特許第5960419号(P5960419)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5960419航空機離陸重量の計算方法及び計算システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5960419
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】航空機離陸重量の計算方法及び計算システム
(51)【国際特許分類】
   B64D 47/00 20060101AFI20160719BHJP
   B64C 29/00 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   B64D47/00
   B64C29/00
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-263646(P2011-263646)
(22)【出願日】2011年12月1日
(65)【公開番号】特開2012-116471(P2012-116471A)
(43)【公開日】2012年6月21日
【審査請求日】2014年10月1日
(31)【優先権主張番号】10425366.1
(32)【優先日】2010年12月1日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591069248
【氏名又は名称】アグスタウェストランド ソチエタ ペル アツィオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100159684
【弁理士】
【氏名又は名称】田原 正宏
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】シロ マンチン
(72)【発明者】
【氏名】ロザンナ モリナロ
【審査官】 諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−016894(JP,A)
【文献】 特開昭58−110398(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0193386(US,A1)
【文献】 特開平07−315298(JP,A)
【文献】 特開昭58−110397(JP,A)
【文献】 米国特許第05987397(US,A)
【文献】 米国特許第04490802(US,A)
【文献】 特表2001−516675(JP,A)
【文献】 特開昭63−041295(JP,A)
【文献】 特開平06−221902(JP,A)
【文献】 特開昭60−161532(JP,A)
【文献】 米国特許第03469644(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 29/00
B64D 45/00
B64D 47/00
G01G 19/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホバリング可能な航空機(1)の離陸重量(EIW)を計算する計算方法であって、該離陸重量を計算する計算システムにより実行される計算方法において、
− 前記航空機(1)が安定したホバリング条件下にあるときの少なくとも1つの第1の時点および第2の時点(t1、t2、t3、…ti、…、tn)における前記航空機の離陸重量に関連付けられる第1の数量からなる1つの第1の値および1つの第2の値(W(t1)、W(t2)、W(t3)、…、W(ti)、…、W(tn))を少なくとも記録し、
− 前記第1の値および前記第2の値(W(t1)、W(t2)、W(t3)、…、W(ti)、…、W(tn))に基づいて、前記航空機(1)の離陸重量(EIW)を計算することを含み、
前記記録を行う際に、
− 前記第1の時点および前記第2の時点(t1、t2、…、ti、…、tn)において必要なホバリング出力(Power(t1)、Power(t2)、Power(t3)、…、Power(ti)、…、Power(tn))を記録し、
− 前記第1の時点および前記第2の時点(t1、t2、…、ti、…、tn)での飛行高度(h1、h2、…、h(i)、…、h(n))における圧力に関連付けられる第2の数量からなる第3の値(PALT(t1)、PALT(t2)、…、PALT(ti)、…、PALT(tn))を取得し、
− 前記第1の時点および前記第2の時点(t1、t2、…、ti、…、tn)での飛行高度(h1、h2、…、h(i)、…、h(n))における温度に関連付けられる第3の数量からなる第4の値(TOUT(t1)、TOUT(t2)、…、TOUT(ti)、…、TOUT(tn))を取得し、
− 前記第1の時点および前記第2の時点(t1、t2、…、ti、…、tin)における前記航空機(1)のエンジン(6)の速度に関連付けられる第4の数量からなる第5の値(n(t1)、n(t2)、…、n(ti)、…、n(tn))を取得し、
