムが少なくとも1つ存在することを示すものである。本明細書での「その組み合わせ」とは、選択的には参照されていない類似の要素と共に、参照された要素の1つまたは複数を含むものである。明細書全体に亘って、「ある実施形態」、「別の実施形態」、「ある実施形態」、「一部の実施形態」などは、該実施形態に関連して記載された特別の要素(例えば、特徴、構造、特質およびまたは特性)が記載された少なくとも1つの実施形態に含まれており、他の実施形態には含まれていても含まれていなくてもよいことを意味する。また、記載された要素(類)は、種々の実施形態において任意の好適な方法で組み合わせられ得るものと理解されるべきである。
【0016】
化合物は標準命名法を用いて記載される。例えば、表記のいかなる基によっても置換されていない位置は、その価電子帯が表示された結合または水素原子によって満たされているものと理解されるべきである。文字または記号間以外のダッシュ(「−」)は、置換基の結合点を示す。例えば、−CHOは、カルボニル基の炭素を経由して結合される。「アルキル」は、特定の数の炭素原子を有するC
1−30分枝鎖および直鎖の不飽和脂肪族炭化水素基を含む。アルキルの例としては、これに限定されないが、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、s−ペンチル、n−およびs−ヘキシル、n−およびs−ヘプチルおよびn−およびs−オクチルが挙げられる。「アリール」は、フェニル、トロポン、インダニルまたはナフチルなどの、特定の数の炭素原子を含む芳香族部分を指す。
【0017】
別途明示される場合を除き、すべてのASTM試験は、ASTM標準2003年版に基づくものである。
【0018】
該ポリエーテルイミドは、ポリエーテルイミドまたはポリエーテルイミドスルホンであり得る。該フィルムの形成に用いられるポリエーテルイミド組成物は、式(1)のポリエーテルイミドを含む:
【化1】
式中、aは1より大きく、例えば10〜1,000以上であり、より具体的には10〜500である。
【0019】
式(1)のV基は、エーテル基、アリーレンスルホン基、あるいはこれらの基の組み合わせを有する四価リンカーである。(便宜上、本明細書での「ポリエーテルイミド」はポリエーテルイミドスルホンを含む。)こうしたリンカーは、これに限定されないが、(a)エーテル基あるいはエーテル基とアリーレンスルホン基との組み合わせで置換されたまたは未置換の、C
5−50飽和または不飽和あるいは芳香族単環式および多環式基と、(b)エーテル基あるいはエーテル基とアリーレンスルホン基との組み合わせで置換されたまたは未置換の、C
2−30直鎖または分枝鎖、飽和または不飽和アルキル基と、を含む。さらなる典型的な置換基としては、これに限定されないが、アミド基、エステル基およびこれらのものの少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。
【0020】
式(1)のR基は、これに限定されないが、(a)C
6−20芳香族炭化水素基およびそのハロゲン化誘導体、(b)C
2ー20直鎖または分枝鎖アルキレン基、(c)C
3−20シクロアルキレン基、あるいは(d)式(2)の二価基などのC
2−20置換または未置換の二価有機基を含む:
【化2】
式中、Q
1は、これに限定されないが、−O−、−S−、−C(O)−、−SO
2−、−SO−、−C
yH
2y−(yは1〜5の整数)および、パーフルオロアルキレン基を含むこれらのハロゲン化誘導体などの二価部分を含む。
【0021】
ある実施形態では、リンカーVは、これに限定されないが、式(3)の四価芳香族基を含む:
【化3】
式中、Wは、−O−、−O−Z−O−および−SO
2−基の二価結合が3,3’、3,4’、4,3’または4,4’位置にあり、Zが、その原子価を超過しないという条件で、選択的に1〜6個のC
1−8アルキル基、1〜8個のハロゲン原子あるいはこれらの組み合わせで置換されたC
6−24単環式または多環式部分である、前記−O−、−O−Z−O−、−SO
2−またはこれらの組み合わせから選択される二価部分である。Z基の例は、これに限定されないが、式(4)の二価基を含む:
【化4】
式中、Qは、これに限定されないが、−O−、−S−、−C(O)−、−SO
2−、−SO−、−C
yH
2y−(yは1〜5の整数)を含む二価部分、およびパーフルオロアルキレン基を含むこれらのハロゲン化誘導体を含む。
【0022】
特定の実施形態では、aは1より大きく;Vは、Wが−O−または−O−Z−O−基の二価結合が3,3’、3,4’、4,3’または4,4’位置にあり、Zが選択的に1〜8個のC
1−8アルキル基、1〜8個のハロゲン原子あるいはこれらの組み合わせで置換されたC
6−24単環式または多環式部分である前記−O−、−O−Z−O−またはこれらの組み合わせから選択された二価部分である、式(3)の四価芳香族基であり;Rは、C
6−20芳香族炭化水素基、そのハロゲン化誘導体、C
2−20直鎖または分枝鎖アルキレン基、C
3−20シクロアルキレン基あるいは、Q
1が、−O−、−S−、−C(O)−、SO
2−、−SO−、C
yH
2y−(yは1〜5)およびこれらのハロゲン化誘導体である式(2)の二価基から選択される。
【0023】
別の特定の実施形態では、該ポリエーテルイミドは、式(5)の構造単位を1個超、具体的には10〜1,000個、より具体的には10〜500個含む:
【化5】
式中、Tは、−O−または−O−Z−O−基の二価結合が3,3’3.4’4,3’または4,4’位置にあり、Zが、上記のように、式(4)の二価基である前記−O−または−O−Z−O−基であり;Rは、上記のように、式(2)の二価基である。特定の実施形態では、Rはm−フェニレンである。
【0024】
別の特定の実施形態では、該ポリエーテルイミドは、式(1)のリンカーVとR基の少なくとも50モル%が二価のアリーレンスルホン基を含むエーテル基とスルホン基とを含むポリエーテルイミドスルホンである。例えば、リンカーVはすべてアリーレンスルホン基を含むが、R基はそれを全く含まなくてもよく;あるいは、R基はすべてアリーレンスルホン基を含むが、リンカーVはそれを全く含まなくてもよく;あるいは、アリールスルホン基を含むリンカーVとR基の合計モル分率が50モル%以上であることを条件として、アリーレンスルホンは、VとR基の一部に存在していてもよい。
【0025】
さらにより具体的には、該ポリエーテルイミドスルホンは、式(6)の構造単位を1個超、具体的には10〜1,000個、より具体的には10〜500個含み得る:
【化6】
式中、Yは、−O−、−SO
2−または−O−Z−O−基の二価結合が3,3’、3,4’、4,3’または4,4’位置に存在し、Zが、上記で定義したように、式(3)の二価基である、前記−O−、−SO
2−または−O−Z−O−基であり;Rは、Yモルと式(2)のRモルの合計の50モル%超が−SO
2−基を含むという条件で、式(2)の二価基である。特定の実施形態では、Rは、m−フェニレン、p−フェニレンジアリールスルホン、あるいはこれらの組み合わせである。
【0026】
該ポリエーテルイミドは、例えば式(7)のリンカーなどの、エーテル基あるいはエーテル基とスルホン基とを含まないリンカーVを選択的に含み得ることは理解されるべきである:
【化7】
【0027】
こうしたリンカーを含むイミド単位は一般に、その合計単位数の0〜10モル%、具体的には0〜5モル%の量で存在する。ある実施形態では、該ポリエーテルイミド中には、さらなるリンカーVは存在しない。別の特定の実施形態では、該ポリエーテルイミドは式(5)の構造単位を10〜500個含み、ポリエーテルイミドスルホンは式(6)の構造単位を10〜500個含む。
