特許第5960458号(P5960458)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • 5960458-車両用空調装置 図000002
  • 5960458-車両用空調装置 図000003
  • 5960458-車両用空調装置 図000004
  • 5960458-車両用空調装置 図000005
  • 5960458-車両用空調装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5960458
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
   B60H1/22 611D
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-62146(P2012-62146)
(22)【出願日】2012年3月19日
(65)【公開番号】特開2013-193549(P2013-193549A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000152826
【氏名又は名称】株式会社日本クライメイトシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 洋一
(72)【発明者】
【氏名】濱本 浩
(72)【発明者】
【氏名】西井 秀明
【審査官】 安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−006649(JP,A)
【文献】 特開2001−097028(JP,A)
【文献】 特開2003−159930(JP,A)
【文献】 実開平06−018011(JP,U)
【文献】 実開平05−091922(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調用空気を加熱する加熱通路と、空調用空気が該加熱通路をバイパスして流れるバイパス通路とが内部に形成されたケーシングと、
上記ケーシングの加熱通路に配設され、該加熱通路を流れる空調用空気を加熱する電気式ヒータと、
上記ケーシングの内部に配設され、上記加熱通路及び上記バイパス通路の少なくとも一方を開閉することによって上記加熱通路を流れる空気量と上記バイパス通路を流れる空気量とを変更し、該ケーシングから吹き出す吹出空気の温度を調整するエアミックスダンパと、
上記電気式ヒータを通過した後の空調用空気の温度を検出する下流側温度センサと、
上記電気式ヒータ及び上記エアミックスダンパを制御する制御装置とを備え、
上記制御装置は、上記エアミックスダンパの開度を得て、該エアミックスダンパの開度が暖房側にあるときには冷房側にあるときに比べて該電気式ヒータへの電力供給量を多くするように構成された車両用空調装置において、
上記制御装置は、上記エアミックスダンパの開度と、上記下流側温度センサにより検出された温度とに基づいて上記電気式ヒータへの電力供給量を最終的に決定し、上記下流側温度センサにより検出された温度と、第1所定温度とを比較し、上記下流側温度センサにより検出された温度が第1所定温度以上と判定した場合には、上記エアミックスダンパの開度に基づいて決定した目標暖房能力よりも低い暖房能力となるように上記電気式ヒータに電力を供給する一方、上記下流側温度センサにより検出された温度が第1所定温度よりも低いと判定した場合には、上記エアミックスダンパの開度に基づいて決定した目標暖房能力となるように上記電気式ヒータに電力を供給するように構成されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用空調装置において、
上記制御装置は、上記下流側温度センサにより検出された温度と、第1所定温度よりも高い第2所定温度とを比較し、上記下流側温度センサにより検出された温度が第2所定温度以上と判定した場合には、上記電気式ヒータへの電力供給を遮断するように構成されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用空調装置において、
上記電気式ヒータを通過する前の空調用空気の温度を検出する上流側温度センサを備え、
上記制御装置は、上記上流側温度センサによる検出された温度と、第3所定温度とを比較し、上記上流側温度センサにより検出された温度が第3所定温度以上と判定した場合には、上記エアミックスダンパの開度に基づいて決定した目標暖房能力よりも低い暖房能力となるように上記電気式ヒータに電力を供給するように構成されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
請求項に記載の車両用空調装置において、
上記ケーシングの内部の加熱通路よりも空気流れ方向上流側に配設され、空調用空気を冷却する冷却用熱交換器を備え、
上記冷却用熱交換器には、該冷却用熱交換器の表面温度を検出する冷却用熱交換器温度センサが設けられ、
上記冷却用熱交換器温度センサが上記上流側温度センサであることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項5】
請求項に記載の車両用空調装置において、
車室内の空気温度を検出する内気温度センサと、
車室外の空気温度を検出する外気温度センサと、
車室内の空気と車室外の空気との一方を選択して上記ケーシングに導入する内外気切替部とを備え、
上記内外気切替部により車室内の空気を上記ケーシングに導入する場合には、上記内気温度センサを上記上流側温度センサとする一方、上記内外気切替部により車室外の空気を上記ケーシングに導入する場合には、上記外気温度センサを上記上流側温度センサとする
ことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、
上記電気式ヒータに入力する電流値を検出する電流値検出センサを備え、
上記制御装置は、上記電流値検出センサで検出された電流値が所定値よりも低い状態となるように電力を供給して上記電気式ヒータの暖房能力を増大させるように構成されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項7】
請求項1からのいずれか1つに記載の車両用空調装置において、
上記制御装置は、上記電気式ヒータに供給する電力量を段階的に変更し、供給電力量を増加させる際、先に供給電力量を増加させてから所定時間経過後に増加させるように構成されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、
上記制御装置は、上記電気式ヒータへの電力供給前に上記下流側温度センサにより検出された暖房開始前温度と、上記電気式ヒータへ電力供給が開始されて所定時間経過した後に上記下流側温度センサにより検出された暖房開始後温度とを比較し、暖房開始前温度と暖房開始後温度との差が所定温度よりも小さい場合には、上記電気式ヒータへの電力供給を遮断するように構成されていることを特徴とする車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等に搭載される車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば内燃機関を備えた車両では、内燃機関の冷却水を循環させて空調用空気を加熱するように構成された車両用空調装置が搭載されているが、内燃機関を備えていない車両、例えば電気自動車では、電気式ヒータにより空調用空気を加熱する車両用空調装置が搭載されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の空調装置では、空調用空気が導入されるケーシング内に電気式ヒータが配設されており、さらに、電気式ヒータの空気流れ方向下流側には、外部電源の供給によって蓄熱する蓄熱装置が配設されている。そして、乗員による温度調節レバーの操作に応じて電気式ヒータの暖房能力を変更し、また、電気式ヒータの空気流れ方向下流側の温度が所定値まで上昇すると電気式ヒータへの電力供給を遮断して過熱を防止するようにしている。この特許文献1の空調装置では、蓄熱装置を備えていることで電気式ヒータへの電力供給が遮断されても蓄熱装置からの放熱によって吹出空気の急な温度低下を抑制することが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−86148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように蓄熱装置を使用して吹出空気の急な温度低下を抑制するようにした場合、蓄熱装置を配設するためのスペースを確保しなければならず、空調装置の大型化を招く。
【0006】
本発明は、係る点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電気式ヒータの暖房能力を変更する場合に、蓄熱装置を配設しなくても吹出空気の急な温度低下を抑制できるようにして空調装置の小型化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、エアミックスダンパの開度と、電気式ヒータを通過した後の空調用空気の温度とに基づいて電気式ヒータへの電力供給量を決定するようにした。
【0008】
第1の発明は、空調用空気を加熱する加熱通路と、空調用空気が該加熱通路をバイパスして流れるバイパス通路とが内部に形成されたケーシングと、
上記ケーシングの加熱通路に配設され、該加熱通路を流れる空調用空気を加熱する電気式ヒータと、
上記ケーシングの内部に配設され、上記加熱通路及び上記バイパス通路の少なくとも一方を開閉することによって上記加熱通路を流れる空気量と上記バイパス通路を流れる空気量とを変更し、該ケーシングから吹き出す吹出空気の温度を調整するエアミックスダンパと、
上記電気式ヒータを通過した後の空調用空気の温度を検出する下流側温度センサと、
上記電気式ヒータ及び上記エアミックスダンパを制御する制御装置とを備え、
上記制御装置は、上記エアミックスダンパの開度を得て、該エアミックスダンパの開度が暖房側にあるときには冷房側にあるときに比べて該電気式ヒータへの電力供給量を多くするように構成された車両用空調装置において、
上記制御装置は、上記エアミックスダンパの開度と、上記下流側温度センサにより検出された温度とに基づいて上記電気式ヒータへの電力供給量を最終的に決定し、上記下流側温度センサにより検出された温度と、第1所定温度とを比較し、上記下流側温度センサにより検出された温度が第1所定温度以上と判定した場合には、上記エアミックスダンパの開度に基づいて決定した目標暖房能力よりも低い暖房能力となるように上記電気式ヒータに電力を供給する一方、上記下流側温度センサにより検出された温度が第1所定温度よりも低いと判定した場合には、上記エアミックスダンパの開度に基づいて決定した目標暖房能力となるように上記電気式ヒータに電力を供給するように構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
この構成によれば、エアミックスダンパが例えば加熱通路の開度を大きくする状態にあるとき、即ち暖房側にあるときには、冷房側にあるときに比べて電気式ヒータへの電力供給量が多くなるので暖房能力が高まり、乗員の快適性が確保される。
【0010】
一方、エアミックスダンパが例えば加熱通路の開度を小さくする状態にあるとき、即ち冷房側にあるときには、暖房側にあるときに比べて電気式ヒータへの電力供給量が少なくなる。
【0011】