− 前記第3の値(PALT(t1)、PALT(t2)、…、PALT(ti)、…、PALT(tn))、前記第4の値(TOUT(t1)、TOUT(t2)、…、TOUT(ti)、…、TOUT(tn))、および前記第5の値(n(t1)、n(t2)、…、n(ti)、…、n(tn))に基づいて、前記第1の時点および前記第2の時点(t1、t2、…、ti、…、tn)での飛行高度(h1、h2、…、h(i)、…、h(n))における相対密度に関連付けられる第5の数量からなる第6の値(σ(t1)、σ(t2)、…、σ(ti)、…、σ(tn))を計算し、
− ホバリング性能曲線(100、101、102、103)を用いて、前記第1の値および前記第2の値(W(t1)、W(t2)、W(t3)、…、W(ti)、…、W(tn))を計算することを含み、
前記性能曲線(100、101、102、103)は、前記必要なホバリング出力(Power(t1)、Power(t2)、Power(t3)、…、Power(ti)、…、Power(tn))に関連付けられる第1のパラメータのパターンを、前記第1の時点および前記第2の時点(t1、t2、…、ti、…、tn)での前記航空機(1)の重量(Weight(t1)、Weight(t2)、Weight(t3)、…、Weight(ti)、…、Weight(tn))に関連付けられる第2のパラメータの関数として示しており、
前記第1のパラメータは、
【数1】
であり、式中σ(ti)は前記第6の値であり、n(ti)は前記第5の値であり、
前記第2のパラメータは、
【数2】
であり、
前記記録を行う際に、
ti-1時点とti時点 との間の燃料消費量及び資材の積込みおよび積下ろし作業に関連付けられるそれぞれの補正値(C(ti))を適用して、前記重量(Weight(t1)、Weight(t2)、Weight(t3)、…、Weight(ti)、…、Weight(tn))を数式
【数3】
にしたがって補正することをさらに含み、
記計算を行う際に、数式
【数4】
にしたがって、前記離陸重量(EIW)を計算することをさらに含み、
前記Δは安全値である、計算方法。
【請求項2】
前記記録を行う際に、
− 第1の高度(h(t1))における前記第1の数量からなる前記第1の値(W(t1)を記録し、
− 前記第1の高度(h(t1))とは異なる第2の高度(h(t2))における前記第1の数量からなる前記第2の値(W(t2))を記録することをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の計算方法。
【請求項3】
− 多数の飛行パラメータを取得し、
− 該飛行パラメータに基づいて前記航空機(1)の安定した水平飛行条件を識別し、
− 前記航空機(1)が安定した水平飛行条件下にある場合に前記記録を実行することを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の計算方法。
【請求項4】
前記多数の飛行パラメータには、前記航空機(1)のロール角、ピッチ角、垂直速度、レーダー測定高度、および真対気速度を含まれており、
前記識別を行う際に、少なくとも所与の時間間隔(Δt)にわたって、
− 前記ロール角が各閾値よりも小さいことと、
− 前記ピッチ角が各閾値よりも小さいことと、
− 前記垂直速度が各閾値よりも低いことと、
− 前記レーダー測定高度が複数の各閾値の間にあることと、
− 前記真対気速度が各閾値よりも低いことと、を判定することが含まれることを特徴とする請求項3に記載の計算方法。
【請求項5】
取得される前記飛行パラメータを地上に設置される地上局(19)にダウンロードすることを含み、
前記識別、前記記録及び前記計算のうちの少なくとも1つが前記地上局(19)において行なわれることを特徴とする、請求項3または4に記載の計算方法。
【請求項6】
前記補正値(C(t1)、C(t2)、C(t3)、…、C(ti)、…、C(tn))には、前記燃料消費量とは無関係の重量変化に関連付けられていて前記航空機(1)内のユーザーによって入力される第2の加数が含まれることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の計算方法。
【請求項7】
前記記録が行われる際に、連続するそれぞれの前記第1の時点および前記第2の時点(ti、ti+1)において記録される前記第1の値と前記第2の値(W(ti)、W(ti+1)、…、)との間の差が追加の閾値(Δ)を超えるときに、不具合信号を生成することを含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の計算方法。
【請求項8】
制御ユニットにおいてロード可能であって、実行されると請求項1〜7のいずれか一項に記載の計算方法の各処理を実行するように設計されている、ソフトウェア製品。
【請求項9】
ホバリング可能な航空機(1)の離陸重量(EIW)を計算する計算システム(10)において、
