(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2オリフィス(22)の前記第2液室(12)近傍部を、前記第1オリフィス(21)の前記第1液室(11)近傍部と連絡通路(23)で接続したことを特徴とする請求項1に記載した液封ブッシュ。
前記第2オリフィス(22)の前記第2液室(12)近傍部を、前記第1液室(11)と連絡通路(24)で直接接続したことを特徴とする請求項1に記載した液封ブッシュ。
前記第1乃至第4液室を含むn対(nは2以上の整数)の液室と、これら対をなす液室間を接続するn個のオリフィスとを備え、少なくとも、n+1個以上の共振を発生させるようにしたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載した液封ブッシュ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の液封ブッシュは、液室を4以上の複数にしてこれらの液室間を結ぶ2以上の異なる複数のオリフィスを設け、各オリフィスにて共振を発生させるようにしても、一対の液室を連結して1つのオリフィスを形成するから、オリフィスの数は液室の半分になる。このため、多数の共振を得るには、より多数の液室を設けなければならないが、このような液室の数は装置全体の大きさ等により自ずから制約があり、任意に数を増やすことが難しく、その結果、オリフィスの数も比較的少ないものに限定されてしまった。
そこで、n対からなる液室総数2n(ここでのnは2以上の整数)を設けた場合、液室総数の1/2、すなわちn個のオリフィスが形成されるが、このオリフィスの数より多い少なくともn+1以上の共振を発生できるようにすることを目的とする。
また、オリフィスで発生する共振は、オリフィスでつなぐ一対の液室間でのみ行われ、その共振程度は一対の液室の体積変動の大きさで決定される。しかし、他の液室も共振に関与させることができれば、作動液の液量が増加する分だけ共振効率を向上させ、強い共振を生じさせることができる。また、共振数を増大させるとともに、共振のピーク(減衰曲線におけるピーク値に相当する)を下げれば、共振域をより広い周波数域へ拡大して共振をブロード化することができる。
したがって、上記n+1以上の共振により、強い共振を生じさせたり共振のブロード化を実現させることも併せて目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため液封ブッシュに係る請求項1に記載した発明は、
内筒と外筒と、これら内外筒を弾性的に結合する弾性防振部材と、
この弾性防振部材によって区画されかつ入力振動に対して拡縮する体積変動を行うとともに、この拡縮が互いに逆になるように対をなす第1液室群及び第2液室群を設け、
この第1液室群内をさらに変形時に体積変形差を生じる少なくとも第1液室と第2液室に区画し、
前記第2液室群内をさらに変形時に体積変形差を生じる少なくとも第3液室と第4液室に区画し、
第1液室と第3液室間を結ぶ第1オリフィス及び第2液室と第4液室間を結ぶ第2オリフィスを設け、
第1オリフィスによる第1共振と、第2オリフィスによる第2共振からなる2個の共振を発生させるようにした液封ブッシュにおいて、
前記第1オリフィス又は第2オリフィスのいずれか一方を、そのオリフィスが接続する一対の液室間にないいずれかの液室へ連通接続し、
第1共振及び第2共振と異なる第3共振を発生させるようにしたことを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載した発明は、上記請求項1において、
前記第2オリフィスの前記第2液室近傍部を、前記第1オリフィスの前記第1液室近傍部と連絡通路で接続したことを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載した発明は上記請求項1において、
前記第2オリフィスの前記第2液室近傍部を、前記第1液室と連絡通路で直接接続したことを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載した発明は、
内筒と外筒と、これら内外筒を弾性的に結合する弾性防振部材と、
この弾性防振部材によって区画されかつ入力振動に対して拡縮する体積変動を行うとともに、この拡縮が互いに逆になるように対をなす第1液室群及び第2液室群を設け、
この対をなす液室内をさらに変形時に体積変形差を生じる第1液室と第2液室に区画し、
対をなす液室内をさらに変形時に体積変形差を生じる第3液室と第4液室に区画し、
第1液室と第3液室間を結ぶ第1オリフィス及び第2液室と第4液室間を結ぶ第2オリフィスを設け、
第1オリフィスによる第1共振と、第2オリフィスによる第2共振からなる2個の共振を発生させるようにした液封ブッシュにおいて、
前記第2オリフィスを、このオリフィスが接続する一対の液室間にある液室へ連通接続させたことを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載した発明は上記請求項4において、
前記第2オリフィスを、前記第3液室と第3連絡通路で直接接続したことを特徴とする。
【0010】
請求項6に記載した発明は上記請求項1〜5のいずれか1項において、
前記第1液室と前記第2液室間は第1弾性壁で区画され、
前記第2液室と前記第3液室間は第2弾性壁で区画され、
前記第3液室と前記第4液室間は第3弾性壁で区画され、
前記第4液室と前記第1液室間は第4弾性壁で区画され、
前記第2弾性壁及び前記第4弾性壁は主たる振動の入力方向(Z)及び内筒の軸方向(X)に対する直交方向(Y)に略沿って配置され、