【0028】
該ポリエーテルイミドは、これに限定されないが、式(8)のビス(フタルイミド)の反応を含む種々の方法で調製できる:
【化8】
式中、Rは上記のものであり、Xはニトロ基またはハロゲンである。式(8)のビスフタルイミドは、例えば、式(9)の対応する無水物の縮合で形成できる:
【化9】
式中、Xは式(10)の有機ジアミンを有するニトロ基またはハロゲンである:
H
2N−R−NH
2 (10)
式中、Rは上記のものである。
【0029】
式(10)のアミン化合物の具体的な例としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,18−オクタデカンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、4−メチルノナメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、2、2−ジメチルプロピレンジアミン、N−メチル−ビス(3−アミノプロピル)アミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、1,2−ビス(3−アミノプロポキシ)エタン、ビス(3−アミノプロピル)スルフィド、1,4−シクロヘキサンジアミン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、2−メチル−4,6−ジエチル−1,3−フェニレン−ジアミン、5−メチル−4,6−ジエチル−1,3−フェニレン−ジアミン、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、1,5−ジアミノナフタレン、ビス(4−アミノフェニル)メタン、ビス(2−クロロ−4−アミノ−3,5−ジエチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,4−ビス(b−アミノ−t−ブチル)トルエン、ビス(p−b−アミノ−t−ブチルフェニル)エーテル、ビス(p−b−メチル−o−アミノフェニル)ベンゼン、ビス(p−b−メチル−o−アミノペンチル)ベンゼン、1,3−ジアミノ−4−イソプロピルベンゼン、ビス(4−アミノフェニル)エーテルおよび1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンが挙げられる。これらのアミン類の混合物も使用できる。スルホン基を含む式(10)のアミン化合物の具体的な例としては、これに限定されないが、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)およびビス(アミノフェノキシフェニル)スルホン(BAPS)が挙げられる。これらのアミン類の任意のものを含む組み合わせも使用できる。
【0030】
具体的には、該ポリエーテルイミドは、式(8)のビス(フタルイミド)と、Vが上記のものである式HO−V−OHのジヒドロキシ置換芳香族炭化水素のアルカリ金属塩との、相間移動触媒の有無に拘わらない反応で合成され得る。好適な相間移動触媒は、米国特許第5,229,482号に開示されている。具体的には、該ジヒドロキシ置換芳香族炭化水素は、ビスフェノールAなどのビスフェノールであり、あるいは、ビスフェノールのアルカリ金属塩と別のジヒドロキシ置換芳香族炭化水素のアルカリ金属塩との組み合わせも使用できる。
【0031】
ある実施形態では、該ポリエーテルイミドは、Rがそれぞれ独立に、p−フェニレン、m−フェニレン、あるいはこれらのものを少なくとも1つ含む混合物であり;Tは、O−Z−O基の二価結合が3,3’、3,4’およびまたは4,4’位置に存在し、Zが2,2−ジフェニレンプロパン基(ビスフェノールA基)である式−O−Z−O−の基である、式(5)の構造単位を含む。また、該ポリエーテルイミドスルホンは、R基の少なくとも50モル%が、Qが−SO
2−である式(4)のものであり、残りのR基は独立に、p−フェニレン、m−フェニレンあるいはこれらのものを少なくとも1つ含む組み合わせであり;Tは、−O−Z−O−基の二価結合が3,3’位置にあり、Zが2,2−ジフェニレンプロパン基である式−O−Z−O−の基である、式(6)の構造単位を含む。
【0032】
スルホン基のないポリエーテルイミドおよびポリエーテルイミドスルホンは、単独でもあるいは組み合わせて使用することもできる。ある実施形態では、スルホン基のないポリエーテルイミドだけが使用される。別の実施形態では、スルホン基のないポリエーテルイミドとポリエーテルイミドスルホンとの質量比は99:1〜50:50であり得る。
【0033】
該ポリエーテルイミドの質量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン標準を用いたゲル透過クロマトグラフィ(GPC)で測定して20,000〜400,000ダルトンである。一部の実施形態では、Mwは10,000〜80,000ダルトンであり得る。
【0034】
該ポリエーテルイミドの固有粘度は、温度25℃のm−クレゾール中で測定して0.2dl/g以上であり得る。この範囲内で、固有粘度は、温度25℃のm−クレゾール中で測定して0.35〜1.0dl/gであり得る。
【0035】
該ポリエーテルイミドのガラス転移温度は、ASTM試験D3418に準拠し、示差走査熱量測定法(DSC)を用いて測定して135℃より高く、あるいは150℃より高く、例えば135℃〜500℃である。一部の実施形態では、該ポリエーテルイミド、特に一般のポリエーテルイミドのガラス転移温度は135℃〜350℃である。
【0036】
該ポリエーテルイミドの平均分子量は、ポリスチレン標準を基準として、20,000〜60,000であり得る。
【0037】
該ポリエーテルイミドのメルトフローインデックスは、ASTM D1238−04に準拠し、温度295〜370℃、質量6.7kgで測定して、1〜80g/10minであり得る。
【0038】
本発明者らは、該シワなしフィルム、特に、後述のようにロール状のシワなしフィルムを製造するためには、ポリエーテルイミドフィルム形成組成物(従ってそのフィルム)のフッ素含量は、該組成物の合計質量に対して5質量%未満、具体的には4質量%未満、3質量%未満、2質量%未満あるいは1質量%未満であることを見出した。実施例で示すように、フッ素が存在することによって、ポリマーと、該ポリマーで製造された対応するフィルムの誘電体絶縁破壊強度が低下する傾向がある。
【0039】
従って、該ポリエーテルイミドフィルム形成組成物およびフィルムは、フッ素含有化合物を1000質量ppm未満、具体的には750質量ppm未満、500質量ppm未満あるいは50質量ppm未満含む。ある実施形態では、該フィルム形成組成物はフッ素含有化合物を含まない。こうした化合物としては、これに限定されないが、ある離型剤、充填剤(例えば微粒子状PTFE)または難燃剤が挙げられる。
【0040】
同様に、該シワなしフィルム、特に後述のようなロール状のシワなしフィルムを製造するためには、ポリエーテルイミドフィルム形成組成物(従ってそのフィルム)は、シリコーン化合物を1000質量ppm未満、具体的には750質量ppm未満、500質量ppm未満あるいは50質量ppm未満含むことも見出された。ある実施形態では、該フィルム形成組成物またはフィルムはシリコーン化合物を含まない。こうしたシリコーン化合物としては、これに限定されないが、シリコーンオイルおよびポリジメチルシロキサンが挙げられる。
【0041】
