(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を閉鎖型保育器兼用の開放型保育器に適用した−実施例を、「1、保育器全体の概略的な構成」、「2、加湿ユニットの構成」、「3、加湿ユニットの制御システムの構成」および「4、加湿ユニットおよびその制御システムの動作」に項分けして、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
1、保育器全体の概略的な構成
【0017】
保育器1は、
図1および
図2に示すように、平面的に見てほぼ長方形状などの基台2と、この基台2のほぼ外周囲に沿って立設されているほぼ直方体形状などのエンクロージャ3とを備えている。そして、基台2上には、臥床架(図示せず)が配置されている。また、この臥床架上に配置された児用のマット(図示せず)の上面には、必要に応じて薄いシーツ(図示せず)が敷かれてから、未熟児などの児が上記児用マット上に横たわらされて診察、処置、保育などを施される。さらに、エンクロージャ3は、全体としてほぼ透明であってよく、前側の壁部4、後側の壁部(図示せず)、頭側(換言すれば、基端部側)の壁部5および脚側(換言すれば、先端部側)の壁部6をそれぞれ備えている。そして、前側の壁部4、上記後側の壁部、頭側の壁部5および脚側の壁部6によって、平面的に見てほぼ長方形状などの周囲枠部が構成されている。また、前側の壁部4、上記後側の壁部、脚側の壁部6などは、フェンスまたは処置窓を構成しているので、児に対する診察、処置などを任意の方向から行えるようにするために、ほぼ下方に向かって往回動することまたはほぼ下方に向ってほぼ直線的に往動することなどによって開放され得るように構成されている。さらに、前側の壁部4、上記後側の壁部などには、左右一対などの手入れ窓7が配置されていてよい。なお、上述のように、前側の壁部4、上記後側の壁部および脚側の壁部6が完全に開放されたときには、保育器1を蘇生処置用装置としても用いることができる。
【0018】
図1および
図2に示す基台2は、ほぼ水平方向に延在するフレーム8に取り付け支持されている。そして、このフレーム8は、メイン支柱11に支持されている。また、このメイン支柱11は、それぞれが車輪12付きの合計で例えば4本の腕部を有する左右一対のベース13に取り付け支持されている。さらに、これら一対のベース13は、共通の連結部材9によって、互いに連結されている。そして、この連結部材9には、メイン支柱11が立設されている。また、
図1および
図2に示すメイン支柱11に取り付け支持されているフレーム8には、
図2に示すように互いにほぼ左右対称であってよい左右一対のサブ支柱14a、14bが共通の連結部材22を介して取り付け支持されている。そして、これら左右一対のサブ支柱14a、14bは、頭側の壁部5から外方側に遠ざかる方向に向かってエンクロージャ3から離間した状態でもって、頭側の壁部5よりもさらに外方側に配置されている。
【0019】
エンクロージャ3は、
図1および
図2に示すように、天面フード15をさらに備えている。そして、左右一対のサブ支柱14a、14bのうちの
図2における例えば左側の加熱器用サブ支柱14aには、
図2に示すように、加熱器16が支持軸17によって取り付け支持されている。また、
図2における例えば右側の天面フード用サブ支柱14bには、天面フード15が支持腕18によって取り付け支持されている。この場合、天面フード15は、ほぼ四角錐台形状などであってよく、また、その下面が開放された中空体であってよい。したがって、エンクロージャ3は、前記周囲枠部と、この周囲枠部の上端開口を選択的に覆うことができる天面フード15とを備えている。そして、
図1および
図2に示す閉鎖型の状態での保育器1においては、エンクロージャ3は、ごく小さいほぼ小屋形状に構成されている。なお、左右一対のベース13のうちの前側のベース13には、前後一対のフットスイッチ19a、19bが互いに隣接して配設されている。そして、操作者が前側のフットスイッチ19aを足などで押圧操作したときには、フレーム8がメイン支柱11に対して下降するので、このフレーム8に取り付けられている基台2などが同様に下降する。また、操作者が後側のフットスイッチ19bを足などで押圧操作したときには、フレーム8がメイン支柱11に対して上昇するので、このフレーム8に取り付けられている基台2などが同様に上昇する。
