特許第5960330号(P5960330)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5960330
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】積層造形装置
(51)【国際特許分類】
   B22F 3/16 20060101AFI20160719BHJP
   B29C 67/00 20060101ALI20160719BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20160719BHJP
   B22F 3/105 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   B22F3/16
   B29C67/00
   B33Y30/00
   B22F3/105
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-139330(P2015-139330)
(22)【出願日】2015年7月13日
【審査請求日】2016年2月22日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
(72)【発明者】
【氏名】川田 秀一
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 秀二
【審査官】 川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−201068(JP,A)
【文献】 特開2010−265521(JP,A)
【文献】 特開2012−224919(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/199150(WO,A1)
【文献】 特許第5841650(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 3/16
B22F 3/105
B33Y 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形を行なう作業領域である造形領域と、密閉空間を形成し前記密閉空間内に前記造形領域に含まれるレーザ光の所定の照射領域を収容するチャンバと、前記チャンバ内において造形ベース上を水平1軸方向に往復移動し少なくとも前記照射領域に金属材料粉体層を形成するリコータヘッドと、前記チャンバ内に不活性ガスを循環供給する不活性ガス給排装置と、を備えた積層造形装置において、前記不活性ガス給排装置が、前記リコータヘッドの移動方向に面する両側面の片面に設けられる第1供給口と、前記チャンバの側板に第1供給口に対面するように前記照射領域から離れて設けられる第1排出口と、前記造形ベース上に前記照射領域を間に置いて前記第1排出口に対面するように設けられる第2供給口と、を含んでなり、前記第1排出口に接続する吸引装置を設けてなることを特徴とする積層造形装置。
【請求項2】
前記不活性ガス給排装置が、前記リコータヘッドの前記片面に対して反対側の面に設けられる第2排出口を含んでなることを特徴とする請求項1に記載の積層造形装置。
【請求項3】
前記第1排出口が前記リコータヘッドに材料粉体を供給する材料供給装置が設けられている側のチャンバの側板の下側に設けられることを特徴とする請求項1に記載の積層造形装置。
【請求項4】
前記リコータヘッドの移動を案内するガイドレールに沿って前記造形領域に向かって開口する第3排出口と、前記造形領域を挟んで前記第3排出口に対面するように開口する第4排出口と、を設けてなる請求項1に記載の積層造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層造形装置に関する。特に、本発明は、ヒュームをチャンバの外に除去する機能を有する金属粉末積層造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属粉末積層造形装置は、一般には、金属3Dプリンタとして広く知られている。レーザ光による金属粉末焼結積層造形法においては、造形テーブル上に金属材料粉体を均一に撒布して材料粉体層を形成し、材料粉体層における所定の照射領域にレーザ光を照射して焼結層を形成し、焼結層を積層して一体化させることによって所望の三次元造形物を生成する。
【0003】
金属材料粉体をレーザ光によって焼結する場合は、材料粉体が変質しないように保護するとともに、所要のエネルギのレーザ光を常時安定して照射できるようにするために、所定の照射領域の周囲の環境を可能な限り酸素が存在しない雰囲気にすることが要求される。そのため、金属粉末積層造形装置は、密閉されたチャンバ内にレーザ光の所定の照射領域を設けて、チャンバに窒素ガスのような不活性ガスを供給して、酸素濃度が十分に低い雰囲気下でレーザ光を照射できるようにされている。
【0004】
