(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
便失禁(FI)、すなわち便通制御不能の、特に女性(男性よりも便失禁に9倍罹患しやすい)の患者たちには、無限の満たされていない臨床的ニーズがある。便失禁の有病率は便失禁を取り巻く悪いイメージによって数十年間隠されてきたが、最近の地域密着型の研究によれば、アメリカ国内だけで最大1700万人の女性が便失禁を患っていると推定されている。便失禁によって心理的及び感情的に打ちのめされた患者は、人前に出ることを避け、QOL(生活の質)が大いに低下する。良好な治療なしには、ほとんどの患者は、おむつを着用して便失禁に耐えるしかない。
【0003】
女性の方が有病率が高いのは、妊娠中及び出産時に骨盤底に外傷が生じるせいである。原因となる病態生理には、外肛門括約筋または内肛門括約筋、陰部神経、肛門挙筋及び骨盤底の他の筋肉への損傷が含まれる。この損傷は、直ちに諸症候を引き起こすこともあるし、高齢になるまで症候が現れないこともある。後者は、この集団が、年を取るにつれて、括約筋及び骨盤底筋のさらなる低下に加えて、直腸感覚、コンプライアンス及び体積の変化など、一般的な調節機構における加齢に伴う病気を経験するという事実に起因する。諸症候の発症平均年齢は驚くほど若く、51歳である。
【0004】
便失禁を患う多くの女性は、調節機構に複数の異常を有するため、便失禁の治療が非常に困難になる。これはこれまで失敗してきた理由の1つであり、それというのも、多くの治療は1つの原因(例えば括約筋裂傷や神経損傷)に対処するためにしか働かないからである。便失禁を制御するための保守的な試みは、食事の変更及び理学療法を含めて、大体は失敗に終わっている。
【0005】
肛門直腸管の大きさを静的に小さくしたり、肛門直腸管の角度を変えたりするために、より侵襲的な方法が試みられてきた。そのような方法には、注射可能な膨張性薬剤(肛門直腸管の壁に入っていく物質)、括約筋形成術(括約筋を締める外科的方法)、リング及びスリング(直腸付近に部分的にまたは全体に留置されるデバイス)が含まれる。そのような処置は、あまり良い結果を示さなかった。というもの、これらが恐らく基本的には静的デバイスであり、健康な括約筋のような動的かつ制御可能な機能を達成することができないからである。アメリカン・メディカル・システム社(American Medical System)の新括約筋(Acticon Neosphincter)などのデバイスは、患者が制御することができる人工括約筋として機能することによって、この問題に取り組んでいる。新括約筋は、直腸付近に留置されるカフと、陰唇に埋め込まれ、患者に制御されるポンプと、腹部に埋め込まれるリザーバ(reservoir)とからなる。そのようなデバイスは、より良好なダイナミックレンジを有するが、デバイスの侵襲的性質により、感染症、びらん及び除去速度がもたらされていた。結果として、そのような手法が行われることはほとんどない。従って、侵襲的でない便失禁に対処する動的な治療が大いに必要とされている。
【0006】
米国特許出願公開第2006/0211911号明細書(特許文献1)には、円筒形前方突起部11と、後端部分部に人の手で持つためのヘッド部20とを有する膣挿入具が開示されている。使用時には、
図6に示されているように、人がヘッド部20を手に持ち、円筒形前方突起部11を膣30内に挿入して直腸膣中隔50を外向きに直腸40に押し付け、それによって、たまっている糞便70を誘導して直腸40に戻す。特許文献1のデバイスは通常、便通過の防止ではなく、便の通過を助ける。特許文献1は、直腸内容物を膣内で制御し得ることを示している。しかし、特許文献1は、便の通過を防止するべく直腸を塞ぐものについて何も論じていない。特許文献1は、便の通過を制御するために膣内に留まるものについても論じていない。さらに、特許文献1は、直腸を制御するために膣に安定的にぴったり嵌め込むことができるものについて何も論じていない。
【0007】
米国特許第6,013,023号明細書(特許文献2)には、閉じた近位端3で終わる長手方向のキャビティ2を画定する中空のチューブ状部材1と、膨張可能シース6とを有する便失禁を制御するためのデバイスが開示されている。ウイング部13もデバイスを適所に保持するのを助けることができる。
【0008】
特許文献2のデバイスの主な欠点は、所望の機能を実行するために不可欠な、デバイスを安定させるために提供される手段である。特許文献2には膣の外部のウイング部が記載されているが、このようなウイング部は患者にとって不快で扱いにくいであろう。特許文献2には、デバイスを固定するための手段としてのデバイスの膨張も記載されている。本願出願人の屍体研究において、固定が膨張に依存する膣内デバイスは、該デバイスが非膨張状態にあるとき、本質的に不安定であることが発見された。さらに、そのようなデバイスが非膨張状態から膨張状態に移行するとき、該デバイスの位置決め及び方向性は可変かつ予測不可能であることが発見された。これは、膣デバイスを用いて直腸に向けられる力を加えることが目標であるときに特に問題である。一例として、デバイスが非膨張状態で挿入されると、適所に力を加えるように確実に膨張することを困難にする。さらに、使用の全期間にわたって、患者は、能動的な排便管理が必要ないと感じたときに、排便または他の活動のためにデバイスをしぼませたいが取り出したくはないと思う場合がある。そのような場合、最初の場合のように、収縮時の不安定性が最適な位置における再膨張を困難にするであろう。特許文献2のデバイスの改良は、膣内の、デバイスの膨張に依存しない固定手段を有するデバイスであろう。これにより、患者の後膣の同じ部分に快い繰り返し可能な力を加えることができるであろう。
【0009】
特許文献2のデバイスの安定性の別の欠点は、チューブ状の、さらに具体的に言えば概ね円筒形として画定されるデバイスであることである。本願出願人の発明の具体化は、このタイプの形状が、回転しやすいために、特に直腸膣中隔に向かって力が加えられる場合に、膣内に安定的に留まらないことを明らかにした。特許文献2の技術の改良は、デバイスであって、直腸膣中隔の適切な部分に繰り返し可能な力を働かせるために適切な位置に留まることができるよう、デバイスの遠位端及び近位端によって形成される軸線を中心に回転することを防止するように設計されたデバイスである。
【0010】
特許文献2のデバイスの別の主な欠点は、膣から直腸へ容易に力を伝えるための本体手段を欠いていることである。本願出願人の実験は、直腸に加えられる力を維持するための冗長(redundant)膣組織の利用可能性の重要性を明らかにした。力が直腸に伝達される領域内の膣壁において冗長性(またはゆるみ(slack))を許容するようにデバイスが設計されていない場合、膣壁の張力は、力を後方に伝えることを困難にする。特許文献2は、特許文献2のデバイスが直腸に力を伝達する領域においてそのような膣のゆるみを許容することになる技術を何ら教示していない。特許文献2の技術の改良は、従って、直腸に力が容易に伝達されるように力印加部分に隣接した膣壁に留まるべく十分なゆるみを許容するための構造を有するデバイスについて説明することになろう。
【0011】
先行技術には様々なペッサリーがある。これらのデバイスは、通常、骨盤臓器脱の治療に適応され、その場合に、子宮などの臓器を膣管内へ脱出しないように支持する。先行技術には、受胎調節、尿失禁及び他の疾患を目的とする他の膣内デバイスもある。これらのデバイスは、形状が異なる。膨張する能力を有するデバイスもあるが、一方向に適用されるのではない。これらの膣内デバイスのいずれも、直腸に向けられる力を加えることができるように設計されておらず、まして安定的に、繰り返して、かつ最低限の力でそうする能力がない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図3B】挿入のために折り畳まれたデバイスの分解図。
【
図4A】種々の固定本体サイズのうちの1つの固定本体サイズの上面図。
【
図4B】種々の固定本体サイズのうちの1つの固定本体サイズの上面図。
【
図4C】種々の固定本体サイズのうちの1つの固定本体サイズの上面図。
【
図4D】種々の固定本体サイズのうちの1つの固定本体サイズの上面図。
【
図4E】種々の固定本体サイズのうちの1つの固定本体サイズの上面図。
【
図5A】種々の固定本体形状のうちの1つの固定本体形状の図。
【
図5B】種々の固定本体形状のうちの1つの固定本体形状の図。
【
図5C】種々の固定本体形状のうちの1つの固定本体形状の図。
【
図5D】種々の固定本体形状のうちの1つの固定本体形状の図。
【
図5E】種々の固定本体形状のうちの1つの固定本体形状の図。
【
図5F】種々の固定本体形状のうちの1つの固定本体形状の図。