− 前記航空機(1)が安定したホバリング条件下にあるときの少なくとも1つの第1の時点および第2の時点(t1、t2、t3、…ti、…、tn)における前記航空機の離陸重量に関連付けられる第1の数量からなる1つの第1の値および1つの第2の値(W(t1)、W(t2)、W(t3)、…、W(ti)、…、W(tn))を少なくとも記録する記録段(20)と、
− 前記第1の値および前記第2の値(W(t1)、W(t2)、W(t3)、…、W(ti)、…、W(tn))に基づいて、前記航空機(1)の前記離陸重量(EIW)を計算する計算段(25)とを備えており、
前記記録段(20)は、
− 前記第1の時点および前記第2の時点(t1、t2、…、ti、…、tn)において必要なホバリング出力(Power(t1)、Power(t2)、Power(t3)、…、Power(ti)、…、Power(tn))を記録し
− 前記第1および前記第2の時点(t1、t2、…、ti、…、tn)での飛行高度(h1、h2、…、h(i)、…、h(n))における圧力に関連付けられる第2の数量からなる第3の値(PALT(t1)、PALT(t2)、…、PALT(ti)、…、PALT(tn))を取得し
− 前記第1の時点および前記第2の時点(t1、t2、…、ti、…、tn)での飛行高度(h1、h2、…、h(i)、…、h(n)における温度に関連付けられる第3の数量からなる第4の値(TOUT(t1)、TOUT(t2)、…、TOUT(ti)、…、TOUT(tn))を取得し
− 前記第1の時点および前記第2の時点(t1、t2、…、ti、…、tin)における前記航空機(1)のエンジン(6)の速度に関連付けられる第4の数量からなる第5の値(n(t1)、n(t2)、…、n(ti)、…、n(tn))を取得し
前記第3の値(PALT(t1)、PALT(t2)、…、PALT(ti)、…、PALT(tn))、前記第4の値(TOUT(t1)、TOUT(t2)、…、TOUT(ti)、…、TOUT(tn))、および前記第5の値(n(t1)、n(t2)、…、n(ti)、…、n(tn))に基づいて、前記第1の時点および前記第2の時点(t1、t2、…、ti、…、tn)での飛行高度(h1、h2、…、h(i)、…、h(n))における相対密度に関連付けられる第5の数量からなる第6の値(σ(t1)、σ(t2)、…、σ(ti)、…、σ(tn))を計算し、
ホバリング性能曲線(100、101、102、103)を用いて、前記第1の値および前記第2の値(W(t1)、W(t2)、W(t3)、…、W(ti)、…、W(tn))を計算する、
ように形成されて、前記第1の時点および前記第2の時点(t1、t2、…、ti、…、tn)での前記航空機(1)の重量(Weight(t1)、Weight(t2)、Weight(t3)、…、Weight(ti)、…、Weight(tn))の第1の値及び第2の値を記録するように形成されており、
前記ホバリング性能曲線(100、101、102、103)は、前記必要なホバリング出力(Power(t1)、Power(t2)、Power(t3)、…、Power(ti)、…、Power(tn))に関連付けられる第1のパラメータのパターンを、前記第1の時点および前記第2の時点(t1、t2、…、ti、…、tn)での前記航空機(1)の重量(Weight(t1)、Weight(t2)、Weight(t3)、…、Weight(ti)、…、Weight(tn))の第1の値および第2の値に関連付けられる第2のパラメータの関数として示し、
前記第1のパラメータは、
【数5】
であり、
σ(ti)は前記第6の値であり、
n(ti)は前記第5の値であり、
前記第2のパラメータは、
【数6】
であり、
前記記録段(20)は、ti-1時点とti との間の燃料消費量及び資材の積込みおよび積下ろし作業に関連付けられるそれぞれの補正値(C(ti))を適用して、前記重量(Weight(t1)、Weight(t2)、Weight(t3)、…、Weight(ti)、…、Weight(tn))の第1の値および第2の値を数式
【数7】
にしたがって補正するよう形成されており、
記計算段(25)は、数式
【数8】
にしたがって前記離陸重量(EIW)を計算するように形成されており、
Δは安全値である、計算システム。
【請求項10】
前記航空機(1)の飛行パラメータを取得する取得段(30)を備えており、
前記計算段(25)が、前記飛行パラメータに基づいて前記離陸重量(EIW)を計算するようにも形成されており、
前記計算システムが、取得される飛行パラメータに基づいて、前記航空機(1)が安定した水平飛行状態にあるか否かを判定するように形成される飛行条件認識段(35)をさらに備えることを特徴とする、請求項9に記載の計算システム。
【請求項11】
前記計算段(25)および前記記録段(20)のうちの少なくとも一方が地上に設置されることを特徴とする、請求項9または10に記載の計算システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機離陸重量の計算方法及び計算システムに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の部品は通常、その耐用期間中に疲労損傷を受ける。