前記第1弾性壁及び前記第3弾性壁は前記直交方向(Y)と斜めに交差するように配置されることを特徴とする。
【0011】
請求項7に記載した発明は上記請求項1〜6のいずれか1項において、
前記第1乃至第4液室を含むn対(nは2以上の整数)の液室と、これら対をなす液室間を接続するn個のオリフィスとを備え、少なくとも、n+1個以上の共振を発生させるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載した発明によれば、第1オリフィスによる第1共振と、第2オリフィスによる第2共振からなる2個の共振を発生させるとともに、第1オリフィス又は第2オリフィスのいずれか一方、例えば、第2オリフィスを、そのオリフィスが接続する一対の液室(第2液室及び第4液室)間にないいずれかの液室、例えば、第1液室へ連通接続し、第1共振及び第2共振と異なる第3共振を発生させるようにした。
このとき、第1共振は、互いに逆向きに体積変動する第1液室と第3液室を結ぶ第1オリフィスにおいて発生する。第2共振は、第1液室と第2液室の一体化した拡大液室と第4液室を結ぶ主として第2オリフィスにて発生する。このとき拡大液室と第4液室は互いに逆向きに体積変動する。第3共振は、変形時に体積変形差を生じる第1液室と第2液室の連通部にて発生する。
【0013】
このため、オリフィスの数より多い共振を発生させ、共振域をブロード化できるとともに、液室数及びオリフィス数を少なくできるので、装置の小型化及び構造の簡単化を実現できる。
また、第2共振は、第2オリフィスの第2液室近傍部を第1液室側へ連通接続したことにより、第1液室と第2液室が一体化したような拡大液室になるので、共振効率が向上して強い共振にすることができる。
【0014】
請求項2に記載した発明によれば、第2オリフィスの第2液室近傍部を、第1オリフィスの第1液室近傍部と連絡通路で接続したので、第1オリフィスを利用して第2オリフィスを第1液室へ連通接続することができる。
【0015】
請求項3に記載した発明によれば、第2オリフィスの第2液室近傍部を、第1液室と連絡通路で直接接続したので、第2オリフィスを第1液室へ容易に接続することができる。
【0016】
請求項4に記載した発明によれば、第1オリフィス又は第2オリフィスのいずれか一方、例えば、第2オリフィスを、そのオリフィスが接続する一対の液室(第2液室及び第4液室)間にある第3液室へ連通接続させたので、第2オリフィスの中間部を第3液室へ短絡接続したことになり、第2オリフィスはこの短絡部で分割され、第2オリフィスのうち、互いに逆向きに体積変動する第2液室と第3液室を結ぶ部分で第2共振し、互いに体積変形差を有する第3液室と第4液室を結ぶ部分で第3共振する。
【0017】
このため、全体としては、第1オリフィスによる第1共振を加えた3個の共振が発生することになり、オリフィスの数より多い共振を発生させ、共振域をブロード化できるとともに、液室数及びオリフィス数を少なくできるので、装置の小型化及び構造の簡単化を実現できる。
そのうえ、第2共振と第3共振は第2オリフィスを分割した部分により発生するので、共振の強さは第2オリフィスの全長で発生する場合の共振よりも弱くなるが、その分だけ、よりフラットな動特性を示すように改善されたブロード化を実現することができる。
【0018】
請求項5に記載した発明によれば、第2オリフィスの第3液室近傍部を、第3液室と第3連絡通路で直接接続したので、第3連絡通路の形成が容易になり、第2オリフィスの中間部を第3液室へ容易に短絡接続させることができる。
【0019】
請求項6に記載した発明によれば、第2弾性壁及び第4弾性壁を主たる振動の入力方向(Z)及び内筒の軸方向(X)に対する直交方向(Y)に略沿って配置し、第1弾性壁及び第3弾性壁を軸と斜めに交差するように配置したので、第1液室及び第2液室と第3液室及び第4液室とは互いに逆向きの体積変動をさせるとともに、互いに同じ向きに体積変動する第1液室と第2液室又は第3液室と第4液室間においても体積変動のし易さを変化させることができる。
【0020】
請求項7に記載した発明によれば、n対の液室と、これら対をなす液室間を接続するn個のオリフィスとを備えるとともに、第2オリフィスを第1連絡通路又は第2連絡通路で第1オリフィス又は第1液室と結ぶ構成、もしくは第3連絡通路で第2オリフィスの中間部を第3液室へ短絡させた構成を含むようにしたので、
少なくとも、n+1個以上の共振を発生させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本願発明を
図1〜6に基づいて第1実施例を説明する。
図1は円筒型液封ブッシュについて、その円筒軸の軸直交方向から示す正面図、
図2は
図1の円筒型液封ブッシュから外筒を除いた筒状弾性体を
図1の状態から周方向へ90°回転させた位置を示す図、
図3は
図1の3−3線相当部位における断面図であり、この円筒型液封ブッシュの軸直交方向断面を原理的に示す図である。
図4はオリフィスの展開図、
図5は
図3の原理的断面を用いた作用説明図、
図6は動特性のグラフである。
【0023】
なお、
図1における円筒軸の中心軸をX、これと直交し主たる振動の入力方向と平行な軸をZとし、
図2において、これらX及びZと直交する軸をYとする。X・Y・Zは互いに直交する3軸をなし、中心軸Xは本液封ブッシュの中心軸線でもある。