【0020】
図1および
図2に示す加熱器用サブ支柱14aおよび天面フード用サブ支柱14bのそれぞれは、固定支柱21および可動支柱(図示せず)から成っている。そして、左右一対のサブ支柱14a、14bの固定支柱21の下端部は、共通の連結部材22を介してフレーム8に取り付け支持されている。また、上記一対の可動支柱は、従動歯車、駆動用チェーン、駆動歯車、電動モータなどの昇降駆動機構(いずれも図示せず)によって、固定支柱21内を上下方向にそれぞれ往復駆動(換言すれば、昇降駆動であって、固定支柱21に対して伸縮可能に駆動)されるように構成されている。そして、天面フード15が上昇位置まで移動したときには、保育器1は、開放型保育器として機能する。また、天面フード15が
図1および
図2に示すように下降位置まで移動したときには、保育器1は、閉鎖型保育器として機能する。さらに、この閉鎖型保育器として機能するときには、加熱器16は、その使用状態(この場合には、使用状態であっても少量の熱線しか放射されない。)においては上昇位置(図示せず)に留まり、その不使用状態においては
図1および
図2に示す下降位置まで移動していてよい。なお、加熱器16およびその回動駆動機構のそれぞれの構成や加熱器16と天面フード15との相互の関係を含む保育器1の全体構成の詳細は、本発明の要旨ではないので、その詳細な図示および詳細な説明は、本文においては省略する。
【0021】
基台2の脚側の壁部側には、
図2に示すように、開閉用ドア25が配設されている。そして、この開閉用ドア25は、加湿器としての加湿ユニット23を保育器本体26の基台2に装着したり取り出したりするのに用いられる開口24を開閉することができる。なお、
図1に示す加湿ユニット23の構成および動作については、それぞれ後述する「2、加湿ユニットの構成」ならびに「4、加湿ユニットおよびその制御システムの動作」の項において詳細に説明する。
【0022】
天面フード15用のサブ支柱14bの固定支柱21には、
図1に示すように、操作ユニット兼用の表示ユニット(以下、単に、「表示ユニット」ともいう。)31が支柱21に対して着脱可能にかつ支柱21に沿ってほぼ上下方向に往復動可能に取り付けられている。なお、表示ユニット31の構成および動作については、それぞれ後述する「3、加湿ユニットの制御システムの構成」ならびに「4、加湿ユニットおよびその制御システムの動作」の項において詳細に説明する。
【0023】
2、加湿ユニットの構成
【0024】
加湿ユニット23は、
図3および
図4に示すように、加湿ユニット本体32と、蒸留水などの加湿用の水を加湿槽34に供給するために、この加湿ユニット本体32に着脱可能に取り付けられるカセット式の貯水タンク33とを備えている。そして、加湿ユニット23は、保育器1の基台2に設けられている開閉用ドア25を開放状態にした後に、
図1に示すように、保育器本体26の基台2の内部に装着される。また、加湿ユニット23を使用するためには、開閉用ドア25は、この装着後に閉鎖されるのが好ましい。なお、加湿ユニット本体32は、加湿槽34と、この加湿槽34が取り付けられている下側のケース35とを備えている。そして、この下側ケース35の底板部37には、この底板部37の下側面に条溝を形成するための突条部36が形成されている。また、基台2の加湿器受け面に形成されたレール(図示せず)が、上記条溝に嵌合している。なお、突条部36および上記レールのそれぞれは、互いにほぼ平行な状態でもって複数本形成されているのが好ましい。したがって、加湿ユニット23は、基台2の内部に対する着脱時に、基台2に対して上記嵌合状態でもって往復摺動(換言すれば、往復動)することができる。
【0025】
加湿ユニット本体32には、
図3および
図4に示すように、複数本のプラグ42を有する差し込みプラグ部43が加湿ユニット23の奥側の面(すなわち、