【0003】
重大な疲労損傷を受ける部品は、所与の長さの時間にわたって行なわれる所与の飛行運動に対応する負荷スペクトルを用いて設計される。
【0004】
換言すると、最も重要な部品は負荷スペクトルに基づいて疲労設計され、所与の疲れ寿命を有する状態で供給される。
【0005】
航空機構成部品の実際の利用期間における疲労を決定し、それら航空機構成部品の設計疲れ寿命との関係における残存耐用時間を安全に判定するニーズが当業界において感じられている。
【0006】
航空機構成部品の実際の疲労を計算するための主要パラメータの1つは、航空機の離陸重量である。
【0007】
構成部品の疲労損傷に影響を及ぼす姿勢を左右する種々の飛行条件における重量を離陸重量から算定できる。
【0008】
航空機の離陸重量は通常、無負荷時の航空機重量にペイロード、燃料および乗務員の重量を加算して計算される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
航空機構成部品の実際の疲労をより正確に決定するために、航空機の離陸重量を計算するためのより正確な方法に対するニーズが当業界において感じられている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、請求項1に記載の航空機の離陸重量を計算する計算方法を提供することにある。
【0011】
また、本発明は、請求項9に記載の航空機の離陸重量を計算する計算システムに関する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る離陸重量計算システムを備えていて、本発明に係る離陸重量計算方法を実行する航空機、特にヘリコプターを示す図である。
図2図1の計算システムにおいて利用される特性曲線を示す図である。
図3図2の特性曲線の補間を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付図面を参照して、本発明の好ましい非限定的実施形態を例示のために説明する。
【0014】
図1の符号1は、航空機、図示される例ではヘリコプターを示している。
【0015】
ヘリコプター1は、機首5を備えた機体2と、2つのエンジン6(図1では概略的にのみ示されている)と、ヘリコプター1を上昇させるとともに推進させるのに必要な揚力および推力を生成するように機体2の上面に取付けられた主回転翼3とを具備している。
【0016】
図1の符号10は、ヘリコプター1の離陸重量を計算するための計算システムを示している。
【0017】
計算システム10は、
− ヘリコプター1が水平飛行状態であるときの多数の対応する時点t1、t2、t3、…、ti、…、tnにおいて、ヘリコプター1の重量に関連付けられる値W(t1)、W(t2)、W(t3)、…、W(ti)、…、W(tn)を記録するための記録段20と、
− これら値W(t1)、W(t2)、W(t3)、…、W(ti)、…、W(tn)に基づいて、ヘリコプター1の離陸重量EIWを計算するための計算段25とを備えるのが有利である。
【0018】
以下の説明において、水平飛行とは、ヘリコプターが実質的に一定の高度および速度で飛行またはホバリングしている条件を意味するように意図されている。
【0019】
また、計算システム10は、
− 飛行パラメータ、例えばロール角、ピッチ角、ロール角微分、ピッチ角微分、ヨー角微分、ヘリコプター1の真対気速度、荷重係数、レーダー測定高度、垂直速度、ヘリコプター前方加速度、着陸装置接地表示、エンジン6の出力および速度、主回転翼3の回転速度並びに気圧計測定の気圧高度を取得する取得段30と、
− 取得された飛行パラメータに基づいて、ヘリコプター1が安定した水平飛行状態であるか否かを判定する飛行条件認識段35とを備えるのが好ましい。
【0020】
取得段30は、所与の周波数、例えば3Hzで飛行パラメータを取得するように形成されている。
【0021】
認識段35は、取得段30によって取得された飛行パラメータを分析し、取得段30によって取得されたパラメータの一部が所与の時間間隔よりも長い間にわたって各閾値よりも低く留まっている場合にヘリコプター1の安定した水平飛行を判定するように形成されている。
【0022】
説明される実施形態において、認識段35は、少なくとも或る時間間隔Δtにわたって、
− ロール角が、閾値、例えば10度よりも小さく、
− ピッチ角が、閾値、例えば10度よりも小さく、
− 垂直速度が、閾値、例えば毎分15.24メートル(毎分50フィート)よりも低く、
− レーダー測定高度が、下限閾値と上限閾値との間、例えば1.524メートル(5フィート)と30.48メートル(100フィート)との間であり、かつ
− ヘリコプター1の真対気速度が毎秒5.14メートル(10ノット)未満である場合において、ヘリコプター1の安定したホバリングを判定するように形成されている。
【0023】
説明される例において、時間間隔Δtは少なくとも3秒である。