この円筒型液封ブッシュは自動車のエンジンマウントとして用いられ、車両への搭載状態では、X軸は車両の前後方向へ向けて配置され、Y軸は車両の左右方向に向けて配置される。また、主たる振動は車両の上下方向における振動であり、Z軸は車両の上下方向に向けて配置される。したがって、以下の説明において、X・Y・Zと各平行する方向を前後・左右・上下方向ともいう。
【0024】
図1において、この液封ブッシュは、円筒型をなし、内筒1と外筒2を同心的に配置し、内筒1と外筒2間を筒状の弾性防振部材7で連結したものである。
図2に示すように、弾性防振部材7はゴム等の弾性体からなる略筒状をなす公知の防振主体であって、中心軸線(X軸と平行)に沿って内筒1を一体化している。
【0025】
図2に示すように、弾性防振部材7は周方向に外側方へ開放された複数のポケット状凹部(11a・12a・14a)を配置し、それぞれを液室(11・12・14)にするとともに、各ポケット状凹部を連結するように外方が開放されたオリフィス溝が外側面に形成されている。これらのポケット状凹部の開口とオリフィス溝は、外筒で塞がれることにより液室及びオリフィス(21・22)を形成する。
なお、実際には液室がもう一つあるが(第3液室13;後述)、
図2においては、ポケット状凹部11a(第1液室11;後述)に隠れて見えていない。
【0026】
図3に示すように、弾性防振部材7の内部に複数の弾性壁で区画されたポケット状凹部(11a・12a・13a・14a)が設けられ、これらのポケット状凹部(11a・12a・13a・14a)は外方へ開放されるとともに、開放部を外筒2で覆われることによりそれぞれ密閉された液室をなしている。
図示では、第1弾性壁3,第2弾性壁4,第3弾性壁5,第4弾性壁6により、第1液室11,第2液室12,第3液室13,第4液室14の4室に区画する。これらの各液室と後述するオリフィス通路には非圧縮性の作動液が充填されている。
【0027】
主たる振動の入力軸Zと、これに直交する軸Yとの交点を中心Oとするとき、
第1液室11と第3液室13は中心Oを挟んで反対側に対をなして配置される。
また、第2液室12と第4液室14も中心Oを挟んで反対側に対をなして配置される。
【0028】
これら第1液室11と第3液室13は一対の大容量室をなし、これら一対の大容量室を構成する第1液室11と第3液室13は、Z軸方向である主たる振動の入力方向に対して、一方が体積を縮小すれば、他方が拡大するように、体積を逆方向に拡縮する体積変動を行う。
第2液室12と第4液室14は一対の小容量室をなし、やはり、体積を逆方向に拡縮する体積変動を行う。
【0029】
さらに、第1液室11と第2液室12は、一対で
図1におけるほぼ上半分に相当する上側液室群15をなし、第3液室13と第4液室14は、一対で
図1におけるほぼ下半分に相当する下側液室群16をなす。上側液室群15及び下側液室群16は、それぞれ大容量室である第1液室11と小容量室である第2液室12もしくは大容量室である第3液室13と小容量室である第4液室14を対にした組合せからなる。
なお、上側液室群15及び下側液室群16は、それぞれ本願発明における逆向きに体積変動するように対をなす液室に相当する。
【0030】
これら上側液室群15又は下側液室群16をそれぞれを構成する各液室(11・12又は13・14)は、体積を同方向に拡縮する体積変動を行うとともに、上側液室群15の液室と下側液室群16の液室とは、互いに逆方向へ拡縮する体積変動を行う。
例えば、Z軸方向に沿って、主たる振動が図の上方から下方へ向かって内筒1へ入力すると、上側液室群15を構成する第1液室11と第2液室12は拡大し、下側液室群16を構成する第3液室13と第4液室14は縮小する。振動の向きが逆転すれば、拡大又は縮小は反対になる。
【0031】
さらに、上側液室群15又は下側液室群16においても、構成する各液室間における体積変動の程度が相違している。すなわち互いの変形時に体積変形差を生じるようになっている。例えば、上側液室群15において、内筒1がZ軸に沿って図の上方へ移動すると、大容量室である第1液室11は、第4弾性壁6及び第1弾性壁3がそれぞれ図の上方へ向かって弾性変形されるから、大きく縮小されることになる。
【0032】
一方、小容量室である第2液室12は、第1弾性壁3及び第2弾性壁4がそれぞれ図の上方へ向かって弾性変形されるが、第1弾性壁3はZ軸に対して傾いているため、第2液室12から見て逃げる(広げる)方向へ弾性変形する傾向があり、第2液室12が縮小される程度は第1液室11に比べて小さくなる。すなわち、第2液室12の体積変形のほうが第1液室11よりも小さくなり、互いの変形時に体積変形差を生じる。
下側液室群16においても、同様に第3液室13と第4液室14間における体積変動の程度が相違し、互いの変形時に体積変形差を生じる。
【0033】
このように、上側液室群15及び下側液室群16を上下に区画するため、第2弾性壁4及び第4弾性壁6をそれぞれほぼY軸上に配置してある。但し、第1弾性壁3及び第3弾性壁5は、それぞれZ軸から、第2弾性壁4及び第4弾性壁6側へ近づくように傾いた中心Oを通る直線L上に配置されている。これにより、同じ上側液室群15又は下側液室群16であっても、大容量室と小容量室との間で、拡大又は縮小の程度、すなわち体積変動率を相違させ、体積変形差を生じるようになっている。
【0034】
さらに、対をなす液室が逆向きに体積変動するとき、作動液の移動を可能にする必要があり、この作動液の移動を可能にするため、上側液室群15及び下側液室群16間にて対をなす各液室間がオリフィスにより連通されている。すなわち、第1液室11と第3液室13は第1オリフィス21で連結され、第2液室12と第4液室14は第2オリフィス22で連結されている。
【0035】