図1および
図3における右側面)に配設されている。そして、差し込みプラグ部43は、加湿ユニット23を基台2の内部に装着するときに、保育器本体26(換言すれば、基台2)に配設されたジャック部(図示せず)に差し込まれる。また、加湿槽34は、蒸留水などの加湿用の水を溜めることができるように、水溜め部44を備えている。さらに、加湿槽34には、蒸発筒45が取り付けられている。そして、この蒸発筒45のほぼ半分または大半(換言すれば、下方部分)は、水溜め部44に収容されている。また、加湿槽34には、加湿用のヒータユニット46が取り付けられている。さらに、蒸発筒45および加湿用ヒータユニット46は、共通の取り付け具51によって、加湿槽34に取り付け固定されている。この場合、加湿用ヒータユニット46は、蒸発筒45とほぼ同心形状になるように構成されていてよい。
【0026】
蒸発筒45は、
図3および
図4に示すように、内側の筒部52と、この内側筒部52の外周囲に位置する外側の筒部53とを備えている。この場合、内側筒部52は、外側筒部53とほぼ同心形状になるように構成されていてよい。そして、
図3において、符号54は、蒸発筒45を加湿槽34に支持させるための支持腕部54である。また、内側筒部52の内部空間および外側筒部53の内部空間(換言すれば、内側筒部52と外側筒部53との間における内部空間)のそれぞれを一部の周辺において上方に向かって先すぼまりにするための傾斜板部55が、蒸発筒45の上部に配設されている。さらに、加湿用ヒータユニット46は、加熱用のヒータ56とサーモスタットであってよい温度センサ57とをそれぞれ備えている。
【0027】
加湿ユニット23が保育器本体26に装着されているときには、
図4に示すように、加湿ユニット本体32の蒸発筒45上には、保育器本体41の基台2内に配設されている弁機構58が対向して配置されることになる。そして、この弁機構58は、基台2側に固定された弁座部材59と、この弁座部材59の開口60を開閉することができる弁部材68とを備えている。また、弁部材68の腕部69は、支軸に70によって、基台2側に軸支されている。なお、加湿ユニット23が保育器本体26の基台2の内部に装着されるときには、弁部材68は、作動機構(図示せず)によって作動されることによって、開放状態になる。そして、加湿ユニット23が保育器本体26の基台2の内部から取り出されるときには、弁部材68は、上記作動機構から解放されるために、閉鎖状態になる。
【0028】
加湿槽34の底板部61には、第1の水位検出センサ62および第2の水位検出センサ63がそれぞれ取り付け固定されている。そして、第1の水位検出センサ62は、水溜め部44内の水位が或る程度低い水位(以下、「第1の低水位」という。)L
1になったことを検出して、電気的、光学的などの検出信号を出力するように構成されている。また、第2の水位検出センサ63は、水溜め部44内の水位が上記第1の低水位L
1よりもかなり低い水位(以下、「第2の低水位」という。)L
2になったことを検出して、電気的、光学的などの検出信号を出力するように構成されている。具体的には、第1および第2の水位検出センサ62、63のそれぞれは、サーミスタであってよい。一般的には、これらのセンサ62、63のそれぞれは、一対の電極を有していて、これら一対の電極が加湿用水中に水没している第1の状態と、水没していない第2の状態とに応じて、一対の電極間の抵抗値、誘電率などが変化することを検出され得るように構成されていればよい。
【0029】
蒸留水などの加湿用の水が入っているカセット式の貯水タンク33は、
図3に示すように、加湿ユニット本体32のタンク取り付け箇所に着脱可能に取り付けられている。なお、貯水タンク33は、タンク本体64と、このタンク本体64の口部65にねじ込みなどによって着脱可能に取り付けられている蓋体66とを備えている。そして、タンク本体64の肩部には、
図3における上部から口部65に向かって径小になっている段差部67がほぼ全周にわたって形成されている。また、貯水タンク33は、
図3に示すように加湿ユニット本体32に装着されている状態においては、段差部66を加湿槽34の上端部71に支持されている。さらに、貯水タンク33は、