そして、下流側温度センサにより検出された温度が所定温度よりも高い場合には、電気式ヒータへの電力供給量を少なくすることが可能になる。これにより、電気式ヒータへの電力供給を遮断することなく、暖房能力の変更が可能になるので、従来例のような蓄熱装置は不要になる。
【0012】
また、上記下流側温度センサにより検出された温度と、第1所定温度とを比較し、上記下流側温度センサにより検出された温度が第1所定温度以上と判定した場合には、上記エアミックスダンパの開度に基づいて決定した目標暖房能力よりも低い暖房能力となるように上記電気式ヒータに電力を供給する一方、上記下流側温度センサにより検出された温度が第1所定温度よりも低いと判定した場合には、上記エアミックスダンパの開度に基づいて決定した目標暖房能力となるように上記電気式ヒータに電力を供給するようにしている。
【0013】
この構成によれば、下流側温度センサにより検出された温度が第1所定温度以上の場合は、電気式ヒータの温度が高めであると推定され、この場合に目標暖房能力よりも低い暖房能力となるように電気式ヒータに電力を供給することで、ケーシング等の過熱を抑制することが可能になる。
【0014】
一方、下流側温度センサにより検出された温度が第1所定温度よりも低いと判定した場合には、そのような過熱の恐れが低いことから、暖房能力を優先して電気式ヒータに電力を供給することで乗員の快適性を確保することが可能になる。
【0015】
の発明は、第の発明において、
上記制御装置は、上記下流側温度センサにより検出された温度と、第1所定温度よりも高い第2所定温度とを比較し、上記下流側温度センサにより検出された温度が第2所定温度以上と判定した場合には、上記電気式ヒータへの電力供給を遮断するように構成されていることを特徴とするものである。
【0016】
この構成によれば、下流側温度センサにより検出された温度が第2所定温度以上の場合には、電気式ヒータが過熱状態にある可能性が高く、この場合に電気式ヒータへの電力供給を遮断することで、ケーシング等の過熱を抑制することが可能になる。
【0017】
の発明は、第1または2の発明において、
上記電気式ヒータを通過する前の空調用空気の温度を検出する上流側温度センサを備え、
上記制御装置は、上記上流側温度センサによる検出された温度と、第3所定温度とを比較し、上記上流側温度センサにより検出された温度が第3所定温度以上と判定した場合には、上記エアミックスダンパの開度に基づいて決定した目標暖房能力よりも低い暖房能力となるように上記電気式ヒータに電力を供給するように構成されていることを特徴とするものである。
【0018】
この構成によれば、電気式ヒータを通過する前の空調用空気の温度が第3所定温度以上場合には、既に空調用空気の温度が高くなっていると推定され、この場合には暖房能力が低くて済むので、目標暖房能力よりも低い暖房能力となるように電気式ヒータに電力を供給することで消費電力を低減することが可能になる。
【0019】
の発明は、第の発明において、
上記ケーシングの内部の加熱通路よりも空気流れ方向上流側に配設され、空調用空気を冷却する冷却用熱交換器を備え、
上記冷却用熱交換器には、該冷却用熱交換器の表面温度を検出する冷却用熱交換器温度センサが設けられ、
上記冷却用熱交換器温度センサが上記上流側温度センサであることを特徴とするものである。
【0020】
この構成によれば、冷却用熱交換器温度センサを上流側温度センサとしても用いることにより、部品点数の増加を抑制することが可能になる。
【0021】
の発明は、第の発明において、
車室内の空気温度を検出する内気温度センサと、
車室外の空気温度を検出する外気温度センサと、
車室内の空気と車室外の空気との一方を選択して上記ケーシングに導入する内外気切替部とを備え、
上記内外気切替部により車室内の空気を上記ケーシングに導入する場合には、上記内気温度センサを上記上流側温度センサとする一方、上記内外気切替部により車室外の空気を上記ケーシングに導入する場合には、上記外気温度センサを上記上流側温度センサとすることを特徴とするものである。
【0022】
この構成によれば、内気温度センサ及び外気温度センサを上流側温度センサとしても用いることにより、部品点数の増加を抑制することが可能になる。
【0023】
の発明は、第1からのいずれか1つの発明において、
上記電気式ヒータに入力する電流値を検出する電流値検出センサを備え、
上記制御装置は、上記電流値検出センサで検出された電流値が所定値よりも低い状態となるように電力を供給して上記電気式ヒータの暖房能力を増大させるように構成されていることを特徴とするものである。
【0024】
この構成によれば、電気式ヒータが低温状態にあるときの突入電流値を低くして電気回路を容易に構成できるようにしながら、暖房能力を増大させて乗員の快適性を確保することが可能になる。
【0025】
の発明は、第1からのいずれか1つの発明において、
上記制御装置は、上記電気式ヒータに供給する電力量を段階的に変更し、供給電力量を増加させる際、先に供給電力量を増加させてから所定時間経過後に増加させるように構成されていること特徴とするものである。
【0026】
この構成によれば、電気式ヒータの突入電流値を低くすることが可能になるので、電気回路の構成が容易になる。
【0027】
の発明は、第1からのいずれか1つの発明において、
上記制御装置は、上記電気式ヒータへの電力供給前に上記下流側温度センサにより検出された暖房開始前温度と、上記電気式ヒータへ電力供給が開始されて所定時間経過した後に上記下流側温度センサにより検出された暖房開始後温度とを比較し、暖房開始前温度と暖房開始後温度との差が所定温度よりも小さい場合には、上記電気式ヒータへの電力供給を遮断するように構成されていることを特徴とするものである。
【0028】