さらにより具体的には、該ポリエーテルイミドフィルム形成組成物およびフィルムは、フッ素含有化合物およびシリコーン化合物を1000質量ppm未満、具体的には750質量ppm未満、500質量ppm未満あるいは50質量ppm未満含む。ある実施形態では、該フィルム形成組成物またはフィルムは、フッ素含有化合物およびシリコーン化合物を含まない。
【0042】
該ポリエーテルイミドフィルム形成組成物およびフィルムが低含量のある金属イオンを含む場合、良好な電気特性が得られる。従って、該フィルム形成組成物およびフィルムは、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、ニッケル、カリウム、マンガン、モリブデン、ナトリウム、チタンおよび亜鉛のそれぞれを50質量ppm未満、具体的には40質量ppm未満、30質量ppm未満あるいは20質量ppm未満含む。
【0043】
一部の実施形態では、本質的に臭素と塩素を含まないポリエーテルイミドフィルム形成組成物とフィルムを使用することが望ましい。臭素と塩素を「本質的に含まない」とは、該フィルム形成組成物が、その質量に対して、臭素と塩素を3質量%未満有すること、また他の実施形態では、それらを1質量%未満有することを意味する。他の実施形態では、該組成物はハロゲンフリーである。「ハロゲンフリー」とは、ハロゲン含量(フッ素、臭素、塩素およびヨウ素の合計量)が、組成物合計質量に対して1000ppm以下であると定義される。ハロゲン量は、原子吸光法などの通常の化学分析で求められる。
【0044】
該ポリエーテルイミドフィルム形成組成物はさらに、例えば誘電率や熱膨張率などの特性を調節するために、1種または複数種の微粒子充填剤を選択的に含み得る。典型的な微粒子充填剤としては、溶融シリカや結晶シリカなどのシリカ粉末;窒化ホウ素粉末およびホウケイ酸粉末;アルミナおよび酸化マグネシウム(すなわちマグネシア);ケイ酸塩球;煙塵;セノスフェア;アルミノケイ酸塩(アーモスフェア(armospheres));天然ケイ砂;石英;珪岩;酸化チタン、チタン酸バリウム、バリウムストロンチウム、五酸化タンタル、トリポリ;珪藻土;合成シリカ;およびこれらの組み合わせが挙げられる。上記の充填剤はすべて、ポリマーマトリックス樹脂との接着性および分散性向上のために、シランで表面処理され得る。ポリエーテルイミドフィルム形成組成物中に微粒子充填剤が存在する場合、その量は大きく異なり得、所望の物性が効果的に得られる量となる。一部の例では、微粒子充填剤の量は、フィルム形成組成物の合計質量に対して0.1〜50体積%、0.1〜40体積%、あるいは5〜30体積%であり、より特定的には5〜20体積%である。
【0045】
該ポリエーテルイミドフィルム形成組成物は、添加剤によって、5質量%超のフッ素と1000質量ppm超のシリコーンとが与えられないように、あるいは組成物の所望の物性に著しい悪影響がないように添加剤が選択されることを条件として、誘電体基板ポリマー組成物に組み込まれる種々の添加剤を含み得る。ある実施形態では、いかなる添加剤の量も、分子量が250ダルトン未満の化合物の含量が1,000ppm未満となる量である。典型的な添加剤としては、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線(UV)吸収剤、失活剤、可塑剤、潤滑剤、帯電防止剤、難燃剤、防滴剤および放射線安定剤が挙げられる。添加剤の組み合わせも使用できる。一般に、これらの添加剤(充填剤はいずれも除く)の量はそれぞれ独立に、フィルム形成組成物の合計質量に対して0.005〜20質量%であり、具体的には0.01〜10質量%である。
【0046】
好適な酸化防止剤は、ホスファイト、ホスホナイト、ヒンダードフェノールまたはこれらの混合物などの化合物であり得る。トリアリールホスファイトとアリールホスホネートとを含むリン含有安定剤は有用な添加剤である。二官能性リン含有化合物も見過ごされ得る。好適な安定剤の分子量は300以上であり得る。典型的な化合物の一部としては、Ciba Chemical社からIRGAPHOS168として販売されているトリス−ジ−tert−ブチルフェニルホスファイトと、Dover Chemical社からDOVERPHOS S−9228として販売されているビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトと、が挙げられる。
【0047】
ホスファイトとホスホナイトの例としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルアルキルホスファイト、フェニルジアルキルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)−ペンタエリスリトールジホスファイト、ジイソデシルオキシペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6−トリス(tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリステアリルソルビトールトリ−ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチル−フェニル)4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)メチルホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)エチルホスファイト、2,2’,2’’−ニトリロ[トリエチルトリス(3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル)ホスファイト]、2−エチルヘキシル(3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル)ホスファイトおよび5−ブチル−5−エチル−2−(2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノキシ)−1,3,2−ジオキサホスフィランが挙げられる。
【0048】
2つ以上の有機リン化合物を含む組み合わせも考慮される。有機リン化合物が組み合わせで使用される場合、それらは同じタイプであっても異なるタイプであってもよい。組み合わせとしては、例えば、2つのホスファイトであってもよく、あるいはホスファイトとホスホナイトであってもよい。一部の実施形態では、分子量が300以上のリン含有安定剤が有用である。例えばアリールホスファイトなどのリン含有安定剤の組成物中の量は通常、組成物の合計質量に対して0.005〜3質量%であり、具体的には0.01〜1.0質量%である。
【0049】
