特許第5960478号(P5960478)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5960478
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】ラミネート装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 63/02 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
   B29C63/02
【請求項の数】3
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2012-82877(P2012-82877)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-212597(P2013-212597A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2015年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】501315762
【氏名又は名称】株式会社サカエ
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】益子 喜雄
(72)【発明者】
【氏名】三友 康至
(72)【発明者】
【氏名】松本 弘一
【審査官】 田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−196089(JP,A)
【文献】 特開平9−99486(JP,A)
【文献】 特開2003−334859(JP,A)
【文献】 特開平3−110129(JP,A)
【文献】 特開平1−139906(JP,A)
【文献】 特開2005−199911(JP,A)
【文献】 特開2009−160911(JP,A)
【文献】 特開2008−213150(JP,A)
【文献】 特開2000−158535(JP,A)
【文献】 特開2005−323731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱溶融性接着剤が塗布されたラミネートフィルムとシートとを重ねて貼り合わせるラミネート装置であって、
内部に前記ラミネートフィルムとシートとのラミネート処理対象が搬送される搬送路を有する装置筐体と、
この装置筐体内の搬送路に対応して設けられ、少なくとも前記ラミネートフィルムとシートとを重ねて搬送しながら熱圧着する熱圧着搬送装置と、
前記装置筐体内のうち前記ラミネート処理対象の搬送方向に対し対構成の圧着搬送装置の配設位置を含んで搬送路の入口側に設けられ、前記ラミネート処理対象の厚み及び位置を検出する入口側検出器と、
前記装置筐体内のうち前記ラミネート処理対象の搬送方向に対し対構成の圧着搬送装置よりも搬送路の出口側に設けられ、前記ラミネート処理対象の位置を検出する出口側検出器と、
前記入口側検出器及び前記出口側検出器の前記ラミネート処理対象の厚み及び位置に関する検出出力に基づいて前記熱圧着搬送装置を制御する制御装置と、を備え、
前記熱圧着搬送装置は、
少なくとも一方が中空ロール状に形成され且つ前記ラミネートフィルムとシートとを挟持搬送する対構成の圧着搬送部材と、
対構成の圧着搬送部材のうち中空ロール状に形成された圧着搬送部材に内蔵されたPTCサーミスタが含まれる板状加熱体と、
前記中空ロール状の圧着搬送部材内に接触配置されると共に前記板状加熱体が保持され且つ板状加熱体からの熱が圧着搬送部材に伝達可能な熱伝達保持枠と、を有し、
前記制御装置は、
運転時に前記板状加熱体のPTCサーミスタへの通電に伴う電流値を検出する電流検出器と、
運転開始時における前記電流検出器にて検出された電流変化に基づいて、検出された電流値が立上り変化してピークを経た後に立下り変化して安定域に至る前の予め決められた値に至った条件下で予熱完了と判定し、それ以降をラミネート処理が可能な処理域として選定する処理域選定部と、
この処理域選定部にて選定された処理域にて前記対構成の圧着搬送部材に対し正逆回転可能な駆動力が伝達される駆動系を制御し、前記入口側検出器の前記ラミネート処理対象の厚みに関する検出出力に基づいて、ラミネート処理対象の厚みが厚い場合に薄い場合に比べて遅くなるように前記駆動系による前記対構成の圧着搬送部材の回転速度を可変に切り替える駆動切替部と、
前記入口側検出器及び前記出口側検出器の前記ラミネート処理対象の位置に関する検出出力に基づいて、前記ラミネート処理対象が前記出口側検出器の位置を通過する時点を監視し、前記ラミネート処理対象が前記入口側検出器を通過してから前記出口側検出器を通過するまでに通常要する時間より長い時間で予め決められた経過時間にて前記ラミネート処理対象が前記出口側検出器を通過していない条件下で、前記ラミネート処理対象が搬送路内に残る異常状態に至ったものと判定し、前記対構成の圧着搬送部材の駆動系を制御することで当該対構成の圧着搬送部材を逆回転駆動させ、ラミネート処理対象を前記搬送路の入口から排出させる排出制御部と、
を有することを特徴とするラミネート装置。
【請求項2】
請求項1記載のラミネート装置において、
前記排出制御部は、前記処理域選定部が予熱完了を判定するに至るまでの間、前記対構成の圧着搬送部材の駆動系を制御することで当該対構成の圧着搬送部材を逆回転駆動させることを特徴とするラミネート装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のラミネート装置において、
前記排出制御部が前記対構成の圧着搬送部材を逆回転駆動させている間、前記ラミネート処理対象が前記搬送路の入口から排出させられている状態であることを表示する表示器を備えていることを特徴とするラミネート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱溶融性接着剤が塗布されたラミネートフィルムとシートとを重ねて貼り合わせるラミネート装置に係り、特に、ラミネートフィルム及びシートを搬送しながら熱圧着する態様のラミネート装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来におけるラミネート装置としては例えば特許文献1,2に記載のものが挙げられる。
特許文献1には、ラミネートフィルムを加熱する加熱熱源と、加熱されたラミネートフィルムと紙葉体とを圧着する一対の圧着ローラとを備え、加熱熱源の温度、ラミネートフィルムの温度が検知可能なセンサを設け、これらのセンサ出力に基づいて加熱熱源の温度を制御する技術が開示されている。
また、特許文献2には、少なくとも一方の内部に加熱手段を有する一対のローラ間にシート状物品と熱溶融性接着剤を塗布したラミネートフィルムとを重ね合わせて挿入することにより、加熱圧着して一体状に形成する態様で、加熱ローラが異常加熱したことを熱検出手段で検出して加熱手段の電流を遮断させるようにした技術が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特許第3779014号公報(発明の実施形態,図4図7
【特許文献2】特許第2901228号公報(実施例,図3
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1にあっては、加熱熱源としては、赤外線加熱器や面状熱源が用いられるが、加熱熱源についての温度制御系、具体的には温度を検出する温度検出器及びこの温度検出器にて検出された温度情報に基づいて加熱熱源を制御する温度制御装置が必要不可欠である。
また、特許文献2にあっても、加熱手段としては例えば遠赤外線管ヒータを用いるため、この加熱手段に対しては温度制御系(温度検出器,温度制御装置)が必要不可欠であるばかりか、加熱手段による加熱動作が異常時に暴走する懸念があり、異常を検出するという異常対策を施すことも必要になってしまう。
【0005】