さらに、第2液室12近傍にて、第1オリフィス21の第1液室側部分21Aと第2オリフィス22の第2液室側部分22Aが第1連絡通路23で連結されている。
なお、
図3においては、第1オリフィス21と第2オリフィス22及び第1連絡通路23は、理解を容易にするため外筒2の外側へ略式で表記してあるが、実際は弾性防振部材7と外筒2との間に形成されている。
【0036】
これら各オリフィスの具体的な構成を表す展開図を
図4に示す。
図4は外筒2を外した状態における弾性防振部材7の外側面を周方向へ長く展開して示す図であり、正確には各ポケット状凹部(11a・12a・13a・14a)の開口とオリフィス溝(21a・22a)が示されているが、説明を簡単にするため、それぞれの対応する液室及びオリフィスとして説明する。
【0037】
なお、各ポケット状凹部(11a・12a・13a・14a)を閉塞するため、弾性防振部材7の外側面にカバー部材を被せ、これを外筒へ嵌合することがある。この場合には、オリフィス溝(21a・22a)をカバー部材に設けることができる。
【0038】
この展開図に示すように、第1オリフィス21は比較的細いものとして構成され、低い周波数H1で第1共振するようにチューニングされている。第1オリフィス21のうち、第1液室11の接続部近傍部分が第1液室側部分21Aであり、第3液室13の接続部近傍部分が第3液室側部分21Bである。
【0039】
第2オリフィス22は、第2液室12と第4液室14を連通するとともに、第2液室12及び第4液室14の周囲で略渦巻き状に巻回し、第1オリフィス21よりも曲がりが多くかつ長く構成され、より高い周波数H2(H1<H2)で第2共振するようにチューニングされている。
また、第2液室12及び第4液室14の周囲で略渦巻き状に巻回する部分がそれぞれ、第2液室側部分22A及び第4液室側部分22Bである。さらに、これら、第2液室側部分22Aと第4液室側部分22Bとの間の部分が第2オリフィス本体部22Cとなる。
【0040】
第1連絡通路23は、第2液室12の近傍にて、第2オリフィス22における第2液室側部分22Aと第1オリフィス21における第1液室側部分21Aとを連通接続している(なお、
図3では略図化のため、第1オリフィス21の中間部と第2オリフィス22における第2液室12の接続部近傍とを結んだ状態で示してある)。
第1オリフィス21における第1連絡通路23との接続部を23Aとし、この接続部23Aから第1液室11までの部分を第1液室側部分21Aとする。同様に、第2オリフィス22における第1連絡通路23との接続部を23Bとする。
【0041】
第1連絡通路23は、第1オリフィス21と第2オリフィス22を連結する連通路である。しかし、第1オリフィス21が体積変動の大きな第1液室11と第3液室13をつなぎ、第2オリフィス22がより体積変動の小さな第2液室12と第4液室14をつないでいるため、第1オリフィス21へ作動液が流動するときは、第2オリフィス22へ流れず、第1オリフィス21が優先される。このため、第1連絡通路23で第1オリフィス21と第2オリフィス22を連結しても、入力振動が第1共振周波数程度以下で、第1オリフィス21が目詰まりしない状態下では、作動液が第1オリフィス21を流れ、第1連絡通路23及び第2オリフィス22へは流れない。
【0042】
一方、入力振動周波数の上昇により第1オリフィス21の目詰まりする状態下では、第1液室11の作動液は第1連絡通路23を通して第2オリフィス22へ流れる。同時に第2液室12の作動液も第2オリフィス22へ流れる。このため、第2オリフィス22には第1液室11及び第2液室12が見かけ上合体した拡大液室の作動液が流れ、第2共振周波数にて第2共振する。このとき、見かけ上合体した拡大液室である第1液室11及び第2液室12からなる上側液室群15と、下側液室群16を構成する第4液室14とは、互いに逆向きの体積変動を行うため、第1液室11の作動液は第1連絡通路23から第2液室12へ流れず、第4液室14へ流れる。
【0043】
このとき、
図3によれば、第2共振の発生は、第2オリフィス22に加えて第1オリフィス21の第1液室側部分21A及び第1連絡通路23も含まれる。しかし、
図4に示す構成の場合(
図4は具体的なオリフィス配置を示す)では、第1液室側部分21A及び第1連絡通路23の長さが殆ど無視できる程度のものであるから、第2共振の発生は第2オリフィス22が主体になる。
【0044】
さらに、入力振動の周波数上昇により第2オリフィス22も目詰まりする状態下では、同じ上側液室群15を構成する第1液室11と第2液室12の間に体積変形差が生じるようになっているので、第1液室11の作動液は第1連絡通路23を通して、より体積変動の小さな第2液室12へ流れる。このため、第1液室側部分21A−第1連絡通路23−第2液室側部分22Aからなる流路が形成され、所定の第3共振周波数にて第3共振する。
なお、
図4に示す構成の場合は、第1液室側部分21A及び第1連絡通路23の長さが殆ど無視できる程度のものであるから、第3共振の発生は実質的に第2オリフィス22の第2液室側部分22Aが主体になる。
【0045】
次に、本実施例における作用を説明する。
図3において、Z軸に沿って内筒1へ主たる振動が入力すると、上側液室群15と下側液室群16は、縮小と拡大からなる反対の動きをする。例えば、
図3の上方へ内筒1が移動すると、上側液室群15を構成する第1液室11と第2液室12とが縮小され、下側液室群16を構成する第3液室13と第4液室14とが拡大し、各液室体積が変化する。
【0046】