この構成によれば、電気式ヒータへの電力供給前の温度と、供給開始後の温度との差が小さい場合には、例えばブロアやエアミックスダンパ等の故障によって空調用空気が電気式ヒータに送風されない状態となっている可能があり、この場合に電気式ヒータへの電力供給を遮断することにより、異常な温度上昇を抑制することが可能になる。
【発明の効果】
【0029】
第1の発明によれば、エアミックスダンパの開度と、電気式ヒータを通過した後の空調用空気の温度とに基づいて電気式ヒータへの電力供給量を最終的に決定するようにしたので、電気式ヒータへの電力供給を遮断することなく、暖房能力を変更することができる。これにより、蓄熱装置を用いなくても乗員の快適性を損わないようにすることができ、空調装置を小型化することができる。
【0030】
また、電気式ヒータを通過した後の空調用空気の温度が高めの場合に電気式ヒータに供給する電力量を少なくすることができるので、各部の過熱を抑制することができる。また、電気式ヒータを通過した後の空調用空気の温度がそれほど高くない場合に十分な暖房性能を得ることができ、乗員の快適性を確保することができる。
【0031】
の発明によれば、電気式ヒータを通過した後の空調用空気の温度が、第2所定温度以上の場合に電気式ヒータへの電力供給を遮断するようにしたので、各部の過熱を抑制することができる。
【0032】
の発明によれば、電気式ヒータを通過する前の空調用空気の温度が既に高くなっている場合に電気式ヒータに供給する電力量を少なくすることができる。これにより、乗員の快適性を確保しながら、消費電力を低減することができる。
【0033】
の発明によれば、冷却用熱交換器温度センサを上流側温度センサとして用いることにより、部品点数の増加を抑制することができ、低コスト化を図ることができる。
【0034】
の発明によれば、内気温度センサ及び外気温度センサをを上流側温度センサとして用いることにより、部品点数の増加を抑制することができ、低コスト化を図ることができる。
【0035】
の発明によれば、電気式ヒータの電流値が所定値よりも低い状態となるように電力を供給しながら暖房能力を増大させるようにしたので、電気回路を容易に構成できるとともに、乗員の快適性を確保することができる。
【0036】
の発明によれば、電気式ヒータへの供給電力量を増加させる際、所定時間経過毎に段階的に供給電力量を増加させることができる。これにより、電気式ヒータの突入電流値を低くすることができ、電気回路の構成を容易にできる。
【0037】
の発明によれば、電気式ヒータへの電力供給前の温度と、供給開始後の温度との差が小さい場合に電気式ヒータへの電力供給を遮断するようにしたので、電気式ヒータの異常な温度上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の実施形態に係る車両用空調装置の概略構造を示す図である。
図2】車両用制御装置のブロック図である。
図3】電気式ヒータの斜視図である。
図4】制御装置による制御のフローチャートである。
図5】エアミックスダンパの開度と電気式ヒータの暖房能力との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0040】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用空調装置1の概略構造を示す図である。この車両用空調装置1は、例えば自動車等の車両に搭載されるものであり、車室内または車室外の空気を導入して所望温度の空調風を生成した後、車室の各部に供給することができるようになっている。
【0041】
尚、この空調装置1が搭載される車両は、走行用モータ(図示せず)とバッテリBとを備えた電気自動車である。
【0042】
車両用空調装置1は、室外ユニット2と、室内ユニット3と、室外ユニット2及び室内ユニット3を制御する制御装置4とを備えている。室外ユニット2は、例えば走行用モータが搭載されるモータルームに配設されており、冷凍サイクル装置の構成要素である凝縮器10及び電動コンプレッサ11と、凝縮器10に空気を送る送風機12とを備えている。電動コンプレッサ11は、制御装置4によってON及びOFFの切替と、回転数の変更とが行われる。電動コンプレッサ11にはバッテリBから電力が供給される。
【0043】
室内ユニット3は、ケーシング20と、ケーシング20の内部に収容されるブロア21と、冷却用熱交換器22と、電気式ヒータ23と、内外気切替ダンパ24と、エアミックスダンパ25と、吹出方向切替ダンパ26とを備えている。
【0044】
ケーシング20の内部には空気通路が形成されている。ケーシング20の空気流れ方向上流側には、内外気切替部30が設けられている。内外気切替部30には、車室内の空気をケーシング20の内部に導入するための内気取入口31と、車室外の空気をケーシング20の内部に導入するための外気取入口32とが形成されている。
【0045】
上記内外気切替ダンパ24は、内外気切替部30の内部に配設されており、内気取入口31と外気取入口32との一方を開放し、他方を閉塞するように構成されている。
【0046】
ブロア21は、ケーシング20の内部において内外気切替ダンパ24よりも下流側に配置されている。ブロア21は、ブロアモータ28により回転駆動される。
【0047】
ケーシング20の内部には、該ケーシング20の内部に導入された空調用空気を冷却するための冷却通路R1と、空調用空気を加熱するための加熱通路R2と、空調用空気が該加熱通路R2をバイパスして流れるバイパス通路R3と、加熱通路R2及びバイパス通路R3を流れた空気を混合させるエアミックス空間R4とが形成されている。
【0048】
