(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るガイド付接触子ホルダ1を示す斜視図である。ガイド付接触子ホルダ1は、接触子ホルダ(以降、ホルダと称する)2と、ホルダ2に保持された複数の電気伝導性の接触子3と、ホルダ2を支持するガイドボディ4とを有する。ガイドボディ4は、検査すべき電子デバイス(図示せず)をホルダ2上の所定位置に配置するためのガイド部又はガイド壁41を有し、さらにホルダ1を該電子デバイスを検査する検査装置(図示せず)の所定位置に配置するための位置決め部(本実施形態では
図1に示す位置決め孔42)を有することが好ましい。なお位置決め孔42の代わりに、位置決めピンや切欠き等を設けてもよい。
【0017】
図2は、
図1のホルダ2の斜視図である。ホルダ2は、ガラスエポキシ樹脂等の絶縁性材料から作製される板状又は層状の基材21を有し、各接触子3は基材21の表面22に略垂直に延びるように、基材21に圧入等により保持される。
図2の例では、ホルダ2は板状基材21を有し、該板状基材内には後述する接続部が配置される。またホルダ2は、ガイドボディ4に対する位置決めを容易にするために、ガイドボディ4に形成された位置決め孔(図示せず)に係合する位置決めピン7を有してもよい。なおホルダ2は、実質一体の基材から構成されてもよいし、後述するように接触子3の組立性向上等のために、適宜分割してもよい。
【0018】
図3は、
図2のホルダ2の変形例の斜視図である。該変形例では、基材21の面が実質1つの平面ではなく、段差等を設けることによって複数(図示例では2つ)の平面22、23を備える。このようにホルダは、接触子や検査すべき電子デバイス(図示せず)の形状に応じて、適宜好適な形状を具備することができる。
【0019】
図4は、各接触子の具体的構造例を示す図である。接触子3は、ホルダ2に形成された接触子用孔(後述)に挿入される略円筒状の中空の導電性外殻31と、外殻31内に配置されて外殻31の軸方向に伸縮可能な弾性部材(図示例ではコイルばね)32と、コイルばね32の一端(図示例では下端)に配置されかつ外殻31の一端(図示例では下端)から突出し、図示しない検査装置に電気的に接続可能に構成された導電性の第1プランジャ33と、コイルばね32の他端(図示例では上端)に配置されかつ外殻31の他端(図示例では上端)から突出し、図示しない電子デバイスに電気的に接続可能な導電性の第2プランジャ34とを有する。また第1プランジャ33及び第2プランジャはそれぞれ外殻31に当接するので、接触子3において、第1プランジャ33と第2プランジャ34とが外殻31を介して電気的に接続される。或いは又はそれに加え、コイルばね32を導電性材料にて構成し、第1プランジャ33と第2プランジャ34とをコイルばね32を介して電気的に接続してもよい。なお以下に説明する実施形態が有する各接触子の構造も、
図4に示したような、外殻と、該外殻に対して可動かつ該外殻より小径の少なくとも1つのプランジャとを有する構造とする。
【0020】
図5は、
図2のホルダ2の第1の実施形態の断面図であって、接触子の延びる方向(軸方向)に平行な断面を示している。ホルダ2は、絶縁性の基材21と、基材21に挿入され保持された複数(図示例では4つ)の接触子3a−3dとを有する。なお第1の実施形態では、接触子3a、3cが接地用接触子であり、接触子3bが信号伝送用接触子であり、接触子3dが信号伝送用接触子又は電源供給用接触子等の他の接触子であるものとする。
【0021】
各接触子は、ホルダ2の面22に略垂直に延びてホルダ2を貫通する。詳細には、接触子3a、3cは、ホルダ2を構成する基材21に形成された第1の接触子用孔24内に圧入等により保持され、一方接触子用孔24の内面には銅、金又は銀等の導体部分241がめっき等により形成されている。従って接触子3a、3cは、少なくとも部分的に導体部分241に電気的に接続される。一方接触子3bは、ホルダ2を構成する基材21に形成された第2の接触子用孔25内に圧入等により保持される。図示例では、各接触子の外殻31が、外殻31の外径より小さい径の孔を有する板状の基材27、28によって保持されている。なお板状基材27、28は、各接触子の抜け落ちを防止するとともに、各接触子のプランジャ先端が該接触子の軸方向に略垂直な方向への変位(振れ)量を制御する機能を備える。