しかも、対をなす第1液室11と第3液室13及び第2液室12と第4液室14は、中心Oに対してそれぞれ点対称に配置され、逆向きの体積変動を生じる配置になっているので、体積変動の大きさは同じになる(拡縮は逆になる)。
そこで、この液室体積の変化分を補うべく各オリフィスを介して作動液が流動する。この作動液の流動は、まず、第1オリフィス21が目詰まりしない第1共振周波数H1程度未満の低周波数振動で、最も体積変動が大きな第1液室11と第3液室13を連結する第1オリフィス21を介して行われる。
【0047】
すなわち、
図5のAに示すように、作動液は第1オリフィス21を流れて第1液室11と第3液室13間を移動する。このとき、作動液は流れ易い流路を優先するため、第2オリフィス22や第1連絡通路23を流れない。
したがって、第1オリフィス21は所定の低い周波数である第1共振周波数H1にて第1共振する。
【0048】
その後、入力振動の周波数が第1共振周波数H1よりも高くなると、第1オリフィス21が目詰まりするようになる。すると、
図5のBに示すように、第1オリフィス21の作動液は第1オリフィス21の第1液室側部分21Aから第1連絡通路23へ流れるようになる。また、第2オリフィス22にも第2液室12と第4液室14間で作動液が流れるようになる。
【0049】
したがって、第2オリフィス22を介して第2液室12と第4液室14間で作動液が流動し、さらに第1連絡通路23及び第1オリフィス21の第1液室側部分21Aを介して第1液室11と第4液室14間で作動液が流動することになる。
このため、第2オリフィス22及び第1連絡通路23を介して、第1液室11と第2液室12が一体化した拡大液室と第4液室14が連通し、この拡大液室と第4液室14との間における作動液の流動により、主として第2オリフィス22にて第2共振が発生する。
この第2共振における第2共振周波数H2は、第1共振周波数H1より高い所定の周波数である
【0050】
このように、第1液室11と第2液室12の一体化された拡大液室と、第4液室14の間で作動液が流動して共振することにより作動液の流量が増大するため、例えば、第2液室12と第4液室14間を単に流動する場合と比べて第2共振の共振効率が高くなり、後述する
図6に示すように、動特性が大きく改善される。
【0051】
さらに入力振動の周波数が第2共振周波数H2よりも高くなると、第2オリフィス22も目詰まりするため、第1液室11の作動液は第1連絡通路23を通して、より体積変動の小さな第2液室12へ流れる。このため、第1液室側部分21A−第1連絡通路23−第2液室側部分22Aからなる流路が形成され、所定の第3共振周波数H3にて第3共振する。
【0052】
図6は本実施例の動特性を示すグラフであり、横軸に入力振動の周波数Hz、縦軸左側に動バネ定数KD(N/mm)、縦軸右側に減衰C(N・S/mm)をとってある。
太い実線で示す曲線は本実施例の動バネ曲線、太い破線で示す曲線は本実施例の減衰曲線である。 また、細い一点鎖線で示す曲線は比較例の動バネ曲線、細い二点鎖線で示す曲線はその減衰曲線である。比較例は本実施例の構成から第1連絡通路23による第1オリフィス21と第2オリフィス22との連通接続構成を除いたものである。
【0053】
このグラフにおいて、比較例では、動バネ曲線において、2つのピーク(極大値)a1及びa2、並びにボトム(極小値)b1及びb2を示す。ボトムb1は第1共振を示し、ピークa1はその反共振を示す。同様に、ボトムb2は第2共振を示し、ピークa2はその反共振を示す。減衰曲線では、第1共振によるピークc1、及び第2共振によるピークc2が生じている。すなわち、比較例では第1及び第2共振からなる2つの共振が生じている。
【0054】
一方、本願発明によれば、動バネ曲線において、ボトムB1〜B3が発生し、ボトムB1とB2の間、ボトムB2とB3の間、及びボトムB3よりも高周波数側に、それぞれ反共振のピークA1〜A3が発生している。ボトムB1は第1共振の発生を意味し、ボトムB2及びボトムB3は、それぞれ第2共振及び第3共振の発生を意味している。
また、減衰曲線では、第1共振によるピークC1、第2共振によるピークC2、及び第3共振によるピークC3が生じている。
【0055】
なお、このグラフでは、減衰曲線のピーク値に相当する周波数を便宜的に共振周波数としている。但し、動バネ曲線におけるボトム値と減衰曲線のピーク値がずれていることからも明らかなように、実際の共振周波数とは、動バネ曲線におけるボトム値と減衰曲線のピーク値を含むある程度の範囲を有する値である。
【0056】
本実施例では第1〜第3共振からなる3つの共振が生じている。これら第1共振は第1共振周波数H1、第2共振は第2共振周波数H2、及び第3共振は第3共振周波数H3を中心にして発生する。
本実施例と比較例を対比すると、本実施例の第1共振は、比較例よりも若干高めの周波数第1共振周波数H1(例えば、約15Hz近傍)で生じ、動バネはより低く(B1<b1)、かつ減衰はより高く(c1<C1)なっている。
【0057】
第2共振は、第1共振よりも高い第2共振周波数H2(例えば、約45Hz近傍)で生じ、動バネはかなり低動バネ(B2<b2)となり、減衰もかなり高減衰(c2<C2)になっている。減衰について比較すれば、減衰効果代Δ(C2−c2)が比較例のピーク値c2の2倍程度になっており、高減衰を実現していることを示す。
このような低動バネ化及び高減衰により顕著な動特性の改善が可能になる。
【0058】
この顕著な動特性の改善は、本実施例において第2共振に関与する液室が、第1液室11と第2液室12からなる拡大されたものになり、共振効率が向上することによりもたらされたものであり、動特性曲線においてピークの曲線が急峻になるピーキーな特性を示す強い共振を生じることになる。