詳しくは、冷却通路R1はブロア21の下流側に形成されている。冷却通路R1の下流側は2つに分岐しており、そのうちの一方に加熱通路R2の上流側が接続され、他方にバイパス通路R3の上流側が接続されている。また、加熱通路R2の下流側及びバイパス通路R3の下流側がエアミックス空間R4に接続されている。さらに、エアミックス空間R4の下流側は3つに分岐しており、デフロスタ吹出口33、ベント吹出口34、ヒート吹出口35に接続されている。
【0049】
上記冷却用熱交換器22は、冷却通路R1に配置されている。ケーシング20に導入された空調用空気の全量が冷却用熱交換器22を通過する。冷却用熱交換器22は、冷凍サイクル装置の構成要素としての蒸発器である。また、この冷却用熱交換器22には、膨張弁装置37が設けられており、凝縮器10から排出された冷媒は膨張弁装置37を通過して減圧されてから冷却用熱交換器22に流入するようになっている。冷却用熱交換器22を循環した冷媒は電動コンプレッサ11に吸入される。
【0050】
冷却用熱交換器22には、該冷却用熱交換器22の表面温度を検出するための表面温度検出センサ(冷却用熱交換器温度センサ)40が設けられている。図2にも示すように、表面温度検出センサ40は、制御装置4に接続されており、検出した温度を制御装置4に対して出力するようになっている。
【0051】
電気式ヒータ23は、図3に示すように、第1〜第6発熱ユニット51〜56と、多数のフィン57と、電極ホルダ58とを備えている。第1〜第6発熱ユニット51〜56は、電気式ヒータ23の幅方向に順に並んでおり、これら第1〜第6発熱ユニット51〜56の間にフィン57が配設されており、空調用空気が通過するようになっている。
【0052】
第1〜第6発熱ユニット51〜56は同じものである。各ユニット51〜56の内部には、電流を流すことによって発熱するPTC素子が設けられている。
【0053】
第1〜第6発熱ユニット51〜56は3つのグループに分けられている。すなわち、第1及び第2発熱ユニット51,52には、第1陽極側電極58aと、陰極側電極58dとが接続されている。また、第3及び第4発熱ユニット53,54には、第2陽極側電極58bと、陰極側電極58dとが接続されている。さらに、第5及び第6発熱ユニット55,56には、第3陽極側電極58cと、陰極側電極58dとが接続されている。
【0054】
第1〜第3陽極側電極58a〜58c及び陰極側電極58dは制御装置4に接続されており、第1〜第3陽極側電極58a〜58cには独立して電力を供給するようになっている。第1陽極側電極58aに電力を供給することで、第1及び第2発熱ユニット51,52が発熱し、また、 第1陽極側電極58a及び第2陽極側電極58bに電力を供給することで第1〜第4発熱ユニット51〜54が発熱し、また、第1〜第3陽極側電極58a〜58cに電力を供給することで第1〜第6発熱ユニット51〜56が発熱する。このように電気式ヒータ23の暖房能力は3段階に調節することができる。
【0055】
図1に示すように、電気式ヒータ23には、該電気式ヒータ23に入力する電流値を検出する電流値検出センサ23aが設けられている。この電流値検出センサ23aは、制御装置4に接続されており、検出した電流値を制御装置4に対して出力するようになっている。
【0056】
ケーシング20の内部には、電気式ヒータ23を通過した後の空調用空気の温度を検出する下流側温度センサ41が電気式ヒータ23の空気流れ方向下流側に配設されている。この下流側温度センサ41は、制御装置4に接続されており、検出した温度を制御装置4に対して出力するようになっている。
【0057】
エアミックスダンパ25は、加熱通路R2及びバイパス通路R3の一部である上流端開口を開閉するように構成されている。エアミックスダンパ25は、空調装置1の構成要素であるアクチュエータ42により駆動されるようになっている。アクチュエータ42は制御装置4に接続され、制御装置4から出力される信号によって動作する。
【0058】
図1に実線で示すように、エアミックスダンパ25を、加熱通路R2を全閉にするまで動作させると、冷却通路R1を流通した空調用空気は全量がバイパス通路R3を流れてエアミックス空間R4に流入する。一方、図1に仮想線で示すようにエアミックスダンパ25を、バイパス通路R3を全閉にするまで動作させると、冷却通路R1を流通した空調用空気は全量が加熱通路R2を流れてエアミックス空間R4に流入する。このエアミックスダンパ25の動作により、加熱通路R2及びバイパス通路R3の開度を調整してエアミックス空間R4に流入する冷風量と温風量とが変更される。
【0059】
この実施形態では、エアミックスダンパ25の開度を加熱通路R2の開度で表すこととする。例えば、エアミックスダンパ25の開度が100%とは、加熱通路R2の開度が100%で、かつ、冷却通路R1の開度が0%であり、エアミックスダンパ25の開度が0%とは、加熱通路R2の開度が0%で、かつ、冷却通路R1の開度が100%である。エアミックスダンパ25の開度は、0%〜100%の間で任意の値に設定することができるようになっている。
【0060】
エアミックス空間R4では、冷風と温風とが混ざり、これにより調和空気が生成される。
【0061】
エアミックス空間R4で生成された調和空気は、吹出方向切替ダンパ26の開閉状態に応じて車室の各部に供給される。このときの吹出モードとしては、例えばデフロスタモードやベントモード、ヒートモード等がある。
【0062】
また、上記車両には、車室内に配設されて車室内の空気温度を検出する内気温度センサ60と、車室外に配設されて車室外の空気温度を検出する外気温度センサ61とが設けられている。内気温度センサ60及び外気温度センサ61は、車両用空調装置1の構成要素である。内気温度センサ60及び外気温度センサ61は制御装置4に接続されており、検出した温度を制御装置4に対して出力するようになっている。
【0063】