図3における右方向への不必要な移動を内側筒部52の上端部72によって阻止されるように構成されている。
【0030】
蓋体66には、弁73が組み込まれている。そして、この弁73は、蓋体66の軸心にほぼ沿って延在している往復動可能なピン74を備えている。そして、ピン74の
図3における下端部に形成されたフランジ部75と、蓋体66のばね受け部76との間には、付勢手段としての反撥用コイルばね77が介装されている。なお、蓋体66には、ピン74の外周付近において、注水口81が形成されている。また、コイルばね77が伸長可能な状態になったときには、弁73が注水口81を閉塞状態にする。そして、この閉塞状態においては、貯水タンク33からの水溜め部44への注水が阻止される。さらに、蓋体66は、ピン74を取り囲むように、
図3における下方に向かって延在している筒状部82を備えている。そして、筒状部82の先端側(換言すれば、
図3における下端側)には、水溜め部44における加湿用水の満水時の水位を決めるための1つまたは複数の欠如部83が形成されている。
【0031】
図3に示す貯水タンク33の規格容量は、1リットルであるから、未使用の貯水タンク33には、約1リットルの加湿用水が入っている。そして、
図3に示すように、貯水タンク33を加湿ユニット本体32のタンク取り付け箇所に取り付けたときには、貯水タンク33内の水は、水溜め部44内の水位が満水時の水位L
0になるまで、注水口81と欠如部83とを通って水溜め部44に流出する。なお、満水時の水位L
0は、欠如部83の上端84の高さ位置と実質的に一致する。そして、水溜め部44内の水が上記満水時の水位(換言すれば、水深)L
0であるときには、水溜め部44内の水量V
0は、約155ccである。そして、このときの水位L
0は、水溜め部44の底部(換言すれば、最深部)から約18.8mm上方である。なお、水溜め部44内の水の蒸発が長時間行われた結果として、水溜め部44の水位が第1の低水位L
1になったときには、水溜め部44内の水量V
1は約100ccになる。そして、この第1の低水位L
1は、水溜め部44の底部(換言すれば、最低部)から約10.5mm上方(換言すれば、満水時の水位L
0から約8.3mm下方)である。また、水溜め部44内の水の蒸発がさらに行われて、水溜め部44の水位が第2の低水位L
2になったときには、水溜め部44内の水量V
2は約50ccになる。そして、このときの第2の低水位L
2は、水溜め部44の底部から約6.5mm上方(換言すれば、満水時の水位L
0から約12.3mm下方であるとともに、第1の低水位L
1から約4mm下方)である。
【0032】
保育器1が配置されている室内(換言すれば、保育器1の配置環境)の温度が約25℃でかつ相対湿度が約50%の試験環境において、エンクロージャ3内の器内温度が約36℃でかつ相対湿度が約90%になるようにして保育器1を使用した場合について、以下に説明する。この場合、約1リットルの水が入った実質的に満タンの貯水タンク33を加湿槽34に装着してから、加湿ユニット23に加湿動作を行わせたところ、満水時の水位L
0から第1の低水位L
1になるまでの時間(換言すれば、水が約900cc蒸発する時間)は、約23時間であった。そして、第1の低水位L
1から第2の低水位L
2になるまでの時間(換言すれば、水が約50cc蒸発する時間)は、約1時間であった。
【0033】
本発明による保育器は、実用性の観点からみて一般的に、つぎの(a)項〜(r)項に記載の構成のうちのいずれか1つの構成またはいずれか複数の構成もしくは全部の構成を備えているのが好ましい。なお、つぎの(a)項〜(r)項におけるカッコ内の数値範囲の記載は、さらに好ましい数値範囲を示している:
(a)貯水タンク33の規格容量は、0.5〜2リットル(0.75〜1.5リットル)の範囲であること、
(b)加湿槽34の水溜め部44内の満水時の水位L
0は、9〜28mm(14〜24mm)の範囲であること、
(c)加湿槽34の水溜め部44内の第1の低水位L
1は、5〜16mm(8〜13mm)の範囲であること、
