(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
構成する脂肪酸が炭素数16〜18の不飽和脂肪酸であるグリセリン有機酸脂肪酸エステルを有効成分とすることを特徴とする、ショートニング、マーガリン又はファットスプレッドにおける油脂のクリーミング性向上剤(但し、該剤がプロピレングリコール脂肪酸エステル又はモノグリセリン脂肪酸エステルを含有する場合を除く)。
前記クリーミング性向上が、クリーミング価が200に達するまでの時間が8分未満であり、且つクリーミング価が250までに達するまでの時間が12分未満であることを特徴とする、請求項1に記載の油脂のクリーミング性向上剤。
【背景技術】
【0002】
パン・菓子類の多くは、シュガーバッター法と呼ばれる方法で製造される。この方法は、ショートニングやマーガリンを蔗糖と撹拌して空気を抱き込ませ、次いで、卵、牛乳、糖液等を抱き込ませ、最後に小麦粉を軽く合わせて焼成させるというものである。このため、パン・菓子類の製造に用いるショートニングやマーガリン等の油脂組成物は、空気を抱き込む性質(クリーミング性)および卵、牛乳、糖液等を抱き込む性質(吸水性)が求められる。また、バタークリームやサンドクリーム等の製造においても、予め油脂を撹拌して空気を抱き込ませた後、卵等を抱き込ませるため、油脂にクリーミング性および吸水性を付与することが求められる。
【0003】
油脂にクリーミング性や吸水性を付与する方法としては、例えば、1種又は2種以上のジグリセライドを含有する油脂組成物であって、上昇融点が20℃未満のジグリセライドを基準にして10〜99重量%含有することを特徴とする高起泡性油脂組成物(特許文献1)、HLBが3以下であって、構成脂肪酸が、炭素数12〜22の飽和脂肪酸20〜80重量%及び炭素数16〜22の不飽和脂肪酸80〜20重量%からなる多価アルコール脂肪酸エステルを有効成分とする油脂の結晶成長抑制剤(特許文献2)、成分(A)パーム油を50重量%以上と、成分(B)ポリグリセリン脂肪酸エステルを0.05〜5重量%とを含有する油脂組成物であって、該成分(B)のエステル化率が50%以上、該成分(B)の構成脂肪酸の80重量%以上がオレイン酸とパルミチン酸からなり、オレイン酸とパルミチン酸とのモル比が90:10〜10:90であることを特徴とする油脂組成物(特許文献3)、飽和脂肪酸結合型ソルビタン脂肪酸エステルを有効成分とするクリーミング性向上剤(特許文献4)などが提案されている。
【0004】
上記方法はいずれも、油脂が空気を抱き込む量を示す指標である「クリーミング価」や油脂が水・卵等を抱き込む量を示す指標である「吸水量」を高めるという観点から提案されたものである。しかし、パン・菓子類等をより効率良く生産するためには、クリーミング価や吸水量を高めるだけでなく、クリーミングに要する時間や油脂組成物に卵等を添加して均一化するのに要する時間をより短縮する方法が求められている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に用いられるグリセリン有機酸脂肪酸エステルとしては、例えば、グリセリン酢酸脂肪酸エステル(食品添加物)、グリセリン乳酸脂肪酸エステル(食品添加物)、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル(食品添加物)、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル(食品添加物)などが挙げられ、油脂組成物に吸水速度を十分に付与する観点から、グリセリンクエン酸脂肪酸エステルまたはグリセリンコハク酸脂肪酸エステルが好ましく用いられる。なお、グリセリンクエン酸脂肪酸エステルまたはグリセリンコハク酸脂肪酸エステルを用いると油脂組成物の吸水速度が十分に向上するため、これらは油脂の吸水性向上剤として使用することもできる。グリセリン有機酸脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はなく、例えば炭素数6〜24の直鎖の飽和脂肪酸(例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸など)および不飽和脂肪酸(例えば、パルミトオレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、γ−リノレン酸、α−リノレン酸、アラキドン酸、リシノール酸、縮合リシノール酸など)が挙げられ、好ましくは炭素数16〜18の飽和または不飽和脂肪酸である。
【0011】