【0059】
さらに、第3共振が第2共振よりも高い第3共振周波数H3(例えば、約60Hz近傍)で生じ、この第3共振によって第3共振周波数H3近傍を比較的高減衰にしている。
この第3共振は比較例では発生できないものであり、第3共振によって比較例では実現できないより高周波数側の動特性を改善できるようになる。
【0060】
しかも、これら第1共振〜第3共振は比較的接近して特定の狭い周波数域(例えば、約15〜60Hz)にて間隔をおいて発生する。したがって、この周波数域全体が3つの共振により動特性を改善されることになる。
そのうえ、比較例では、2つの共振により動特性が改善される共振域はせいぜい約15〜50Hz程度の範囲であったところが、本実施例においては、3つの共振による共振域が約15〜60Hz程度の範囲まで拡大したことになり、共振のブロード化を実現している。
すなわち、本実施例では、3つの共振により共振のブロード化を実現するとともに、動特性曲線においてピーキーな特性を実現できる。
【0061】
次に、第2実施例を説明する。
図7は
図3に対応する原理的な断面図、
図8は
図4に対応する液室及びオリフィスの展開図、
図9は
図5に対応する動作説明図、
図10は
図6に対応する動特性のグラフである。なお、
図7における各液室の配置並びに拡縮に伴う各液室間における体積変動及び体積変形差の関係については
図3と同じである。
【0062】
この例では、
図7に示すように、第2オリフィス22の中間部を第3連絡通路25にて第3液室13と連通接続している。
すなわち、第2液室側部分22A及び第4液室側部分22Bの間である第2オリフィス本体部22Cのうち、第3液室13と重なる部分が第3連絡通路25で直接第3液室13へ連通接続されている。直接とは第1オリフィス21を介さないという意味である。
なお、25Aは第3連絡通路25と第2オリフィス22との接続部である。
【0063】
第3連絡通路25は第2オリフィス22を第3液室13と短絡するものであり、第2オリフィス22は、第3連絡通路25との接続部25Aで実質的に2分割され、第2液室12側の第1分割部22Dと第4液室14側の第2分割部22Eとなる。
すなわち、第1分割部22Dは第2液室12と第3液室13をつなぎ、第1分割部22D及び第3連絡通路25を介して第2液室12と第3液室13の間で作動液が流動する。
第2分割部22Eは第4液室14と第3液室13をつなぎ、第2分割部22E及び第3連絡通路25を介して第4液室14と第3液室13の間で作動液が流動する。
【0064】
第2オリフィス22の
図8の展開図に示すように、第3連絡通路25は第2オリフィス本体部22Cの長さ方向中間部を第3連絡通路25にて第3液室13と短絡的に連通させてある。したがって、第2オリフィス22全体を通して第2液室12と第4液室14の間に作動液が流れることはなく、作動液は、第1分割部22D又は第2分割部22Eのいずれか一方を流れる。このため、第1分割部22Dにて第2共振が発生し、第2分割部22Eにて第3共振が生じるようになっている。
【0065】
なお、第1分割部22Dと第2分割部22Eでは、それぞれ連結する液室の体積変動が相違し、第1分割部22Dは拡縮方向が互いに逆向きで相対的に大きな体積変動をする第2液室12と第3液室13をつなぎ、第2分割部22Eは拡縮方向が互いに同じで変形時に体積変形差を生じる第3液室13と第4液室14をつなぐ。この第3液室13と第4液室14の間では相対的に小さな体積変動をする。このため、作動液の流れは第1分割部22Dが優先され、第1分割部22Dが目詰まりしない状態では第1分割部22Dを作動液が流れ、第1分割部22Dが目詰まりした後から第2分割部22Eに作動液が流れるようになっている。
【0066】
この第2共振及び第3共振は、第1オリフィス21における第1共振の後から生じる。
すなわち、第3連絡通路25で第2オリフィス22を第3液室13と短絡させることにより、全体として、第1共振・第2共振・第3共振からなる3つの共振を発生するようになっている。但し、第2オリフィス22を流れる作動液の流量は半減することになり、第2共振及び第3共振の共振効率が低くなるが、共振がブロード化することになる。
【0067】
また、第2オリフィス本体部22Cの中間部を第3液室13と直接短絡させることにより、第1オリフィス21を介さずに短絡できるので、第3連絡通路25が簡単になる。そのうえ、第2オリフィス本体部22Cと第3連絡通路25の接続部は、比較的長く第3液室13に沿っている部分のため、接続位置の自由度が大きくなる。
【0068】
図9は各共振における作動液の流れ方を示す。
まず、第1共振周波数では、
図9のAに示すように、作動液は第1オリフィス21を第1液室11と第3液室13間に流動して第1共振周波数H1にて共振する。このとき、第2オリフィス22側には作動液が流れない。
【0069】
次に、入力振動の周波数が上昇して第1オリフィス21が目詰まりすると、
図9Bに示すように、作動液は第2オリフィス22へ流れるようになる。このとき、第2オリフィス22は中間部が第3連絡通路25で第3液室13と短絡されているため、まず、流れやすい第1分割部22Dを介して第2液室12と第3液室13間で流れることになり、第2共振周波数H2にて第2共振する。このとき、作動液は第2分割部22E側へは流れない。
【0070】
その後、さらに入力振動の周波数が上昇し、第1分割部22Dが目詰まりすると、