レーザ光によって金属材料粉体を焼結させると、熱で昇華した金属を含む金属ヒュームと称される特有の蒸気が発生する。ヒュームは、黒煙のように発生して上昇して拡散する。ヒュームが霧のようにチャンバに充満すると、チャンバ内を縦断して照射されるレーザ光を遮ってレーザ光のエネルギを低下させるため、予定されている十分な所要の照射エネルギのレーザ光が所定の照射領域に到達せず、焼結不良を引き起こす。
【0005】
そのため、ヒュームが冷却されて所要の照射エネルギのレーザ光の照射に影響を与えない程度まで十分に消滅するまでの間、ヒュームの残留量に応じて定期的に焼結作業を休止することが要求される。また、ヒュームが冷却されたときに生じる微細な金属の粒子がチャンバ内を浮遊し、チャンバの環境を悪化させる。金属の粉塵は、塵肺の原因になることが判明しており有害である。また、浮遊した微細な金属の粒子が落下して新しい材料粉体に混入し、生成される三次元造形物の品質を低下させるおそれもある。
【0006】
例えば、特許文献1または特許文献2は、直方体形状のチャンバの側板の上側に設けられた供給口から不活性ガスを供給し、対向する側板の下側に設けられた排出口から不活性ガスを排出することによって、ヒュームの発生源である照射スポットを含む所定の照射領域を横切る不活性ガスの流れを形成し、ヒュームを不活性ガスの流れに乗せてレーザ光の照射経路から排除する方法を開示している。
【0007】
特許文献3は、圧縮された不活性ガスを供給したり、チャンバ内にファンを設置することによって、局所的な不活性ガスの流れを作り、チャンバ内を縦断して照射されるレーザ光の照射経路からヒュームを効果的に排除することができる積層造形装置を開示している。特許文献3の発明によると、局所的な不活性ガスの流れによって、レーザ光の照射経路からヒュームをより効果的に排除することができる。
【0008】
特許文献4は、造形テーブルの上面に設けられた供給口から不活性ガスを供給し、造形テーブルの上面に供給口とは別に設けられた排出口からポンプまたはファンによって強制的に不活性ガスを排出する積層造形方法を開示している。特許文献4の発明によると、所定の照射領域に撒布されている材料粉体を移動させることなく、ヒュームの発生源のより近くからヒュームを積極的に排除することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2001−504897号公報
【特許文献2】特開2014−201068号公報
【特許文献3】国際公開2011/49143号パンフレット
【特許文献4】特開2010−47813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
不活性ガス給排装置は、チャンバに設けられている複数の供給口と複数の排出口を通して不活性ガスを循環させている。チャンバの外に排出されるヒュームを含んだ汚れた不活性ガスは、ヒュームコレクタという集塵機に送られる。ヒュームコレクタによって、ヒュームが冷却して発生する微細な金属の粒子が除去される。浄化された不活性ガスは、再びチャンバに供給される。そのため、再生能力を含む不活性ガスの最大供給量を超える流量で不活性ガスを循環させると、不活性ガスの濃度が低下して、チャンバ内の酸素濃度が許容値を上回る。当然、不活性ガス給排装置の不活性ガスの最大供給量には、実用上の限界がある。
【0011】
不活性ガスの供給口と排出口との間に形成される不活性ガスの流れは、不活性ガス給排装置の不活性ガス供給装置から供給される不活性ガスの圧力と流量におおよそ依存するので、家屋における換気と同じように比較的緩やかである。そのため、ヒュームを不活性ガスの流れに乗せて効率よくレーザ光の照射経路から排出するためには、所定の照射領域により近い位置に不活性ガスの供給口と排出口を設ける必要がある。
【0012】
ヒュームを吸引して強制的に排出する場合、排出口が所定の照射領域に近接していると、材料粉体を移動させ、あるいは巻き込んで吸い出して材料粉体層を乱すおそれがある。また、所定の照射領域を間に置いて供給口と排出口との間の距離が近すぎると、新しく供給される不活性ガスの殆どが直接的に排出口から吸い出されて、チャンバの全体に行き渡らず、チャンバの全体における不活性ガスの濃度の低下が進んでしまうおそれがある。そのため、排出口に吸引装置を設けることが難しい。
【0013】
このように、不活性ガスの流れによってヒュームの発生源においてヒュームをレーザ光の照射経路から排除することができたとしても、チャンバの外に十分に排出しきれない。所定の照射領域から押し出されてチャンバの下側の排出口から排出されずにチャンバに残留するヒュームは、チャンバの側板内壁に沿って上昇する。上昇したヒュームは、チャンバの天板に到達する。チャンバの上側に設けられている排出口からも排出されきれずに残留するヒュームは、チャンバの上側でレーザ光の照射経路を横切って反対側の側板内壁に当たって下降し、チャンバ内で対流し拡散する。
【0014】
同一のレーザ光の照射条件における材料粉体層毎の所定の照射領域の面積が大きくなるほど、各材料粉体層の焼結工程に要する時間が長くなるので、ヒュームの発生量もより多くなる。ヒュームの発生量が相対的に不活性ガス給排装置の不活性ガスの最大供給量を上回ると、チャンバに滞留するヒュームが消滅するまでに要求される時間もより長くなり、焼結作業の休止時間も長くなって、生産効率が低下したり、造形品質が低下する。
