(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1WFコントローラは、各風力発電装置についての前記発電機電圧位相との偏差の二乗の総和が最小になるような目標ローカルグリッド電圧位相を求め、前記ローカルグリッド電圧位相が前記目標ローカルグリッド電圧位相になるように前記送り出し変換器を制御するように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の風力発電施設。
前記第1WFコントローラは、各風力発電装置についての前記発電機電圧位相のうち最小の位相を目標ローカルグリッド電圧位相として選択し、前記ローカルグリッド電圧位相が前記目標ローカルグリッド電圧位相になるように前記送り出し変換器を制御するように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の風力発電施設。
各風力発電装置は、風力エネルギーによって駆動されて圧油を生成するための油圧ポンプと、前記圧油によって駆動されて前記同期発電機に機械的エネルギーを入力するための油圧モータと、各風力発電装置の前記油圧モータの押しのけ容積を制御するモータ制御部とを有し、
前記異常検出部によって前記グリッドの異常事象が検出されたとき、各風力発電装置の前記油圧モータの前記機械的エネルギーが低減されるように前記押しのけ容積の指令値を前記モータ制御部に送るように構成された第2WFコントローラをさらに備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の風力発電施設。
前記第2WFコントローラは、各風力発電装置の個別情報に基づき前記機械的エネルギーの低減量を各風力発電装置について決定し、該低減量に基づいて各風力発電装置の前記油圧モータへの前記指令値を送るように構成されたことを特徴とする請求項4に記載の風力発電施設。
前記第2WFコントローラは、前記複数の風力発電装置のうちロータ回転数が定格回転数に達した風力発電装置について前記負荷角を0rad以上の範囲に制限し、他の風力発電装置に関する前記負荷角については0rad未満の範囲を許容するように構成されたことを特徴とする請求項5に記載の風力発電施設。
前記ウィンドファームの各風力発電装置は、前記同期発電機の界磁巻線に界磁電流を供給するための励磁機と、前記異常検出部によって前記グリッドの異常事象が検出された直後、前記界磁電流が増加するように各風力発電装置の前記励磁機を制御するための励磁機制御部とをさらに有することを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の風力発電施設。
同期発電機をそれぞれ有する複数の風力発電装置を含むウィンドファームと、前記ウィンドファームが接続されるローカルグリッドと、前記ローカルグリッドとグリッドとの間に設けられる直流送電路と、前記ローカルグリッドからの交流電力を直流電力に変換して前記直流送電路に供給するための送り出し変換器と、前記直流送電路からの前記直流電力を交流電力に変換して前記グリッドに供給するための受け取り変換器とを備える風力発電施設の運転方法であって、
前記グリッドの異常事象を検出する検出ステップと、
前記検出ステップによって前記異常事象が検出されたとき、前記ローカルグリッドにおけるローカルグリッド電圧位相に対する、各風力発電装置の前記同期発電機の発電機電圧位相の差を示す負荷角が小さくなるように前記送り出し変換器を制御する変換器制御ステップとを備えることを特徴とする風力発電施設の運転方法。
各風力発電装置は、風力エネルギーによって駆動されて圧油を生成するための油圧ポンプと、前記圧油によって駆動されて前記同期発電機に機械的エネルギーを入力するための油圧モータと、各風力発電装置の前記油圧モータの押しのけ容積を制御するモータ制御部とを有し、
前記検出ステップによって前記異常事象が検出されたとき、各風力発電装置の前記油圧モータの前記機械的エネルギーが低減されるように前記押しのけ容積の指令値を前記モータ制御部に送るモータ指令ステップをさらに備えることを特徴とする請求項8乃至10の何れか一項に記載の風力発電施設の運転方法。
前記モータ指令ステップでは、前記複数の風力発電装置のうちロータ回転数が定格回転数に達した風力発電装置について前記負荷角を0rad以上の範囲に制限し、他の風力発電装置に関する前記負荷角については0rad未満の範囲を許容することを特徴とする請求項12に記載の風力発電施設の運転方法。
送り出し変換器、直流送電路及び受け取り変換器を介してグリッドに連系されるローカルグリッドに接続され、同期発電機をそれぞれ有する複数の風力発電装置を含むウィンドファームの制御装置であって、
前記グリッドの異常事象が検出されたとき、前記ローカルグリッドにおけるローカルグリッド電圧位相に対する、各風力発電装置の前記同期発電機の発電機電圧位相の差を示す負荷角が小さくなるように前記送り出し変換器を制御して前記ローカルグリッド電圧位相を調節するための第1WFコントローラを備えることを特徴とするウィンドファームの制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1記載のFRT技術では、ウィンドファーム全体の発電電力のうち数%〜数十%程度の過剰エネルギーを電気抵抗で消散しなければならないため、大容量の電気抵抗を設置する必要があり、コストが嵩む。
また、特許文献2記載の方法では、ピッチ制御の応答速度が比較的遅いため、系統異常発生後の非常に短い時間で対応を迫られるFRT技術としては十分とはいえない。
さらに、非特許文献1に記載の方法は、有効電力がすべりに依存する誘導発電機の特性を利用したものであって、同期発電機の場合にはすべりが存在しないため、同期発電機を備えた風力発電装置を含む風力発電施設には適用できない。
【0010】