本発明が解決しようとする技術的課題は、温度検出器を用いずにラミネート温度の立ち上がり速度を早くし、ラミネータ処理対象の厚みに対応した熱量でラミネート処理を実施すると共に、ラミネート処理対象の詰まり事故を未然に防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、熱溶融性接着剤が塗布されたラミネートフィルムとシートとを重ねて貼り合わせるラミネート装置であって、内部に前記ラミネートフィルムとシートとのラミネート処理対象が搬送される搬送路を有する装置筐体と、この装置筐体内の搬送路に対応して設けられ、少なくとも前記ラミネートフィルムとシートとを重ねて搬送しながら熱圧着する熱圧着搬送装置と、前記装置筐体内のうち前記ラミネート処理対象の搬送方向に対し対構成の圧着搬送装置の配設位置を含んで搬送路の入口側に設けられ、前記ラミネート処理対象の厚み及び位置を検出する入口側検出器と、前記装置筐体内のうち前記ラミネート処理対象の搬送方向に対し対構成の圧着搬送装置よりも搬送路の出口側に設けられ、前記ラミネート処理対象の位置を検出する出口側検出器と、前記入口側検出器及び前記出口側検出器の前記ラミネート処理対象の厚み及び位置に関する検出出力に基づいて前記熱圧着搬送装置を制御する制御装置と、を備え、前記熱圧着搬送装置は、少なくとも一方が中空ロール状に形成され且つ前記ラミネートフィルムとシートとを挟持搬送する対構成の圧着搬送部材と、対構成の圧着搬送部材のうち中空ロール状に形成された圧着搬送部材に内蔵されたPTCサーミスタが含まれる板状加熱体と、前記中空ロール状の圧着搬送部材内に接触配置されると共に前記板状加熱体が保持され且つ板状加熱体からの熱が圧着搬送部材に伝達可能な熱伝達保持枠と、を有し、前記制御装置は、運転時に前記板状加熱体のPTCサーミスタへの通電に伴う電流値を検出する電流検出器と、運転開始時における前記電流検出器にて検出された電流変化に基づいて、検出された電流値が立上り変化してピークを経た後に立下り変化して安定域に至る前の予め決められた値に至った条件下で予熱完了と判定し、それ以降をラミネート処理が可能な処理域として選定する処理域選定部と、この処理域選定部にて選定された処理域にて前記対構成の圧着搬送部材に対し正逆回転可能な駆動力が伝達される駆動系を制御し、前記入口側検出器の前記ラミネート処理対象の厚みに関する検出出力に基づいて、ラミネート処理対象の厚みが厚い場合に薄い場合に比べて遅くなるように前記駆動系による前記対構成の圧着搬送部材の回転速度を可変に切り替える駆動切替部と、前記入口側検出器及び前記出口側検出器の前記ラミネート処理対象の位置に関する検出出力に基づいて、前記ラミネート処理対象が前記出口側検出器の位置を通過する時点を監視し、前記ラミネート処理対象が前記入口側検出器を通過してから前記出口側検出器を通過するまでに通常要する時間より長い時間で予め決められた経過時間にて前記ラミネート処理対象が前記出口側検出器を通過していない条件下で、前記ラミネート処理対象が搬送路内に残る異常状態に至ったものと判定し、前記対構成の圧着搬送部材の駆動系を制御することで当該対構成の圧着搬送部材を逆回転駆動させ、ラミネート処理対象を前記搬送路の入口から排出させる排出制御部と、を有することを特徴とするラミネート装置である。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係るラミネート装置において、前記排出制御部は、前記処理域選定部が予熱完了を判定するに至るまでの間、前記対構成の圧着搬送部材の駆動系を制御することで当該対構成の圧着搬送部材を逆回転駆動させることを特徴とするラミネート装置である。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係るラミネート装置において、前記排出制御部が前記対構成の圧着搬送部材を逆回転駆動させている間、前記ラミネート処理対象が前記搬送路の入口から排出させられている状態であることを表示する表示器を備えていることを特徴とするラミネート装置である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、温度検出器を用いずにラミネート温度の立ち上がり速度を早くし、ラミネート処理対象の厚みに対応した熱量でラミネート処理を実施すると共に、ラミネート処理対象の詰まり事故を未然に防止することができる。
請求項2に係る発明によれば、予熱完了状態に至る前におけるラミネート処理の誤動作を有効に防止することができる。
請求項3に係る発明によれば、本構成を有さない態様に比べて、ラミネート装置によるラミネート処理対象の排出処理中であることをユーザが容易に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明が適用される実施の形態に係るラミネート装置の概要を示す説明図である。
図2】実施の形態1に係るラミネート装置の要部構成を示す説明図である。
図3図2中III−III線に相当する断面説明図である。
図4】実施の形態1で用いられる熱圧着搬送ロールの軸方向に沿った要部断面説明図である。
図5】(a)は実施の形態1で用いられるヒータアセンブリ、(b)はヒータアセンブリの要部分解説明図である。
図6】ヒータアセンブリで用いられるPTCサーミスタの抵抗−温度特性の一例を示す説明図である。
図7】(a)は実施の形態1で用いられるヒータアセンブリ及び熱伝達保持枠を示す説明図、(b)は両者の組み付け状態を示す説明図である。
図8】実施の形態1で用いられる熱圧着搬送ロール構成要素であるヒータアセンブリ及び熱伝達保持枠の圧着搬送ロールへの組み付け状態を示す説明図である。である。
図9】実施の形態1に係るラミネート装置の駆動伝達系を模式的に示した説明図である。
図10】実施の形態1で用いられる熱圧着搬送ロールの回転構造並びにヒータアセンブリへの通電構造の一例を示す説明図である。
図11】実施の形態1に係るラミネート装置の制御系を示す説明図である。
図12】(a)は実施の形態1で用いられる操作パネルの一例を示し、(b)は図11に示す制御装置の構成例を示す説明図である。
図13】(a)は実施の形態1で用いられる電流検出器の一例を示し、(b)は電流検出器の電流−電圧特性を示す説明図である。
図14】(a)は熱圧着搬送ロールの浮動可能な支持構造の一例を模式的に示す説明図、(b)はその動作原理を模式的に示す説明図である。
図15】(a)は比較の形態に係るラミネート装置の温度制御動作の一例を示す説明図、(b)は実施の形態1に係るラミネート装置の温度制御動作例を示す説明図である。
図16】実施の形態1に係るラミネート装置の制御系の各機能部を示す説明図である。
図17】実施の形態1に係るラミネート装置の制御系の動作例を示すタイミングチャートである。
図18】実施の形態1に係るラミネート装置の運転モードを示すタイミングチャートである。
図19】実施の形態1に係るラミネート装置のラミネート処理制御の内容を示すフローチャートである。
図20】(a)はPTCサーミスタの時間経過に伴う電流変化を示す説明図、(b)は熱圧着搬送ロールの時間経過に伴う表面温度変化を示す説明図、(c)は熱圧着搬送ロールの時間経過に伴う速度制限(ラミネート処理速度の制限に相当)を示す説明図である。
図21】(a)は実施の形態1に係るラミネート装置の予熱中における動作例を模式的に示す説明図、(b)は同ラミネート装置の予熱完了後における動作例を模式的に示す説明図、(c)は同ラミネート装置のジャム処理例を示す説明図である。
図22】(a)は実施の形態1に係るラミネート装置の自動停止処理を示すタイミングチャート、(b)は実施の形態1に係るラミネート装置の異常検出処理を示すタイミングチャートである。
図23】実施の形態1に係るラミネート装置の自己保持回路と停止シーケンスを示すフローチャートである。
図24】実施の形態1に係るラミネート装置の制御系の変形形態を示す説明図である。
図25】実施の形態2に係るラミネート装置の概要を示す説明図である。
図26】実施の形態3に係るラミネート装置の概要を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
◎実施の形態の概要
図1は本発明が適用されるラミネート装置の実施の形態の概要を示す。
同図において、ラミネート装置は、熱溶融性接着剤が塗布されたラミネートフィルム11aとシート11bとを重ねて貼り合わせるものであり、内部に前記ラミネートフィルム11aとシート11bとのラミネート処理対象11が搬送される搬送路を有する装置筐体7と、この装置筐体7内の搬送路に対応して設けられ、少なくとも前記ラミネートフィルム11aとシート11bとを重ねて搬送しながら熱圧着する熱圧着搬送装置10と、前記装置筐体7内のうち前記ラミネート処理対象11の搬送方向に対し対構成の熱圧着搬送装置10の配設位置を含んで搬送路の入口側に設けられ、前記ラミネート処理対象11の厚み及び位置を検出する入口側検出器8と、前記装置筐体7内のうち前記ラミネート処理対象11の搬送方向に対し対構成の熱圧着搬送装置10よりも搬送路の出口側に設けられ、前記ラミネート処理対象11の位置を検出する出口側検出器9と、前記入口側検出器8及び前記出口側検出器9の前記ラミネート処理対象11の厚み及び位置に関する検出出力に基づいて前記熱圧着搬送装置10を制御する制御装置14と、を備えている。