【0015】
本発明は、上記課題に鑑みて、より効率よくチャンバからヒュームを除去することができる積層造形装置を提供することを主たる目的とする。本発明によって得ることができるいくつかの利点は、本発明の実施の形態の説明において、詳しく記述される。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の積層造形装置は、上記課題を解決するために、造形を行なう作業領域である造形領域と、密閉空間を形成し密閉空間内に造形領域に含まれるレーザ光の所定の照射領域を収容するチャンバ(1)と、チャンバ(1)内において造形ベース(6A)上を水平1軸方向に往復移動し照射領域に金属材料粉体層を形成するリコータヘッド(3)と、チャンバ(1)内に不活性ガスを循環供給する不活性ガス給排装置(4)と、を備えた積層造形装置において、不活性ガス給排装置(4)が、リコータヘッド(3)の移動方向に面する両側面の片面に設けられる第1供給口と、チャンバ(1)の側板に第1供給口に対面するように照射領域から離れて設けられる第1排出口と、造形ベース(6A)上に照射領域を間に置いて第1排出口に対面するように設けられる第2供給口と、を含んでなり、第1排出口に接続する吸引装置(4C)を設けてなるようにされる。
【0017】
上記積層造形装置は、好ましくは、不活性ガス給排装置(4)が、リコータヘッド(3)の上記片面に対して反対側の面に設けられる第2排出口を含んでなるようにされる。また、望ましくは、第1排出口がリコータヘッド(3)に材料粉体を供給する材料供給装置(7)が設けられている側のチャンバの側板の下側に設けられるようにする。また、リコータヘッド(3)の移動を案内するガイドレールに沿って造形領域に向かって開口する第3排出口と、造形領域を挟んで第3排出口に対面するように開口する第4排出口と、を設けることができる。なお、括弧内の符号は、説明の便宜上付されているものであって、本発明を図面に示される実施の形態の積層造形装置に限定するものではない。
【発明の効果】
【0018】
本発明の積層造形装置は、リコータヘッドの片面に新しい清浄な不活性ガスを噴出して供給する第1供給口を設けるとともに、所定の照射領域を間に置いて第1供給口に対面するようにチャンバの側板に所定の照射領域から十分な距離離れて第1排出口を設けている。また、所定の照射領域を間に置いて第1排出口に対面するように造形ベースの上に第2供給口を設けている。そして、第1排出口が所定の照射領域および対向する供給口に近接していないので、第1排出口に吸引装置を設けて強制的にヒュームを排出するようにすることができる。
【0019】
吸引装置によってレーザ光の照射経路を横切って第1排出口に向かう不活性ガスの流れに勢いが与えられるので、より効率よく照射経路からヒュームを排除することができる。また、チャンバの換気能力が向上し、ヒュームの排出量をより多くすることができる。特に、リコータヘッドが移動して第1供給口が使用できないときであっても、第2供給口から第1供給口と同じ新しい不活性ガスが供給されるので、造形中に途切れることなく、常時同一方向に清浄な不活性ガスの流れが形成される。
【0020】
本発明の積層造形装置によると、所要のエネルギのレーザ光を照射し得る程度までチャンバからヒュームを除去するために要する時間をより短くすることができ、生産効率が向上する。また、効率よくヒュームを除去することによってチャンバに漂流する微細な金属の粒子が減少し、品質と安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の積層造形装置の正面図である。
図2】本発明の積層造形装置の右側面図である。
図3】造形ベース6Aを示す斜視図である。
図4】リコータヘッドを右上方向から見た斜視図である。
図5】リコータヘッドを左下方向から見た斜視図である。
図6】不活性ガスの第1排出口V1を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1および図2に本発明の積層造形装置の適する実施の形態の全体の概要が模式的に示される。図1は、実施の形態の積層造形装置の正面図である。図2は、図1で示される積層造形装置の側面図である。図3に実施の形態の積層造形装置の造形ベースの具体的な構成が示される。以下の説明では、積層造形装置の機械本機において、チャンバに作業扉が設けられている側を前面または正面とし、前面に向かって右手側を右側面、左手側を左側面、後側を背面とする。図中の点線は、レーザ光の照射経路または信号線を示す。以下に、本発明の積層造形装置の実施の形態について、具体的に説明する。
【0023】
実施の形態の積層造形装置は、レーザ光による金属粉末焼結積層造形法によって金属製の三次元造形物を生成する金属粉末焼結積層造形装置である。積層造形装置は、機械本機と、機械本機に収容される電源装置および制御装置と、機械本機の前側に設けられる操作パネルと、機械本機の後側に設定されるヒュームコレクタ4Bのような周辺機器と、で構成されている。
【0024】