本発明の少なくとも一実施形態の目的は、同期発電機をそれぞれ有する複数の風力発電装置を含むウィンドファームを有し、系統異常時におけるFRT機能を低コストで具備した風力発電施設及び風力発電施設の運転方法、並びにウィンドファームの制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の少なくとも一実施形態に係る風力発電施設は、同期発電機をそれぞれ有する複数の風力発電装置を含むウィンドファームと、前記ウィンドファームが接続されるローカルグリッドと、前記ローカルグリッドとグリッドとの間に設けられる直流送電路と、前記ローカルグリッドからの交流電力を直流電力に変換して前記直流送電路に供給するための送り出し変換器と、前記直流送電路からの前記直流電力を交流電力に変換して前記グリッドに供給するための受け取り変換器と、前記グリッドの異常事象を検出するための異常検出部と、前記異常検出部によって前記グリッドの異常事象が検出されたとき、前記ローカルグリッドにおけるローカルグリッド電圧位相に対する、各風力発電装置の前記同期発電機の発電機電圧位相の差を示す負荷角が小さくなるように前記送り出し変換器を制御して前記ローカルグリッド電圧位相を調節するための第1WFコントローラとを備えることを特徴とする。
【0012】
上記風力発電施設では、異常検出部によってグリッドの異常事象が検出されたとき、第1WFコントローラによる制御下で送り出し変換器がローカルグリッド電圧位相を調節し、各風力発電装置の同期発電機の負荷角を減少させる。これにより、ウィンドファームの各風力発電装置の発電出力(有効電力)が送り出し変換器の制御によって一括して迅速に低減され、送り出し変換器からグリッド側に供給可能な有効電力に対してウィンドファームから発生する有効電力が過剰である状態を緩和できる。また、電気抵抗のように過剰エネルギーを消散するための部品を導入する必要がない。
したがって、系統異常時におけるFRT機能を低コストで実現できる。
【0013】
幾つかの実施形態において、前記第1WFコントローラは、各風力発電装置についての前記発電機電圧位相との偏差の二乗の総和が最小になるような目標ローカルグリッド電圧位相を求め、前記ローカルグリッド電圧位相が前記目標ローカルグリッド電圧位相になるように前記送り出し変換器を制御するように構成されている。
これにより、ウィンドファーム全体から発生する有効電力を効果的に低減することができる。また、発電機電圧位相は各風力発電装置の発電出力に応じて異なるから、各風力発電装置についての発電機電圧位相との偏差の二乗の総和が最小になるように目標ローカルグリッド電圧位相を求めれば、一部の同期発電機は負荷角が負になる。そして、負荷角が負になった一部の同期発電機は一時的にモータとして機能し、他の同期発電機からの有効電力を受け容れてこれを消費する。したがって、送り出し変換器からグリッド側に供給可能な有効電力に対してウィンドファームから発生する有効電力が過剰である状態を効果的に緩和できる。
【0014】
他の実施形態において、前記第1WFコントローラは、各風力発電装置についての前記発電機電圧位相のうち最小の位相を目標ローカルグリッド電圧位相として選択し、前記ローカルグリッド電圧位相が前記目標ローカルグリッド電圧位相になるように前記送り出し変換器を制御するように構成されている。
これにより、全ての同期発電機の負荷角をゼロ以上として、同期発電機が一時的であれモータとして機能することが無いようにすることができる。よって、第1WFコントローラの上記構成は、同期発電機のモータ動作に起因した風力発電装置のドライブトレインへの負担を避けたい場合に好適である。
【0015】
幾つかの実施形態では、各風力発電装置は、風力エネルギーによって駆動されて圧油を生成するための油圧ポンプと、前記圧油によって駆動されて前記同期発電機に機械的エネルギーを入力するための油圧モータと、各風力発電装置の前記油圧モータの押しのけ容積を制御するモータ制御部とを有し、前記風力発電施設は、前記異常検出部によって前記グリッドの異常事象が検出されたとき、各風力発電装置の前記油圧モータの前記機械的エネルギーが低減されるように前記押しのけ容積の指令値を前記モータ制御部に送るように構成された第2WFコントローラをさらに備える。
これにより、系統異常時、油圧モータから同期発電機に入力される機械的エネルギーを迅速に低減し、前記機械エネルギーと同期発電機の発電出力とのミスマッチに起因した同期発電機の回転子の加速を抑制することができる。
【0016】
幾つかの実施形態において、前記第2WFコントローラは、各風力発電装置の個別情報に基づき前記機械的エネルギーの低減量を各風力発電装置について決定し、該低減量に基づいて各風力発電装置の前記油圧モータへの前記指令値を送る。
これにより、各風力発電装置の個別情報を考慮して、各風力発電装置の同期発電機の負荷角を個別かつ細やかに制御することで、同期発電機に対する電気的ストレス及び油圧ポンプ及び油圧モータを含むドライブトレインに対する機械的ストレスを効果的に緩和できる。
【0017】
一実施形態では、前記第2WFコントローラは、前記複数の風力発電装置のうちロータ回転数が定格回転数に達した風力発電装置について前記負荷角を0rad以上の範囲に制限し、他の風力発電装置に関する前記負荷角については0rad未満の範囲を許容するように構成される。
これにより、比較的弱い風を受けており、ロータ回転数が未だ定格回転数に達していない風力発電装置の同期発電機を一時的にモータとして機能させて、他の風力発電装置からの有効電力を消費することができる。よって、送り出し変換器からグリッド側に供給可能な有効電力に対してウィンドファームから発生する有効電力が過剰である状態を効果的に緩和できる。
【0018】
幾つかの実施形態において、前記ウィンドファームの各風力発電装置は、前記同期発電機の界磁巻線に界磁電流を供給するための励磁機と、前記異常検出部によって前記グリッドの異常事象が検出された直後、前記界磁電流が増加するように各風力発電装置の前記励磁機を制御するための励磁機制御部とをさらに有する。
グリッドに異常事象が発生した直後、同期発電機の発電機端子電圧は瞬時に低下し、これに伴って発電機の電気的出力(有効電力)も瞬時に低下する。そのため、油圧モータからの機械的入力が発電機の電気的出力に対して過剰になり、同期発電機の回転子が加速され、同期発電機の脱調が起きてしまうおそれがある。そこで、系統異常発生直後、界磁電流を増加させることで、発電機内部誘起電圧が大きくなり、発電機の電気的出力が上昇する。そのため、同期発電機の同期化力が大きくなって、異常事象発生後の同期発電機の第一波動揺が抑制され、過渡安定度が向上する。このようにして同期発電機の脱調が防止される。
