(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5960520
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】多機能屋上基礎
(51)【国際特許分類】
E04D 13/00 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
E04D13/00 L
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-140667(P2012-140667)
(22)【出願日】2012年6月22日
(65)【公開番号】特開2014-5621(P2014-5621A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2014年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078695
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 司
(72)【発明者】
【氏名】米田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】荻原 克二
(72)【発明者】
【氏名】東郷 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】木村 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】今永 亮一
(72)【発明者】
【氏名】井上 智晶
(72)【発明者】
【氏名】中井 武
【審査官】
西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭62−121237(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/081660(WO,A1)
【文献】
特開2009−167754(JP,A)
【文献】
特開2003−138699(JP,A)
【文献】
特開平06−057934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/00
E04D 13/18
H02S 20/24
E02D 27/42
E02D 27/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレキャストコンクリートブロックの天端に固定用スチールプレートをその周囲を張りださせてテーブル状天端板として一体加工で設け、スタッドを固定用スチールプレートに結合させ、スタッドから延設するアンカー用金物をプレキャストコンクリートブロックから下方に突設し、屋上スラブコンクリート上に設置したことを特徴とする多機能屋上基礎。
【請求項2】
プレキャストコンクリートブロックの天端に固定用スチールプレートをその周囲を張りださせてテーブル状天端板として一体加工で設け、プレキャストコンクリートブロックから下方に、上部がプレキャストコンクリートブロックに埋設するL型アングルとスタッドである鉄筋の下部を直角に曲げた定着筋であるアンカー用金物を突設し、屋上スラブコンクリート上に設置したことを特徴とする多機能屋上基礎。
【請求項3】
L型アングルには長ナットを溶接し、屋上スラブを構成するデッキ鋼板から立設させたボルトに該長ナットを介して螺合させる請求項2記載の多機能屋上基礎。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋上面に設ける緑化パネル、太陽光パネル、ウッドデッキ、手すり等各種仕上げ材の下地を容易に固定することを可能とする、また、工事中の仮設の手すりの設置や、外壁清掃ゴンドラの固定にも利用できる多機能屋上基礎に関するものである。
【背景技術】
【0002】
屋上柱脚基礎を構成する一般的な屋上基礎のディテールを
図12に示すと、現場打コンクリートにより、立ち上がり部分1及び防水抑え用のアゴ2を形成している。
【0003】
図示の例はアスファルト防水の抑えコンクリート有りの場合で、図中3は屋上スラブコンクリート、4はその上に敷設するゴムアスファルト系シール材、5は抑えコンクリートで、既製伸縮目地6を介在させている。図中7はウレタンフォーム断熱材である。
【0004】
基礎中にアンカーボルト8が埋め込まれ、その頭部8aは無収縮モルタルのベット10の上に顕出し、柱12のベースプレート12aをここに固定する。
【0005】
このような屋上柱脚基礎では天端の止水性能の確保が重要であり、前記ベースプレート12aの取り付けにおいてはアンカーボルト8の頭部8aに防水キャップ9を施し、ウレタン系シール13を充填する。また、防水抑え用のアゴ2の下方に防水立上り乾式保護材11を配設している。
【0006】
図
13は型枠による形成状態を示すもので、面木14、パネル15、桟木16等の型枠を、セパレータ18により組み、前記立ち上がり部分1及び防水抑え用のアゴ2を形成する。図中17は目地棒により形成する水切目地である。
【0007】
このような現場打コンクリートの型枠施工の他に、下記特許文献1に示すように、プレキャストコンクリート型枠で外郭を形成し、内部にコンクリートを打設して形成するハーフプレキャスト構造によるもの、下記特許文献2に製作された運搬可能なブロック状基礎を取り付けて据え付け箇所に載置するプレキャスト構造によるものなどもある。
【特許文献1】特開2011−144572号公報
