特許第5960403号(P5960403)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5960403
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】電流センサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/20 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
   G01R15/20 C
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-209157(P2011-209157)
(22)【出願日】2011年9月26日
(65)【公開番号】特開2013-68577(P2013-68577A)
(43)【公開日】2013年4月18日
【審査請求日】2014年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】川口 泰典
【審査官】 續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−192820(JP,A)
【文献】 特開2002−243766(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/090769(WO,A1)
【文献】 特開2010−127896(JP,A)
【文献】 特開2010−276422(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/081197(WO,A1)
【文献】 特開2010−008315(JP,A)
【文献】 特開2010−266209(JP,A)
【文献】 特開2011−095234(JP,A)
【文献】 特開2010−002277(JP,A)
【文献】 特開2006−112968(JP,A)
【文献】 特開2008−151743(JP,A)
【文献】 特開2001−281270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流が流れる導体と、磁気を検出する磁気検出素子を有し、前記磁気検出素子の検出した磁気量に基づいて電流値を算出するセンサ本体と、前記導体及び前記磁気検出素子を囲む外側位置に配置された磁気シールド部材とを備えた電流センサであって、
前記磁気検出素子は、
一方向の磁気感度を持ち、その磁気感度方向が前記導体を流れる電流による磁束の検出に適した方向とし、且つ、
前記磁気感度方向の外部磁界のうち前記磁気シールド部材の開口部を介して侵入する侵入外部磁界において、前記磁気検出素子の位置における前記侵入外部磁界による磁束の向きが磁気感度方向とほぼ直交する位置に配置されたことを特徴とする電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来の電流センサとして、特許文献1に開示されたものがある。この電流センサ50は、図7に示すように、電流が流れる導体であるバスバー51と、バスバー51を流れる電流値を算出するセンサ本体52と、このセンサ本体52を収容するハウジング53と、バスバー51及びセンサ本体52を外側から囲む磁気シールド部材54と、この磁気シールド部材54をハウジング53との間で固定する下カバー55とを備えている。
【0003】
センサ本体52は、磁界強度(磁束密度)を検出する磁気検出素子であるホール素子52aと、ホール素子52aが固定され、ホール素子52aの検出した磁気量に基づいて電流値を算出する演算回路を有する回路基板52bとから構成されている。
【0004】
磁気シールド部材54は、略コ字形状に形成されている。ホール素子52aは、このコ字形状の磁気シールド部材54に囲まれる位置に配置される。
【0005】
バスバー51に電流が通電されると、バスバー51から電流量に比例する磁界が発生する。センサ本体52は、この磁界をホール素子52aが検出し、検出した磁界の大きさに基づいた電流値を算出する。又、磁気シールド部材54は外部磁界を遮蔽する。
【0006】
ここで、ホール素子52aは、磁気シールド部材54によって外部磁界の悪影響がないとみなし、磁気シールド部材54内のZ方向の中央位置(図4のZ=0の位置)に設置されるのが通常である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−243440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、磁気シールド部材54は、外部磁界の内部侵入を完全に防止することができない。そのため、磁気シールド部材54の内部に侵入する外部磁界によって検出誤差が発生する恐れがある。特に、電流センサ50が外部磁界の強い状況下に設置される場合には、外部磁界に対して強い電流センサ50が要望される。
【0009】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、外部磁界に対して強い電流センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、電流が流れる導体と、磁気を検出する磁気検出素子を有し、前記磁気検出素子の検出した磁気量に基づいて電流値を算出するセンサ本体と、前記導体及び前記磁気検出素子を囲む外側位置に配置された磁気シールド部材とを備えた電流センサであって、前記磁気検出素子は、一方向の磁気感度を持ち、その磁気感度方向が前記導体を流れる電流による磁束の検出に適した方向とし、且つ、前記磁気感度方向の外部磁界のうち前記磁気シールド部材の開口部を介して侵入する侵入外部磁界(磁気シールド部材の開口部を介して該磁気シールド部材内に侵入する外部磁界を「侵入外部磁界」と定義する)において、前記磁気検出素子の位置における前記侵入外部磁界による磁束の向きが磁気感度方向とほぼ直交する位置に配置されたことを特徴とする電流センサである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、磁気検出素子は、導体を流れる電流によって発生する磁界を検出するが、磁気シールド部材の内部に侵入する外部磁界を検出しない。従って、電流センサは、外部磁界に対して強い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態を示し、電流センサの斜視図である。