(d)加湿槽34の水溜め部44内の第2の低水位L
2は、3〜10mm(5〜8mm)の範囲であること、
(e)上記(b)項に記載の満水時の水位L
0から上記(c)項に記載の第1の低水位L
1を差し引いた値(すなわち、L
0−L
1)は、4〜12mm(6〜10mm)の範囲であること、
(f)上記(b)項に記載の満水時の水位L
0から上記(d)項に記載の第2の低水位L
2を差し引いた値(すなわち、L
0−L
2)は、6〜8mm(9〜15mm)の範囲であること、
(g)上記(c)項に記載の第1の低水位L
1から上記(d)項に記載の第2の低水位L
2を差し引いた値(すなわち、L
1−L
2)は、2〜6mm(3〜5mm)の範囲であること、
(h)加湿槽34の水溜め部44内における満水時の水量V
0は、80〜240cc(116〜200cc)の範囲であること、
(i)加湿槽34の水溜め部44内における第1の低水位L
1のときの第1の水量V
1は、50〜150cc(75〜125cc)の範囲であること、
(j)加湿槽34の水溜め部44内における第2の低水位L
2のときの第2の水量V
2は、25〜75cc(38〜62cc)の範囲であること、
(k)上記(b)項に記載の満水時の水位L
0に対する上記(c)項に記載の第1の低水位L
1の比(すなわち、L
1/L
0)は、0.28〜0.86(0.42〜0.68)の範囲であること、
(l)上記(b)項に記載の満水時の水位L
0に対する上記(d)項に記載の第2の低水位L
2の比(すなわち、L
2/L
0)は、0.16〜0.52(0.26〜0.42)の範囲であること、
(m)上記(c)項に記載の第1の低水位L
1に対する上記(d)項に記載の第2の低水位L
2の比(すなわち、L
2/L
1)は、0.82〜0.94(0.48〜0.76)の範囲であること、
(n)上記(h)項に記載の満水時の水量V
0に対する上記(i)項に記載の第1の低水位L
1のときの第1の水量V
1の比(V
1/V
0)は、0.32〜0.96(0.48〜0.80)の範囲であること、
(o)上記(h)項に記載の満水時の水量V
0に対する上記(j)項に記載の第2の低水位L
2のときの第2水量V
2の比(V
2/V
0)は、0.16〜0.48(0.24〜0.40)の範囲であること、
(p)上記(i)項に記載の第1の低水位L
1のときの第1の水量V
1に対する上記(j)項に記載の第2の低水位L
2のときの第2の水量V
2の比(V
2/V
1)は、0.25〜0.75(0.38〜0.62)の範囲であること、
(q)保育器1の配置環境の温度が25℃でかつ上記配置環境の相対湿度が50%の試験環境において、エンクロージャ3内の器内温度が36℃でかつ相対湿度が90%になるように保育器1を加湿する場合、実質的に満タンの貯水タンク33を加湿槽34に装着してから、加湿ユニット23に加湿動作を行わせたときに、満水時の水位L
0から第1の低水位L
1になるまでの時間は、8〜50時間(14〜42時間)の範囲であること、および
(r)上記(q)項に記載の試験環境において、エンクロージャ3内の器内温度が36℃でかつ相対湿度が90%になるように保育器1に加湿する場合、加湿ユニット23に上記(q)項に記載の加湿動作を行わせていて、第1の低水位L
1から第2の低水位L
2になるまでの時間は、30〜90分間(45〜75分間)であること。
【0034】
3、加湿ユニットの制御システムの構成
【0035】
図10は、加湿ユニット23の動作に関連する電気系統がブロック図で示されている。そして、
図10に示すように、センサ#1として図示されている第1の水位検出センサ62(
図4参照)からの第1の低水位検出信号(換言すれば、低水位警報検出信号)は、CPU(すなわち、中央処理装置)91に入力される。また、センサ#2として図示されている第2の水位検出センサ63(
図4参照)からの第2の低水位検出信号(換言すれば、水無し警報検出信号)も、CPU91に入力される。さらに、サーモスタット57(
図4参照)は、ヒータ56の過熱の有無を検出して過熱状態検出信号を出力し、この過熱状態検出信号も、CPU91に入力される。そして、
