特許第5960290号(P5960290)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5960290ブレーキシリンダ装置及びディスクブレーキ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5960290
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】ブレーキシリンダ装置及びディスクブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/14 20060101AFI20160719BHJP
   F16D 121/04 20120101ALN20160719BHJP
   F16D 121/06 20120101ALN20160719BHJP
   F16D 125/04 20120101ALN20160719BHJP
   F16D 125/06 20120101ALN20160719BHJP
   F16D 127/00 20120101ALN20160719BHJP
   F16D 129/02 20120101ALN20160719BHJP
【FI】
   F16D65/14
   F16D121:04
   F16D121:06
   F16D125:04
   F16D125:06
   F16D127:00
   F16D129:02
【請求項の数】12
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2014-556365(P2014-556365)
(86)(22)【出願日】2013年12月20日
(86)【国際出願番号】JP2013084207
(87)【国際公開番号】WO2014109209
(87)【国際公開日】20140717
【審査請求日】2015年6月26日
(31)【優先権主張番号】特願2013-1063(P2013-1063)
(32)【優先日】2013年1月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小澤 洋一郎
【審査官】 谷口 耕之助
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 65/14
F16D 121/04
F16D 121/06
F16D 125/04
F16D 125/06
F16D 127/00
F16D 129/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、圧力流体によってブレーキ力を出力する流体ブレーキ機構と、鉄道車両の駐車時に用いられる駐車バネブレーキ機構と、を備えたブレーキシリンダ装置であって、
前記シリンダは、筒状に形成され一方側にシリンダ底部を有するシリンダ本体、及び、該シリンダ本体内のシリンダ空間を該シリンダ本体の筒軸方向における前記シリンダ底部側の第1空間とその反対側の第2空間とに仕切るように前記シリンダ本体に固定される仕切部、を有し、
前記流体ブレーキ機構は、前記第1空間に配置される第1ピストン、前記シリンダ本体に固定される第1支持部に一端が当接し前記第1ピストンを前記シリンダ底部に近づく退避方向へ付勢する第1バネ、及び、前記第1空間における、前記第1バネの収容空間に対して前記第1ピストンを挟んだ反対側の第1圧力室、を有し、該第1圧力室に圧力流体が供給されることで、前記第1バネの付勢力に抗して前記第1ピストンが前記シリンダ底部から離れる進出方向へ移動するように構成され、
前記駐車バネブレーキ機構は、前記第2空間に配置される第2ピストン、該第2ピストンから前記進出方向へ筒状に延びる第2ピストン筒部、前記シリンダ本体に固定される第2支持部に一端が当接し前記第2ピストンを前記第2ピストン筒部を介して前記進出方向へ付勢する第2バネ、及び、前記第2空間における、前記第2バネの収容空間に対して前記第2ピストン筒部を挟んだ反対側の第2圧力室、を有し、該第2圧力室に圧力流体が供給されている状態から排出される状態へと移行することで、前記第2バネの付勢力により前記第2ピストンが前記進出方向に移動するように構成され、
前記第2バネは、前記第2ピストン筒部の内側に配置され、
前記第2圧力室は、前記第2ピストン筒部の外側に配置されていることを特徴とする、ブレーキシリンダ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のブレーキシリンダ装置において、
前記第2支持部は、前記進出方向に進出した状態の前記第2ピストンにおける前記進出方向側の端部よりも前記仕切部側に配置されていることを特徴とする、ブレーキシリンダ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のブレーキシリンダ装置において、
前記第2支持部は、前記仕切部における前記第2空間側の部分であることを特徴とする、ブレーキシリンダ装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のブレーキシリンダ装置において、
前記第1支持部は、前記仕切部における前記第1空間側の部分であることを特徴とする、ブレーキシリンダ装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のブレーキシリンダ装置において、
前記第2ピストン及び前記第2ピストン筒部は、別体で形成されて互いに係合することを特徴とする、ブレーキシリンダ装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のブレーキシリンダ装置において、
一方側の領域が前記第1バネの収容空間に繋がり該第1バネの収容空間を外部へ連通させるための通気路を備え、
前記通気路における前記一方側の領域は、鉄道車両に固定された状態の前記ブレーキシリンダ装置における、前記第1バネの収容空間側から水平方向に対して下方へ延びる第1通路であることを特徴とする、ブレーキシリンダ装置。
【請求項7】
請求項6に記載のブレーキシリンダ装置において、
前記通気路における前記一方側の領域のうち前記第1バネの収容空間に繋がる領域は、鉄道車両に固定された状態の前記ブレーキシリンダ装置における前記第1バネの収容空間の下部に繋がっていることを特徴とする、ブレーキシリンダ装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のブレーキシリンダ装置において、
底部を有する筒状に形成された有底筒部と、
前記有底筒部の筒軸方向に進退可能なように該有底筒部内に配置されるピストン部と、
前記ピストン部から前記有底筒部の開口側へ延びるように形成され、該有底筒部から進出することにより先端部が該有底筒部から露出する一方、該有底筒部へ後退することにより前記先端部が該有底筒部へ収容されるインジケータ部と、
前記ピストン部を前記筒軸方向の一方側へ付勢するように前記有底筒部内に配置される弾性部材と、
前記有底筒部の内部空間における前記ピストン部を挟んだ前記弾性部材と反対側の圧力流体空間を、前記第2圧力室に連通する連通路と
を有するインジケータ機構を更に備え、
前記インジケータ部は、前記連通路を介して前記圧力流体空間へ流入する圧力流体により、前記弾性部材の付勢力に抗して前記有底筒部から進出又は前記有底筒部へ後退することを特徴とする、ブレーキシリンダ装置。
【請求項9】
請求項8に記載のブレーキシリンダ装置において、
駐車ブレーキ手動解除機構を更に備え、
前記弾性部材は、前記インジケータ部が前記有底筒部から進出する方向へ前記ピストン部を付勢するように前記有底筒部内に配置され、
前記インジケータ機構は、前記インジケータ部が前記弾性部材によって付勢されて前記有底筒部から進出する進出位置と、前記圧力流体空間に前記第2圧力室からの圧力流体が流入することで前記有底筒部へ後退する後退位置と、に切替可能に構成され、
前記駐車ブレーキ手動解除機構は、前記シリンダに対して進退可能な操作ロッドを有し、該操作ロッドが前記シリンダ側へ付勢部材の付勢力によって押し込まれた状態において前記第2ピストンに対する前記第1ピストンの係合を保持するロック位置と、前記操作ロッドが前記シリンダ側から引っ張られると前記第2ピストンに対する前記第1ピストンの係合を解除して駐車バネブレーキ機構によるブレーキを解除する解除位置と、に切替可能に構成されていることを特徴とする、ブレーキシリンダ装置。
【請求項10】
請求項9に記載のブレーキシリンダ装置において、
前記操作ロッド及び前記インジケータ部は、前記操作ロッドにおける前記ロック位置と前記解除位置との判別、及び、前記インジケータ部における前記進出位置と前記後退位置との判別が、少なくとも一方向から視て同時に可能なように設置されていることを特徴とする、ブレーキシリンダ装置。
【請求項11】
請求項10に記載のブレーキシリンダ装置において、
前記インジケータ部は、該インジケータ部の進退する直線を含む平面の1つが前記操作ロッドの進退する直線を含む平面の1つと同一又は平行となるように設置されていることを特徴とする、ブレーキシリンダ装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のブレーキシリンダ装置と、
前記ブレーキシリンダ装置が装備されるとともに車両に対して取り付けられるキャリパボディと、を備え、
前記ブレーキシリンダ装置が作動することで、前記キャリパボディに取り付けられた一対のブレーキパッドにより車軸側のディスクを挟み込んで制動力を発生させることを特徴とする、ディスクブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の運転時に用いられる流体ブレーキ機構及び鉄道車両の駐車時に用いられる駐車バネブレーキ機構の両方が作動可能なブレーキシリンダ装置、及びブレーキシリンダ装置を備えたディスクブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鉄道車両用のブレーキ装置に用いられるブレーキシリンダ装置として、流体ブレーキ機構及び駐車バネブレーキ機構の両方が作動可能なブレーキシリンダ装置が知られている。例えば、特許文献1には、鉄道車両の運転時に用いられるブレーキ力を発生させるための常用ブレーキピストンと、鉄道車両の駐車時に用いられるブレーキ力を発生させるための駐車ブレーキピストンとを備えたアクチュエータ(ブレーキシリンダ装置)が開示されている。