なお、このような過渡安定度を向上させるための励磁機の制御は、超速応励磁方式と称される応答速度が非常に速い励磁方式(例えばサイリスタ励磁方式)によって好適に実現できる。
【0019】
また、本発明の少なくとも一実施形態に係る風力発電施設の運転方法は、同期発電機をそれぞれ有する複数の風力発電装置を含むウィンドファームと、前記ウィンドファームが接続されるローカルグリッドと、前記ローカルグリッドとグリッドとの間に設けられる直流送電路と、前記ローカルグリッドからの交流電力を直流電力に変換して前記直流送電路に供給するための送り出し変換器と、前記直流送電路からの前記直流電力を交流電力に変換して前記グリッドに供給するための受け取り変換器とを備える風力発電施設の運転方法であって、前記グリッドの異常事象を検出する検出ステップと、前記検出ステップによって前記異常事象が検出されたとき、前記ローカルグリッドにおけるローカルグリッド電圧位相に対する、各風力発電装置の前記同期発電機の発電機電圧位相の差を示す負荷角が小さくなるように前記送り出し変換器を制御する変換器制御ステップとを備えることを特徴とする。
【0020】
上記風力発電施設の運転方法によれば、検出ステップによってグリッドの異常事象が検出されたとき、送り出し変換器の制御によってローカルグリッド電圧位相が調節され、各風力発電装置の同期発電機の負荷角が小さくなる。これにより、ウィンドファームの各風力発電装置の発電出力(有効電力)が送り出し変換器の制御によって一括して迅速に低減され、送り出し変換器からグリッド側に供給可能な有効電力に対してウィンドファームから発生する有効電力が過剰である状態を緩和できる。また、電気抵抗のように過剰エネルギーを消散するための部品を導入する必要がない。
したがって、系統異常時におけるFRT機能を低コストで実現できる。
【0021】
幾つかの実施形態において、前記変換器制御ステップは、各風力発電装置についての前記発電機電圧位相との偏差の二乗の総和が最小になるような目標ローカルグリッド電圧位相を求め、前記ローカルグリッド電圧位相が前記目標ローカルグリッド電圧位相になるように前記送り出し変換器を制御する。
これにより、ウィンドファーム全体から発生する有効電力を効果的に低減することができる。また、負荷角が負になった一部の同期発電機は一時的にモータとして機能し、他の同期発電機からの有効電力を受け容れてこれを消費する。したがって、送り出し変換器からグリッド側に供給可能な有効電力に対してウィンドファームから発生する有効電力が過剰である状態を効果的に緩和できる。
【0022】
他の実施形態において、前記変換器制御ステップは、各風力発電装置についての前記発電機電圧位相のうち最小の位相を目標ローカルグリッド電圧位相として選択し、前記ローカルグリッド電圧位相が前記目標ローカルグリッド電圧位相になるように前記送り出し変換器を制御する。
これにより、全ての同期発電機の負荷角をゼロ以上として、同期発電機が一時的であれモータとして機能することが無いようにすることができる。よって、変換器制御ステップの上記内容は、同期発電機のモータ動作に起因した風力発電装置のドライブトレインへの負担を避けたい場合に好適である。
【0023】
幾つかの実施形態において、各風力発電装置は、風力エネルギーによって駆動されて圧油を生成するための油圧ポンプと、前記圧油によって駆動されて前記同期発電機に機械的エネルギーを入力するための油圧モータと、各風力発電装置の前記油圧モータの押しのけ容積を制御するモータ制御部とを有し、前記風力発電施設の運転方法は、前記検出ステップによって前記異常事象が検出されたとき、各風力発電装置の前記油圧モータの前記機械的エネルギーが低減されるように前記押しのけ容積の指令値を前記モータ制御部に送るモータ指令ステップをさらに備える。
これにより、系統異常時、油圧モータから同期発電機に入力される機械的エネルギーを迅速に低減し、前記機械エネルギーと同期発電機の発電出力とのミスマッチに起因した同期発電機の回転子の加速を抑制することができる。
【0024】
幾つかの実施形態において、前記モータ指令ステップは、各風力発電装置の個別情報に基づき前記機械的エネルギーの低減量を各風力発電装置について決定し、前記低減量に基づいて各風力発電装置の前記油圧モータへの前記指令値を送る。
これにより、各風力発電装置の個別情報を考慮して、各風力発電装置の同期発電機の負荷角を個別かつ細やかに制御することで、同期発電機に対する電気的ストレス及び油圧ポンプ及び油圧モータを含むドライブトレインに対する機械的ストレスを効果的に緩和できる。
【0025】
一実施形態では、前記モータ指令ステップでは、前記複数の風力発電装置のうちロータ回転数が定格回転数に達した風力発電装置について前記負荷角を0rad以上の範囲に制限し、他の風力発電装置に関する前記負荷角については0rad未満の範囲を許容する。
これにより、比較的弱い風を受けており、ロータ回転数が未だ定格回転数に達していない風力発電装置の同期発電機を一時的にモータとして機能させて、他の風力発電装置からの有効電力を消費することができる。よって、送り出し変換器からグリッド側に供給可能な有効電力に対してウィンドファームから発生する有効電力が過剰である状態を効果的に緩和できる。
【0026】
幾つかの実施形態において、前記ウィンドファームの各風力発電装置は、前記同期発電機の界磁巻線に界磁電流を供給するための励磁機をさらに有し、前記風力発電施設の運転方法は、前記検出ステップによって前記異常事象が検出された直後、前記界磁電流が増加するように各風力発電装置の前記励磁機を制御する励磁機制御ステップをさらに備える。
これにより、界磁電流の増加に伴い同期発電機の同期化力が大きくなって、異常事象発生後の同期発電機の第一波動揺が抑制され、過渡安定度が向上する。このようにして同期発電機の脱調が防止される。
【0027】
また本発明の少なくとも一実施形態に係るウィンドファームの制御装置は、送り出し変換器、直流送電路及び受け取り変換器を介してグリッドに連系されるローカルグリッドに接続され、同期発電機をそれぞれ有する複数の風力発電装置を含むウィンドファームの制御装置であって、前記グリッドの異常事象が検出されたとき、前記ローカルグリッドにおけるローカルグリッド電圧位相に対する、各風力発電装置の前記同期発電機の発電機電圧位相の差を示す負荷角が小さくなるように前記送り出し変換器を制御して前記ローカルグリッド電圧位相を調節するための第1WFコントローラを備えることを特徴とする。