本例において、熱圧着搬送装置10は、少なくとも一方が中空ロール状に形成され且つ前記ラミネートフィルム11aとシート11bとのラミネート処理対象11を挟持搬送する対構成の圧着搬送部材1(例えば1a,1b)と、対構成の圧着搬送部材1のうち中空ロール状に形成された圧着搬送部材1(本例では1a,1b)に内蔵され且つPTCサーミスタが含まれる板状加熱体2と、前記中空ロール状の圧着搬送部材1(本例では1a,1b)内に接触配置されると共に前記板状加熱体2が保持され且つ板状加熱体2からの熱が圧着搬送部材1に伝達可能な熱伝達保持枠3と、を有する。
【0011】
また、制御装置14は、運転時に前記板状加熱体2のPTCサーミスタへの通電に伴う電流値を検出する電流検出器15と、運転開始時における前記電流検出器15にて検出された電流変化に基づいて、検出された電流値が立上り変化してピークを経た後に立下り変化して安定域に至る前の予め決められた値に至った条件下で予熱完了と判定し、それ以降をラミネート処理が可能な処理域として選定する処理域選定部16と、この処理域選定部16にて選定された処理域にて前記対構成の圧着搬送部材1に対し正逆回転可能な駆動力が伝達される駆動系13を制御し、前記入口側検出器8の前記ラミネート処理対象の厚みに関する検出出力に基づいて、ラミネート処理対象11の厚みが厚い場合に薄い場合に比べて遅くなるように前記駆動系13による前記対構成の圧着搬送部材1の回転速度を可変に切り替える駆動切替部17と、前記入口側検出器8及び前記出口側検出器9の前記ラミネート処理対象11の位置に関する検出出力に基づいて、前記ラミネート処理対象11が前記出口側検出器9の位置を通過する時点を監視し、前記ラミネート処理対象11が前記入口側検出器8を通過してから前記出口側検出器9を通過するまでに通常要する時間より長い時間で予め決められた経過時間にて前記ラミネート処理対象11が前記出口側検出器9を通過していない条件下で、前記ラミネート処理対象11が搬送路内に残る異常状態に至ったものと判定し、前記対構成の圧着搬送部材1の駆動系13を制御することで当該対構成の圧着搬送部材1を逆回転駆動させ、ラミネート処理対象11を前記搬送路の入口から排出させる排出制御部18と、を有している。
【0012】
このような技術的手段において、本実施の形態のラミネート装置は少なくとも熱圧着搬送装置10を備えたものを対象とするため、圧着搬送装置と加熱装置とが別に設けられる態様(例えば対構成の入口搬送部材と対構成の出口搬送部材との間に独立要素として加熱装置を設ける態様)は含まない。
本実施の形態において、熱圧着搬送装置10としては、少なくとも一方が中空ロール状に形成された対構成の圧着搬送部材1(1a,1b)を備えていればよい。ここで、対構成の圧着搬送部材1(1a,1b)としては、両方がロール状部材であってもよいし、一方が中空ロール状部材であり、他方が中空ロール状部材に加圧配置されるベルト状部材であってもよいし、更には、対構成のロール状圧着搬送部材1をシートの搬送方向に沿って配設し、夫々のロール状圧着搬送部材1間にベルト部材を掛け渡し、上流側のロール状圧着搬送部材1の少なくとも一方を中空ロール状部材とし、板状加熱体2を内蔵させるようにしてもよい。尚、本実施の形態は、対構成の圧着搬送部材1がいずれも中空ロール状部材であるとしても、いずれか一方にのみ板状加熱体2、熱伝達保持枠3を組み込む態様も含まれる。
【0013】
更に、熱圧着搬送装置10としては、板状加熱体2、熱伝達保持枠3が少なくとも一方に組み込まれた対構成の圧着搬送部材1を少なくとも一つ有していればよいが、例えばラミネート速度を高速にするという観点からすれば、複数組の対構成の圧着搬送部材1夫々に板状加熱体2、熱伝達保持枠3を組み込むようにし、複数段にてラミネート処理に必要な熱圧着処理を施すようにしてもよい。
更にまた、ラミネート装置としては、熱圧着搬送装置10以外の要素を付加してもよいことは勿論である。例えばラミネートされたシート11bにしわが発生するのを有効に回避するという観点からすれば、熱圧着搬送装置10と、この熱圧着搬送装置10の下流側に設けられ、熱圧着搬送装置10を通過した後にラミネートフィルム11aでラミネートされたシート11bを引張搬送する対構成の搬送部材12とを備えたものが挙げられる。そしてまた、熱圧着搬送装置10や対構成の搬送部材12の前後にラミネートフィルム11aやシート11bを案内搬送するためのガイド部材を設けるようにしてもよい。
【0014】
また、板状加熱体2は、板状のPTCサーミスタが含まれるものであれば適宜選定して差し支えない。
この板状加熱体2は、板状のPTCサーミスタを長尺に構成しても差し支えないが、シート11bやラミネートフィルム11aの使用サイズに応じて比較的短寸のPTCサーミスタを複数並べて用いるようにする方式が広く用いられる。
ここで、板状加熱体2の代表的態様としては、PTCサーミスタの表裏面に電極を配設して通電可能な構造とし、リークを防止するためにPTCサーミスタ及び電極を絶縁カバーで被覆する態様が挙げられる。
更に、熱伝達保持枠3は、板状加熱体2の保持機能と、板状加熱体2からの熱伝達機能とを備えることを要する。
この熱伝達保持枠3としては熱伝達性の良好な金属(例えばアルミニウム)で構成されることが好ましく、また、板状加熱体2の保持機能、熱伝達性能を良好に保つには板状加熱体2の少なくとも発熱面に密接配置されることが好ましい。
ここで、熱伝達保持枠3の代表的態様としては、板状加熱体2が収容される略矩形断面からなる筒状収容空間を具備し且つ少なくとも板状加熱体2の表裏面に対向する周壁部が弾性変形可能に変形する保持筒枠5と、この保持筒枠5の前記弾性変形可能な周壁部の一部から外方に弾性変形可能に突出し、前記圧着搬送部材1の中空部内面に弾性変形して接触すると共にこの弾性変形に伴って保持筒枠5の弾性変形可能な周壁部が板状加熱体2の表裏面に密接させられる熱伝達腕枠6とを有するものが挙げられる。
また、入口側検出器8としてはラミネート処理対象11の厚みが検出可能な構成を有するほか、ラミネート処理対象11の搬送方向端部位置あるいは端部位置から予め決められた寸法だけ離れた位置などを検出するものであればよい。この場合、厚み情報及び位置情報を検出可能であれば、ラミネート処理対象11に接触する態様に限らず、非接触配置される態様でもよい。
更に、出口側検出器9としては、ラミネート処理対象11の搬送方向端部位置あるいは端部位置から予め決められた寸法だけ離れた位置などを検出するものであればよい。この場合、位置情報だけを検出可能であれば、接触型、非接触型のいずれの態様も問わない。
【0015】
また、制御装置14は熱圧着搬送装置10を制御するものであるが、制御対象としては、対構成の圧着搬送部材1や板状加熱体2である。
また、電流検出器15としては、PTCサーミスタへの通電に伴う電流値を検出するものであれば適宜選定して差し支えなく、直接的に電流値を検出するものは勿論、例えば抵抗値を介して間接的に電流値を検出するものも含む。
更に、処理域選定部16としては、PTCサーミスタの特性に合わせて、運転開始時に電流値が立上りピークを経て立下ることを利用し、圧着搬送部材1の表面温度が予熱完了状態に至る程度の熱量が供給されるタイミングに対応する値を予め選定しておき、この値に至ったか否かによって予熱完了を判定し、それ以降を処理域として選定するようにすればよい。
また、駆動切替部17は、入口側検出器8からの厚み情報に基づいて対構成の圧着搬送部材1の回転速度を切り替えることで、ラミネートフィルム11aとシート11bとのラミネート処理対象11に与える熱量を増減する。ここで、回転速度の切替えについては、連続的に切り替えてもよいし、段階的に切り替えても差し支えない。
更に、駆動系13による回転速度を可変に切り替えるとは、駆動源そのものの回転速度を切り替える態様は勿論、駆動伝達機構の組み合わせを変える態様(例えばギア比を変える等)、更には、駆動源及び駆動伝達機構の両方を変える態様でもよい。
