【実施例1】
【0013】
[1]全体の構成
本発明の真空暖房機用の減圧蒸気発生器1は、筐体11と、筐体11の内部に配置する熱源12、熱交換部13、及び排気管15、からなる(
図1)。
【0014】
(1)筐体
本発明の真空暖房機用の減圧蒸気発生器1は、放熱器の下部に取り付けて一体として使用するものであるため、筐体11は所定の性能を得る仕様の熱源、熱交換部、排気管、熱媒液、充填材を収納できるよう、矩形、丸形等の適切な形状とする。
筐体11の内部には、水や不凍液などからなる熱媒液2を貯留する。
【0015】
(2)熱源、熱交換部及び排気管
筐体11の内部には、バーナーや電気ヒーターなどからなる熱源12と、熱源12に接続する熱交換部13を配置する。
熱源12は、外部から導入した空気を加熱するものである。
熱交換部13は中空の筒体であり、一方の端部は熱源12に接続し、もう一方の端部は排気管15と連続する。
排気管15は一方の端部を熱交換部13と連続し、他方の端部を筐体11から突出する。排気管15はU字状に折り返してもよいし、一直線状に筐体11から突出させてもよい。
外部から導入した空気を熱源12により加熱し、加熱空気を熱交換部13に導入する。そして、加熱空気の持つ熱が熱交換部13を介して熱交換部13の周囲の熱媒液2に伝達されることにより、熱媒液2を加熱して、蒸気を発生する。
加熱空気は熱交換部13から排気管15を経由して筐体11の外部に排出する。
熱交換部13は、表面にウール体131を設ける。
筐体11の内部には、ウール体131の回りに耐熱材料からなる充填材14を充填する。
充填材14は加熱時に生じる沸騰音を抑制する機能を有する。
【0016】
(3)ウール体
ウール体131は、金属製のウール状の部材であり、熱交換部13の外周に取り付ける。(
図2)
ウール体131はウール状であり、内部に空隙を有するが、その空隙率は充填材14を筐体11に充填した時の空隙率よりも格段と、又は数十倍以上大きくする。
ウール体131はウール状であるため伸縮性を有し、熱交換部13に密着することができる。
また図示しない結束具によりウール体131を熱交換部13に密着してもよい。
【0017】
[2]使用状態
(1)熱交換
減圧蒸気発生器1内の熱源12を作動し、熱源12で加熱した空気を熱交換部13に導入する。
減圧蒸気発生器1は、内部を減圧した状態で放熱器と接続する。ここで加熱された空気を熱交換部13内に導入し、熱交換部13に接触する熱媒液2が加熱されると、減圧状態の圧力に対応する沸点に達した瞬間から、沸騰し気泡を生じる。
【0018】
(2)ウール体の効果
(2.1)気泡の剥離
熱交換部13の表面にはウール体131が配置されている。
ウール体131内部の空隙率は充填材14を筐体11に充填した時の空隙率の数十倍以上にも達する。このため、熱媒液2の対流と気泡の剥離が阻害されにくくなる。このことにより、熱交換部13に供給される熱を常に熱媒液2へと伝達することができる。
また、ウール体131は熱交換部13に密着しているため、熱交換部13表面で発生した気泡がウール体131の空隙以上に大きく成長することがなく、沸騰音を助長することもない。
【0019】
(2.2)局所加熱防止
熱交換部13に供給される熱を常に熱媒液2へと伝達することができると、熱交換部13等の過熱が抑えられる。
図3は、ウール体131を使用しない場合及びウール体131を熱交換部13に配置した場合における、熱量9200kcal/hで加熱した場合の排気温度(排気管の端部で測定)を比較したものである。
ウール体131には線径0.13mmのSUS304線を扁平にして直径約4mmのカール状にしたものを使用した。熱媒液温度は15〜20℃で加熱を開始した。
ウール体131を使用しない場合は加熱開始から約8分間に渡って一時的に排気温度が高い状態を呈している。これは、低沸点となる減圧下で、大きい熱量で加熱していることで沸騰が激しく、熱交換部13表面が気泡で覆われているために、熱交換部13から熱媒液2への熱伝達性能が著しく低下していることを示している。
一方、ウール体131を使用した場合は前記の現象は起こらず、排気温度は熱媒液温度(図示せず)とほぼ一定の温度差を保ちながら、特異現象もなく自然な上昇を示した。
使用後に熱交換部13の状態を点検したところ、ウール体131を使用しない場合は高温気体が通過する熱交換部13内面に高温酸化に伴う変色が認められた。一方、ウール体131を使用した場合は、上記熱交換部13内面は使用開始前と変わらない色と光沢を維持していることが確認された。試験から明らかとなった両者の違いを表1に示す。
以上のように、熱交換部13等の過熱が抑えられ、接合部等の応力集中を招きやすい箇所への熱応力の集中が抑えられることにより、その箇所での亀裂の発生を防止でき、減圧蒸気発生器1の長寿命化が図れ、熱効率が低下しないよう改善することができる。
【0020】
【表1】
【0021】
[その他実施例]
前記実施例においては、熱交換部13の表面にウール体131を配置したが、熱交換部に加えて熱源12や排気管15の表面にウール体131を配置してもよい。(
図4)
熱源12や排気管15の表面においても気泡が発生するため、熱源12や排気管15の表面にウール体131を配置することにより、より減圧蒸気発生器1の長寿命化に繋がる効果をもたらす。
【0022】
また、ウール体131の周囲を充填材14の粒径より網目が小さいステンレス等の金網132で覆う(
図5)ことにより、上記ウール体131の効果を最大限に発揮させることができる。
前記段落0019に記載の試験結果から、金網132を使用しなくともウール体131の効果は得られている。しかし、減圧に際し、ウール体131は回りに充填した充填材14により、ウール体131が本来持っている空隙が圧縮されるため、熱媒液2が円滑に対流できる空隙が減少してしまう。
この対策として、ウール体131の周囲を、充填材14の粒径より網目が小さい金網132で覆うことにより、減圧下においても金網132が補強材となり、ウール体131の空隙の圧縮を抑制することができる。
【0023】
図6は熱交換部13をウール体131で覆い、ウール体131をさらに金網132(SUS304平織金網、線径φ0.34×30メッシュ)で覆ってから充填材14を詰めた場合及び金網132を使用しない場合での、減圧に伴うウール体131の空隙の減少率を比較したものである。減圧時の圧力は−73kPa(ゲージ圧)である。
金網132を追加することにより、ウール体131の空隙の減少率は77%から95%へ向上していることが分かる。
従って、金網132を追加することにより、熱媒液2の対流を円滑に行わせて気泡の剥離を容易にし、熱交換部13の過熱による熱応力集中に伴う亀裂の発生を防止する効果を一層発揮することが可能となる。