【0028】
上記ウィンドファームの制御装置によれば、グリッドの異常事象が検出されたとき、第1WFコントローラによる制御下で送り出し変換器がローカルグリッド電圧位相を調節し、各風力発電装置の同期発電機の負荷角を減少させる。これにより、ウィンドファームの各風力発電装置の発電出力(有効電力)が送り出し変換器の制御によって一括して迅速に低減され、送り出し変換器からグリッド側に供給可能な有効電力に対してウィンドファームから発生する有効電力が過剰である状態を緩和できる。また、電気抵抗のように過剰エネルギーを消散するための部品を導入する必要がない。
したがって、系統異常時におけるFRT機能を低コストで実現できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、グリッドの異常事象が検出されたとき、送り出し変換器の制御によってローカルグリッド電圧位相を調節し、各風力発電装置の同期発電機の負荷角が減少する。これにより、ウィンドファームの各風力発電装置の発電出力(有効電力)が送り出し変換器の制御によって一括して迅速に低減され、送り出し変換器からグリッド側に供給可能な有効電力に対してウィンドファームから発生する有効電力が過剰である状態を緩和できる。また、電気抵抗のように過剰エネルギーを消散するための部品を導入する必要がない。
したがって、系統異常時におけるFRT機能を低コストで実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0032】
図1は、一実施形態に係る風力発電施設の全体構成を示す図である。
同図に示すように、風力発電施設1は、複数の風力発電装置12を含むウィンドファーム10と、ウィンドファーム10が接続されるローカルグリッド2と、ローカルグリッド2とグリッド4との間に設けられるHVDC20とを備える。
【0033】
ウィンドファーム10の各風力発電装置12は、風を受けて回転するロータ13と、ロータ13に接続されるドライブトレイン14と、ドライブトレイン14を介して伝達されるロータ13の回転エネルギーを電力エネルギーに変換する同期発電機15とを有する。なお、ロータ13のブレードは、ピッチ制御装置18による制御下で作動するピッチ制御機構によってピッチ角の調節が可能になっている。
【0034】
幾つかの実施形態では、
図1に示すように、ドライブトレイン14は、ロータ13によって駆動される可変容量型の油圧ポンプ14Aと、油圧ポンプ14Aで生成された圧油によって駆動される可変容量型の油圧モータ14Bとを備える。油圧ポンプ14A及び油圧モータ14Bは、高圧油ライン14Cと低圧油ライン14Dを介して互いに接続されている。そのため、油圧ポンプ14Aから吐出された作動油(高圧油)は高圧油ライン14Cを介して油圧モータ14Bに供給され、油圧モータ14Bで仕事をした後の作動油(低圧油)は低圧油ライン14Dを介して油圧ポンプ14Aに戻される。なお、低圧油ライン14Dには、作動油が貯留されたオイルタンクを接続してもよい。一実施形態では、高圧油ライン14Cにはアキュムレータ14Eが接続される。アキュムレータ14Eは、高圧油ライン14Cにおける脈動を防止したり、油圧ポンプ14Aで生成された高圧油を蓄積したり、油圧ポンプ14Aの吐出量と油圧モータ14Bの吸込み量との差を吸収したりする役割を有する。また、一実施形態では、風力発電装置12は、同期発電機15の界磁巻線に界磁電流を供給するための励磁機16をさらに有する。なお、油圧ポンプ14A及び油圧モータ14Bの押しのけ容積は、それぞれ、ポンプ制御部17Aとモータ制御部17Bとで制御される。
他の実施形態では、ドライブトレイン14は、ロータ13と発電機15との間に設けられる歯車式の増速機を備える。
【0035】
HVDC20は、ローカルグリッド2からの交流電力を直流電力に変換する送り出し変換器(SEC)22と、SEC22側から受け取った直流電力を交流電力に変換してグリッド4に供給する受け取り変換器(REC)24と、SEC22及びREC24間に設けられる直流送電路26とを備える。
幾つかの実施形態では、ウィンドファーム10及びSEC22が洋上に設置され、グリッド4及びREC24が陸上に設置される。この場合、直流送電路26の大部分は海底に設置される海底ケーブルである。
【0036】
グリッド4に連系される風力発電施設1は、グリッドコードの要求に従う必要がある。例えば、線路短絡や地絡等の系統事故が発生しても、電圧低下の程度や、電圧低下の継続時間が所定の範囲内であれば、風力発電施設1はグリッド4への連系を維持しなければならない(FRT)。
このとき、風力発電施設1には次のような影響が表れる。まず、グリッド4の異常事象発生により、HVDC20からグリッド4に送り出すことができる有効電力が減少する。そのため、グリッド4の異常事象発生直後、ウィンドファーム10からHVDC20に供給される有効電力が余剰になり、直流送電路26における電力の需給の不均衡に起因して直流送電路26の電圧が上昇し、SEC22やREC24が損傷する可能性がある。よって、直流送電路26における電圧上昇を抑制する観点から、ウィンドファーム10からHVDC20に供給される有効電力を迅速に低減することが望まれる。
【0037】
そこで、幾つかの実施形態では、SEC22の制御によって、グリッド4の異常事象発生時にウィンドファーム10からの有効電力の出力を抑制するようになっている。
図1に示す例示的な実施形態では、風力発電施設1にはウィンドファーム集中制御装置(WF集中制御装置)6が設けられており、WF集中制御装置6に含まれる第1WFコントローラ30によって、ウィンドファーム1からの有効電力の出力を抑制するためにSEC22の制御を行う。
【0038】
図2は、一実施形態に係る第1WFコントローラ30における制御ロジックを示すブロック図である。
同図に示すように、第1WFコントローラ30は、各風力発電装置12の同期発電機15の負荷角を算出するための負荷角算出部32と、ローカルグリッド2の目標ローカルグリッド電圧位相を決定するための目標位相決定部34と、目標ローカルグリッド電圧位相に基づいてSEC22に指令値を出力する指令値出力部36とを有する。