【
図5G】種々の固定本体形状のうちの1つの固定本体形状の図。
【
図5H】種々の固定本体形状のうちの1つの固定本体形状の図。
【
図5I】種々の固定本体形状のうちの1つの固定本体形状の図。
【
図7A】膣内デバイスの形状に起因する膣変位の効果を有する膣及び直腸の断面図を示す。
【
図7B】膣内デバイスの形状に起因する膣変位の効果を有する膣及び直腸の断面図を示す。
【
図7C】膣内デバイスの形状に起因する膣変位の効果を有する膣及び直腸の断面図を示す。
【
図7D】膣内デバイスの形状に起因する膣変位の効果を有する膣及び直腸の断面図を示す。
【
図7E】膣内デバイスの形状に起因する膣変位の効果を有する膣及び直腸の断面図を示す。
【
図7F】膣内デバイスの形状に起因する膣変位の効果を有する膣及び直腸の断面図を示す。
【
図7G】膣内デバイスの形状に起因する膣変位の効果を有する膣及び直腸の断面図を示す。
【
図9A】膨張機構とともにキャップを含む膣内デバイスを示す。
【
図9B】膨張機構とともにキャップを含む膣内デバイスを示す。
【
図9C】膨張機構とともにキャップを含む膣内デバイスを示す。
【
図10A】膨張可能部材においてばねを備えた膣内デバイスの側面図。
【
図10B】膨張可能部材においてばねを備えた膣内デバイスの側面図。
【
図11A】膨張可能部材においてばねを備えた膣内デバイスの側面図。
【
図11B】膨張可能部材においてばねを備えた膣内デバイスの側面図。
【
図11C】膨張機構を操作する1つの方法を示す膣内デバイスの側面図。
【
図11D】膨張機構を操作する1つの方法を示す膣内デバイスの側面図。
【
図12A】より大きな子宮頸部を収容するための膣内デバイスの図。
【
図12B】より大きな子宮頸部を収容するための膣内デバイスの図。
【
図12C】より大きな子宮頸部を収容するための膣内デバイスの図。
【
図13A】追加の閉塞機構を備えた膣内デバイスの側面図。
【
図13B】追加の閉塞機構を備えた膣内デバイスの側面図。
【
図14A】膣内デバイスの第2の実施形態の側面図。
【
図14B】膣内デバイスの第2の実施形態の側面図。
【
図14C】膣内デバイスの第2の実施形態の側面図。
【
図14D】膣内デバイスの第2の実施形態の側面図。
【
図14E】膣内デバイスの第2の実施形態の側面図。
【
図14F】膣内デバイスの第2の実施形態の側面図。
【
図14G】膣内デバイスの第2の実施形態の側面図。
【
図16A】把持部または吸引機構を備えた膣内デバイスの図。
【
図16B】把持部または吸引機構を備えた膣内デバイスの図。
【
図16C】把持部または吸引機構を備えた膣内デバイスの図。
【
図16D】把持部または吸引機構を備えた膣内デバイスの図。
【
図16E】把持部または吸引機構を備えた膣内デバイスの図。
【
図17C】潰れたり膨張したりする膣内デバイスの側面図。
【
図17D】潰れたり膨張したりする膣内デバイスの側面図。
【
図17E】潰れたり膨張したりする膣内デバイスの側面図。
【
図19A】体内及び体外において角度調整可能である膨張可能部材の図。
【
図19B】体内及び体外において角度調整可能である膨張可能部材の図。
【
図19C】体内及び体外において角度調整可能である膨張可能部材の図。
【
図19D】体内及び体外において角度調整可能である膨張可能部材の図。
【
図20A】前端部分及び後端部分が互いから分離されている膣内デバイスの側面図。
【
図20B】前端部分及び後端部分が互いから分離されている膣内デバイスの側面図。
【
図20C】前端部分及び後端部分が互いから分離されている膣内デバイスの側面図。
【
図20D】前端部分及び後端部分が互いから分離されている膣内デバイスの側面図。
【
図20E】前端部分及び後端部分が互いから分離されている膣内デバイスの側面図。
【
図20F】前端部分及び後端部分が互いから分離されている膣内デバイスの側面図。
【
図20G】前端部分及び後端部分が互いから分離されている膣内デバイスの側面図。
【
図22A】膨張可能部材18が反対方向に膨張する膣内デバイスの側面図。
【
図22B】膨張可能部材18が反対方向に膨張する膣内デバイスの側面図。
【
図24A】膨張機構を膣内で維持するための取付機構の図。
【
図24B】膨張機構を膣内で維持するための取付機構の図。
【
図26A】能動的収縮機構を備えた膣内デバイスの側面図。
【
図26B】能動的収縮機構を備えた膣内デバイスの側面図。
【
図27A】不可逆的な取出し機構を備えた膣内デバイスの斜視図。
【
図27B】不可逆的な取出し機構を備えた膣内デバイスの斜視図。
【
図28B】膨張機構をバルブに向けるための機構を備えた膣内デバイスの図。
【
図28C】膨張機構をバルブに向けるための機構を備えた膣内デバイスの図。
【
図28D】膨張機構をバルブに向けるための機構を備えた膣内デバイスの図。
【
図30A】格納式可膨張性機構を備えた膣内デバイスの図。
【
図30B】格納式可膨張性機構を備えた膣内デバイスの図。
【
図32A】抜き取り機構を備えた膣内デバイスの図。
【
図32B】抜き取り機構を備えた膣内デバイスの図。
【
図33C】スナップフィット式ロック機構の側面図。
【
図34A】前端部分と後端部分とを結ぶ仮想線を示す。
【
図34B】前端部分と後端部分とを結ぶ仮想線を示す。
【
図35A】単回使用リザーバを備えた膣内デバイスの側面図。
【
図35B】単回使用リザーバを備えた膣内デバイスの側面図。
【
図35C】単回使用リザーバを備えた膣内デバイスの側面図。
【
図36A】単回使用シリンジを備えた膣内デバイスの側面図。
【
図36B】単回使用シリンジを備えた膣内デバイスの側面図。
【
図36C】単回使用シリンジを備えた膣内デバイスの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、全体として、概ね
図1A〜
図1Dに示されているような、便通過を制御するために用いられる膣内デバイス10を提供する。膣内デバイス10は、恥骨切痕領域及び後円蓋付近にデバイスを固定するため並びに力印加部材18を支持するための固定本体12を含む。力印加部材18は、便が直腸を通過するのを抑制する効果を有する力を直腸膣中隔(直腸から膣を隔てる組織)に可逆的に加えることができる。この力の印加は、
図2A及び
図2Bに示されているようなものであることができ、ここでは、力の印加は、直腸膣中隔に対して膨張する部材によりなされる。
【0030】
デバイス10は、前方領域14が恥骨切痕領域にうまく嵌るように設計されることが好ましい。恥骨切痕は膣の前部内に形成されており、周囲骨盤底筋の構造により、デバイスの前端部分14のための安定的な固定点を提供する。デバイス10の後端部分16は、後円蓋領域に収まることが好ましい。これは、子宮頸部の後方の、膣の最も深い領域(すなわち膣円蓋)である。子宮頸部のない患者、例えば子宮摘出術を受けた患者においては、デバイス10は尚も同じ部位(膣の最も深い伸長部)に留まる。この領域にうまく嵌るように設計されたデバイスは、追加された安全性及び安定性を有する。より好適な実施形態は、安定性を提供するために、これらの両領域にうまく嵌るように設計されている。上記の位置に固定するために設計されたデバイスは、適切に留置されたときに、膣が大いに神経支配される領域の外側に留まり、デバイスを患者にとって快適なものにすることを保証する。さらに、好適デバイスは、デバイスが挿入されたときに直腸膣中隔の適切な部分に力を加えるために正しい位置にあり、かつそれを複数の膨張/収縮サイクルにわたって再位置決めを必要とせずに行うことができるように、これらの位置に係合することによって、デバイスが挿入されたときに、容易で繰り返し可能な位置決めを保証し、さらに位置の確実性及び安定性を保証するように設計されている。
【0031】
力印加部材18は、好適には膨張可能部材であり、より好適にはバルーンなどの可膨張性部材であるが、他の機構について以下で考察する。
【0032】
力の印加によって生じる便の抑制は、デバイスが直腸に加える力に起因し、それにより、便を貯めるために普通に生じる直腸内腔の正常な膨張が許容されない。この作用は、直腸膣中隔の方向を変えるように力を加えて直腸を圧縮するか、または直腸に力を加えることによって全体的に直腸の膨張を防止するものとして説明されることができる。あるいは、力印加部分は、直腸膣中隔と反対側の膣壁に対して力を可逆的に加えることができ、それが、固定本体または追加の膨張可能部材を直腸膣中隔に押し付けることによって、便の通過を防止することになる。
【0033】
固定本体は、挿入されたときに力印加部分の近傍に位置するに近接する膣の壁の最低限の膨張及び該壁の張力が存在するように、力印加手段の近傍に位置する側方幅(lateral span)の狭い部分を含むことが好ましい。
【0034】