【特許文献2】特開平9−70188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現場打コンクリートで構築するものでは、防水抑えのアゴを形成するなど、その複雑な形状により型枠数も多く、工程も煩雑となり、時間、手間がかかる。
【0009】
また、防水抑えのアゴを形成するため、基礎自体の寸法、重量共に大きくなる。さらに、屋上基礎天端への、鉄骨部材固定方法がボルト接合となるため、止水に対する慎重な管理が必要となる。
【0010】
特許文献1のようなプレキャストコンクリートの型枠を使用する場合でも同様であり、しかも防水抑えのアゴを有する複雑な形状の基礎の形成には適していない。
【0011】
特許文献2では、ブロック状基礎は、設置現場の据え付け箇所に薄いセメント層を介してこれを接着材として固定するか、下部形状を尖端状とし、その部分を地面に食い込ませた状態で据え付け箇所に載置するという極めて不安定な状態の設置しか提案されていない。特に、ブロック状基礎が比較的小さな場合には堅牢な固定が困難である。
【0012】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、基礎寸法の最小化、軽量化を実現でき、また、堅牢で安定した設置が可能であり、現場での作業性の向上と屋上スラブ耐荷重の軽減が得られる多機能屋上基礎を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するため請求項1記載の本発明は、プレキャストコンクリートブロックの天端に固定用スチールプレートをその周囲を張りださせてテーブル状天端板として一体加工で設け、
スタッドを固定用スチールプレートに結合させ、スタッドから延設するアンカー用金物をプレキャストコンクリートブロックから下方に突設し、屋上スラブコンクリート上に設置したことを要旨とするものである。
【0014】
請求項1記載の本発明によれば、固定用スチールプレートはその周囲を張りださせてテーブル状天端板として一体加工で設けることで、防水抑えアゴ及び下地固定用を兼用することができ、最小部材での構成が可能となり、軽量化が可能となる。
【0015】
また、天端の固定用スチールプレートはこれをプレキャストコンクリートブロックと工場で一体加工するため、天端の止水性が向上する。
【0016】
基礎寸法の最小化、軽量化により現場での作業性が向上する。しかも、プレキャストコンクリートブロックから下方に突設するアンカー用金物で、屋上スラブコンクリート上堅牢かつ安定的に固定できる。
【0017】
また、アンカー用金物で、屋上スラブコンクリートに固定するためのアンカー用金物は、スタッドを介して固定用スチールプレートと連続するものであり、基礎全体が一体連続したものとして強度を発揮することができる。
【0018】
請求項
2記載の本発明は、プレキャストコンクリートブロックの天端に固定用スチールプレートをその周囲を張りださせてテーブル状天端板として一体加工で設け、プレキャストコンクリートブロックから下方に
、上部がプレキャストコンクリートブロックに埋設するL型アングルとスタッドである鉄筋の下部を直角に曲げた定着筋であるアンカー用金物を突設し、屋上スラブコンクリート上に設置したことを要旨とするものである。
【0019】
請求項
2記載の本発明によれば、前記作用に加えて、L型アングルによる固定と、定着筋による2種類の固定で、屋上スラブコンクリートに強固に固定できる。
【0020】
請求項
3記載の本発明は、L型アングルには長ナットを溶接し、屋上スラブを構成するデッキ鋼板から立設させたボルトに該長ナットを介して螺合させることを要旨とするものである。
【0021】
請求項
3記載の本発明によれば、L型アングルの固定法として、屋上スラブを構成するデッキ鋼板から立設させたボルトを脚柱として、これで支承することで固定でき、該ボルトとはナットによる螺合で簡単に結合できる。
【発明の効果】
【0022】
以上述べたように本発明の多機能屋上基礎は、太陽光パネル、ウッドデッキ、手すり等各種仕上げ材の下地の固定、工事中の仮設の手すりの設置や、外壁清掃ゴンドラの固定など種々の利用に対応できるものとして、基礎寸法の最小化、軽量化を実現でき、また、堅牢で安定した設置が可能であり、現場での作業性の向上と屋上スラブ耐荷重の軽減が得られるものである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面について本発明の実施嫉視の形態を詳細に説明する。
図1は本発明の多機能屋上基礎の実施形態を示す縦断側面図で、図中3は屋上スラブコンクリート、7はその上に敷設するウレタンフォーム断熱材、4はゴムアスファルト系シール材である。
【0024】
本発明の多機能屋上基礎は、プレキャストコンクリートブロック20を主体としたものであり、その天端に固定用スチールプレート21をその周囲を張りださせてテーブル状天端板として一体加工で設けた。
【0025】
図2に固定用スチールプレート21の平面を示すと、図示例は平面の一辺が400mmの方形板とし、張りだし部21aの四隅近くと各辺の中央とにφ20の穴22を透孔として形成している。この固定用スチールプレート21の厚さは9mmであり、表面には溶融亜鉛めっきリン酸処理を施した。
【0026】
図3に示すように、スタッド23としてφ16の鉄筋をフープ筋とで籠状組んで固定用スチールプレート21の下側溶接し、このφ16の鉄筋の下部はプレキャストコンクリートブロック20の下方から突出させ、途中を直角に曲げて定着筋24として形成する。
【0027】