また、ラミネート処理対象11が入口側検出器8を通過してから出口側検出器9を通過するまでに通常要する時間と比べ、これよりも長い場合には、ラミネート処理対象11が装置筐体7内に不必要に残っている異常状態(例えばジャム等)であるから、ラミネート処理対象11が対構成の圧着搬送部材1に挟まれたまま停止状態を続けると、板状加熱体2からの熱がラミネート処理対象11の挟持部に局部的に作用し続けることになり、ラミネート処理対象11が異常加熱される懸念がある。そこで、本態様では、排出制御部18は、異常状態のラミネート処理対象11を搬送路の入口側から排出させるようにしたものである。
【0016】
次に、本実施の形態に係るラミネート装置の好ましい態様について説明する。
先ず、排出制御部18の好ましい態様としては、前記処理域選定部16が予熱完了を判定するに至るまでの間、前記対構成の圧着搬送部材1の駆動系13を制御することで当該対構成の圧着搬送部材1を逆回転駆動させるものが挙げられる。
本態様によれば、予熱完了前に対構成の圧着搬送部材1を逆回転駆動させることで、ユーザが予熱中にラミネート処理を行おうとしても、対構成の圧着搬送部材1に対するラミネート処理対象11の引き込み動作を阻止する。このとき、逆回転の速度は正規回転に比べて低速で足りる。
【0017】
また、排出制御動作が表示可能な表示器19を付加するようにしてもよい。
つまり、前記排出制御部18が前記対構成の圧着搬送部材1を逆回転駆動させている間、前記ラミネート処理対象11が前記搬送路の入口から排出させられている状態であることを表示する表示器19を備えるようにすればよい。
排出制御部18は、例えばラミネート処理対象11が装置筐体7内にジャム等で残ってしまうという異常状態に対し、ラミネート処理対象11を排出路の入口側から排出させる。このとき、表示器19が排出制御動作を行っていることを表示すれば、ユーザはそれを見てラミネート装置の状態を認識することができる。ここで、表示器19による表示形式は、通常の動作状態と区別可能な色表示、点滅表示であればよい。
【0018】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明をより詳細に説明する。
◎実施の形態1
−ラミネート装置−
図2及び図3は本発明が適用されるラミネート装置の実施の形態1を示す。
同図において、ラミネート装置20は、ラミネートフィルム101とシート102とを重ねて搬送しながら熱圧着する熱圧着搬送装置21と、この熱圧着搬送装置21のシート搬送方向下流側に配設される対構成の搬送ロール22とを備え、筐体の支持側板25にて支持するようになっている。
本実施の形態において、熱圧着搬送装置21は対構成の熱圧着搬送ロール30(具体的には30a,30b)にて構成されている。
この対構成の熱圧着搬送ロール30は、いずれも中空ロール状に形成され且つラミネートフィルム101とシート102とのラミネート処理対象100を挟持搬送する対構成の圧着搬送ロール31と、この圧着搬送ロール31内に組み込まれるヒータアセンブリ40と、このヒータアセンブリ40を保持し且つヒータアセンブリ40からの熱を圧着搬送ロール31に伝達する熱伝達保持枠50とを備えている。
【0019】
<圧着搬送ロール>
本実施の形態において、図3に示すように、対構成の圧着搬送ロール31は、例えば熱伝達性の良好な金属(例えばアルミニウム)製の中空状ロール本体32を有し、このロール本体32の表面に弾性素材(例えばシリコンゴム)からなる弾性層33を被覆形成したものであり、図示外の付勢バネの付勢力にて両者が圧接されて両者間に所定のニップ域nを確保し、このニップ域nにてラミネートフィルム101及びシート102を挟持搬送するものである。
【0020】
<ヒータアセンブリ>
また、ヒータアセンブリ40は、図3ないし図5に示すように、複数(例えば5個)のヒータとして板状のPTCサーミスタ41(具体的には41a〜41e)を長さ方向に並べて配置し、各PTCサーミスタ41の表裏面に長尺な板状の電極42,43を導電性接着層44を介して配置すると共に、これら全体を例えばポリイミド樹脂製の絶縁カバー45にて被覆したものである。尚、図5中、符号46は夫々の電極42,43の長手方向端部に設けられる引出端子である。
本実施の形態において、絶縁カバー45はPTCサーミスタ41(41a〜41e)への電圧印加時に外部に電流がリークする事態を回避するためのものであり、例えば薄いフィルム状に形成されたものであれば所望の絶縁性が得られるように何層かに重ねて巻き付けるようにすることが好ましい。
【0021】
<PTCサーミスタの電気特性>
ここで、PTCサーミスタ41の電気特性について簡単に説明する。
このPTCサーミスタ(Positive Temperature Coefficient Thermistor)は、チタン酸バリウム(BaTiO)を主成分とした半導体セラミックであり、材料組成により任意にキュリー温度を設定でき、この温度から電気抵抗が急激に増加するという性質を有するものである。
つまり、このPTCサーミスタ41は、図6に示すように、電圧が印加されるとジュール熱により自己発熱し、キュリー温度Tcを超えると、その抵抗値が対数的に増大する。
抵抗値が増大すると、電流が減少し電力が抑えられるため発熱温度が低下する。そして、抵抗値が下がると電流が増加し、再び電力が増加するため発熱温度が上昇する。この動作が繰り返されることにより、自己温度制御機能を持った定温発熱体として働く。
尚、PTCサーミスタ41のキュリー温度Tcとヒータアセンブリ40の表面温度とは必ずしも一致しないため、PTCサーミスタ41のキュリー温度Tcとヒータアセンブリ40の表面温度との関係を予め確認しておくことが好ましい。
【0022】
<熱伝達保持枠>
熱伝達保持枠50は、図7(a)(b)に示すように、板状のヒータアセンブリ40が収容される略矩形断面からなる筒状収容空間を具備する保持筒枠51と、この保持筒枠51に一体的に設けられてヒータアセンブリ40からの熱を圧着搬送ロール31に伝達する熱伝達腕枠55とを備え、熱伝達性、加工性の良好なアルミニウムなどの金属にて例えば押出成形される。
ここで、保持筒枠51は、略矩形断面からなる筒状収容空間が区画される周壁部52を有し、周壁部52の内側コーナー部には夫々略円形断面の切り込み53を形成し、この切り込み53の存在にて各周壁部52を弾性変形可能に変形させるようになっている。特に、本例では、熱伝達保持枠50が圧着搬送ロール31内に装着される前の状態では、保持筒枠51のヒータアセンブリ40の表裏面に対応した周壁部52aが略平行に配置され、一方、保持筒枠51のヒータアセンブリ40の略矩形断面の幅方向に対応した周壁部52bが僅かに湾曲した状態で対向配置されている。
【0023】
また、熱伝達腕枠55は、保持筒枠51の周壁部52の外側コーナー部から外方に弾性変形可能に突出する突出片56からなり、熱伝達保持枠50が圧着搬送ロール31内に装着される前の状態では、前記突出片56は圧着搬送ロール31の中空部35(図8参照)内面の円形軌跡sよりも外側にはみ出すように湾曲する形状に維持されており、これらの突出片56の先端間には突出片56が前記円形軌跡sに沿って弾性変形可能なように間隙57が確保されている。
そして、本実施の形態では、熱伝達腕枠55の突出片56は、保持筒枠51の略矩形断面の幅方向中心線kに対して線対称的に配置されると共に、保持筒枠51を挟んで線対称的(又は点対称的)に配置されている。
【0024】
更に、ヒータアセンブリ40は、図7に示すように、熱伝達保持枠50の保持筒枠51内の筒状収容空間に挿入された後、図8に示すように、ヒータアセンブリ40及び熱伝達保持枠50は圧着搬送ロール31の中空部35内に組み込まれる。
このとき、熱伝達保持枠50の熱伝達腕枠55の突出片56は圧着搬送ロール31の中空部35の円形軌跡sに沿って矢印Mの方向に弾性変形し、圧着搬送ロール31の中空部35内面に接触配置される。
この状態において、熱伝達保持枠50の保持筒枠51の周壁部52のうちヒータアセンブリ40の表裏面に対応する周壁部52aは、前記熱伝達腕枠55の突出片56の弾性変形に伴って切り込み53部分を通じて矢印P方向に押圧されて弾性変形し、ヒータアセンブリ40の表裏面に密接配置される。
一方、熱伝達保持枠50の保持筒枠51の周壁部52のうちヒータアセンブリ40の断面幅方向に対応する周壁部52bは、前記熱伝達腕枠55の突出片56の弾性変形に伴って切り込み53部分を通じて圧着搬送ロール31の中空部35内面側に向かって僅かに弾性変形する。