【0003】
常用ブレーキピストンは、ハウジング(シリンダ)に固定された仕切壁に一端側が当接する第2コイルバネによって、ブレーキ力の出力方向と反対方向(退避方向)へ付勢されている。常用ブレーキピストンは、常用ブレーキ側の密封室に流入する流体によってブレーキの出力方向(進出方向)へ進出する。すなわち、常用ブレーキは、密封室に流体圧力が作用することにより、常用ブレーキピストンが第2コイルバネの付勢力に抗して進出方向へ押圧されて移動することにより、ブレーキ力を発生させる。
【0004】
一方、駐車ブレーキピストンは、シリンダの前壁に一端側が当接する第1コイルバネによって、進出方向へ付勢されている。駐車ブレーキピストンは、駐車ブレーキ側の密封室に流入する流体によって退避方向へ退避する。すなわち、駐車ブレーキは、密封室から流体が排出されることにより、駐車ブレーキピストンが第1コイルバネによって進出方向へ押圧されて移動することにより、ブレーキ力を発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−059391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ブレーキシリンダ装置の全長(ブレーキシリンダ装置におけるブレーキの出力方向の長さ)を短くするためには、駐車ブレーキ用のバネ(特許文献1における第1コイルバネ)を短くして駐車ブレーキの部分を短くすることが考えられる。しかしそうすると、第1コイルバネに過度の負荷がかかるため、その負荷に耐えうるように第1コイルバネの設計条件の制約を増大させてしまうことになる。その結果、ブレーキシリンダ装置全体のコストが増大してしまう。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされるものであって、その目的は、駐車ブレーキ用のバネの設計条件の制約が増大してしまうことを抑制しつつ、ブレーキシリンダ装置の全長を短くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記課題を解決するため、本発明のある局面に係るブレーキシリンダ装置は、シリンダと、圧力流体によってブレーキ力を出力する流体ブレーキ機構と、鉄道車両の駐車時に用いられる駐車バネブレーキ機構と、を備えている。そして、前記シリンダは、筒状に形成され一方側にシリンダ底部を有するシリンダ本体、及び、該シリンダ本体内のシリンダ空間を該シリンダ本体の筒軸方向における前記シリンダ底部側の第1空間とその反対側の第2空間とに仕切るように前記シリンダ本体に固定される仕切部、を有し、前記流体ブレーキ機構は、前記第1空間に配置される第1ピストン、前記シリンダ本体に固定される第1支持部に一端が当接し前記第1ピス退避方向トンを前記シリンダ底部に近づく退避方向へ付勢する第1バネ、及び、前記第1空間における、前記第1バネの収容空間に対して前記第1ピストンを挟んだ反対側の第1圧力室、を有し、該第1圧力室に圧力流体が供給されることで、前記第1バネの付勢力に抗して前記第1ピストンが前記シリンダ底部から離れる進出方向へ移動するように構成され、前記駐車バネブレーキ機構は、前記第2空間に配置される第2ピストン、該第2ピストンから前記進出方向へ筒状に延びる第2ピストン筒部、前記シリンダ本体に固定される第2支持部に一端が当接し前記第2ピストンを前記第2ピストン筒部を介して前記進出方向へ付勢する第2バネ、及び、前記第2空間における、前記第2バネの収容空間に対して前記第2ピストン筒部を挟んだ反対側の第2圧力室、を有し、該第2圧力室に圧力流体が供給されている状態から排出される状態へと移行することで、前記第2バネの付勢力により前記第2ピストンが前記進出方向に移動するように構成され、前記第2バネは、前記第2ピストン筒部の内側に配置され、前記第2圧力室は、前記第2ピストン筒部の外側に配置されている。
【0009】
この構成では、流体ブレーキ機構の第1圧力室に圧力流体が供給されることにより、第1ピストンが進出方向へ移動する。これにより、流体ブレーキ機構によるブレーキ力が発生する。一方、駐車バネブレーキ機構の第2圧力室に供給されている圧力流体が排出されることで、第2バネの付勢力によって第2ピストンが進出方向へ進出する。これにより、駐車バネブレーキ機構によるブレーキ力が発生する。
【0010】
そして、この構成のように、駐車ブレーキ用のバネである第2バネの外側に第2圧力室を配置することで、第2バネの収容空間及び第2圧力室を、ブレーキ出力方向において重ならないよう配置できる。こうすると、第2バネの収容空間をブレーキの出力方向に長くしようとした場合に第2圧力室が邪魔にならないため、第2バネの長さ方向の配置スペースを確保しやすくなる。その結果、第2バネの設計条件が極端に制限されない程度に第2バネの収容空間を短くできるため、その分、ブレーキシリンダ装置の全長を短くできる。
【0011】
しかも、上述のように第2ピストン筒部を第2バネの外側に配置することで、該第2ピストン筒部によって第2圧力室と第2バネの収容空間とを区画できる。これにより、第2圧力室に圧力流体を給排することで、第2ピストンをシリンダに対して進退させることが可能になる。
【0012】
従って、上記の構成によると、駐車ブレーキ用のバネの設計条件の制約が増大してしまうことを抑制しつつ、ブレーキシリンダ装置の全長を短くできる。
【0013】
(2)好ましくは、前記第2支持部は、前記進出方向に進出した状態の前記第2ピストンにおける前記進出方向側の端部よりも前記仕切部側に配置されている。
【0014】
ブレーキ出力方向において第2バネの収容空間を長くしようとした場合、第2支持部を、第2空間内における仕切部に極力近い領域に設けることが望ましい。これに対して、上記構成によると、第2支持部が、進出方向に進出した状態の第2ピストンにおける進出方向側の端部よりも仕切部側に配置される。従って、ブレーキ出力方向における第2バネの配置スペースを確実に確保できる。
【0015】
(3)好ましくは、前記第2支持部は、前記仕切部における前記第2空間側の部分である。
【0016】
この構成によると、第2支持部を、第1空間と第2空間とを仕切る仕切部で構成することができるため、ブレーキ出力方向における第2バネの配置スペースをより確実に確保できる。しかも、第2支持部を別途形成する必要がないため、シリンダの構成を簡素化できる。
【0017】
(4)好ましくは、前記第1支持部は、前記仕切部における前記第1空間側の部分である。
【0018】
この構成によると、第1支持部を、仕切部で構成することができる。こうすると、仕切る部とは別に第1支持部を設ける場合と比べると、第1バネの収容空間をブレーキ出力方向において長くできるため、第1バネの配置スペースを十分に確保できる。しかも、第1支持部を別途形成する必要がないため、シリンダの構成を簡素化できる。
【0019】
(5)好ましくは、前記第2ピストン及び前記第2ピストン筒部は、別体で形成されて互いに係合する。
【0020】
この構成によると、ブレーキシリンダ装置の組み立ての際、第2ピストン筒部をシリンダ本体の筒軸方向の一方側から該シリンダ本体へ挿入する一方、第2ピストンを筒軸方向の他方側からシリンダ本体へ挿入することができる。そして、その後、第2ピストン筒部と第2ピストンとを係合することができる。これにより、ブレーキシリンダ装置の組立性を更に向上することができる。
【0021】
(6)好ましくは、ブレーキシリンダ装置は、一方側の領域が前記第1バネの収容空間に繋がり該第1バネの収容空間を外部へ連通させるための通気路を備え、前記通気路における前記一方側の領域は、鉄道車両に固定された状態の前記ブレーキシリンダ装置における、前記第1バネの収容空間側から水平方向に対して下方へ延びる第1通路である。
【0022】
この構成によると、水蒸気が水滴となって第1通路内に付着した場合であっても、その水滴は自重により第1バネの収容空間から離れる方向へ流れる。従って、水滴がシリンダ内に侵入しにくくなるため、シリンダが錆びてしまうのを抑制できる。
【0023】
(7)更に好ましくは、前記通気路における前記一方側の領域のうち前記第1バネの収容空間に繋がる領域は、鉄道車両に固定された状態の前記ブレーキシリンダ装置における前記第1バネの収容空間の下部に繋がっている。
【0024】
この構成によると、第1バネの収容空間の下部に水滴が溜まった場合であっても、その水滴を第1通路へ導くことができる。これにより、シリンダの錆びを更に抑制できる。
【0025】
(8)好ましくは、ブレーキシリンダ装置は、底部を有する筒状に形成された有底筒部と、前記有底筒部の筒軸方向に進退可能なように該有底筒部内に配置されるピストン部と、前記ピストン部から前記有底筒部の開口側へ延びるように形成され、該有底筒部から進出することにより先端部が該有底筒部から露出する一方、該有底筒部へ後退することにより前記先端部が該有底筒部へ収容されるインジケータ部と、前記ピストン部を前記筒軸方向の一方側へ付勢するように前記有底筒部内に配置される弾性部材と、前記有底筒部の内部空間における前記ピストン部を挟んだ前記弾性部材と反対側の圧力流体空間を、前記第2圧力室に連通する連通路とを有するインジケータ機構を更に備え、前記インジケータ部は、前記連通路を介して前記圧力流体空間へ流入する圧力流体により、前記弾性部材の付勢力に抗して前記有底筒部から進出又は前記有底筒部へ後退する。
【0026】