図1に示すエンクロージャ3内の適当箇所には、エンクロージャ3内の温度(いわゆる、器内温)を検出する温度計92が配置されている。また、この温度計92からの温度検出信号も、CPU91に入力される。さらに、
図1に示すエンクロージャ3内の適当箇所にも、エンクロージャ3内の湿度(いわゆる、器内湿度)を検出する湿度計93が配置されている。そして、この湿度計93からの湿度検出信号も、CPU91に入力される。
【0036】
図10に示すように、ヒータ56(
図4参照)には、このヒータ56の発熱量を制御するための制御信号がCPU91から供給される。そして、エンクロージャ3内に送風するために基台2内に配置されているファン94には、このファン94によって生じる総風量を制御するための制御信号がCPU91から供給される。また、操作ユニット兼用の表示ユニット31からは、エンクロージャ3内の器内温を所定の値にするための温度設定信号、エンクロージャ3内の器内湿度を所定の値にするための温度設定信号などの設定信号がCPU91に供給される。なお、図示を省略したが、保育器1には、エンクロージャ3内の酸素濃度を検出する酸素センサや、エンクロージャ3内の児の体温、心拍数、SPO
2(すなわち、パルスオキシメータで測定した血中酸素飽和度)などを検出する各種のセンサが配置されている。そして、これらのセンサによって検出された検出信号も、CPU91や表示ユニット31に供給される。
【0037】
表示ユニット31は、
図1および
図5に示すように、表示ユニット本体95と、この表示ユニット本体95をサブ支柱14bに取り付けるための支持アーム96とを備えている。そして、表示ユニット本体95の後面には、後方に向って突出している被取り付け部97が配設されている。また、この被取り付け部97には、ほぼ水平方向に延在している連結軸101が配設されている。さらに、この連結軸101は、被取り付け部97を取り付け部102に回動可能に連結している。そして、この取り付け部102は、ほぼ垂直方向に延在している連結軸103によって、支持アーム96の先端部に回動可能に軸支されている。また、支持アーム96の基端部は、ほぼ垂直方向に延材している連結軸105によって、支持部材104回動可能に連結されている。
【0038】
一方、サブ支柱14bの固定支柱21は、その横断面が長さ方向に沿ってほぼ均一である押し出し部材から構成されている。そして、この固定支柱21の前側の側面には、この固定支柱21の上端から下端までこの固定支柱21を貫通して延在している案内溝106が設けられている。なお、このような案内溝106は、固定支柱21の前側の側面以外のほぼ上下方向に延在している面にも設けられていてよい。そして、図示の実施例においては、このような案内溝107が固定支柱21の背面にも配設されている。また、支持部材104には、固定側としての第1の爪部111が一体成形などによって配設されるとともに、可動側としての第2の爪部112が取り付け軸113によって回動可能に取り付けられている。さらに、支持部材104には、回動摘み114がねじ込みおよびねじ戻し可能に取り付けられている。そして、第2の爪部112が、この回動摘み114のねじ込みおよびねじ戻しによって、取り付け軸113を回動支点として
図5における時計方向および反時計方向にそれぞれ回動するように構成されている。したがって、
図5に示す状態において、回動摘み114を回動させて第1の爪部111と第2の爪部112との間隔を狭くしてから、支持アーム96(ひいては、支持部材104)を前方(すなわち、
図5の下方)に引っ張ることにより第1および第2の爪部111、112を案内溝106から取り外すことによって、支持部材104(ひいては、支持アーム96および表示ユニット本体95)を固定支柱21から取り外すことができるように構成されている。
【0039】
支持アーム96の基端部付近には、
図5に示すように、ストッパ部115が配設されている。そして、
図5に示す支持アーム96が支持部材104に対して
図5における時計方向に回動し過ぎないように、ストッパ部115が支持部材104に当接するように構成されている。また、