制御装置4は、冷凍サイクル装置を制御するとともに、ブロア21、電気式ヒータ23、アクチュエータ42も制御する。冷凍サイクル装置の制御では、基本的には、空調負荷(冷房負荷)に応じて電動コンプレッサ11のON、OFFの切替と、回転数を制御する。このとき、表面温度検出センサ40の出力信号から冷却用熱交換器22の表面温度を得て、これに基づいて電動コンプレッサ11を制御する。
【0064】
また、強めの空調が要求される場合にはブロアモータ28への印加電圧を増大させてブロア21の回転数を高める。強めの空調が要求されているか否かは、例えば、乗員による設定温度、車室内の空気温度、車室外の空気温度等に基づいて制御装置4が周知の手順に従って判定する。
【0065】
また、制御装置4は、乗員による設定温度、車室内の空気温度、車室外の空気温度等に基づいてエアミックスダンパ25の目標開度を演算する。例えば、夏季のように外気温度が高く、かつ、乗員の設定温度が低い場合には、エアミックスダンパ25の開度を例えば0%〜20%の範囲にして急速冷房を行い、また、冬季のように外気温度が低く、かつ、乗員の設定温度が高い場合には、エアミックスダンパ25の開度を例えば80%〜100%の範囲にして急速暖房を行う。また、急速暖房や急速冷房が必要ない状況では、エアミックスダンパ25の開度を20%〜80%の範囲にすることで、弱冷房や弱暖房を行う。
【0066】
また、制御装置4は、基本的には、上記演算したエアミックスダンパ25の目標開度を得て、該エアミックスダンパ25の目標開度が暖房側(50%以上100%以下)にあるときには冷房側(0%以上50未満)にあるときに比べて電気式ヒータ23への電力供給量を多くするようにしているが、電気式ヒータ23への電力供給量を最終的にどの程度にするかについては、エアミックスダンパ25の目標開度と、下流側温度センサ41により検出された温度とに基づいて決定している。
【0067】
制御装置4による電気式ヒータ23への電力供給量の決定要領について、図4に示すフローチャートに基づいて説明する。尚、この制御は、空調装置1が作動を開始した直後からスタートし、空調装置1の作動中は繰り返し行われる。
【0068】
フローチャートのスタート後のステップS1では、上記のようにして得られたエアミックスダンパ25の目標開度(MIX)を読み込むとともに、表面温度検出センサ40で検出された温度(TE)、即ち、冷却用熱交換器22の表面温度を読み込む。このTEは、電気式ヒータ23を通過する前の空調用空気の温度である。
【0069】
ステップS1に続くステップS2では、エアミックスダンパ25の目標開度(MIX)に基づいて電気式ヒータ23の目標暖房能力(HA)を決定する。
【0070】
具体的には、図5に示すように、エアミックスダンパ25の目標開度(MIX)が0%以上25%未満の場合には、目標暖房能力(HA)は0とし、電気式ヒータ23へ電力を供給しない(電気式ヒータ23のOFF)。エアミックスダンパ25の目標開度(MIX)が25%以上45%未満の場合には、目標暖房能力(HA)は最低暖房能力とし、電気式ヒータ23の第1及び第2発熱ユニット51,52にのみ電力を供給する。このときの目標開度(MIX)は、OFF状態にある電気式ヒータ23を最低暖房能力にする場合に適用される。尚、図5における縦軸は、電気式ヒータ23の下流側の空調用空気の温度であり、下流側温度センサ41の出力値に対応している。
【0071】
エアミックスダンパ25の目標開度(MIX)が45%以上85%未満の場合には、目標暖房能力(HA)は中間暖房能力とし、電気式ヒータ23の第1及び第2発熱ユニット51、52と、第5及び第6発熱ユニット55、56にのみ電力を供給する。このときの目標開度(MIX)は、電気式ヒータ23を最低暖房能力から中間暖房能力にする場合に適用される。
【0072】
エアミックスダンパ25の目標開度(MIX)が85%以上100%以下の場合には、目標暖房能力(HA)は最大暖房能力とし、電気式ヒータ23の第1〜第6発熱ユニット51〜56に電力を供給する。このときの目標開度(MIX)は、電気式ヒータ23を中間暖房能力から最大暖房能力にする場合に適用される。
【0073】
一方、電気式ヒータ23が最低暖房能力にあるときにOFFにする場合には、エアミックスダンパ25の開度が20%以下にならなければOFFにしない。また、電気式ヒータ23が中間暖房能力にあるときに最低暖房能力にする場合には、エアミックスダンパ25の開度が40%以下にならなければ最低暖房能力にしない。さらに、電気式ヒータ23が最大暖房能力にあるときに中間暖房能力にする場合には、エアミックスダンパ25の開度が85%以下にならなければ中間暖房能力にしない。
【0074】
ステップS3では、ステップS2で得られた目標暖房能力(HA)が0か否か判定する。ステップS3でYESと判定されて目標暖房能力(HA)が0である場合にはリターンに進む。一方、ステップS3でNOと判定されて目標暖房能力(HA)が0以外(最低暖房能力、中間暖房能力、最大暖房能力)である場合にはステップS4に進む。
【0075】
ステップS4では、下流側温度センサ41の出力値(T1)を読み込む。このときの空調用空気の温度は、電気式ヒータ23に電力が供給される前の温度である。
【0076】
ステップS5では、ステップS2で得られた目標暖房能力(HA)となるように電気式ヒータ23に電力を供給する。すなわち、目標暖房能力(HA)が最低暖房能力であれば、第1及び第2発熱ユニット51、52にのみ電力を供給し、中間暖房能力であれば第1及び第2発熱ユニット51、52と、第5及び第6発熱ユニット55、56にのみ電力を供給し、最大暖房能力であれば第1〜第6発熱ユニット51〜56に電力を供給する。
【0077】