【0022】
ホルダ2は、基材21内に配置されかつ導体部分241を互いに電気的に接続する接続部26を有する。
図5の例では、接続部26は板状基材21内に配置された層状の導体であるが、接続部26は配線から構成することもできる。導体部分241が接続部26によって互いに電気的に接続されることにより、貫通孔24内に圧入された接触子3a、3cは、導体部分241を介して接続部26に電気的に接続される。
【0023】
基材21は、その表面212、213上又は該表面の上方であって、信号伝送用接触子3bのプランジャ近傍に、接地される層状の接地用導体(接地用導体層)291、292を有する。各接地用導体層は、基材21の表面212、213上において、各接地用接触子に電気的に接続された導体部分241に電気的に接続されており、また信号伝送用接触子とは電気的に接続されないようになっている。このように、外殻より細径のプランジャ近傍にグラウンドと同電位の導体層を配置することにより、プランジャ部のインダクタンス成分を補償し、信号伝送用接触子の挿入損失や近端クロストークを小さくすることができる。また基材21の表層に接地用導体層を設けることは、通常の多層基板製造プロセスにより実現でき、かつ基材の内層に接地用導体層を設ける場合よりも大きな容量成分を得ることができる。なお
図5では、明瞭化のために接地用導体層291、292と板状基材27、28とは離れて図示されているが、両者は当接していてもよい。
【0024】
本発明の効果を、特性インピーダンスの観点から説明する。特性インピーダンスZ
0は、単位長さ当たりのインダクタンス成分L
0とキャパシタンス成分C
0を用いて、Z
0=(L
0/C
0)
1/2なる式で表される。一般に特性インピーダンスは、信号の伝送路全体にわたって一定であることが望ましい。しかし、スプリングプローブの外殻又は外殻が圧入されているスルーホールで特性インピーダンスを制御しようとした場合、プランジャの太さが外殻より細いことによる単位長さ当たりのインダクタンス成分の増加と、接地用導体層との距離が遠くなることによるキャパシタンス成分の低下とにより、プランジャ部はL
0/C
0の比において、インダクタンスとしての振舞いを強め、特性インピーダンスが高くみえる。しかし本発明のように、特性インピーダンスが高くなったプランジャ部の近傍に接地用導体層を配置し、グラウンドとプランジャとの間の容量結合を追加させることにより、特性インピーダンスを下げることができる。
【0025】
また、信号伝送用接触子間の電気的結合によりクロストークが存在する場合、接地用導体層を信号伝送用接触子の近傍に配置することにより、信号伝送用接触子と接地用接触子との電気的結合の存在により、隣接する信号伝送用接触子間のクロストークを小さくすることができる。
【0026】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る接触子ホルダに使用されるホルダ1002の断面図である。第2の実施形態が第1の実施形態と異なる点は、第1の実施形態の接地用導体層291、292の代わりに、接地される板状基材1027、1028が、電気伝導性材料から形成されて接触子用孔1024の内面にめっき等により形成された導体部分1241に電気的に接続されていることである。そのために、基材1021の表面1212と板状導体1027との間に、導体部分1241と板状導体1027とを電気的に接続する例えば環状の導電部材1293が設けられ、同様に基材1021の表面1213と板状導体1028との間に、導体部分1241と板状導体1028とを電気的に接続する例えば環状形状の導電部材1294が設けられる。
【0027】
第2の実施形態では、接触子の抜け落ちやプランジャ先端の変位(振れ)量を制御する板状基材1027、1028が、接地用導体層としての機能も兼ねている。従って、接触子と板状基材1027、1028との間に絶縁部材を配置し、接触子と板状基材とが接触(導通)しないようにすることが好ましい。第2の実施形態は、プランジャが比較的長い場合に該プランジャのインダクタンス成分を補償するのに適している。なお、第2の実施形態のその他の構成要素については第1の実施形態と同様でよいので、対応する構成要素の参照符号に1000を加算して詳細な説明は省略する。
【0028】
次に、信号伝送用接触子が同軸線路を構成している場合について説明する。