固定本体12は、部分20または12によって機能的に接続された前端部分14及び後端部分16を有することが好ましく、狭い側方幅を有し、力印加部材18を含むので、デバイス10が挿入されたときに、
図2A及び
図2Bに示されているように、前端部分14は好適には恥骨切痕付近に配置され、後端部分16は好適には膣の後円蓋内に配置され、それによって、膣の側壁への圧力または張力を最小にしながら膣内デバイス10の姿勢を安定させかつ維持する。狭い側方幅のこの部分は、固定本体の中央部分と考えることもできるし、あるいは、固定本体の後方部分と考えることもできる。
【0035】
上記した好適実施形態は、特に力印加部分の近傍で狭い側方幅を有することによって、膣側壁に与える張力を最小にする。より好適な実施形態では、前端部分14から力印加部材18を含む部分へ幅が狭くなり(
図1A及び
図1B)、後端部分14から中央部分へ狭くなるデバイスも考えられる(挿入
図40A)。あるいは、前端部分14及び後端部分16をロッド(
図8,アイテム12)などのより概ね長寸の部分によって接続することができ、それゆえ側壁への圧力印加が回避される。
【0036】
膨張可能部分の幅は、1〜6cm、より好適には3〜4cmであってよい。膨張可能部分の長さは、1〜6cm、より好適には2〜5cmであってよい。膣壁の張力を低下させるために、膨張可能部分の近傍に位置する本体の幅を7cm未満、より好適には5cm未満とすることができる。
【0037】
直腸に力を加えて便の通過を妨げるときに、膣内デバイス10が、固定のために膣の側方膨張を利用しないことは重要である。
図7Aは膣及び直腸の断面図を示しており、ここで、膣は、壁に沿って折り畳まれた多くのゆるみ冗長組織を有する。
図7B及び
図7Cは、膣壁のゆるみを排除し、直腸膣中隔を利用して直腸を塞ぐことを困難にする、より幅広の本体を備えた膣内デバイスを示している。膣内デバイス10は、隣接する壁にかなりの側方膨張を引き起こすので、壁は冗長性及び弾性を失い、膨張可能部分によって容易に操作されない。
図7D〜
図7Eは本発明の膣内デバイス10を示しており、ここで、デバイス10は、膣の冗長性をうまく利用して直腸を押す。換言すれば、デバイス10が挿入された時点で、十分なゆるみが尚も膣内に存在し、直腸が塞がれるように膣壁を操作することができる。この形態は、直腸を塞ぐ機能を提供すると同時に安定性及び快適さを与える。
【0038】
従って、本発明は、前端部分14及び後端部分16を有する本体12を含む便の制御のための膣内デバイス10を提供し、前端部分14及び後端部分16は、部分または側部20によって機能的に相互接続されており、膣内デバイス10は力印加部材18を含むので、上記部分または側部は患者の膣壁の側壁に隣接して最低限変位し、膨張可能部材18による直腸の閉塞を可能にする。
【0039】
膣壁への側方圧力をさらに防止するために、膨張可能部材が膨張されるときに両側部20間間隔を側方に狭くすることができる。
図7Eに示されているように、膨張可能部材が膨張するときの両側部20への圧力「a」により、両側部20間間隔を側方に狭くさせることができる。これは、
図7F及び
図7Gにも示されている。
【0040】
固定本体12は、恥骨切痕と後円蓋とを結ぶ仮想線によって形成される軸線に対して垂直に延在する延在部を含むことができ、該延在部は、膣内デバイス10が軸線の周りを回転することを防止する。延在部は、力印加部材18の方向と異なる方向に延在することができる。延在部は、力印加部材18の方向に対して垂直をなすことができる。固定本体12及び延在部は、実質的に平面構造であってよい。
【0041】
本明細書において用いられる「閉塞」または「塞ぐ」なる語は、便が直腸を通過するのを制限または妨害することを指す。閉塞は、直腸の完全な閉塞であってもよいし、部分的な閉塞であってもよい。直腸を膣から分離する組織(本明細書では「直腸膣中隔」と呼ぶ)への損傷を防止することは望ましいので、直腸膣中隔は、過度に広げられるのではなく、単に直腸の反対側に接触して適所に保持されるかまたは直腸の反対側に向けて変位されて、少なくとも一方向に膨張しないようにして便を正常に通過させる。
【0042】
本明細書において用いられる「切り替え(る)」または「トグル」なる語は、物体(すなわち、本明細書でさらに説明される閉塞部材108)が2つ以上の位置間を行ったり来たりする能力を指す。切り替えは、さらに以下で説明する機械的機構または電子機構によって行うことができる。
【0043】
デバイス10の固定本体12は、
図3Aに示されているように、チューブ24に囲まれたワイヤーフォーム22で製作することができる。ワイヤーフォーム22は、任意の適切な形態であってよいが、中央部分20の各側部に対して1つのワイヤーフォーム22があることが好ましい。換言すれば、中央部分20は2つの側部20であることが好ましいが、1つの中央部分20を用いることもできる。デバイスの形状を維持するために十分な強度を与えることになる任意の適切なワイヤを用いることができる。あるいは、ワイヤーフォームの代わりに、またはワイヤーフォームとともに、ポリマー補強材を用いることができる。チューブ24は、シリコンであることが好ましいが、生体適合性のある他の材料を用いることもできる。固定本体12の表面は、接触する組織に対してデバイスを安定させるために、表面上に把持部52を含むことができる。把持部52は、十分に小さく、使用によって組織が損傷または刺激を受けないように形成される。把持部52は、
図31D、
図31Fに示されているような、真空により固定本体12を適所に保持する穴(pock)などの吸引機構であってもよい。挿入及び取り出しに役立つように、固定本体12は可膨張性であってもよい。
【0044】
好適実施形態では、恥骨切痕付近にしっかりと適合するように、そしてさらに膣壁のゆるみを過度に排除しないように、固定本体12は概ね狭く、後端部分16は力印加部材18とほぼ同じ幅でかつ円形形状、前端部分14は僅かに幅広で四角形形状である。幅広の前端部分14は、幅広の前端部分14と適合する骨盤底筋の湾曲に近付けるために、
図8K〜
図8Mに示されているような曲面であってよい。後端部分16の丸みも、挿入を容易にし、膣壁への刺激を防止する。前端部分14の直角度(すなわち、湾曲して隅に至る前の、より大きな平坦部分)は、デバイス10の体内での回転防止にさらに役立つ。力印加部材18の近傍に位置する部分20の側方幅は、力印加部材18の幅より僅かに幅広であってよい。
【0045】
前端部分14及び後端部分16は、(複数の)ばね26を含むか、または、少なくとも部分的にフレキシブルであり、固定本体12内でワイヤーフォーム22同士を結合する他の部材を含むことが好ましい。ばね26及びワイヤーフォーム22は、ワイヤーフォーム上にオーバーモールドすることができるシリコーンを含む当分野で既知である任意の機構によって、機能的に接続されることができる。ばね26によって、デバイス10は、挿入をより容易にするためにその長さに沿って折り畳まれ、膣の内部かつ恥骨切痕付近及び後円蓋内の好適な位置にきた時点で、デバイス10を開形態に戻すことができる。ばね26は、デバイス10をより自然に膣の輪郭に合わせることができる。同様にまたは二者択一的に、(
図20A〜
図20Gに示されているように)前端部分14及び後端部分16が互いから分離されるように、ばね26を固定本体12に沿って前端部分14と後端部分16との間に配置することができる。ばね26はさらに、前端部分及び後端部分の一方14、16に与えられている力が他方14、16に直接伝達されないようにする。例えば、膣より上の腹腔内容物に起因する力、または印加部分18に起因する力は、両者がフレキシブルな部品によって接続されている場合には前端部分14の安定性(固定)にそれほど影響を与えないであろう。ワイヤーフォーム22は、長手方向に剛性を与える。折り畳まれた形態は、
図3Bに示されている。あるいは、固定本体12は、挿入のために折り畳まれた後に開形状に戻ることができる記憶材料、合金または近接する可塑性ポリマーから製作することもできる。
【0046】
デバイス10は、当分野で既知である種々の方法に従って製造することができる。例えば、組立てにシリコーン接着剤またはヒートボンディングを用いることができ、あるいはデバイス10を1つの一体成形のものとして射出成形することができる。固定本体12を接着または熱成形することができ、力印加部材18を射出成形することができる。
【0047】
固定本体12はまた、
図4A〜