この場合、ヒータアセンブリ40は熱伝達保持枠50の保持筒枠51の周壁部52aにて弾性保持されるため、ヒータアセンブリ40が熱伝達保持枠50の保持筒枠51内で不必要に移動する懸念はない。また、保持筒枠51の周壁部52bはヒータアセンブリ40の両側壁部から離間する方向に向かって弾性変形するので、保持筒枠51がヒータアセンブリ40の両側壁部に不必要に大きな負荷を与えることはなく、ヒータアセンブリ40が損傷する懸念はない。
特に、ヒータアセンブリ40の絶縁カバー45外表面断面幅方向寸法をw、熱伝達保持枠50の保持筒枠51の筒状収容空間の幅方向寸法をmとした場合に、圧着搬送ロール31内にヒータアセンブリ40及び熱伝達腕枠55を組み込む前において、w≒mであればヒータアセンブリ40の断面幅方向両側部が保持筒枠51の周壁部52bに当接するため、ヒータアセンブリ40は熱伝達保持枠50の中心線kに対して対称的な位置に位置決めされる。
【0025】
−搬送ロール−
対構成の搬送ロール22(具体的には22a,22b)は、図2及び図3に示すように、例えばアルミニウム製の中空状ロール本体62を有し、このロール本体62の表面に弾性素材(例えばシリコンゴム)からなる弾性層63を被覆形成したものであり、図示外の付勢バネの付勢力にて両者が圧接されて両者間に所定のニップ域nを確保し、このニップ域nにてラミネートフィルム101及びシート102を挟持搬送するものである。
ここで、熱圧着搬送装置21の熱圧着搬送ロール30のニップ域nと搬送ロール22のニップ域nとの間の距離xは最小使用サイズのシート102よりも短寸に設定されており、また、熱圧着搬送ロール30と搬送ロール22との間のシート搬送経路にはラミネートされたシート102を搬送ロール22のニップ域nに案内する案内部材26が設けられている。
【0026】
−駆動系−
本実施の形態において、ラミネート装置20の駆動系は、図2及び図9に示すように、駆動モータ70からの駆動力を対構成の搬送ロール22の一方のロール22bに直接伝達し、駆動伝達ギア列86を介して熱圧着搬送装置21の熱圧着搬送ロール30の一方のロール30bに伝達し、更に、搬送ロール22の軸方向反対側に設けられた駆動伝達ギア列87を介して一方の搬送ロール22bに伝達された駆動力を他方の搬送ロール22aに伝達し、また、熱圧着搬送ロール30の軸方向反対側に設けられた駆動伝達ギア列88を介して一方の熱圧着搬送ロール30bに伝達された駆動力を他方の熱圧着搬送ロール30aに伝達するようになっている。
ここで、図9において、熱圧着搬送ロール30の周速度をv、搬送ロール22の周速度をvとすれば、僅かにv>vの関係を満たすように駆動伝達系が調整されており、熱圧着搬送ロール30を通過したラミネートされたシート102は搬送ロール22に引張搬送されるようになっている。
【0027】
−熱圧着搬送ロールの支持構造及び通電構造−
熱圧着搬送装置21の熱圧着搬送ロール30の支持構造は例えば以下の通りである。
つまり、熱圧着搬送ロール30の支持構造は、図2及び図10に示すように、圧着搬送ロール31の両端開口に例えばフェノール樹脂等の絶縁性支持軸71を装着し、この絶縁性支持軸71を軸受72を介して支持側板25に支持するようにしたものである。
また、熱圧着搬送ロール30の通電構造は、前記絶縁性支持軸71内に貫通孔73を開設すると共に、この貫通孔73の一方側にヒータアセンブリ40の電極42(又は43)の端子46(図5参照)を配置すると共に、貫通孔73の他方には導電性パイプ74を設け、前記端子46と導電性パイプ74との間を接続ワイヤ75で接続し、この導電性パイプ74の一端部に通電ユニット76として導電性ブラシ77を付勢バネ78にのみ押し付け配置し、この導電性ブラシ77に電源80からの電圧(本例では交流電源82による交流バイアスを使用)を動作スイッチ85のオンオフ操作にて印加するようになっている。尚、電源80としては必ずしも交流バイアスを使用する態様に限られるものではなく、直流バイアス若しくは直流バイアスが重畳した交流バイアスを使用する態様でもよい。
【0028】
−ラミネート装置の制御系−
図11は、実施の形態1に係るラミネート装置の制御系を模式的に示す説明図である。
同図において、符号120はラミネート装置20を駆動するための駆動モータ70及びヒータアセンブリ40への通電を制御する制御装置であり、制御装置120からの制御信号に基づいて駆動モータ70が駆動され、この駆動モータ70からの駆動力が模式的に示した駆動伝達系90を介して熱圧着搬送ロール30に伝達されるようになっている。また、動作スイッチ85がオン動作すると、電源80からの電圧が前述した通電構造を介してヒータアセンブリ40の各ヒータとしてのPTCサーミスタ41に印加され、PTCサーミスタ41に通電される。
本例において、動作スイッチ85は、図示外の運転スイッチをオン操作することに伴って制御基板121(図12参照)の各回路に通電し、これに伴って、ヒータリレーコイル85aへ通電し、このヒータリレーコイル85aへの通電によりヒータリレー接片85bをオン接点に移動させ、ヒータアセンブリ40への通電状態を保持する。
制御基板121の各回路への通電は自己保持回路にて保持されるため、動作スイッチ85のオン状態は維持される。
更に、ヒータアセンブリ40への通電回路中には電流センサ130が設けられ、ヒータアセンブリ40へ流れる電流を検出すると共に、この電流センサ130の検出出力は制御装置120に取り込まれるようになっている。
更にまた、本例では、熱圧着搬送ロール30には、図3及び図11に示すように、搬送されるラミネート処理対象100の厚みを検出するための厚みセンサ140が設けられており、この厚みセンサ140の検出出力が制御装置120に取り込まれるようになっている。尚、この厚みセンサ140は、対構成の熱圧着搬送ロール30のニップ部をラミネート処理対象100が通過するときに厚み情報に対応する信号を出力するものであり、この厚み情報の出力タイミングを把握することでラミネート処理対象100の通過情報(位置情報)をも検出するものである。
そしてまた、シート搬送経路のうち、搬送ロール22よりもシート搬送方向の下流側には、図3に示すように、排出センサ145が設けられており、ラミネート処理対象100が通過することを検出するものであり、この検出出力が制御装置120に取り込まれるようになっている。
また、制御装置120には図示外の操作パネルが接続されており、この操作パネルに各種情報を表示する表示器160が適宜設けられている。
【0029】
−操作パネル−
図12(a)は本実施の形態で用いられる操作パネルの構成例を示す。
同図において、操作パネル150は、操作プレート151上に、ラミネート装置20の運転をオンオフする運転スイッチ152と、駆動モータ70の回転速度を切り替える速度切替スイッチ153と、駆動モータ70を手動にて逆転させる逆転スイッチ154と、を有している。また、表示器160としては、ラミネート装置20が運転状態にあるか否かを表示する運転ランプ161、ラミネート装置20が運転スイッチ152をオンした後に予熱が完了したか否かを表示するREADYランプ162、速度切替スイッチ153による切替に応じて複数の速度(例えば5段階)を表示する例えば7つの表示セグメントからなる速度表示器163が用いられている。
【0030】
−制御装置の構成例−
図12(b)は実施の形態で用いられる制御装置120の構成例を示す。
同図において、制御装置120は、電源80をオンオフする電源スイッチ155、電源トランス156、運転を開始・終了するためにオンオフする運転スイッチ152、駆動モータ70の速度を例えば500mm/min.〜1,500mm/min.の範囲で複数段階で切り替える速度切替スイッチ153、熱圧着搬送ロール30を手動で逆転させる逆転スイッチ154、駆動モータ70の動作状態を検出するモータ回転検出器157からの各入力信号が取り込まれる制御基板121を有し、この制御基板121には、電流ヒューズ122、自己保持リレー123、ヒータリレーにて構成される動作スイッチ85、電流センサ(CT:Current Transformerの略)130、CPU124、モータドライブ回路125等が搭載され、この制御基板121からの制御信号が温度ヒューズ165、PTCサーミスタ41、表示器160、駆動モータ70等に送出されるようになっている。