図7は第3の実施形態の断面図であって、接触子の延びる方向(軸方向)に平行な断面を示している。ホルダ2002は、絶縁性の基材2021と、基材2021に挿入され保持された複数(図示例では4つ)の接触子2003a−2003dとを有する。なお第3の実施形態では、接触子2003a、2003cが接地用接触子であり、接触子2003b、2003dが信号伝送用接触子であるものとする。
【0029】
各接触子は、ホルダ2002の面2022に略垂直に延びてホルダ2002を貫通する。詳細には、接触子2003a、2003cは、ホルダ2002を構成する基材2021に形成された第1の接触子用孔2024内に圧入等により保持され、一方接触子用孔2024の内面には銅、金又は銀等の導体部分2241がめっき等により形成されている。従って接触子2003a、2003cは、少なくとも部分的に導体部分2241に電気的に接続される。一方接触子2003b、2003dは、ホルダ2002を構成する基材2021に形成された第2の接触子用孔2025内に挿入され保持される。図示例では、各接触子の外殻2031が、外殻2031の外径より小さい径の孔を有する板状の基材2027、2028によって保持されている。また接触子用孔2025の内面にも銅、金又は銀等の導体部分2251がめっき等により形成されているが、第2の接触子用孔は第1の接触子用孔2024より大径となっている。従って接触子2003b、2003dと導体部分2251とは接触せず、互いに絶縁されており、接触子2003b、2003dと導体部分2251とは協働して同軸線路を構成する。
【0030】
なお本願明細書における「同軸線路」は、接触子の外殻2031と導体部分2251とが接触せずに互いに絶縁され、かつ外殻2031が電気伝導性材料に覆われた(電磁シールドされた)形態を意味し、図示例のように接触子及び電気伝導性材料の各々が同一軸を中心とする円筒である場合のみを意味するものではない。従って例えば、接触子の外表面と電気伝導性材料の内表面とが互いに偏心した円筒面であってもよい。
【0031】
接触子2003b、2003dについて、同軸線路を構成する外殻2031の外表面と導体部分2251の内表面との間には、樹脂又はセラミック等の誘電体2035を配置又は充填することができる。或いは、外殻2031の外表面と導体部分2251の内表面との間に誘電体等を充填せずに、空気、窒素又は酸素等の気相とすることもでき、或いは真空とすることもできる。
【0032】
上記同軸線路は、所定の特性インピーダンスを有するように構成される。例えば、接触子2003b又は2003dの外殻2031が直径dの円筒であり、導体部分2251が内径Dの中空円筒であって、両円筒が互いに同軸である場合、該同軸線路の特性インピーダンスZ
0は以下の式で表される。なおεは、接触子と導体部分との間の誘電体(本実施形態では誘電体又は空気)の誘電率である。D、d及びεを適宜選定することにより、各信号伝送用接触子について所望の特性インピーダンスを得ることができる。
Zo = 60/ε
1/2・ln(D/d)
【0033】
図7に示すように、ホルダ2002は、基材2021内に配置されかつ導体部分2241及び2251を互いに電気的に接続する接続部2026を有してもよい。
図7の例では、接続部2026は板状基材2021内に配置された層状の導体であるが、接続部2026は配線から構成することもできる。導体部分2241及び2251が接続部2026によって互いに電気的に接続されることにより、貫通孔2024内に圧入された接触子2003a、2003cは、導体部分2241を介して接続部2026に電気的に接続される。
【0034】
ホルダ2002は、実質一体物として形成されてもよいが、接触子の組立性や上記接続部の配置等を考慮して、いくつかの部材を組み合わせて作製することもできる。例えば、層状の接続部2026をホルダ内に配置するために、板状の基材2021をその厚さ方向に積層された複数層から形成し、該層間に接続部2026(図示例では導電層)を挟むことができるようにしてもよい。さらに、接触子用孔の内面への導体部分の形成(例えばコーティング)を考慮し、基材2021の厚さを各接触子の外殻2031の長さと略等しくし、該導体部分を接触子用孔の内面に形成した後に板状基材2027、2028を基材2021に接合することもできる。