例えば、アルキル化モノフェノールおよびアルキル化ビスフェノールまたはポリフェノールなどのヒンダードフェノールも酸化防止剤として使用できる。典型的なアルキル化モノフェノールとしては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール;2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール;2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール;2,6−ジ−tert−ブチル−4−n−ブチルフェノール;2,6−ジ−tert−ブチル−4−イソブチルフェノール;2,6−ジシクロペンチル−4−メチルフェノール;2−(α−メチルシクロヘキシル)−4,6−ジメチルフェノール;2,6−ジオクタデシル−4−メチルフェノール;2,4,6−トリシクロヘキシルフェノール;2,6−ジ−tert−ブチル−4−メトキシメチルフェノール;例えば2,6−ジ−ノニル−4−メチルフェノールなどの、側鎖が直鎖または分枝鎖のノニルフェノール;2,4−ジメチル−6−(1’−メチルウンデカ−1’−イル)フェノール;2,4−ジメチル−6−(1’−メチルヘプタデカ−1’−イル)フェノール;2,4−ジメチル−6−(1’−メチルトリデカ−1’−イル)フェノールおよびこれらの混合物が挙げられる。典型的なアルキリデンビスフェノールとしては、2,2’−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール),2,2’−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−エチルフェノール)、2,2’−メチレンビス[4−メチル−6−(α−メチルシクロヘキシル)−フェノール]、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−メチレンビス(6−ノニル−4−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(6−tert−ブチル−4−イソブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス[6−(α−メチルベンジル)−4−ノニルフェノール]、2,2’−メチレンビス[6−α,α−ジメチルベンジル)−4−ノニルフェノール]、4,4’−メチレンビス−(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(6−tert−ブチル−2−メチルフェノール)、1,1−ビス(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、2,6−ビス(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェノール、1,1,3−トリス(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチル−フェニル)−3−n−ドデシルメルカプトブタン、エチレングリコールビス[3,3−ビス(3’−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)ブチレート]、ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチル−フェニル)ジシクロペンタジエン、ビス[2−(3’−tert−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−メチルベンジル)−6−tert−ブチル−4−メチルフェニル]テレフタレート、1,1−ビス−(3,5−ジメチル−2−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ2−メチルフェニル)−4−n−ドデシルメルカプトブタン、1,1,5,5−テトラ−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ペンタンおよびこれらの混合物が挙げられる。
【0050】
ヒンダードフェノール化合物の分子量は300g/モル以上であり得る。高分子量であることによって、例えば300℃以上の高温の処理温度で溶融するポリマー中に、ヒンダードフェノール部分が保持され易くなり得る。ヒンダードフェノール安定剤の組成物中の量は通常、組成物の合計質量に対して0.005〜2質量%であり、具体的には0.01〜1.0質量%である。
【0051】
一部の実施形態では、再掲になるが、ポリマーによって、5質量%超のフッ素またはシリコンが与えられないように、あるいは組成物の所望の物性に著しい悪影響がないようにポリマーが選択されることを条件として、ポリエーテルイミドフィルム形成組成物はさらに、少なくとも1つの追加の非晶性ポリマーを選択的に含み得る。こうした追加のポリマーとしては、これに限定されないが、ポリ(フェニレンスルホン)類、ポリ(スルホン)類、ポリ(エーテルスルホン)類、ポリ(アリーレンスルホン)、ポリ(フェニレンエーテル)類、ポリカーボネート類、(ポリカーボネートホモポリマー類および、例えばポリエステルカーボネートコポリマー類などのポリカーボネートコポリマー類)およびこれらの混合物やコポリマー類などが挙げられる。該ポリマーが存在する場合、その量は、組成物の合計質量に対して0超〜12質量%であり、具体的には0.1〜10質量%であり、より具体的には0.5〜5質量%である。ある実施形態では、該フィルム形成組成物は該ポリエーテルイミド以外のポリマーを含まない。
【0052】
該ポリエーテルイミドフィルム形成組成物は、緊密混合を形成する条件下で成分を混合することにより調製できる。こうした条件には、多くの場合、単軸または二軸スクリュー押出機、ミキシングボウル、あるいは成分にせん断を印加できる同様の混合装置内での溶融混合が含まれる。二軸スクリュー押出機は、単軸スクリュー押出機より混合能力および自己拭き取り能力が高いことから、好適であることが多い。組成物中の揮発性不純物を除去するために、押出機の少なくとも1つのベント口を通して混合物を減圧することが好都合であることが多い。多くの場合、溶融に先立ってポリエーテルイミド(およびまたは他の添加剤)を乾燥させることは好都合である。溶融処理は、過剰なポリマー分解を避けるために290℃〜340℃で行われることが多いが、それでも十分に溶融させることによって、未溶融成分のない緊密ポリマー混合物が得られる。また、40〜100μmのキャンドルまたはスクリーンフィルタを用いて該ポリマー混合物を溶融濾過して、望ましくない黒斑や、例えば径が1μm超の粒子などの他の異種混入物質を除去することもできる。
【0053】
典型的なプロセスでは、該種々の成分を押出混合器に投入して連続したストランドを製造し、これを冷却後ペレット状に裁断する。別のプロセスでは、該成分を乾式混合によって混合後、ミル内で溶融・粉砕するか、あるいは押出して裁断する。また、該組成物と他の任意成分を混合し直接に押出して、フィルムを形成することもできる。ある実施形態では、これらの成分はすべて、できるだけ水分を含まない。また、混合は、機械中の滞留時間の短縮化、注意深い温度制御、摩擦熱の利用および成分間の緊密混合の形成が確実になされるように行われる。
【0054】
該組成物は、フラットダイ(flat die)を用いた、熱可塑性組成物用に従来から使用されている押出機を用いて押出せる。該押出キャストフィルム法は、押出機でポリマーを溶融するステップと、該溶融ポリマーをリップギャップが小さなフラットダイを経由して搬送するステップと、比較的高い巻き取り速度でフィルムを延伸するステップと、ポリマーを冷却・凝固化して最終のフィルムを形成するステップと、を備える。押出機は、単軸スクリュー式のものであっても二軸スクリュー式のものであってもよく、また、ダイを経由するポリマーの一定の非脈動流れを得るために、溶融ポンプを使用してもよい。ダイのリップギャップは100〜200μmと小さくてもよく、巻き取りローラーは最高速度200m/minで作動してもよい。該押出機には、フィルムをテンパー/アニールして、凍結内部応力の発生を最小化する加熱ロールが追加されていてもよい。多くの場合、フィルム端部はトリミングされ、フィルムは、張力調節巻き取り機構を用いてロール上に巻き取られる。一部の例では、複合材料を薄膜に延伸する前のポリマー中に、市販およびまたは実験的に官能化された充填剤を均一に分散し得る。この場合、均一な分散を得るための充填剤のポリマーマトリックス中への混合は、延伸操作前のポリマーの溶融に用いた押出機とは別個の押出機で行ってもよく、あるいはより好適には、同じ押出機で行ってもよい。比較的厚みの薄いこうした押出フィルムを望み通りに調製するためには、溶融ポリマーを一定の均一な流れで、ダイ経由で正確に送ること、フィルムを作るポリマーのレオロジー特性、樹脂および装置が両方とも清浄であること、および巻き取り機構の機械的な特性がすべて必要となるであろう。