図9のCに示すように、作動液は、第3連絡通路25及び第2分割部22Eを介して、同じ下側液室群16であっても体積変動の大きさが異なる第3液室13と第4液室14間を流動するようになり、第3共振周波数H3(H1<H2<H3)にて第3共振する。
このようにすると、第1共振・第2共振及び第3共振からなる3つの共振を発生することにより、共振域が広い周波数域へ拡大されてブロード化する。
【0071】
図10は本実施例に係る動特性を比較例と共に示してあり、
図6と同様に、太い実線は実施例の動バネ曲線、太い破線は減衰曲線であり、細い一点鎖線は比較例の動バネ曲線、二点鎖線は減衰曲線である。なお、比較例の動特性曲線は
図6と同じものである。また、グラフ中に示すABCの各点における具体的な数値及び第1共振周波数H1、第2共振周波数H2及び第3共振周波数H3の各具体的な数値は第1実施例と異なっている。
【0072】
まず、本実施例の動バネ曲線において、第1共振でボトムB1、第2共振でボトムB2、第3共振でボトムB3が発生し、それぞれに反共振のピークA1及びA2が発生している(3番目のピークは図の表示領域外となって見えていない)。
また、減衰曲線では、第1共振にピークC1が生じ、第2共振にピークC2、第3共振にピークC3が生じている。
【0073】
本願発明と比較例を対比すると、本願発明の第1共振は、比較例の第1共振周波数h1よりも若干低めの第1共振周波数H1(例えば、約15Hz近傍)で生じ、動バネは若干高く、減衰も低くなっている。なお、比較例の第1共振周波数をh1、第2共振周波数をh2とする。
また、第2共振は、比較例の第1共振周波数h1と第2共振周波数h2の中間となる第2共振周波数H2(例えば、約40Hz近傍)で生じ、動バネは若干低動バネ(B2<b2)で、減衰も若干高減衰(C2>c2)になっている。
さらに、第2共振周波数H2よりも高く、かつ比較例の第2共振周波数h2より若干高めの第3共振周波数H3(例えば、約55Hz近傍)に第3共振が発生し、動バネはボトムB3がb2より若干低い低動バネ(B3<b2)、減衰はピークC3がc2よりも高い高減衰(C3>c2)になっている。
【0074】
すなわち、比較例では2つの共振が発生している周波数域(h1〜h2;本実施例のH1〜H3に相当する約10Hz近傍〜50Hz近傍範囲)にて3つの共振を示し、第1共振が比較例の第1共振と、第3共振が比較例の第2共振とそれぞれ略同じ周波数域(H1とh1及びH3とh2)に生じ、本実施例の第2共振は、比較例の第1共振と第2共振の中間となる周波数域において生じ、この第2共振周波数H2は、比較例の第1共振及び第2共振の生じる各周波数h1及びh2の中間となっている。
【0075】
このため、比較例の第1共振(c1)と第2共振(c2)間における動特性を改善し、動バネ曲線及び減衰曲線とも、より低動バネかつ高減衰になるような、よりフラットな高原状を呈するようになる。
これは、比較例と同様の周波数域(h1〜h2及びH1〜H3)において、比較例よりも多い3つの共振を発生することにより、この周波数域全体を低動バネかつ高減衰になるように動特性が改善された共振域とすることを意味し、比較例では、第1共振及び第2共振の効果が減少していた中間部の周波数域まで共振の効果を生じさせるものである。
【0076】
すなわち、比較例の第1共振及び第2共振の周波数域(h1〜h2)内において、共振域をより広範囲の周波数域に拡大して共振のブロード化を実現していることになる。
また、このブロード化は、第1実施例と比較した場合、第1実施例の共振域(H1〜H3)における動特性を、ピーキーでないよりフラット化して、より動特性の改善された望ましいものとなる。
【0077】
また、本実施例において僅かではあるが、第1共振周波数H1は比較例の第1共振周波数h1よりも低く、第3共振周波数H3は比較例の第2共振周波数h2よりも高くなっている。したがって、本実施例は3つの共振により、共振域を比較例のh1〜h2の範囲よりも拡大したことになり、共振域をより広範囲の周波数域へ拡大するという意味でのブロード化も実現している。
【0078】
なお、本願発明は上記の各実施例に限定されるものではなく、発明の原理内において種々に変形や応用が可能である。
例えば、第1実施例のバリエーションとして2個のオリフィスを短絡させるのではなく、第2オリフィス22にとって非対の液室(一つのオリフィスが連結している一対の液室以外の他の液室をいう)である第1液室11へ直接延長接続してもよい。これを
図11に示す。
図11は
図3における第1連絡通路23のみを変更し、別態様の第2連絡通路24としただけであるため、共通部は
図3と同様とする。
【0079】
この図において、第2オリフィス22の第2液室側部分22Aを枝分かれさせて第1液室11側へ延長する第2連絡通路24とし、この延長先端部を直接第1液室11へ連通接続させたものである。このようにしても、第1オリフィス21で第1共振し、第1液室11と第2液室12との拡大液室と第4液室14の間で第2オリフィス22にて第2共振し、第1液室11と第2液室12間で第2連絡通路24により第3共振をすることができる。
【0080】
さらに、この第2連絡通路24は、
図4に仮想線で示すように、互いに隣接して平行する第2オリフィス22と第1液室11の各一部とを連通させることにより容易に形成できる。しかも、このようにすると、第1オリフィス21を介さないので、その分だけ第2連絡通路24の構造が簡単になるとともに、第2オリフィス22の第2液室側部分22Aのうち、第1液室11に沿う部分のどこでも接続できるから、第2連絡通路24の自由度が大きくなる。
【0081】
また、上側液室群15と下側液室群16は、必ずしも、Y軸を挟んで上下対称に配置されなくてもよい。