【0035】
基材2021は、その表面2212、2213上又は該表面の上方であって、信号伝送用接触子2003b、2003dのプランジャ近傍に、接地される接地用導体層2291、2292を有する。各接地用導体層は、基材2021の表面2212、2213上において、各接地用接触子に電気的に接続された導体部分2241と、各信号伝送用接触子と同軸線路を構成する導体部分2251とに電気的に接続されており、また信号伝送用接触子とは電気的に接続されないようになっている。このように、外殻より細径のプランジャ近傍にグラウンドと同電位の導体層を配置することにより、プランジャ部のインダクタンス成分を補償し、信号伝送用接触子の挿入損失や近端クロストークを小さくすることができる。また基材2021の表層に接地用導体層を設けることは、通常の多層基板製造プロセスにより実現でき、かつ基材の内層に接地用導体層を設ける場合よりも大きな容量成分を得ることができる。なお
図7では、明瞭化のために接地用導体層2291、2292と板状基材2027、2028とは離れて図示されているが、両者は当接していてもよい。
【0036】
図7の第3の実施形態のように、外殻を同軸構造にしたホルダの場合、外殻の特性インピーダンスZ
0は同軸構造により上式のように定義できるが、従来、プランジャは接地用導体で囲まれていなかったためインダクタンスとして振舞っていた。そこで、第3の実施形態のように、プランジャ部近傍に接地用導体層を配置し、グラウンドとの容量成分を追加すると、プランジャ部のインダクタンス成分が補償され特性が向上する。より詳細には、プランジャ部のインダクタンス値をL
0とした場合、Zo=(Lo/Co)
1/2満たすようなCoを有するキャパシタンス成分がプランジャとグラウンドとの間に存在すれば、プランジャ部の特性インピーダンスと外殻の特性インピーダンスとの差が所定の誤差以内となり、高周波特性の劣化を補償することができる。さらに同時に、信号伝送用接触子と接地用接触子との電気的結合の存在により、隣接する信号伝送用接触子間のクロストークを小さくすることができる。
【0037】
図7の第3の実施形態を、簡略化した電気回路モデルを用いて表現し、回路シミュレーションにて確認した。先ず比較例として、信号伝送用導体が2つあり、外殻が同軸構造となっているソケットの等価回路を
図8に示す。ここで外殻すなわち同軸構造部分の特性インピーダンスはZo、プランジャの自己インダクタンス成分はLo、プランジャと導体との間の容量成分はC1、2つのプランジャ間の相互インダクタンス成分はM1とする。一方、第3の実施形態のように、プランジャの近傍に接地用導体を配置したソケットの等価回路を
図9に示す。ここで、プランジャ近傍に配置した導体によるグラウンドとプランジャとの間のキャパシタンス成分がCoである。なお、この接地用導体の配置による信号導体との電気結合は、容量結合でのみなされていることとする。
【0038】
接地用導体によるプランジャ部の補償効果を発揮させるために、C1<<Coとなる条件のもとで、Zo=(Lo/Co)
1/2となるようにすれば、外殻部の特性をプランジャ部の特性に合わせたことになる。また、C1により、隣接接触子間の容量結合によって発生していたクロストークは、Coを通したグラウンドとの容量結合により低減する。
【0039】
図10及び
図11に、回路シミュレーションにより挿入損失及び近端クロストークを求めた結果をそれぞれ示す。
図10、11において、Zo=50Ω、C1=0.01pF、Lo=0.3nH、M1=0.03nHとし、
図8、9の4つのポートP1−P4において、高周波回路シミュレータを用いて挿入損失(
図10)及び近端クロストーク(
図11)をシミュレーションした。なおCoの値は、0、0.06pF、0.12pF、0.18pFと変化させており、Co=0は
図8の回路に相当する。Coが0.12pFのときに(Lo/Co)
1/2=50Ωとなり、上記Zoと一致するが、このときの挿入損失が最も小さい。
【0040】
上記シミュレーション結果により、
図5、6に示したような同軸構造を構成しないスプリングプローブを有するソケットにおいても、信号伝送用と接地用のスプリングプローブを配置した構造であれば、外殻の部分がある特性インピーダンスが定義でき、外殻より細いプランジャ部の近傍にグランドと同電位の接地用導体層を配置することにより、上記で説明したものと同等の効果を期待することができる。