【0031】
−電流センサ−
本実施の形態において、電流センサ130は、例えば図13(a)に示すように、例えば高透磁率フェライトからなる磁性コア131を有し、この磁性コア131に対して一次側巻線132及び二次側巻線133を巻き付け、一次側巻線132に対して電源80を接続すると共に当該一次側巻線132に流れる電流をIとし、一方、二次側巻線133の両端には予め決められた値の抵抗R(例えば5Ω)を介在させて電圧Vを取り出す構成になっている。
そして、この電流センサ130は、図13(b)に示すように、電流Iと電圧Vとの間に略比例した特性を有することから、例えば電圧Vをモニタすることで電流センサ130の電流Iを検出するようになっている。
【0032】
−厚みセンサ−
本実施の形態において、厚みセンサ140は、対構成の熱圧着搬送ロール30の一方の熱圧着搬送ロール30aを浮動可能に支持することで、対構成の熱圧着搬送ロール30間に厚みの異なるラミネート処理対象100(ラミネートフィルム101+シート102)が通過する際に、前記浮動可能な熱圧着搬送ロール30aがラミネート処理対象100の厚みに応じて浮動し、例えば熱圧着搬送ロール30aの浮動量に対応して歪み変形し、その歪み変形量に基づいてラミネート処理対象100の厚み情報を検出するものが用いられる。
ここで、熱圧着搬送ロール30aを浮動可能に支持する構造としては、例えば図14(a)(b)に示すように、熱圧着搬送ロール30aの両端にて絶縁性支持軸71が支持される軸受72を付勢バネ172にて浮動可能に付勢支持すると共に、導電性ブラシ77を付勢する付勢バネ78による付勢力にて前記絶縁性支持軸71と軸受72との相対位置関係を保持するようにする構造が採用されている。
―排出センサ―
本実施の形態において、排出センサ145としては、ラミネート処理対象100の搬送方向先端部が通過することを検出する機能を有するものであればよく、フォトカプラ等の光学式センサやリミットスイッチ等の機械的センサが採用される。
【0033】
−ラミネート装置の基本作動−
次に、本実施の形態に係るラミネート装置の基本作動について説明する。
先ず、本実施の形態に係るラミネート装置の基本作動を説明する前に、比較の形態に係るラミネート装置の基本作動について説明する。
図15(a)は比較の形態に係るラミネート装置の一例を示す。
同図において、比較の形態に係るラミネート装置200は、対構成の熱圧着搬送ロール300と、この熱圧着搬送ロール300を通過したラミネートされたシート102を引張搬送する搬送ロール220とを備え、熱圧着搬送ロール300には例えば中空ロール状の圧着搬送ロール301内に例えば熱源としてハロゲンランプ等のヒートランプ302を内蔵させたものである。
そして、熱圧着搬送ロール300の表面温度を検出するために熱圧着搬送ロール300の表面に対向して夫々接触型又は非接触型の温度センサ311,312を配置し、温度制御装置320に温度センサ311,312からの検出情報を取り込み、バイメタルなどの温度調節器331,332にてヒートランプ302をオンオフ制御するものである。
【0034】
本比較の形態にあっては、温度制御系(温度センサ、温度調節器、温度制御装置)が必要不可欠であるから、装置構成が複雑である。
特に、接触型温度センサを使用する態様にあっては、熱圧着搬送ロール300に接触しているため、熱圧着搬送ロール300に傷が付き易く、場合によってはラミネートされたシートにも傷が付く虞れがある。
また、温度センサは絶えず熱圧着搬送ロール300に接触しているため、変形や断線が起き易い、故障の原因となり易い。
更に、長期間の使用では熱圧着搬送ロール300にラミネートフィルムの熱溶融性接着剤が付着し、正確な温度検出が出来なくなる虞れがある。
これに対し、非接触型温度センサ(例えば赤外線センサ)を使用する態様にあっては、接触型温度センサのような不具合はないが、非接触型温度センサは増幅器との組合せが必要になる分高価であるばかりか、検出面に粉塵が付着すると正確な温度検出が出来ず、目標とするラミネート温度よりも高い温度にずれ易くなり、ラミネート仕上がりが悪くなるばかりか、ジャミングしてラミネートされたシートを破損する懸念がある。
また、ヒートランプ302による加温は熱圧着搬送ロール300内の空気層を経由して行われるため、立上り速度が遅く、また、ヒートランプ302が故障すると異常温度に加熱されてしまうため、異常時対策を施すことが必要である。
更に、温度調節器によるオンオフの断続的制御にてラミネート温度を調整するため、オーバーヒート後にラミネート温度に至り、安定した温度分布に至るまでに時間を要するほか、発熱温度の揺らぎが大きい懸念がある。
【0035】
これに対し、本実施の形態では、図10及び図15(b)に示すように、ラミネート装置20使用時に動作スイッチ85をオンすると、電源80からの直流重畳の交流バイアスからなる電圧が導電性ブラシ77、導電性パイプ74を介してヒータアセンブリ40に印加される。
すると、各PTCサーミスタ41に電流が流れて発熱し、ヒータアセンブリ40からの熱は、熱伝達性の良好な金属からなる熱伝達保持枠50の保持筒枠51の主として周壁部52a、熱伝達腕枠55を介して圧着搬送ロール31に効率的に伝達される。
このとき、PTCサーミスタ41を用いたヒータアセンブリ40の温度Thの立ち上がり速度は早く、キュリー温度Tcに到達すると、直ちに抵抗値が大きくなるため、電流が流れ難くなり、ヒータアセンブリ40の発熱は抑えられる。
このため、熱圧着搬送ロール30の表面温度Tsはオーバーヒートすることなく、所定のラミネート温度に安定的に到達する。
このように、本実施の形態では、比較の形態のような温度制御系(温度センサ、温度調節器、温度制御装置)を用いることなく、PTCサーミスタ41を用いたヒータアセンブリ40の自己温度制御機能に基づいて簡単に制御することができる。
また、PTCサーミスタ41は面全体で発熱するため、発熱分布がばらつくという懸念もない。
更に、ヒータアセンブリ40が過剰に昇温することもないので、熱圧着搬送ロール30が異常昇温する事態を考慮する必要がなく、比較の形態のような異常時対策を考慮する必要もない。
特に、本実施の形態では、対構成の熱圧着搬送ロール30はいずれも熱源を具備しているため、シート102の表裏面にラミネートフィルム101を重ねて貼り付ける態様にも有効に適用される。
また、本実施の形態では、熱伝達保持枠50は圧着搬送ロール31の中空部35の略全域に熱を伝達する構成になっているため、熱圧着搬送ロール30の周面全体の表面温度分布は略均一に保たれる。
【0036】
−ラミネート装置による各種制御処理−
次に、本実施の形態に係るラミネート装置20による各種制御処理について説明する。
図16は本実施の形態に係るラミネート装置20による各種制御処理を模式的に示すブロック図である。
(1)電流・温度の初期設定処理
図16において、符号180は後述する予熱完了判定電流Ithを設定したり、PTCサーミスタ41の設定温度を設定する電流・温度設定器であり、例えば操作パネル150を特定の条件で使用することにより制御基板121の図示外のメモリに書き込むものである。
【0037】
(2)予熱完了判定処理
図16及び図17に示すように、電源スイッチ155をオンした状態で操作パネル150の運転スイッチ152を押し下げてオンすると、動作スイッチ85がオンし、ヒータアセンブリ40のPTCサーミスタ41に通電される。
このとき、PTCサーミスタ41は、その電気特性から電流値Iが立上り変化してピークIpを経た後に立下り変化して予め決められた閾値(予熱完了判定電流)Ith(例えば1.5A)に至り、その後、略一定の値に達する。
このような電流変化に伴って、PTCサーミスタ41が熱圧着搬送ロール30(30a又は30b)を加熱するため、熱圧着搬送ロール30の表面温度Tsは徐々に増加していき、前記予熱完了判定電流Ithに至った時点では熱圧着搬送ロール30の目標制御温度の下限値T(例えば110℃)に達し、その後、熱圧着搬送ロール30の目標制御温度の上限値T(例えば120℃)に達する。
尚、熱圧着搬送ロール30の目標制御温度の上限値Tは、PTCサーミスタ41の設定温度に依存して設定される。
特に、本例では、PTCサーミスタ41に通電が開始される前はREADYランプ162は消灯しているが、PTCサーミスタ41に通電が開始されてから、PTCサーミスタ41を流れる電流値Iが立上り変化している間、並びに、立下り変化している間で且つ予熱完了判定電流Ithに至らない間は、READYランプ162が点滅する。そして、PTCサーミスタ41を流れる電流値Iが立下り変化して予熱完了判定電流Ith以下に至ると、READYランプ162が点灯した状態を保つ。