図4Dに示されているような様々なサイズ及び形状に製造されることができる。異なるサイズにするために、デバイス10の中央部分20を容易に短くしたり長くしたりすることができる。全ての女性の生体構造は皆異なっており、デバイス10が利用可能な様々なサイズ及び形状を有することで、多くの別々の女性がデバイス10を用いることができる。適切なデバイス10は、試行錯誤による挿入法によって決定されることができる。あるいは、既存のデバイス10を選択するため、またはデバイス10を特定の身体に合わせて特別に製造するために、CATスキャンを行うかまたはX線写真を撮るかまたは他の医用画像工学(超音波,MRI)により膣及び直腸の寸法を測定することができる。さらに、高度に調整可能なデバイスまたはデバイス代用品などの特殊ツールを用いて、所与の患者に対する正確なサイズ及び形状を決定することができる。
【0048】
固定本体12は、矢状面から見たときに完全に一直線でなくてもよいが、上向きに角度をなすかまたは曲がった前端部分14(
図5A〜
図5E)、段のある固定本体12(
図5F)、弓形の固定本体12(
図5G)、あるいは固定本体12の上向きに角度をなす中央部分(
図5H〜
図5I)を含むことができる。換言すれば、固定本体12は、前端部分14と後端部分16とを結ぶ仮想線(この線は
図34A〜
図34Bに示されている)より高い位置に持ち上げた部分を含むことができる。固定本体12のこれらの種々の形状により、種々の生体構造においてデバイス10の固定を支援することができる。
【0049】
力印加部材18は、後端部分16において好適には膨張可能部材18の形態をとりかつ本明細書において置き換え可能に膨張可能部材18とも呼ばれるものであり、直腸膣中隔を圧迫し、直腸が膨張して便を通過させることを防止することによって、便が直腸を通過するのを防止する(膨張状態)か、または便に直腸を通過させる(収縮状態)かのいずれかのために、力印加部材18を膨張状態と収縮状態との間で作動させることができる。膨張可能部材18はまた、挿入時に収縮状態にあることが好ましく、挿入を容易にするために、折り畳んで固定本体12及び膨張可能部材18それ自体に入れ込むことができる。しかしながら、デバイス10は、膨張可能部材18が少なくとも部分的に膨張された状態で挿入されることもでき、単に、便を通過させるべく膨張可能部材18を収縮させる(または膨張可能部材18が圧縮されるようにする)ための手段を提供する。
【0050】
膨張可能部材18は、様々な形状のものであってよく、直腸膣中隔と接触するドーム形の部分を含むことができる。膨張可能部材18は、固定本体12に取り付けられる場所と反対側の末端部分33においてより幅広になるようにしてもよいし(
図31A)、あるいは末端部分33において狭くなるようにしてもよい(
図31B)。膨張可能部材18は、曲がっていてもよい(
図31C)。
【0051】
膨張可能部材18は、バルーン型部分の形態をとることができる。バルーンは、所定の時間範囲にわたって収縮を可能にするように、透過性を有することができる。他の形態の膨張可能部材18を用いることもできる。膣壁と接触する膨張可能部材18の表面は、固定のための把持部52を含むことができる。把持部52は、十分に小さく、組織を刺激または損傷しないように形成されており、上記したような吸引機構の形態をとることもできる。
【0052】
膨張可能部材18は、部分的な、完全ではない閉塞を提供することもできる。糞便中排泄を防止するために完全閉塞を必要とすることはあり得ない。閉塞時に、直腸のできるだけ多くの機能が残されるが、直腸膣中隔の最も柔軟な領域がその領域のみ膨張可能部材18によって係合されることが好ましい。すなわち、膨張可能部材18は、直腸の多くの部分が糞便貯留のために機能し得ることを可能にするためにできる限り低い位置で直腸と接触するべきであり、なおかつ、閉塞をもたらすように効果的な接触を提供するのに十分に高い位置で直腸と接触するべきである。この位置は会陰体より上にあることが好ましく、会陰体は、直腸膣中隔よりも大きくかつ通常は柔軟性が低い。従って、デバイス10の最良の位置決めを行うために、膨張可能部材18は、異なる生体構造に適合するように、後端部分16に沿って、または固定本体12の様々な部分に沿って、種々の位置において製造されることができる。膨張可能部材18は、調整機構56により医師が患者に合うように調整することができる後端部分16/固定本体12の長さに沿って手動で調整可能なものであってよい(
図18A〜
図18B)。膨張可能部材18は、前端部分14と後端部分16とを結ぶ仮想線に対して0°でない角度をなして固定本体12から延出することが好ましい。膨張可能部材18は、45〜135°の角度をなして直腸壁と接触することが、より好ましい。
図19A〜
図19Dに示されているように、膨張可能部材18が個人の生体構造の適切な部分を標的にしていることを確実にするために、膨張可能部材18は角度調整機構58により角度調整可能なものであってよい。
【0053】
可逆的または不可逆的であり得る膨張及び収縮のために、膨張可能部材18上に膨張機構28が含まれる。膨張可能部材18を膨張及び収縮させるために、膨張機構28は、膨張可能部材18に取り外し不能に取り付けられ、膣内にとどまるかまたは膣の外側に延出することができる(さらに以下で説明する)。膨張機構28は、引っ張られたときに不可逆的に収縮する漏れ口を作るチューブ(
図25A〜
図25B)の形態であってよい。チューブを空にするかまたは満たすために、チューブを広げるためのツール64とチューブを併用することもできる。あるいは、膨張機構28は、取り外し可能に取り付けることができ、膨張可能部材18を膨張または収縮させる必要があるときにのみ取り付けることができる。膨張機構28がデバイス10から引き出されるのを防止するために、膨張機構28は、デバイス10に取り付けられる端部にフランジを含み、かつデバイス10内に位置することができる。膨張機構28は、手押しポンプ、リザーバ、シリンジを用いて膨張機構28を引っ張り膨張可能部材18(
図11C及び
図11Dに示されている)を収縮または膨張させることなどによって手動で操作することができ、あるいは、身体の外側で遠隔制御によって電子的に操作することができる。この場合、膨張可能部材18及びデバイス10は、適切な電子機器を含む。膨張機構28は、使用後に廃棄される単回使用デバイスであってよい。例えば、単回使用デバイスは、
図35A〜
図35Cに示されているような、一方向弁68を介してデバイス10を充填するために1回圧縮されることができる空気で満たされた小袋(ポーチ)またはリザーバ70であってよい。膨張後、リザーバ70は取り出され、一方向弁68は残る。あるいは、単回使用デバイスは、
図36A〜
図36Cに示されているような、一方向弁68を介して1回圧縮するロッキングシリンジ72であってよい。膨張後、シリンジ72は取り外され、一方向弁68は残る。
【0054】
膨張機構28はまた、
図29に示されているような、電磁石をオンにして膨張可能部材18を膨張または収縮させるスイッチによって外部から作動させることができる電磁システムであってよい。例えば、1つの電磁石を膨張可能部材18の上部側32に設け、別の電磁石をその反対に位置する底部側33に設けることができ、両者は、互いに引き付ける状態(収縮状態)と互いに反発する状態(膨張状態)との間で切り替え可能である。磁石を操作するために適切な電子機器及び配線部を含めることができる。膨張機構28は、水、空気、自己硬化ポリマーまたは、膣内に見られる水分または熱に反応する物質であってもよい。
【0055】
膨張可能部材18は、ありのままでは膨張状態でいられ、能動的に収縮されなければならないか、あるいは、膨張可能部材18は、ありのままでは収縮状態でいられ、能動的に膨張されなければならない。能動的収縮機構の具体例は、膨張可能部材18内部のばね(以下でさらに説明する)、膨張可能部材18に取り付けられた弾性機構、または弾性材料である。あるいは、膨張可能部材18は、弾性材などの自動的に膨張するための機構と、膨張可能部材が膨張するときに空気を流入させるための一方向弁とを含むことができる。能動的収縮機構を備えた不可逆的に膨張可能デバイス10の或る例が
図26A〜
図26Bに示されており、ここで、膨張機構28は、引っ張られて膨張可能部材18を徐々に下げることができるジップタイのようなコード(弦材)である。
【0056】
膨張機構28は、
図9A〜
図9Cに示されているように、身体の外側で手が届くキャップまたはバルブ34を遠位端36にさらに含むことができる。デバイス10を挿入する前に、キャップ34を用いて、膨張可能部材18を完全にまたは部分的に膨らませることができる。キャップ34を取り出すかまたは作動させて膨張可能部材18をしぼませ、便が直腸を通過できるようにすることができる。収縮を強化するために、膨張可能部材18内の流体をポンプによって能動的に排出することができる。膨張可能部材18は、その後再び、上記したような機構によって膨張させることができるか、または、膨張可能部材18は、原材料の剛性のおかげで、ひとりでに膨張することができる。