【0041】
また補償したいインダクタンス成分がより大きい場合には、同軸構造の有無に関係なく、より大きいキャパシタンス成分が必要になるが、集中定数的にキャパシタンス成分を配置した場合は周波数に対するフィルタとして振舞い、周波数に対して特性が大きく変化するため、分布定数的な構造で補償するほうがよりよい特性を示す。例えば、補償したいプランジャが比較的長い場合は、
図6のような形でプランジャをグランドで補償するほうがよりよい特性を示す。
【0042】
一般に、面積S、距離dの間に誘電率eの誘電体が充填された並行平板コンデンサにおけるキャパシタンス値CはC=eS/dなる式で表されるが、該式から容易に推測できるように、キャパシタンスを構成する2つの導体間の距離が小さく、導体の面積が大きいほど、大きい容量値を実現することができる。このことから、プランジャのインダクタンス成分を補償するために十分な容量成分を付加するには、グラウンドと同電位の接地用導体が、プランジャに近い距離に配置されかつ広い面積を有することが好ましい。多層基板を用いたICソケットの特性を向上させるためにグラウンド成分を付加するために上述の接地用導体層を使用すれば、通常の多層基板製造プロセスによりこれが実現でき、内層に接地用導体層を配置する場合よりも大きな容量成分を確保することができる。
【0043】
なお実際のテストソケットは、キャパシタンス成分を構成する誘電体、導体構造のインダクタンス成分及び抵抗成分も周波数依存性を持つ。従って
図11、12のように、周波数依存性を持たない単純な素子を用いた簡易的な回路では、伝送特性を完全に表現することはできない。しかし、インダクタンス的に振舞う部分の存在により特性が劣化する構造のICソケットの信号端子に、グラウンドとの間のキャパシタンス成分を追加することにより、伝送特性を上げることができることに変わりはない。
【0044】
図12は、本発明の第4の実施形態に係る接触子ホルダに使用されるホルダ3002の断面図である。ホルダ3002は2つの接続部3026a、3026bを有し、これにより2系統のグラウンドすなわち接地用導体を含む接触子ホルダを構成することができる。具体的には、第1の接続部3026aが、接触子3003aが挿入される接触子用孔3024aの内面に形成された導体部分3241aと接触子3003bが挿入される接触子用孔3024bの内面に形成された導体部分3241bとを電気的に接続し、第2の接続部3026bが、接触子3003cが挿入される接触子用孔3024cの内面に形成された導体部分3241cと接触子3003dが挿入される接触子用孔3024dの内面に形成された導体部分3241dとを電気的に接続しており、さらに第1の接続部3026aと第2の接続部3026bとは互いに絶縁されている。同様に、接続部を3つ以上設け、3系統以上のグラウンドを含む接触子ホルダを構成することもできる。但しグラウンドを3系統以上とする場合は、後述する接地用導体層3291、3292も、接地用接触子をいずれの系統に接続すべきかに応じて、複数の区分に適宜分割する必要がある。また第4の実施形態においても、各接続部を層状の導体として構成することができる。なお第4の実施形態では、接触子3003a、3003cが接地用接触子であり、接触子3003b、3003dが信号伝送用接触子であるものとする。
【0045】
第4の実施形態では、ホルダ3002の基材3021が金属等の導体ではなく誘電体から構成されているので、上述のような構成により、複数系統のグラウンドを基材に容易に設けることができる。グラウンドが複数系統であると、アナログ信号とデジタル信号、高周波信号と低周波信号、又は振幅の大きい信号と振幅の小さい信号等、種類の異なる信号が混在している場合であっても、異なる信号のそれぞれに対応して独立したグラウンドの設定が可能となり、伝送線路を通る信号の安定化を図ることができる。
【0046】