負荷角算出部32は、グリッド4における異常事象の検出結果を異常検出部28から受け取ると、各風力発電装置12−i(ただし、iは2以上の整数)の同期発電機15の発電機電圧位相角d
iをウィンドファーム10から取得し、ローカルグリッド2のローカルグリッド電圧位相角D
SECを検出器27から取得する。そして、負荷角算出部32において、ローカルグリッド電圧位相角D
SECを基準とした発電機電圧位相角d
iの角度である負荷角D
i(=d
i−D
SEC)が算出される。なお、各風力発電装置12−iに関して負荷角D
iを算出するのは、各風力発電装置12−iの発電出力に応じて負荷角D
iにばらつきがあるためである。
目標位相決定部34は、負荷角算出部32から受け取った負荷角D
iに基づいてローカルグリッド2の目標ローカルグリッド電圧位相D
SEC_tgtを求める。目標ローカルグリッド電圧位相D
SEC_tgtは、各風力発電装置12−iに関する負荷角D
iが小さくなるように決定される。
指令値出力部36は、目標ローカルグリッド電圧位相D
SEC_tgtが実現されるように、SEC22に指令値(例えば、指令値としてのPWM信号)を送る。SEC22は、指令値出力部36からの指令値に従って、ローカルグリッド2の電圧位相を目標ローカルグリッド電圧位相D
SEC_tgtに調節する。
【0039】
図3は実施形態に係る、目標位相決定部34における目標ローカルグリッド電圧位相D
SEC_tgtの決定原理を示す図であり、
図3(a)がグリッド4に異常事象が発生していない通常運転時におけるベクトル図であり、
図3(b)及び(c)はグリッド4に異常事象が発生した後のベクトル図である。
なお、
図3(a)〜(c)は、ウィンドファーム10が2台の風力発電装置12−1,12−2を含む場合について記述したものであり、ウィンドファーム10を構成する風力発電装置が3台以上の場合にも同様な原理で目標ローカルグリッド電圧位相D
SEC_tgtを決定することができる。
【0040】
図3(a)に示すように、通常運転時、風力発電装置12−1,12−2の同期発電機15の発電機電圧を示すベクトル101,102は、それぞれ、ローカルグリッド2におけるローカルグリッド電圧を示すベクトル100に対して相差角D
1及びD
2を有する。これは、風力発電装置12−1,12−2の同期発電機15が、ローカルグリッド2の電圧位相に対して負荷角D
1及びD
2だけ進んだ位相にて同期速度で運転されていることを意味する。
なお、同期発電機から出力される有効電力は負荷角の正弦関数に比例することが知られている。そのため、負荷角D
1,D
2が小さい範囲では、各風力発電装置12−1,12−2の同期発電機15からの有効電力は負荷角D
1,D
2に比例するものとして扱うことができる。
よって、目標位相決定部34は、目標ローカルグリッド電圧位相D
SEC_tgtを負荷角D
1,D
2寄りに設定すれば、SEC22の制御によって各風力発電装置12−1,12−2の負荷角が小さくなり、同期発電機15から出力される有効電力を抑制できる。
【0041】
一実施形態では、
図3(b)に示すように、全風力発電装置12−1,12−2に関する負荷角(D
1,D
2)の中で最大の負荷角D
1と最小の負荷角D
2との間の値に目標ローカルグリッド電圧位相D
SEC_tgtを設定する。
例えば、各風力発電装置12−1,12−2についての発電機電圧位相角d
1,d
2との偏差の二乗の総和が最小になるように目標ローカルグリッド電圧位相D
SEC_tgtを設定してもよい。すなわち、次式に示す評価関数Jが最小となるような目標ローカルグリッド電圧位相D
SEC_tgtを設定してもよい。
(ただし、Nはウィンドファーム10に属する風力発電装置12の総数である。)
上記手法で目標ローカルグリッド電圧位相D
SEC_tgtを設定すると、SEC22の制御によって、各風力発電装置12−1,12−2の同期発電機15の負荷角が小さくなり、ウィンドファーム10からの有効電力の出力が抑制される。なお、上記手法では、一部の風力発電装置(
図3(b)に示す例では風力発電装置12−1)の同期発電機15は負荷角が負となって一時的にモータとして機能し、他の風力発電装置(
図3(b)に示す例では風力発電装置12−2)の同期発電機15からの有効電力を受け容れてこれを消費する。そのため、SEC22からグリッド4側で受け入れ可能な有効電力に対してウィンドファーム10から出力される有効電力が過剰である状態を効果的に緩和できる。
【0042】
他の実施形態では、
図3(c)に示すように、全風力発電装置12−1,12−2に関する負荷角(D
1,D
2)の中で最小の負荷角D
2を選択し、目標ローカルグリッド電圧位相D
SEC_tgtを最小負荷角D
2に設定する。
上記手法で目標ローカルグリッド電圧位相D
SEC_tgtを設定すると、SEC22の制御によって、各風力発電装置12−1,12−2の同期発電機15の負荷角が小さくなり、ウィンドファーム10からの有効電力の出力が抑制される。また、上記手法では、全ての風力発電装置12−1,12−2の同期発電機15の負荷角がゼロ以上に維持されるから、同期発電機15が一時的であれモータとして機能することが無いようにすることができる。よって、上記手法は、同期発電機のモータ動作に起因した風力発電装置のドライブトレインへ14の負担を避けたい場合に好適である。
【0043】
ところで、グリッド4に異常事象が発生すると、同期発電機15の端子電圧の低下に伴って同期発電機15から出力される有効電力も急低下するから、油圧モータ14Bからの機械的入力が同期発電機15の電気的出力を上回り、同期発電機15の回転子が加速される可能性がある。また、上述のように第1WFコントローラ30による制御でウィンドファーム10から出力される有効電力を抑制する場合には、油圧モータ14Bからの機械的入力が同期発電機15の電気的出力に対してより一層過剰になって、同期発電機15の回転子が加速されやすい。
【0044】
ここで、グリッド4における異常事象発生に伴う同期発電機15の回転子の加速現象について具体的に説明する。
図4は、グリッド4における異常事象発生前後における有効電力P
eと負荷角Dとの例示的な関係を示すグラフである。