なお、グリセリン有機酸脂肪酸エステルとしては、ポエムK−30(商品名;グリセリンクエン酸脂肪酸エステル;理研ビタミン社製)、ポエムK−37V(商品名;グリセリンクエン酸脂肪酸エステル;理研ビタミン社製)、ポエムB−30(商品名;グリセリンコハク酸脂肪酸エステル;理研ビタミン社製)などが商業的に製造および販売されており、本発明のクリーミング性向上剤にはこれらを用いることができる。
【0012】
本発明において用いられるソルビタン不飽和脂肪酸エステルは、酸またはアルカリ触媒存在下、ソルビトールまたはソルビトール分子内縮合物と不飽和脂肪酸との直接エステル化反応により得ることができる。
【0013】
上記エステル化反応で用いられるソルビトールとしては、例えば、D−ソルビトールを約50.0〜70.0質量%含有するD−ソルビトール液或いは白色粉末または粒状のD−ソルビトールが挙げられる。
【0014】
上記エステル化反応で用いられるソルビトール分子内縮合物は、ソルビトールの分子内脱水で得られる化合物であり、例えば1,5−ソルビタン、1,4−ソルビタン、2,5−ソルビタン、3,6−ソルビタン、1,4,3,6−ソルバイドなどが挙げられる。これらソルビトール分子内縮合物は、1種類でまたは2種類以上を組み合わせて用いることができる。また本発明で用いられるソルビトール分子内縮合物中には、上記化合物以外に、未反応のソルビトールが含まれていても良い。
【0015】
ソルビトールの分子内脱水反応は、酸触媒(例えば濃硫酸、p−トルエンスルホン酸など)の存在下に、ソルビトールを約110〜150℃、好ましくは約120℃で加熱し、減圧下、例えば約1.3kPaで、発生する水を除去することにより行われるのが好ましい。反応の終点は脱水縮合物の水酸基価を測定することにより決定される。反応終了後、脱水縮合物に例えば水酸化ナトリウム水溶液を加えて酸触媒を中和し、更に、例えば珪藻土などのろ過助剤を加えてろ過するのが好ましい。
【0016】
上記エステル化反応で用いられる不飽和脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とし、炭素原子間の結合に二重結合を含む脂肪酸であれば特に制限はなく、例えばパルミトオレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、γ−リノレン酸、α−リノレン酸、アラキドン酸、リシノール酸、縮合リシノール酸などが挙げられる。これら脂肪酸は一種類で用いても良いし、二種類以上を任意に組み合わせて用いても良い。油脂組成物にクリーミング速度を十分に付与する観点から、好ましくは、オレイン酸である。
【0017】
上記エステル化反応において、ソルビトールまたはソルビトール分子内縮合物に対する脂肪酸の仕込み量は、ソルビトールまたはソルビトール分子内縮合物1モルに対しておおむね1〜2モル程度であるのが好ましい。
【0018】
ソルビトールまたはソルビトール分子内縮合物と脂肪酸とのエステル化反応は無触媒で行って良く、または酸触媒あるいはアルカリ触媒を用いて行っても良いが、アルカリ触媒の存在下で行われるのが好ましい。アルカリ触媒としては、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどが挙げられる。アルカリ触媒の使用量は、全仕込み量(乾燥物換算)の約0.01〜1.0質量%、好ましくは約0.05〜0.5質量%である。
【0019】
上記エステル化反応は、例えば攪拌機、加熱用のジャケット、邪魔板、不活性ガス吹き込み管、温度計および冷却器付き水分分離器などを備えた通常の反応容器に、ソルビトールまたはソルビトール分子内縮合物、脂肪酸、および触媒を供給して攪拌混合し、窒素または二酸化炭素などの任意の不活性ガス雰囲気下で、エステル化反応により生成する水を系外に除去しながら、所定温度で一定時間加熱して行われる。反応温度は通常、約180〜260℃の範囲、好ましくは約200〜250℃の範囲である。また、反応圧力条件は減圧下又は常圧下で、反応時間は約0.5〜15時間、好ましくは約1〜3時間である。反応の終点は、通常反応混合物の酸価を測定し、約10以下を目安に決められる。
【0020】
エステル化反応終了後、必要に応じ、反応混合物中に残存する触媒を中和することができる。その際、エステル化反応の温度が200℃以上の場合は液温を約180〜200℃に冷却してから中和処理を行うのが好ましい。また反応温度が200℃以下の場合は、そのままの温度で中和処理を行って良い。中和後、その温度で好ましくは約0.5時間以上、更に好ましくは約1〜10時間放置する。未反応のソルビトールまたはソルビトール分子内縮合物が下層に分離した場合はそれを除去するのが好ましい。