【0024】
記録段20は、ヘリコプター1がそれぞれ異なるまたは同一の高度h(t1)、h(t2)、h(t3)、…、h(ti)、…、h(tn)において安定ホバリング条件下にある多数の時点t1、t2、t3、…、ti、…、tnにおける値W(t1)、W(t2)、W(t3)、…、W(ti)、…、W(tn)を記録するように形成されている。
【0025】
より具体的には、記録段20は、取得段30によって取得されたパラメータを受信し、認識段35がヘリコプター1の安定ホバリング条件を判定した場合に、ヘリコプター1の重量と関連付けられる値W(t1)、W(t2)、W(t3)、…、W(ti)、…、W(tn)を記録するとともに、各時点t1、t2、t3、…、ti、…、tnにおいて記録された値W(t1)、W(t2)、W(t3)、…、W(ti)、…、W(tn)を計算段25に送信するように形成されている。
【0026】
記録段20は、各々の安定ホバリング条件について、
− 時点tiおよび高度h(ti)において、塔載計器によって記録された気圧高度PALT(ti)および外気温度TOUT(ti)と、
− 時点tiおよび高度h(ti)において、エンジン6の速度に比例する係数n(ti)と、
− 時点tiおよび高度h(ti)でエンジン6によって生成される出力Power(ti)と、
− 記録段20に記憶された多数の性能曲線100、101、102、103、104(図2および図3)と、に基づいて値W(t1)、W(t2)、W(t3)、…、W(ti)、…、W(tn)を記録するように形成されている。
【0027】
より具体的には、記録段20は、各々の安定ホバリング条件について、時点tiおよび高度h(ti)におけるi番目のパラメータ
【数1】
および
【数2】
を記録する。
なお、これら式中において、
0=288.15[K]は海水位における標準温度であり、
0は海水位における標準気圧であり、
h=−0.00649[K/m](−0.00198[K/ft])であり、
m=−g/R・h=5.25611であり、
Rは一般理想気体定数であり、
gは重力加速度である。
【0028】
また、記録段20は、パラメータδ(ti)およびΨ(ti)に基づいて、時点tiおよび高度h(ti)におけるパラメータσ(ti)
【数3】
を記録する。
なお、この式中において、
ρ0は海水位における標準密度である。
【0029】
性能曲線100、101、102、103、104(図2および図3)において、Y軸は、時点tiおよび高度h(ti)におけるパラメータ
【数4】
を示している。X軸は、時点tiおよび高度h(ti)におけるパラメータ
【数5】
を示している。Weight(ti)は、性能曲線100、101、102、103、104から得られる時点tiにおけるヘリコプター1の重量である。
【0030】
性能曲線100、101、102、103、104は、増大するホバリング高度h(ti)に対してプロットされている。換言すると、性能曲線100(101、102、103)は、性能曲線101(102、103、104)よりも低位のホバリング高度h(i)に対してプロットされている。
【0031】
記録段(20)は、高度h(ti)が性能曲線100、101、102、103がプロットされているいずれの高度とも一致しない場合、高度h(ti)における性能曲線106(図3)を補間するように形成されている。図3においては、性能曲線106が性能曲線100の高度と性能曲線101の高度との間の高度h(ti)において補間されている。
【0032】
記録段20は、数式
【数6】
にしたがって各時点tiにおける各々の値W(t1)、W(t2)、W(t3)、…、W(ti)、…、W(tn)を計算するように形成されている。式中において、補正値C(t1)、C(t2)、…、C(ti)、…、C(tn)は、
− 時点t0、t1、…、ti、…、tnまでの燃料消費量に関連付けられるそれぞれの第1の加数と、
− 例えばヘリコプター1への資材の積込みおよびその積下ろしの結果としての重量変化量に関連付けられていて乗務員によって入力されるそれぞれの第2の加数との合計である。
【0033】
計算段25は、数式
【数7】
にしたがって、ヘリコプター1の重量EIWを計算するように形成されている。式中において、Δは、計算されるヘリコプター1の重量EIWに加算される安全値である。
【0034】
換言すると、計算段25は、ヘリコプターの重量EIWを値W(ti)の算術平均と安全値Δとの合計として計算するように形成されている。
【0035】
記録段20は、所与の時点ti+1において、
【数8】
である場合に、不具合を判定するように形成されている。換言すると、計算段25は、時点tiおよびti+1において記録される2つの連続値W(ti)、W(ti+1)の間の差が安全値Δを上回る場合に、不具合を判定するように形成されるのが好ましい。
【0036】
この場合、計算段25は、計算システム10の保守ユニットに対して不具合信号を送出し、または重量EIWの計算から値W(ti+1、ti+2、…)を削除し、或いはこれら両方を行う。
