特許第5960501号(P5960501)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5960501ガイドピン及びこれを用いた建材の仮止め連結構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5960501
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】ガイドピン及びこれを用いた建材の仮止め連結構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/348 20060101AFI20160719BHJP
   F16B 35/00 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   E04B1/348 T
   F16B35/00 F
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-111626(P2012-111626)
(22)【出願日】2012年5月15日
(65)【公開番号】特開2013-238042(P2013-238042A)
(43)【公開日】2013年11月28日
【審査請求日】2015年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082670
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 民雄
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 文岳
【審査官】 五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭64−033332(JP,A)
【文献】 特開2001−280321(JP,A)
【文献】 特開平11−036451(JP,A)
【文献】 特開2009−079472(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0134589(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/348
F16B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建材同士を仮止め連結する際に、両建材にそれぞれ開口した仮止め連結用の貫通孔に挿入される着脱可能なガイドピンであって、
仮止め連結の際に一方の建材の開放された内部空間に突出する断面多角形の一端部と、他方の建材に固定可能なネジ部が形成された他端部と、前記断面多角形の一端部と前記ネジ部が形成された他端部との間に連続した前記貫通孔と略同径の円筒状の胴部とを備えることを特徴とするガイドピン。
【請求項2】
前記断面多角形の一端部は、レンチで回転可能とされていることを特徴とする請求項1に記載のガイドピン。
【請求項3】
前記一端部の少なくとも一部が多角柱に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のガイドピン。
【請求項4】
前記一端部が先細りの多角錐に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のガイドピン。
【請求項5】
前記建材が建物ユニットであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のガイドピン。
【請求項6】
前記ガイドピンの他端部は、前記建材の構造材に設けられた締結部に締結固定されるように形成されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のガイドピン。
【請求項7】
方の建材の構造材は、断面I、H、L、C型のいずれかであることにより外部と連通した開放された内部空間を有し、
請求項1〜6のいずれか1項に記載のガイドピンの他端部が他方の建材の構造材に前記締結固定され、前記建材同士を仮止め連結した状態で、前記ガイドピンの一端部は、前記一方の建材の構造材の内側空間に突出し、
前記突出した一端部の角部を保持して前記ガイドピンの取り外しが可能であることを特徴とする建材の仮止め連結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドピン及びこれを用いた建材の仮止め連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建材同士の仮止め連結に用いられるガイドピンが知られている(特許文献1〜3)。
【0003】
これらのガイドピンは、平面視で重複するように位置合わした両建材のガイドホールにガイドピンの一端部と他端部がそれぞれ挿入されることで、両建材の仮止め連結に供される。
【0004】
特許文献1のガイドピンは、仮止め連結した際に、開放された中空の柱の内側にガイドピンの一端部が突出し、仮止め連結した後に柱の中空へレンチ等を差し入れて、この突出した一端部にレンチ等(特許文献4参照)を嵌合させて操作することでガイドピンを除去可能なものである。
【0005】
上方向に突出したガイドピンの一端部は、ガイドピンのガイドホールへの挿入を考慮して先細りのテーパ状鏡面となっている。
【0006】
具体的に説明すると、上下方向における建材同士の仮止め連結では、例えば上方から吊り下げた建材を下降させて、その下方で固定された建材に嵌め込んで仮止め連結するため、平面視で適正位置からずれた状態で建材を下降させた場合に、上方の建材に形成されガイドホールの周囲の平坦部やガイドホールの周縁部が仮止め連結用に突出したガイドピンの先端(一端部)に意図せず当接してしまい、該先端に荷重がかかる。