図1に示される積層造形装置は、密閉空間を形成し密閉空間内にレーザ光の所定の照射領域を収容するチャンバ1と、チャンバ1内において造形ベース6A上を水平1軸方向(U軸)に往復移動し少なくとも所定の照射領域に金属材料粉体層を形成するリコータヘッド3と、チャンバ1内に不活性ガスを循環供給する不活性ガス給排装置4と、を備える。
【0025】
チャンバ1は、酸素濃度が所定値未満の金属材料粉体を焼結するために適する環境を形成する手段である。チャンバ1は、機械本機の左右方向に伸縮自在の仕切りであるジャバラ1Aによって前側の密閉空間である造形室1Bと後側の密閉空間である駆動室1Cとに分割される。造形室1Bと駆動室1Cとの間には、不活性ガスが通過できる僅かな隙間が存在する。造形室1Bには、造形領域が収容される。駆動室1Cには、適宜レーザ光の照射によって生成された焼結体の表面の仕上げ加工をするための切削装置の駆動装置5が収容される。
【0026】
チャンバ1の前面には、造形室1Bに連通する開口1Dが設けられ、開口1Dに図示しない覗窓付の作業扉が設けられている。造形室1Bには、レーザ光の所定の照射領域を含む造形領域が形成される。造形領域は、造形を行なう作業領域の全体を示し、実質的に造形テーブル2の上面全面に相当する。所定の照射領域は、造形領域内に存在し、所望の三次元造形物の輪郭形状で囲繞される領域とおおよそ一致する。したがって、所定の照射領域は、任意の形状の三次元造形物を所定の高さで分割した各分割層毎に面積が異なることがある。
【0027】
機械本機の基台であるベッド6の上に水平に作業台である平板形状の造形ベース6Aが固定されている。図3に示されるように、造形ベース6Aの中央部位に四角形、例えば正方形の貫通部位がされている。造形ベース6Aの貫通部位に連通するベッド6の内側空間の中央空間に上面の外形が貫通部位の内形に対して相似である造形テーブル2が昇降自在に嵌装される。造形テーブル2の上には、造形プレート2Aが固定されている。実施の形態の積層造形装置においては、造形ベース6Aは、2枚のベース板からなり、中央部位に貫通部位に形成するように中央部位を挟んで左右両側にそれぞれベース板を取り付けている。
【0028】
本発明においては、造形テーブル2が造形ベース6Aの上面を超えて上昇しない構造である場合を含めて、造形テーブル2が造形ベース6Aを貫通して鉛直1軸方向に往復移動するように設置されるものとする。また、本発明においては、造形ベース6Aの上面と造形テーブル2の上面を含めた全面を単に造形ベース6Aの上面ということがある。実施の形態の積層造形装置においては、造形テーブル2の上面を含めた造形ベース6Aの上をリコータヘッド3が移動してほぼ全体に材料粉体を撒布することができ、造形テーブル2の上面に造形領域が形成される。
【0029】
造形ベース6Aと造形テーブル2との間には、造形テーブル2を囲繞するように中央空間を形成し、中央空間に粉体材料を溜める材料保持壁6Bが設けられる。造形テーブル2の周縁に環状のパッキンまたはシールが設けられ、中央空間を密閉する。パッキンまたはシールは、造形テーブル2が材料保持壁6Bで囲繞されている中央空間内を鉛直1軸方向に移動できるように、材料保持壁6Bの壁面に対して摺動可能な材質で形成されている。
【0030】
造形テーブル2を中央空間内において鉛直1軸方向に上下に往復移動させるW軸駆動機構2Wがベッド6の内側空間に設けられている。ベッド6の内側空間における密閉された中央空間の下側に、造形テーブル2の上面を含む造形ベース6上に撒布された材料粉体を自由落下させて収容し回収するバケット6Cが設定されている。バケット6Cは、移動させることができる。
【0031】
リコータヘッド3は、金属材料粉体を造形ベース6A上の少なくとも所定の照射領域に所定の均一な厚さで撒布する手段である。リコータヘッド3は、チャンバ1の造形室1Bにおいて、図示しないU軸駆動機構によって水平1軸方向(U軸)、具体的には、機械本機の左右方向に往復移動する。リコータヘッド3は、図1に示される材料供給装置7から供給される材料粉体を貯留する材料貯留箱3Aと、材料貯留箱3Aに貯留されている材料粉体を造形ベース6A上に撒布して均一な厚さに均すブレード3Bと、リコータヘッド3の往復移動を案内するガイドユニット3Cと、を含んでなる。
【0032】
図4および図5には、リコータヘッド3の構成がより詳しく示されている。本発明では、機械本機の前側と同じ方向をリコータヘッドの前面とし、前面に向かって右手側を右側面、左手側を左側面、後側を背面とする。ただし、ブレード3Bにおいては、リコータヘッドの移動方向に向かう面を表面とし、反対側の面を裏面とする。
【0033】
材料貯留箱3Aは、実質的にリコータヘッド3の本体を形成する。材料貯留箱3Aは、リコータヘッド3の移動方向に直交する方向、言い換えると、機械本機の前後方向において、造形領域の奥行よりも長い全長を有する。材料貯留箱3Aの上下面の一部または全部が開放されている。材料貯留箱3Aに材料粉体を補充するときは、リコータヘッド3を材料供給装置7の直下に移動させ、材料粉体の自由落下によって材料貯留箱3Aの上面から所定量の材料粉体を導入する。
【0034】