図5に示す支持アーム96が支持部材104に対して
図5における反時計方向に約180°回動したときには、支持アーム96が支持部材104に対して
図5における反時計方向に回動し過ぎないように、ストッパ部115が支持部材104に当接するように構成されている。なお、右側のサブ支柱14bの固定支柱21の背面や左側のサブ支柱14aの固定支柱21の前側の側面および背面にも、案内溝106、107が配設されている。したがって、表示ユニット31の支持アーム96をこれらの案内溝106、107を利用することによってもサブ支柱14bおよびサブ支柱14aに選択的に取り付けることができる。そして、回動摘み114を或る程度ねじ戻してから表示ユニット31を上方または下方に移動させることによって、表示ユニット31を固定支柱21における所望の高さに移動させることもできる。
【0040】
4、加湿ユニットおよびその制御システムの動作
【0041】
保育器1が
図1および
図2に示す閉鎖型保育器として使用されている状態においては、通常、
図3および
図4に示す加湿ユニット23のヒータユニット46が動作状態になっている。そして、この動作状態においては、ヒータ56が蒸発筒45内の加湿用の水を加熱している。したがって、蒸発筒45内から蒸発する水蒸気は、この蒸発筒45の内側筒部52の上端開口52aから弁機構58の弁座部材59を通って、弁機構58の外側に漏れ出す。そして、この漏れ出した水蒸気は、ファン(
図10参照)が基台2内に取り込む空気に伴われてエンクロージャ3内に送り込まれるので、エンクロージャ3内の湿度が徐々に上昇する。この場合、加湿用の水は、通常は、水溜め部44内では満水時の水位L
0を保っている。しかし、上述のような蒸発が長時間進行すると、タンク本体64の加湿用水がすべて流出するとともに、水溜め部44内の加湿用の水の水位は、満水時の水位L
0から次第に低下するので、ついには、第1の低水位L
1になる。そして、この第1の低水位L
1は、第1の水位検出センサ62によって検出されるので、第1の水位検出センサ62からの第1の低水位検出信号は、
図10に示すCPU91に入力される。さらに、上述のような蒸発が進行すると、水溜め部44内の加湿用の水の水位は、第1の低水位L
1から次第に低下するので、ついには、第2の低水位L
2になる。そして、この第2の低水位L
2は、第2の水位検出センサ63によって検出されるので、第2の水位検出センサ63からの第2の低水位検出信号は、
図10に示すCPU91に入力される。
【0042】
図6〜
図9には、保育器1を使用し始めてから、上述のように第2の水位検出センサ63からの第2の低水位検出信号がCPU91に入力された後までの、表示ユニット31の表示画面116の表示状態の変遷が示されている。そして、
図6には、閉鎖型保育器1の電源スイッチ(図示せず)をオンにした場合が示されている。また、
図6の表示画面116には、児の体温(すなわち、37.0)、器内温(すなわち、37.5)、エンクロージャ3内の酸素濃度(すなわち、25)、エンクロージャ3内の湿度(すなわち、70)などが表示されている。
【0043】
図6に示す表示画面116は、タッチパネルタイプの液晶表示パネルによって構成されている。そして、操作者が表示画面116中のエンクロージャ3内の湿度の表示箇所付近を指などで触れると、表示画面116は、
図6に示す状態から
図7に示す状態に変化する。また、
図7に示す表示画面116におけるONボタンを指などで触れると、表示画面116は、
図7に示す状態から、
図8に示す状態に変化する。そして、
図8に示す表示画面116中のアップボタン117およびダウンボタン118を選択的に触れると、表示画面116中の設定湿度(すなわち、70%)を所定の値に変更することができる。また、
図8に示す表示画面116中の「閉じる」のボタン119を指などで触れると、上記所定の値が最終的に設定されるので、保育器1が所定の動作を開始する。そして、保育器1の表示画面116は、通常は、
図6に示す状態に戻る。
【0044】
図6に示す状態において、既述のように、上記第1の低水位検出信号が