【0055】
ある実施形態では、該押出キャストフィルム法は、大規模装置に拡張可能なワンステップであり、いかなる溶媒の使用も必要としない。高分子量のポリマーおよびまたはガラス転移温度が高いポリマーの場合であっても、この押出プロセスを適切にデザインすることによって、材料の熱分解または機械的分解を生じ得る過剰な温度とならないポリマー環境が得られる。該溶融物に対してろ過装置を使用することによって、それから適切に除去されていなければフィルムの誘電性能を損なうであろうゲルや黒斑などの混入物質を実質的に含まないフィルムが製造できる。この方法で製造されたフィルムは、織布全体に亘って均一な厚みを有する薄膜(10μmおよびさらにそれより薄い)であり、シワあるいは表面の波状の起伏がほとんどなく平坦であり、相対的に混入物質を含まない。
【0056】
該溶融組成物は、溶融ポンプにより、押出機ダイ経由で搬送される。ある実施形態では、該フィルムを250℃〜500℃、例えば300℃〜450℃の温度で押出し、押出したフィルムを一軸に延伸して誘電体基板フィルムを製造する。具体的には、該フィルム形成組成物の成分を混合、溶融および緊密混合後、ろ過して1μm超の粒子を除去し;前述の温度においてフラットダイ経由で押出し;その後一軸に延伸する。延伸後、下記のようにフィルムを直接金属化でき、あるいは貯蔵または出荷用に巻き取りロール上に巻き取りできる。フィルムの長さは少なくとも10mあるいは100〜10,000mであり得、幅は少なくとも300mmあるいは300〜3,000mmであり得る。フィルムの押出速度は変動し得る。市販の実施形態では、フィルムの押出速度は10lbs/hr(4.5kg/hr)〜1000lbs/hr(500kg/hr)であり得る。押出機ダイプレートからのフィルムの引抜き(巻き取り)速度は10m/min〜300m/minであり得る。
【0057】
フィルムはその少なくとも一面を金属化できる。フィルムの使用目的に応じて、例えば、銅、アルミニウム、銀、金、ニッケル、亜鉛、チタン、クロムおよびバナジウムなどの種々の金属が使用できる。フィルムの少なくとも平滑な面、すなわち、光学的形状測定法で求めたRaが±3%未満の面が金属化される。ポリマーフィルムの金属化方法は既知であり、例えば、真空金属蒸着、金属スパッタリング、プラズマ処理、電子照射処理、化学的酸化または還元反応および無電解湿式化学的蒸着などが挙げられる。該フィルムは、従来の無電解めっきによって両面を金属化できる。別の実施形態では、例えばインクジェット印刷によって、フィルムの表面上にパターン化された金属層を形成できる。該金属化層の厚みは、金属化フィルムの使用目的によって決定され、例えば、1Åから、1000nm、500nmまたは10nmまでの範囲であり得る。ある実施形態では、金属膜の厚みは1〜3000Å、1〜2820Å、1〜2000Åあるいは1〜1000Åであり得る。導電性金属を使用する場合、ポリマーフィルム上の金属層の抵抗率は0.1〜1000Ω/□、あるいは0.1〜100Ω/□であり得る。
【0058】
例えば金属層の接着を高めるために、金属化されるフィルムの表面を、例えば、洗浄、火炎処理、プラズマ放電、コロナ放電などによって予備処理できる。例えば、クリヤーコート(耐引っかき性を付与するポリ(メチルメタクリレート)やポリ(エチルメタクリレート))あるいはポリエーテルイミドフィルムの別の層を金属層上に堆積してラミネートを形成し得る。
【0059】
このように製造されたフィルムと金属化フィルムは、種々の有利な物性を有する。該フィルムは、シワなし領域、すなわち、十分に平滑であり、その表面が金属化されると、該金属化フィルムは、好都合なことに一貫した表面形態を有する領域を少なくとも1つ有する。ある実施形態では、未金属化フィルムの絶縁破壊強度は少なくとも300V/μm、少なくとも350V/μmあるいは少なくとも400V/μmである。ある実施形態では、未金属化フィルムの絶縁破壊強度は、最高520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640および650V/μmであり得る。
【0060】
該フィルムのシワなし領域の平坦度は、特定領域全体のフィルム厚変動を測定することにより求められる。ここで、平坦なフィルムのフィルム厚変動は、測定領域全体のフィルム平均厚に対して、±10%以下、±9%以下、±8%以下、±6%以下、±5%以下、±4%以下、±3%以下、±2%以下あるいは±1%以下である。ある実施形態では、該厚み変動は±1%と小さいものであり得る。
【0061】
該フィルム表面のシワなし領域の平滑度は、表面の平均表面粗さ(「Ra」)を光学的形状測定法で測定することにより定量化できる。ここで、フィルムのシワなし領域表面のRaは、光学的形状測定法で測定して、フィルム平均厚の±3%未満、±2%未満あるいは±1%未満と小さい。
【0062】
特に有利な特徴は、該シワなし領域がフィルムの大面積に亘って製造できることである。例えば、フィルム面積の少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%あるいは少なくとも97%は、シワなし領域であり得る。別の実施形態では、該シワなし領域は、面積が少なくとも1m
2、少なくとも2m
2、少なくとも3m
2、少なくとも5m
2、少なくとも10m
2、少なくとも20m
2、少なくとも50m
2、あるいは少なくとも100m
2の連続する領域を有し得る。大規模なシワなし領域によって、金属化フィルムがロール状で製造、貯蔵および出荷できるという点で、重要な製造上の長所が得られる。このように、該フィルムの長さは少なくとも10m、幅は少なくとも300mmであり、フィルム面積の少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%あるいは少なくとも97%はシワなし領域である。別の実施形態では、該フィルムの長さは100〜10,000m、幅は300〜3,000mmであり、フィルム面積の少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%あるいは少なくとも97%はシワなし領域である。
【0063】
該組成物と製造方法は、所望の性能特性、特に電気特性を実現するために変更できる。
【0064】
特に、該フィルムの誘電率は、2.7超、3.0超、3.2超、3.3超、3.4超、4.2超、4.3超、4.4超、4.5超あるいは最高7.0と高い。
【0065】
また、該フィルムの誘電率は、それが製造されるポリマーのTgまでの温度で安定であり得る。該フィルムは一般に、フィルムのポリマーのそれぞれのTg未満の温度、例えば約20℃低い温度環境で使用される。一実施形態では、フィルムの誘電率はさらに100℃まで、120℃まで、140℃まで、150℃まで、あるいは最高200℃または310℃まで安定であり得る。
【0066】
該フィルムと金属化フィルムは本質的に溶剤を含まないものであり得、すなわち、分子量が250ダルトン未満の化合物を1,000ppm未満、750ppm未満、500ppmあるいは250ppm未満含む。
【0067】