【0037】
記録段20、計算段25および認識段35は地上局19に配置されるのが好ましく、取得段30はヘリコプター1に配置される。
【0038】
取得段30により取得された飛行パラメータは、例えばデータ転送カセットを使用して計算段25にダウンロードされる。
【0039】
記録段20、計算段25、取得段30および認識段35は、計算システム10にロードされ、計算システム10において実行されるソフトウェアによって制御される。
【0040】
実際に使用される際に、飛行パラメータは、所与のサンプリング周波数で取得段30により取得されるとともに、ヘリコプター1がホバリングしているか否かを判定する地上に設置された認識段35にダウンロードされる。
【0041】
より具体的には、認識段35は、少なくとも間隔Δtにわたって、
− ロール角が、閾値、例えば10度よりも小さく、
− ピッチ角が、閾値、例えば10度よりも小さく、
− 垂直速度が、閾値、例えば毎分15.24メートル(毎分50フィート)よりも低く、
− レーダー測定高度が、下限閾値と上限閾値との間、例えば1.524メートル(5フィート)と30.48メートル(100フィート)との間であり、かつ
− ヘリコプター1の真対気速度が毎秒5.14メートル(10ノット)未満である場合において、ヘリコプター1の安定したホバリングを判定する。
【0042】
認識段35が安定ホバリング条件を判定する各々の時点tiおよび高度h(ti)について、記録段20はヘリコプター1の重量値W(ti)を記録する。
【0043】
より具体的に述べると、高度h(ti)および時点t(i)における気圧高度PALT(ti)および温度TOUT(ti)のi番目の値に基づいて、記録段20は、パラメータ
【数9】
および
【数10】
を記録する。
【0044】
次に、記録段20は、パラメータ
【数11】
を記録する。
【0045】
このとき、パラメータσ(ti)、n(ti)、出力使用値Power(ti)、および高度h(ti)が与えられると、重量値Weight(ti)が図2および図3の性能曲線100、101、102、103、104から得られうる。
【0046】
記録段20は、時点ti−1とtとの間における燃料消費量、及び資材積込み/積下ろし作業に関連付けられる補正値C(ti)を適用して、数式
【数12】
にしたがってWeight(ti)の値を補正する。
【0047】
高度h(ti)および時点tiに関連付けられる値W(ti)は、計算段25に送出される。
【0048】
したがって、計算段25は、それぞれの時点t1、t2、t3、…、ti、…、tnおよびそれぞれの高度h(t1)、h(t2)、h(t3)、…、h(ti)、…、h(tn)において記録された重量値に関連付けられる多数の値W(t1)、W(t2)、W(t3)、…、W(ti)、…、W(tn)を受信する。
【0049】
計算段25は、安全値Δを考慮してヘリコプター1の離陸重量EIWを計算する。より具体的には、離陸重量EIWは、数式
【数13】
にしたがって計算される。
【0050】
計算段25は、時点t(i+1)において、
【数14】
である場合に、計算システム10の不具合を示唆する信号を生成する。
【0051】
この場合、計算段25は、ヘリコプター1の離陸重量EIWを計算する際に値W(ti+2)、W(ti+3)、…、W(tn)を考慮しない。
【0052】
本発明に係る計算方法および計算システム10の利点は、以上の記載から明らかであろう。
【0053】
特に、本発明に係る計算方法および計算システム10によって、ヘリコプター1の動作中にヘリコプター1の離陸重量EIWを計算できるようになる。
【0054】
こうして、ヘリコプター1の最も重要な構成部品の実際の疲労ひいては実際の残存耐用時間を査定するために、特にヘリコプター1が実際に行なう飛行運動の重要な指示と組合わせて、離陸重量EIWを有効に使用することが可能である。
【0055】
さらに、本発明に係る計算方法および計算システム10は、塔載負荷センサを必要とすることなくヘリコプター1の実際の離陸重量の容易な測定を提供する。
【0056】
最後に、指摘されるべき別の重要な点は、安定したホバリングモードにおいて、飛行に必要な出力Power(ti)がヘリコプター1の重量を上昇させるために概ね使用されるということである。
【0057】
したがって、性能曲線100、101、102、103、104は容易にプロットされ、通常ヘリコプター1の運転マニュアルに示される。
【0058】
高度h(ti)での安定したホバリングモードにおいて使用された出力Power(ti)の測定値を利用することによって、本発明に係る計算方法は、性能曲線100、101、102、103、104を使用して極めて容易に実施される。
【0059】
本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載されている計算方法および計算システム10に変更を加えうることは明らかである。
【0060】
最後に、航空機は転換式航空機であってもよい。
図1
図2
図3