【0021】
本発明に用いられるソルビタン不飽和脂肪酸エステルは、そのエステル化率が60%未満であることが好ましく、50%未満であることがより好ましい。エステル化率が60%未満であると、特に精製パーム油などのパーム系油脂に対して十分に吸水性を付与することができるため好ましい。そのエステル化率(%)は下式により算出される。ここでエステル価および水酸基価は、「基準油脂分析試験法(I)」(社団法人 日本油化学会編)の[2.3.3-1996 エステル価]および[2.3.6-1996 ヒドロキシル価]に準じて測定される。
【0023】
なお、ソルビタン不飽和脂肪酸エステルとしては、ソルビタンオレイン酸エステル(商品名:ポエムO−80V;エステル化率41.8%;理研ビタミン社製)などが商業的に製造および販売されており、本発明のクリーミング性向上剤にはこれらを用いることができる。
【0024】
本発明のクリーミング性向上剤の実施態様としては特に限定されないが、例えば、上記グリセリン有機酸脂肪酸エステルおよび/またはソルビタン不飽和脂肪酸エステルを油脂のクリーミング性向上剤として直接用いても良く、また上記グリセリン有機酸脂肪酸エステルおよび/またはソルビタン不飽和脂肪酸エステルをデキストリンや乳糖などの粉末化剤と共に水溶液とし、該水溶液を常法により乾燥・粉末化し、得られた粉末を油脂のクリーミング性向上剤としても良い。
【0025】
本発明のクリーミング性向上剤を含有する油脂組成物に使用される食用油脂としては、例えばパーム油、カカオ脂、ヤシ油、パーム核油等の植物性油脂並びに乳脂、牛脂、ラード、魚油、鯨油等の動物性油脂の他、菜種油、大豆油、ヒマワリ種子油、綿実油、落花生油、米糠油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、カポック油、ゴマ油、月見草油、パーム油、シア脂、サル脂、カカオ脂、ヤシ油、パーム核油等の植物性油脂並びに乳脂、牛脂、ラード、魚油、鯨油等の動物性油脂の単独又は混合油あるいはそれらの硬化、分別、エステル交換等を施した加工油脂が挙げられ、中でもパーム系油脂やカカオ脂、エステル交換油脂等が好ましく、パーム系油脂としては、天然パーム油を精製して得られる精製パーム油や天然パーム油を分別して得られるパームオレインあるいはパームステアリンが好ましい。
【0026】
本発明の油脂組成物としては、例えば油中水型乳化物であるマーガリン、ファットスプレッド、および水分をほとんど含まないショートニングのような製品形態のものが挙げられる。ここでマーガリンは、油脂組成物中に占める油脂含有率が80重量%以上のものをいい、ファットスプレッドは80重量%未満のものをいう。
【0027】
本発明の油脂組成物の製造方法は特に限定されず、自体公知の方法を用いることができる。以下に、ショートニングの製造方法を例示する。例えば、食用油脂並びに上記グリセリン有機酸脂肪酸エステルおよび/またはソルビタン不飽和脂肪酸エステルを混合し、約50〜80℃、好ましくは約60〜70℃に加熱して溶解し、所望により酸化防止剤(例えば抽出トコフェロールなど)、着色料(例えばβ−カロテンなど)、香料(例えばミルクフレーバーなど)、上記グリセリン有機酸脂肪酸エステルおよびソルビタン不飽和脂肪酸エステル以外の乳化剤(例えばレシチンなど)などを添加する。得られた溶液を、組成物100g中約10〜15mlとなるよう窒素ガスまたは空気を吹き込みながら、送液ポンプで予冷器を通して急冷捏和装置に送液し、油脂の結晶化と練捏を連続的に行いショートニングを得る。得られたショートニングは、更に、約25〜30℃で24〜72時間テンパリングされるのが好ましい。
【0028】
マーガリンもまた上記急冷捏和装置を用いて製造される。即ち、食用油脂並びに上記グリセリン有機酸脂肪酸エステルおよび/またはソルビタン不飽和脂肪酸エステルを混合し、約50〜80℃、好ましくは約60〜70℃に加熱して溶解し、所望により酸化防止剤(例えば抽出トコフェロールなど)、着色料(例えばβ−カロテンなど)、香料(例えばミルクフレーバーなど)、上記グリセリン有機酸脂肪酸エステルおよびソルビタン不飽和脂肪酸エステル以外の乳化剤(例えばレシチンなど)などを添加して油相とする。一方、精製水に、所望により乳または乳製品(例えば全粉乳、脱脂粉乳など)、食塩、砂糖類、酸味料(例えばクエン酸など)などを加え、約50〜60℃に加熱して溶解し水相とする。次に、油相と水相を通常の攪拌・混合槽を用いて混合し、得られた混合液を送液ポンプで急冷捏和装置に送液し、油脂の結晶化と練捏を連続的に行いマーガリンを得る。また乳化工程をとらず、油相と水相をそれぞれ定量ポンプで急冷捏和装置に送液し、以下同様に処理しマーガリンを得ることもできる。得られたマーガリンは、更に、約25〜30℃で24〜72時間テンパリングされるのが好ましい。