該フィルムと金属化フィルムは、ポリエーテルイミド層中に、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、ニッケル、カリウム、マンガン、モリブデン、ナトリウム、チタンおよび亜鉛のそれぞれを50ppm未満、25ppm未満あるいは10ppm未満含み得る。
【0068】
該フィルムと金属化フィルムは、フッ素含有化合物またはシリコーン含有化合物のそれぞれを1000ppm未満、500ppm未満、250ppm未満あるいは100ppm未満含み得る。
【0069】
該フィルムと金属化フィルムは、0.3mの距離で拡大なしで見たときに、少なくとも3m
2の、あるいは少なくとも9m
2の領域全体に亘って、観察できる塵やゲルを有さないものであり得る。
【0070】
該フィルムと金属化フィルムは、50倍拡大で見たときに、少なくとも3m
2の、あるいは少なくとも9m
2の領域全体に亘って、観察できる空洞を有さないものであり得る。
【0071】
該金属化フィルムの散逸率は、誘電分光法で測定して、0超〜5%未満、0超〜4%未満、0超〜3%未満、0超〜2%未満あるいは0超〜1%未満であり得る。一実施形態では、該フィルムの散逸率は小さく、すなわち、0.1%未満あるいは0.08%未満である。
【0072】
該ポリエーテルイミドフィルムは、任意の非晶性フィルム用途に使用でき、特に、金属化に好適である。該金属化フィルムは、任意の金属化フィルム用途に使用でき、特に、例えばコンデンサあるいは回路材料として電気用途に好適である。円筒状に巻かれた金属化ポリマーフィルムを用いて、高エネルギー密度および高電圧の無極性コンデンサを製造できる。特定の実施形態では、該ポリエーテルイミドフィルムは、押出後、真空チャンバ内で蒸着により、厚みが1Å〜1000nm、1〜3000Åあるいは1〜1000Åになるまで、銅またはアルミニウムなどの導電性金属を移動中のポリマー上にスプレーすることによって金属化される。ポリマーフィルム上の金属の抵抗率は、約0.1Ω/□〜100Ω/□であり得る。金属化プロセスの前に、ポリマーフィルムを適切にマスキングしてフィルムの幅方向端部に未金属化縁を作ることができ、それによって、金属化フィルムの交互層(コンデンサを組み立てた場合)が反対端部において未金属化領域を有して、最終的に先端部を金属化する際の、コンデンサ電極の電気的な短絡を防止する。
【0073】
その後、積み重ねた2枚の金属化ポリマーフィルムをチューブ状に巻くことにより、コンデンサが製造できる。電線が各金属層に接続される。特定の実施形態では、2個の別個の金属化フィルムロールをコンデンサ巻き取り機に投入し、マンドレル(これは、その後除去してもよい)上で互いにしっかり巻くことにより、コンデンサの典型的な構成、すなわち、対向面上に2つの金属化層を有する誘電体を再現して、ポリエーテルイミド/金属化層/ポリエーテルイミド/金属化層の順に層が配置される。該2個のフィルムロールは、対向面上の未金属化縁で巻かれる。
【0074】
コンデンサの巻き程度は、コンデンサの所望の物理的サイズあるいは所望のキャパシタンスに依存する。2個のロールをしっかりと巻くことによって、残存していれば絶縁破壊を早め得る取り込み空気の除去に役立つ。HEPAフィルタが組み込まれた、少なくともクラス100のクリーンルーム環境で個々のコンデンサを処理することによって、誘電体フィルム層間の接点の異物混入の可能性を低減でき、また、誘電体への水分取り込みを低減できる。電気巻き上げを用いることにより、各コンデンサの均一な張力がより良好に維持され得る。その後、コンデンサの端部にテープを貼り、両端開口のトレー内でストラップで縛って、フィルム層のほどけを防止し、また、例えば、高亜鉛含量はんだと、その後のスズ90%、亜鉛10%を含む標準の柔軟な最終スプレーはんだなどの導体素子で、円筒の縁部および先端部をスプレーできる。この最初のスプレーによって、金属化表面にはスクラッチが生じて溝ができ、これによって、誘電体フィルム上の金属化とのより良好な接触が実現される。さらに、最終スプレーを組み合わせることによって、最終端子とのより良好なコンタクト接着が得られる。その後、例えばアルミニウム鉛などの導電体を各先端部にはんだ付けして、最終端子を形成できる。1つの端子は、缶の底部にスポット溶接でき、もう一方の端子は、蓋に並行溶接できる。真空充填装置内で、該コンデンサに液状含浸物(例えばイソプロピルフェニルスルホン)を満たして閉じる。
【0075】
本発明は少なくとも以下の実施形態を含む。
【0076】
実施形態1:ポリエーテルイミドと5質量%未満のフッ素とを含む一軸延伸押出フィルムであって、前記フィルムは、第1の表面と第2の表面を有するシワなし領域であって、厚みが0超〜13μm未満であり、前記厚みの変動が前記フィルム厚の±10%以下であり、光学的形状測定法で測定した平均表面粗さが前記フィルムの平均厚の±3%未満であるシワわし領域を少なくとも1つ有しており、前記フィルムはさらに、1KHzおよび室温での誘電率が少なくとも2.7であり、1kHzおよび室温での散逸率が1%以下であり、絶縁破壊強度が少なくとも300V/μmである、ことを特徴とする押出フィルム。
【0077】
実施形態2:前記フィルムの長さは少なくとも10m、幅は少なくとも300mmであり、前記フィルムの面積の少なくとも80%が前記シワなし領域であることを特徴とする実施形態1に記載のフィルム。
【0078】
実施形態3:前記フィルムの長さは100〜10,000m、幅は300〜3,000mmであることを特徴とする実施形態1または実施形態2に記載のフィルム。
【0079】
実施形態4:前記フィルムは、分子量が250ダルトン未満の化合物を1,000ppm未満有することを特徴とする実施形態1乃至実施形態3のいずれかに記載のフィルム。
【0080】
実施形態5:前記フィルムは、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、ニッケル、カリウム、マンガン、モリブデン、ナトリウム、チタンおよび亜鉛のそれぞれを50ppm未満有することを特徴とする実施形態1乃至実施形態4のいずれかに記載のフィルム。
【0081】
実施形態6:フッ素含有化合物またはシリコーン含有化合物のそれぞれを1000ppm未満含むことを特徴とする実施形態1乃至実施形態5のいずれかに記載のフィルム。
【0082】
実施形態7:フッ素含有化合物またはシリコーン含有化合物を100ppm未満含むことを特徴とする実施形態1乃至実施形態6のいずれかに記載のフィルム。
【0083】
実施形態8:前記フィルムは、0.3mの距離で拡大なしで見たときに、少なくとも3m
2の領域全体に亘って、観察できる塵やゲルを有さないことを特徴とする実施形態1乃至実施形態7のいずれかに記載のフィルム。
【0084】
実施形態9:前記フィルムは、50倍拡大で見たときに、少なくとも3m
2の領域全体に亘って、観察できる空洞を有さないことを特徴とする実施形態1乃至実施形態8のいずれかに記載のフィルム。
【0085】
実施形態10:前記シワなし領域の少なくとも1つの表面の表面粗さRaは、前記フィルムの平均厚みの3%未満であり、前記フィルム厚は7μm未満であることを特徴とする実施形態1乃至実施形態9のいずれかに記載のフィルム。
【0086】
実施形態11:前記ポリエーテルイミドのTgは135℃より高いことを特徴とする実施形態1乃至実施形態10のいずれかに記載のフィルム。
【0087】
実施形態12:前記ポリエーテルイミドの質量平均分子量は、ポリスチレン標準を基準とするゲル透過クロマトグラフィで求めて20,000〜400,000ダルトンであることを特徴とする実施形態1乃至実施形態11のいずれかに記載のフィルム。