電気式ヒータ23に電力を供給した後、ステップS6に進む。ステップS6では、電気式ヒータ23に電力を供給して所定時間経過した後の下流側温度センサ41の出力値(T2)を読み込む。所定時間とは例えば1分間であるが、この時間は1分間に限られるものではなく、電力供給が開始された電気式ヒータ23の温度上昇を検出できる程度の時間であればよい。
【0078】
ステップS7では、電力供給前の温度(T2)から電力供給後の温度(T1)を差し引いた値が所定の判定値よりも小さい値であるか否かを判定する。所定の判定値としては、例えば5℃〜10℃くらいに設定すればよい。ステップS7でYESと判定された場合には、T1とT2との温度差が小さいということである。すなわち、電気式ヒータ23に電力の供給を開始しても下流側の温度上昇がほとんど見られないということであり、この場合、加熱通路R2に空調用空気が流れていないと推定される。原因としては、例えばブロア21やブロアモータ28の故障や、エアミックスダンパ25やアクチュエータ42の故障による加熱通路R2の閉鎖等がある。この場合には、電気式ヒータ23が過熱してケーシング20が溶融することが考えられるので、ステップS8に進んで電気式ヒータ23への電力供給を遮断する。そしてリターンに進む。
【0079】
ステップS7でNOと判定されてT1とT2との温度差が大きい場合には、空調用空気が正常に送風されていると推定される。この場合、次のステップS9に進む。ステップS9では、再び下流側温度センサ41の出力値(T3)、即ち、電気式ヒータ23の下流側の空調用空気の温度を読み込む。
【0080】
その後、ステップS10に進み、下流側温度センサ41の出力値(T3)が100℃(第2所定温度)以上であるか否かを判定する。ステップS10でYESと判定されてT3が100℃以上である場合には、電気式ヒータ23の温度が高すぎてケーシング20が溶融することが考えられるので、ステップS8に進んで電気式ヒータ23への電力供給を遮断する。そしてリターンに進む。
【0081】
ステップS10でNOと判定されてT3が100℃よりも低い場合には、ケーシング20が溶融する恐れがないので、電気式ヒータ23への電力供給を継続したまま、ステップS11に進む。
【0082】
上記ステップS10における判定温度は一例であり、ケーシング20が溶融したり、損傷する恐れがある最低温度とすればよい。例えば、90℃であってもよいし、110℃であってもよい。
【0083】
ステップS11では、表面温度検出センサ40で検出された温度(TE)が25℃(第3所定温度)以上であるか否かを判定する。ステップS11でYESと判定されてTEが25℃以上である場合には、電気式ヒータ23を通過する前の空調用空気の温度が十分に高く、暖房が弱くてもよい状況であると推定されるので、ステップS12に進んで目標暖房能力(HA)よりも低い暖房能力として電気式ヒータ23に電力を供給する。すなわち、例えば、目標暖房能力(HA)が最大暖房能力である場合には、1段階低い中間暖房能力となるように電力を供給する。
【0084】
ステップS11でNOと判定されてTEが25℃よりも低い場合には、ある程度強めの暖房が必要である。この場合、ステップS13に進み、下流側温度センサ41の出力値(T3)が80℃(第1所定温度)以上であるか否かを判定する。ステップS13でYESと判定されてT3が80℃以上である場合には、電気式ヒータ23を通過した空気が若干高めであるということであり、この場合、ステップS12に進んで目標暖房能力(HA)よりも低い暖房能力として電気式ヒータ23に電力を供給する。
【0085】
ステップS13でNOと判定されてT3が80℃よりも低い場合には、ステップS14に進み、下流側温度センサ41の出力値(T3)が70℃よりも低いか否かを判定する。ステップS14でYESと判定されてT3が70℃よりも低い場合には、電気式ヒータ23を通過した空気が適度に加熱されているということであり、この場合、ステップS15に進んで目標暖房能力(HA)となるように電気式ヒータ23に電力を供給する。
【0086】
ステップS14でNOと判定されてT3が70℃以上である場合には、ステップS16に進み、当該処理が空調装置1が作動を開始して最初の処理であるか否かを判定する。ステップS16でYESと判定されて当該処理が最初の処理である場合には、ステップS15に進んで目標暖房能力(HA)となるように電気式ヒータ23に電力を供給する。
【0087】
ステップS16でNOと判定された場合には、ステップS17に進んで現在の電気式ヒータ23の目標暖房能力(HA)を維持し、リターンに進む。
【0088】
この制御装置4は、上記フローにおいて電気式ヒータ23の暖房能力を変更する必要が生じた場合、前回変更してから20秒(所定時間)以上経過しなければ暖房能力の変更を行わないように構成されている。このようにすることで、電気式ヒータ23の各PTC素子の温度が上昇した後に電力が供給されることになるので、電流値が極めて高くなる現象、即ち突入電流を低く抑えることができる。上記所定時間は、20秒に限られるものではなく、電気式ヒータ23の突入電流を低く抑えることができればよいので、10秒や30秒程度であってもよい。
【0089】
また、制御装置4は、電流値検出センサ23aの値を得て、電流値検出センサ23aで検出された電流値が所定値よりも低い状態となるように電気式ヒータ23に電力を供給して電気式ヒータ23の暖房能力を増大させるように構成されている。
【0090】
すなわち、電力を供給する前のPTC素子の温度は低く、温度が低いPTC素子に電力を供給すると突入電流が大きくなる恐れがある。この突入電流に対応するには、ヒューズ等の設定が難しく電気回路の構成が困難になることが考えられる。本実施形態では、電気式ヒータ23の電流値が所定値となるように徐々に温度を高めていくようにしているので、突入電流が生じることはなく、電気回路の構成が容易に行えるようになる。この場合の所定値とは、突入電流が生じないようにする値である。