【0057】
膨張可能部材18は、
図10A及び
図10B並びに
図11A及び
図11Bに示されているように、膨張可能部材18を自己膨張させるばね38を含むことができる。換言すれば、糞便を通過させるために能動的収縮を必要とする様々な手段によって、膨張可能部材18を自己膨張可能させることができる。この実施形態では、ユーザは、使用中にデバイスを能動的に膨張または膨張させなくてもよいであろう。むしろ、ユーザは、デバイスを能動的にしぼませるかまたは収縮させることにより糞便の排泄を可能にすることになるであろう。
【0058】
膨張機構28は、身体の外側でユーザの手が届くひも(string)40を含むことができ、ひも40を引っ張ることによりばね38を押し縮めて便を通過させることができる。ひも40が解放された後、ばね38は膨張可能部材18を膨張状態に自然に押し戻す。換言すれば、この膨張可能部材18は通常、膨張状態にあり、能動的に収縮されなければならない。ばね38は、ひも40の代わりに、上記したキャップ34と協働することもできる。ひも40の代わりに、チューブまたはワイヤを用いることもできる。ばね38との係合のために膣内に挿入可能であり、デバイス10から切り離されている部品、例えば、ロッド、ねじ込み式部材またはキー付き(keyed)部材によって、ばね38を制御することもできる。膣の外側に延出するこれらの機構は、ユーザの不快感を引き起こさないように最低限のサイズのものであることことが好ましい。これには、(
図25A〜
図25Bに示されている)概ね平らな形状に押し潰し可能でありかつ膨張/収縮を助けるための追加部品の挿入により開くことができるチューブを含むことができる。
【0059】
膨張機構28は、
図23A〜
図23Cに示されているように、膣の内側において(好適にはチューブの形態で)膨張機構28を格納位置に保持するためのラッチ機構60をさらに含むことができる。ユーザは、膨張機構28を膣の外側に延出させるのとは対照的に、この選択肢の快適さの方を選ぶことができる。ラッチ機構60は、膨張機構の遠位端近傍の第1の部品と、固定本体12、膨張可能部材18、または固定本体12の近傍に位置する膨張機構28に設けられた第2の部品とを含むことができる。ラッチ機構60は、機械的ラッチ(
図23Cのクリップなど)、磁気ラッチ(
図23B)またはフックアンドループ式(hook and loop)ラッチであってよい。膨張機構28は、使用していない時には、固定本体12または膨張可能部材18内に格納できるものであってよい(
図30A〜
図30B)。ラッチ機構60は、そのサイズ及び形状に基づいて、膣口より上に保持される膨張機構28に取り付けられた特徴部であってもよい。これらの特徴部はまた、膨張/収縮が必要とされるときに、膨張機構28の取出しを容易にすることができる。
【0060】
膨張機構28は、膨張機構28またはデバイス10を下向きに引っ張るための、または膣の内側において膨張機構28を押し込みかつ維持するための、膨張機構28の遠位端近傍の付属的機構62をさらに含むことができる。付属的機構62は、
図24A〜
図24Bに示されているようなフレキシブルな、またはフレキシブルでないリングまたはループであってよい。
【0061】
膨張機構28は、膣の外部にあってよく、膨張可能部材18と流体を交換できるように膣内デバイス10に係合することができる(
図28A)。この場合、膨張機構は、膣内デバイス10と結合するポンプまたはシリンジであることが好ましい。膨張機構28は、固定本体12または膨張可能部材18上に設けられたバルブ68またはバルブシステムと結合することができる。固定本体12または膨張可能部材18は、漏斗構造(
図28C〜
図28D)や磁気吸引手段(
図28B)など、膨張機構28をバルブ68またはバルブシステムに向けるための機構66を含むことができる。
【0062】
直腸内の便の存在により発生する力のせいで膨張可能部材18が傾くことを防止するために、膨張可能部材18は、カットされたシリコンシートや成形シリコン部材などの支持部材30をさらに含むことができる。
図6A〜
図6Dは、膨張可能部材18に力を加えると膨張可能部材18に何が起こり得るか、すなわち、膨張可能部材18は、上向きに固定本体12内へ傾き始め、便の通過を完全には阻止しないことができることを示している。従って、傾きが防止されるように膨張可能部材18と固定本体12との間に支持部材30を取り付けることができる。支持部材30は、
図6Eに示されているように、膨張可能部材18の上面32の表面全体を覆うことができ、あるいは、支持部材30は、
図6Fに示されているように、上面32の一部を覆う細長片のみであってもよい。支持部材30は、膨張可能部材18の上面32に直接組み込まれることもできる。支持部材30は、(
図21A〜
図21Dに示されているように)固定本体12の一部または内部空間全体を覆うこともできる。支持部材30は、膨張可能部材18に加わる便の力に耐えかつ膨張可能部材18を適所に維持することができる任意の適切な材料で作られたものであってよい。
【0063】
膨張可能部材18は、
図11E〜
図11Fに示されているように、表面を円周方向に囲むように設けられた補強手段42、例えば、ひも、膨張可能部材18そのものよりも堅い材料、または同一材料のより厚い部分などをさらに含むことができる。補強手段42は、膨張可能部材18を優先方向に、すなわち、直腸壁に対して45〜135°の角度をなして伸ばす助けとなることができる。支持部材30は、埋込ファイバ、プラスチックまたは金属など、撓み防止のための補強手段42を含むこともできる。
【0064】
膨張可能部材18は、膣腔の外部の解剖学的特徴部を支持して膣腔内へ脱出しないようにすることもできる。
【0065】
より突出した子宮頸部(
図12A)を有するユーザに確実に快適に適合するように、膨張可能部材18の上面32及び/または支持部材30を膨張可能部材18内へ弓形に曲げることができ、それは
図12B〜
図12Cに示されているような凹部または孔によって達成される。任意の適切な量の曲げを用いることができ、この態様は、膣の試行錯誤による調整または医用画像解析によって、特定のユーザ向けに設計されることができる。
【0066】
図17A及び
図17Bもまた、子宮頸部を固定し、さらにデバイス10の長さに沿って回転を防止するような、複数の側部20、すなわち前端部分14から後端部分16まで延在する固定本体12のレールを備えたデバイス10を示している。
図17Cは、この形態において、デバイス10の端部14、16を引っ張ることなどによって、固定本体12を挿入のためのより小型の形状に押し潰すことができることを示している。側部20におけるばね力によって、デバイス10をより大型の形状に戻すこともできる(
図17D)。引っ張られることができる部材54などによってデバイス10の端部14、16を一緒に引っ張ることによって、デバイス10を強制的により大型の形状にさせることもできる(
図17E)。
【0067】
デバイス10の様々な態様は、膣付近の他の臓器を支持する働きもし、脱出の症候を緩和するのに役立つ。
【0068】
固定本体12は、デバイス10を膣内で安定に保つが、膣壁の側方変位を引き起こさないように、他の形状、突起部、または場所をとる特徴部を有する前端部分14を含むことができる。例えば、固定本体12は、
図8A〜
図8Bに示されているようなリング形状の前端部分14'を含むことができる。この場合には固定本体12が中央部分20の2つの側部を有するのではなく、むしろ1つの中央部分20が前端部分14'と後端部分16とを接続する。前端部分14''は、
図8C〜
図8Dに示されているような十字またはアンカー(錨)形状であってもよい。前端部分14'''は、
図8E〜
図8Fに示されているような多叉アンカー形状であってもよい。前端部分14''''は、
図8Gにおいてデバイス10が滑り落ちるのを防止し、さらに水などの体液を吸収したときに膨張するような、例えばタンポン様材料などの、軟質またはスポンジ状の部分であってよい。前端部分14'''''は、
図8H〜
図8Iに示されているような、膣口の内部にデバイス10を留めておくために栓として働くように概ね垂直な平面物体である円板またはダイヤフラムであってよい。円板14'''''は、挿入中に変形できかつ吸引を提供することもできるように、柔軟なクッションなどの軟質材料であってよい。取出し15を容易にするために膣の外側に延出し得るひもやソフトシリコンなどの取出し機構46とともに、ドレナージ孔44を含めることができる。円板14'''''は埋込部材を含むことができ、デバイス10が容易に取り出されるように、埋込部材を引っ張ることによって円板14'''''の機械的完全性を可逆的または不可逆的に損なわせることができる。取出し機構46は、同様に任意の実施形態にも含めることができ、リング、ひも、ワイヤ、フラップ、ロッドまたはチューブであってよい。