ブレード3Bは、機械本機の前後方向における造形領域の奥行とほぼ同じ刃長を有する。ブレード3Bは、刃先と造形ベース6Aの上面との間の距離が予め決められている材料粉体層の厚さと同じになるように可能な限り精確な高さで材料貯留箱3Aの下側に取り付けられる。同一形状の2枚のブレード3Bがリコータヘッド3の移動方向に直交する方向の中心軸線に対して左右対称に材料貯留箱3Aに設けられる。
【0035】
一対のブレード3Bのうちのリコータヘッド3が移動方向に対して前側になるブレード3Bは、リコータヘッド3の移動中に、焼結工程において障害になる切削加工による切粉のような障害物を造形領域の外に押し出して排除する。後側になるブレード3Bは、リコータヘッド3の移動中に、下面の中央が開放されている材料貯留箱3Aから落下し供給される材料粉体を刃先と造形ベース6Aとの間に形成される間隙から流出させることによって、材料粉体を所定の厚さで均一に撒布する。リコータヘッド3の移動方向が反転するときは、前後のブレード3が入れ替わる。
【0036】
不活性ガス給排装置4は、新しい不活性ガスの供給源である不活性ガス供給装置4Aからチャンバ1内に不活性ガスを供給し、造形室1Bの中の酸素濃度を所定値未満、実施上は、不活性ガスの濃度を所定値以上に維持する手段である。また、不活性ガス給排装置4は、造形室1Bに発生するヒュームを含む汚染物質によって汚れている主成分が不活性ガスである気体を回収して、回収した気体から不純物を除去して造形室1Bに戻す手段である。以下の説明では、不活性ガスの濃度に関わらず回収する気体を単に不活性ガスといい、チャンバに戻される気体を再生不活性ガスという。
【0037】
不活性ガス給排装置4は、不活性ガス給排装置4Aと、チャンバ1から回収した不活性ガスを浄化する集塵機であるヒュームコレクタ4Bと、吸引装置4Cとを含んでなる。また、不活性ガス給排装置4は、チャンバ1に設けられる複数の不活性ガスの供給口および排出口と、各供給口および排出口に接続する配管を含む。広義には、不活性ガス供給装置4は、ヒューム拡散装置8を含む。
【0038】
本発明における不活性ガスは、金属材料粉体と実質的に反応しないガスである。実施の形態の積層造形装置で使用する不活性ガスは、窒素ガスである。実施の形態の不活性ガス供給装置4Aは、高純度の不活性ガスの供給源であって、具体的には、バルブを含む液体窒素ボンベである。不活性ガスは、窒素ガス以外に、例えば、アルゴンガス、ヘリウムガスが適用できる。実施の形態の不活性ガス給排装置4では、不活性ガス供給装置4Aは、造形室1Bに不活性ガスを供給する第1供給装置40Aと、駆動室1Cに不活性ガスを供給する第2供給装置40Bでなる。
【0039】
本発明の不活性ガス給排装置4は、少なくとも、チャンバ1に設けられる不活性ガスの主供給口である第1供給口F1および第2供給口F2と、主排出口である第1排出口V1を有する。第1供給口F1は、リコータヘッド3の移動方向に面する両側面のうち片面に設けられる。第1供給口F1は、第1供給装置40Aから送給される窒素ガスをレーザ光の所定の照射領域に向けて水平方向に供給する。
【0040】
第1供給口F1は、第1排出口V1の設置位置に対応して第1排出口V1に対面するように設けられる。望ましくは、第1供給口F1は、リコータヘッド3が材料供給装置7の設置位置に対して所定の照射領域を挟んで反対側に位置しているときに第1排出口V1と対面するようにリコータヘッド3の片面に設けられる。実施の形態の積層造形装置においては、材料供給装置7が機械本機の右側に設置されているので、第1供給口F1は、リコータヘッド3の右側面に設けられている。
【0041】
第1排出口V1は、チャンバ1の側板に第1供給口F1に対面するように所定の照射領域から所定距離離れて設けられる。第1排出口V1が所定の照射領域から離される距離は、吸引装置4Cによって強制的に排気してヒュームが第1排出口V1から排出される効果を有する場合であって、チャンバ1内の不活性ガスの濃度が所定値以上であることが維持されるときに、造形領域内の材料粉体が移動しない程度十分に離れる距離である。具体的には、設計時に試験運転によって決定することができる。
【0042】
実施の形態の不活性ガス給排装置4の第1排出口V1は、図1に示されるように、所定の照射領域から十分に離れて設けられるように、望ましくは、リコータヘッド3が機械本機における材料供給装置7が設置されている位置に直近のチャンバ1の側板に設けられる。実施の形態の積層造形装置においては、材料供給装置7が機械本機の右側に設置されているので、第1排出口V1は、チャンバ1の右側板の下側に設けられる。
【0043】
第2供給口F2は、図3に示されるように、造形ベース6Aの端上に所定の照射領域を間に置いて第1排出口V1に対面するように設けられる。具体的には、造形ベース6Aの左端直上に配管を敷設し、配管に第2供給口F2が形成される。第2供給口F2は、造形ベース6Aの一端に設けられるので、所定の照射領域に近接して第1供給口F1と同じ水平方向に不活性ガスを供給できる。
【0044】