図10に示すCPU91に入力されると、CPU91からの制御信号によって、表示ユニット31の表示画面116には、
図9に示すように、例えば「加湿槽に滅菌蒸留水を補給してください」という警報文120が、低水位警報として、例えば青色で表示される。これとともに、空っぽの加湿槽34を例えば青色でかたどったほぼU字形状などのマーク123がほぼ長方形状にかたどった例えば黄色の領域124に表示された低水位警報マーク121も、表示画面116に表示される。したがって、操作者は、まず、上記低水位警報の状態において、基台2の開閉用ドア25を解放状態にしてから、加湿ユニット23を基台2内から引き出せばよい。ついで、操作者は、この引き出した加湿ユニット23に装着しているタンク33を、蒸留水が十分に入っている別のタンク33に取り代えてから、加湿ユニット23を基台2内に差し込んで装着すればよい。なお、操作者がこのような操作を行えば、加湿槽34内の水位は満水時の水位L
0(換言すれば、第1の低水位L
1よりも上昇した水位)になるから、加湿ユニット23および表示ユニット31のそれぞれは低水位警報が出る前の状態に復帰する。
【0045】
上述のように低水位警報が出たにもかかわらず、加湿ユニット23をそのまま使用し続けた場合には、前述のように、
図3に示す第2の水位検出センサ63からの第2の低水位検出信号が
図10に示すCPU91に入力される。このために、表示ユニット31の表示画面116には、CPU91からの制御信号によって、例えば「加湿槽に滅菌蒸留水を補給してください」という警報文120が、水無し警報として、例えば青色から例えば黄色に変化する。これとともに、前述の低水位警報マーク121のうちのほぼ長方形状の領域124が、水無し警報として、表示画面116において例えば黄色の着色領域と例えば白色の無着色領域とに交互に変化する。これとともに、水無し警報のための適当な警報音が表示ユニット31から出力され、さらに、表示ユニット31の上部に
図6に示すように配設された警報灯122が、水無し警報として、連続的または間欠的に例えば赤色に点灯する。これとともに、ヒータユニット46のヒータ56への給電が自動的に停止される。したがって、既述の低水位警報の場合と同様にして、加湿ユニット23に装着しているタンク33を蒸留水が十分に入った別のタンク33に取り代えてから、この別のタンク33を基台2内に差し込んで装着すれば、加湿ユニット23は、低水位警報や水無し警報が出る前の状態に復帰する。
【0046】
以上、本発明の一実施例について詳細に説明したが、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている発明の趣旨に基づいて各種の変更および修正が可能である。
【0047】
例えば、上述の実施例においては、本発明を閉鎖型保育器兼用の開放型保育器に適用したが、本発明は、閉鎖型保育器などの他の保育器にも適用することができる。
【0048】
また、上述の実施例においては、操作ユニット兼用の表示ユニット31をサブ支柱14bの固定支柱21に取り付けることができるように構成した。しかし、表示ユニット31は、サブ支柱14bの固定支柱21以外の各種の支柱に取り付けることもできる。また、表示ユニット31の取り付け機構を吸盤式の取り付け機構(図示せず)によって構成した場合などには、表示ユニット本体95を上記吸盤式取り付け機構によって天面フード15の外側の上面などにも取り付けることができる。
【0049】
また、上述の実施例においては、加湿槽34内の加湿用水の水位を検出するために、水位検出手段として2つの水位検出センサ(すなわち、第1の水位検出センサ62および第2の水位検出センサ63)を用いた。しかし、水位検出センサの数は3つ以上であってもよく、例えば3つの水位検出センサを用いた場合には、3種類の低水位などを検出することもできる。さらに、上記水位検出手段は、複数の水位を検出することができる1つの水位検出センサであってもよい。そして、この場合には、上記水位検出センサは、例えば、加湿用水の水位の変化に応じて上下動することができるフロート式のセンサであってもよく、また、水溜め部44の底部に配置された水圧検出用のセンサであってもよい。