【0088】
実施形態13:前記非晶性ポリマーは、質量平均分子量が10,000〜80,000ダルトンのポリエーテルイミドであることを特徴とする実施形態1乃至実施形態12のいずれかに記載のフィルム。
【0089】
実施形態14:前記ポリエーテルイミドは、下式のポリエーテルイミドであることを特徴とする実施形態1乃至実施形態13のいずれかに記載のフィルム:
【化10】
式中、aは1より大きく;
Vは、下式の四価芳香族基であり、
【化11】
式中、Wは−O−、−O−Z−O−、−SO
2−またはこれらの組み合わせから選択された二価部分であり、−O−、−O−Z−O−および−SO
2−基の二価結合は3,3’、3,4’、4,3’または4,4’位置にあり、Zは選択的に1〜8個のC
1−8アルキル基、1〜8個のハロゲン原子あるいはこれらの組み合わせで置換されたC
6−24単環式あるいは多環式部分であり;
Rは、C
6−20芳香族炭化水素基、そのハロゲン化誘導体、C
2−20直鎖または分枝鎖アルキレン基、C
3−20シクロアルキレン基あるいは、下式の二価基から選択され、
【化12】
式中Q
1は−O−、−S−、−C(O)−、SO
2−、−SO−、C
yH
2y−(yは1〜5)およびこれらのハロゲン化誘導体である。
【化13】
式中、Tは−O−または−O−Z−O−基であり、−O−または−O−Z−O−基の二価結合が3,3’、3,4’、4,3’または4,4’位置にあり、Zは下式の二価基であり、
【化14】
式中Qは−O−、−S−、−C(O)−、SO
2−、−SO−またはC
yH
2y(yは1〜5の整数)であり;
Rは、下式の二価基であり、
【化15】
式中Q
1は−O−、−S−、−C(O)−、SO
2−、−SO−または−C
yH
2y−(yは1〜5の整数)である。
【0090】
実施形態15:Rがm−フェニレン、p−フェニレン、ジアリールスルホンあるいはこれらの組み合わせであることを特徴とする実施形態13または実施形態14に記載のフィルム。
【0091】
実施形態16:実施形態1乃至実施形態15のいずれかに記載のフィルムを含む物品。
【0092】
実施形態17:実施形態1乃至実施形態15のいずれかに記載のフィルムの一部を含む物品。
【0093】
実施形態18:前記シワなし領域の少なくとも一部分上に堆積された導電性金属の層をさらに備えることを特徴とする実施形態16または実施形態17に記載の物品。
【0094】
実施形態19:前記導電性金属は、アルミニウム、亜鉛、銅あるいはこれらの組み合わせを含むことを特徴とする実施形態18に記載の物品。
【0095】
実施形態19:前記導電性金属層の厚みは1〜3000Åであることを特徴とする実施形態17または実施形態18に記載の物品。
【0096】
実施形態20:前記導電性金属層の厚みは1〜1000Åであることを特徴とする実施形態17乃至実施形態19のいずれかに記載の物品。
【0097】
実施形態21:前記導電性金属層の抵抗率は0.1〜100Ω/□であることを特徴とする実施形態17乃至実施形態20のいずれかに記載の物品。
【0098】
実施形態22:前記導電性金属層は、化学気相蒸着法、高温真空操作またはこれらの組み合わせによって堆積されることを特徴とする実施形態1乃至実施形態21のいずれかに記載の物品。
【0099】
実施形態23:実施形態17乃至実施形態22のいずれかに記載の金属化巻きフィルムを含むことを特徴とするコンデンサ。
【0100】
実施形態24:実施形態23に記載のコンデンサを備えることを特徴とする電子物品。
【0101】
別の実施形態では、本発明は、一軸延伸押出金属化巻きフィルムで製造されたコンデンサを備えた電子物品に関する。
【0102】
他のコンデンサ構造も可能である。例えば、コンデンサは、積層構造で堆積された第1および第2電極と、前記第1および第2電極のそれぞれと少なくとも部分的に接触して、それらの間に配置された該ポリエーテルイミドフィルムと、を少なくとも備えた平坦構造を有し得る。追加のポリエーテルイミドフィルムと電極層は、交互層に存在し得る。従って、電子デバイスを形成する多層物品は、ポリエーテルイミド層/金属層/誘電体層(この誘電体層は、本明細書に記載のポリエーテルイミドフィルムであっても、あるいは他の誘電体材料であってもよい)を含み、本請求項の範囲内である。追加の層(例えば、追加の交互の誘電体/金属層)も選択的に存在し得る。
【0103】
以下の実施例は、当業者に対して追加のガイダンスを与えるためのものである。従って、これらの実施例は、いかなる方法においても、本発明を限定するものではない。
【0104】
実施例
材料
以下の実施例では、ポリエーテルイミドポリマー(SABIC INNOVATIVE PLASTICS社のULTEM1000)とポリエーテルイミド−ポリジメチルシロキサンポリマー(同じく、SABIC INNOVATIVE PLASTIC社)を使用した。実施例で記載した量は、組成物の合計質量に対する質量%である。
【0105】
技術と手順
フィルムと金属化フィルムの製造
配合前に、すべての成分を混合し、温度250°F(121℃)で乾燥させた。2.5インチ(63.5mm)S−4単軸スクリュー真空ベント型押出機で混合物(grades)を配合した。バレル温度プロファイル650°F〜670°F(343℃〜354℃)、スクリュー回転速度70〜80rpmで押出してペレット化した。
【0106】
ペレットを275°F(135℃)で一晩乾燥後、上記のように押出して金属化用のフィルムを得た。
【0107】
アルミニウム、亜鉛またはこれらの混合物を蒸着させて薄膜を金属化するか、あるいは、ホイルを単にフィルム上に置いて、コンデンサでの使用に好適な材料を形成する。この金属化フィルムは、貯蔵および後処理用として、ロール状に巻かれる。
【0108】
試験手順
フィルムから光を反射させ、反射光を波長範囲で分析することによってフィルム厚を測定するスペクトル反射式の、Filmetrics社(サンディエゴ(CA))製のFilmetrics F20薄膜測定システムを用いて、フィルム厚を測定する。
【0109】
Wyko NT100製の光学的形状測定器を該測定器の標準作動モードで作動させて、表面粗さを求める。測定値は、Ra、Sqなどの従来のヘッディングの下で報告されるが、ここで、「R」は、測定値が二次元データを用いて計算され、直線またはプロファイル粗さを表すことを示し、「S」は、測定値が三次元データを用いて計算され、表面あるいは領域粗さを表すことを示す。2番目の文字は、計算に用いた式タイプを示しており、例えば、「a」は算術式を示し、「q」は二乗平均平方根式を示す。
【0110】
既知の金属汚染測定法であるICP(Inductibly Coupled Plasma Spectroscopy)を用いて金属汚染を求めた。
【0111】
誘電分光法を用いて誘電率(DK)および散逸率(DF)を求めた。厚みが非常に均一なポリエーテルイミドフィルムを試験サンプルとして使用する。マイクロメータまたは光学的厚さゲージ(フィルムが透明な場合)を用いてフィルム厚dを正確に求める。スパッタリングまたは熱蒸発を用いて、面積Aが既知の金またはアルミニウム電極をフィルムサンプルの両面上に堆積する。その後、金属化されたサンプルを温調されたチャンバに入れ、Novocontrol Broadband Dielectric Spectrometersなどの誘電体スペクトラムアナライザに電気的に接続する。該スペクトラムアナライザによって、キャパシタンスCおよび散逸率DFを測定する。測定されたキャパシタンス、面積およびサンプル厚からサンプルのDKを算出する:
【数1】
式中、ε
0=8.85×10
−12F/m(真空誘電率定数)である。
【0112】
ASTM D−149に準拠して、誘電体絶縁破壊強度を求めた。厚みが均一な1枚のポリエーテルイミドフィルムを試験サンプルとして使用し、DKおよびDF測定と同じ方法を用いてその厚みを測定する。フィルムサンプルはその表面に堆積された電極のない露出フィルムとして試験される。底部電極が平坦型銅プレート、上部電極が1/4インチ径のステンレスボールである2つの金属電極間にフィルムサンプルを置く。絶縁破壊測定中に、0Vから500V/secの一定速度で連続的に増加するDC電圧を2つの電極間のサンプルに印加する。DC電圧は、Hipotronics DC Power Supplyなどの高電圧電源を用いて印加する。絶縁破壊が生じるまで電圧は上昇し、絶縁破壊によって大電流が生じ、電源はその保護回路によって自動的にリセットされる。最高の到達電圧が絶縁破壊電圧V
BDとして記録され、絶縁破壊電場E
BDは、V
BD/フィルム厚dで求められる。別の方法が特定されない限り、この方法を用いた。
【0113】
方法2では、小さな電極を用いて、フィルムの限定された部分の絶縁耐力を調べる。この方法によって、欠点とは無関係の材料特性であるフィルムの固有の強度を測定する。
【0114】
方法3では、より大きな電極を用いて、フィルムのより大きな部分の絶縁耐力を調べる。この方法は、それが材料とフィルム処理から来る欠点を考慮しているため、実際のコンデンサでのフィルム挙動をより表わしていると考えられる。
【0115】
長期間の使用で保証済みの機能、温度計および同様の特徴を有する絶縁抵抗計を用いて、絶縁抵抗を測定する。
【0116】
比較実施例AおよびB
厚みが5μmの押出ポリエーテルイミドフィルムのサンプル(比較実施例A1)と厚みが7μmの同サンプル(比較実施例A2)について、上記の方法1を用いて絶縁破壊強度試験を行った。結果を表1に示す。
【表1】
【0117】
厚みが5μmの押出ポリエーテルイミドフィルムのサンプル(比較実施例B1)と厚みが7μmの同サンプル(比較実施例B2)について、上記の方法2を用いて絶縁破壊強度試験を行った。結果を表2に示す。
【表2】
【0118】
比較実施例AおよびBは共に、方法1の手順において許容可能な性能を示すフィルムであっても、方法2の手順では性能が落ちることを示している。方法2の手順では、フィルム表面の広い領域について試験しており、コンデンサ内のフィルムの性能に影響し得る、材料とフィルム処理から来るフィルム欠陥の検出に好適であるように見える。
【0119】
実施例1
ポリマー樹脂を溶融ろ過して、40μm未満の微粒子を除去した後、幅590mm×長さ2000mmの5μm厚(実施例1A)および7μm厚(実施例1B)のテストフィルムを押出した。結果を表3および表4に示す。
【表3】
【表4】
【0120】
表3のデータは、微粒子除去のための溶融ろ過によって、未ろ過の比較実施例と比べて、表面粗さが低減され、絶縁破壊強度が向上することを示している。表4から、実施例1Aおよび1Bのろ過されたサンプルは、厚みが織布全体に亘って非常に一貫していることがわかる。これらの特性は、コンデンサの有効な誘電体としてのフィルムの性能に直接関係している。サイズ/表面粗さの変動によって、表面の金属化の質に悪影響が及ぼされる可能性があり、コンデンサ、特により大きなサイズのコンデンサでの使用適合性の低下と関連している。
【0121】
実施例2
実施例1と同様に、溶融ろ過した樹脂を用いてフィルムを押出した後、フィルムの1面をアルミニウムで金属化して厚みが約100Åの層を堆積した。この金属化フィルムを巻いて鉛を取り付け、0.18mF静電容量フィルムコンデンサに組み込んだ。このコンデンサの保存キャパシタンスを温度範囲に対して評価し、結果を表5に示す。
【表5】
【0122】
表5の結果は、高温でキャパシタンスが保存されていることを示している。
【0123】
上記の方法に準拠して、電気エネルギーから熱への不可逆変換の指標である散逸率に関してコンデンサを評価し、その結果を表6に示す。
【表6】
【0124】
表6の結果は、高温であっても、散逸率が1%未満に維持されることを示している。電気機器仕様書では、散逸率が特定値以下であることが要求されていることが多く、例えば、ハイブリッド自動車(HEV)インバータ仕様書では散逸率が1%未満であることが要求されている。
【0125】
印加電圧下で流れるリーク電流に対する絶縁抵抗と温度との関係について、コンデンサを試験した。結果を表7に示す。
【表7】
【0126】
表7の結果は、温度170℃、300VDCまで絶縁抵抗が残っていることを示している。
【0127】
比較実施例C
厚みが5μmのポリエーテルイミドフィルムのサンプルを、幅550mmのシートとして押出し、長さが3000mの6個のロール(実施例C−1〜実施例C−6)および2900mの1個のロール(実施例C−7)に集めた。厚みが7μmのフィルム1枚を押出して実施例C−8として表示した。これらのフィルムの厚みと絶縁破壊電圧を評価し、その結果を表8に示す。
【表8】
【0128】
表8のデータは、これらのフィルムが比較的一貫した厚みを有することを示している。しかしながら、絶縁破壊電圧は非常に変動しており、平均値は、3ロールで300未満に低下した。また、これらのサンプルには、織布全体に亘って顕著な質の問題があり、フィルムを金属化およびコンデンサへの巻き取りに好適なものとするシワなし領域がなかった。これらの実施例と本発明のものとの差異によって、これらのフィルムは、第1の面と第2の面とを有し、厚みが0超〜7μm未満である少なくとも1つのシワなし領域を有さず;フィルムの厚みの変動はフィルム厚の±10%以下ではなく、光学的形状測定法で測定した平均表面粗さはフィルムの平均厚の±3%未満ではない、ということに繋がった。
【0129】
実施例3
厚みが5μmのポリエーテルイミドフィルムのサンプルを幅580mmのシートとして押出し、長さ3000mのロールに集めた。ロール幅方向の20カ所で、このフィルムの厚み、絶縁破壊電圧および絶縁破壊強度を評価した。データを表9に示す。試験を繰り返して行い、データを表10に示す。
【表9】
【表10】
【0130】
表9のデータは、優れた絶縁破壊強度を示している。また、ロール上で全体的に平滑な外観を有するシワなし領域が、織布の幅全体に亘って目視観察された。この実施例から、フィルムが標準偏差が非常に小さな比較的高い絶縁耐力を有していることが証明され、このことは、フィルムの特性が均一であり、優れていることを示唆している。言い方を変えると、この実施例から、フィルムは、第1の表面と第2の表面を有するシワなし領域であって、厚みが0超〜7μm未満であり、厚みの変動がフィルム厚の±10%以下であり、光学的形状測定法で測定した平均表面粗さが前記フィルムの平均厚の±3%未満であることを特徴とするシワわし領域を少なくとも1つ有しており、フィルムはさらに、1KHzおよび室温での誘電率が少なくとも2.7であり、1kHzおよび室温での散逸率が1%以下であり、絶縁破壊強度が少なくとも300V/μmであることを証明している。
【0131】
本明細書で引用された特許および参考文献はすべて、参照によって本明細書に援用される。
【0132】
例示の目的で典型的な実施形態について記載したが、これらの記述は本発明の範囲を限定するものであると考えられるべきでない。従って、当業者であれば、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、種々の変更、順応および代替案を考え得るであろう。