この構成によると、駐車バネブレーキ機構の第2ピストンが、進出方向側又は退避方向側のいずれに位置しているかを、インジケータ部の状態によって把握することができる。この構成では、ブレーキシリンダ装置は、弾性部材の付勢力がインジケータ部を有底筒部から突出させる方向に働くように構成されているか、又は、弾性部材の付勢力がインジケータ部を有底筒部内に収容させる方向に働くように構成されている。
【0027】
まず、弾性部材の付勢力がインジケータ部を有底筒部から突出させる方向に働くようにブレーキシリンダ装置が構成されている場合を考える。
【0028】
第2ピストンが進出方向側に位置している状態では、第2圧力室に圧力流体が供給されていないことになるため、該圧力流体はインジケータ機構の圧力流体空間にも供給されていないことになる。よってこの状態では、インジケータ部は、弾性部材によって付勢されて有底筒部から突出した状態となっている。すなわち、インジケータ部が有底筒部から露出した状態が確認されれば、第2ピストンが進出方向側へ位置していることを把握できる。
【0029】
一方、第2ピストンが退避方向側に位置している状態では、第2圧力室に圧力流体が供給されていることになるため、該圧力流体はインジケータ機構の圧力流体空間にも供給されていることになる。よってこの状態では、インジケータ部は、圧力流体によって、弾性部材の付勢力と反対方向へ押圧されて有底筒部に収容された状態となっている。すなわち、インジケータ部が有底筒部に収容されている状態が確認されれば、第2ピストンが退避方向側へ位置していることを把握できる。
【0030】
次に、弾性部材の付勢力がインジケータ部を有底筒部内に収容させる方向に働くようにブレーキシリンダ装置が構成されている場合を考える。
【0031】
第2ピストンが進出方向側に位置している状態では、圧力流体はインジケータ機構の圧力流体空間に供給されておらず、インジケータ部は、弾性部材によって付勢されて有底筒部内へ押圧された状態となっている。すなわち、インジケータ部が有底筒部に収容されている状態が確認されれば、第2ピストンが進出方向側へ位置していることを把握できる。
【0032】
一方、第2ピストンが退避方向側に位置している状態では、圧力流体はインジケータ機構の圧力流体空間に供給されているため、インジケータ部は、圧力流体によって、弾性部材の付勢力と反対方向へ押圧されて有底筒部から突出した状態となっている。すなわち、インジケータ部が有底筒部から露出した状態が確認されれば、第2ピストンが退避方向側へ位置していることを把握できる。
【0033】
従って、この構成によると、例えば圧力センサ等の機構を用いることなく、機械的に第2ピストンの位置状態を確認できる。
【0034】
また、他の局面に係るブレーキシリンダ装置は、圧力室とバネとが対向して作用するピストンを有し、前記圧力室に圧力流体が供給されている状態から排出される状態へと移行することで前記バネの付勢力により前記ピストンが移動して車両の駐車時に用いられるブレーキ力を発生させる駐車バネブレーキ機構を有する。そして、このブレーキシリンダ装置は、底部を有する筒状に形成された有底筒部、前記有底筒部の筒軸方向に進退可能なように該有底筒部内に設けられるピストン部、前記ピストン部から前記有底筒部の開口側へ延びるように形成され、該有底筒部から進出することにより先端部が該有底筒部から露出する一方、該有底筒部へ後退することにより前記先端部が該有底筒部へ収容されるインジケータ部、前記ピストン部を前記筒軸方向の一方側へ付勢するように前記有底筒部内に配置される弾性部材、及び前記有底筒部の内部空間における前記ピストン部を挟んだ前記弾性部材と反対側の圧力流体空間を前記圧力室に連通する連通路、を有するインジケータ機構とを備え、前記インジケータ部は、前記連通路を介して前記圧力流体空間へ流入する圧力流体により、前記弾性部材の付勢力に抗して前記有底筒部から進出又は前記有底筒部へ後退する。
【0035】
車両の駐車時に用いられる駐車ブレーキが作用していることを確認するためには、例えば、圧力センサを用いて、駐車ブレーキ力を発生させるバネに対向して作用する圧力流体が供給される圧力室に所定の圧力が付加されているか否かを検知することが考えられる。
【0036】
上記圧力センサを用いて圧力室の圧力状態を確認する場合、圧力センサに接続される電気配線の引き回しの制約、及び圧力センサの配置スペースの制約等の問題により、当該圧力センサをブレーキシリンダ装置に直接取り付けるのは困難である。よって、一般的に、圧力センサは、圧力流体の供給源とブレーキシリンダ装置との間に設けられ圧力室に対する圧力流体の給排を制御するためのブレーキ制御装置内に配置される。しかし、ブレーキ制御装置はブレーキシリンダ装置から比較的離れた位置に配置されるため、ブレーキシリンダ装置近傍で所定の圧力が付加されているか否かを容易に判断することができない。
【0037】
上記他の局面に係るブレーキシリンダ装置は、上記実情に鑑みてなされるものであって、その目的は、駐車ブレーキ力を発生させるバネに対向して作用する圧力流体が供給される圧力室に所定の圧力が付加されているか否かを、ブレーキシリンダ装置近傍で容易に判断できるようにすることである。
【0038】
上記他の局面に係るブレーキシリンダ装置では、駐車ブレーキ用のバネを圧縮するための圧力室に圧力流体が供給されているか否かを、機械的な構成のインジケータ機構によって把握できる。このようなインジケータ機構を用いることにより電気配線が不要になり、圧力センサを用いる際の電気配線の引き回しの制約等が解消される。その結果、当該インジケータ機構をブレーキシリンダ装置に直接、取り付けやすくなる。従って、圧力室内の圧力流体の状態をブレーキシリンダ装置近傍で容易に判断できる。
【0039】
(9)更に好ましくは、前記ブレーキシリンダ装置は、駐車ブレーキ手動解除機構を更に備え、前記弾性部材は、前記インジケータ部が前記有底筒部から進出する方向へ前記ピストン部を付勢するように前記有底筒部内に配置され、前記インジケータ機構は、前記インジケータ部が前記弾性部材によって付勢されて前記有底筒部から進出する進出位置と、前記圧力流体空間に前記第2圧力室からの圧力流体が流入することで前記有底筒部へ後退する後退位置と、に切替可能に構成され、前記駐車ブレーキ手動解除機構は、前記シリンダに対して進退可能な操作ロッドを有し、該操作ロッドが前記シリンダ側へ付勢部材の付勢力によって押し込まれた状態において前記第2ピストンに対する前記第1ピストンの係合を保持するロック位置と、前記操作ロッドが前記シリンダ側から引っ張られると前記第2ピストンに対する前記第1ピストンの係合を解除して駐車バネブレーキ機構によるブレーキを解除する解除位置と、に切替可能に構成されている。
【0040】
なお、この構成における第2圧力室は、上述した他の局面に係るブレーキシリンダ装置の圧力室に相当し、この構成における第2ピストンは、上述した他の局面に係るブレーキシリンダ装置のピストンに相当する。
【0041】
この構成では、インジケータ機構は、インジケータ部の先端部が弾性部材に付勢されて有底筒部から露出する進出位置と、インジケータ部の先端部が圧力流体空間に圧力流体が供給されることで有底筒部に収容される後退位置とに切替可能に構成されている。これにより、ユーザは、インジケータ部の先端部が進出位置にある場合には、第2ピストンが進出方向側に位置していることを把握できる。一方、ユーザは、インジケータ部の先端部が後退位置にある場合には、第2ピストンが退避方向側に位置していることを把握できる。
【0042】
また、ブレーキシリンダ機構は、駐車バネブレーキ機構によるブレーキ力を手動で解除可能な駐車ブレーキ手動解除機構を備えている。この駐車ブレーキ手動解除機構は、操作ロッドがシリンダ側へ付勢部材の付勢力によって押し込まれた状態(操作ロッドがロック位置の状態)では、第1ピストンと第2ピストンとを互いに係合している。すなわち、操作ロッドがロック位置の状態では、第1ピストンと第2ピストンとが係合している。よって、この状態において第2圧力室から圧力流体が排出されると、駐車バネブレーキ機構によるブレーキ力が発生する。
【0043】
一方、上述のように駐車バネブレーキ機構によるブレーキ力が発生している状態において、操作ロッドがシリンダから引っ張られた状態(操作ロッドが解除位置の状態)になると、第1ピストンと第2ピストンとの係合が解除される。そうなると、第2ピストンに作用する第2バネの付勢力が第1ピストンに伝わらなくなるため、第1ピストンが第1バネによって退避方向に付勢される。その結果、駐車バネブレーキ機構によるブレーキが解除される。
【0044】
上述のような駐車ブレーキ手動解除機構により、ユーザは、操作ロッドがロック位置にある場合には第1ピストンと第2ピストンとが係合している状態であることを視覚的に把握できる。一方、ユーザは、操作ロッドが解除位置にある場合には、第1ピストンと第2ピストンとの係合が解除されている状態であることを視覚的に把握できる。
【0045】
すなわち、上記構成によれば、ユーザは、インジケータ部の位置(進出位置又は後退位置)及び操作ロッドの位置(ロック位置及び解除位置)を確認することにより、駐車バネブレーキ機構の状態を把握できる。具体的には、ユーザは、(a)インジケータ部が進出位置且つ操作ロッドがロック位置の場合、駐車バネブレーキ機構によるブレーキ力が発生していると判断できる。また、ユーザは、(b)インジケータ部が後退位置且つ操作ロッドがロック位置の場合、第2圧力室に圧力流体が供給されており、駐車バネブレーキ機構によるブレーキ力が発生していないと判断できる。また、ユーザは、(c)インジケータ部が進出位置且つ操作ロッドが解除位置の場合、第1ピストンと第2ピストンとが係合していないことに起因して(操作ロッドが引っ張られていることに起因して)駐車バネブレーキ機構によるブレーキが利いておらず、解除状態であると判断できる。
【0046】
従って、上記構成によれば、ユーザは、駐車バネブレーキ機構によるブレーキ力の発生の有無を確認できるだけでなく、当該ブレーキ力が発生していない原因についても同時に把握することができる。
【0047】
(10)更に好ましくは、前記操作ロッド及び前記インジケータ部は、前記操作ロッドにおける前記ロック位置と前記解除位置との判別、及び、前記インジケータ部における前記進出位置と前記後退位置との判別が、少なくとも一方向から視て同時に可能なように設置されている。