グリッド4で異常事象が発生すると、同期発電機15の端子電圧が急激に低下し、同期発電機15から出力される有効電力P
eも急低下する(
図4の状態1→状態2)。グリッド4は、線間短絡や地絡等の事故の影響を最小限に止めるために複数回線になっている場合があり、この場合には事故が生じた回線を遮断することで、グリッド4での異常事象が除却される。グリッド4での異常事象が除却されると、同期発電機15から出力される有効電力P
eは回復する(状態3)。ただし、事故が生じた一部の回線は遮断されたままであり、それ以外の回線のみでの送電であるから、同期発電機15から出力される電力は短絡事故発生前のレベル(状態1)まで回復しない。
異常事象発生前は、状態1におけるP
e−D曲線上のl点で同期発電機15が運転されており、このときの負荷角DはD
aである。l点は、油圧モータ14Bからの機械的入力P
mと状態1におけるP
e−D曲線との交点である。仮に負荷角DがD
aから少しでも逸脱すると、負荷角DをD
aに戻そうとする同期化力dP/dDが働くため、負荷角DはD
aで安定している。
ところが、グリッド4で異常事象が発生すると、同期発電機15のP
e−D曲線は状態1から状態2に瞬時に降下する。一方、短絡事故が発生した直後は、同期発電機15の回転子の慣性によって、負荷角DはD
aのままである。そのため、異常事象発生によって、同期発電機15の運転点はl点からm点に瞬時に移行する。そして、油圧モータ14Bからの機械的入力P
mが同期発電機15の電気的出力P
eに対して過剰になり、同期発電機15の回転子が加速されて、m点からn点に向かって同期発電機15の運転点が移動する。そのため、負荷角DはD
aからD
bに向かって増加する。
そして、負荷角DがD
bに達したときに、異常事象が生じた回線が遮断され、異常事象が除却される。これにより、同期発電機15のP
e−D曲線は状態2から状態3に瞬時に増加する。一方、異常事象が除去された直後は、同期発電機15の回転子の慣性によって、負荷角DはD
bのままである。そのため、異常事象の除去によって、同期発電機15の運転点はn点からo点に瞬時に移行する。よって、同期発電機15の電気的出力P
eが油圧モータ14Bからの機械的入力P
mを上回るようになり、同期発電機15の回転子が減速され始める。したがって、負荷角DはD
cに達した後に減少に転じ、それ以降の負荷角は増加と減少とを繰り返して振動するが、最終的には同期発電機15のダンピング力によって減衰して安定になる。
なお、負荷角Dの折り返し点であるp点は、油圧モータ14Bからの入力P
mと状態2におけるP
e−D曲線で囲まれる面積S
1で表される加速エネルギーと、状態3におけるP
e−D曲線と油圧モータ14の出力P
mで囲まれる面積S
2で表される減速エネルギーとが一致する運転点である。
【0045】
このようにグリッド4における異常事象の発生に伴い同期発電機15の回転子が加速されるおそれがある。同期発電機15の回転子が加速されると、同期発電機15の負荷角が大きくなり、最終的には安定限度を超えて同期発電機15の脱調が起きてしまう。よって、グリッド4における異常事象の発生時、各風力発電装置12の油圧モータ14Bから同期発電機15への機械的入力を抑制してもよい。
幾つかの実施形態では、
図1に示すように、WF集中制御装置6に含まれる第2WFコントローラ40から油圧モータ14Bの押しのけ容積の指令値をモータ制御部17Bに与え、油圧モータ14Bの機械的入力(機械的エネルギー)を減少させる。
【0046】
図5は、一実施形態に係る第2WFコントローラ40における制御ロジックを示すブロック図である。
同図に示すように、第2WFコントローラ40は、各風力発電装置12の同期発電機15の負荷角を算出するための負荷角算出部42と、各風力発電装置12に関する目標負荷角を決定するための目標負荷角決定部44と、目標負荷角に基づいてモータ制御部17Bに指令値を出力する指令値出力部46とを有する。
負荷角算出部42は、グリッド4における異常事象の検出結果を異常検出部28から受け取ると、各風力発電装置12−i(ただし、iは2以上N以下の整数であり、Nはウィンドファーム10に属する風力発電装置12の総数。)の同期発電機15の発電機電圧位相角d
iをウィンドファーム10から取得し、ローカルグリッド2のローカルグリッド電圧位相角D
SECを検出器27から取得する。そして、負荷角算出部42において、ローカルグリッド電圧位相角D
SECを基準とした発電機電圧位相角d
iの角度差である負荷角D
i(=d
i−D
SEC)が算出される。なお、負荷角算出部42は、基本的には第1WFコントローラ30の負荷角算出部32と同様な役割を担うから、負荷角算出部32としても兼用されてもよい。
目標負荷角決定部44は、負荷角算出部42から受け取った負荷角D
iおよびウィンドファーム10から受け取った各風力発電装置12−iの個別情報に基づいて、各風力発電装置12−iに関する目標負荷角D
i_tgtを決定する。なお、各風力発電装置12−iの個別情報とは、風速、ロータ13のブレードのピッチ角、ロータ13の回転数、アキュムレータ14Eの圧力、発電出力、無効電力、力率、フィーダケーブルの電力損失の少なくとも一つを含む。
指令値出力部46は、各風力発電装置12−iに関して目標負荷角D
i_tgtが実現されるように、各風力発電装置12−iのモータ制御部17Bに油圧モータ14Bの押しのけ容積の指令値を送る。モータ制御部17Bは、指令値出力部46からの指令値に従って、油圧モータ14Bの押しのけ容積を調節する。
【0047】
他の実施形態では、第2WFコントローラ40は目標負荷角決定部44に替えて目標機械的入力決定部を備えている。目標機械的入力決定部は、ウィンドファーム10から取得した各風力発電装置12−iの個別情報並びに同期発電機15の端子電圧及び内部誘起電圧に基づいて目標機械的入力P
m_tgtを決定する。なお、目標機械的入力P
m_tgtは、グリッド4における異常事象の発生前の機械的入力P
mよりも小さな値に設定される。指令値出力部46は、目標機械的入力P
m_tgtが実現されるように、各風力発電装置12−iのモータ制御部17Bに油圧モータ14Bの押しのけ容積の指令値を決定する。例えば、指令値出力部46は、目標機械的入力(目標機械的エネルギー)P