図12のAに示すように、Y軸に沿って略水平に配置されている第2弾性壁4と第4弾性壁6を傾け、第2弾性壁4をY軸より若干下側になるように配置し、第4弾性壁6をY軸より若干上側になるように配置することにより、第2液室12の一部がY軸より若干下側へ入り込み、第4液室14の一部がY軸より若干上側へ入り込むようにしてもよい。このようにしても、上側液室群15と下側液室群16はZ軸方向の主たる振動の入力に対して、互いに逆向きの体積変動を行う。また、同じ液室群を構成する液室相互では変形時に体積変形差を生じることになる。
なお、
図12のA及び後述する同B並びに
図13はオリフィスを省略してある。
【0082】
また、
図12のBに示すように、第2弾性壁4と第4弾性壁6を逆に傾けて、第1液室11の一部がY軸より若干下側へ入り込み、第3液室13の一部がY軸より若干上側へ入り込むようにしてもよい。このようにしても、上側液室群15と下側液室群16はZ軸方向の主たる振動の入力に対して、
図12のAにおける場合と同様に、互いに逆向きの体積変動を行うとともに、同じ液室群を構成する液室相互では変形時に体積変形差を生じる。
要は、上側液室群15と下側液室群16の各液室が主たる振動の入力方向でZ軸方向において逆の体積変動を生じ、かつ上側液室群15又は下側液室群16の各液室間でも体積変形差を生じるようにすれば足りる。
【0083】
さらに、
図13に示すように、互いに対をなす弾性壁(第1弾性壁3と第3弾性壁5及び第2弾性壁4と第4弾性壁6)間で肉厚を変化させてもよい。例えば、第2弾性壁4と第4弾性壁6を相対的に肉厚とし、第1弾性壁3と第3弾性壁5を相対的に薄肉とする。
このようにすると、各液室の体積変化に影響する弾性壁のバネが変化するため、作動液の流量を変化させ、いずれかの共振における共振効率を調整することができる。
【0084】
また、上記各実施例では、いずれも液室を4室、オリフィスを2個としているが、液室の数を6以上の偶数及びオリフィスを3個以上にすることが可能である。
すなわち、
図14に示すように、n対(nは2以上の整数)の液室とn個のオリフィスで構成する。図の例では、上側液室群が、第1液室11、第2液室12、第5液室30を含む全体でn個の液室を備える(第1液室11及び第2液室12を除く部分に第5液室30を含むn−2個の液室が形成される)。
同様に、下側液室群が、第3液室13、第4液室14、第6液室31を含む全体でn個の液室を備える(第3液室13及び第4液室14を除く部分に第6液室31を含むn−2個の液室が形成される)。
【0085】
さらに、第1液室11と第3液室13を対にして第1オリフィス21で連結し、第2液室12と第4液室14を対にして第1オリフィス21で連結し、第5液室30と第6液室31を対にして第3オリフィス32で連結し、同様に対をなす他の液室間をオリフィスでつなぐ。上下液室群における各n−2個目の液室同士をつなぐオリフィスはn個目の第nオリフィス33になる。すなわち、n対の液室を結んでn個のオリフィスが設けられ、n個の共振を発生させるようになっている。
【0086】
そこで、少なくとも一個のオリフィスを他のオリフィス又は非対の液室と連通させると、
少なくともn+1以上の共振を発生させることができる。
例えば、
図3のように、第2オリフィス22を第1オリフィス21に第1連絡通路23で連結することができる。また、
図11のように、第2オリフィス22を第1液室11へ第2連絡通路24で直接連結することもできる。さらに、
図7のように、第2オリフィス22を第3液室13へ第3連絡通路25で直接連結することができる。
また、この連絡通路の数は2以上の複数が可能であり、連絡通路の数をnに加えた共振を発生させることができる。例えば、連絡通路の数をx個とすれば、全体として発生する共振はn+x個となる。
【0087】
次に、第1実施例及び第2実施例における、第1オリフィス21及び第2オリフィス22並びに第1連絡通路23、第2連絡通路24、第3連絡通路25の接続に関するバリエーションを説明する。
【0088】
図15は第1実施例に関するバリエーションであり、Aは
図3のより簡略化したものであり、B〜Eがバリエーションである。
Bは第1オリフィス21の第3液室13近傍部にて、第2オリフィス22の長さ方向中間部と第1連絡通路23で連通接続されている。
Cは第2オリフィス22の第4液室14近傍部にて、第1オリフィス21の長さ方向中間部と第1連絡通路23で連通接続されている。
Dは
図11をより簡略化したものであり、EはDに対して、第2連絡通路24が第2オリフィス22の第4液室14近傍部を第1液室11へ直接連通接続した状態を示す。
【0089】
図16は第2実施例に関するバリエーションであり、Aは
図7のより簡略化したものであり、B〜Eがバリエーションである。
Bは第1オリフィス21の第3液室13近傍部にて、第2オリフィス22の長さ方向中間部とを直接連通接続したものであり、第3連絡通路25を第1オリフィス21の一部と共通化し、独立した第3連絡通路25を設けることを省略している。
Cは第1実施例と第2実施例を組み合わせたものであり、
図16のAに対して、さらに第2オリフィス22の第2液室12近傍部にて、第1オリフィス21の長さ方向中間部と第1連絡通路23で連通接続されている。
Dは
図16のBに対して、同Cと同様に、第2オリフィス22の第2液室12近傍部にて、第1オリフィス21の長さ方向中間部と第1連絡通路23で連通接続したものである。
Eは
図16のDに対して、第1連絡通路23を、第2オリフィス22の第4液室14近傍部にて第1オリフィス21の長さ方向中間部へ連通接続するように変更したものである。