図2】本発明の一実施形態を示し、電流センサの断面図である。
図3】本発明の一実施形態を示し、外部磁界を印加した場合にあって、磁気シールド部材内に侵入する外部磁界の状態を示す模式図である。
図4】本発明の一実施形態を示し、磁気シールド部材内のZ方向の座標を示す図である。
図5】本発明の一実施形態を示し、Z方向位置に対する外部磁界のZ方向透過率を示す特性線図である。
図6】本発明の一実施形態を示し、各周波数毎のZ方向の磁束密度を示す特性線図である。
図7】従来例を示し、電流センサの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1図6は本発明の一実施形態を示す。図1及び図2に示すように、電流センサ1は、電流が流れる導体であるバスバー2と、バスバー2を流れる電流値を算出するセンサ本体3と、このセンサ本体3を収容する樹脂ケース6と、樹脂ケース6に固定され、バスバー2及びセンサ本体3を外側から囲む磁気シールド部材10とを備えている。
【0015】
バスバー2は、ストレート状の金属プレートである。バスバー2は、その中央箇所が樹脂ケース6内を貫通し、その両端部が樹脂ケース6より露出している。
【0016】
樹脂ケース6は、バスバー2、センサ本体3をインサート部品としてインサート樹脂成形により形成されている。樹脂ケース6は、外部出力用コネクタ部6aを一体に有する。
【0017】
磁気シールド部材10は、底面部11と、この底面部11の両端より上方に突出する一対の側面壁12とから略コ字形状に形成されている。磁気シールド部材10は、樹脂ケース6に例えば圧入によって固定されている。磁気シールド部材10は、強磁性材である。
【0018】
センサ本体3は、磁界強度(磁束密度)を検出する磁気検出素子であるホール素子4と、ホール素子4が固定され、ホール素子4の検出した磁気量に基づいて電流値を算出する演算回路を有する回路基板5とから構成されている。
【0019】
ホール素子4は、磁気シールド部材10の底面部11の上方位置に配置されている。ホール素子4は、一方向のみの磁気感度を持っている。ホール素子4は、その磁気感度方向がバスバー2を流れる電流による磁界強度(磁束密度)の検出に適した方向(Z方向)で、且つ、外部磁界による磁束の向きが直交する位置に配置されている。
【0020】
外部磁界による磁束の向きが直交する位置は、例えば次のようにして決定する。磁気シールド部材10への外部磁界の内部侵入は、磁気シールド部材10の形状等によって異なる。コ字形状のシールド部材10の内部領域について、想定される外部磁界(他の電流経路からの磁界、磁石等)に基づき磁場シュミレーションを行う。例えば、磁場シュミレーションで図3に示すような結果が得られる。図3のa,b,cの位置は、ホール素子4の磁気感度方向と外部磁界による磁束の向き(Y方向の向き)が直交する位置となり、このいずれかの位置にホール素子4を配置する。
【0021】
図4に示すように、磁気シールド部材10の内部をZ方向の座標(Z=0が中央)とし、外部磁界のZ方向透過率を調べると、図5に示す特性線が得られた。つまり、外部磁界のZ方向透過率は、Z=4の位置で0(ゼロ)となり、この位置(図3のa位置に相当)に配置する。この位置では、Z方向を感度方向とするホール素子4は、外部磁界を検出しない。
【0022】
上記構成において、バスバー2に電流が通電されると、バスバー2から電流量に比例する磁界が発生する。センサ本体3は、この磁界をホール素子4が検出し、検出した磁界の大きさに基づいた電流値を算出する。
【0023】
ここで、ホール素子4は、バスバー2を流れる電流によって発生する磁界を検出するが、上記したように、磁気シールド部材10の内部に侵入する外部磁界を検出しない。従って、電流センサ1は、磁気シールド部材10内に侵入する外部磁界によって検出誤差を発生せず、外部磁界に対して強い。
【0024】
又、外部磁界について、各周波数毎のZ方向の磁束密度を示す特性線が図6に示されている。図6に示すように、外部磁界のZ方向透過率が0の位置(Z=4)は、磁束密度が周波数で変化し難い位置となる。従って、電流センサ1の出力応答特性が向上するという利点もある。
【0025】
前記実施形態では、ホール素子4は、その磁気感度方向に対し、外部磁界による磁束の向き(Y方向の向き)が直交する位置に配置されているが、外部磁界による磁束の向き(Y方向の向き)が正確に直交する位置がないときには、極力直交する位置、ほぼ直交する位置に配置する。
【0026】
前記実施形態では、導体は、バスバー2にて形成されているが、バスバー2以外で形成しても良い。
【0027】
前記実施形態では、磁気検出素子は、ホール素子4であるが、バスバー2に流れる電流による磁界強度(磁束密度)を検出できるものであれば良い。
【符号の説明】
【0028】
1 電流センサ
2 バスバー(導体)
3 センサ本体
4 ホール素子(磁気検出素子)
10 磁気シールド部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7