m_tgtを油圧モータ14Bの回転数と高圧油流路14Cの圧力P
Hとで除算することで油圧モータ14Bの押しのけ容積の指令値を決定してもよい。各風力発電装置12−iのモータ制御部17Bは、指令値出力部46からの指令値に従って油圧モータ14Bの押しのけ容積を調節する。
【0048】
図6は、実施形態に係る第2WFコントローラ40による制御が同期発電機15の電気的出力P
eと油圧モータ14Bによる機械的入力P
mとのバランスに与える影響を示す図である。
図6には、
図4と同様に、グリッド4で異常事象の発生によって状態1のP
e−D曲線から状態2のP
e−D曲線に移行し、その後、グリッド4での異常事象の除却によって状態3のP
e−D曲線に移行する場合を例示している。なお、
図6に示す状態1〜3のようなP
e−D曲線の変化は、同期発電機15の端子電圧及び内部誘起電圧から検知可能である。
一実施形態では、異常検出部28によってグリッド4での異常事象が検出されると、Pe−D曲線が状態1から状態2に瞬時に下がり、同期発電機15の運転点がl点からm点に移行し、同期発電機15の回転子の加速に伴って負荷角DがD
aから増大し始める。そこで、目標負荷角決定部44は目標負荷角D
i_tgtを設定し、指令値出力部46が、同期発電機15の負荷角Dを目標負荷角D
i_tgtに抑制しうる新しい機械的入力P
m2を実現するための油圧モータ14Bの押しのけ容積の指令値をモータ制御部17Bに即座に送るようになっている。これにより、加速エネルギーS
3を小さくし、減速エネルギーS
4を大きくして、負荷角Dの折り返し点であるn点をm点に近づけて、P
e−D曲線が状態2であるときの同期発電機15の負荷角Dの最大値D
maxを低減できる。また、異常事象が生じた回線の遮断によってPe−D曲線が状態2から状態3に瞬時に回復したら、目標負荷角決定部44は、目標負荷角D
i_tgtを再び設定し、指令値出力部46が、同期発電機15の負荷角Dを新たな目標負荷角D
i_tgtに近づけうる新しい機械的入力P
m3を実現するための油圧モータ14Bの押しのけ容積の指令値をモータ制御部17Bに即座に送る。
他の実施形態では、異常検出部28によってグリッド4での異常事象が検出されると、目標機械的入力決定部が目標機械的入力P
m_tgtをP
m2に設定し、この目標機械的入力P
m2を実現するための油圧モータ14Bの指令値が指令値出力部46から各風力発電装置12−iのモータ制御部17Bに与えられる。同様に、異常事象が生じた回線の遮断後、目標機械的入力決定部が目標機械的入力P
m_tgtをP
m3に設定し、この目標機械的入力P
m3を実現するための油圧モータ14Bの新しい指令値が指令値出力部46から各風力発電装置12−iのモータ制御部17Bに与えられる。
【0049】
幾つかの実施形態では、目標負荷角決定部44及び目標機械的入力決定部は、目標負荷角D
i_tgt又は目標機械的入力P
m_tgtを決定する際、各風力発電装置12の個別情報を考慮する。
【0050】
図7は、各風力発電装置12の個別情報の例を示す図である。同図に示すウィンドファーム10は、グループ1〜3のそれぞれに属する複数の風力発電装置12を含んでいる。ウィンドファーム10の各風力発電装置12は、風速、ロータ13のブレードのピッチ角、ロータ13の回転数、アキュムレータ14Eの圧力、発電出力、無効電力、力率、フィーダケーブルの電力損失の少なくとも一つを含む個別情報をそれぞれ有している。
図7に示すように、各グループ1〜3に属する風力発電装置12が受ける風速の大きさの程度は、それぞれ、V1,V2,V3であり、グループ1〜3間で異なる。また、同一グループ内であっても、個々の風力発電装置12によって風速に差が生じる。また、典型的な可変速風力発電装置は風速に応じた所望の運転点で運転されるから、各風力発電装置12の風速が異なると、各風力発電装置12の運転状態(ブレードのピッチ角、ロータ13の回転数、アキュムレータ14Eの圧力、発電出力、無効電力、力率)も相違する。さらに、各風力発電装置12は、HVDC20までのフィーダケーブルの長さに差があるためフィーダケーブルの電力損失は互いに異なる。
【0051】
一実施形態では、目標負荷角決定部44は、風力発電装置12の個別情報に基づいて、ウィンドファーム10全体から出力される有効電力に対する寄与が大きい風力発電装置12についての目標負荷角D
i_tgtを他の風力発電装置12に比べて小さく設定する。例えば、風速が大きくHVDC20までの距離が小さい風力発電装置12は、ウィンドファーム10全体から出力される有効電力に対する寄与が大きいので、風速が小さくHVDC20までの距離が大きい風力発電装置12に比べて目標負荷角D
i_tgtを小さく設定する。
【0052】
一実施形態では、目標負荷角決定部44は、風力発電装置12の個別情報に基づいて、アキュムレータ14Eの圧力P
ACCが小さい風力発電装置12についての目標負荷角D
i_tgtを他の風力発電装置12に比べて小さく設定する。小さい目標負荷角D
i_tgtを実現するには、油圧モータ14Bの機械的入力P
mを減少させることになり、油圧ポンプ14Aの吐出量と油圧モータ14Bの吸込み量とのバランスが崩れて高圧油ライン14Cの圧力が上昇しやすくなる。そこで、油圧ポンプ14Aの吐出量と油圧モータ14Bの吸込み量との差を吸収可能なアキュムレータ14E(即ち、圧力P
ACCが小さいアキュムレータ14E)を有する風力発電装置についての目標負荷角D
i_tgtを他の風力発電装置12に比べて小さく設定することで、高圧油ライン14Cの圧力上昇を緩和しながら、同期発電機15の加速を抑制できる。
また、他の実施形態では、目標機械的入力決定部は、風力発電装置12の個別情報に基づいて、アキュムレータ14Eの圧力P
ACCが小さい風力発電装置12についての目標機械的入力P
m_tgtを他の風力発電装置12に比べて小さく設定する。
【0053】
幾つかの実施形態では、目標負荷角決定部44は、風力発電装置12の個別情報に基づいて、ロータ13の回転数が定格回転数に達した風力発電装置12について目標負荷角D
i_tgtを0rad以上の範囲に設定し、他の風力発電装置12に関する目標負荷角D
i_tgtについては0rad未満の範囲を許容する。