【0048】
この構成によると、ユーザは、インジケータ部の状態及び操作ロッドの状態を一方向から視て同時に確認できる。従って、駐車バネブレーキ機構の状態を比較的短時間で把握できる。
【0049】
(11)更に好ましくは、前記インジケータ部は、該インジケータ部の進退する直線を含む平面の1つが前記操作ロッドの進退する直線を含む平面の1つと同一又は平行となるように設置されている。
【0050】
この構成によると、ユーザが、上述のように同一又は平行となっている平面に対して垂直な方向からインジケータ部及び操作ロッドを見ることで、インジケータ部及び操作ロッドの位置状態が見やすくなる。従って、駐車バネブレーキ機構の状態をより短時間で把握できる。
【0051】
(12)また、他の観点の発明として、上述したいずれかのブレーキシリンダ装置を備えるディスクブレーキ装置の発明を構成することもできる。即ち、ディスクブレーキ装置は、上述したいずれかのブレーキシリンダ装置と、該ブレーキシリンダ装置が装備されるとともに車両に対して取り付けられるキャリパボディと、を備え、前記ブレーキシリンダ装置が作動することで、前記キャリパボディに取り付けられた一対のブレーキパッドにより車軸側のディスクを挟み込んで制動力を発生させる。
【0052】
この構成によると、駐車ブレーキ用のバネの設計条件の制約が増大してしまうことを抑制しつつ全長が短くなるように構成されたブレーキシリンダ装置、を備えたディスクブレーキ装置を提供することができる。従って、小型化されたディスクブレーキ装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0053】
本発明によると、駐車ブレーキ用のバネの設計条件の制約が増大してしまうことを抑制しつつ、ブレーキシリンダ装置の全長を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】本発明の実施形態に係る鉄道車両用のブレーキシリンダ装置を備えたディスクブレーキ装置の側面図である。
図2】本発明の実施形態に係る鉄道車両用のブレーキシリンダ装置を示す側面図である。
図3図2に示すブレーキシリンダ装置をIII方向から視た図である。
図4図2のIV−IV矢視位置から視た断面図である。
図5図4のV部の拡大図である。
図6図4のVI部の拡大図である。
図7図4のVII部の拡大図であって、隙間調整機構を説明するための図である。
図8図3のVIII−VIII矢視位置から視た断面図においてロックスリーブより内側の構成部品を省略した図であって、駐車ブレーキ手動解除機構を説明するための図である。
図9図8のIX部の拡大図である。
図10図3のX- X矢視位置から視た断面図であって、インジケータ機構を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本発明の実施形態は、鉄道車両用のブレーキシリンダ装置及びディスクブレーキ装置として広く適用することができるものである。
【0056】
[ディスクブレーキ装置の全体構成]
図1は、本発明の実施形態に係る鉄道車両用のブレーキシリンダ装置2を備えたディスクブレーキ装置1を車軸方向から視た側面図である。ディスクブレーキ装置1は、ブレーキシリンダ装置2と、キャリパボディ100とを備えている。
【0057】
キャリパボディ100は、ブレーキシリンダ装置2が装備されるとともに、車両本体102に対して車両ロール回転方向において回転自在となるように取り付けられている。尚、上記の車両ロール回転方向とは、車両の進行方向を回転軸方向とする回転方向をいう。キャリパボディ100は、結合部材101と、一対のブレーキてこ102,102とを有している。なお、図1では、一対のブレーキてこ102のうちの一方のみを図示している。ディスクブレーキ装置1は、一対のブレーキてこ102,102のそれぞれに固定されるブレーキパッド104が、鉄道車両の車輪軸に固定されたブレーキディスク122を挟んで保持することにより車輪の回転を制動するように構成されている。
【0058】
結合部材101は、車両本体120の底面に固定されたブラケット121に対して、車両の進出方向と平行な軸周りに揺動可能なように揺動ピン101aを介して取り付けられている。そして、この結合部材101に対して、略対称に、一対のブレーキてこ102,102が、一対の支点ピン102aを介して揺動可能に設置されている。この支点ピン102aは、ブレーキディスク122の回転軸方向から視た場合(車輪軸方向から視た場合)に、揺動ピン101aの軸方向に対して垂直な方向に延びるように設置されている。
【0059】
一対のブレーキてこ102,102は、その一端側にブレーキシリンダ装置2がシリンダ支持ピン102bを介して取り付けられており、このブレーキシリンダ装置2により一端側が駆動されるように構成されている。そして、一対のブレーキてこ102,102は、ブレーキシリンダ装置2が取り付けられた一端側に対して支点ピン102aを介した他端側にブレーキパッド104を保持する一対のバックプレート103,103がそれぞれ取り付けられている。バックプレート103は、ブレーキてこ102に対して支点ピン102aと平行に延びる支持ピン103aを介して揺動自在に取り付けられている。よって、一対のブレーキてこ102,102は、バックプレート103を介してブレーキパッド104をそれぞれ支持している。
【0060】
上述したディスクブレーキ装置1においては、一方のブレーキてこ102にブレーキシリンダ装置2のシリンダ20が取り付けられ、他方のブレーキてこ102にブレーキシリンダ装置2のブレーキ出力部11が取り付けられる。そして、ディスクブレーキ装置1においては、ブレーキシリンダ装置2の作動によりブレーキ出力部11がシリンダ20に対して進出する動作(シリンダから離れる動作)又は退避する動作(シリンダに接近する動作)が行われる。これにより、一対のブレーキてこ102,102におけるシリンダ支持ピン102b近傍が、互いに離隔したり、近接したりするように駆動される。
【0061】
なお、以下において、ブレーキ出力部11がシリンダ20に対して進出する方向(図1における紙面奥から紙面手前方向、図4でX1と記載された矢印が示す方向)を進出方向X1とし、ブレーキ出力部11がシリンダ20に退避する方向(図1における紙面手前から紙面奥方向、図4でX2と記載された矢印が示す方向)を退避方向X2、とする。また、進出方向X1及び退避方向X2を、ブレーキ出力部11の進退方向とする。
【0062】
ディスクブレーキ装置1は、上記のように駆動されることにより、一対のブレーキてこ102,102が支点ピン102aを支軸として動作し、ブレーキパッド104でブレーキディスク122を挟むように動作することになる。これにより、ブレーキディスク122の回転が制動され、ブレーキディスク122と同軸に設けられている鉄道車両の車輪の回転が制動される。
【0063】
[ブレーキシリンダ装置]
次に、本発明の実施形態に係るブレーキシリンダ装置2について詳しく説明する。図2は、ブレーキシリンダ装置2を示す側面図である。また、図3は、図2に示すブレーキシリンダ装置2をIII方向から視た図である。また、図4は、図2のIV−IV矢視位置から視た断面図である。
【0064】
本発明の実施形態に係るブレーキシリンダ装置2は、ブレーキ出力部11、シリンダ20、流体ブレーキ機構30、駐車バネブレーキ機構40、隙間調整機構50、駐車ブレーキ手動解除機構60、インジケータ機構80、等を備えている。
【0065】
[シリンダの構成]
シリンダ20は、シリンダ本体21と区画壁部24とを備えている。
【0066】
シリンダ本体21は、第1シリンダ部22と第2シリンダ部23とを備えている。第1シリンダ部22は、平面視で円形に形成された円板状のシリンダ底部22aと、該シリンダ底部22aの周縁部から進出方向X1に延びる筒状に形成された第1筒壁部22bとを有している。すなわち、第1シリンダ部22は、有底筒状に形成されている。
【0067】
第2シリンダ部23は、略筒状に形成され、その一端面が第1シリンダ部22における進出方向X1側の端面と重なるように配置されている。第2シリンダ部23は、大径筒部23aと、環状壁部23bと、小径筒部23cとを備えている。
【0068】
大径筒部23aは、本実施形態では、第1筒壁部22bと内径が概ね同じ円筒状に形成されている。なお、大径筒部23aは、第1筒壁部22bと内径が異なっていてもかまわない。また、大径筒部23aの周方向における一部分には、他の部分と比べて径方向外方に膨らんだ膨出部28が形成されている。この膨出部28は、鉄道車両の車両本体120に固定された状態のブレーキシリンダ装置2において下方に膨出するように設けられている。この膨出部28には、該膨出部28における第1バネ収容空間S12(詳しくは後述)に露出している部分から下方且つ進出方向X1側へ向かって延びる第1通路28aが形成されている。また、膨出部28には、該膨出部28における進出方向X1側の部分から退避方向X2側へ延びて第1通路28aと連通する嵌合穴28bが形成されている。なお、本実施形態では、第1通路28aは、上述のように下方且つ進出方向X1側へ向かって延びるように形成されているが、この限りでなく、例えば鉛直下方に延びるように形成されていてもよい。
【0069】
環状壁部23bは、薄板の環状に形成されている。環状壁部23bにおける外周側の部分には大径筒部23aが一体に設けられ、環状壁部23bにおける内周側の部分には小径筒部23cが一体に設けられている。
【0070】
小径筒部23cは、本実施形態では、大径筒部23aよりも小径の略円筒状に形成されている。なお、小径筒部23cは、大径筒部23aよりも大径であってもかまわない。また、小径筒部23cの内周面には、周方向に延びる環状のパッキン用溝23dが形成されている。このパッキン用溝23dには、環状に形成されたパッキン23eが嵌め込まれている。
【0071】