また、L型アングル25(PL6×50×390)をその上部をプレキャストコンクリートブロック20に埋設するようにして設け、下側はプレキャストコンクリートブロック20の下方に突出させる。前記定着筋24とこのL型アングル25とでアンカー用金物26を構成する。L型アングル25はプレキャストコンクリートブロック20に埋設する上部はスタッド23に溶接などで結合させてもよい。
【0028】
前記スタッド23やL型アングル25を予めセットした固定用スチールプレート21は、プレキャストコンクリートブロック20を形成する際に一体的に取り付くものであり、このプレキャストコンクリートブロック20は図示の例では平面の一辺が200mmの角体(角を面取り形成している)であり、その高さは280mm程度とする。前記アンカー用金物26の突出高さは120mm程度で、L型アングル25は三方に開くように配設け、定着筋24は相互に並列するものが逆向きに外側に向かうようにした。
【0029】
以上の寸法や形状は一例であり、プレキャストコンクリートブロック20はこれを円柱や他の角柱としてもよく、また、固定用スチールプレート21も方形以外の多角形の場合もあり得る。
【0030】
図7にも示すように、L型アングル25はその水平部分の先端近く、裏側に長ナット42を溶接しておく。
【0031】
そして、屋上スラブコンクリート3を構成するデッキ鋼板29にもナット27を溶接してここに全ネジボルト28を立設させ、全ネジボルト28の上端を前記長ナット26に螺合させて、全ネジボルト28を支脚としてL型アングル25を支承する。
【0032】
このように、屋上スラブコンクリート3を打設する前にアンカー用金物26によりプレキャストコンクリートブロック20を配置しておき、コンクリート3を打設後は屋上スラブコンクリート3上にプレキャストコンクリートブロック20を設置した状態になるようにする。
【0033】
図1の例では、ゴムアスファルト系シール材4をプレキャストコンクリートブロック20の側面に沿って立ち上げ、固定用スチールプレート21下方にプレキャストコンクリートブロック20を周方向に囲うようにフード状の水切金物30を取り付け、また、適宜、シーリング31を施す。
【0034】
図示は省略するがプレキャストコンクリートブロック20は、相互に2〜4m間隔(一例として3.2m間隔)を存して並ぶように点在させる。
【0035】
使用に際しては、仕上げ材の飛散防止対策として、緑化マット、ウッドデッキ、太陽光パネル等の機械的固定を行うことや、手摺支持材の取り付けを行うことや、メンテナンス用のゴンドラの支承に用いるなどの選択が可能である。
【0036】
図8は、屋上面の仕上げの一例として、屋上緑化を行う場合で、薄層緑化32と、蒸発散緑化33を設置する場合に、蒸発散緑化33を構成する人工軽量土壌33aを充填する枠体33bを固定用スチールプレート21上に載せて設置し、ワイヤー等で固定を行う。
【0037】
図9は、ウッドデッキ34を設置する場合、手摺35の設置基礎として、固定用スチールプレート21にガラス手摺35bの支持体35aを設置する。
【0038】
図10は、太陽光パネル36および砕石敷き37を設置する場合で、いずれも固定用スチールプレート21およびプレキャストコンクリートブロック20を架台支持の基礎として用いる。
【0039】
図11はゴンドラを設置する場合で、作業用ゴンドラ38は屋上パラペットに設置した突設架台39で吊支されるが、台付けワイヤーロープ40の端を固定用スチールプレート21にボルト止めしたアングル材であるアンカープレート41に掛着させる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明の多機能屋上基礎の実施形態を示す縦断側面図である。
【
図2】本発明の多機能屋上基礎の実施形態を示す平面図である。
【
図3】本発明の多機能屋上基礎の配筋の状態を示す断面図である。
【
図4】本発明の多機能屋上基礎の配筋の状態を示す見下図である。
【
図5】本発明の多機能屋上基礎の配筋の状態を示す見上図である。
【
図7】本発明の多機能屋上基礎のL型アングルの設置を示す側面図である。
【
図8】屋上緑化を行う場合の使用例の縦断側面図である。
【
図9】ウッドデッキを設置する場合、手摺の設置基礎としての使用例の縦断側面図である。
【
図10】太陽光パネルおよび砕石敷きを設置する場合の設置基礎としての使用例の縦断側面図である。
【
図11】ゴンドラを設置する場合の使用例の縦断側面図である。
【符号の説明】
【0041】
1…立ち上がり部分 2…防水抑え用のアゴ
3…屋上スラブコンクリート 4…ゴムアスファルト系シール材
5…抑えコンクリート 6…既製伸縮目地
7…ウレタンフォーム断熱材 8…アンカーボルト
8a…頭部 9…防水キャップ
10…ベット 11…防水立上り乾式保護材
12…柱 12a…ベースプレート
13…ウレタン系シール 14…面木
15…パネル 16…桟木
17…水切目地 18…セパレータ
20…プレキャストコンクリートブロック
21…固定用スチールプレート 21a…張りだし部
22…穴 23…スタッド
24…定着筋 25…L型アングル
26…アンカー用金物 27…ナット
28…全ネジボルト 29…デッキ鋼板
30…水切金物 31…シーリング
32…薄層緑化 33…蒸発散緑化
33a…人工軽量土壌 33b…枠体
34…ウッドデッキ 35…手摺
35a…支持体 35b…ガラス手摺
36…太陽光パネル 37…砕石敷き
38…作業用ゴンドラ 39…突設架台
40…台付けワイヤーロープ 41…アンカープレート
42…長ナット