【0091】
以上説明したように、この実施形態に係る車両用空調装置1によれば、図5に示すようにエアミックスダンパ25が加熱通路R2の開度を大きくする状態にあるとき、即ち暖房側にあるときには、冷房側にあるときに比べて電気式ヒータ23への電力供給量が多くなるので暖房能力が高まり、乗員の快適性を確保できる。
【0092】
一方、エアミックスダンパ25が加熱通路R2の開度を小さくする状態にあるとき、即ち冷房側にあるときには、暖房側にあるときに比べて電気式ヒータ23への電力供給量が少なくなる。
【0093】
そして、図4のステップS13において下流側温度センサ41により検出された温度(T3)が所定温度(80℃)よりも高い場合には、電気式ヒータ23への電力供給量を少なくすることができる。これにより、電気式ヒータ25への電力供給を遮断することなく、暖房能力の変更が可能になるので、従来例のような蓄熱装置を用いなくても乗員の快適性を損わないようにすることができ、空調装置を小型化することができる。
【0094】
また、図4のステップS13において下流側温度センサ41により検出された温度(T3)が所定温度(80℃)以上の場合は、電気式ヒータ23の温度が高めであると推定される。この場合にステップS12において目標暖房能力(HA)よりも低い暖房能力にして電気式ヒータ23に電力を供給することで、ケーシング20等の過熱を抑制することができる。
【0095】
一方、ステップS13において、下流側温度センサ41により検出された温度(T3)が所定温度(80℃)よりも低いと判定した場合には、そのような過熱の恐れが低いことから、暖房能力を優先して電気式ヒータ23に電力を供給することで乗員の快適性を確保することができる。
【0096】
また、ステップS10において下流側温度センサ41により検出された温度(T3)が所定温度(100℃)以上と判定された場合には、電気式ヒータ23が過熱状態にある可能性が高く、この場合にステップS8で電気式ヒータ23への電力供給を遮断することで、ケーシング20等の過熱を抑制することができる。
【0097】
また、ステップS11において電気式ヒータ23を通過する前の空調用空気の温度が所定温度(25℃)以上である場合には、既に空調用空気の温度が高くなっているということであり、この場合には暖房能力が低くて済むので、ステップS12において目標暖房能力(HA)よりも低い暖房能力として電気式ヒータ23に電力を供給することで消費電力を低減することができる。
【0098】
また、本実施形態では、冷凍サイクル装置を制御するために設けられている表面温度検出センサ40用いて、電気式ヒータ23を通過する前の空調用空気の温度(TE)を検出するようにしている。これにより、部品点数の増加を抑制することができ、低コスト化を図ることができる。
【0099】
また、電気式ヒータ23を通過する前の空調用空気の温度(TE)を検出するために専用の温度センサ(上流側温度センサ)を設けてもよい。
【0100】
また、内外気切替部30により車室内の空気をケーシング20に導入する場合には、内気温度センサ60を上流側温度センサとする一方、内外気切替部30により車室外の空気をケーシング20に導入する場合には、外気温度センサ61を上流側温度センサとして用いるようにしてもよい。この場合、電気式ヒータ23を通過する前の空調用空気の温度(TE)を検出するために専用の温度センサを設けずに済むので、低コスト化を図ることができる。
【0101】
また、本実施形態では、電気式ヒータ23に入力する電流値を検出する電流値検出センサ23aを設け、電流値検出センサ23aで検出された電流値が所定値よりも低い状態となるように電力を供給して暖房能力を増大させるようにしている。これにより、電気式ヒータ23が低温状態にあるときの突入電流値を低くして電気回路を容易に構成できるようにしながら、暖房能力を増大させて乗員の快適性を確保することができる。
【0102】
また、電気式ヒータ23に供給する電力量を3段階で変更するようにしており、供給電力量を増加させる際、所定時間(20秒)経過毎に供給電力量を増加させるようにしている。このことによっても、電気式ヒータ23が低温状態にあるときの突入電流値を低くして電気回路を容易に構成できる。
【0103】
また、ステップS7において電気式ヒータ23への電力供給前の温度(T1)と、供給開始後の温度(T2)との差が小さい場合には、電気式ヒータ23への電力供給を遮断するようにしている。これにより、例えばブロア21やエアミックスダンパ25等の故障によって空調用空気が電気式ヒータ23に送風されない状態となっている場合を推定することができ、電気式ヒータ23の異常な温度上昇を抑制することができる。
【0104】
尚、上記実施形態では、電気式ヒータ23の暖房能力を、最低暖房能力、中間暖房能力、最大暖房能力の3段階に変更可能に構成しているが、これに限らず、2段階であってもよいし、4段階以上であってもよい。
【0105】
また、本発明は、例えば、エンジンと走行用モータとを備えたハイブリッド自動車の空調装置にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
以上説明したように、本発明に係る車両用空調装置は、例えば、電気自動車の空調装置として使用できる。
【符号の説明】
【0107】
1 車両用空調装置
4 制御装置
20 ケーシング
23 電気式ヒータ
23a 電流値検出センサ
25 エアミックスダンパ
40 表面温度検出センサ(冷却用熱交換器温度センサ、上流側温度センサ)
41 下流側温度センサ
60 内気温度センサ(上流側温度センサ)
61 外気温度センサ(上流側温度センサ)
R1 冷却通路
R2 加熱通路
R3 バイパス通路
図1
図2
図3
図4
図5