【0007】
そのため、テーパ状の鏡面にすることで微細な位置ズレを吸収して仮止め連結がスムーズになされるようになっている。仮にこの部分が鏡面でなければ、建材の自重でその形状が潰されかねない。
【0008】
そのため、このテーパ状の部分にはレンチ用の嵌合部(角部等)を形成できず、特許文献1のものでは、突出したガイドピンの一端部の基部周辺に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭60−159237
【特許文献2】実開平1−171801
【特許文献3】特開2005−23968
【特許文献4】特開平8−39443
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一方、例えば特許文献1〜3のガイドピンを用いて、左右方向で建材同士を仮止め連結した場合、鏡面テーパ状の先端部であるためガイドピンを除去しにくいという問題があった。
【0011】
具体的には、ガイドピンはもともと仮止め連結用であるため、強固に締結されていないが、作業者が素手で取り除くにはある程度の力を要し取り外しにくいという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記課題に着目してなされたものであり、左右方向で建材同士を仮止め連結した場合、取り外しやすいガイドピンとこれを用いた仮止め連結構造の提供を目的とする。
【0013】
本発明に係るガイドピンは、建材同士を仮止め連結する際に、両建材にそれぞれ開口した仮止め連結用の貫通孔に挿入されるガイドピンであって、仮止め連結の際に一方の建材の開放された内部空間に突出する断面多角形の一端部と、他方の建材に固定可能に形成された他端部と、を備えることを特徴とする。
【0014】
また、前記一端部の少なくとも一部が多角柱に形成されていてもよく、先細りの多角錐に形成されていてもよい。さらに、前記建材が建物ユニットであってもよい。
【0015】
前記ガイドピンの他端部は、前記建材の構造材に設けられた締結部に締結固定されるように形成されていてもよい。
【0016】
本発明に係る建材の仮止め連結構造は、前記一方の建材の構造材は、断面I、H、L、C型のいずれかであることにより外部と連通した開放された内部空間を有し、前記ガイドピンの一端部は、他方の建材の構造材に前記締結固定され、前記建材同士を仮止め連結した状態で、前記一方の建材の構造材の内側空間に突出し、前記突出した一端部の角部を保持して前記ガイドピンの取り外しが可能であることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る実施例のガイドピンを取り付けた状態で仮止め連結しようとしている建物ユニットを示す斜視図である。
図2図1の建物ユニット同士の仮止め連結部分(仮止め連結前)を拡大した斜視図である。
図3図1の建物ユニット同士の仮止め連結部分(仮止め連結後)の平断面図である。
図4図2の仮止め連結部分(仮止め連結後)の縦断面図である。
図5】本発明に係る実施例1のガイドピンを示す斜視図である。
図6】(a)本発明に係る実施例1のガイドピンの側面図である。(a)本発明に係る実施例1のガイドピンの正面図である。
図7図3の仮止め連結後の状態から、ガイドピンを取り除く際の作用説明図(平断面)である。
図8図7の縦断面を示す作用説明図である。
図9】(a)〜(d)は、レンチでガイドピンを保持した状態を示し、ガイドピンの作用を説明する図である。
図10】本発明に係る実施例2のガイドピンを示す図である。
図11】(a)本発明に係る実施例2のガイドピンの側面図である。(a)本発明に係る実施例2のガイドピンの正面図である。
【実施例1】
【0018】
本発明の実施例を図1〜11を参照しながら説明する。
<建物ユニット>
図1は、実施例1のガイドピン1を用いて、左右に隣接配置した建物ユニット2,3同士を仮止め連結しようとしている状態を示した図である。
【0019】
一方の建物ユニット2は、建材の構造材としての梁2A,2Bや柱2C等を有している。他方の建物ユニット3も、建材の構造材としての梁3A,3Bや柱3C等を有している。
【0020】
この梁2A,2B,3A,3Bや柱2C,3Cは、断面C型やL型であるが(図2参照)、I、H型でもよい。これらの梁2A,2B,3A,3Bや柱2C,3Cが断面C、I、H、L型であるため、梁2A,2B,3A,3Bや柱2C,3Cの内部空間Sは外部に連通した状態で開放されており、作業者が手や工具を差し入れて内部空間SでボルトB等の取り付けや取り外し作業ができるようになっている。
<仮止め連結構造>
本発明に係るガイドピン1の取り付け構造10は、図2〜4に示すように、仮止め連結及び本連結用の貫通孔H1〜H3とH4〜H6がそれぞれ対応するように形成された壁部を有する各一対の梁2A,2B,3A,3B又は柱2C,3Cと、一方の仮止め連結用の貫通孔H3の裏側に設けられたガイドピン1用の締結部としてのナットN2と、該ナットN2に締結固定される他端部1cおよび各仮止め連結用の貫通孔H6を通じて他方の梁3A,3Bや柱3Cの壁部の裏側に突出する一端部1aを有するガイドピン1と、を有している(一部図示省略)。
【0021】
各建物ユニット2,3の柱2C,3Cや梁2A,2B,3A,3Bの所定の位置には、図2〜4に示すように、仮止め連結用の貫通孔H3,H6と本連結用の貫通孔H1,H2,H4,H5がそれぞれ形成されている。ここで、仮止め連結用の貫通孔は、図2に示していない必要な箇所にもそれぞれ形成されている。
【0022】