【0029】
急冷捏和装置としては、例えばボテーター(ケメトロン社製)、パーフェクター(ゲルステンベルグ社製)、コンビネーター(シュローダー社製)、オンレーター(櫻製作所社製)、マーガリンプロセッサー(POWER POINT INTERNATIONAL社製)などが挙げられる。該装置は一般にAユニットとBユニットから構成され、Aユニットは管型の掻き取り式熱交換機からなっている。Bユニットは製品の種類、目的により構造の異なる管が用いられ、マーガリン、ファットスプレッドでは例えば中空管または内部に金網を設けた管などが、またショートニングでは管の内壁およびシャフトにピンを設けた混練機(ピンチューブ)などが用いられる。
【0030】
本発明の油脂組成物100質量%中のグリセリン有機酸脂肪酸エステルおよび/またはソルビタン不飽和脂肪酸エステルの含有量の合計は、0.05質量%〜10.0質量%であることが好ましく、0.1質量%〜5.0質量%であることがより好ましい。グリセリン有機酸脂肪酸エステルおよび/またはソルビタン不飽和脂肪酸エステルの含有量の合計の合計が0.05質量%未満であると、油脂組成物のクリーミング速度および吸水速度の向上が不十分であり、また、10.0質量%を越えると、油脂組成物の風味に悪影響を与える他、経済的にも好ましくない。
【0031】
本発明の油脂組成物(ショートニング)には、食品添加物として、上記の酸化防止剤、着色料、香料、乳化剤の他に、酸化防止助剤(例えばクエン酸など)、消泡剤(例えばシリコーン樹脂など)などを含有させることができる。
【0032】
また、本発明の油脂組成物(マーガリン)には、食品添加物として、上記の酸化防止剤、着色料、香料、乳化剤、酸味料の他に、乳化安定剤(例えばカゼインナトリウム、ポリリン酸ナトリウムなど)、調味料(例えばL−グルタミン酸ナトリウムなど)、糊料(例えばカラギナン、キサンタンガムなど)、保存料(例えばソルビン酸カリウムなど)、強化剤(例えばビタミンA脂肪酸エステルなど)などを含有させることができる。
【0033】
本発明のクリーミング性向上剤を含有する油脂組成物は、クリーミング速度および吸水速度に優れるため、パン・菓子類(例えば、パン、ケーキ、クッキー、ビスケット等)を効率良く生産するために好適に使用される。ここで、本発明の目的とするクリーミング速度に優れた油脂組成物とは、下記クリーミング速度評価方法により油脂組成物を攪拌泡気させたとき、クリーミング価が200に達するまでの時間が8分未満であり、且つクリーミング価が250に達するまでの時間が12分未満のものをいう。
【0034】
<クリーミング速度評価方法>
ホイッパーを装着した卓上ミキサー(製品名:キッチンエイド・ミキサー;Kitchen Aid社製)を用いて、予め20℃に温調した油脂組成物400gを撹拌して起泡させる(速度数「6」;ミキサーのボールは20℃循環水冷却;室温25℃)。次いで、攪拌しながら、経時的にクリーム状のサンプルのクリーミング価を次式により求め、攪拌を開始してからクリーミング価が200および250に達するまでの時間を測定する。
【0036】
また、本発明の目的とする吸水速度に優れた油脂組成物とは、下記測定方法により油脂組成物に水を抱き込ませるのに要する時間が3分未満のものをいう。
【0037】
<吸水速度評価方法>
ホイッパーを装着した卓上ミキサー(製品名:キッチンエイド・ミキサー;Kitchen Aid社製)を用いて、予め20℃に調温した油脂組成物400gを12分間撹拌して起泡させる(速度数「6」;ミキサーのボールは20℃循環水冷却;室温25℃)。次いで、攪拌を継続しながら、水300mLを一度に加え、水を加えてから水が完全に混和するまでに要する時間を測定する。
【0038】
なお、吸水性のうち、油脂組成物が卵を抱き込む性質に着目したものを特に吸卵性という。本発明の目的とする油脂組成物は、下記吸卵速度評価方法により油脂組成物に卵を抱き込ませるのに要する時間が3分未満のものをいう。
【0039】
<吸卵速度評価方法>
ホイッパーを装着した卓上ミキサー(製品名:キッチンエイド・ミキサー;Kitchen Aid社製)を用いて、予め20℃に調温した油脂組成物400gを12分間撹拌して起泡させる(速度数「6」;ミキサーのボールは20℃循環水冷却;室温25℃)。次いで、攪拌を継続しながら、全卵液300gを一度に加え、全卵液を加えてから全卵液が完全に混和するまでに要する時間を測定する。