第2供給口F2は、リコータヘッド3が所定の照射領域を通過して第1供給口F1が所定の照射領域を間に置かずに第1排出口V1に直面する位置にあるとき、第1供給口F1から第2供給口F2に選択的に切り換えられて開放される。そのため、第2供給口F2は、不活性ガス供給装置4Aから送給され第1供給口F1から供給される不活性ガスと同じ所定の圧力と流量の不活性ガスを第1排出口V1に向けて供給するので、常に同じ方向に不活性ガスの流れを作り出し、安定した焼結を行なえる点で有利である。
【0045】
不活性ガス給排装置4は、第1排出口V1に接続する吸引装置4Cを設けている。実施の形態の不活性ガス給排装置4における吸引装置4Cは、具体的には、第1排出口V1の排出ダクトの中に設置される吸引ファンである。吸引ファンに代えて、第1排出口V1に接続する管路中に吸引ポンプを設けることができる。吸引装置4Cは、レーザ光の照射経路からヒュームを効率よく排除することを助ける。また、吸引装置4Cによって、第1排出口V1において、より多くの量のヒュームを排出することができ、造形室1Bにヒュームが拡散しにくくする。
【0046】
実施の形態の不活性ガス給排装置4は、主排出口として第2排出口V2を設けている。第2排出口V2は、リコータヘッド3の第1供給口F1が設けられている片面に対して反対側の側面に設けられる。第1供給口F1から不活性ガスを供給できないとき、言い換えると、第2供給口F2から不活性ガスを供給するときに、所定の照射領域のより近くで不活性ガスの流れを作り出していくらかのヒュームを排出するので、ヒュームをより効率よくレーザ光の照射経路から排除することを助ける。
【0047】
不活性ガス給排装置4の不活性ガスの最大供給量を超えない範囲で、主排出口として第3排出口V3を設けることができる。第3排出口V3は、リコータヘッド3の移動を案内するガイドレールに沿って排出管を設置し、造形領域に近接して造形領域に向かって開口するように排出管に形成される。排出管は、機械本機の前側と後側のどちら側に設置されてもよい。例えば、図3に示されるように、第3排出口V3を造形領域の奥行側に設けることができる。
【0048】
第3排出口V3を設ける場合は、造形領域を挟んで第3排出口V3に対面するように第4排出口V4を設けることが有利である。所定の照射領域がより広く造形領域の前側または奥側の端にレーザ光の照射スポットがある場合は、第1供給口F1または第2供給口F2から第1排出口V1までの間に形成される不活性ガスの流れにヒュームが乗り切れずに漂流するおそれがある。第3排出口V3と第4排出口V4は、ヒュームをより効率よく排出することを助ける。
【0049】
実施の形態の不活性ガス給排装置4は、ヒュームコレクタ4Bから送給される再生不活性ガスを造形室1Bに供給する副供給口F3と、チャンバ1の上側に残留する汚れた不活性ガスを排出する副排出口V5を設けている。副供給口F3は、第1排出口V1に対面するようにチャンバ1の側板に設けられる。また、副排出口V5は、第1排出口V1の上側に設けられる。図1に示される実施の形態の積層造形装置においては、不活性ガス給排装置4では、副供給口F3は、チャンバ1の左側板に設けられ、副排出口V5は、本機右側のチャンバ1の本機右側の上面天板に設けられている。
【0050】
駆動装置5は、図示しないスピンドルに取り付けられた切削工具を任意の三次元方向に相対移動させるために、水平1軸方向(X軸)に移動体を往復移動させるX軸駆動装置5Xと、その水平1軸方向に直交する別の水平1軸方向(Y軸)に移動体を往復移動させるY軸駆動装置5Yと、両水平1軸方向に直交する鉛直1軸方向(Z軸)に上下に加工ヘッドを往復移動させるZ軸駆動装置5Zと、を有する。実施の形態の積層造形装置においては、X軸駆動装置5Xの上にY軸駆動装置5Yが搭載され、Y軸駆動装置の先端部位にZ軸駆動装置5Zが設けられている。駆動装置5は、焼結工程中は、本機左端に待機する。
【0051】
材料供給装置7は、造形ベース6Aの一端の上側に設けられる。実施の形態の積層造形装置においては、材料供給装置7は、機械右側に設けられている。リコータヘッド3が造形ベース6Aの右端に移動して停止したときに、リコータヘッド3の材料貯留箱3Aに貯留されている材料粉体が規定量以下であることが検出されている場合は、中間ダクト7Aを下降させてシャッタを開放し、ホッパ7Bの材料粉体を自由落下させることによって材料貯留箱3Aに材料粉体を補充する。ホッパ7Bの上側には、材料粉体を材料供給装置7に補填する粉末ボトル7Cが装填されている。
【0052】
ヒューム拡散装置8は、所定の照射領域において発生するヒュームがウィンドウ1Eに微細な金属の粒子を含む煤が付着することを防止する手段である。ヒューム拡散装置8は、ウィンドウ1Eを上向きに覆うように固定される円板形状の筐体8Aと、筐体8A内にウィンドウ1Eを囲繞するように設けられ筐体8A内に不活性ガス供給空間を形成する円筒形状の仕切板8Bと、を備える。
【0053】
ヒューム拡散装置8の筐体8Aの底面の中央には、ウィンドウ1Eを透過して下向きに照射されるレーザ光を所定の照射領域に向けて通過させる円形口8Cが設けられている。仕切板8Bには、多数の細孔が穿設されており、不活性ガス供給装置4の第1供給装置から供給されてくる清浄な不活性ガスを細孔を通して清浄空間に充満させる。清浄空間に充満した不活性ガスは、円形口8Cからレーザ光の照射経路とおおよそ同軸方向に下方に向かって流れ出る。