柱3Cの仮止め連結用の貫通孔H3は、その所定位置で対向する梁2Aの貫通孔H6と対をなすように形成されている。他の貫通孔H1,H2も同様であり、それぞれ貫通孔H3、H4と対をなすように形成されている。貫通孔の各対(H1:H4、H2:H5,H3:H6)は、仮止め連結した状態で、重なり合って一つの孔を構成するようになっている。
【0023】
建物ユニット3の仮止め連結用の貫通孔H3には、図2図4に示すように、本発明に係るガイドピン1が挿入されて締結固定されている。
【0024】
このガイドピン1の締結固定について詳述すると、まず、図4に示すように、上記仮止め連結用の貫通孔H3を設けた柱3Cの壁部箇所の裏面に、この貫通孔H3に合わせてナットN2がカシメ固定されている(図4の黒塗り部分参照)。
【0025】
そして、カシメ固定されたナットN2(締結部)の内周面の雌螺子に対して、後述するガイドピン1の他端部1cの雄ネジ部が貫通孔H3を介して挿入および螺合されて締結固定されることで、上記締結固定がなされる(図2図4参照)。
【0026】
締結固定されたガイドピン1の一端部1aは、建物ユニット2,3同士を左右方向で合体させて仮止め連結すると、他方の建物ユニット2の梁2Aの貫通孔H6を通過してその壁部裏面から突出する。仮止め連結の後に、一般的なボルトBとナットN1による本連結がなされる(図3図4参照)。一方、ナットN1は、図3に示すように、予め柱3Cの裏面にカシメ等で取り付けられている。
【0027】
ここで、建物ユニット3に対するガイドピン1の固定方法は、上記のようなネジによる締結固定に限られない。すなわち、ガイドピン1を他方の建物ユニット3に対して固定でき、仮止め連結および本連結の後、一方の建物ユニット2の貫通孔H6から内部空間Sに突出したガイドピン1の一端部1aをレンチRにより回転操作して、その固定の解除及び該ガイドピン1の取り外しができる固定方法であればよい。
【0028】
また、仮止め連結構造10の梁又は柱には、建物ユニットの梁や柱だけでなく一般的な建材の構造材としての柱や梁が全て含まれる。
<ガイドピン>
本発明に係る実施例1のガイドピン1を図5、6に示す。
【0029】
ガイドピン1は、断面多角形の一端部1aと、他方の建物ユニット3に締結固定可能に形成された他端部1c等とを有している。
【0030】
図5、6に示すガイドピン1の一端部1aは、断面正六角形で先細りのテーパ状に形成されている。これにより、ガイドピン1の一端部1aの先端と基部(ガイドピン1の胴部1bと一端部1aとの境目のテーパ状ではなくなる部分)との間に無数に存在する正六角形の断面の一つと一致する正六角形のレンチ穴を有するレンチ全てが使用可能となる。
【0031】
一方、ガイドピン1の他端部1cの外周面には、上述したように、他方の建物ユニット3の柱3Cや梁3A,3Bの裏側に予めカシメ固定されたナットN2の雌ネジに対して羅合する雄ネジがきられている。
<作用・効果>
以下、本発明に係る実施例1のガイドピン1とそれを用いた仮止め連結構造10の作用、効果について、図7、8を参照しながら説明する。
(1)梁2A,2B,3A,3Bや柱2C,3Cが断面C、I、H、L型であり、その内部空間Sが外部と連通して開放されているので、ここに作業員が手を差し入れることができる。この内部空間Sには、ガイドピン1の一端部1aが突出しているので、レンチRの先端を差し入れて締結固定の解除操作を行うことで、素手ではある程度の力を要するガイドピン1の締結固定の解除であっても、簡単に行うことができる(図7図8参照)。
(2)ガイドピン1の突出する一端部1aが断面六角形の先細りテーパ状に形成されているので、同一の六角形の開口を有するレンチであれば開口サイズに拘わらず係合するので(図9(a)〜(d)参照)、その意味ではレンチを選ばない。
[実施例2]
図10および図11に、実施例2のガイドピン1Aを示す。
【0032】
このガイドピン1Aは、その一端部として、六角柱の先端部1eと、それに連続形成され後方へ拡開した円錐部1dとを有している。それ以外の構成は、実施例1のガイドピンと同一であるため説明を省略する。また、仮止め連結構造10についても同様であるので説明を省略する。
【0033】
ガイドピン1Aの締結固定の解除に実施例1の場合よりも大きな力が必要となる場合がある。
【0034】
例えば、構造上の原因から仮止め箇所H3,H6に歪みが集中する等の何らかの理由により、建物ユニット2,3同士の上下方向の微細な位置ずれを起こした場合、仮止め用のガイドピン1Aが位置ズレした貫通孔H3:H6に挟まれて回転しにくくなる。
【0035】
この場合、作業員がガイドピンを回転させるために非常に力を要し、実施例1のものでは締結固定の解除がしにくくなる場合である。その場合、その箇所に設けるガイドピンを六角柱の先端部1eを有する実施例2のガイドピンとすることで、レンチにより確実に締結固定を解除することができる。
【0036】
なお、両目的で使用できるように、上記実施例2のガイドピンの円錐部1dを実施例1のような断面多角形に形成してもよい。
【0037】
以上、本発明に係る実施例1及び実施例2のガイドピンとこれを用いた仮止め連結構造を説明してきたが、具体的な構成については、これらに限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【符号の説明】
【0038】
1,1A・・・ガイドピン
1b・・・胴部
1c・・・他端部
1d・・・円錐部
1a・・・一端部
1e・・・先端部
2,3・・・建物ユニット
2A,2B,3A,3B・・・梁
10・・・仮止め連結構造
B・・・ボルト
H1〜H6・・・貫通孔
N1,N2・・・ナット
R レンチ
S 内部空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11