基材3021は、その表面3212、3213上又は該表面の上方であって、信号伝送用接触子3003b、3003dのプランジャ近傍に、接地される接地用導体層3291、3292を有する。各接地用導体層は、基材3021の表面3212、3213上において、各接地用接触子に電気的に接続された導体部分3241a、3241cと、各信号伝送用接触子と同軸線路を構成する導体部分3241b、3241dとに電気的に接続されており、また信号伝送用接触子とは電気的に接続されないようになっている。このように、外殻より細径のプランジャ近傍にグラウンドと同電位の接地用導体層を配置することにより、プランジャ部のインダクタンス成分を補償し、信号伝送用接触子の挿入損失や近端クロストークを小さくすることができる。また基材3021の表層に接地用導体層の複数の区分を設けることは、通常の多層基板製造プロセスにより実現でき、かつ基材の内層に接地用導体層を設ける場合よりも大きな容量成分を得ることができる。なお
図12では、明瞭化のために接地用導体層3291、3292と板状基材3027、3028とは離れて図示されているが、両者は当接していてもよい。
【0047】
図13は、本発明の第5の実施形態に係る接触子ホルダに使用されるホルダ4002の断面図である。ホルダ4002は、ガラスエポキシ樹脂等の絶縁性材料から作製される基材4021内に配置された少なくとも1つ(図示例では2つ)の層状の誘電体4211、4212を有してもよく、層状誘電体4211の両側には銅等の、電源用導体層4213と接地用導体層4214が形成され、層状誘電体4212の両側には銅等の、接地用導体層4215と電源用導体層4216が形成される。従って各層状誘電体とその両面の導体層は、電源用導体層と接地用導体層との間に協働してコンデンサを構成する。つまりホルダ4002は、基材を構成する絶縁体と、導体層と、層状誘電体とを積層して構成されている。電源とグラウンドとの間に十分な容量のコンデンサを挿入することは、デバイスへの電源の供給、電源及びグラウンドの電位を安定させ、デバイスの動作を安定させるために有効である。またコンデンサの容量を高めるためには各層状誘電体の誘電率は高い程好ましく、各層状誘電体は基材4021の誘電率よりも高い誘電率を有する高誘電体であることが好ましい。例えば高誘電体としてスリーエム社製のEmbedded Capacitor Material(ECM)が使用可能である。ECMは、高誘電材料を柔軟性のあるシート状に形成したものである。このようなホルダは、印刷回路基板を作製する方法によって、作製することができる。
【0048】
層状誘電体は、ポリマーを含むことができる。好ましくは、層状誘電体はポリマーと複数の粒子とを含み、具体的には樹脂と粒子とを混合することによって作製される。好適な樹脂としては、エポキシ、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、シアノエチルプルラン、ベンゾシクロブテン、ポリノルボルネン、ポリテトラフルオロエチレン、アクリレート、及びそれらの混合物が挙げられる。粒子は、誘電性(又は絶縁性)粒子を含み、その代表例としては、チタン酸バリウム、チタン酸バリウムストロンチウム、酸化チタン、チタン酸鉛ジルコニウム、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0049】
各誘電体層の厚みは、例えば0.5マイクロメートル以上とすることができ、20マイクロメートル以下とすることができる。該厚みはより薄い方が、キャパシタの静電容量を高くできるので好ましく、例えば15マイクロメートル以下、或いは10マイクロメートル以下とすることができる。但し該厚みはより厚い方が、接着強度や絶縁性の点からは好ましく、例えば1マイクロメートル以上とすることができる。
【0050】
また誘電体の比誘電率は高い程好ましく、例えば10以上、或いは12以上とすることができる。比誘電率の上限には特に制限はないが、例えば100以下、30以下、20以下、或いは16以下とすることができる。
【0051】
また、層状誘電体として高誘電率を有する材料を使用すると、隣接する2つのコンデンサ間の距離を小さくできるというメリットを有する。2つのコンデンサが隣接すると、1つのコンデンサを構成する接地用導体層と隣接する他のコンデンサを構成する接地用導体層との間でも静電容量が構成される。静電容量を構成したい導体層間に高誘電体を使用すると、1つのコンデンサを構成する導体層間の距離と、2つのコンデンサの隣接距離とを同じくしても、1つのコンデンサが生じる静電容量が大きくなる。そのため、隣接するコンデンサ間の距離を相対的に短くすることができ、ホルダの薄型化に貢献する。
【0052】