尚、運転スイッチ152のオンに伴って運転ランプ161は点灯するようになっている。
【0038】
(3)厚みセンサによるモータ回転制御処理
図16及び図17に示すように、PTCサーミスタ41に通電が開始されてから、その電流値Iが予熱完了判定電流Ith以下に至ると、熱圧着搬送ロール30の表面温度Tsは目標制御温度の下限値Tに達し、ラミネート装置20としてラミネート処理に供することが可能な状態に至る。
この状態において、ラミネート処理対象100の厚みdがd,d,d(d<d<d)と仮定すると、厚みセンサ140の検出出力は制御基板121に搭載された速度設定器141を介して駆動モータ70に制御信号を送出するようになっている。
先ず、ラミネート処理対象100の厚みdがdのときを想定すると、図17に示すように、駆動モータ70の駆動時間tが短い時間tになるように駆動モータ70の駆動時間tを制御し、かつ、駆動モータ70の回転数mを高い値mになるように駆動モータ70の回転数mを制御する。
この場合、ラミネート処理対象100が薄いため、ラミネート処理対象100の熱容量が小さく、熱圧着搬送ロール30の搬送速度を速めて且つ駆動時間tを短縮したとしても、ラミネート処理は良好に実施される。
次に、ラミネート処理対象100の厚みdがdのときを想定すると、図17に示すように、駆動モータ70の駆動時間tがtに比べて長い時間tになるように駆動モータ70の駆動時間tを制御し、かつ、駆動モータ70の回転数mをmに比べて低い値mになるように駆動モータ70の回転数mを制御する。
この場合、ラミネート処理対象100がdに比べて厚くなるため、ラミネート処理対象100の熱容量がdの場合に比べて増大し、熱圧着搬送ロール30の搬送速度を遅めて且つ駆動時間tを延ばすことで、ラミネート処理は良好に実施される。
更に、ラミネート処理対象100の厚みdがdのときを想定すると、図17に示すように、駆動モータ70の駆動時間tがtに比べて更に長い時間tになるように駆動モータ70の駆動時間tを制御し、かつ、駆動モータ70の回転数mをmに比べて更に低い値mになるように駆動モータ70の回転数mを制御する。
この場合、ラミネート処理対象100がdの場合に比べて更に厚くなるため、ラミネート処理対象100の熱容量がdの場合に比べて更に増大し、熱圧着搬送ロール30の搬送速度をdの場合に比べて更に遅めて且つ駆動時間tを更に延ばすことで、ラミネート処理は良好に実施される。
【0039】
−運転モード−
図18は運転モード時におけるラミネート装置20の各部の動作状態を示すタイミングチャートを示す。
今、運転スイッチ152をオンすると、制御基板121の各回路に通電されることから、ヒータリレーが励磁されることに伴って動作スイッチ85がオンする。この状態において、自己保持回路170(図16参照)により制御基板121の各回路への通電が保持されることから、動作スイッチ85のオン状態が保持され、ヒータアセンブリ40のヒータとしてのPTCサーミスタ41に通電され続ける。
また、上述したように、運転スイッチ152がオンすると、運転ランプ161は予熱中、予熱完了後のいずれも点灯し続ける。一方、予熱中はREADYランプ162が点滅し、予熱完了でREADYランプ162が点灯するため、ラミネート装置20が予熱中であるか否かがREADYランプ162の状態を見ることで把握される。
更に、本例では、予熱中は駆動モータ70は逆転し、かつ、低速で回転するため、ラミネート装置20に対し予熱中にラミネート処理対象100を挿入しようとしても、ラミネート処理対象100が熱圧着搬送ロール30に誤って引き込まれることはない。
更にまた、予熱完了後は、駆動モータ70は速度表示器163で設定した設定速度にて正転するため、ラミネート処理が迅速に実施される。
更に、本実施の形態では、運転スイッチ152を再度押し下げるという停止操作を行うと、停止シーケンスが行われてラミネート装置20の運転が停止される。このとき、停止操作に伴ってヒータとしてのPTCサーミスタ41への通電は解除されるが、ラミネート装置20が完全に停止するには、停止操作後、予め決められた時間(例えば1〜2分)熱圧着搬送ロール30等が空回転してクーリング動作を行い、しかる後、自己保持回路を解除して停止シーケンスが終了する。
【0040】
―運転モード時のラミネート処理制御―
次に、運転モード時におけるラミネート処理制御に関するフローチャートを図19に示す。
<処理域選定処理>
同図において、制御装置120は、運転スイッチ152をオンすると、ヒータアセンブリ40にて予熱を開始すると共に、図21(a)に示すように、熱圧着搬送ロール30を逆転駆動させ、前述した予熱完了判定処理を実施する。例えば図20(a)に示すように、PTCサーミスタの電流値が予熱完了判定電流Ith以下になった時間をtyと仮定すると、ty以降がラミネート処理が可能な処理域として選定される。
<ラミネート処理対象に対する速度設定処理>
この処理は、図19に示すように、予熱完了判定処理が終了すると、熱圧着搬送ロール30を正転駆動させた後に実施される。
具体的には、先ず、ラミネート処理対象100に対する厚みセンサ140による厚み情報に基づいて、熱圧着搬送ロール30の速度を設定する。
このとき、予熱完了後の処理域は、図20(a)に示すように、PTCサーミスタの電流値が予熱完了判定電流Ith(時間ty)から安定する定常電流Ia(時間ta)に至るまでの変化域Iと、それ以降の安定域IIとに分けられる。
今、変化域Iでは、熱圧着搬送ロール30の表面温度は、予熱完了判定電流Ithに対応する温度Ty(例えば145℃)から定常電流Iaに対応する定常温度Ta(例えば165℃)へと変化しているが、定常温度Taよりは低い温度を有している状態にある。
このような状態において、熱圧着搬送ロール30の速度v(ラミネート処理速度に相当)は、図20(c)複数段階(本例では5段階:vL1〜vL5)に切替可能であるが、変化域Iで熱圧着搬送ロール30を高速で稼働させると、ラミネート処理対象100への熱量が不足する可能性がある。
【0041】
そこで、本実施の形態では、変化域Iのうち、PTCサーミスタの電流値の中間値をIc(Ith<Ic<Ia)とすると、Ith以下でIcより大きい範囲では熱圧着搬送ロール30の表面温度TはTy≦T<Tc(例えば155℃)であるため、速度vL4、vL5を制限し、Ic以下Iaより大きい範囲では熱圧着搬送ロール30の表面温度TはTc≦T<Taであるため、速度vL5を制限し、安定域IIに至った段階では、前述した速度制限を解除して全ての速度vを設定可能とするものである。
このように、変化域Iでは、前述した速度制限があるため、仮に、Ith以下でIcより大きい範囲(Ty≦T<Tc)において、速度vL4でラミネート処理を実施しようとすると、速度制限のないレベルの最大速度であるvL3に補正される。このため、予熱完了直後で、熱圧着搬送ロール30の表面温度Tがまだ十分に高くない場合には、その速度を遅く設定することでラミネート処理対象100への熱量を十分に確保するという処理が行われる。
仮に、時間taの安定域IIに至るまで待ってからラミネート処理を実施可能という設定をすれば、前述した速度制限は不要であるが、時間taまでラミネート処理が実施できないことになってしまう。この点、本実施の形態では、時間ty(ty<ta)以降ラミネート処理が実施可能になることから、予熱完了時間を短縮することができる点で好ましい。
尚、速度切替スイッチ153(図12参照)を操作することで、速度切替指示が成されると、速度制限にならない範囲で、熱圧着搬送ロール30の速度が切り替えられる。
【0042】
また、安定域IIに至ってから比較的長い時間tb(例えば30分)経過したときに、熱圧着搬送ロール30が定常温度Ta(例えば165℃)より高い飽和温度Tb(例えば167℃)になる虞れがある。このとき、PTCサーミスタの電流値はIbである。このような状況では、ラミネート処理対象100が薄い場合に、熱圧着搬送ロール30を低速(例えばvL1)で回転させると、過熱状態の熱圧着搬送ロール30が遅い速度でラミネート処理対象100に接触することから、ジャミングしてラミネート処理対象100が熱圧着搬送ロール30に巻き込まれる懸念がある。