区画壁部24は、シリンダ本体21における第1シリンダ部22と第2シリンダ部23との間に設けられている。区画壁部24は、仕切部25と筒壁部26とを有している。
【0072】
仕切部25は、平面視で中央部に比較的大きな孔が形成された略リング状に形成されている。仕切部25は、外周縁部が、第1シリンダ部22における進出方向X1側の端面と第2シリンダ部23における退避方向X2側の端面との間で挟まれて保持されている。仕切部25は、シリンダ本体21内のシリンダ空間Sを、第1空間S1と第2空間S2とに区画している。第1空間S1は、シリンダ本体21の筒軸方向におけるシリンダ底部22a側の空間であり、第2空間S2は、シリンダ本体21の筒軸方向における前記第1空間S1と反対側の空間である。また、筒壁部26は、仕切部25における内周側の縁部から進出方向X1側へ延びる筒状に形成されている。
【0073】
[流体ブレーキ機構の構成]
流体ブレーキ機構30は、第1ピストン31と、第1バネ32と、第1圧力室S11とを備えている。
【0074】
第1ピストン31は、平面視で略円状に形成された円板状の部材として設けられている。第1ピストン31は、パッキン33を介して第1シリンダ部22の第1筒壁部22bの内周面に対して進退可能なように、第1シリンダ部22内に配置されている。第1ピストン31は、第1シリンダ部22内の第1空間S1を、該第1ピストン31よりもシリンダ底部22a側の空間である第1圧力室S11と、該第1ピストン31よりも進出方向X1側の空間である第1バネ収容空間S12とに区画している。
【0075】
第1バネ32は、第1バネ収容空間S12内に配置されている。第1バネ32は、第1ピストン31を仕切部25に対してシリンダ底部22a側(退避方向X2側)へ付勢している。本実施形態では、仕切部25における第1空間S1側の部分が、第1支持部25aを構成している。
【0076】
第1圧力室S11には、該第1圧力室S11に対する圧縮空気(圧力流体)の給気及び排気を行うための第1給排ポート34が接続されている(図3参照)。
【0077】
[駐車バネブレーキ機構の構成]
駐車バネブレーキ機構40は、第2ピストン41と、第2バネ42と、ロック部本体43と、第2圧力室S21とを備えている。
【0078】
第2ピストン41は、進退方向にやや肉厚な環状の部材として設けられている。第2ピストン41は、外周面が第2シリンダ部23の大径筒部23aの内径よりも僅かに小径となるように形成されている。第2ピストン41は、大径筒部23aの内側に配置されている。
【0079】
第2ピストン41は、進退方向における両端面が概ね平坦に構成されている。第2ピストン41の外周には、周方向に延びるパッキン用溝41aが形成されている。このパッキン用溝41aには、環状に形成されたパッキン44が嵌め込まれている。第2ピストン41は、パッキン44を介して大径筒部23aの内周面に対して進退方向に移動可能である。また、図5に示すように、第2ピストン41の内周には、周方向に延びる止め輪用環状溝41bが形成されている。この止め輪用環状溝41bには、環状に形成された断面円形の止め輪45が嵌め込まれている。
【0080】
ロック部本体43は、第2ピストン筒部46と、該第2ピストン筒部46に一体形成された第2ピストン壁部47とを有している。第2ピストン筒部46は、円筒状に形成されている。第2ピストン壁部47は、軸方向にやや肉厚な略円環状に形成されている。なお、第2ピストン筒部46と第2ピストン壁部47とは、別部材で構成されて、互いに連結されていてもかまわない。
【0081】
第2ピストン筒部46は、外周面が第2シリンダ部23の小径筒部23cの内周面と概ね同径の略筒状に形成されている。第2ピストン筒部46は、第2シリンダ部23の小径筒部23cに取り付けられたパッキン23eを介して第2シリンダ部23に対して進退可能なように、第2シリンダ部23内に配置されている。
【0082】
図5は、図4のV部の拡大図であって、第2ピストン41と第2ピストン筒部46との係合部分付近を示す図である。第2ピストン筒部46の外周面における退避方向X2側の端部には、図5に示すように、周方向に延びる止め輪用環状溝46aが形成されている。この止め輪用環状溝46aには、第2ピストン41の止め輪用環状溝41bに嵌まり込む止め輪45が嵌まり込む。すなわち、第2ピストン41及び第2ピストン筒部46は、止め輪45を介して互いに係合している。
【0083】
第2ピストン筒部46は、第2シリンダ部23内の第2空間S2を、第2圧力室S21と第2バネ収容空間S22とに区画している。第2圧力室S21は、第2ピストン筒部46よりも外側且つ第2ピストン41よりも進出方向X1側の空間であり、第2バネ収容空間S22は、第2ピストン筒部46よりも内側の空間である。
【0084】
第2ピストン壁部47は、平面視中央部分に貫通孔が形成されている。第2ピストン壁部47の内周面における進出方向X1側の部分には、図4及び図6に示すように、段差部47aが形成されている。
【0085】
第2ピストン壁部47には、ロック部蓋77が固定されている。ロック部蓋77は、第2ピストン壁部47における進出方向X1側の部分を覆うように配置された状態で、第2ピストン壁部47に対して固定されている。
【0086】
上述のように第2ピストン壁部47にロック部蓋77を固定することで、段差部47aとロック部蓋77との間に、環状の溝が形成される。この溝は、後述する固定リング61が嵌合する外側環状溝47b(図6参照)を構成する。
【0087】
また、第2ピストン壁部47の外周面には、図2及び図3に示すように、径方向外方へ延びる膨出部48が形成されている。この膨出部48には、後述する閉じ部材62が収容される閉じ部材用空間48aと、後述する操作ロッド67が挿通する挿通孔48bが形成されている(図8参照)。閉じ部材用空間48aは、第2ピストン壁部47内の空間から膨出部48側へ向かって延びている。挿通孔48bは、膨出部48内を、閉じ部材用空間48aから第2ピストン壁部47の接線方向へ向かって延びて外部に連通している。
【0088】
第2バネ42は、内側第2バネ42aと外側第2バネ42bとを有している。内側第2バネ42a及び外側第2バネ42bは、ともにコイルバネとして設けられている。
【0089】
内側第2バネ42aは、一端部が仕切部25の内周側の部分に当接し且つ他端部が第2ピストン壁部47の内周側の部分に当接するように、第2バネ収容空間S22内に配置されている。内側第2バネ42aは、ロック部本体43を介して第2ピストン41を進出方向X1側へ付勢している。
【0090】
外側第2バネ42bは、内側第2バネ42aの外側に配置されている。具体的には、外側第2バネ42bは、一端部が仕切部25に当接し且つ他端部が第2ピストン壁部47に当接するように、第2バネ収容空間S22内に配置されている。外側第2バネ42bは、内側第2バネ42aと同様、ロック部本体43を介して第2ピストン41を進出方向X1側へ付勢している。内側第2バネ42a及び外側第2バネ42bは、その付勢力が比較的大きくなるように構成されている。なお、本実施形態では、仕切部25の第2空間S2側の部分が、第2支持部25bを構成している。
【0091】
第2圧力室S21は、第2空間S2内における、第2シリンダ部23と第2ピストン41と第2ピストン筒部46とで囲まれた環状の空間である。第2圧力室S21には、該第2圧力室S21に対する圧縮空気の給気及び排気を行うための第2給排ポート49が接続されている(図3参照)。第2給排ポート49には、空気流路(図示省略)を介して圧縮空気供給源(図示省略)が接続されている。この空気流路には、第2圧力室S21に対する圧縮空気の給排を制御するためのブレーキ制御装置(図示省略)が設けられている。ブレーキ制御装置は、ブレーキシリンダ装置2から比較的離れた位置に設けられている。
【0092】
また、ブレーキシリンダ装置2は、図4及び図7に示すように、ガイドチューブ12、第1クラッチ13、クラッチナット14、ネジ軸15、ロックスリーブ16、及び前方ストッパ17を備えている。
【0093】
ガイドチューブ12は、第1ピストン31の凹部31aから進出方向X1側へ延びる略筒状に形成されている。ガイドチューブ12は、筒壁部26及びロック部本体43の内側に挿通されている。ガイドチューブ12は第1ピストン31に対して固定されている。
【0094】
また、ガイドチューブ12の先端部における外周面には、周方向に延びる環状溝12aが形成されている(図6参照)。この環状溝12aには、断面円形の環状に形成された係合リング93が嵌め込まれている。
【0095】
第1クラッチ13は、ガイドチューブ12内に固定されている。第1クラッチ13の内周面における退避方向X2側の部分には、径方向内方へ膨出する内側膨出部13aが形成されている(図7参照)。
【0096】
クラッチナット14は、第1クラッチ13の内側に配置されている。クラッチナット14における進出方向X1側の部分には、径方向外方へ膨出する外側膨出部14aが形成されている(図7参照)。クラッチナット14は、外側膨出部14aにおける退避方向X2側の部分が、第1クラッチ13の内側膨出部13aにおける進出方向X1側の部分に対向するように、第1クラッチ13の内側に配置されている。
【0097】
ネジ軸15は、第1ピストン31付近から進出方向X1へ延びる略棒状に形成されている。ネジ軸15の外周面には、ネジ山が形成されている。このネジ山は、クラッチナット14の内周面のネジ孔に螺合している。ネジ軸15の先端部には、ブレーキ出力部11が連結されている。
【0098】
ロックスリーブ16は、ロック部本体43とガイドチューブ12との隙間に挿入可能な円筒状に形成されている。ロックスリーブ16には、該ロックスリーブ16の外周面における筒軸方向の中途部分を周方向に延びる内側環状溝16aが形成されている(図6参照)。この内側環状溝16aには、後述する固定リング61が嵌合している。
【0099】