【0069】
前端部分14''''''は、デバイス10を膣内で固定するとともに容易な取出しを可能にするための機構、例えば
図8Jに示されているようなばね及びタブなどであってよい。このタブを押し下げてばねを収縮させ、デバイス10を取り出しやすくすることができる。さらに、前端部分14は、相互作用する骨盤底筋の湾曲に近付くように形成されることができる。
【0070】
デバイス10の別の重要な態様は、デバイス10が膣内で位置安定性及び回転安定性を有することである。位置安定性は、デバイス10の膣との接触点によって提供され、中でも特に、前端部分14と恥骨切痕との接触及び後端部分16と後円蓋との接触によって提供される。膨張可能部材18は、膣壁との接触により安定性をさらに提供することができる。これらの接触点に留まる限り、固定本体12を様々な形状に設計することができるようにするのは、この位置安定性である。前端部分14と恥骨結合部との接触及び後端部分16と後円蓋との接触によって、回転安定性も提供される。この回転安定性は、膨張可能部材18が膨張されたときにデバイス10の回転を制限する。さらに、上記したようなこの軸線から延在する延在部によって、より具体的には概ね平面的な構造によって、デバイス10の前端部分と後端部分とを結ぶ軸線の周りをデバイス10が回転することを防止する。さらに具体的に言えば、この回転は、デバイス10の両端における固定本体12の追加的な幅によって防止される。膨張可能部材18は、デバイス10が用いられるときは常に、膣壁の同じ部分に接触することにより直腸を塞ぐ。
【0071】
従って、本発明は、力印加部材18を直腸前壁の同じ部位に繰り返し可能に接触させるための固定機構を提供し、力印加部材18は、直腸が便を通過させるように膨張する能力を抑制することができる。本発明のこれらの態様は、ユーザのために最大の快適さ及び結果の信頼性を保証するために重要である。
【0072】
固定機構は、挿入のためのより小型の形状から固定のためのより大型の形状に変化することができる3次元構造を形成する長手部材(すなわち両側部20並びに前端部分14及び後端部分16)であってよい。形状を変えるこの能力については、ばね26とともに上記した。長手部材は、自身をより大型の形状に向かって付勢するばね力を働かせることができる。長手部材をより大型の形状に固定するために、機械的機構、例えば、長手部材の端部同士を互いに近付けて引き出すための圧縮手段、すなわち、ひも、ワイヤ、チューブ、鎖、フレキシブルロッドまたはねじ込み式部材などを用いることができる。
【0073】
さらなる実施形態では、固定手段の繰り返し可能な位置決め及び直腸膣中隔への固定手段の繰り返し可能な接触を可能にするために、本体に加わる吸引力を利用する(
図16A〜
図16E)。これらの本体は、本明細書に記載されている固定及び力の印加の基準を満たすならば、記載されている好適な形状以外の異なる形状、例えば、限定されるものではないが、立方体、楔状(V字形)または錐体であってよい。
【0074】
またさらなる実施形態では、固定機構は、上記したような1若しくは複数の膣壁への外科的取付具(surgical attachment)を介して、身体に固定されることができる。固定機構は、体内に固定するために接着剤を含むことができる。
【0075】
より一般的には、デバイス10は、直腸に力を加える単一形状を実質的に維持することができる。この力は、膣の内側でデバイス10の位置を変えることによって、またはデバイス10の取出し及び挿入によって、調節されることができる。
【0076】
本発明はまた、膣内デバイス10であって、膣内での回転及び移動を防止するべくデバイス10を安定させるための上記したような固定機構を含み、それによって、デバイス10の一部が、直腸膣中隔の同じ部位に力を可逆的に加えて直腸を通過する便の動きを制御し得るようにした膣内デバイス10を提供する。直腸の同じ部位に圧力を印加する重要性については、既に説明した。
【0077】
本発明は、直腸を通過する便の動きを制御する方法であって、上記したように膣内デバイス10を安定させて膣内での回転及び移動を防止するステップと、デバイス10により直腸膣中隔の同じ部位に力を可逆的に加えるステップと、直腸を通過する便の動きを制御するステップとによる制御方法を提供する。力は、上記した力印加部材18により加えることができる。
【0078】
本発明はまた、膣内デバイス10であって、直腸膣中隔(RVS)に力が加えられない第1の状態及びRVSに力が加えられる第2の状態において膣内での回転及び移動を防止するべくデバイス10を安定させるための固定機構を含み、それによって、デバイスの一部が、直腸膣中隔の同じ部位に力を可逆的に加えて直腸を通過する便の動きを制御し得るようにした膣内デバイス10を提供する。
【0079】
本発明は、直腸を通過する便の動きを制御する方法であって、膣内デバイス10が直腸膣中隔(RVS)に力が加えられない第1の状態及びRVSに力が加えられる第2の状態にあるときに、上記したように膣内デバイス10を安定させて膣内での回転及び移動を防止するステップと、デバイス10により直腸膣中隔の同じ部位に力を可逆的に加えるステップと、直腸を通過する便の動きを制御するステップとを含む方法を提供する。
【0080】
直腸閉塞を達成するために、デバイス10とともに用いられる他の機構を設けることができる。例えば、
図13Aに示されているような膨張部材18の底部などにおいて、磁石48を、デバイス10上の対応する磁石48'と相互作用するように、直腸後壁に外科的に埋め込むことができる。磁石48、48'は、電磁石であってよく、外部から制御することができ、両者が互いに相互作用することにより直腸を塞ぐかまたは便を通過させる。あるいは、磁石48'を単に直腸後壁と反対側の膣壁にデバイス10なしで埋め込むことにより同じ結果を得ることもできる。また、デバイス10と併用したときに直腸のより良好な閉塞が生じるように、
図13Bに示されているように、直腸後壁に質量占有性薬剤(mass-occupying agent)50を注入することができる。質量占有性薬剤50は、膨張部材18とちょうど反対側にあり、膨張部材18と相互作用することが好ましい。デバイス10は、直腸を前方に引っ張る埋込型スリングと併用することができる。
【0081】
本発明は、患者の便の通過を制御する方法であって、膣内デバイス10の前端部分14が恥骨切痕付近に配置され、後端部分16が後円蓋内に配置されるように、膣内デバイス10を患者の膣内に挿入するステップと、膣の後側に向かって力を働かせるステップと、該力により患者の直腸の膨張を防止するステップと、便の通過を妨害するステップと、力を取り除いて便を通過させるステップとを含む方法を提供する。この方法を行うことによって、患者は、デバイス10を用いて、便の通過を防止するかまたは便が直腸を通過するのを許容することができる。デバイス10を挿入するとき、挿入を容易にするために、前端部分14及び後端部分16に設けられたばね26を作動させることによって、両側部20間間隔を狭くすることができる。その後、デバイス10が恥骨切痕付近及び後円蓋内に配置された時点で、両側部20は正常な開位置に戻る。力印加部材18は、力を働かせ、直腸の前壁を変位させることが好ましい。上記したように、力印加部材18を手動でまたは電子的に膨張させることができる。力印加部材18が膨張するとき、膣壁にゆるみがあるので、膨張の力は直腸に向けられ、便の通過が抑制される。力は、実質的に会陰体より上において働かせることができる。防止は、直腸の閉塞であってよい。便が直腸を通過することが望ましいとき、膨張可能部材18が収縮され(上記した様々な機構を介して膨張可能部材が回復し得る)、直腸の壁は通常、便を貯めることができる。
【0082】
別の実施形態では、デバイス100は、前端部分104及び後端部分106を有する固定本体102を含み、後端部分106は、閉塞部材108に機能的に接続され、閉塞部材108を閉塞状態と通過状態との間で切り替えるためのトグル機構110を含む。基本的には、閉塞部材108は、
図14Aに示されている直腸内閉塞状態と、
図14Bに示されている、便が直腸を通過するのを許容する通過状態との間で、向きを変えることができる。デバイス100は、上記したデバイス10と概ね同じであるが、膨張させる代わりに、閉塞部材108が複数の位置を切り替える点が異なる。デバイス100は、前端部分104が恥骨切痕付近に配置され、後端部分106が後円蓋内に配置されるように、膣内に留置されることが好ましい。
【0083】