【0054】
ヒューム拡散装置8は、本来は、ウィンドウ1Eが汚染されることを抑制するものであるが、円形口8Cから不活性ガスを噴出するため、少なくともチャンバ1の上側においては、噴出した不活性ガスが薄いカーテンのようにして、チャンバ1の天井まで上昇してからレーザ光の照射経路を横断しようとするヒュームを照射経路からチャンバ1の側板方向に排除することを助ける。
【0055】
レーザ照射装置9は、少なくとも造形領域の範囲内において、レーザ光を二次元方向に走査できるように設けられている。図3に示されるように、レーザ照射装置9は、レーザ光を生成するレーザ光源9Aと、レーザ光を走査するガルバノスキャナ9Bとを含んでなる。レーザ光は、材料粉体を焼結可能であるならば、種類は限定されず、例えば、CO2レーザ、ファイバレーザ、YAGレーザがある。ウィンドウ1Eは、可能な限りレーザ光のエネルギを低下させず、進行方向を歪めずに透過し得る材料で形成される。例えば、レーザ光の種類がファイバレーザまたはYAGレーザである場合は、石英ガラスである。
【0056】
レーザ照射装置9から供給されるレーザ光は、ウィンドウ1Eを透過して造形室1Bの中を下方向に縦断するように照射される。レーザ照射装置9は、所望の形状の三次元造形物を所定高さで分割してなる複数の分割層の各分割層毎に材料粉体を所定の高さで均一に撒布して形成される材料粉体層上の所定の照射領域に所要のエネルギのレーザ光を照射して焼結層を形成する。
【0057】
以下に、実施の形態の積層造形装置における不活性ガス給排装置4の動作について説明する。不活性ガスは、窒素ガスとして説明する。また、吸引装置4Cは、吸引ファンとして説明する。
【0058】
不活性ガス供給装置4Aは、制御装置10を通して制御バルブが所定量開放されることによって第1供給装置40Aから第1供給口F1を通して所定の圧力と流量の新しい清浄な窒素ガスを造形室1Bに供給し、第2供給装置40Bから駆動室供給口F5を通して新しい清浄な窒素ガスを駆動室1Cに供給する。また、第1供給装置40Aからヒューム拡散装置8に清浄な窒素ガスが供給される。窒素ガス濃度が所定値に達するまでの間、言い換えると、酸素濃度が所定値未満になるまでの間、待機される。
【0059】
実施の形態の積層造形装置においては、作業扉が開かれた場合は、図示しない作業扉の開閉を検出する扉検知器によって制御装置10が作業扉が開いていることを検出し、第1供給装置40Aを停止するが、第2供給装置40Bは、窒素ガスを供給し続けるようにされている。
【0060】
したがって、作業扉を閉じて第1供給装置40Aから造形室1Bに窒素ガスを供給するときに、ジャバラ1Aの隙間を通って駆動室1Cの窒素ガスが造形室1Bに流入する。そのため、造形室1B内を適する所定の酸素濃度未満の雰囲気にする時間を短縮することができる。なお、実施の形態の不活性ガス供給装置4Aでは、第2供給装置40Bから駆動室1Cに供給される窒素ガスの流量よりも第1供給装置40Aから造形室1Bに供給される窒素ガスの流量を多くして、造形室1をパージするようにしている。
【0061】
第1供給装置40Aから造形室1Bに送られる窒素ガスは、造形室1Bの下側において、リコータヘッド3の移動方向に面する材料貯留箱3Aの両側面のうちの片面に設けられる第1供給口F1から噴出される。実施の形態の不活性ガス給排装置4では、リコータヘッド3の右側面に第1供給口F1が設けられており、リコータヘッド3が所定の照射領域の左側に位置するときに開放されている。第1供給口F1は、ヒュームの発生源である照射スポットのより近くで新しい窒素ガスを噴出するので、焼結に適する高濃度の窒素ガス雰囲気を維持しながら、発生直後のヒュームをレーザ光の照射経路から排除することができる。
【0062】
リコータヘッド3が所定の照射領域の右側に位置するときは、第1供給口F1に接続する管路が閉じられる。第1供給口F1が閉鎖されている間は、第2供給口F2に接続する管路が開かれる。第2供給口F2は、第1供給口F1から供給される窒素ガスと同じ圧力と流量の窒素ガスを供給する。実施の形態の不活性ガス給排装置4では、第2供給口F2は、所定の照射領域の左側に位置する造形ベース6Aの端上の配管に設けられている。
【0063】
第1排出口V1は、チャンバ1の側板に所定の照射領域を間に置いて第1供給口F1に対面するように設けられているので、第1供給口F1との間で窒素ガスの流れを作り出す。第1排出口V1においてチャンバ1の外側の排出ダクト内に設けられている吸引ファン4Cは、第1供給装置40Aから窒素ガスが供給されている間は、ヒュームコレクタ4Bと共に稼働している。
【0064】
第1排出口V1は、チャンバ1の材料供給装置7が設置されている側の側板に設けられているので、所定の照射領域からちょうど適する所定距離離されている。そのため、吸引ファン4によって造形室1B内の主に窒素ガスを含む汚れた気体を積極的に除去しても、所定の照射領域に撒布されている材料粉体に影響を与えない。
【0065】