また、ロックスリーブ16における進出方向X1側の端部には、進出方向X1側且つ径方向内方へ開口するとともに周方向に延びる環状凹部16bが形成されている(図6参照)。この環状凹部16bには、ガイドチューブ12の環状溝12aに嵌め込まれた係合リング93が嵌まり込む。
【0100】
係合リング93は、ロックスリーブ16とガイドチューブ12との関係において、一方が他方に対して動作する方向によって、両者を係合させたり係合させなかったりする。具体的には、ロックスリーブ16が進出方向X1へ移動する場合、両者は係合リング93を介して係合するため、ガイドチューブ12も進出方向X1へ移動する。一方、ガイドチューブ12が進出方向X1へ移動する場合、両者の進退方向における係合は解除される。
【0101】
前方ストッパ17は、ガイドチューブ12にネジ結合している。前方ストッパ17は、退避方向X2側の部分が、第1クラッチ13における進出方向X1側の部分、及びクラッチナット14における進出方向X1側の部分と軸方向に対向するように設けられている。
【0102】
[流体ブレーキ機構及び駐車バネブレーキの基本動作]
以下において、流体ブレーキ機構30及び駐車バネブレーキ機構40の基本的な動作について説明する。まず、流体ブレーキ機構30の基本動作について説明する。
【0103】
流体ブレーキ機構30は、鉄道車両の走行時に、鉄道車両のスピードを制動するために用いられる。すなわち、流体ブレーキ機構30は、主に、駐車バネブレーキ機構40によるブレーキ力が出力されていない場合(第2圧力室S21に圧縮流体としての圧縮空気が供給されて第2ピストン41が退避方向X2側へ位置している場合)に用いられる。
【0104】
流体ブレーキ機構30によりブレーキ力を発生させる場合、第1圧力室S11に圧縮空気が供給される。すると、第1圧力室S11に流入した圧縮空気が第1バネ32の付勢力に抗して第1ピストン31を進出方向X1へ押圧するため、第1ピストン31が進出方向X1へ移動し、これに伴って第1ピストン31に固定されたガイドチューブ12も進出方向X1へ移動し、それに伴ってブレーキ出力部11が進出方向X1へ進出する。更にブレーキパッド104がブレーキディスク122に当接すると、第1クラッチ13の内側膨出部13aによってクラッチナット14の外側膨出部14aが進出方向X1へ押圧されるため、クラッチナット14も進出方向X1へ押圧される。これにより、クラッチナット14に螺合するネジ軸15、及び該ネジ軸15に連結されるブレーキ出力部11が進出方向X1へ押圧される。その結果、流体ブレーキ機構30によるブレーキ力が発生する。
【0105】
一方、流体ブレーキ機構30によるブレーキを解除する場合、第1圧力室S11に供給された圧縮空気が排出される。そうすると、第1バネ32の付勢力によって第1ピストン31が退避方向X2へ押圧されるため、第1ピストン31が退避方向X2へ移動する。すると、これに伴い、ガイドチューブ12及び前方ストッパ17も退避方向X2へ移動する。このとき、前方ストッパ17によってクラッチナット14が退避方向X2側へ押圧されるため、クラッチナット14、ネジ軸15、及びブレーキ出力部11が退避方向X2へ移動する。その結果、流体ブレーキ機構30によるブレーキが解除される。
【0106】
次に、駐車バネブレーキ機構40の基本動作について説明する。
【0107】
駐車バネブレーキ機構40は、鉄道車両の駐車時に、鉄道車両が誤って動き出してしまうのを防止するために用いられる。すなわち、駐車バネブレーキ機構40は、主に、流体ブレーキ機構30によるブレーキ力が出力されていな場合(第1圧力室S11に圧縮空気が供給されておらず第1ピストン31が退避方向X2側へ位置している場合)に用いられる。
【0108】
駐車バネブレーキ機構40によりブレーキ力を発生させる場合、第2圧力室S21に供給されている圧縮空気が排出される。すると、第2バネ42の付勢力によってロック部本体43及び第2ピストン41が進出方向X1へ移動する。
【0109】
ここで、ロック部本体43は、固定リング61によってロックスリーブ16と係合している。更に、ロックスリーブ16は、該ロックスリーブ16が進出方向X1に移動する場合については、係合リング93によってガイドチューブ12と係合する。よって、上述のようにロック部本体43が進出方向X1へ移動することで、ガイドチューブ12及びガイドチューブ12が固定された第1ピストン31も進出方向X1へ移動する。第1ピストン31が進出方向X1へ移動すると、流体ブレーキ機構30の場合と同様、ブレーキ出力部11が進出方向X1へ進出する。つまり、第2圧力室S21に供給されている圧縮空気が排出されることで、第1ピストン31及び第2ピストン41が両方とも進出方向X1へ移動する。これにより、駐車バネブレーキ機構40によるブレーキ力が発生する。
【0110】
一方、駐車バネブレーキ機構40によるブレーキを解除する場合、第2圧力室S21に供給される。すると、第2圧力室S21に流入した圧縮空気が第2バネ42の付勢力に抗して第2ピストン41を退避方向X2へ押圧するため、第2ピストン41が退避方向X2へ移動する。そうなると、これに伴い、ロック部本体43及びロックスリーブ16も退避方向X2へ移動する。なお、ロックスリーブ16が退避方向X2へ移動する場合には、ガイドチューブ12との進退方向における係合は解除されるため、ロックスリーブ16はガイドチューブ12に対して退避方向X2へ移動する。これにより、第2バネ42の進出方向X1への付勢力は、第1ピストン31に作用しなくなる。
【0111】
その結果、第1バネ32の付勢力により、第1ピストン31が退避方向X2へ移動し、流体ブレーキ機構30の場合と同様、ブレーキ出力部11が退避方向X2へ移動する。つまり、第2圧力室S21に圧縮空気が供給されることで、第1ピストン31及び第2ピストン41が両方とも退避方向X2へ移動する。これにより、駐車バネブレーキ機構40によるブレーキが解除される。
【0112】
[隙間調整機構の構成]
図7に、隙間調整機構50付近の拡大図を示す。第1クラッチ13、クラッチナット14、前方ストッパ17等から構成される隙間調整機構50は、ディスクブレーキ装置1におけるブレーキパッド104の摩耗等によって、ブレーキが解除された状態におけるブレーキ動作位置までの隙間が大きくなった場合、その隙間を自動で調整するように構成されている。
【0113】
[駐車ブレーキ手動解除機構の構成]
駐車ブレーキ手動解除機構60は、駐車バネブレーキ機構40によるブレーキを、第2圧力室S21に圧縮空気を供給することなく、手動で解除するためのものである。
【0114】
図8に、図3のVIII−VIII矢視位置から視た断面図においてロックスリーブ16より内側の構成部品を省略した図を示す。この図は、駐車ブレーキ手動解除機構60を説明するための図である。駐車ブレーキ手動解除機構60は、固定リング61と、閉じ部材62と、操作ロッド用筒部63と、操作ロッド67と、を有している。
【0115】
固定リング61は、周方向の一部が切り欠かれたC字状の部材として設けられている。これにより、固定リング61の両端部は、僅かな隙間を介して互いに向かい合っており、この隙間が狭くなる方向に付勢されて保持されている。固定リング61の両端部のそれぞれには、径方向外方に突出する一対の突出部61aが形成されている。固定リング61は、図4図6及び図8等に示すように、径方向内側の部分がロックスリーブ16の内側環状溝16aに嵌合し、径方向外側の部分が外側環状溝47bに嵌合するように、ロックスリーブ16とロック部本体43との間に配置されている。
【0116】
閉じ部材62は、図8に示すように、平面視で略矩形状に形成された板状の部材として形成されている。閉じ部材62は、矩形の一辺に対応する部分の両側から互いに並行して突出する一対の凸部62aを有している。閉じ部材62は、一対の凸部62aが、固定リング61の一対の突出部61aを外側から挟むように、且つロック部本体43に対して径方向に摺動可能なように、閉じ部材用空間48aに収容されている。また、閉じ部材62における4つの角部のうち、上記一対の凸部62aが形成されていない方の2つの角部には、それぞれ、面取り部62bが形成されている。
【0117】
操作ロッド用筒部63は、底部64を有する略矩形筒状に形成されている。操作ロッド用筒部63は、図2及び図3に示すように、第2シリンダ部23の接線方向であって、ブレーキシリンダ装置2が車両本体120に固定された状態における、水平方向に対する上方約45度の方向に向かって延びるように形成されている。底部64の中央部分には、貫通孔64aが形成されている。操作ロッド用筒部63の開口は、封止部65によって封止されている。操作ロッド用筒部63及び封止部65は、該操作ロッド用筒部63の底部64が第2ピストン壁部47の膨出部48側に配置された状態で、ボルト66によって膨出部48に固定されている。
【0118】
操作ロッド67は、駐車バネブレーキ機構40によるブレーキを手動で解除するために、ユーザによって操作される略棒状の部材である。操作ロッド67は、シリンダ20に対して、該操作ロッド67の軸方向に進退可能なように構成されている。操作ロッド67は、その進退方向を含む平面の1つが、鉄道車両が延びる方向と平行となるように配置されている。操作ロッド67は、本体部68と、フランジ部69と、引き輪71とを有している。
【0119】
本体部68は、細長い棒状の部材として設けられている。本体部68は、第2ピストン壁部47の挿通孔48b及び操作ロッド用筒部63の内部を貫通している。本体部68の先端部には面取り部68aが形成されている。面取り部68aは、閉じ部材62の面取り部62bと面接触している。これにより、本体部68は、閉じ部材62を固定リング61側へ押圧している。
【0120】
フランジ部69は、本体部68の長手方向における概ね中間部分付近に、本体部68と一体に形成されている。フランジ部69は、操作ロッド用筒部63の内周面に対して、本体部68の軸方向に摺動可能である。フランジ部69は、操作ロッド用筒部63に収容された付勢部材としての付勢バネ72によってシリンダ20側へ付勢されている。付勢バネ72は、一端側が封止部65に当接する一方、他端側がフランジ部69に当接している。