各高誘電体の両面に形成された導体層は、接地用接触子と電気的に接続された接地用導体層、電源供給用接触子と電気的に接続された電源用導体層を構成する。詳細には、ホルダの図示しない電子デバイス側の面(
図13では上面)4271に近い第1の高誘電体4211の上側の導体層4213及び下側の導対層4214の一方が接地用導体層として作用し、他方が電源用導体層として作用する。また、ホルダの図示しない検査装置側の面(
図13では下面)4281に近い第2の高誘電体4212の上側の導体層4215及び下側の導体層4216の一方が接地用導体層として作用し、他方が電源用導体層として作用する。従って
図13の実施形態では、接地用導体層4214、4215に接続された接触子4003a、4003cが接地用接触子として作用し、接地用導体層4213、4216に接続された接触子4003dが電源用接触子として作用する。さらに、いずれの導体層にも接続されておらず、同軸線路を構成する接触子4003bが、信号伝送用接触子として作用する。
【0053】
なお各層状高誘電体及びその両面の導体層は、ホルダに全面的に配置されてもよい。その場合、ホルダの面積と略等しい面積のコンデンサが形成可能である。
【0054】
図13に示すように、ホルダ4002は高誘電体とそれを挟む電源用導体層と接地用導体層とで構成されるコンデンサを、ホルダ4002の上面4271及び下面4281に成るべく近い位置(すなわち表層側)に具備することが好ましい。この理由は、ホルダ4002の表面と導体層との距離が小さい方が、高速で動作する電子デバイス検査時において良好な電源及びグラウンドの安定性が得られるからである。より具体的に言えば、ホルダ4002の上面4271と高誘電体4211との距離が短い程検査対象である電子デバイスの入力感度が上昇し、一方ホルダ4002の下面4281と高誘電体4212との距離は短い程該電子デバイスの出力感度が上昇する。本発明では、絶縁性材料から作製されるホルダが、電源用導体層と接地用導体層との間に挟まれた高誘電体を内包した実質一体物として構成されているので、コンデンサをホルダの表面近傍に配置した構成を容易に実現することができ、より正確な電子デバイスの検査ができるようになる。
【0055】
基材4021は、その表面4216、4217上又は該表面の上方であって、信号伝送用接触子4003bのプランジャ近傍に、接地される接地用導体層4291、4292を有する。各接地用導体層は、基材4021の表面4216、4217上において、各接地用接触子に電気的に接続された導体部分4241と、各信号伝送用接触子と同軸線路を構成する導体部分4251とに電気的に接続されており、また信号伝送用接触子とは電気的に接続されないようになっている。このように、外殻より細径のプランジャ近傍にグラウンドと同電位の接地用導体層を配置することにより、プランジャ部のインダクタンス成分を補償し、信号伝送用接触子の挿入損失や近端クロストークを小さくすることができる。また基材4021の表層に接地用導体層を設けることは、通常の多層基板製造プロセスにより実現でき、かつ基材の内層に接地用導体層を設ける場合よりも大きな容量成分を得ることができる。なお
図13では、明瞭化のために接地用導体層4291、4292と板状基材4027、4028とは離れて図示されているが、両者は当接していてもよい。
【0056】
以上、本願発明の5つの実施形態を説明したが、それぞれの特徴を複数含む実施形態とすることも可能である。例えば、
図7の第3の実施形態において、
図6の第2の実施形態のように板状部材2027、2028を導体から形成し、接地用導体層2291、2292を省略することもできる。
【0057】
上述の各実施形態において、ホルダを構成する材料は、ガラス繊維の代わりに紙を含んでいてもよいし、エポキシ樹脂の代わりにフェノール樹脂やポリアミド樹脂を含んでもよい。また導電層又は導電体を構成する材料として、銅以外に銀や金を使用してもよい。
【0058】
なお上述の実施形態ではいずれも、各接触子がホルダを貫通しているが、接触子がホルダの厚さ方向に部分的に延びる(すなわち接触子がホルダ内で終端する)構成とすることもできる。その場合、ホルダ内で終端している接触子の端部と他の接触子とを、上述の接続部26に類似する手段で電気的に接続することができる。このようにすれば、ホルダの上面側と下面側とで、接触子のピッチが異なる構成を実現することができる。