特に、実施の形態の積層造形装置においては、材料供給装置7がリコータヘッド3の上方から材料粉体を供給する構成であるので、図1に示されるように、チャンバ1の材料供給装置7の直下にヒュームの吹き溜まりが形成される。材料供給装置7が設けられている側の左側板に第1排出口V1が設けられているので、吹き溜まりに効果的に集められたヒュームは、窒素ガスと共に吸引ファンCによって強制的に排出されるとともに、上昇する気流に沿って副排出口V5から排出される。
【0066】
材料供給装置7の設置位置に直近の側板に第1排出口V1が設けられて吹き溜まりが形成されている場合、副排出口V5は、可能な限り、第1排出口V1の直上にあるように設けることが望ましい。例えば、図6に示されるように、吹き溜まりに効果的に集められたヒュームが第1排出口V1から強制的に排出されるとともに、上昇気流に乗って側板に沿って上昇するヒュームがそのまま副排出口V5から排出されるので、拡散する前に一層効率よくチャンバ1の外にヒュームを除去することができる。
【0067】
実施の形態の不活性ガス給排装置4は、リコータヘッド3の第1供給口F1が設けられている片側の側面とは反対側の側面に、第2排出口V2を設けている。第2排出口V2は、第1供給口F1が閉鎖されている間だけ作動する。第2排出口V2は、第2供給口F2から窒素ガスが供給されている間に、窒素ガスの流れに乗って第1排出口V1に向かって水平方向に移動するヒュームを所定の照射領域のより近くで排出させることによって、ヒュームの除去を助ける効果を有する。第2排出口V2には、吸引ファン4Cが併設されていないので、所定の照射領域内の材料粉体を移動させるおそれはない。
【0068】
また、実施の形態の不活性ガス給排装置4には、造形領域に近接して第3排出口V3と第4排出口V4が設けられている。第3排出口V3と第4排出口V4は、選択的に使用することができる。第3排出口V3と第4排出口が選択的に使用される場合は、造形中に常時開放される。第3排出口V3と第4排出口V4は、照射スポットが造形領域の中心からより離れている位置にあるときに、第1供給口F1または第2供給口F2と第1排出口V1との間の不活性ガスの流れに乗り切れないヒュームを排出することを助けて、ヒュームをより効率よく排出させることができる。
【0069】
第1排出口V1ないし第4排出口V4、および副排出口V5から排出される不純物を多く含む汚れた窒素ガスを含む気体は、ダクトボックスに集められてからヒュームコレクタ4Bに移動する。ヒュームコレクタ4Bは、ヒュームが冷却することによって発生する微細な金属の粒子を取り除いて、回収した窒素ガスを浄化する。浄化された再生窒素ガスは、ダクトボックスに収集されてから所定の流量でチャンバ1の上側に設けられている副供給口F3に送給される。
【0070】
ヒュームコレクタBによって浄化された清浄な再生窒素ガスは、所定の照射領域を間に置いて第1排出口V1に対面するように、チャンバ1の左側板に設けられている副供給口F3から供給される。副供給口F3から供給される窒素ガスは、チャンバ1の全体の窒素ガス濃度が低下することを防ぐ。
【0071】
本発明の積層造形装置は、以上に説明される実施の形態の積層造形装置と全く同じ構成である必要はない。すでにいくつか具体的に示されているとおり、本発明の技術思想に反しない限り、適宜変形することができ、または他の発明と組み合わせて応用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、レーザ光によって金属材料粉体を焼結する装置に適用できる。特に、レーザ光によって金属製の三次元造形物を生成する金属粉末焼結積層造形法に有益である。本発明は、金属粉末積層造形における作業効率を向上させ、精密金属部品あるいは金型の製造技術の発展に寄与する。
【符号の説明】
【0073】
1 チャンバ
1A ジャバラ
1B 造形室
1C 駆動室
2 造形テーブル
3 リコータヘッド
3A 材料貯留箱
3B ブレード
3C ガイドユニット
4 不活性ガス給排装置
4A 不活性ガス供給装置
4B ヒュームコレクタ
4C 吸引装置(吸引ファン)
5 駆動装置
6 ベッド
6A 造形ベース
6B 材料保
7 材料供給装置
8 ヒューム拡散装置
9 レーザ照射装置
10 制御装置
F1 第1供給口
F2 第2供給口
F3 副供給口
F5 駆動室供給口
V1 第1排出口
V2 第2排出口
V5 副排出口
【要約】
【課題】ヒュームをより効率よく排出すること。
【解決手段】積層造形装置は、密閉空間内に照射領域を収容するチャンバ1と、チャンバ1内において造形ベース6A上を水平1軸方向に往復移動し照射領域に金属材料粉体層を形成するリコータヘッド3と、チャンバ1内に不活性ガスを循環供給する不活性ガス給排装置4と、を備える。不活性ガス給排装置4は、リコータヘッド3の片面に設けられる第1供給口F1と、チャンバ1の側板に第1供給口に対面するように照射領域から離れて設けられる第1排出口V1と、第1排出口V1に対面して設けられる第2供給口F2と、を含む。また、リコータヘッド3の反対側の面に設けられる第2排出口V2と、造形領域を挟んで前後に設けられる第3排出口V3および第4排出口V4と、を有する。吸引装置4Cは、第1排出口V1に接続して設けられる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6