【0040】
以下に本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0041】
[ショートニングの製造および評価]
(1)ショートニングの製造
精製パーム油(商品名:RPO;植田製油社製)4000gに表1に示す乳化剤計20gをクリーミング性改良剤としてそれぞれ加えて溶解し、約70℃に加温した。得られた混合物をマーガリンプロセッサー(POWER POINT INTERNATIONAL社製)に供給して急冷捏和した。次いで、この混合物を25℃で24時間テンパリング処理した後、10℃で18時間保存し、ショートニング2000g(試料No.1〜8)をそれぞれ得た。この内、試料No.1〜4は本発明に係る実施例であり、試料No.5〜8はそれらに対する比較例である。
【0042】
【表1】
【0043】
なお、表1に示す乳化剤のうち、ポリグリセリン脂肪酸エステル(試作品)は、下記製造例に従い製造した。
【0044】
[製造例]
撹拌機、温度計、ガス吹込管および水分離器を取り付けた1Lの四つ口フラスコに、ポリグリセリン(商品名:ポリグリセリン#750;平均重合度10;阪本薬品工業社製)162.4g、パルミチン酸とステアリン酸の混合脂肪酸(商品名:ステアリン酸65;ステアリン酸含量65%、パルミチン酸含量35%;ミヨシ油脂社製)308.0g、オレイン酸とリノール酸が主体の混合脂肪酸(商品名:ルナックO−V;オレイン酸含有量約79%;リノール酸含有量約11%;パルミチン酸含有量約6%;ステアリン酸含有量約2%;花王社製)249.6gおよびラウリン酸(商品名:ルナックL−50;花王社製)を仕込み、窒素ガス気流中、反応液の酸価が20以下になるまで240℃で約8時間エステル化反応を行い、さらに過剰な脂肪酸の除去を目的として窒素ガスを吹き込む処理を約2時間行った。得られた反応液を約180℃まで冷却し、その温度で約1時間放置した後、分離した未反応のポリグリセリンを含むポリオールを除去し、ポリグリセリン脂肪酸エステル(試作品)約740gを得た。
【0045】
(2)クリーミング速度の評価
ホイッパーを装着した卓上ミキサー(製品名:キッチンエイド・ミキサー;Kitchen Aid社製)でショートニング(試料No.1〜8)各400gを撹拌して起泡させた(速度数「6」;ミキサーのボールは20℃循環水冷却;室温25℃)。次いで、攪拌を開始してから3分、6分、9分および12分の時点でのショートニングのクリーミング価を次式により求めた。これらクリーミング価に基づき、攪拌を開始してからクリーミング価(CV)が200および250に達するまでの時間(ホイップ時間)を算出した。
【0046】
【数3】
【0047】
(3)吸水速度の評価
ホイッパーを装着した卓上ミキサー(製品名:キッチンエイド・ミキサー;Kitchen Aid社製)を用いて、予め20℃に調温した油脂組成物400gを12分間撹拌して起泡させた(速度数「6」;ミキサーのボールは20℃循環水冷却;室温25℃)。次いで、攪拌を継続しながら、水300mLを一度に加え、水を加えてから水が完全に混和するまでに要した時間(吸水時間)を測定した。なお、水を加えてから3分が経過しても完全に混和しない場合は測定を中止した。
【0048】
(4)吸卵速度の評価
ホイッパーを装着した卓上ミキサー(製品名:キッチンエイド・ミキサー;Kitchen Aid社製)を用いて、予め20℃に調温した油脂組成物400gを12分間撹拌して起泡させた(速度数「6」;ミキサーのボールは20℃循環水冷却;室温25℃)。次いで、攪拌を継続しながら、全卵液300gを一度に加え、全卵液を加えてから全卵液が完全に混和するまでに要した時間(吸卵時間)を測定した。なお、全卵液を加えてから3分が経過しても完全に混和しない場合は測定を中止した。
【0049】
(5)結果
上記(2)〜(4)の評価について結果を表2に示す。
【0050】
【表2】
【0051】
表2から明らかなように、実施例のショートニング(試料No.1〜4)は、クリーミング価が200に達するまでのホイップ時間が8分未満であり、クリーミング価が250に達するまでのホイップ時間が12分未満であり、吸水時間が3分未満であり、且つ吸卵時間が3分未満であった。即ち、実施例のショートニングは、いずれの評価項目においても優れたものであった。これに対し、比較例のショートニング(試料No.5〜8)は、少なくとも1以上の評価項目において実施例のものに比べて劣っていた。