トグル機構110は、閉塞部材108の複数の位置を切り替えるための、当分野で既知である任意の機構であってよい。例えば、トグル機構110は、閉塞部材108を固定本体102に結合するヒンジまたはフレキシブルジョイントであってよい。トグル機構110は、摺動可能な閉塞性部材などの移動可能な閉塞性部材またはスナップフィット式ロック機構などの複数のロック位置を有する閉塞性部材(
図33C)であってよい。トグル機構110は、
図33A〜
図33Bに示されているような、1若しくは複数のねじ山を係合させることによって伸ばされるかまたは格納され得るねじ込み式部材であってもよい。トグル機構110は、閉塞が望ましいときに閉塞部材108をロックする方法を含み、そして閉塞部材108の変位が生じないことが好ましい。閉塞部材108及び固定本体102上のどこか、例えばトグル機構110と反対側で、
図14C〜
図14Dに示されているような閉塞位置に閉塞部材108をロックするために、ラッチ機構112を用いることができる。トグル機構110は、
図14E〜
図14Fに示されているような制御ひも114、または膣の外側に延出する任意の他の制御部品、例えば、ワイヤ、チューブ、レバーまたはねじ込み式部品などを含むことができる。制御ひも114は、閉塞部材108上の適切などの場所に取り付けてもよい。制御ひも114の張力を受けて、閉塞性部材108は変位することができず、閉塞位置において適所にロックされる。制御ひも114の張力が解放されると、閉塞性部材108は、通過位置まで自由に回転及び変位することにより、直腸を通って便を通過させる。
図14Gに示されているように、通過位置にあるときにより快適に適合するように、閉塞部材108は、トグル機構110と反対側で別の形状またはより先細の形状を有することができる。
【0084】
別の実施形態では、膣内デバイスは、膣からデバイスを全部取り出すことによって、閉塞状態と非閉塞状態との間で切り替えることができる。
【0085】
従って、本発明は、患者の便の通過を制御する方法であって、膣内デバイス100の前端部分104が恥骨切痕付近に配置され、後端部分106が後円蓋内に配置されるように、膣内デバイス100を患者の膣内に挿入するステップと、後端部分106に設けられた閉塞部材108を閉塞状態に切り替えるステップと、閉塞部材108により患者の直腸の膨張を防止するステップと、便の通過を妨害するステップと、閉塞部材108を通過状態に切り替えるステップと、便を通過させるステップとを含む方法を提供する。この方法は通常、上記した方法として行われるが、ただし、膨張可能部材18を膨張させる代わりに、閉塞部材108は、直腸内で便の通過を妨げるための閉塞状態と、便を通過させるための通過状態との間で切り替えられる点が異なる。切り替えるステップは、閉塞部材110を種々のスナップフィット位置(
図33C)に移動させるステップ、閉塞部材110を種々の位置に摺動させるステップ、または閉塞部材110を変位させるために閉塞部材110上に設けられたねじ込み式部品を係合させるステップをさらに含むことができる。切り替えるステップは、上記の制御ひも114、あるいは、ワイヤ、チューブ、レバーまたはねじ込み式部品を作動させることによって行うことができる。これらの作動用部品は、膣の外側にあってよい。切り替えるステップは、上記したラッチ機構112により閉塞部材108をロックするステップを含むこともできる。防止するステップは、直腸を塞ぐステップを含むこともできる。
【0086】
図15A〜
図15Dに示す別の実施形態では、デバイス200は、前端部分204及び後端部分206を有する固定本体202を含み、後端部分206は、磁石210'を有する閉塞部材208を受容するためのドッキング機構として働く磁石210を含む。このデバイス200では、固定本体202及び閉塞部材208は互いに別体をなす部品である。固定本体202は、概ね上記した通りでありかつ同じ形状であり、閉塞部材208を受容するために後端部分206に磁石210が付加されていることが好ましい。デバイス200は、前端部分204が恥骨切痕付近に配置され、後端部分206が後円蓋内に配置されるように、膣内に留置されることが好ましい。閉塞部材208は、後端部分206の磁石210とぴったりと合う領域において、対応する磁石210'を有する。閉塞部材208は、剛性材料であってもよいし、あるいは、半剛性かつ膨張可能な材料または上記したような柔軟な材料であってもよい。閉塞部材208は、挿入機構212を含むことができ、挿入機構212は、膣内への挿入を容易にするために用いることができ、固定本体202内で閉塞部材208を安定させるのに役立つことができる。適所に留置されたとき、挿入機構212は、
図15Dに示されているように、閉塞部材208から前端部分204まで及ぶことができる。固定本体202は、二者択一的に、または磁石210に加えて、機械的ロック214を含むことができる。この場合、閉塞部材208は、固定本体202内に閉塞部材208を固定するために、マッチする機械的ロック214'を含むこともできる。ドッキング機構は、形状適合(shape fit)、すなわちドッキング(結合)を可能にするデバイス200自体の形状であってもよい。便の通過を防止することが望ましいときには、閉塞部材208を挿入し(かつ任意選択で膨張させ)、磁石210、210'及び/または機械的ロック214、214'によって適所に保持することができる。閉塞部材208は、固定本体202の長さに沿って調整可能にドッキングされることができる。閉塞部材208は、固定本体202に力を加えさせることもできる。便を通過させることが望ましいときは、閉塞部材208を取り出す(かつ任意選択で収縮させる)。閉塞部材208は、上記したような取出しのための機構、例えば、ひも、チューブ、ワイヤ、リング、タブ、鎖またはフレキシブルロッドをさらに含むことができる。この実施形態では、固定本体202を膣内に外科的に埋め込んで内部に残すことができる一方で、閉塞部材210は、
図15Eに示されているように、必要に応じて出し入れが可能である。この場合、固定本体202はより一層耐久性のあるデバイスであるが、閉塞部材210は使い捨てであってよい。本発明はまた、便の通過を制御するための閉塞部材210そのものを提供し、ここで、閉塞部材210は本体であり、閉塞部材210をデバイス200上のドッキング部に固定するための固定機構を含む。
【0087】
従って、本発明は、患者の便の通過を制御する方法であって、膣内デバイス200の固定本体202を患者の膣内に挿入するステップと、閉塞部材208を膣内に挿入するステップと、固定本体202上に閉塞部材208をドッキングするステップと、閉塞部材208により患者の直腸の膨張を防止するステップと、便の通過を妨害するステップとを含む方法をさらに提供する。前端部分204は恥骨切痕付近に配置され、後端部分206は後円蓋内に配置されることが好ましい。閉塞部材208のドッキングは、磁石の相互作用によって起こり得る。
【0088】
従って、本発明は、患者の便の通過を制御する方法であって、膣内デバイス200の固定本体202を患者の膣内に挿入するステップと、閉塞部材208を膣内に挿入するステップと、固定本体202上に閉塞部材208をドッキングするステップと、閉塞部材208により患者の直腸の膨張を防止するステップと、便の通過を妨害するステップとを含む方法をさらに提供する。前端部分204は恥骨切痕付近に配置され、後端部分206は後円蓋内に配置されることが好ましい。閉塞部材208のドッキングは、上記したように、磁石210、210'及び/または機械的ロック214、214'の相互作用によって起こり得る。ドッキングするステップは、固定本体202と膣壁との間で圧縮されるように閉塞部材208を取り付けるステップを含むことができる。直腸の膨張を防止するステップは、直腸を塞ぐステップを含むことができる。本方法は、閉塞部材208のドッキング状態を解除して閉塞部材208を膣から取り出し、便を通過させるステップを含むことができる。閉塞部材208を取り出す代わりに、閉塞部材208の位置を変えることによっても、便を通過させることができる。
【0089】
デバイス10、100、200の任意の部品を使い捨てにして、単回使用後にトイレに流せる材料から作ることができる。例えば、或る特徴部を作動させた時に、膨張可能部材18/閉塞性部材108、208を不可逆的にしぼませることができる。例えば、
図32A〜
図32Bに示されているように、チューブ/ひも40の形態をとる抜き取り(bleed)機構を引っ張ることができ、それが、バルブを始動させるか、膨張可能部材18からチューブ40を取り外すか、または大抵は流体を漏出させ、膨張可能部材18をしぼませる。これにより患者は便を通過させ、デバイス10は取り出されて廃棄される。膨張可能部材18の任意の機械的部品、例えばばね38などは、作動させて、不可逆的に押し潰す(押し縮める)ことができる。別の例は、
図27A〜