【0121】
引き輪71は、本体部68の基端部(シリンダ20と離れている側の端部)に取り付けられている。引き輪71は、ユーザが操作ロッド67をシリンダ20に対して引っ張るための把持部として設けられている。なお、引き輪71の代わりにワイヤなどと連結して別の場所から引っ張るようにしてもかまわない。
【0122】
また、本体部68における基端側の部分には、目印部73が一体に形成されている。目印部73は、本体部68の外周面から外方へ環状に膨出している。
【0123】
[駐車ブレーキ手動解除機構の動作]
駐車ブレーキ手動解除機構60で駐車バネブレーキ機構40によるブレーキを解除する場合、ユーザが、引き輪71をシリンダ20と反対側へ引っ張ることで、駐車ブレーキを解除できる。
【0124】
ユーザが引き輪71を引っ張ると、操作ロッド67がシリンダ20から離れる方向へ移動する。すると、操作ロッド67の先端部に形成された面取り部68aが後退して閉じ部材62の面取り部62bから離間するため、固定リング61を付勢する力が無くなった結果、固定リング61が拡径する。
【0125】
固定リング61が拡径すると、固定リング61は、内側環状溝16a及び外側環状溝47bの両方に嵌合している状態(図6参照)から、外側環状溝47bのみに嵌合する状態に移行し、ロック部本体43とロックスリーブ16との係合が解除される。同時に、固定リング61の突出部61aの傾斜面と、閉じ部材62の一対の凸部62aの傾斜面の相互作用により、閉じ部材62は、ブレーキシリンダ軸の同心円外側へ移動する。このように係合が解除されることにより、ロック部本体43に作用している第2バネ42の進出方向X1への付勢力が、第1ピストン31に固定されているガイドチューブ12に作用しなくなる。そうなると、第1ピストン31は、第1バネ32によって退避方向X2へ付勢されるため、ブレーキ出力部11が退避方向X2へ退避する。その結果、駐車バネブレーキ機構40によるブレーキが解除される。
【0126】
駐車ブレーキ手動解除機構60によって駐車ブレーキが解除されていない状態では、図9の実線で示すように、操作ロッド67に形成された目印部73は、封止部65に形成された凹部65aに入り込んでいる。よって、外部から目印部73を視認しにくい状態となっている。これに対して、上述のように駐車ブレーキ手動解除機構60によって駐車ブレーキが解除された状態では、目印部73は、図9の一点鎖線で示すように、凹部65aから外方へ進出した状態となる。
【0127】
従って、ユーザは、目印部73が凹部65aに入り込んでいる状態(ロック位置にある状態)では、第1ピストン31と第2ピストン41とが固定リング61によって係合していることを視覚的に把握できる。一方、ユーザは、目印部73が凹部65aから外方へ進出した状態(解除位置にある状態)では、第1ピストン31と第2ピストン41とが係合していなことに起因して駐車バネブレーキ機構40による駐車ブレーキが発生していない、手動開放された状態であることを把握できる。
【0128】
[インジケータ機構の構成]
図10に、図3のX- X矢視位置から視た断面図を示す。この図は、インジケータ機構80を説明するための図である。インジケータ機構80は、第2圧力室S21に圧縮空気が満たされているか否かを確認するためのものである。インジケータ機構80は、有底筒部81と、インジケータ本体83と、弾性部材としてのコイルバネ88と、連通路89とを有している。
【0129】
有底筒部81は、第2シリンダ部23の膨出部28に形成された筒壁部82を有している。筒壁部82は、図2に示すように、第2シリンダ部23の接線方向であって、ブレーキシリンダ装置2が車両本体120に固定された状態における水平方向へ向かって延びるように形成されている。有底筒部81の開口部は、封止部87によって封止されている。封止部87は、ボルトによって筒壁部82に固定されている。
【0130】
インジケータ本体83は、筒壁部82の軸方向に延びる略円柱に形成されている。インジケータ本体83は、筒壁部82の軸方向に進退可能である。インジケータ本体83は、ピストン部84と、インジケータ部85と、バネ挿通部86とが一体に形成されて構成されている。
【0131】
ピストン部84は、外周面が筒壁部82の内周面よりもやや小径な肉厚の円板状に形成されている。ピストン部84は、パッキン84aを介して筒壁部82の内周面に対して軸方向に摺動可能に設けられている。
【0132】
有底筒部81の内部空間S3は、ピストン部84によって2つの空間に区画されている。具体的には、有底筒部81の内部空間S3におけるピストン部84よりも封止部87側の空間は、圧力流体としての圧縮空気が給排される圧力流体空間S31として設けられている。一方、内部空間S3におけるピストン部84よりも底部81a側の空間は、コイルバネ収容空間S32として設けられている。
【0133】
インジケータ部85は、ピストン部84から有底筒部81の開口側へ向かって延びる略円柱状に形成されている。インジケータ部85は、中心軸が有底筒部81の中心軸と同軸となるように、有底筒部81に配置されている。インジケータ部85の外径は、筒壁部82の内径よりも小さい。インジケータ部85は、該インジケータ部85が進退する直線を含む平面であって鉄道車両が延びる方向と平行な面が、操作ロッド67が進退する直線を含む平面であって鉄道車両が延びる方向と平行な面と、平行になるように設けられている。
【0134】
バネ挿通部86は、ピストン部84から底部81a側へ向かって延びる円柱状に形成されている。バネ挿通部86の先端部は、有底筒部81の底部81aに対向するように配置される。バネ挿通部86は、コイルバネ88に挿通している。
【0135】
コイルバネ88は、内部にバネ挿通部86が挿通するように、コイルバネ収容空間S32に収容されている。コイルバネ88は、一端側が有底筒部81の底部81aに当接し、他端側がピストン部84に当接している。コイルバネ88は、インジケータ本体83を底部81aに対して底部81aから離れる側へ付勢している。
【0136】
連通路89は、圧力流体空間S31を第2圧力室S21へ連通させるためのものである。具体的には、連通路89は、一方側が圧力流体空間S31に接続される一方、他方側が第2圧力室S21に接続される。
【0137】
[インジケータ機構の動作]
インジケータ機構80のインジケータ部85は、駐車バネブレーキ機構40の第2圧力室S21内に対する圧縮空気の供給の有無に応じて、有底筒部81に対して進出した状態(進出位置にある状態)となるか、又は後退した状態(後退位置にある状態)となる。
【0138】
具体的には、第2圧力室S21内に圧縮空気が供給されていない状態(第2ピストン41が進出方向X1側に位置している状態)では、圧力流体空間S31内も圧縮空気が供給されていない状態となる。このとき、ピストン部84は、コイルバネ88の付勢力によって底部81aから比較的離れて位置した状態となる。これにより、図10の一点鎖線で示すように、インジケータ部85の先端部が有底筒部81から外方へ突出して露出する。
【0139】
一方、第2圧力室S21内に圧縮空気が供給されている状態(第2ピストン41が退避方向X2側に位置している状態)では、連通路89を通じて圧力流体空間S31にも圧縮空気が供給されている状態となる。この圧縮空気により、ピストン部84は、コイルバネ88の付勢力に抗して底部81a側へ位置した状態となる。これにより、インジケータ部85の先端部が有底筒部81内に収容されて外部から見えなくなる。
【0140】
従って、ユーザは、インジケータ部85の先端部が有底筒部81から外方へ突出した状態(インジケータ部85が進出位置にある状態)では、第2ピストン41が進出方向X1側に位置していることを把握できる。一方、ユーザは、インジケータ部85の先端部が有底筒部81に入り込んでいる状態(インジケータ部85が後退位置にある状態)では、第2ピストン41が退避方向X2側に位置していることを把握できる。
【0141】
また、ブレーキシリンダ装置2は、通気筒35を備えている。通気筒35は、L字状に形成された配管として設けられている。通気筒35の内側の空間は、空気が流れる第2通路35aを構成している。通気筒35の一端側は、第2シリンダ部23の膨出部28に形成された嵌合穴28bに嵌合している。これにより、第1バネ収容空間S12は、第1通路28a及び第2通路35aを含む通気路36によって外部に連通する。
【0142】
上述のように、第1バネ収容空間S12が外部と連通しているため、第1バネ収容空間S12が常圧に保たれる。その結果、第1ピストン31が進出方向X1へ移動する際に第1バネ収容空間S12に過度の圧力が作用しなくなる。これにより、第1ピストン31の進出方向X1への進出が妨げられるのを防止できる。
【0143】
[効果]
以上のように、本実施形態に係るブレーキシリンダ装置2によると、駐車ブレーキ用のバネである第2バネ42の外側に第2圧力室S21を配置することで、第2バネ収容空間S22及び第2圧力室S21を、ブレーキ出力部11の進退方向において重ならないよう配置できる。こうすると、第2バネ収容空間S22を進退方向に長くしようとした場合に第2圧力室S21が邪魔にならないため、第2バネ42の長さ方向の配置スペースを確保しやすくなる。その結果、第2バネ42の設計条件が極端に制限されない程度に第2バネ収容空間S22を短くできるため、その分、ブレーキシリンダ装置2の全長を短くできる。
【0144】
しかも、上述のように第2ピストン筒部46を第2バネ42の外側に配置することで、該第2ピストン筒部46によって第2圧力室S21と第2バネ収容空間S22とを区画できる。これにより、第2圧力室S21に圧縮空気を給排することで、第2ピストン41をシリンダ20に対して進退させることが可能になる。
【0145】
従って、上記の構成によると、駐車ブレーキ用のバネ42の設計条件の制約が増大してしまうことを抑制しつつ、ブレーキシリンダ装置2の全長を短くできる。
【0146】