これにより、比較的弱い風を受けており、ロータ13の回転数が未だ定格回転数に達していない風力発電装置12の同期発電機15を一時的にモータとして機能させて、他の風力発電装置12からの有効電力を消費することができる。よって、SEC22からグリッド4側に供給可能な有効電力に対してウィンドファーム10から発生する有効電力が過剰である状態を効果的に緩和できる。
【0054】
幾つかの実施形態では、モータ制御部17Bによる油圧モータ14Bの押しのけ容積の調節による高圧油ライン14Cの圧力の管理範囲からの逸脱を回避するために、ポンプ制御部17Aによる油圧ポンプ14Aの押しのけ容積の調節と、ピッチ制御部18によるピッチ角の調節とを行う。
例えば、油圧モータ14Bの押しのけ容積の低減によって、高圧油ライン14Cの圧力の上昇が見込まれる場合、油圧モータ14Bの押しのけ容積から定まる油圧モータ14Bの吸込み量と油圧ポンプ14Aの吐出量との差が小さくなるようにモータ制御部17Aが油圧ポンプ14Aの押しのけ容積を調節する。そして、ロータ13の加速を抑制するために、ピッチ制御部18がブレードのピッチ角を調節してブレードが受け取る風力エネルギーを低減する。
【0055】
また、幾つかの実施形態では、異常検出部28によってグリッド4での異常事象が検出された直後、同期発電機15の界磁電流が増加するように各風力発電装置12の励磁機16を制御する。なお、界磁電流を増加することは、
図4及び6における状態2又は3におけるP
e−D曲線を上方に持ち上げることを意味する。
これにより、同期発電機15の内部誘起電圧が大きくなり、同期発電機15の電気的出力P
eが上昇する。そのため、同期発電機15の同期化力dP
e/dDが大きくなって、異常事象発生後の同期発電機15の第一波動揺が抑制され、過渡安定度が向上する。このようにして同期発電機15の脱調が防止される。
このような過渡安定度を向上させるための励磁機16の制御は、例えばサイリスタ方式の超速応励磁制御によって好適に行うことができる。なお、同期発電機15の定態安定度を向上させる観点から、励磁機制御部19に電力系統安定化装置(PSS:Power System Stabilizer)を設けてもよい。
【0056】
次に、風力発電施設の運転方法について説明する。
図8は、一実施形態に係る風力発電施設の運転方法の手順を示すフローチャートである。
図8に示すように、異常検出部28によってグリッド4の異常事象が検出されたか否かを判断する(ステップS2)。グリッド4の異常事象が検出されなければステップS2が繰り返される。グリッド4の異常事象が検出された場合、ステップS4に進んで、各風力発電装置12の同期発電機15の負荷角D
iを算出する。続いて、同期発電機15の負荷角D
iに基づいて、各風力発電装置12−iに関する負荷角D
iが小さくなるように目標ローカルグリッド電圧位相D
SEC_tgtを決定する(ステップS6)。そして、目標ローカルグリッド電圧位相D
SEC_tgtが実現されるように、SEC22によってローカルグリッド2の電圧位相を目標ローカルグリッド電圧位相D
SEC_tgtに調節する(ステップS8)。
また、ステップS10では、同期発電機15の負荷角D
iとウィンドファーム10から受け取った各風力発電装置12−iの個別情報とに基づいて、各風力発電装置12−iに関する目標負荷角D
i_tgtを決定する。なお、各風力発電装置12−iの個別情報とは、風速、ロータ13のブレードのピッチ角、ロータ13の回転数、アキュムレータ14Eの圧力、発電出力、無効電力、力率、フィーダケーブルの電力損失の少なくとも一つを含む。そして、各風力発電装置12−iに関して目標負荷角D
i_tgtが実現されるように、各風力発電装置12−iのモータ制御部17Bによって油圧モータ14Bの押しのけ容積を調節する(ステップS12)。
さらに、ステップS14では、同期発電機15の界磁電流が増加するように各風力発電装置12の励磁機16を制御する。
【0057】
なお、
図8に示す例示的な実施形態では、ステップS2にてグリッド4における異常事象が発生したとき、ステップS4〜S8を含むSEC22の制御、ステップS10〜S12を含む油圧モータ14Bの制御、および、ステップS14を含む励磁機16の制御が順次行われるが、他の実施形態ではこれらの制御の順番を入れ替えたり、これらの制御の少なくとも二つを並行して行ったりしてもよい。
また、グリッド4の異常事象の有無の判断結果(ステップS2)に関わらず、ステップS4の負荷角D
iの算出や、ステップS6の目標ローカルグリッド電圧位相D
SEC_tgtの決定や、ステップS10の目標負荷角D
i_tgtの決定を常時行っておいてもよい。この場合、グリッド4の異常事象が生じた直後、既に決定されている目標ローカルグリッド電圧位相D
SEC_tgtを用いてSEC22の制御を行い、既に決定されている目標負荷角D
i_tgtを用いて油圧モータ14Bの制御を行うことが可能である。
【0058】
さらに、
図8に示す例示的な実施形態では、ステップS10にて決定された目標負荷角D
i_tgtに基づいてステップS12の油圧モータ14Bの押しのけ容積調節を行うようになっているが、ウィンドファーム10から取得した各風力発電装置12−iの個別情報並びに同期発電機15の端子電圧及び内部誘起電圧に基づいて決定された目標機械的入力P
m_tgtに基づいて油圧モータ14Bの押しのけ容積調節を行ってもよい。
【0059】
以上説明したように、上述の実施形態によれば、異常検出部28によってグリッド4の異常事象が検出されたとき、第1WFコントローラ30による制御下でSEC22がローカルグリッド電圧位相を調節し、各風力発電装置12−iの同期発電機15の負荷角D
iを減少させる。これにより、ウィンドファーム10の各風力発電装置12−iの発電出力(有効電力)がSEC22の制御によって一括して迅速に低減され、SEC22からグリッド4側に供給可能な有効電力に対してウィンドファーム10から発生する有効電力が過剰である状態を緩和できる。また、電気抵抗のように過剰エネルギーを消散するための部品を導入する必要がない。
したがって、系統異常時におけるFRT機能を低コストで実現できる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはいうまでもない。例えば、上述した実施形態のうち複数を適宜組み合わせてもよい。