図27Bに示されているような、固定本体12を不可逆的に押し潰すかまたは構造的完全性を失わせるデバイス10の取出し機構である。デバイス10、100、200を、膣内に挿入されるアプリケータに入れることができ、作動時に、デバイスが膨張して適切な形状に変化し、直腸を閉塞する。デバイス10、100、200とともに使い捨てポンプ(例えば或る量の空気で満たされたバッグ)を含めることができ、使い捨てポンプは、挿入後に押し潰すことができ、その後、引き剥がして廃棄することができる。デバイス10を取り出す際に、デバイス10が、将来使われることのないように、不可逆的に機械的に損なわれるようにすることもできる。
【0090】
本発明はまた、より一般的に、デバイスであって、身体開口部内でデバイスを安定させるための固定本体と、開口部壁に力を加えるための力印加部分とを含み、力印加部分が開口部壁を変位させることができるように、力印加部分に近接する開口部の壁に固定本体が最低限の張力を与えるデバイスを提供する。換言すれば、本発明のデバイス10は、直腸閉塞のために膣内で使用することに制限されないが、身体全体での種々の適用のために種々のサイズで作製することができる。開口部壁の張力を最小にするように、固定本体を力印加部分の近傍で狭くすることができる。力印加部分の近傍に位置する領域をデバイスの一方または両方の端部より狭くすることができる。力印加部分は、力を可逆的に加えることができる。加えられた力は、隣接構造に与えられることができる。
【0091】
従って、本発明はまた、身体開口部を通る物質の流れを制御する方法であって、デバイス10を安定させて身体開口部内での回転及び移動を防止するステップと、デバイス10により身体開口部の同じ部位に力を可逆的に加えるステップと、身体開口部を通る物質の流れを制御するステップとによる制御方法を提供する。この方法は、上記のように行うことができるが、直腸閉塞のために膣内のみならず、身体の任意の部分において用いることができる。
【0092】
以下の実験的な例を参照することにより、本発明について詳細にさらに説明する。これらの例は、説明のためだけに与えられたものであり、特別の定めのない限り、制限することを意図しているものではない。それゆえ、本発明は、以下の例に制限されるものと解釈されてはならず、むしろ、本明細書に提供されている教示の結果として明らかになるありとあらゆる変形形態を含むように解釈されるものとする。
【0095】
ここでは、便の通過を抑制するために直腸に力を加えることによって膣内デバイスを膨張させる可能性が実証された。しかし、既存のデバイスはこれを行うことができなかったこと、そして便の抑制を達成するために必要な、特定の重要な機能があることが実証された。例えば、Inflatoballは、膣の内側で大きな円形形状として無方向に膨張する膣内ペッサリーである。体積及び圧力が大きくても、Inflatoballは、膨張を招かなかったので、直腸を塞がなかった。同様に、他のペッサリー及び膣内デバイスも直腸を塞ぐことができなかった。膨張して直腸を塞ぐことができる可膨張性部分が取り付けられ、チューブ状の円筒形本体で構成されているLiveSure V1を用いた。しかし、固定のための手段を持たなかったので、直腸を塞ぐことはできなかった。膨張可能部分の膨張時に、本体は、膨張がもはや直腸に向けられないように回転または移動することになる。その後、回転または移動しないようにLiveSure V1を手動で適所に保持した状態で、上記の手順を繰り返した。そうすると、該デバイスは、力を直腸に向けることができたが、直腸を塞ぐために非常に大きな力を必要としかつ直腸膣中隔に多くの負担をかけた。そしてそれでも、LiveSure V1は直腸を部分的にしか塞ぐことができなかった。その理由は、LiveSure V1の設計が、膣組織を後方にそらすために膣壁の組織において十分なゆるみを許容するものでなかったことであった。従って、直腸膣中隔の組織を直腸に戻る方向に広げるために、より大きな力(恐らく痛みを伴いかつ生きている患者に生理学的に損傷をもたらすであろうもの)を用いる必要があった。安定性要件及び高圧力要件の両者のそのような問題はまた、特許文献2に記載されている実施形態で起こると予想される。これは、安定しておりかつ周囲組織への応力を緩めることなく直腸を塞ぐことができる設計の必要性を強調するものであった。結果を表1に示す。
【表1】
【0097】
この実験では、デバイスの安定した位置決めを可能にするであろう設計を示そうと努めた。LiveSure V3を試験した。このデバイスは、平面的なリング形状のベース部で構成されている。LiveSure V3はまた、後端部分が後円蓋領域に配置され、前端部分が恥骨切痕に配置されるように身体に適合するように設計した。この姿勢から、取り付けられている可膨張性部材が、平面物体から約90°の角度をなして膨張した。この設計は、安定しており、膨張可能部材が繰り返し膨らんだりしぼんだりしたときに回転または移動しなかった。しかし、膨張時に、デバイスは直腸を塞ぐことができなかった。この閉塞の欠如は、膨張可能部分に隣接して教示された膣組織を固定ベース部の幅が広げ、それによって、膣組織を後方にそらすのに必要な組織のゆるみを取り除いたという事実の結果であった。この研究は、後円蓋領域及び骨盤底の切痕にうまく嵌る形状及び固定機能の重要性を実証した。しかし、この研究は、これらの機能が直腸閉塞を可能にするのに十分ではなかったことも実証した。結果は、膨張が生じるであろう領域においてより狭いベース部を備えたデバイスの設計が、RVSを、膣内の膨張可能部材が直腸を塞ぐことができるように、ゆるんだままにさせることを示唆していた。
【0099】
この研究は屍体2の結果を確認したが、ここで、LiveSure V3は安定的に適合するが、直腸を塞ぐことができなかった。LiveSure V5を試験した。このデバイスは、平面性の特徴及び後円蓋及び恥骨切痕における固定点をLiveSure V3と共有していたが、LiveSure V5は、膨張可能部分の近傍に位置する領域内のベース部を狭くした。こうして、最低限の力で直腸を塞ぐことができた。実際に、膣において加えられた力は直腸において感じられる力にほぼ1:1で伝えられた。このことは、ほんの少しの力(膣組織への応力及び歪みを防止するが、それでも直腸を塞ぐことができる)が直腸膣中隔に加えられていたことを示している。これが達成された理由は、デバイスの非膨張状態において、より狭い形状は、その後デバイスが後方に膨張したときに加えられることができる膣壁の余分なゆるみを許容したためである。
【0103】
屍体1は、膣デバイスにより直腸を塞ぐ可能性を実証したが、膣デバイスは安定性及び方向性のある膨張に欠け、組織への伸び及び高い圧力を必要とした。屍体2は安定性及び方向性を実証したが、組織の硬直が直腸閉塞を阻止した。屍体3は、3つの基準全てで功を奏した。屍体4は、屍体3における結果を再確認した。
【0104】
屍体4におけるLiveSureの設計は、便失禁を治療するために本願出願人が望む機能性を実証した。RVSを広げたりLiveSureにおいて過剰な圧力を発生させたりすることなく直腸を塞ぐことが可能であった。LiveSureはまた、安定した繰り返し可能な方向付けを維持し、可膨張性部材の膨張は常にRVSに向けられていた。この設計は、本願出願人の他の屍体実験からの繰り返しフィードバック、医師(泌尿婦人科医、婦人科医及び結腸直腸外科医)との議論及び文献に基づくものであった。それには、先行技術には存在しない独自のキーとなる機能の開発が必要であった。そのような機能は、本明細書及び以下の特許請求の範囲に詳細に記載されている。
【0106】
以下は、デバイスを組み立てるための製造方法である。
【0108】
ばね内にワイヤーフォームを挿入し、接着剤を硬化させる。
【0109】
アセンブリをアウターチューブ内に挿入する。
【0110】
チューブの自由端同士を接合し、接着剤を硬化させる。
【0111】
[膨張チューブ及びバルーン底部をバルーンに接合し、アセンブリを硬化させる。
【0112】
バルーンアセンブリをベースアセンブリに接合し、硬化させる。
【0113】
本願全体にわたって、米国特許を含む種々の出版物が、執筆者及び年度により、特許は特許番号により、引用されている。これらの出版物の全文は以下に記載されている。本発明に関連する最先端技術をさらに十分に説明するために、これらの出版物及び特許の開示はそっくりそのまま、引用を以て本明細書の一部となす。
【0114】
本発明について実例を挙げて説明してきたが、ここで用いた専門用語は、制限の言葉というよりはむしろ本質的に説明の言葉の範疇に入るものであることを意図していることを理解されたい。
【0115】
言うまでもなく、上記教示を踏まえて、本発明の多くの変更形態及び変形形態が可能である。従って、具体的に記載されている以外に、添付の特許請求の範囲内において本発明を実施することができることを理解されたい。