そこで、本実施の形態では、図20(c)に示すように、比較的長い時間tbが経過した以降は、速度vL1を制限し、速度vL2〜vL5の範囲で設定可能にする処理が行われる。
【0043】
<ラミネート処理対象に対する排出確認処理>
この後、熱圧着搬送ロール30の速度設定がなされると、当該熱圧着搬送ロール30はラミネート処理対象100に対しラミネート処理を施す。
このとき、制御装置120は、厚みセンサ140の検出時点からタイマを計数し、予め決められた時間Δt(設定された速度でラミネート処理対象100が搬送された場合に、ラミネート処理対象100が厚みセンサ140の検出ポイントから排出センサ145の検出ポイントに至るまでの時間にある程度のマージンを付加した値)が経過したことを条件とし、排出センサ145がオンしたか否かをチェックする。
このとき、排出センサ145がオンした場合には、図21(b)に示すように、ラミネート処理対象100が排出センサ145の配設位置に到達したことを意味するから、熱圧着搬送ロール30及び搬送ロール22は正転駆動をそのまま継続することになり、ラミネート処理対象100はラミネート装置20から排出される。
逆に、前述したタイミングで、排出センサ145の出力をチェックしたときに、排出センサ145の出力がオフのままである条件では、図21(c)に示すように、ラミネート処理対象100が排出センサ145の配設位置に到達していないことを意味する。これは、何らかの異常要因(例えばジャミングによる詰まりなど)に起因してラミネート処理対象100が必要以上にラミネート装置20内に残っているものと推測されることから、本実施の形態では、図19及び図21(c)に示すように、熱圧着搬送ロール30及び搬送ロール22を逆転駆動させることで、シート搬送経路の入口側からラミネート処理対象100を強制的に排出する処理(ジャム処理)が行われる。
尚、このジャム処理を行っている間、例えばREADYランプ162を点滅させるようにしてもよい。
【0044】
−自動停止処理−
この自動停止処理は、図22(a)に示すように、PTCサーミスタ41への通電状態で長時間不使用時にラミネート装置20を自動停止するものである。
本例では、長時間不使用であるという判定基準は、例えばPTCサーミスタ41への通電に伴う電流値Iが予め決められた閾値Ith’(例えば0.5A)以下で予め決められた時間t(例えば10分)以上経過したという条件に基づく。
このように長時間不使用である場合には、熱圧着搬送ロール30の表面温度Tsもかなり高い温度T(例えば150℃)に至ることもあり得るので、安全性を考慮して、長時間不使用時には制御基板121の各回路への自己保持回路170を解除して停止シーケンスを終了する。
−異常検出処理−
この異常検出処理は、図22(b)に示すように、例えばPTCサーミスタ41への配線が断線したような異常事態を検出し、異常事態検出時にラミネート装置20を自動停止するものである。
本例では、異常事態検出であるという判定基準は、例えばPTCサーミスタ41への配線が断線し、電流値Iが予め決められた閾値Ith”(例えば0.3A)以下に至ったという条件に基づく。
このように異常事態が検出される場合には、駆動モータ70を停止すると共に、PTCサーミスタ41への通電を停止し、更に、表示器160にエラー表示をする。
ここで、エラー表示は、例えば運転ランプ161、READYランプ162を点滅させ、速度表示器163にエラー文字に相当するEを表示する。この状態において、運転スイッチ152の押し下げで直ちに自己保持回路170を解除して停止シーケンスを終了する。そして、再度運転スイッチ152を押し下げることでエラーをクリアし、ラミネート装置20の再運転を開始する。
【0045】
−自己保持回路と停止シーケンス−
図23は、自己保持回路の形成に伴う各部の動作状態を示すタイミングチャートである。
同図において、運転スイッチ152をオンすると、これに伴って、自己保持リレーをオンさせ、自己保持リレー電源をオンすることで自己保持回路を形成する。
また、運転中に、運転スイッチ152をオンすると、停止モードになり、ヒータとしてのPTCサーミスタ41への通電をオフすると共に、運転ランプ161を点滅させ、予め決められた時間t(例えば1分)後に自己保持リレーをオフすることで、自己保持リレー電源による自己保持をオフし、自己保持回路を解除する。
ここで、自己保持リレーオフ時には、制御基板電源が動作領域にある間に、自己保持リレー電源をリレー動作電圧よりも低下させることが必要である。
また、自己保持リレー電源による自己保持オフ時には、制御基板電源を速やかに低下させ、運転スイッチ152オン時のリセット回路が正常に動作するように設計することが好ましい。
尚、本実施の形態では、自己保持回路を用いる方式を採用しているが、これを用いずに運転スイッチ152のオンオフに連動して制御基板電源をオンオフするようにしてもよいことは勿論である。
【0046】
◎変形の形態1
本実施の形態では、厚みセンサ140によるモータ回転制御を実施する態様が開示されているが、これに限られるものではなく、例えば図24に示すように、厚みセンサ140によるモータ回転制御に代えて、ラミネート処理対象選択スイッチ190により厚みが複数異なるラミネート処理対象100を適宜選択し、これを制御装置120に入力することで、厚みの異なるラミネート処理対象100毎にモータ回転制御を実行するようにしてもよい。
【0047】
◎実施の形態2
図25は本発明が適用されたラミネート装置の実施の形態2の概要を示す。
同図において、ラミネート装置20は、熱圧着搬送装置21として複数組(本例では3組)の対構成の熱圧着搬送ロール30(具体的には30(1),30(2),30(3))を配設し、このシート搬送方向下流側にラミネートされたシート102が引張搬送される対構成の搬送ロール22を配設したものである。
ここで、各熱圧着搬送ロール30は実施の形態1と同様に構成されており、また、各熱圧着搬送ロール30及び搬送ロール22間にはラミネートされたシート102を案内するための案内部材26が必要に応じて設けられている。尚、実施の形態1と同様な構成要素については実施の形態1と同様な符号を付してここではその詳細な説明を省略する。
本実施の形態によれば、複数組の対構成の熱圧着搬送ロール30を備えているので、ラミネートフィルム101及びシート102に対するラミネート処理を複数に分割して実現することが可能になり、その分、ラミネート処理をより高速に実現することができる。
【0048】
◎実施の形態3
図26は本発明が適用されたラミネート装置の実施の形態3の概要を示す。
同図において、ラミネート装置20は、実施の形態1,2と異なり、例えばいずれもが中空ロール状に形成され且つラミネートフィルム101とシート102とを挟持搬送する対構成の上流側圧着搬送ロール91(具体的には91a,91b)と、この下流側に設けられていずれもがロール状に形成され且つラミネートフィルム101とシート102とを挟持搬送する対構成の下流側圧着搬送ロール92(具体的には92a,92b)と、これらの対構成の上流側、下流側圧着搬送ロール91,92間に夫々掛け渡される例えばポリイミド樹脂などのベルト部材93(具体的には93a,93b)とを有し、例えば対構成の上流側圧着搬送ロール91にヒータアセンブリ40を熱伝達保持枠50を介して保持するようにしたものである。
本実施の形態では、上流側圧着搬送ロール91(91a,91b)が熱圧着搬送ロール30として実質的に機能し、上流側圧着搬送ロール91(91a,91b)を通過したラミネートされたシート102はベルト部材93(93a,93b)間に挟持された状態で搬送された後下流側圧着搬送ロール92(92a,92b)を経て排出される。
このとき、上流側圧着搬送ロール91(91a,91b)によるラミネート処理は実施の形態1と略同様に好適に行われる。
【符号の説明】
【0049】
1(1a,1b)…圧着搬送部材,2…板状加熱体,3…熱伝達保持枠,5…保持筒枠,6…熱伝達腕枠,7…装置筐体,8…入口側検出器,9…出口側検出器,10…熱圧着搬送装置,11…ラミネート処理対象,11a…ラミネートフィルム,11b…シート,12…搬送部材,13…駆動系,14…制御装置,15…電流検出器,16…処理域選定部,17…駆動切替部,18…排出制御部,19…表示器,I…電流値,t…時間,Iy…予熱完了判定電流
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