また、ブレーキ出力部11の進退方向において第2バネ収容空間S22を長くしようとした場合、第2支持部25bを、第2空間S2内における仕切部25に極力近い領域に設けることが望ましい。これに対して、上記構成によると、第2支持部25bが、進出方向X1に進出した状態の第2ピストン41における進出方向X1側の端部よりも仕切部25側に配置される。従って、ブレーキ出力部11の進退方向における第2バネ42の配置スペースを確実に確保できる。
【0147】
また、ブレーキシリンダ装置2では、第2支持部25bを、第1空間S1と第2空間S2とを仕切る仕切部25で構成することができるため、ブレーキ出力部11の進退方向における第2バネ42の配置スペースをより確実に確保できる。しかも、第2支持部25bを別途形成する必要がないため、シリンダ20の構成を簡素化できる。
【0148】
また、ブレーキシリンダ装置2では、第1支持部25aを、仕切部25で構成することができる。こうすると、第1支持部25aを第1空間S1内において仕切部25と別に設ける場合と比べると、第1バネ収容空間S12をブレーキ出力部11の進退方向において長くできるため、第1バネ32の配置スペースを十分に確保できる。しかも、第1支持部25aを別途形成する必要がないため、シリンダ20の構成を簡素化できる。
【0149】
また、ブレーキシリンダ装置2では、第2ピストン41及び第2ピストン筒部46は、別体で形成されていて、組立時において互いに係合される。具体的には、ロック部本体43の第2ピストン筒部46は、第2シリンダ部23の小径筒部23c側(進出方向X1側)から該第2シリンダ部23に挿入される。次に、第2ピストン41は、第2シリンダ部23の大径筒部23a側(退避方向X2側)から、第2シリンダ部23と第2ピストン筒部46との間に挿入される。そして、第2ピストン筒部46の止め輪用環状溝46aに止め輪45が嵌め込まれた後、この止め輪45に第2ピストン41の止め輪用環状溝41bが嵌合することにより、第2ピストン41と第2ピストン筒部46とが係合される。このように、第2ピストン41及び第2ピストン筒部46を別体で構成し、組立時において係合可能とすることで、ブレーキシリンダ装置2の組立性を改善できる。
【0150】
また、ブレーキシリンダ装置2では、水蒸気が水滴となって第1通路28a内に付着した場合であっても、その水滴は、自重により第1通路28aに沿って下方へ流れ、第1バネ収容空間S12から離れる方向へ移動する。従って、水滴がシリンダ20内に侵入して付着することによりシリンダ20が錆びてしまうのを抑制できる。
【0151】
また、ブレーキシリンダ装置2では、第1バネ収容空間S12の下部に水滴が溜まった場合であっても、第1通路28aにおける第1バネ収容空間S12側の領域が第1バネ収容空間S12の下部に繋がっているため、その水滴を第1通路28aへ導くことができる。これにより、シリンダ20の錆びを更に抑制できる。
【0152】
また、ブレーキシリンダ装置2では、駐車バネブレーキ機構40の第2ピストン41が、進出方向X1側又は退避方向X2側のいずれに位置しているかを、インジケータ機構80の状態によって把握することができる。このインジケータ機構80は、上述のように、電気系統を用いずに機械的な構成要素によって形成されたものである。従って、圧力センサ等で第2圧力室S21の圧力を計測することにより第2ピストン41の状態を把握する場合と異なり、電気系統の故障のおそれがない。従って、第2ピストン41の位置状態を確実に把握できる。
【0153】
しかも、圧力センサを用いて第2圧力室S21の圧力状態を確認する場合、一般的に、圧力センサは、圧力センサに接続される電気配線の引き回しの制約等の問題上、ブレーキシリンダ装置2から比較的離れた位置に配置されているブレーキ制御装置内に配置される。しかしこうすると、ブレーキシリンダ装置2近傍で第2圧力室S21に所定の圧力が付加されているか否かを容易に判断することができない。これに対して、ブレーキシリンダ装置2では、機械的な構成要素で形成されたインジケータ機構80によって第2圧力室S21の圧力状態を把握できる。こうすると、圧力センサの場合に必要となる電気配線が不要となるため、上述のような電気配線の引き回しの制約が解消される。その結果、インジケータ機構80をブレーキシリンダ装置2に直接、取り付けやすくなる。従って、ブレーキシリンダ装置2近傍で第2圧力室S21に所定の圧力が付加されているか否かを容易に判断できる。
【0154】
また、ブレーキシリンダ装置2では、ユーザは、インジケータ部85の位置(進出位置又は後退位置)及び操作ロッド67の位置(ロック位置及び解除位置)の双方の位置を確認することにより、駐車バネブレーキ機構40の状態を把握できる。具体的には、ユーザは、(a)インジケータ部85が進出位置且つ操作ロッド67がロック位置の場合、駐車バネブレーキ機構40によるブレーキ力が発生していると判断できる。また、ユーザは、(b)インジケータ部85が後退位置且つ操作ロッド67がロック位置の場合、第2圧力室S21に圧縮空気が供給されていることに起因して駐車バネブレーキ機構40によるブレーキ力が発生していないと判断できる。また、ユーザは、(c)インジケータ部85が進出位置且つ操作ロッド67が解除位置の場合、第1ピストン31と第2ピストン41とが係合していないことに起因して(操作ロッド67が引っ張られていることに起因して)駐車バネブレーキ機構40によるブレーキ力が発生していないと判断できる。
【0155】
従って、上記構成によれば、ユーザは、駐車バネブレーキ機構40によるブレーキ力の発生の有無を確認できるだけでなく、当該ブレーキ力が発生していない原因についても同時に把握することができる。
【0156】
また、ブレーキシリンダ装置2では、ユーザは、インジケータ部85の状態及び操作ロッド67の状態を一方向から視て同時に確認できる。従って、駐車バネブレーキ機構40の状態を比較的短時間で把握できる。
【0157】
また、ブレーキシリンダ装置2では、インジケータ部85が、該インジケータ部85の進退方向を含む平面の1つが操作ロッド67の進退方向を含む平面の1つと平行になっている。この場合、ユーザが、上述のように平行となっている平面に対して垂直な方向からインジケータ部85及び操作ロッド67を見ることで、両方の状態をより短時間且つ容易に把握できる。
【0158】
なお、上記実施形態では、インジケータ部85が、該インジケータ部85の進退する直線を含む平面の1つが操作ロッド67の進退する直線を含む平面の1つと平行になるように配置されているが、この限りでない。例えば、インジケータ部85が、該インジケータ部85の進退する直線を含む平面の1つと操作ロッド67の進退する直線を含む平面の1つとが同一となるように配置されていてもよい。これにより、インジケータ部85及び操作ロッド67の状態を更に容易且つ短時間で把握することができる。
【0159】
更には、インジケータ部85の進退する直線を含む平面の1つと操作ロッド67の進退する直線を含む平面の1つとが平行又は同一でなくともよく、ユーザが一方向から視てインジケータ部85及び操作ロッド67の位置状態を把握できればよい。例えば、インジケータ部85の進退する直線を含む平面の1つと操作ロッド67の進退する直線を含む平面の1つとがなす角度が、90度付近の角度以外の角度であればよい。
【0160】
また、本実施形態では、駐車ブレーキ用のバネ(第2バネ42)の設計条件の制約が増大してしまうことを抑制しつつ全長が短くなるように構成されたブレーキシリンダ装置2、を備えたディスクブレーキ装置1を提供することができる。従って、小型化されたディスクブレーキ装置1を提供することができる。
【0161】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができる。例えば、次のような変形例を実施してもよい。
【0162】
(1)前述の実施形態では、第1支持部25aを、仕切部25における第1空間S1側の部分で構成しているが、この限りでなく、仕切部25とは別に第1支持部25aを形成してもよい、同様に、前述の実施形態では、第2支持部25bを、仕切部25における第2空間S2側の部分で構成しているが、この限りでなく、仕切部25とは別に第2支持部25bを形成してもよい。
【0163】
(2)また、前述の実施形態では、通気路36における第1バネ収容空間S12に繋がる領域が、第1バネ収容空間S12の下部に繋がっているが、この限りでなく、例えば第1バネ収容空間S12の上下方向における中央部分に繋がっていてもよい。
【0164】
(3)また、前述の実施形態では、インジケータ機構80を、コイルバネ88の付勢力によりインジケータ部85が有底筒部81から進出するように構成しているが、この限りでない。具体的には、インジケータ機構80を、圧力流体空間S31に供給される圧力流体によりインジケータ部85が有底筒部81から進出するように構成してもよい。この場合、圧力流体空間S31を、内部空間S3におけるピストン部84よりも底部81a側の空間で構成し、コイルバネ収容空間S32を、内部空間S3におけるピストン部84よりも封止部87側の空間で構成すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明は、鉄道車両の運転時に用いられる流体ブレーキ機構及び鉄道車両の駐車時に用いられる駐車バネブレーキ機構の両方が作動可能なブレーキシリンダ装置に用いることができる。
【符号の説明】
【0166】
1 ディスクブレーキ装置
2 ブレーキシリンダ装置
20 シリンダ
21 シリンダ本体
22a シリンダ底部
25 仕切部
25a 第1支持部
25b 第2支持部
30 流体ブレーキ機構
31 第1ピストン
32 第1バネ
40 駐車バネブレーキ機構
41 第2ピストン
42 第2バネ
46 第2ピストン筒部
S シリンダ空間
S1 第1空間
S11 第1圧力室
S12 第1バネ収容空間(第1バネの収容空間)
S2 第2空間
S21 第2圧力室
S22 第2バネ収容空間(第2バネの収容空間)
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10